家族計画


家族計画(かぞくけいかく、英語:family planning)とは、個人またはカップルが、いつ、何人の子供を持つか、あるいは持たないかを自律的に決定し、それを実現するための手段を確保することを指す。
現代においては、単なる人口抑制の手段ではなく、「性と生殖に関する健康と権利(SRHR)」の一環として、個人の権利と健康の保障という観点から捉えられている。
概説
[編集]家族計画の概念は、時代とともに「国家による人口管理」から「個人の権利」へと大きく変遷してきた。
人口抑制としての家族計画
[編集]1950年代以降、アジアを中心に食糧不足や資源不足、貧困や経済開発の遅れが生じた際、その原因として人口の急激な増加が指摘された[1]。特に所得水準が低い地域では、子供が家計の収入源となり、社会保障制度も不十分なため、老後の扶養を期待して出生率が高くなる傾向にあった[2]。
このため、多くの発展途上国において、人口爆発による貧困の固定化を防ぐための総合的な人口政策として家族計画が導入された[2]。しかし、一部の国では数値目標を達成するための強制的・頭ごなしの人口抑制策がとられ、人々の反発を招いたほか、人口増加の根源的な原因が富の再分配の不平等や社会福祉の不備にあるという指摘がなされるようになった[1]。
人権としての家族計画(SRHRへの移行)
[編集]世界人口会議の流れを汲み、1994年にエジプトのカイロで開かれた国際人口開発会議(ICPD)は、家族計画の定義を根本的に変えた。ここでは、統計優先の国家人口政策(マクロの視点)から、個々の健康や生活、そして「権利」というミクロの視点へ重点を移すべきとされた[1]。
これにより、家族計画は「人口を減らすための手段」から、性と生殖に関する健康と権利(SRHR)の核心的な要素へと再定義された。具体的には、以下の権利が保障されるべきであるとされている。
- 自由かつ責任を持って、子供の数と間隔を決定する権利
- 適切な情報と手段(避妊法など)にアクセスできる権利
- 強制的な不妊手術や産児制限から自由である権利
権利としての側面
[編集]現代の家族計画は、リプロダクティブ・ヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の枠組みの中で運用されている。
健康への寄与
[編集]適切な家族計画は、母体死亡率の低下に直接的に寄与する。望まない妊娠の回避、出産間隔の調整、および安全な人工妊娠中絶へのアクセス確保は、女性の健康維持に不可欠である。
ジェンダー平等と自律性
[編集]家族計画の実効性は、女性が自らの身体的決定権を持つこと(身体的自律性)に依存している。教育の普及や女性の社会進出に伴い、家族計画は単なる避妊の提供ではなく、ジェンダー平等の実現に向けた不可欠なプロセスとして位置づけられている。
各国の政策
[編集]日本
[編集]戦中は「産めよ殖やせよ」が唱えられたが、戦後は人口爆発への懸念から産児制限が唱えられるようになった。その結果、戦後10年ほどで合計特殊出生率が4を超えていたものが2を下回るところまで急落した。
1958年度の『厚生白書』では、家族計画を「自らの手で家族設計すなわち適当な家族構成を考えて行く」という「自主的計画的な家族設計」と定義し、国家主導の制限ではなく、各家庭の自主性を強調した[3]。
その後、1970年代以降は緩やかに下落し、1989年の「1.57ショック」以降は、家族計画の課題は「抑制」から「少子化への対応」へと劇的に変化した。
中国
[編集]中華人民共和国では、1979年から一人っ子政策を導入し、強制的・国家主導の人口抑制を図った[4]。しかし、この政策は男女比の不均衡や無戸籍児の増加、急激な少子高齢化という深刻な副作用をもたらした[2]。
インド
[編集]インドでは1970年代に数値目標を定めた強制的な人口抑止政策がとられたが、激しい反発を招いたため中止され、個人の意思に基づく家族計画を中心とする政策へ移行した[1][4]。
脚注
[編集]関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- “日本家族計画協会”. 2012年3月7日閲覧。