ニューハーフ
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ニューハーフ(和製英語:new-half)は、出生時男性であり、女装して女性のような振る舞い(性表現)をする人、または性別適合手術済みのTS女性[1][2][3]。日本における造語である。並びに「トランスジェンダー」という言葉が日本へ流入する前である1981年に産まれ、現代で言うとトランス女性に対する和製英語である[1][2][4][3]。トランスジェンダー女性(トランス女性)、トランスセクシュアル女性(TS女性。手術済み又は手術希望トランスジェンダー女性)という言葉が日本に流入後も意図的に使う当事者もいる[2]。
概要[編集]
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性別適合手術を受けたニューハーフの一例。
1981年にデビューした松原留美子を売り出す際のキャッチフレーズとして用いられ、広く知られるようになった和製英語である[1][3]。日本では、ゲイボーイ・シスターボーイ(英語由来)・ブルーボーイ・フェムボーイ・おかま・Mr.レディー・ニューハーフやオネエなどと呼び方がいくつもある。英語では「おかま」等と訳されるシスターボーイの他に米俗語のshemaleもある。シーメールはシスターボーイ同様、直訳すれば「おんなおとこ」というような言葉だが、特に(女性ホルモン治療や去勢手術など相まって)女性化乳房と男根両方を兼ね備えたニューハーフを指す意味合いも強い[5]。
日本社会において女性的な振る舞いをする生物学的男性を受け入れる一般的な職業は未だ十分に多いとはいえず、新宿サンキューうたこは性別適合手術のために昼は会社員、夜と休日はニューハーフデリヘル嬢として勤務していた[6]。
近年は性同一性障害やトランスジェンダーといったセクシャルマイノリティが広く認知されてきた事もあり、水商売や風俗店に従事する道を選ばず一般職に進む者も増えてきた[7]。井上魅夜は、具体的な数字を記述していないものの、自己の性別によるギャップに苦しんだニューハーフの自殺率は、一般者と比べて倍に上ると主張している[8]。
日本の性風俗の世界で「ニューハーフ風俗」が人気が高まっており性社会・文化史研究者の三橋順子(トランス女性)によると、2019年時点で20年前と比較して、店舗数が少なくとも10倍の数に急増している。ライターの畑野とまとの調査によると、ニューハーフ風俗の従事者の身体状況は、性別適合手術済(TS女性。ペニス&睾丸除去+造膣)が3%、竿あり・玉なし(ペニス有り、睾丸除去、女性ホルモン投与)14%、竿あり・玉あり(ペニス・睾丸あり、女性ホルモン投与)51%、「女性ホルモン経験も無し男性のまま」31%、不明1%となっている[3]。
ニューハーフの女性化[編集]

(タイ・バンコク)
昔は過度に古風な女性の仕草をコピーする人が多く、「女より女らしい」と言われた時代もあったが、近年では、女性と変わらない自然な雰囲気のニューハーフが増えつつある。これは、女より女らしいということを強みとして生きるよりも、一般女性として生活するほうが好ましいと感じるニューハーフが多くなったためである。
化粧や服装による女装のみのニューハーフも相当数いるが、現代では性別適合手術を通して肉体を女性的にする手法が確立している。ニューハーフとして生きることを選択した者は、肉体的にも女性化を目指す者が多いが、あえてしない者もいる。親の反対や世間体の問題で出来ないなどの理由が挙げられる。
以下、見た目や肉体を人為的に女性らしい体・風貌に作り替える手法について大まかな分類を挙げる。
全般[編集]
- 服装
- 下着
- 化粧
- 脱毛
性ホルモン[編集]
- 去勢
- 女性ホルモン投与 (詳細に関しては性同一性障害の身体的治療を参照。)
- 女性ホルモンは、乳腺組織を発達させるとともに、皮下脂肪を沈着させることで、女性らしい体を作る作用がある。そのため、女性化を望む者の多くの者が投与している。手術が必要ないという点では手軽であるが、高濃度の女性ホルモンは睾丸などの男性機能を不可逆的に損ない、精子や男性ホルモンを作り出せなくする作用がある。臀部も脂肪の沈着である程度丸みをおびるが、成長期を過ぎてから投与されるため、女性のように骨盤が大きく高くなる事はない。このためヘソとくびれの位置関係が女性とニューハーフでは異なる。ちなみに性ホルモン異常などで成長期から女性ホルモンの影響が強い者は骨格も女性的になる。性同一性障害により第二次性徴を迎える前や成長期の途中などの早い時期からホルモン投与を受けた者も骨格や体質が女性的になりやすい。
- 性ホルモン投与や去勢における副作用
乳房[編集]
乳房組織の基となるものは、胎児期に男性に分化する前に作られる。そのため男性にも乳首があり、女性のような乳房を発達させる素地がある。
- ホルモン胸
- 豊胸
性器[編集]
- 性転換手術(性別適合手術:SRS)済み
- 陰茎を取り除き造膣することで女性として男性との性交渉を可能にする場合がある。人工の膣であっても陰茎陰嚢の表皮やS字結腸等を造膣に使うなどして性感を得ることができる。しかし女性の膣と違って雑菌の繁殖を防ぐメカニズムが備わっていないので自己管理で衛生を保つ必要がある。性転換の課程をドキュメンタリー的に描いたものがある[11]。
- 一般には性転換手術(性別適合手術)には、男性外陰部の皮膚がある程度ある場合は陰茎の包皮の多くを裏返しにして併せて陰嚢の全ての皮膚を再生をして造膣する「陰茎会陰部皮膚翻転法」と呼ばれるものと、開腹手術または会陰部からの導入手術により大腸のS字結腸の一部を利用して造膣する「大腸法」、または、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律には造膣は不要のため造膣せず男性外陰部を切除し外観のみを整える計3種類に大別される。男性と性生活を希望する場合は多くは造膣をする。造膣をする場合は一般的には「陰茎会陰部皮膚翻転法」の手術が多く、大腸法に比べると手術も行いやすい。昔の手術では愛液等は分泌しにくく性交時にはゼリーなどを用いる場合があったが、近年の手術では愛液等は分泌する造りになっている場合が多い。
その他[編集]
- 声
- 稀に地声が女性と変わらない場合や変声期前に去勢したりして、声色が高く女性と見分けがつかない者も居る。
- また、メラニー法という発声方法を使って発声する方法もある。
- 声を高くする外科手術も存在し、タイなどの海外で頻繁に行われ成功例も多い。
- 改名
- 戸籍
- 詳細は「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」を参照
- 必須として女性ホルモン剤の投与と性別適合手術及び、場合によっては美容整形や医療脱毛・声帯手術・喉頭隆起切除術などを施術し女性に似た外見や印象などを持たせ、女性としての生活歴や治療歴の医師の診断書と申し立て書及び出生からの戸籍謄本など書類並びに収入印紙(800円)・返信用封筒代の切手等全て揃え家庭裁判所に申し立てる事[12][13][14][15]によって性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律により、要件等を全て満たし裁判員が認定許可すれば戸籍記録はそのまま残る部分はあるものの世帯戸籍から除籍されて新戸籍として編製され戸籍上も正式な「女性」となる 。但し、戸籍の上で女性となっても、必ず女性と対等に一般職への転職に成功したり、男性と結婚できる訳ではない。2023年6月にLGBT理解増進法が成立したが、まだ実情の社会的理解は追いついていない部分もある。カミングアウトによって元男性である事を知られ社会的な立場を失うことを恐れて、素性を隠して生来の女性として職場や社会生活を送る者が多くいる[16]。また、風俗業界では男性から女性へ性別移行を完了したから女性として風俗店等で働くというわけではなく、ニューハーフの風俗店等で継続して働く者もいる。だが、性別適合換手術に伴う陰茎の消失はニューハーフ風俗嬢としての評価を下げることが多い。
語源[編集]
有力な説として、1980年に大阪のショーパブ「ベティのマヨネーズ」のママであるベティとサザンオールスターズの桑田佳祐との対談時に、ベティが「男と女のハーフよ」と言ったのを聞いて桑田が「じゃあニューハーフだね」と言ったのが始まりというものがある[17](ベティ本人が「週刊えみぃSHOW」など地元関西ローカルの番組で度々公言している)。しかし、桑田本人は自分が"ニューハーフという総称を作った"という話に関して繰り返し否定している[注釈 1]。
朝日新聞2010年9月16日号によれば、1981年ベティのレコーディングをきっかけに桑田とベティが出会った際、桑田に「ねえ、ベティはどこの国のハーフなの?」と聞かれたベティが「ばかねえ、男と女のハーフじゃないの」と言い返し、スタジオが笑いに包まれた[18]。そしてベティを「ニューハーフ」として売り出すことが決まったという。
かつての呼称[編集]
ゲイボーイ[編集]
現在はゲイボーイというと女装しない同性愛男性を指すが、日本では、1950年代頃から女装あるいは性転換して、酒場や風俗店などで働く人をゲイボーイといっていた[注釈 2](英語での用法とは全く異なるので注意)。
1961年に登場した松本清張の推理小説『時間の習俗』はゲイボーイがまだ珍しい時代を背景に成立した物語で、1980年代にドラマ化された時はその付近の演出に苦労の跡が見られた。また1969年にはゲイバーをテーマとしたものとして松本俊夫監督の実験映画『薔薇の葬列』が登場した。
シスターボーイ[編集]
1957年2月に米MGMの映画「お茶と同情」が日本でも公開されてヒットし、映画内で使われたシスターボーイという造語が流行した[19]。その後、同1957年9月に美輪明宏(当時は丸山明宏)が仏シャンソンの曲「メケ・メケ」をカバーし、シスターボーイと呼ばれるようになっていった。現在では死語となっている[注釈 3]
シスターボーイは女性的な雰囲気の美形男性を指すもので、肉体的には手を入れていない人が主であった。
ブルーボーイ[編集]
日本におけるブルーボーイは1963年より来日したパリのキャバレー「カルーゼル」の性転換ダンサーの印象が強いものとなっている。[注釈 4]。英語圏においてはブルーボーイとは元々トマス・ゲインズバラの油彩画「青衣の少年 (The Blue Boy)」を指すものであったが、女性スターがその油彩画の扮装をするようになることで、だんだん女性的な男性を意味するようになっていったとされる(en:The Blue Boyも参照)。
ブルーボーイはその後性転換したダンサーだけでなく、性転換して風俗関係で働く人たちなどにも適用範囲が広がっていったが、ブルーボーイ事件あたりを境目にして使用されなくなっていった。
Mr.レディー[編集]
日本ではMr.レディーという言葉も使用された時期があるが、この言葉は、1978年のフランス・イタリア合作映画 『Mr.レディ Mr.マダム』 に由来する。但しその頃の日本社会ではこの言葉は一般的ではなく、バブル時代頃にフジテレビ系「笑っていいとも」で一年間続いた人気コーナー、「Mr.レディー & Mr.タモキン」が放送された頃に広まった。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 2019年10月12日 TOKYO FM 桑田佳祐のやさしい夜遊び 放送内にて本人が言及
- ^ ゲイボーイの使用例
- 1957年11月1日『新潮』「ゲイボーイの誕生地」
- 1958年『夜の異端者』(南旺社)「ゲイ・ボーイの生活と意見」
- 1969年7月29日『朝日新聞』「共犯の少年も逮捕 ゲイボーイ殺し」
- ^ シスターボーイの使用例
- 1957年11月『婦人公論』「男色論-シスターボーイの魅力-」
- 1957年11月22日『読売新聞』「ステージ シスターボーイで売る メケメケよろめけ」
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ブルーボーイの使用例
- 1964年5月3日『アサヒ芸能』「ブルーボーイと恋した男の告白:異常化すすむ“東京の夜”の断面」
- 1964年2月『裏窓』「裏窓タウン:ブルーボーイ」
- 1967年4月10日「平凡パンチ」「ブルーボーイ学入門」。
出典[編集]
- ^ a b c "ニューハーフ". デジタル大辞泉. コトバンクより。
- ^ a b c “「LGBTQ+」の時代に「ニューハーフ」を掲げる室井瑞希 「ジェンダー平等に否定的な人」も意識(よろず~ニュース)”. Yahoo!ニュース. 2023年2月3日閲覧。
- ^ a b c d “この20年でニューハーフ嬢が10倍に増えたワケ 研究者も驚いた「20センチ表記」”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) (2019年12月10日). 2023年5月19日閲覧。
- ^ 平田裕介. “「女の子として売れて、『実は男の子でした』というのが理想だった」はるな愛(50)が語る、それでも“後悔はしない”理由”. 文春オンライン. 2023年2月3日閲覧。
- ^ 『性的なことば』(講談社現代新書、共著、2010年発行)400-406頁 シーメール項目(三橋純子 著)
- ^ “夢を現実に。私は女性として生きていく|新宿サンキュー うたこ”. みっけStory. 2021年11月15日閲覧。
- ^ “ニューハーフの求人・生活情報 WEBメディア|Bijuku〈美塾〉”. Bijuku〈美塾〉. 2023年2月1日閲覧。
- ^ 太田出版、 「化粧男子 男と女、人生を2倍楽しむ方法」、井上魅夜 著、p.138.
- ^ 小顔になるとっておきの方法|小顔メイク http://www.centr-zvezda.com/face10/
- ^ “重要なのは陰茎のサイズより精巣のサイズ…妊活の専門医が教える「精巣の大きさを簡単に調べる方法」”. プレジデントオンライン PRESIDENT Online. 2022年10月27日閲覧。
- ^ “魚住りえ うおずみりえ スーパーテレビ情報最前線 「密着!ニューハーフの真実!~僕が女に変わる決断」”. ORICON NEWS. 2023年9月24日閲覧。
- ^ 性別の取扱いの変更 裁判所
- ^ “性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律第3条第2項に規定する医師の診断書について”. 厚生労働省. 2023年9月16日閲覧。
- ^ “性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律”. e-Gov法令検索. 2023年9月16日閲覧。
- ^ “性同一性障害”. 一般社団法人 日本形成外科学会. 2023年4月9日閲覧。
- ^ “性的少数者の基本的人権の擁護に関する決議-多様な性を尊重する社会の実現を目指して-”. 関東弁護士会連合会. 2023年9月25日閲覧。
- ^ TIMES編集部, ABEMA (2023年11月14日). “「ニューハーフ」の生みの親は桑田佳祐「でも放送禁止になっちゃったの」はるな愛が経緯を説明 | バラエティ | ABEMA TIMES | アベマタイムズ”. ABEMA TIMES. 2023年11月25日閲覧。
- ^ 渡辺周 (2010年9月16日). “ニューハーフ薩摩へ帰る”. 朝日新聞(夕刊) (朝日新聞社): p. 1
- ^ 井関雅夫『女なんて大嫌い : この悪性なるもの』 p.90-91 あまとりあ社 1961年 [1]