性転換症

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性転換症(せいてんかんしょう、英:Transsexualismトランスセクシュアル[注 1])とは1923年にマグヌス・ヒルシュフェルトが「Die intersexuelle Konstitution」において用いた「Transsexualismus」(ラテン語のsexus(男女の別)と trans(横ぎる、移行する、越える)との合成語、後記の参考文献を参照)という言葉に由来する言葉である。

1949年にコールドウェル(en: D. O. Cauldwell)はこの言葉から「心理的性と身体の性別の不調和」を意味する「transsexual」という言葉を用いた。当時は性的倒錯精神疾患であるとされていたが、ハリー・ベンジャミンen: Harry Benjamin)の主著「性別移行現象(en: The Transsexual Phenomenon)」(1966年刊行)によって当事者に配慮した好意的な表現として用いられるようになった。「性転換症」という表現は、日本精神神経学会による「Transsexualism」に対する現在の訳語である。

概要[編集]

現在では、性別移行(性同一性障害)のうち、特に身体的性別に対する違和感・嫌悪感が強く多くは性別適合手術をも必要とする症例を指すとされるが、これはWHO(世界保健機構)でのICD-10の定義(F64.0)に過ぎず、実際世界的にこの言葉は「出生時の外性器身体)の性別とは反対の性自認を持つ現象」を指す言葉として広く用いられている。しかしジョグジャカルタ原則第18原則の規定にもかかわらず、ICD-10DSM-IVは未だにこうした症例を精神疾患として分類、掲載していること、多くの国で法的性別の変更の条件に不妊手術が必須とされ当事者の尊厳と自由が蹂躙されていることに欧州評議会人権弁務官を務めるトマス・ハマーベリは2010年8月31日に強い懸念を示し各国にその是正を要求した[1]

しかしながら、2003年イギリス政府が示した「性別移行者に関する政府政策」(Government Policy concerning Transsexual People)」(外部リンク参照)においては、「トランスセクシャリズム(性別移行)は異性装ではなく、自らの性自認の選択の結果ではなく、性的指向とは別の問題であり、「ドラァグクイーン」とは無関係であり、さらに(ICD-10或いはDSM-IV規定とは異なり精神病ではない」と宣言している。性同一性障害という表現は、Transsexualismに代えてそれに相当する内容に、1994年にアメリカのハリーベンジャミン国際性別違和協会(2006年「世界トランスジェンダー健康専門協会(en: World Professional Association for Transgender Health」に改称)によって診断名として正式に用いられるようになったが、実際日本以外で用いられるのは米国とカナダだけである。この「Transsexualism」という言葉はかつて「性別倒錯」など極めて侮辱的で否定的な訳語が与えられた(現在も広辞苑第6版にはこの「性別倒錯」という表現が項目として存在し、「性転換症」という項目は存在しない)。そのためそれらのイメージを払拭するため、現在日本ではこのTranssexualism に性同一性障害の訳語が、特に海外の情報を紹介する際に用いられることが多くなった。なおICD-10で言う「性同一性障害(F64)」に相当する一般的な表現としてトランスジェンダーがあり、英語圏を中心に広く用いられ近年では国際連合欧州評議会人権問題を取り扱った文書においてもLGBTという概念と関連して用いられている。

さらに、「トランスセクシュアル」の過去の汚名を払拭し、普遍的定義を持たない「トランスジェンダー」の曖昧さを回避するため新しい表現として「gender transition」や「transitioned」という表現(性別の移行性別移行者の意味)があり、「トランスセクシュアル」の同義語としてモントリオール宣言の前文やジョグジャカルタ原則の第3原則に於いても用いられている。

参考文献[編集]

  • C.T. Lewis/ Elementary Latin Dictionary, 2000, Oxford University Press ISBN 0199102058
  • この辞書のP.867にはtransという単語に「変える」或いは「転換する」といった意味は無く、またP.948にはsexusという単語が「分離、切断」を意味する語根であるSACないしSECに由来する事実が記されている。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ トランスセクシャルとも表記。

出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]