司政官シリーズ

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司政官シリーズ』(しせいかんシリーズ)は、眉村卓によるSF小説のシリーズで、眉村の代表作。最初の短編「炎と花びら」が1971年に発表されて以降、『引き潮のとき』まで、中短編7作、長編2作が書かれている。

眉村が唱え、自らの創作原理としている「インサイダー文学論」の集大成といえる作品群である。

概要[編集]

作品の舞台は、地球人類が宇宙へ進出し、数多くの惑星へ植民している時代である。「司政官」とは、そうした惑星を征服し、軍政を布いてきた「連邦軍」に代わって、「連邦経営機構」が惑星統治のために派遣する官僚である。司政官は厳しい選別と訓練課程を経て、統治技術と使命感を身に着けたエリート官僚であり、植民世界の発展と先住種族との融和を図るべく、植民惑星にただ一人赴任し、ロボット官僚群を駆使して統治に当たる。

『司政官シリーズ』は、矛盾もはらんだこの司政官制度の発足当初から、制度の形骸化・弱体化が進んだ時代までを年代記的に扱っている。各作品は、それぞれの時代・惑星における一人の司政官を主人公として、徹頭徹尾その司政官の視点から描かれている。

世界観や諸設定はアイザック・アシモフの『ファウンデーションシリーズ』および『トランター三部作』に大きく影響を受けている。特に『消滅の光輪』はトランター三部作の一作『宇宙気流』からプロットを借用しており、アシモフに捧げられている。

シリーズ作品[編集]

中短編7作と『消滅の光輪』『引き潮のとき』の長編2作が書かれている。いずれも「SFマガジン」(早川書房)に掲載された。

中短編[編集]

  • 「炎と花びら」「遥かなる真昼」「遺跡の風」「限界のヤヌス」の4作は単行本『司政官』に収録された(早川書房、1974年/ハヤカワ文庫JA、1975年/JDC(単行本)、1992年)
  • 「照り返しの丘」「扉のひらくとき」「長い暁」の3作は単行本『長い暁』に収録された(早川書房、1980年/ハヤカワ文庫JA、1982年)
  • のち、これら7作を作中の年代順に配列して1冊にまとめた『司政官 全短編』が刊行された(創元SF文庫、2008年)

炎と花びら[編集]

  • 惑星:第九二五星系サルルニン
  • 原住者:真正サルルニアおよび亜サルルニア
  • 植民者:不在
  • 掲載:1971年10月臨時増刊号

遥かなる真昼[編集]

オキ・PPK・ナスカは連邦から担当惑星の原住者・ネネギアの文明化を指令されていた。しかし、彼は陰気な惑星であるネネギンも、そこに住むネネギアや植民者たちのことも憎んでいた。彼はネネギアの最大集落であるピジャジャスタを訪問し、筆頭行政官・グゲンゲと会見する。グゲンゲは改革者であった。

  • 惑星:ネネギン。常に雨が降りつづけ、闇に包まれている陰気な惑星。
  • 原住者:ネネギア
  • 植民者:司政庁非公認の植民者たちが存在。
  • 掲載:1973年2月号

遺跡の風[編集]

  • 惑星:タユネイン
  • 原住者:死滅
  • 植民者:存在
  • 掲載:1973年5月号

限界のヤヌス[編集]

  • 惑星:ガンガゼン。
  • 原住者:ガンガゼア。皮膚が金属化し、戦闘力や思考力に優れた〈ド〉が率いる部族に分かれて伝統を守って生活している。
  • 植民者:存在
  • 連載:1974年1月号 - 2月号

照り返しの丘[編集]

惑星テルセンに駐屯していた連邦軍がつい先日撤退した。軍はこの惑星に多数存在するロボットであるS=テルセアに対する調査を強行したあげく、失敗していた。強い自負心を抱く司政官二期生ソウマ・PPK・ジョウは、S=テルテアや元々存在していた支配種族の実態を解明してみせると意気込み、S=テルセアの存在する「エリア」のひとつに官僚ロボット達を率いて調査に向かう。

  • 惑星:第四五七星系第二惑星テルセン。無数の内海を持つ巨大な大陸(本土)が一つある他は、いくつかの島々で構成されている。大陸の大地は四角錐状に舗装されている他、所どころに電波塔のある大きな森が存在する。
  • 原住者:S=テルセア(テルセアの後継者の意味、ロボット)。本土にのみ存在する。銀色の金属製で、四角柱に四角錐を乗せたような形状を持つ大型の四足歩行ロボット。「エリア」ごとにわかれて存在している。かつての主人たちが存在しなくなった後も、仲間のS=テルセアを補充しながら活動を続けている。普段はのんびりと行動しているが、侵入者に対しては意外なほどの敏捷性や攻撃能力を発揮する。仲間同士や、司政官の部下のロボットとパルスで通信できる。
  • 植民者:不在。連邦軍の撤退直後。
  • 掲載:1975年2月号

扉のひらくとき[編集]

シゲイ・PPK・コウはすでに二つの惑星の担当を大過なくつとめた司政官。かつては司政官制度の意義を認めようとしない者たちへの怒りを原動力にして職務に邁進していたが、近頃はもはや自分には予期せぬことは起こらないのではないかという気持ちから来る倦怠感を自覚していた。そのような思いを振り払いつつ、原住者の定期移動を注視していたシゲイに対し、登録表現家であるグレイス・グレイスンという女性が面会を求めてくる。

  • 惑星:第一〇四星系第一惑星ゼクテン。三つの大陸が存在する。
  • 原住者:ゼクテア。二つの大陸にのみ存在する。額に角が生えており、小柄な鬼といった印象。150程の部族に分かれて生活している。部族によって主食とする作物が異なる。連作障害によって主食作物の収穫が減少すると、栽培に適した土地を求めて、惑星中のゼクテアが一斉に大移動を行う。普段は温厚だが、慢性的な栄養失調状態になると凶暴な性格に変わる。感情に連動して色が変化する皮膚を持つ。
  • 植民者:不在
  • 連載:1975年7月号 - 8月号

長い暁[編集]

連邦軍による強引な惑星統治の弊害を改めるため、連邦経営機構は新たに司政官制度を発足させ、惑星ミローゼンには司政官一期生であるヤトウ・PPK・キーンが赴任した。しかし、制度発足直後の司政官は実績皆無な上、司政機構も弱体で、実質的には駐屯軍の食客にすぎなかった。ヤトウは漂流していたところを救助した原住者の送還を口実に原住者社会の調査に向かう駐屯軍のメンバーに同行し、司政官直属のロボット・SQと共にヤ・ゴ・デ島の集落の一つであるタガノヤ地を踏む。ヤトウは、あわよくばこの調査の中で自分たち司政官の存在意義を少しでも実証しようとの思いを胸に抱いていた。

  • 惑星:第二〇一番星系第二惑星ミローゼン。高温多雨。大陸が一つもなく、様々な大きさの無数の島々が存在する。
  • 原住者:ミローゼア。身長は一メートル強ほど。島群域ごとに排他的な生活圏を構成して暮らし、外来者との交流は好まない。
  • 植民者:不在。連邦軍が駐屯中。
  • 連載:1980年2月号 - 9月号

消滅の光輪[編集]

マセ・PPKA4・ユキオの司政官としての最初の任地は、太陽が新星化の危機を迎えようとしている惑星ラクザーンであった。マセは、ラクザーンの全住民を他の惑星へ移住させるという空前のプロジェクトを、かつての強大な権限を失いつつある司政官制度の下で遂行しなければならなかった。

  • 惑星:第一三二五星系第一惑星ラクザーン。主要産業は三種類の海藻の採取・販売。
  • 原住者:ラクザーハ(先住者と呼ぶ)
  • 植民者:存在
  • 連載:1976年2月号 - 1978年10月号
    当初は中篇の予定で連載が始められ、第1回は「前篇」、第2回は「中篇」だったが、第3回は「後篇・その1」となり、その後延々とカウントアップして一大長編となり、2年半余りを費やしてようやく完結した。
  • 単行本:早川書房、1979年/ハヤカワ文庫JA、1981年(3分冊)/ハルキ文庫、2000年(3分冊)/創元SF文庫、2008年(2分冊)
  • 1979年に第7回泉鏡花文学賞、第10回星雲賞を受賞した。

引き潮のとき[編集]

キタ・PPK4・カノ=ビアは、自らの出身惑星であるタトラデンの司政官に任じられる。この異例の人事の裏には、タトラデンを中心とする星区の連邦経営機構からの独立・ブロック化の動きを阻止するという、極秘の使命があった。キタは、故郷への愛憎を秘め、タトラデンの人々にも、己の配下であるロボット官僚にも真の目的を明かさぬまま、司政官として表と裏の任務を遂行する。

  • 惑星:第一〇〇三星系第三惑星タトラデン
  • 原住者:ブバオヌ
  • 植民者:存在
  • 連載:1983年2月号 - 1995年2月号
  • 単行本:早川書房、1988年 - 1995年(5分冊)/黒田藩プレス、2006年 - (新書版、既刊2冊)
  • 1996年に第27回星雲賞を受賞した。

シミュレーションゲーム[編集]

ツクダホビーから発売されていたウォー・シミュレーションゲーム「司政官」は本シリーズを原作とする。

ロゼという原作にはない、オリジナルの惑星を舞台とし、「司政官」「原住民」「植民者」「連邦事業体=連邦軍」の4プレーヤーでプレイする。「原住民」と「植民者」はそれぞれの生存エリアを拡張し、「連邦事業体=連邦軍」が整備するインフラに雇用されるなどで勝利ポイントを得る。「連邦事業体=連邦軍」はインフラを整備し、資源を売却することによって勝利ポイントを得る。これら3プレーヤーはほかのプレーヤーよりも多くの勝利ポイントを稼ぐことで勝利を目指すが、「司政官」プレーヤーは、他の3プレーヤーの行為をロボット官僚ユニットを駆使してキャンセルさせるなどの行為が可能となっており、3者の勝利ポイントの均衡を一定範囲内に保つことが勝利条件となる。4者ともそれぞれの戦闘ユニットを作ることができ、武力紛争の局面を迎えることもある。

関連項目[編集]