サンプリング周波数

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サンプリング周波数(サンプリングしゅうはすう)は、音声等のアナログ波形を、デジタルデータにするために必要な処理である標本化(サンプリング)で、単位時間あたりに標本を採る頻度。ふつう使われる単位はHz

サンプリングレート、サンプルレートとも呼ばれる。

概要[編集]

ある波形を正しく標本化するには、波形の持つ周波数成分の帯域幅の2倍より高い周波数で標本化する必要がある(これをサンプリング定理と呼ぶ)。

逆に、サンプリング周波数の1/2の帯域幅の外側の周波数成分は、復元時に折り返し雑音となるため、標本化の前に帯域制限フィルタにより遮断しておかなければならない。

音楽CDで使用されるサンプリング周波数は44.1kHzであるため、直流から22.05kHzまでの音声波形を損なわずに標本化できる。あらかじめ、カットオフ周波数20kHzないし22kHz程度のローパスフィルタで前処理が行なわれているが、可聴域の上限20kHzにほぼ一致しているため、実用上問題なく音声を再現できることになる。理論的には22.05kHzまで伝送可能だが、いかに急峻な減衰特性を持つフィルタといえども無限の減衰勾配を持つことはできない。22.05kHz以上で所定の減衰特性を持ち、かつできるだけ広い通過帯域と許容できる位相特性を持つフィルタとして、古いCDでは20kHz前後のカットオフ特性が選ばれることが多く、20kHzあたりから急激に減衰し21kHz付近でほぼ音は出なくなっていた。ただし、20kHz以上の高調波成分も、実際は聞く事が出来ていて、音色の違いとして感知できるという説もあり、カットしてしまうことは好ましくなく、アナログレコードの方が優れているという意見の根拠とされている。そのため現在ほとんどのCDでは22kHzぎりぎりまで音が出るようになっており、スペクトラムアナライザーソフトで容易に確認できる。

また数々の実験によって記録する周波数帯域が広い=高いサンプリング周波数を採るほど、パルスなど瞬間的な音の反応が良い、ノイズが抑えられるなどのメリットが確認されている。

また、フィルム映画テレビジョン信号も、本来時間的に連続した画像を離散的な時刻で撮影した「コマ」を記録・再生するので、フレームレートも広い意味でのサンプリング周波数ととらえ、三次元ビデオ信号処理として扱われる。これは特にフレームレート変換を伴う方式変換技術や、インターレース/プログレッシブ走査変換、フレーム間圧縮を伴う高効率符号化技術などでは重要な概念である。

サンプリング周波数の選択[編集]

サンプリング周波数は、原理的には標本化すべき原信号の最も高い周波数成分(帯域幅)の2倍より高い任意の周波数でよいが、放送や録音などでは一度決めると互換性の点から変更することが難しい。T1回線の電話の8kHzのように「キリのよい」周波数が選ばれるとともに、既存のシステムとの互換性(または非互換性)をもとに選ばれることも多い。

CD-DAなどのサンプリング周波数44.1kHzは、一見するとキリの悪い意味のない周波数に見えるが、これはPCMプロセッサーに由来する。すなわちテレビとその映像信号の水平同期周波数15.75kHzの 3×(14/15)倍である。1水平走査内に6標本(ステレオ各チャンネル3標本ずつ)をビデオ信号の形に変調して記録する。PCMプロセッサーで利用したVTRでは、垂直帰線区間ヘリカルスキャン方式の回転ヘッドの切替えタイミングとしており記録に使えないため、その付近の各フィールド毎17.5本(総走査線数の1/15)の走査線の部分を使っていない。

ただし、カラーテレビ放送NTSCの水平同期周波数は(約)15.734 kHzで、VTRには15.734 kHzのものと15.75 kHzのものが混在していたため、サンプリング周波数も44.056 kHzと44.1 kHzが混在していた時期があった(CD-DAでは44.1 kHzに統一されている)。(NTSCのHSYNCは正確には 15.75 × 1000 / 1001 = 15.73426573426...(kHz) で、15.73426573426... × 3 × 14 / 15 = 44.0559440559... ≒ 44.056、15.75 × 3 × 14 / 15 = 44.1)

1970年代に世界で初めて実用デジタル音楽録音を実現した日本コロムビアのDN-023R(PCMプロセッサーではない)では、どれかのヘッドが常に記録状態にあり、垂直帰線区間も全てそのまま記録できる2インチVTRを改造・使用したので、映像信号のすべてに記録でき、サンプリング周波数は47.25kHzと、水平同期周波数15.75kHzのちょうど3倍となっている。

1980年代末に開始した日本における衛星放送(や、のちのDVDなど)の音声は48kHzのサンプリング周波数を使っている。これは、より高い周波数により高品質という理由の他に、衛星放送開始時の意図には、変換を面倒にし、当時普及し始めていたCDへのデジタル-デジタルでの録音とダビングを防ぐという理由があった。整数比の関係にない非互換な選択の例である。当時のパソコンの性能では実用的に周波数変換を行うことなど不可能であった。

各種のデジタル化された音声信号のサンプリング周波数
信号 音声周波数帯域 サンプリング周波数 備考
YouTube 8kHz YouTubeモバイルの動画のサンプリング周波数(旧方式)
YouTube 22.05kHz YouTubeの動画の標準画質のサンプリング周波数(旧方式)
YouTube 44.1kHz YouTube(モバイル含む)の動画のサンプリング周波数(新方式)
旧方式の高画質モードも同じサンプリング周波数
日本コロムビアPCM録音機 47.25kHz 放送用バーティカルスキャン型VTRを使用
EIAJ PCM録音機 20Hz~20kHz 44.1kHz ベータマックスUマチックなどのヘリカルスキャン型VTRを使用
CD-DA 20Hz~20kHz 44.1kHz ヘリカルスキャン型VTRを使用したPCM録音機との互換性
MD/Hi-MD Audio 20Hz~20kHz 44.1kHz
DCC 20Hz~22kHz(48KHz) 48kHz,44.1kHz,32kHz
DVD-Video 48kHz,96kHz
DVD-Audio DC~88kHz(192KHz) 48kHz,96kHz,192kHz 44.1kHz,88.2kHz,176.4kHzにも対応。
HD DVD 48kHZ,96kHz,192kHz
Blu-ray Disc 48kHz,96kHz,192kHz
miniDVビデオ 32kHz,48kHz
DAT 20Hz~22kHz(48KHz) 32kHz,44.1kHz,48kHz ごく一部のメーカー【パイオニア製等】に限り88.2kHz,96kHzのハイサンプリング記録をサポート。
NT
(デジタルマイクロカセット)
20Hz~15kHz 32kHz
リニアPCMレコーダー 20Hz~44kHz(96KHz) 44.1kHz,48kHz,96kHz ごく一部の機種に限り96KHzのハイサンプリング記録は非サポートの場合がある。
デジタルケーブルテレビ 48kHz
デジタル衛星放送テレビジョン 48kHz
CS-PCM放送 20Hz~22kHz(48KHz) 32kHz,48kHz
電話(ISDNなど) 300Hz~3.4kHz 8kHz いわゆるIP電話ではなく、旧来の公衆回線のデジタル交換システム
電話(高音質IP電話) 100Hz~7kHzまたは14kHz 16kHzまたは32kHz 高音質IP電話、または G.711.1 Annex D[1]
Super Audio CD DC~50kHz 2.8224MHz 1.4112MHzまでの音が記録できる次世代CD規格の1つ。ライバル規格はDVD-Audio
DSDレコーダー DC~100kHz
(5.6448MHz)
5.6448MHz 2.8224MHzまでしか対応していないものもある。SACDの制作において、DSD録音をする際に使う。

※ Super Audio CD と DSDは、パルス密度変調であり、正しくは、デジタルデータではない。

サンプリングレートコンバーター[編集]

サンプリング周波数が異なる機器同士でも録音が出来るようにする装置を、サンプリングレートコンバーターと呼ぶ。

例えば、BSのBモード音声をMDに録音しようとすると、サンプリング周波数はそれぞれ48kHzと44.1kHzとなり、そのままでは録音ができない(機種にも拠るが、「No Copy」などのエラーメッセージが出る)。そこでサンプリングレートコンバーターを用いると、MDデッキ側でサンプリング周波数が44.1kHzに変換され、録音が可能になる。2005年現在のMDデッキやMDレコーダーのほとんどの機種にはサンプリングレートコンバーターが内蔵されている。

脚注[編集]

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  1. ^ http://www.ntt.co.jp/journal/1209/files/jn201209074.html

関連項目[編集]