DAT

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90分DATカートリッジ(単4電池は大きさ比較用)

DAT(ディー・エー・ティー、ダット、Digital Audio Tape)とは、音声をA/D変換してデジタルで記録、D/A変換して再生するテープレコーダーまたはそのテープ、また特にその標準化された規格のことである。

広義のDAT[編集]

DATは元来、デジタル音声テープ (digital audio tape) を指す一般名詞であり、コンパクトカセットなどのAAT (analog audio tape)、オーディオCDなどのDAD (digital audio disc)、DVカセットなどのDVT (digital video tape) などに対比される用語だった。現在では、デジタル音声テープの規格の1つを指すことが普通である。英語などの表記では、一般名詞は小文字始まり、規格は大文字始まりと区別することもある。

一般向けに商品化された、デジタル音声テープには、以下のようなものがある。

プロユースのものは、マルチトラックレコーダー#デジタルMTR(テープ)参照。また、PCMプロセッサーや、8ミリビデオのマルチトラックPCMモードも、デジタル音声テープと考えることができる。

1989年には、小型コンピュータ用のバックアップ用として、DDS が規格化されている。これも以下で説明するDAT規格をベースに開発されており、テープカートリッジの外形はまったく同じである。

規格[編集]

高密度な記録のため、VHSなどと同様、ヘリカルスキャンヘッド(回転式ヘッド)を採用している。カートリッジ寸法は、縦54 mm×横73 mm×厚さ10.5 mm。 DATテープ規格は、幅が3.8 mm、長さは 15分から180分の時間として表示される。長さの種類には15、46、54、60、74、90、120、180分があり、120分テープの場合、その実長は 60メートルである。なお、ラジカセ用のカセットテープのような表裏両面収録はできず、片面のみ収録である。

DATで使用されるモード一覧は下表の通り。複数のモードが存在するが、一般的な機器は、2つの標準モード、LPモード(オプション2)、ワイドトラックに対応している。ただし、ワイドトラックは再生専用規格で、この規格のソフトは発売されていない。ワイドトラックモードに使用予定のテープの磁性材料はバリウムフェライトを使用する予定だった。

また、DAT 規格でのミュージックテープ製造も模索されており、感熱転写での量産化方式を設計したが、後述する著作権問題との関係で、計画は頓挫した。結果的に市販のDATミュージックテープは48kHzでコピーガードのない少量生産品がわずかに存在した程度だった。カプリッチョ(ドイツ)等の海外マイナーレーベルの輸入品や、当時DATメディアを発売していた花王が独自制作したクラシック音楽(室内楽等)の作品等が該当する。

モード 標本化周波数 符号化 チャネル数 DT-120での録音時間
標準 (SP) 48 kHz 16 bit リニア 2 ch 120 min
標準 44.1 kHz 16 bit リニア 2 ch 120 min
オプション1 32 kHz 16 bit リニア 2 ch 120 min
オプション2 (LP) 32 kHz 12 bit ノンリニア 2 ch 240 min
オプション3 32 kHz 12 bit ノンリニア 4 ch 120 min
ワイドトラック 44.1 kHz 16 bit リニア 2 ch 120 min
WIDE / HS (パイオニア製の一部機種のみ) 96 kHz 16 bit リニア 2 ch 60 min
HR (ティアック(TASCAM)製の一部機種) 48 kHz 24 bit リニア 2 ch 60 min

加えて、パイオニア(現・パイオニアホームエレクトロニクス)の一部機種は独自モードとしてサンプリング周波数96kHzによるハイサンプリング記録および再生を扱う事が可能なモードを備える。民生用に限定すれば、D-07D-07AD-05D-06D-C88D-HS5の計6機種である。D-07のみ本体にWIDEと表記され、D-05以降の96kHzハイサンプリング対応機種は本体にHSと表記されている。

これは民生用の録音規格としては現在も最高水準である。しかし再生専用ではDVD-AudioSACDの音質には及ばない。一般にはあまり普及しなかったが、高音質を求める業務用、プロ用として利用されている。

またアイワでは、ポータブルデッキに専用アダプターを接続することで静止画像の記録にも対応する機種を発売した(HD-X1 + HDV-1)。

日本国内でDATテープを発売したのはソニー、松下電器産業(現・パナソニック)日本ビクター(現・JVCケンウッド)、TDK富士フイルムAXIAブランド)、日立マクセル日本コロムビア(現・ディーアンドエムホールディングス)、花王などである。2014年1月現在、DATテープを製造・販売しているのはソニーのみである。

歴史[編集]

各社が相次いで開発した、磁気テープにデジタル音声を記録する規格を統一するため、1983年にDAT懇談会が設けられ、1985年に回転式ヘッドを用いるR-DAT(Rotaty Head DAT、回転ヘッド方式DAT)と固定式ヘッドを用いるS-DAT(Stationary Head DAT、固定ヘッド方式DAT)という2種類の規格が策定された。S-DATはメカニズムは簡便だが高密度記録に対応した固定式記録ヘッドの開発が困難で、対してR-DATの回転式ヘッドにはVTRでの実績があったこともあり、R-DATが「DAT」として商品化されることになった。なお、のちのDCC(デジタル・コンパクトカセット)はS-DATで定められたヘッドが固定式という部分は共通しているが、ヘッドや記録構造を大幅に簡略化し、圧縮記録を取り入れており、このときのS-DAT規格と直接のつながりはない。

サンプリング周波数は当初より48kHz、44.1kHz、32kHzに対応する予定だった。しかし、44.1kHzはCDと同じであり、CDの完全同一の複製が可能とあって日本レコード協会などの猛反発に遭った。紆余曲折の末、1987年に発売にこぎつけた民生用の製品は、苦肉の策として44.1KHzのデジタル入力録音が出来ない仕様となった。しかしこれが足かせとなって普及しなかったため、1990年にはSCMS(シリアルコピーマネジメントシステム)を搭載し、CDからの直接デジタル録音が1世代だけ可能で2世代目はアナログコピーは可能だがデジタルコピー不可である機種が登場した。ほぼ同時に普及が始まった衛星放送の音楽番組やミュージックバードエアチェックにも利用され、Aモード:32kHz、Bモード:48kHzに対応した。なお、業務用機にはSCMS機能制限がなかったために、音楽録音スタジオなどでは爆発的に普及した。また、持ち運びが出来るバッテリー駆動の製品を使って、野鳥の鳴き声や汽車、電車の走行音の録音など、野外での生録音を楽しむマニアも少なくなかった。

当初は民生用としてスタートした規格だが、民生用にしてはオーバースペックなほど高性能であり、早くから業務用としてプロの現場で活用され始めた。放送用素材やマスターレコーダー、アイドルやヒーロー等のイベント会場の音響として、盛んに利用された。そのためソニー「PCM-7040」など放送用・業務用の一部の機種では、SMPTEタイムコードが記録できるようになっている。

後期には高音質化の技術がいくつか導入された。16ビット録音でありながら20ビットや24ビット相当の解像度を実現するSBM(スーパー・ビット・マッピング)機能がアイワやソニー製DATに導入された。民生用は1993年にそのSBM対応第1号機「DTC-2000ES」を投入した。一方で、パイオニアはHS-DATと呼ばれる方式でを標準モードに対し2倍のサンプリング周波数をテープ速度と動作クロックを倍速にして88.2~96kHz録音を民生機器で実現した。民生用は1992年11月に96kHzハイサンプリング対応第1号機「D-07」を投入した。ちなみにDATのテープ速度を倍速で走らせる発想は、コンピューター用DDSドライブからヒントを得たといわれている。

パイオニアはさらにAIRSと銘打った録音システムを送り出す。D-07/07AをベースモデルにしたDATデッキD-9601とデジタルプロセッサーのSP-AR1を組み合わせ、96kHzサンプリングに加え24ビットまでワードレングスを伸ばしたもので、当時としては珍しい96kHz/24ビットフォーマットに対応していた。さらにD-9601はダウンコンバーターを内蔵し、96kHzから44.1kHzへダウンサンプリングした信号を同社のCDレコーダーRPD-500に接続し、アナログを介さずに音楽CDを作る事も出来た。このAIRSは業務用で、一般に普及しなかった。

その他TASCAMティアック)も、DATテープを倍速で駆動しHR(ハイ・レゾリューション)モードで24ビット録音に対応した業務用デッキDA-45HRを2000年に発売した。

終焉[編集]

1992年に登場したミニディスク(MD)が、価格面や使い勝手などの面から民生用オーディオ機器の主流となった。さらに1990年代末期に入るとMDの圧縮コーデック「ATRAC」のデータ圧縮時のアルゴリズムの大幅な見直しによる高音質化したほか、民生用CDレコーダーの普及も進んだ。そして21世紀に入ってからは、高圧縮のデジタルメディアである「MP3」、「WMA」、「AAC」などに代表される携帯型のデジタルオーディオプレーヤーが着実に普及。この間、DATのシェアは縮小の一途を辿った。

2001年にはパイオニアの民生用据置型DATデッキD-05およびD-HS5が販売終了。2004年にはソニーの民生用据置型DATデッキDTC-ZA5ES[1]が販売終了した[2]

1997年7月発売のソニーDATウォークマンTCD-D100が民生用DAT製品最終機種として販売を継続していたが、月間出荷台数が100台程度だったことや、製品に使用する部品の入手困難化、DAT代替製品の多様化、DATユーザーが代替製品への移行が進んでいること、などの要因から、2005年11月25日にソニーから生産終了する旨が発表され、2005年12月初旬に生産出荷終了。日本向け民生用DAT製品は姿を消した[2]

その後も業務用向け製品は引き続き少量ながら生産が続いていたが、2000年代後半までに生産終了している。DAT代替製品として業務用の分野では2000年代中盤以降にDAWによるHDDレコーディングシステムに順次置き換えられていった。また、フラッシュメモリを使用した、屋外使用も可能なポータブルかつ非圧縮に対応したレコーダーも多数発売されている。一部機種では96kHz録音や192kHz録音、DSD録音も可能になっている。詳細はICレコーダー#PCMレコーダーの項を参照。

録音再生機の製造は中止されたものの、ソニー製のテープメディアの販売は現在も続けられており、一定の需要は存在している。

脚注[編集]

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参考文献[編集]

関連項目[編集]