ミニディスク
ミニディスク (MiniDisc) は、ソニーが1992年に発表した、デジタルオーディオの光学ディスク記録方式、および、その媒体である。略称はMD(エムディー)。
アナログコンパクトカセットを代替するという目標が開発の背景にあった。
目次 |
[編集] 音楽MD
初期の音楽MDの規格は "Rainbow Book"と呼ばれている。
[編集] メディア
音楽MDメディアは直径64mm(2.5インチ)・厚さ1.2mmのディスクが横72mm、縦68mm、厚さ5mmのカートリッジに封入された構造になっている。このため傷やほこりが付きにくく、取り扱いが容易である。
ディスクには再生専用ディスクと録音用ディスク、ハイブリッドディスクの3種類が規定されている。ただし、2000年代以降に流通しているディスクはほぼ録音用ディスクである。
再生専用ディスクはCDと同様の構造の光ディスクである。録音用ディスクと異なりシャッターがディスクの裏側のみにある。登場当初はCDのように既成曲の入ったパッケージメディアが発売され、一時期はオリコンチャートも実施されていたが、以下のような理由で思いのほか普及せず、早い時期に生産が打ち切られた。
- CDでも発売されているタイトルをわざわざMDで購入するメリットを訴求できなかった。圧縮によりCDと比べて基本的に音質や情報量が劣ること[1]や、多くのユーザーから「MDはCDをコピーして外に持ち出すことのできるメディア」として認識されたことで、パッケージメディアとしてのMDの普及が進まなかった。
- 初期はポータブル機から普及が進んだため、据え置き型のMDレコーダーやMDデッキ搭載コンポーネントシステムが相対的に普及していなかった。そのため一般層が再生専用ディスクを購入しても、外出時と在宅時で使いまわしできなかった。
- ダブルMDデッキがダブルカセットデッキほどは普及しなかったため、複製がCDや音楽テープよりも面倒だった。また複製できても音質がCDからダビングしたものよりも劣っていた。
- ミュージックMDのレンタルサービスが無かった。
録音用ディスクは磁界変調オーバーライト方式により記録される光磁気ディスクである。シャッターはディスク両面にある。通常はユーザーが自身で録音を行うためのブランクディスクとして販売されている。ディスクタイプは当初ステレオモードで60分タイプのみだったが、1993年に74分タイプ、1999年に80分タイプ[2]が発売され3種となった。モノラルモードや各種拡張モードを使って録音した場合の分数はこれと一致しない。74分はディスクの回転速度を1.2m/sにすることで(60分は1.4 m/s)、80分はこれに加えてトラックピッチを1.5μmにすることで(60分と74分は1.6μm、規格上は1.5μm - 1.7μm)、それぞれ実現している。
ハイブリッドディスクは、再生専用エリアと録音用エリアの双方を持つ特殊ディスクである。現在は規格書上のみの存在と化しているものの、レンズ・ヘッド両用クリーナーで一部存在していた。再生専用エリアでレンズを、録音用エリアでヘッドをクリーニングするタイプであった。
[編集] フォーマット
曲情報はTOC (Table Of Contents) 領域に書き込まれる。トラックの移動・分割・結合・消去といった編集を行うこともできる。最大255トラックまで作成できるが、条件次第ではもっと少ないトラック数しか作れないケースもある。音楽データ以外に曲名などの文字情報の記録や編集、録音日時の記録などが可能である。漢字対応のレコーダーも存在している。TOCは0から31までの32セクタが存在するが、実際に使用されているのは0から4までの5セクタのみである。
なおセクタ3は再生専用ディスクでのみ使用され、CDと同じようにディスクのバーコードやISRC(International Standed Recording Code、曲ごとの固有データ)が記録される。
[編集] 録音モード
録音モードにはステレオとモノラルの2種類がある。モノラル録音モードではディスク額面表記の2倍の長時間録音ができるため、会議やラジオ番組の録音などに利用される。
どちらのモードで録音した場合も、ソニーが開発したATRAC (Adaptive Transform Acoustic Coding) 符号化方式で音声の非可逆圧縮が行われる。
ビットレートは通常ステレオ録音時で292kbps、モノラル録音時で146kbpsとなっており、これにより記憶容量が小さいMDメディアにおいてCDと同等の録音時間を実現している。
最初期のMD機器での録音ではエラー制御に容量を割いていたため、音声記録には現在の半分しか割り当てられていなかった。そのため音質が非常に悪かった。
なおATRACはスケールファクターが独立しているため、録音後に音量の調整などが可能である。この特徴は一部機器が「S.F.エディット」機能として利用している。
[編集] 著作権保護
MD機器には、SCMSおよびHCMSによるコピー制限が適用される。詳細は項目を参照。
据え置き型のMD機器にはMDドライブを2つ備えたものがあり、これらは2枚のミニディスク間でデジタルのままトラックの転送(ムーブ)を行えることが多い。しかしいずれもSCMSによる制限の範疇内の機能となっている。
例として1998年にソニーから発売されたMDS-W1はMDからMDへの曲の移動のみの対応で、コピーはできず移動元の曲は消える。また日本ビクターのダブルMDミニコンポはコピーが可能だが、機器内ではアナログ接続されている。尚ケンウッドのALLORAではCDを同時に2枚のMDにダビングできる機種も存在した。
[編集] 編集機能
MDは、録音後に編集が行える。アナログコンパクトカセットと違うのは、もう1台のデッキが要らないことである。
編集モードは曲をつなげるコンバイン (Combine)、曲を分けるディバイド (Divide)、曲順を入れ替えるムーブ (Move)、曲を消すイレース (Erase) の4つがある。なおイレースには、1曲を消すトラックイレース (Track Erase) と全内容を消すオールイレース (All Erase) がある。また、後述の文字入力も厳密には編集機能の1つである。またコンバインはつなげる曲が同じ録音モードである必要がある[3]。コンバインについては日本ビクターではジョイン (Join) と呼ばれた。
メーカーによっては、編集を一回でも行った場合に取り出し時にTOCエディットを行う方式と個々の編集終了後にTOCエディットを行う方式があるが、後者のは後からの文字入力などで何回も書き込むことになるためかなり編集時間がかかる。
[編集] クイック編集
ケンウッドのMD機器では、一時期クイックムーブ (Quick Move) とクイックイレース (Quick Erase) が搭載されていた。クイックムーブは20曲までの複数曲を1回の操作で移動できるモード、クイックイレースは1度の操作で複数曲を消去できるモードである。
普通のムーブやイレースでは移動または消去により曲順と曲名がずれ込む曲が出てくるがこのモードはそういった計算をしなくてすむため、便利だった。
[編集] 文字入力
MDでは文字入力が可能である。これはコンパクトカセットでは不可能な機能であり、MDユーザーを増やした一因とも言われている。MDには文字領域が2つあり、半角カタカナと英数字を記録するセクタ1と漢字やひらがなも入力可能なセクタ4がある。それぞれセクタ1はJIS X 0201で、セクタ4はシフトJISで記録される。セクタ1はほとんどの機器で扱えるが、最初期はカタカナを扱えない機種もあり、全盛期の機種でもチューナーがアナログ式の廉価MDシステムや一部のカーオーディオに存在した。セクタ4は対応機器が限られる。
セクタ4は1997年以降、コンポーネントステレオやシステムステレオの上級機種で入力対応された。漢字入力はデッキに「PC/AT用のキーボード」を接続して行えるパナソニックの機種も存在したが、ソニーのピクシー・システムステレオでは「PCリンクキット」(PCのシリアルポート・USBに接続するデバイス)の付属ソフト『Media Communicator』(NetMDの音楽転送機能を省いたもの)上やタッチパネル式リモコンで入力したタイトル情報を転送する形態がとられた(ただし、コンポでは本体画面にセクタ1表示のみの機種が多い)。2000年10月に発売されたMDデッキ搭載の「バイオMXシリーズ」では、PCリンクキット相当の機能が内蔵されている形となっている。NetMD・Hi-MD機種ではセクタ4の編集・タイトル表示が標準化されている。ポータブルMDにおいては、1999年8月にシャープから発売された「MT-832」において初めて「パソコン・ザウルス接続(PCリンクと同等)対応」と「漢字表示対応リモコン」が装備されたが、ソニーでは2001年10月にMDウォークマン「MZ-E909」以降の再生専用上位機種やNetMD対応の録再機種が発売されるまでセクタ4表示機能が搭載されずにいた[4]。データ領域はそれぞれ2332バイトあるものの、一部領域がトラック管理などで利用されるため半角約1700文字、全角約800文字に制限される。なお、半角カタカナも約800文字に制限される。これは、カタカナは内部でローマ字入力されているためで、それと一緒にカタカナ開始・終了のコードを打ち込むことで、カタカナ対応機器ではカタカナに変換されて表示され、カタカナ非対応機種ではローマ字とコードが表示される。
[編集] 録音日時の記録
MDには録音日時を記録する機能も搭載されている。日時情報はセクタ2に記録される。セクタ2の対応機器は主に生録が可能なもの、特にポータブルMDレコーダーに多い。
[編集] MDLP
2000年より導入されたMDLP (MiniDisc Long-Play mode) は従来の音楽MD規格に2倍、4倍の長時間録音モードを追加する上位規格である。
MDLPはメーカー・ユーザーのいずれからも歓迎され、登場から数年で市場において従来型の音楽MD機器を置き換えるに至った。現在では、MD機器には欠かせないモードとなっている。
[編集] 録音モード
追加録音モードはそれぞれLP2モード、LP4モードとよばれ従来のステレオモード(MDLP対応機器ではSPモードと呼ばれる)のそれぞれ2倍、4倍の録音時間が確保できる。
| モード名 | 符号化方式など | CH | 80分ディスク | 74分ディスク | 60分ディスク | 額面表記比 | 適した用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| SP-STEREO | ATRAC 292kbps | ステレオ | 80分 | 74分 | 60分 | 1.0倍 | CDからの録音、音楽演奏の収音など |
| SP-MONO | ATRAC 146kbps | モノラル | 160分 | 148分 | 120分 | 2.0倍 | モノラル音源(ナレーション等)の録音など |
| LP2 | ATRAC3 132kbps | ステレオ | 160分 | 148分 | 120分 | 2.0倍 | 楽器の練習など |
| LP4 | ATRAC3 66kbps | ステレオ | 320分 | 296分 | 240分 | 4.0倍 | 会議やラジオの録音など |
LPモードの符号化方式には表のとおりATRAC3を採用しビットレートはLP2モードで132kbps、LP4モードで66kbpsとなっている。
LP4モードではステレオ音声の左右相関を利用して圧縮するJoint Stereoを導入することで、ビットレートの不足を補っている。これに関係してか、各LPモードにはいずれもモノラル2倍録音モードは用意されていない。また、ATRACと違いスケールファクターが存在しないため音量の調整も出来ない。
なお、これらLPモードのビットレートはSPモード (292kbps) の2分の1、4分の1より若干小さい数値になっている。これは、MDLP非対応機器でLP形式のトラックを再生した際に問題が起こるのを避けるために各サウンドグループ(212バイト)毎に20バイトのダミーデータが挿入されているためである。
[編集] 互換性
MDLP規格で録音されたディスクはMDLP非対応機器でも認識が可能で、そのうちSPモードで記録されたトラックは正常に再生ができる。ただし、LP2・LP4モードで記録したトラックを再生すると曲名欄には「LP:」と表示され、音声が流れない。
なおMDLP対応機器は従来型音楽MDとの上位互換性を確保しているため、従来機器で記録されたディスク・トラックの再生が問題なく行える。SPモードでの録音も可能である。
このように、MDLPにおける互換性は比較的高いのが特徴である。これはMDLPが録音モードの追加を目的としているため、ディスク・ファイルフォーマットなどが従来のまま引き継がれたことが大きい。しかしこのことで従来の制約(ディスクあたりに記録できるトラック数は最大255トラック迄、及び入力できる文字数は最大半角約1700文字・全角約800文字)までも引き継いでしまったため、使用法によってはせっかくの長時間録音を生かせない(残記録可能時間に余裕があるのに録音できない、条件次第では全曲に曲名をつけられない等)という問題が発生した。
MDLP4で長時間録音したタイトルをディバイド(分割)する時は、MDLP非対応機種でディバイドした方が早い。MDLP4で録音したタイトルをMDLP非対応機種にかけると音は出ないが時間表示は半分で表示されディバイドなどは可能なため、非対応機種で30分ごとでディバイドしたのを対応機種にかけると1時間ごとにディバイドされている。その際に時間も半分になっているので早送りも半分になるので本来録音したMDLP対応機種でやるより短時間で済む。これは、ラジオ番組などをMDLP4で5時間録音したのを手早くディバイドする時に有効な手段である(但し、音が流れないため分割ポイントの確認はできない)。
MDLP録音したタイトルをSONYのW1にてディスク間ムーブで他のMDに移動するとモノラル録音の無音タイトルになってしまう。
[編集] グループ機能
2001年にはMDLPグループという機能が登場した。
これは、ディスク内の各曲を幾つかのグループに振り分けることで簡易的なフォルダ分けを行う機能。前年のMDLPの導入で1ディスクあたりの録音可能曲数が増えたことが図らずもトラックの閲覧性の低下を招いており、グループ機能の導入はこの問題に対する解決策となった。
なお、この機能には以下のような制約がある。
- 作成できるグループの数は最大で99である。各グループ名の長さによってはこれより短くなることもある
- 複数の曲をひとつのグループに入れる場合、それらのトラック番号は必ず連続していなければならない。もし散在している場合はグループ化する前にトラックの並べ替えを行い、連番に直す必要がある
- グループ非対応機ではグループ機能は利用できず、ディスクタイトルに管理用の文字列がそのまま表示される
実際に記録されるグループ情報は、従来から存在するディスクタイトル領域に一定の書式に従って入力された文字列である。したがって、グループ機能に対応していないレコーダーでもタイトル入力機能があれば手動でグループ情報を入力することができる。
- グループ機能の書式の例
- 0;WikiMD//1-5;J_Pops//6-11;World//
この例の場合、ディスクタイトルはWikiMDとなり1曲目から5曲目までがJ_Popsグループ、6曲目から11曲目までがWorldグループに振り分けられる。
[編集] Net MD
Net MDは、MD・PC間の音楽転送規格。2001年6月27日にソニーによって発表された。このシステムは、当時流行の兆しを見せていた機器内蔵のフラッシュメモリや(MS・SDなどの)リムーバブルメディアを記録媒体とするデジタルオーディオプレーヤーのようにPCに録りためた音楽を転送して持ち出すスタイルをMDに持ち込んだ。登場当初はフラッシュメモリが非常に高額であったため、MDは当時のメモリーカードや内蔵メモリタイプのオーディオプレーヤーに比べて、容量単価が非常に安価であった。
Net MD対応機器としては、単品コンポーネントデッキ・Net MD ウォークマンなどの対応ポータブルMD・オーディオコンポ・パソコン内蔵Net MDデバイスがソニーをはじめとする各社から発売された。MD機器を発売する殆どのメーカーが参入したため、後述のHi-MDよりも採用メーカーは多い。
MD機器とPCの接続にはUSBを使用・もしくはPCに内蔵されているNet MDデバイスを用いて、SonicStage(旧OpenMG JukeBox)・BeatJamにてATRAC3方式へリッピングとOpenMGで暗号化した、もしくはEMDで購入・ダウンロードした音楽ファイルをMagicGateでPCとNet MD機器間を認証し相互転送する。Net MD機器でのMDへの録音・転送はATRAC3(MDLP相当)もしくはATRAC(SP相当)となるため、記録内容は従来のMD (MDLP) プレーヤーでも問題なく再生できる事が利点として宣伝された。ただし、編集は一部制限される。またPC側でMD機器側と接続制御するソフトウェアの制限などによりPC側のソフトウェアに履歴の無い楽曲データ、つまり別のPCでMDに書き込んだものをMDから読み込むことは不可能になっている。また同様に、以前に古い機種でMDにアナログ録音したような資産(旧ATRACでSP録音されたもの)をPC上に取り込むことも一部機種を除いて不可能になっている。
2001年10月以降にソニーから発売されたミニタワー型デスクトップPCのVAIOMXシリーズではNet MDドライブが本体に搭載され、2002年に発売されたVAIOノートNVシリーズでは付け外しが可能な「Net MDベイユニット」がオプションもしくは標準装備された。これはPCにリッピングした音楽ファイルをそのままNet MDへ転送(チェックアウト)出来る機能を謳っていたものである。当初はチェックアウト回数が一律3回までとなっていた(同一ファイルは同時に3台までの機器・MGメモリースティックに転送する事が可能)。チェックアウト回数を超えて別の機器に転送したい場合はチェックアウト済みの機器からPCへチェックイン(ムーブ)させて、カウント回数を戻す必要があった。2004年発表の「SonicStage2.3」以降のバージョンでは、音楽CDなどからリッピングしたファイルについてはチェックアウト回数の制限が撤廃されている(個人の私的範囲内の利用に限る)。
2004年にHi-MDが発表され、その後各機器は順次Hi-MDへ移行しているがHi-MD機器であってもNetMDモードとして記録可能なものも多い。2009年現在流通しているNet MD対応機器はMZ-N920(ソニー・録音再生対応MDウォークマン)、MZ-RH1(ソニー・録音再生対応Hi-MDウォークマン)となっている。
NetMDのデバイスドライバは2007年発表の「Sonic Stage CP」のバージョンまではOpenMG機器として認識され、チェックアウト操作などが可能であるが、2008年発表の新バージョンである「Sonic Stage V」ではNetMDに非対応とした。このため、旧バージョンである「CP (4.4)」のソフトウェアダウンロードを継続している。なお、ソニーでは当初NetMD機器の動作保証OSをWindows XPまでとしていたが、MZ-RH1については2010年10月リリースの「X-アプリ Ver.2.0」が対応した事でWindows Vista・Windows7にも正式対応となった。
[編集] Hi-MD
Hi-MD(ハイエムディー)は高音質化や長時間録音、PCとの親和性向上など多岐に渡る拡張がなされた規格。2004年1月8日、ソニーによって発表された。音楽MDの拡張規格という形がとられているが、PCデータや写真などの保存も想定されている。
以前の音楽MD・MDLP・Net MDからの主な変更点や特徴は次の通り。
- 新たに発表された大容量ディスクを使い、最大45時間もの超長時間録音ができる
- 従来のディスクはHi-MD用に初期化することで、以前の約2倍の容量で利用できる
- 48kbpsから352kbpsまでの、幅広い用途に使える圧縮録音モードが追加された
- MDでは初となる、44.1kHz、16ビットリニアPCMによる非圧縮録音モードに対応した
- 録音したトラックをPCに吸い出せるようになった
- PCからミニディスクをストレージメディアとして利用できるようになった
- 別売りのHi-MD専用カードリーダーを使用して、HI-MDモードのディスク(従来MDを初期化したものを含む)へ画像データの転送ができる
- USBメモリと同じように文章のファイルや音楽ファイルはもちろん、写真のファイルも保存可能である
- DCF・Exifをベースにした写真管理用規格Hi-MD PHOTOを追加
- これにあわせ、音楽用規格の名称はHi-MD AUDIOに変更
- Hi-MD AUDIOの対応コーデックにオプション扱いでMP3を追加
Hi-MDは従来のMD機器をベースに、普及が拡大している記録装置内蔵型デジタルオーディオプレーヤーへの収斂を試みた規格と考えられている。しかし規格発表と同じ2004年にはソニーもHDDタイプのウォークマンを投入、その後は専らそちらに力を入れるようになった。ソニー以外のメーカーでHi-MD製品を投入しているのはオンキヨー・バッファロー(ソニーから海外向けウォークマンをベースとした機種をOEM供給)等数社であり、MDLPやNet MDほどの成功は得られていない。
2008年時点ではオンキヨーのHi-MDデッキ2機種 (MD-133・MD-105FX) と、ソニーの「Hi-MDウォークマン・MZ-RH1」録音再生機1機種が流通しており、2004年 - 2005年にかけて発売されたオーディオコンポやMZ-DH10P(Hi-MD Photoに対応したデジタルカメラ付きHi-MDウォークマン)などは全機種生産終了している。このMZ-RH1は2006年4月に発売され、現地点で最新のHi-MD機器でかつ最後に発売されたMDウォークマンとなっている。また日本国外向けにはほぼ同様の機種が「MZ-M200」として発売されているが、普及率の関係から業務用扱いとなっている。(2010年9月現在、オンキヨーのHi-MDデッキ2機種は、生産が完了している。) 2011年7月には、MZ-RH1とHi-MDディスク「HMD1GA」の生産・販売終了がソニーから発表され[5]、通常のMDより早くHi-MD規格が終焉することになった。
[編集] メディアとフォーマット
Hi-MDフォーマットでは信号処理技術が変更されたことで高密度化され、従来に比べ大幅な大容量化を実現している。
80分、74分、60分の従来型ミニディスクは、Hi-MDフォーマットで初期化することで約2倍の容量を持たせることができる。例えば80分ディスク (177MB) は、Hi-MD機器で初期化すると305MBの容量になる。
一方で、Hi-MDフォーマット専用の大容量ディスクも追加された。このディスクは1GBの容量を持ち、Hi-MD AUDIOの最低音質 (48kbps) では45時間の録音ができる。発売当初の価格は1枚700円前後。
ただし最低音質の48kbpsは音楽としては実用的なビットレートではない。音楽の場合最低64kbpsほどは必要とされるため、48kbpsはラジオ録音などの用途向けといえる。
ファイルシステムにはFATを採用している。パソコンからMOやDVD-RAMやUSBメモリのように、大容量の外部記憶メディアとして手軽に利用できるものとなった。なおHi-MD AUDIO機器から利用される音楽トラックもFAT領域に格納されているがPCからは不可視の"Proprietary Area"に記録された情報により暗号化されているため、SonicStageなどの対応ソフトウェア以外ではPC上での再生・コピーを行うことはできない。
[編集] Hi-MD AUDIO
[編集] 録音モード
Hi-MD AUDIOでは多くの録音モードがサポートされ、幅広い用途に対応できるようになった。しかし録音操作の複雑化を避けるためか録音モードの多くはPCからの転送のみの扱いとなり、Hi-MD機器本体のみで録音できるモードは3モードに絞られている。
また、MD創生期から利用されていたATRACの両モード (292kbps、146kbps) は廃止となった。このため、Hi-MD機器でこれらのモードを利用したい場合には従来フォーマットでディスクを使う必要がある。
Hi-MD AUDIOが対応する録音モードは以下のとおり。
- ATRAC3plus 352kbps、256kbps、192kbps、64kbps、48kbps
- 256kbpsはHi-SPモード、64kbpsはHi-LPモードと呼ばれHi-MD機器単体で録音ができる。
- 一方で352bps、192kbps、48kbpsにはモード名が無く、録音手段はPCからの転送のみとなっている。
- ATRAC3 132kbps、105kbps、66kbps
- いずれもPCからの転送のみ対応。132kbps、66kbpsはMDLPで導入済みだが105kbpsはHi-MD AUDIOで新たに追加された。このビットレートは従来からネットワークウォークマンなどで利用されていたがMDには導入されていなかったため、使いまわしに難があった。なおビットレートという概念が一般的になったためか132kbps、66kbpsの呼称として従来使われていたLP2、LP4というモード名は基本的に廃止されている。
- リニアPCM (1.4Mbps)
- 無圧縮モード。従来のMDはどの録音モードでも必ず非可逆圧縮がかかっていたため高音質を求める層には敬遠されていたが、これが追加されたことでそれらの層にもアピールできるようになった。
- また、これにあわせてソニーからはHi-MDの音声トラックをPC上で汎用のWAV形式に変換するWindows用のソフトウェアWAV Conversion Toolが無償公開された。なお、現在この機能はSonicStageに統合されている。
- なお変換元トラックの録音モードはPCMに限らずどれであっても問題ないが、いずれの場合でもディスクがHi-MDフォーマットのみに限定されている。
- MP3 32kbps - 320kbps
- 2005年春の規格拡張で追加されたコーデック。サンプリング周波数は44.1kHz、ビットレートは32 - 320kbps(固定・可変両対応)とされている。PCからの転送においては、他のコーデックと同様にSonicStageなどの専用ソフトウェアで暗号化を行う必要がある。
- なおこのコーデックはオプション扱いであり、2005年春以降のすべてのHi-MD AUDIO機器が再生に対応するわけではない。
| モード名 | 符号化方式など | 録音手段 | 1GBディスク | 80分ディスク | 74分ディスク | 60分ディスク | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| PCM | リニアPCM 1.4Mbps | 本体・PC | 約1時間34分 | 約28分 | 約26分 | 約21分 | MD初の無圧縮モード。 |
| Hi-SP | ATRAC3plus 256kbps | 本体・PC | 約7時間55分 | 約2時間20分 | 約2時間10分 | 約1時間45分 | |
| Hi-LP | ATRAC3plus 64kbps | 本体・PC | 約34時間00分 | 約10時間10分 | 約9時間25分 | 約7時間40分 | |
| 名称なし | ATRAC3plus 48kbps | PCのみ | 約45時間00分 | 約13時間30分 | 約12時間30分 | 約1時間45分 | |
| (旧・LP2) | ATRAC3 132kbps | PCのみ | 約16時間30分 | 約4時間50分 | 約4時間30分 | 約3時間40分 | |
| 名称なし | ATRAC3 105kbps | PCのみ | 約20時間50分 | 約6時間10分 | 約5時間40分 | 約4時間40分 | |
| (旧・LP4) | ATRAC3 66kbps | PCのみ | 約32時間50分 | 約9時間50分 | 約9時間00分 | 約7時間20分 | |
| 名称なし | MP3 128kbps | PCのみ | 約17時間00分 | 約5時間00分 | 約4時間30分 | MP3対応機種のみ再生可能。 これ以外にも多くのレートが利用できる。 |
[編集] 互換性
Hi-MD専用ディスクは従来の音楽MD・MDLP機器からは一切の認識・再生が出来ず、Hi-MDフォーマットで初期化された従来ディスクはディスク名がHi-MD DISCと表示されるだけで編集や再生はできない。一方、Hi-MD AUDIO機器側では従来の音楽MD・MDLP規格との上位互換性を確保している。このため従来規格で録音されたディスクの再生(従来規格での録音は一部機種のみ)が可能となっている。
[編集] Hi-MD PHOTO
Hi-MD PHOTOは、2005年春のHi-MD規格拡張の際に発表された画像記録用規格。
ベースはデジタルカメラのアプリケーションフォーマットとしてデファクト・スタンダードとなっているDCF・Exifだが、独自にサムネイル用キャッシュファイルの仕組みを追加することで画像閲覧の高速化を図っている。
この規格の発表と同時に、対応機器の第1弾であるHi-MDウォークマン「MZ-DH10P」が発表された。この機種は約130万画素のCMOSカメラと1.5インチのカラー液晶を内蔵しており、撮影した画像はHi-MDへ記録される。またHi-MD AUDIOにも対応しているため、音楽再生中に写真をスライドショー再生する機能や内蔵カメラでCDなどのジャケットを撮影してHi-MD AUDIOトラックのジャケット画像として登録する機能なども用意されている。
[編集] MD DATA
音楽用MDの数年後には、MDをデータ記録用に活用するMD DATAも開発された。容量は140MBで、ファイルフォーマットには特定のOSに依存しない独自のものを採用していた。
記録ディスクにはMD DATA専用のものが用いられており、音楽用ディスクとはシャッターのサイズが異なっている。非公式ではあるが安価な音楽用ディスクをMD DATAドライブにてフォーマットすることで使用可能であった。
容量が当時の3.5インチMOと同等だったことやコンパクトさから普及が期待されたが、読み書き速度が極端に遅い (150KByte/s) などの理由により敬遠され、PC用メディアとして普及することはなかった。
PC用ドライブはソニーが1993年7月に発売したSCSI接続のポータブル型ドライブMDH-10が唯一の存在で、このドライブは通常のポータブルMDプレーヤーとしても利用ができた。
一方、PC以外ではソニーの自己完結型スキャナDATA EATAやヤマハのマルチトラックレコーダーMD4S、MD8、デジタルカメラなど多岐に渡る製品で利用され、一部には現在でも使用されているものもある。
また、MD DATAで画像を扱うための規格としてPicture MDがある。この規格の採用製品はデジタルカメラが主で、ソニーのMDサイバーショット (DSC-MD1) やシャープのMDデジタルビューハンター (MD-PS1) などがある。
なおPicture MD規格で規定された要素はMDを使用しないタイプのソニー製デジタルカメラにおいてもそのまま流用され、初期のサイバーショットではPicture MD規格準拠の画像形式(JPEGベース、拡張子pmp)が使われていた。
[編集] MD DATA2
1996年末、容量を650MBに大容量化し転送速度を9.4Mbpsに高速化したMD DATA2が発表された。
1999年末に発売されたMDビデオカメラMD DISCAM(ソニーDCM-M1)で初採用され映像記録にMPEG-2、音声にATRACを利用し動画は最大20分、静止画約4,500枚、音声最大260分が記録できた。
MDのランダムアクセス性を生かしたカメラ単体でのノンリニア編集や10BASE-TによるPCとの連携に対応するなど意欲的なカメラだったが、後継機種が出ないまま市場から消えていった。
製品としては一世代限りのものとして終わったが、この製品がビデオカメラの世界に持ち込んだディスクの利便性はDVDビデオカメラとして花咲くことになる。なお、DVDビデオカメラはこの僅か半年後の2000年8月に日立製作所が初めて市販化(DZ-MV100)し、ソニーは2004年に国内で発売したDVDハンディカムで追従する格好となった。
[編集] 普及と衰退
CDが世界に広く普及したのに対し、MDは日本市場には普及したものの、日本国外では殆ど普及しなかった。事実上、MDは日本独自のメディアフォーマットになっている。MDに用いられているATRACも事実上日本独自のフォーマットと化している。実際、ネットワークウォークマンの海外向けモデルでは2007年秋頃からATRACへの対応が打ち切られている。
当初はソニーが海外向けにウォークマンのみならず据置型デッキ・ミニコンポ・カーオーディオ機器を開発・発売し、オーバーシーズモデルのカタログにも掲載されていた。一部完全な海外専用モデルも存在したが、現在はHi-MDウォークマン・MZ-M200が販売されているのみである。
その結果、現在販売されている海外向けオーディオ機器はCDとコンパクトカセットが主流である。
2011年現在、iPodやメモリータイプのウォークマンなどのデジタルオーディオプレーヤーの普及によりMD市場は衰退の一途をたどっている。特にポータブルMDプレーヤー/レコーダーに関しては2007年3月以降パナソニックを皮切りに各メーカーが次々と生産、販売から撤退し、ソニー製の録音・再生対応Hi-MDウォークマン、MZ-RH1が唯一現行機種としてカタログに残っていたが、2009年10月頃には取り寄せ不可になる販売店が出始め、2011年7月7日にはソニーから「MZ-RH1の生産、出荷を2011年9月をもって完了する」と発表された。しかし、ソニーの予想を大幅に上回る駆け込み需要が発生し、予定より早く2011年8月にMZ-RH1の生産を完了した。ポータブルMDに必須のガム型電池の生産の大幅な縮小も進みこれにより、新品で購入可能なポータブルMDは事実上、市場からほぼ完全に姿を消した。
据置型デッキ・ミニコンポ・MDシステムについては、ラジオ放送や地上・BSデジタル放送の録音用およびMDからハードディスク、内蔵メモリー(JVCのMemory COMPOシリーズなど)などへのダビング用途や、パソコンやメモリーなど利用しないでCDなどからデジタルで高音質録音という点では需要がある。ただし、2011年に入り、各メーカーが相次いでMD搭載のミニコンポ、ラジカセ等の生産を終了している。パナソニック(MD搭載最終機種:SC-PM870SD)、JVC(MD搭載最終機種:UX-Z2)、ケンウッド(MD搭載最終機種:MDX-L1)、シャープ(MD搭載最終機種:SD-FX200)などは、2011年6月までにMD搭載機種を全て生産終了とした(シャープに関しては、オーディオ事業そのものから事実上撤退している)。いずれのメーカーも「需要の減少」(パナソニック)や「MD機構部品の調達が困難」(JVC、ケンウッド)ということを理由としている。2012年1月現在、開発元であるソニーの日本国内向け製品でMDが搭載されているのは、オールインワンコンポ「CMT-M35WM」(MDからウォークマンに録音可能)の1機種のみである(システムステレオ『NETJUKE』シリーズのNAS-M700HDは生産終了となった。)。また2012年1月現在、ソニー以外の日本国内向け製品の場合でMDが搭載されているのはオンキヨーのX-N7NX(D)(CD/MDチューナーアンプ+スピーカーシステム一式セットモデル)およびFR-N9NX(S)(CD/MDチューナーアンプ単品モデル)が該当する。据置型デッキについては、ティアックから業務用(TASCAMブランド)向けに販売されているのみで、民生用の製品はすべて生産が終了している。
カーオーディオについては1DIN規格のMDチューナー、CD/MDチューナー、各メーカー専用品のMDプレーヤーは数機種にとどまっているが2DIN規格のMP3対応CD/MDチューナーは近年でも取り揃えてあるが、AVカーナビゲーションの分野からはMDは消滅している。
[編集] 注釈
[編集] 関連項目
- レガシーメディア
- 音響機器
- デジタルコンパクトカセット (DCC) - MD開発当時の競合規格
- CDレコーダー - MDレコーダーよりも普及率は乏しかったが現在も生産されている。
- DAT
- デジタルマイクロカセット (NT)
- MDデッキ
- ソニーのMDメディア製品一覧
[編集] 外部リンク
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