性教育

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世界エイズデーの啓発キャンペーンの一環として、ブエノスアイレスのオベリスク英語版に67メートルの巨大なコンドームが模された。(2005年12月9日、アルゼンチンブエノスアイレス

性教育(せいきょういく、英語: Sex education)とは、性器生殖性交・性行為・人間の他の性行動についての教育全般を意味する言葉。性教育が行われるのは学校以外にも、教師看護師助産師など、子供の教育や世話をする人々が直接的に指導したり、公衆衛生の宣伝活動の一環として行われることもある。

日本の学校では、主に保健体育の授業で中心的に行われ、身体の変化(第一次性徴及び第二次性徴妊娠出産、男女の相互理解と男女共同参画社会性別にとらわれない自分らしさを求めること、性感染症予防避妊などの内容が扱われている。近年ではLGBTなど多様なについても言及するようになった。

概説[編集]

生殖に関する教育は、広義には女性器男性器を挿入する性交後に女性体内で起こる男性器から放出された精子が女性の卵子と結合する受胎から胎芽へ、胎芽から胎児へ、そして出産へと移り変わっていく流れを追いながら、新たな命の創造と成長を取り扱う。狭義には性感染症の概念やその予防、避妊法などの内容が、この範疇に含まれる。

学校の教育課程の中に性教育的なものが組み込まれてはいるものの、それを教えることに関して、未だ激しい議論が行われている国もある。性教育はどの段階で開始されるべきなのか、どこまで深く踏み込んで良いのだろうか、セクシャリティや性行動に関する内容(安全な性交の実践、自慰行為、性の倫理感など)も扱うべきなのかなど、様々な論争が巻き起こっている。

日本では、体育・保健体育の授業で小学校4年生で「体の発育・発達」、同5年生で「心の発達及び不安、悩みへの対処」[1]、中学校1年生で「身の機能の発達と心の健康」[2]として性教育を受ける。初めて学ぶ小学校4年生では、思春期初来の平均年齢[3]の関係上、男子は思春期前に学ぶ者が多いが、女子は思春期初来後に学ぶ者が多くなる。

小学校では体や心の変化を中心に取り上げ、自分と他の人では発育・発達が異なり、いじめなどの対人トラブルを起こしやすいことから、発育・発達の個人差を肯定的に受け止めること特に取り上げる。また、発育・発達を促すための食事運動・休養・睡眠なども取り上げる。中学校では体や心の変化に加えて生殖も取り上げられるが、受精・妊娠までをは取り上げても妊娠の経過は取り上げられない。

一方で初経の授業はあっても、ブラジャーについては学ぶ機会はほとんどなく、思春期の乳房が成長中(途中で初経を挟む約4年間)にジュニアブラを着用せずにノーブラだったり、大人用のブラジャーをつけたりとした問題が起きている[4][5]

トランクス着用の小中学生が増加したことで一部の自治体では小中学生にブリーフの着用を勧める活動が組織的に行われるようになった。2000年代前半頃より東京都足立区の一部の小中学校では性教育活動に熱心に取り組んでいる女性養護教諭が性教育の一環で小中学生の下着指導を行い、その活動の輪が足立区全体で拡がったことによるものである。養護教諭は男子生徒に体育の授業でトランクスでは陰部が見えるとの理由でブリーフの着用を提唱し、男子生徒にブリーフの着用を実践させている[6]

教育の効果をどのように測定するかという問題がある。現状は教育の実施を文部科学省、効果の測定は厚生労働省が担っていると言っても過言ではない面がある。性教育の事例として京都市教育委員会は保健指導の中で独自の性教育を開発している。最近では、生命誕生については用語を知る程度におさえ、自分が父母になったときにどんな子育てをしていきたいかを低学年から考える指導が適切であるという考えもある。

こういった問題を巡っては、「過度な性教育は子供たちに大きな影響を及ぼしかねない」という批判がある[7]

また、児童を対象とした性犯罪や親族らによる児童性的虐待が問題となっており、これらに被害児童の性に対する無知につけこんだ物が多い事から、思春期前のより早期からの性教育によって、子供に自身が性的搾取から保護されるべき権利主体である事を認識させようとする動きが見られるが、これもやはり分別の付かない幼い子供が性知識を持つ事に難色を示す意見がある。性教育を行うこと自体を猥褻な行為、セクシャルハラスメント扱いし、児童を欠席させボイコットさせるという、モンスターペアレントの無理解な行動も起きているとされる。

2019年3月28日、東京都教育委員会は教員向けの指導書「性教育の手引」改訂版を公表し学習指導要領の範囲を超えた授業の実施を始めて容認した。手引は小中高校、特別支援学校での性教育の考え方をまとめ、コンドームピルでの避妊人工妊娠中絶できる時期がかぎられていること、性交相手の過去は分からないため性感染症の危険があること、SNSで性的な画像を送ると削除できないことを伝える。性の多様性にも初めて言及し性同一性障害や性的指向などへの配慮を明記した[8]

2020年度より、幼稚園中学校高校大学で「生命の安全教育」という新しい教育を始める方針があるが、引き続き性行為や避妊は取り扱わない予定とされている[9]

一方で、文科省も国会の質疑等でも厚労省と連携して取り組んでいくとしているため、産婦人科医会も全面的に性教育、特に中高生、一般の方に対する教育には努力は惜しまないことを表明しているが性交や避妊を教えない教育について正しい性の知識が普及しない懸念を示している[10]

2018年1月に改訂されたユネスコの『国際セクシュアリティ教育ガイダンス[11][12]』では、性教育の開始は5歳からで、ヨーロッパの性教育スタンダードでは0歳からとなっている[13][14]。国際的には、単なる性に関する知識やスキルだけでなく、人権やジェンダー観、多様性、幸福を学ぶ概念としての包括的性教育(comprehensive sexuality education)が普及している[15]。ユネスコが推奨する性教育の項目には、「性行為」や「避妊の方法」だけでなく、友情や恋愛などに関する「人間関係」や「ジェンダー論」まで、包括的な内容となっている[16]

日本の性教育[編集]

戦前の性教育[編集]

戦前の性教育学者たちの言説には、明治以前の性的卓越性という男らしさの尺度を禁じつつ、男としてのアイデンティティを保持するために「学生時代は禁欲し、立身し然るべき時期に結婚して一家を成す」という、新しい「男性としてあるべき姿」像が含まれていた[17]

1890年(明治23年)頃から学生間での風紀の乱れと花柳病の蔓延がメディアを通じて社会問題となり、1900年代ごろから学生の性の扱いに打つ手を持たない教育界を医学界がリードする形で、医学者と教育者との議論によって性教育が形成されていった[17]。初期の性教育の使命は、若者の自然で健全な性欲を衛生的かつ倫理的に適った方向に誘導する、というものであり、議論のポイントは「手淫の害」と「花柳病の害」の予防法だった。しかし、科学に基づいた性知識の普及が学生の性的悪行を刺激し手助けする、という批判から、花柳病の具体的な予防法は教授せずに、若年の性交や恋愛は危険であり学生の間は学業に専念し禁欲せよ、という強制禁欲主義の教育がなされるようになった[17]

純潔教育から性科学への変化[編集]

日本の性教育のはじまりは、1945年第二次世界大戦敗戦直後から国が主導してきた「純潔教育」に遡る。風俗対策や治安対策の一環としてスタートした[13]性科学者で京都精華大学ポピュラーカルチャー学部教授の斎藤光によると、1947年GHQの支援を受けて婦人民主クラブが創立され、発起人のひとりである救世軍士官牧師)の山室民子は、「一夫一婦結婚の貫徹」「男女ともに婚前性交の禁止」「男性の買春への批判、女性の人格を認め、女性の性の商品化と決別する」などの主張をした。これは日本キリスト教婦人矯風会等の性 ・ 結婚思想の基軸となってきたもので、戦前から存在する思想である[18]

1972年(昭和47年)、日本性教育協会が設立され、純潔教育から性科学を主軸にする性教育へと転換した[13]

学習指導要領の改訂[編集]

1992年(平成4年)、学習指導要領が改訂され、性に関する具体的な指導が盛り込まれたことで「性教育元年」と呼ばれた[13]

学習指導要領の改訂で、思春期の成長は「男子=声変わり」から「精通」と定義され、これにより男女が名目上は平等に性教育を受けられるようになり、教育現場では射精をどこまで掘り下げるかなど試行錯誤をしていた[19]

エイズが社会問題化し、HIV教育の重要さがフォーカスされたことで、小学校6年の理科で扱う人体の学習が3年生に前倒しされ、5年生に『人の発生と成長』が位置づけられるなど、性教育に発展の兆しが見られるようになった[13]

そんななか、東京都日野市七生養護学校(現・東京都立七生特別支援学校)では、知的障害の子どもが性被害を受けても気づかなかった等の事態を受け、男性器と女性器の名称を織り込んだ歌や、性器のついている人形を使うなど独自の性教育に取り組み、校長会等でも高く評価された[13]

性教育を巡る論争[編集]

七生養護学校事件[編集]

2002年(平成22年)、東京都議会議員自民党古賀俊昭自民党の田代博嗣、民主党土屋敬之ら3名の議員が、七生養護学校を始めとした学校を「行きすぎた性教育」と問題にし、産経新聞などのメディアで「過激な性教育」「まるでアダルトショップのよう」と扱われるなど、保護者や寮の職員から学校側に苦情や懸念が相次ぎ、社会的な批判が起きた[20][21]。その後、七生養護学校は授業内容の全面変更・禁止、授業は事前に副校長の許可と当日の監視のもとで実施するよう指導され、校長他116人の教職員は処分された[20][13]

この処分について時の教育長横山洋吉は「都立七生養護学校では、虚偽の学級編制あるいは勤務時間の不正な調整、それから勤務時間内の校内飲酒などの服務規律違反、その他、学習指導要領を踏まえない性教育など、不適切な学校運営の実態が明らかになったことから、教職員とともに、管理監督責任を果たさなかった校長への処分等を行ったものでございます」と都議会で説明している[22]

2008年2月、七生養護学校の教員や保護者、関係者が人権侵害を訴えて提訴した裁判で、東京地方裁判所は教育委員会の裁量権乱用を認め、処分取り消しを命じる判決を言い渡した。また、2009年3月12日、東京地裁(矢尾渉裁判長)は、3議員および東京都教育委員会に対して210万円の損害賠償の支払いを命じた。

2013年最高裁は「教育の自主性を阻害」するなどの「不当な支配」にあたると認定し、古賀俊昭をはじめとした都議側に、原告である教員らに賠償金を支払う判決を下した[13][23]

思春期のためのラブ&ボディBOOK[編集]

性行動の低年齢化や人工妊娠中絶、不測の事態の対応について書かれた冊子『思春期のためのラブ&ボディBOOK』が、中学校に無料で配布された[24]。内容の一部が過激だとして批判され2002年に回収・絶版となった[24]。2002年に国会の議論の対象になった[25][26]

過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクト[編集]

2005年3月4日の参議院予算委員会では、山谷えり子参議院議員が「ペニスヴァギナなどの用語を使いセックスを説明するのは過激で、とても許せない」と批判し、小泉純一郎元首相も同意した。自民党安倍晋三を座長とした「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」が設置され、性教育は余計に性を乱すと批判した[13][19]山谷えり子は「性なんて教える必要はない」「オシベとメシベの夢のある話をしているのがいい」「結婚してから知ればいい」と主張した[19]

これにより学習指導要領が変更され、「受精」は扱うが「受精に至るプロセス」は扱わず「性交」という言葉も削除されるなどし、元一橋大学非常勤講師の村瀬幸浩は、日本は性教育後進国となったと主張した[19]

ニッポンの性教育 セックスをどこまで教えるか[編集]

2013年中京テレビ『ニッポンの性教育 セックスをどこまで教えるか』が放送され、のちに無料公開された[27]

東京都議会質問[編集]

2018年3月、東京都足立区立中学校の授業が不適切だとする東京都議会質問が波紋を広げた。性交避妊中絶は中学の学習指導要領で扱っていないが、3年生を対象にした授業で「産み育てられる状況になるまで性交は避けるべき」と強調し、避妊人工妊娠中絶についても教え、考えさせる内容を行った[28][29]

また授業前のアンケートで「2人が合意すれば、高校生になればセックスをしてもよいと思うか」や、正しいと思う避妊方法などを問う項目が含まれており、「学習指導要領に記載のない性交、避妊、中絶といった言葉を使っていた」「かえって性交を助長する」と問題視され、足立区教育委員会を指導するに至った[28][30]

発端の都議会質問は、七生養護学校を非難・処分し最高裁で敗訴した古賀俊昭であり、「結婚するまで性交渉を控えるという純潔教育や自己抑制教育が必要だ」「そもそも『結婚する・しない』を自己決定するという戦後の価値観が問題だ。『結婚・出産・子育て』は社会貢献だとしっかり教育すれば、安易な性交渉にはおのずと抑制的になる」などと主張した[31]

Yahoo!ニュースのアンケート(2018/5/15-5/25)では、25,063票中、性教育が必要は90.5%(22,674票)、不必要は9.5%(2,389票)だった[32]

2019年2月26日に行われた東京都議会では、中学校での性教育について、都教育委員会の中井敬三教育長は「児童生徒が正しい知識を身に付け、適切に意思決定や行動選択ができるよう、区市町村教委などと連携して各学校を支援する」と答弁した。小池百合子知事は、犯罪の被害者を支援するための犯罪被害者支援条例を制定する方針を明らかにした[33]

生命の安全教育[編集]

2020年より幼稚園から小中高校、大学で「生命の安全教育」という新しい教育を始める方針があるが、引き続き性行為や避妊は取り扱わない予定とされている[34]

男子の性教育[編集]

一橋大学津田塾大学講師の村瀬幸浩は、2014年出版の『男子の性教育』(ISBN 4469267600)に、男子高校生を対象にした「射精イメージ」の調査結果を記載した。約15%の男子が射精を「汚らわしい」と感じ、約20%が「恥ずかしい」という意識を持っている一方、女子高校生の「月経のイメージ」では「汚らわしい」と答えた人は約5%、「恥ずかしい」は約8%であった。この男女差は教育の有無によるものだとしている[35]

女子は妊娠・出産に備え親や学校が月経のメカニズムを教えるが、男子には「別に教える必要はない」という風潮が続いた。思春期になれば性的な欲求や関心が高まり、メディアや友達を通じ、様々な性情報にアクセスするようになるが、科学的に正しい知識ではなく、誤解や偏見によって理解や認識が歪むことも少なくない[35]。高1男子100人に「射精や性器についての相談相手は?」をアンケートした際は、誰にも相談できないが70%、友達が20%、家族・親戚が9%だったとし、誰にも相談できず、悩んでいる子供が多い実態を指摘した[36]

レイプが女性の人格を切り裂く殺人的行為だなんて考えたこともなかった。セックスのバリエーションのひとつと思っていた」などの認識や、望まない妊娠や中絶において彼氏の「他人事感」が問題となる場合、無知ゆえにリアルな想像や共感ができなかったことも原因だとし[19]、性教育は大人が子どもに対して果たすべき責任だとしている[35]

アダルトビデオ=性のスタンダードになってしまうと、パートナーを心理的・肉体的に傷つけてしまうことに発展しかねず、「アダルトビデオは作り物なんだ」「あれは女の人がお金で演技している(させられている)ものなんだ」という分別がつけられるよう、性について真面目に伝えていくことが大切だとする。精液がついたパンツを「汚いから別の洗濯かごに入れてね」などと対応することで、子供がセックスは汚い、いやらしい、ひどいといったネガティブな意識を持ち、恋愛や性行為を回避するケースもあるという[36]

埼玉大学教育学部教授の田代美江子は、「性をいやらしいと考えている大人」や「性と真正面から向き合わない大人」は、極めて個人的な感覚に端を発するタブー意識を拠りどころに性を捉えており、大人たちが体系的な性教育を受けていないことから、「小学生には早い」「中学生に避妊なんて教えてどうするんだ」という価値観がストッパーになってしまうとしている[13]

性教育への取り組み[編集]

2002年から、秋田県では県の教育委員会と医師会が連携し、中高校生向けに性教育を実施している。その結果、全国平均の1.5倍だった10代の中絶が2018年には平均以下となり[37]2012年には10代の中絶率が約三分の一となった。性教育で性行動はより慎重になると知られている[38]

富山市では、10代の人工妊娠中絶率はこの5~6年、女子の人口1000人あたり1人前後の割合で推移している。対して全国平均は6人前後で、福岡県や沖縄県などは10人前後となっている。1990年代に女子高生等の性が商品化され、全国で人工妊娠中絶が急増したことに危機感を抱いた産婦人科医と富山市は協力し、1991年から性教育の出張授業を始めた結果となっている。性教育とは危機管理を学ぶことという意識で教育が行われている[39]

埼玉県産婦人科医会は、県内で医師や助産師が自主的に行っていた性教育講演を県内全域で行えるよう、2020年に「性教育委員会」を設立し医師10人が参加している。講演について県教育長は予算がつかないとしているが、埼玉医大病院産婦人科高橋幸子医師は講演料は必要なく、外部講師による性教育の仕組みづくりをしたいと話している[39][40]

妊娠と避妊[編集]

望まない妊娠[編集]

人工妊娠中絶は毎年低減しているものの、平成30年度件数は 161,741件であり、「20歳未満」について各歳でみると、「19歳」が 5,916 件と最も多く、次いで「18歳」が 3,434件となっている。一方で30代は60,368件、40代以上も15,909件となっている[41]

出産に関する統計はほとんどが15歳からだが、15歳未満の妊娠も年間約400件ほどある[42]

平成29年度の出産数と中絶数の比率で出した中絶選択率は、全体では15%だが20歳未満で59%にも上る。また12歳未満の強制性交等の性犯罪は約1000人が被害者となっている[43]

望まない妊娠の相談先として「全国妊娠SOSネットワーク」がある[44]

望まない妊娠をめぐる事件[編集]

高校生など学生で妊娠に至った場合、学校は退学処分になり将来の夢が阻まれるほか、2017年には東京都台東区で女子高校生が妊娠が分かり親からの叱責などを恐れ交際相手に嘱託殺人させた事件[45]や千葉市では2018年に交際相手(16)が出産した新生児の遺体を自宅に隠した少年(17)の事件[46]、2017年には静岡市で女子大生(20)が乳児遺体遺棄で逮捕される事件[47]、2020年12月には女子高生(17)がショッピングモールのトイレで出産し嬰児をはさみで首を切りつけて殺害した疑いで逮捕される事件[48]が起こっている。

緊急避妊薬の入手が困難なことに乗じ、2021年1月には、交際相手との子を妊娠した不安がある女子中学生に対し、避妊薬を対価に43歳の男がわいせつ行為をして逮捕された[49]

中絶[編集]

20歳未満の中絶率は平成30年度衛生行政報告例で、東京が最多の6.6‰、北海島6.4が続き、宮崎の6.2ほか九州地方で以前から高い傾向にある[50]

佐賀県の産婦人科医の調査では、膣外射精を避妊手段として選ぶ知識のなさと、避妊なしの性交渉を断れない関係性が影響していると分析している[51]

妊娠と自殺[編集]

若年層の妊娠は分娩希望の場合でも精神不安に陥りやすいこと、また年齢に関わらず緊急避妊薬を求める女性は性被害者が多く、中絶処置をした患者についてはその後思い悩み自殺企画が多いことが読み取れる[52]

2005年から2014年の東京都23区の妊産婦の異常死調査では、自殺63例のうち23例が妊娠中であった。うち10件以上が妊娠2週間のうちに起こってる[53]。望まない妊娠に悩んだ結果だった可能性がある。

2016年までの2年間で、産後1年までに自殺した妊産婦調査での死亡例は全国で少なくとも102人であり、妊娠中や産後1年未満に死亡した妊産を調べたところ、自殺が死亡原因の1位となっている。妊産婦は子育てへの不安や生活環境の変化から、精神的に不安定になりやすいとされる[54]

産婦人科医の調査では10代の妊娠(分娩希望)の場合も妊娠中自殺願望を持った患者は全体の15.6%であり、7.2%は自殺を試みている。一般の性感染症患者、緊急避妊薬処方患者は、デートDV 被害者や性虐待被害者の場合が多く、自殺願望が認められると報告されている。また中絶後の患者が人口妊娠後遺症(PAS)に悩んでいるケースは76.2%であり、48.3%が自殺願望を持ち12.2%が実際自殺を試みている状況にある。海外での研究でも中絶経験者の60%が自殺を考え、28%が実際に自殺を図り、そのうち半数が2回以上自殺を図った。特に10代の若者や離婚者などにリスクが高い。心的外傷後ストレス障害(PTSD)も見られた[55]

フィンランドの13年間の調査では中絶の翌年は自殺、事故及び殺人による死亡が24%増加することが女性全体を対象した調査で判明した[56]。調査期間中自殺の73件は中絶または流産後1年内に起こっている[57]

この調査では、中絶した女性の死亡原因の過半数が自殺であることも判明した。若すぎる妊娠や、望まない妊娠は自殺のリスクを高め、出産後0日の嬰児殺害にもつながっている。胎児を中絶する経験は女性に大きな罪悪感を生み出す[58][59]

海外では後述の緊急避妊薬でその妊娠の多くが容易に回避できる状況にあるが、日本国内では実現しておらず結果として女性が望まない妊娠・出産の負担を負うことになり日本国内の女性に対し憲法に定める法の下の平等生存権が中絶に関わる主な精神的影響のリスク保証されていないものとなっている[60]

避妊について[編集]

中高生の妊娠には、避妊の正しい知識不足による失敗がある。言わゆる女性の生理周期の排卵日を避けて「安全日」を選んでする性行為も、男性が放出した精子は女性器内で最大5日生存するため、確実ではない。また月経中は妊娠しないという誤認があったり、膣外射精や炭酸飲料で膣を洗う対策は避妊ですらないということが伝わっていない場合がある[61]

精子は射精時の精液だけでなく、前段階で分泌されるカウパー腺液中にも僅かに存在する場合があるため確率の高い避妊法とは言えず通常は避妊法としてカウントされない(PIは4-19程度)。また知識があったとしても、一般的な避妊方法に使用されるコンビニエンスストアでも購入できるコンドームによる避妊方法も万全ではなく、避妊失敗率は2%であり正しい使用方法でない場合を含めると18%とされ、一方でピルは0.3%とされる[62]

コンドームは「性感染症予防」、避妊のためにはより効果の高い方法を「併用する」ことが常識となっている[63]。しかし口で性器に触れるオーラルセックスでは、双方の性器を保護しないと性感染症が防げない問題もある。

妊娠の不安については、市販されている99%の精度[64]と言われる妊娠検査薬の存在への無知などがあり、様々な性にまつわる理解が不十分な状態が招いた問題となっている。

なお中絶可能週数は22週までで、中絶の同意書には配偶者の同意者が必要である。未婚者の場合でもパートナーの合意を求める病院があり男性も交際相手の女性の中絶同意書に署名する責任がある。しかしこの制度は性暴行の加害者にも同意を求めなくては手術を行うことができない現状に繋がっているため弁護士から批判を浴びている[65]

低容量ピルの承認[編集]

1999年(平成11年)6月、女性自身が妊娠をコントロールする低用量ピルが申請から9年の歳月を経て承認された。1965年以来、185以上の国連加盟国各国はピルを承認し、世界中で2000万人の女性が服用する中、日本はピルを承認する最後の先進国であり[66]、国連加盟国185か国で当時唯一の未承認国であった[67]

1999年(平成11年)2月、衆議院予算特別委員会での国会審議において、末松義規議員よりバイアグラのスピード承認に対しピル承認が9年以上も審議にかかることについて、中央薬事審議会が社会的な価値観を持ち込んでいる疑問が呈され、同議員は「どうも何か大きな思惑があったのじゃないかと思わざるを得ない」と意見している[68]

臨床試験はバイアグラはしなかったことを引き合いにピル承認について尋ねると、担当部局に伝えるだけ回答されている[69]

HIV感染拡大の懸念から薬事審議会が一時審議を凍結し、感染症問題を管轄する公衆衛生審議会に意見を求めるなど調整が難航し、承認時にもなお感染症対策をもっと詰めて承認を決めるべきだったとの意見(東京医科歯科大学大島博幸教授)があった[70]

低用量ピルが長期審議から一転解禁となった背景には、男性用性的不能治療薬「バイアグラ」を個人輸入で大量に出回り死亡例が発生したことから安全に処方されるためとの理由で、申請からわずか半年で承認された。これにより男性本位との批判が起こったことが関係しているとの見解もある[71]

厚労省はピル解禁について、世の中の理解が進みピルを温かく見守る環境ができた(平井俊樹審査管理課長)との講和を発表した。しかしピルが承認されない一方でバイアグラが超特急で承認されたことに対しニューヨークタイムズ紙では世界的に安全性が確立された低用量ピルが認可されていないのみならず副作用ゆえに米国では88年以降販売されなくなった「危険な」高用量ピルのみが認可され,販売され続けていることも紹介し日本の薬事行政の奇妙さを紹介した[72][73]

懸念された性感染症については、ピルが承認の1999年のHIV感染者は日本人男性379人(うち同性接触195人)、女性が45人であり、2019年では同男性741人(うち同性接触575人)、同女性29人となっている[74]

緊急避妊薬の薬局販売未承認及び経口妊娠中絶薬未承認問題[編集]

モーニングアフターピル[編集]

日本では妊娠を回避する緊急避妊薬(アフターピル)の「ノルレボ錠」が2011年に承認され、2019年3月には国産の後発薬[注釈 1]が登場したものの、医師の診断なしには処方されず、かつ公的保険の対象外で高価であるため、世界保健機関が2018年に勧告した「意図しない妊娠のリスクを抱えた全ての女性は緊急避妊薬にアクセスする権利がある」に対してまだ大きな課題を抱えている[76]

アフターピル・低用量ピルの処方及び妊娠に関することは保険適用外で自費負担となり、一部の医療機関での本人確認で用いられる以外には健康保険証は必要ない。また基本的には問診のみで処方してもらえ、内診(股からの診察)や検査はない[77]。ただし性暴力被害の場合のアフターピル処方には公費負担がある[78]

厚生労働省処方箋医薬品から要指導・一般用医薬品への転用に関する評価検討会議で、経口妊娠中絶薬の市販化について審議されたが、アメリカなどの緊急避妊ピルを常時使用している環境と比較して、参考人として招聘された国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院副理事長 矢野哲と公益社団法人日本産婦人科医会常務理事 宮崎亮一郎より性教育の不十分さや薬剤師の知識不足による誤解などを懸念することが述べられ、日本産科婦人科学会も反対理由として表明している[79]ことが不許可の背景となっている。

宮崎参考人は前述の会議で彼自身の薬剤師の妻が「ピルの話になると全くチンプンカンプン」であるため薬剤師は知識不十分であるとした発言をしている。不許可に対しドラッグストアの業界団体や一部薬剤師らが反発し、一部の産婦人科医からも、緊急避妊薬は早ければ早いほど効果があることを述べ、休日で病院が開いていない際に女性を守る視点が欠けているとの意見もあった。薬剤師からは「医師と薬剤師の関係性」について対等ではないパターナリズムの文脈があると指摘する声もある[80]

とは言え、検討会議の場で薬剤師会もまた緊急避妊薬のOTC化について現状制度ではスイッチ後、原則3年で第1類医薬品になるとして反対している[81]

実際に販売する際の対応に不安を抱く薬剤師のために、京都大学SPH薬局情報グループは、薬剤師向けのアフターピルの学習動画を2020年11月6日から公開している。理解力に関するアンケートも実施している。「薬剤師なんかに任せたら性暴力も見逃してただ売るだけになる。」との産婦人科医意見があったことへの反発をきっかけにして京都大学の特定講師の薬剤師と博士課程在籍の医師が作成した[82]

審議委員の指摘する「欧米では確かに(緊急避妊薬)がOTC化(オーバー・ザ・カウンター・ドラッグ(Over The Counter Drug))されているようです。欧米では20代の90%以上の方が経口避妊薬を使用している状況にあり、避妊薬に慣れているのです。」と引き合いに出して緊急避妊薬が否決されたが、日本において経口避妊薬が普及しないその大きな要因は経口避妊薬ピルの認可には日本は世界でももっとも遅いといえる44年の年月を要した[83]こともピルの常用化につながっていない現状を生み出している。

初認の遅れに対し、当時の国会議員円より子が質問すると厚労省は欧米で副作用が小さいことが、欧米の女性と日本の女性はからだが違うため結びつかないとの趣旨を答弁をしている[84]

2017年、緊急避妊薬に関するパブリックコメントは「今は時期尚早で否ですという形でパブコメを行うということ」という前提で行われ、[85]9月11日から1ヵ月間受け付けられ、全部で348件。賛成が320件、反対はわずか28件だったにも関わらず、国民の意思が反映されない決着となった[86]

2017年、スイッチOTC検討会の委員、鈴木邦彦・日本医師会常任理事は、望まない妊娠を減らしたいという考え方そのものに反対ではないとしつつも、審議会の議論について、医師の関与の必要性、緊急避妊薬への国民の理解度、販売体制の問題が示され、とてもOTCにできないという結論であり、反対意見ばかりで賛成は誰もいなかったとの見解を示している[87]

2017年12月に医師向けサイトで行われた産婦人科医師124名へのアンケートでは、緊急避妊薬のOTC化について、賛成・どちらかというと賛成が26%、反対・どちらかというと反対が47%、どちらでもないが27%という結果となった[88]

2019年5月、産婦人科医の有志9人による産婦人科医への緊急アンケート(n=559)では、6割以上がアフターピルの市販化とオンライン処方のいずれも肯定している。ただし主催者の医師は緊急避妊薬のオンライン診療が解禁になった場合も性暴力被害者に限定されたり、オンライン診療を行っている産婦人科医を探すならば今よりアクセスしやすいかと疑問を呈している[89]

2019年に行われたオンライン診療指針見直し検討会では、ささえあい医療人権センターCOML理事長 山口育子構成員が、産婦人科受診に抵抗を感じる女性が多いため、その受診に精神的な負担のあるときもオンライン診療を可能とすべきと述べ、諸外国では薬局で緊急避妊薬を購入できるところもある補足した。それに対し、「『精神的負担のあるとき』との表現はあまりに広すぎだ」と牽制し、諸外国と日本の文化が異なることを掲げ、対象が無制限に広がってはいけないとの指摘も多数でた(今村聡構成員:日本医師会副会長、黒木春郎構成員:医療法人社団嗣業の会理事長・日本オンライン診療研究会会長ら)[90]

検討会の傍聴者の一人は、検討委員の今村聡の発言、「(緊急避妊薬へのアクセスが)無制限に広がってしまうのも困るという思いがあります。」がWHO勧告に逆行するとして疑問を呈している[91]

2020年10月、日本産婦人科医会(木下勝之会長)は知識不足である女性が気軽に薬局で購入できる状況になることを憂慮し、まだ早いとの意見を述べている[92]

女性の医師の意見が反映されにくい[編集]

昔に比べ女性医師が増加しているが、産婦人科医会の執行理事40名中女性比率は4名に留まり、2018年に明らかになった医学部入試における女性差別問題により多くの女性が能力ではなく性別により医師になる機会すら与えられなかった[93]ことが会への見解に影響している可能性がある。

2019年、オンライン診療に関する国の検討会では検討会委員12人のうち女性は1人であった[94]

2020年7月、厚生労働省の医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議では、委員16名中女性は3名であった[95]

なお、ピル承認時に婦人科に行きピルを処方する際に性病の検査をしたほうがいいとの議論があり、その項目は女性に必要ならば男性にも必要で、女性に失礼だとの黒川清委員の見解で削除された。当時の審議会の構成には女性は2名しか参加していなかったことも述べられている[96]

アメリカでの事例[編集]

アメリカでは2013年より年齢制限などなく誰でも処方箋なしで「プランB」と呼ばれる緊急避妊の購入が可能となった[97]

ジャーナル紙の調査では、アメリカ食品医薬品局FDAの決定にも関わらず、10代の若者の覆面調査では薬局で容易に緊急避妊薬を入手できたのは28%のみにとどまり、3%が氏名などの個人情報を確認されたと問題視されている。またDr. Ian Bishop医学博士はこの薬は中絶を引き起こさず排卵を遅らせる機能があるが、誤解が利用の議論を生んでいると指摘している[98]

2019年、米国産科婦人科学会(ACOG)は避妊に関する声明を改め、腟リングや避妊パッチを含めた全ての避妊薬を市販薬(OTC)として、処方箋なしで販売すべきだとの見解を「Obstetrics & Gynecology」10月号に発表している。またDMPA(デポ型酢酸メドロキシプロゲステロン)注射薬についても、年齢制限なく処方箋なしで販売すべきだとし、女性が避妊薬にアクセスするのを阻む障壁を取り除くべきだと主張している[99]

またアメリカでは19歳までに3分の2は性交を経験する。しかし性的暴行は、青年期の意図しない妊娠のリスクに関連する1つの要因でであり、発達障害やその他の障害を持つ若者は、同級生よりも性的虐待や暴行を経験するリスクがさらに高い可能性がある。また性的活動の低下ではなく、避妊の使用の改善が、過去10年間の米国の10代の若者の妊娠リスクの低下の最も重要な要因となっている。高水準の10代の出産に憂慮し、米国小児科学会は10代の妊娠を減らすための1つの公衆衛生戦略として定期的なカウンセリングを奨励し、EC処方箋を進める方針を持ち、ノルレボ錠(EC)の投与の前には使用前に身体検査や妊娠検査は必要ないとしている。またEC使用後3週間期間内に月経がない場合は、自宅または診療所での妊娠検査を推奨している[100]

カナダでの事例[編集]

2000年12月からブリティッシュコロンビア州では、薬剤師が処方箋なしで緊急避妊薬が提供されているがその調査ではECの繰り返し使用は、ユーザーのわずか2.1%のが研究期間中に3回以上緊急避妊を受けている状況で稀だった[101]

イギリスでの事例[編集]

緊急避妊薬はイギリスでは2001年に処方箋なしで購入できる薬局薬として承認されているが、薬剤師との相談を要するため訓練を受けた薬剤師の不在や在庫不十分のため調査では5人に1人が薬を入手できなかった。法の要件ではないその場で飲むことや身分の証明を求められた事例もあった。このため一般販売用医薬品に切り替えるべきとの見解がある[102]

オーストラリアでの事例[編集]

オーストラリアでは薬剤師に緊急避妊を求める女性が購入前に、性的暴行または性感染症の症状があるかどうかを宣言するように求める問診に記述するように誤って指導されることが問題視されている。ニューサウスウェールズ州家族計画のメディカルディレクターであるデボラベイトソン博士はプライベートな質問が個室ではない場所で行われることで女性に恥をかかせ、購入を思いとどまらせる可能性を懸念し、また緊急避妊薬は「非常に安全な」薬であり、世界の一部の地域のスーパーマーケットや自動販売機でさえ調剤されたと付け加えている[103]

ドイツでの事例[編集]

ドイツでは、有効成分レボノルゲストレルまたはウリプリスタル酢酸塩を含む独自の医薬品が、処方箋なしで緊急避妊薬として利用できる。既存の妊娠が疑われる場合は、活性物質ウリプリスタルアセテート(UPA)は禁忌としているが、発覚していないものを含めた既存の妊娠の場合でも1.5mgのレボノルゲストレルの単回投与は問題ではないとしている[104]

日本での事例[編集]

緊急避妊薬が処方されたクリニックではのべ1414人の女性の緊急避妊薬の処方についての処方状況を確認したところ、処方理由としては、コンドームが破れた・外れたが最多であり、次いでコンドームをつけなかったという理由が多かった[105]

日本では薬剤の転売や薬害などのリスクもあるとされ、「3週間後に確実に産婦人科医を受診するよう求める」「産婦人科専門医など、高度な専門知識をもつ医師のみに限定する」「1回分のみの処方とし、調剤薬局の薬剤師が内服の事実を確認する」などの厳格な要件を設定する方針でオンライン診療指針見直し検討会が行われた[106]

日本産科婦人科学会編「緊急避妊法の適正使用に関する指針」(平成28年度改訂版)でも異所性妊娠について総合的にはレボノルゲストレルによってこのリスクは増加しないことと、既に妊娠していた場合、反復投与によって流産が誘発されることはないと述べている。ただし、副作用として服用後は、3.6%に悪心が認められ、2時間以内に嘔吐した場合追加服用を要するとあるが、診療時間外であった場合の示唆はない[107]

『フランス・ジャポン・エコー』編集長レジス・アルノーからは、経口妊娠中絶薬はすべての先進国、それに発展途上国の多くでも認可され中国やウズベキスタンの女性も手に入れているにも関わらず厚生労働省は、経口妊娠中絶薬についてFDAの古い危険という、誤った見解の情報を発し続けてリンク切れを起こしている[108][109]、ことを指摘しており、認可されていない状況を憂いている[110]

ハーバード大学パブリックヘルス大学院博士(国際保健)、東京大学薬学部学士である赤地葉子も厚生労働省の「ミフェプレックス(MIFEPREX)(わが国で未承認の経口妊娠中絶薬)に関する注意喚起について」は古い情報に基づくものと指摘している[111]

セルフメディケーションのスイッチOTC化の承認状況一覧では女性固有の問題である膣カンジダ症の承認に25年以上かかる一方、発毛剤では6年という短期間で承認されている[112][113]

緊急避妊薬・避妊器具の効果[編集]

ノルレボ錠は国内の第Ⅲ相臨床試験において、性交後72時間以内にノルレボを1回経口投与した結果、解析対象例63例のうち、妊娠例は1例で、妊娠阻止率は81.0%であった[114]

全ての妊娠が防げるわけではなく、性交後72時間を超えて本剤を服用した場合には63%であり、妊娠阻止率が減弱する傾向がみられた[115]

国内で認可されているノルレボは、売上ベースで年間11万個の販売に対し、日本国内の人工中絶は年間におよそ16万8千件(平成28年度・厚生労働省)で、1日にすると国内の中絶数は460件という結果から、緊急避妊薬にリーチできない人が多数であることを懸念し、性交後120時間(丸5日間)以内の服用で効果がある「ella(エラ)」というアフターピルを処方する医師もいる[116]

銅付加子宮内避妊器具IUDは避妊をしなかった性行為の後、5日以内に子宮内に挿入すると、緊急避妊の方法としてほぼ100%の効果があり、希望があれば長期的な避妊手段として入れたままにしておくことも可能である[117]

子宮外妊娠の懸念[編集]

WHOによると懸念される子宮外妊娠は、以前は緊急避妊薬使用に対する禁忌と考えられていたが、55,666人の女性事例のうち5件子宮外妊娠しか報告されていないので、ECは安全であると考えることができるとされている[118]

緊急避妊薬の一般販売に向けて[編集]

2020年7月にNHKのニュース番組で、緊急避妊薬の処方箋なしの薬局販売に反対する理由として、産婦人科医会副会長が、若い女性への性教育の場が少なく「次も使えばいいや」という安易な考えに流されてしまうことを懸念する発言をしたところ物議を醸した[119]

2020年10月、政府が性交直後の服用で妊娠を防ぐ「緊急避妊薬」について、医師の処方箋がなくても2021年より薬局で購入できるようにする方針を固めたと報道された[120]

内閣府の第5次男女共同参画基本計画素案には、「避妊をしなかった、又は、避妊手段が適切かつ十分でなかった結果、予期せぬ妊娠の可能性が生じた女性の求めに応じて、緊急避妊薬に関する専門の研修を受けた薬剤師が十分な説明の上で対面で服用させることを条件に、処方箋なしに緊急避妊薬を利用できるよう検討する。」という文言が盛り込まれた[121]

これに対する緊急避妊薬に対する日本医師会猪口雄二副会長の会見では、薬局でなく産婦人科で取り扱われる緊急避妊薬のアクセスの悪さが指摘されていることを述べ、専門の研修を受けた薬剤師が十分な説明の上で対面で服用させるとの同調査会の提言には同意を示している[122]

2020年12月、日本産科婦人科学会の木村正理事長は定例記者会見で「いろんな条件が成熟していない」とし、導入に極めて慎重な姿勢を示している[123]

医師法はその第1条で「医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」とその使命を定め、公益社団法人日本産婦人科医会はその会則で「母子の生命健康を保護するとともに、女性の健康を保持・増進し、もって国民の保健の向上に寄与することを目的とする」ことを謳い、女性保健に関する啓発を事業内容として掲げている[124]

日本産科婦人科学会の木村正理事長は学会代表あいさつでリプロダクティブ・ヘルスの概念を日本の女性にあまねく享受を目的として述べている[125]

日本に住む学齢期の10代を初め、既卒者であり既に経産婦も含まれる20~40代の妊孕性がある女性達が、国内において海外の多くで使用される緊急避妊薬を入手するという同等の権利を得るための要件として関係者から述べられる、既卒者にも届く「性教育の普及」や薬の悪用・乱用を防ぐなどの「いろんな条件」解消に向けては、医師自身も寄与することがその立場上要されている。現役の産婦人科医からは「性教育が先」論については、これまで性教育を十分に受けてこられなかった女性に対して何の救済もないことを指摘し、性教育充実もアフターピルへのアクセスも両方一刻も早い対応を求める声がある[126]

2020年10月、田村厚労相は緊急避妊薬薬局での販売について「これまでの議論を踏まえ、しっかり検討していく」と述べたが解禁の時期は「期限を区切ってとは考えていない」と明言を避けている[127]

厚生労働省は厚生労働省設置法により、「国民生活の保障及び向上を図り、並びに経済の発展に寄与するため、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進並びに労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ること」を任務としている。性教育が不十分なことが過去のピル承認の遅れやアフターピルや中絶薬承認や市販化への障壁であるならば、既卒者に届く性に対する正しい知識を提供することは厚生労働省の責務となっている。医師からはアフターピルの議論が男性を中心に行われてきたことに対し、本来、避妊やその方法は、社会全体の問題であると同時に、まずは「女性の生き方」の問題で「女性の生きる権利」の一部あるとの指摘がある[128]

一連の緊急避妊薬OTC化未承認問題については、2021年2月The Lancet Regional health western pacificにも掲載された[129]

費用の問題[編集]

人工妊娠中絶の件数が減った場合に、医療機関の収入が減る可能性を医師が懸念すると主張する意見もあり[130]、妊娠中絶が産婦人科医や医療機関にとっての収入源となっていると言う者もある[131]

医師会が「時期尚早」という理論でアフターピルOTC化や経口中絶薬を見送る背景には、人工中絶費用は自由診療にあたるため患者の自費負担で15~30万円が相場であるが、推計240~510億円ほどの産業規模のマーケットであるためその費用も病院には貴重な収入源であることが指摘されている[132]

クリニックの中には、12週までの中絶手術をWHOの推奨する手動真空吸引法で行い、費用は9万円で休診曜日なく、アフターピルも4800円、全ての施術について料金表で明示している医院もある。しかしノルレボ錠ではなく前時代的で副作用が強いヤッペ法を安価で処方する医院もあるため注意を要する。

安全性など[編集]

日本やポーランド、アイルランド等のミフェプリストンが未認可の国々では、掻爬術あるいは吸引処置が選択されるが、子宮穿孔や出血などの合併症のリスクが高く安全性において「薬物による中絶」に大きく劣る。ミフェプリストンが開発される以前は、妊娠初期であっても吸引術や掻破術がファーストチョイスとして選択されていたが、ミフェプリストンが認可された国々ではリスクの問題のためにファーストチョイスとされない。また、子宮内膜が薄くなる子宮内膜菲薄化、子宮に穴が開いてしまう子宮穿孔や術後にアッシャーマン症候群を起こすことがあり、不妊症となるケースがあるのも欠点となっている。海外では30年以上前から使用され、安全な中絶・流産の方法としてWHOの必須医薬品にも指定されている経口中絶薬(ミフェプリストンミソプロストール)は日本では中絶や流産に対しての適応は許可されていない[133]

厚生労働省は2018年、インターネットでインド製と表示された経口妊娠中絶薬を個人輸入し服用した20代の女性に、多量の出血やけいれん、腹痛などの健康被害が起きていたと発表し、個人輸入規制の強化を図った[134]

バイアグラが個人輸入による健康被害を生み、スピード承認の運びとなったことと対比的な動きとなっている。不妊治療中、流産の掻爬手術を麻酔なしに2回受けたバイオリニストは心身ともにつらい経験だったことを著作で語っている[135]

中絶された胎児[編集]

中期中絶では薬で陣痛を促し、出産と変わらない状況で子供を生み出す。男女の性別もわかる場合があるし、産声をあげたり動いたりする場合もある[136]

最終的に体内から排出された胎児は棺に納められ火葬される。産婦人科看護師はその手術を受けた若い女性の支援を通して、アフターピルが女性が自分を守るためにある薬であり、自分で自分の身体を、自分の未来を守る事はそんなにいけないことなのだろうかと心情を吐露している[137]

中絶胎児は万能細胞としてアメリカではパーキンソン病患者に胎児から取った神経細胞を移植する研究が進められ、中国でも脊髄損傷患者などに実際の治療が始まっている[138]が、現状では女性から摘出した中絶胎児は産婦人科が処分しているが他の用途の転用可能性もある。

さまざまな意見[編集]

第5次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方についての公聴会及び意見募集に寄せられた意見では、20代の女性からは女性達自身が避妊の知識があるからアフターピルを薬局で購入を望むのに、なぜ「私たちが無知」という前提にされるのか、望まぬ性交で積極的にできる避妊方法であるアフターピルが速やかに利用できない憤りと、女性が自分の人生や自分の身体を管理することをこの国は認めないと怒りを表明している[139]

日本においても、世界で承認されている、子宮内避妊システムの小さいものの利用、腕に入れるインプラント、皮膚に貼るシールの利用を含め「産む・産まない」の選択を女性自身が決める「リプロダクティブ・ヘルス・ライツ」の権利が尊重される必要がある[140]

2020年10月、厚生労働省が開催した「第12回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチOTC検討会議)において、これまでスイッチの可否を握ってきた検討会が、スイッチ促進へ向けた課題解決案を話し合う場へと姿を変える見通しとなった。スイッチが停滞してきた状況が打破される予期とメンバーのドラッグストア関係者なども加入する可能性が報道されている。医療用医薬品で義務化された服薬フォローアップの実施を含め、薬を渡しっぱなしではない関りを店頭ができれば、国民へのQOL向上に資する意義は大きいと期待されている[141]

2020年11月、日本保健薬局協会は、薬剤師の技量を磨き緊急避妊薬をOTCとして薬局で提供することは可能と思うとの見解を示している[142]

薬剤師のオンライン処方研修会も順次執り行われている[143]

カナダに拠点をおく非営利団体「ウィメン・オン・ウェブ(Women on Web)」(WoW)はオンライン診療を通して日本人女性にも避妊薬・妊娠中絶薬を処方しており、メールは日本語でも可能である。厚労省によると、WoWを通じて処方を受ける場合には制度上「個人輸入」にあたり医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき医師の診断書や指示書が必要になるが、国外の医師の処方せんもこの指示書にあたるため問題がないとされる。しかし、本人を含む、母体保護法指定医以外の人が中絶をした場合、刑法上の堕胎罪に当たる可能性があることも報道されている。この団体代表者レベッカ・ゴンパーツ医師は、社会権規約(ICESCR)に批准している日本政府には、避妊薬、その他の避妊方法、緊急避妊薬、中絶薬を含むWHOの必須医薬品を確保する義務があるため、日本の女性たちには中絶薬を使う権利を持ち中絶薬は安全であり世界中で使用されていると表明している。日本からWoWに連絡をした女性たち、支援を受けた女性たちは年々増加し、2011年から2020年までに合計4175件の相談件数と、2286件の避妊薬・妊娠中絶薬の発送件数があった[144]

承認までの試験[編集]

日本では医薬品開発を目的とした臨床試験(治験)は,第Ⅰ相,第Ⅱ相,第Ⅲ相などの開発相を経てPMDAでの1年の承認審査後、承認可能と判断された場合には厚生労働省の薬事・食品衛生審議会に諮問され、承認して差し支えないと判断されれば厚生労働大臣により承認されるというプロセスを経る[145]

もともと胃潰瘍などの治療薬として承認済である経口中絶薬に使用するミフェプリストン、ミソプロストールは第Ⅲ相試験を2020年8月に終了している状態にある[146]

外国における中絶との比較[編集]

岡山県津山市で住宅団地の浄化槽から乳児の遺体が見つかった事件では、岡山県警はベトナム国籍の女性技能実習生について死体遺棄容疑で4月16日に逮捕し処分保留で釈放したが5月に堕胎容疑で再逮捕している。実習生のため妊娠が発覚したら帰国させられると思った末の犯行だった[147]

しかし彼女がもしベトナムにいたとしたら中絶費用は妊娠初期で500円弱、中期でも1万円強。貧困地域や遠隔地では無料であった。今でも日本では堕胎罪、妊婦自身が行った場合には自己堕胎として罪に問われる問題がある[148]

韓国では2021年1月1日から堕胎罪が無効化された[149]

ひとり親[編集]

人工妊娠中絶特別養子縁組といった手段を取らず、分娩費用を助成する入院助産制度を活用して出産するなど若年層で子供を産み育てる選択を取ったとしても、未婚のまま、または離婚の場合も子どもを引き取るのは2012年統計では妻側が83.9%となっており、一人親になるのは圧倒的に母親である[150]

日本ではひとり親の相対的貧困率が高く、無職では60%で30か国中ワースト12位と中位であり、有業のひとり親の相対的貧困率については58%で諸外国中ワースト1位[151]という状況にある。

政府調査ではひとり親の4世帯に1世帯は、子どもの世話・家事について頼れる人が「誰もいない」うえ、金銭的援助も望めない世帯の割合は、母子世帯が 51.5%となっている[152]ため準備ができていない時の妊娠・出産は女性の人生でより困難な大きな転機となる。なお、出産費用の相談先について円ブリオ基金などのNPO団体もある[153]

青少年の性の現状[編集]

日本性教育協会の青少年の第5回性行動全国調査によると、交際相手のいる中学生で1割、高校生では男子7割と女子5割、大学生では9割以上がセックス経験があり、初体験の相手は中学生では自分と同い年、恋人が増加している。性行動が低年齢化が日常化によって進行していると言われている[154]

若年層の妊娠出産が年400件で推移する沖縄県では、医師と児童相談所所長が中学終了まで一定程度の性教育の必要性と性的同意の重要性を説いている[155]

東京都では高校生に対する性教育は東京産婦人科医会に依頼されて、高校の所在する地域の医師が派遣されるが、約200余の都立高校のなかで2017年(平成29年)は32校にしか過ぎないと報告されている[156]

避妊薬の解禁に向けて[編集]

日本では女性の9人に1人が人工妊娠中絶を経験しているとの統計があり[157]、平成30年度件数は出生数92万[158]に対し人工妊娠中絶件数は16万を超える[159]

三大疾病と比較し心疾患での死亡数が年間約20万例よりやや少ないが、脳血管障害での108165人の死亡者数よりも多い[160] [161]

2020年10月現在、市民団体が、緊急避妊薬を医師の処方箋がなくても薬局で購入できるよう求めることに賛同する10万7000人分の署名を厚生労働省に提出した[162]が、その処方箋なしでの薬局販売は2017年の厚生労働省の「処方箋医薬品」から、「要指導・一般用医薬品」への転用に関する評価検討会議で、緊急避妊薬の市販化について審議の場において性教育そのものが、日本はまだヨーロッパアメリカからかなり遅れていることも理由として承認が否決されている。

パブリックコメントは「今は時期尚早で否ですという形でパブコメを行うということ」という前提で行われ[163]、寄せられた意見は全部で348件、賛成が320件、反対はわずか28件だったにも関わらず、国民の意思が反映されない決着となった[164]

新型コロナウイルスの影響[編集]

新型コロナウイルスについて米疾病予防管理センター(CDC)が2020年11月6日に公表した最新調査結果では妊婦は同じ年齢層の妊娠していない女性と比べて、新型コロナウイルスに感染した場合に重症化や死亡のリスクが高いと報道されている[165]

薬局で日常的に市販されれば緊急避妊による来院者を増やす必要がなくなる。現在では、直接対面ではなく、コロナ影響化によりオンライン診療及びオンライン処方で研修を受けた医師と薬剤師が処方することが可能となっている。産婦人科だけではなく総合病院が脳神経外科や眼科医師も処方可能リストに名を連ねている[166]

コロナ禍による影響を受けた若年層の妊娠不安増加を背景として緊急経口避妊薬の市販化への議論が高まったが、日本産婦人科医会の前田津紀夫副会長は「日本では若い女性に対する性教育、避妊も含めてちゃんと教育してあげられる場があまりにも少ない」「“じゃあ次も使えばいいや”という安易な考えに流れてしまうことを心配している」と2020年7月にNHKでコメントし、物議を醸しだした[167]

不妊症[編集]

なお、子供を望むができない不妊症では加齢が原因の場合もあり、女性は胎生期に最大の卵子を持ち、以降減少していくため、女性の妊娠しやすさ(妊孕性)は、おおよそ32歳位までは緩徐に下降し、卵子数の減少と同じくして37歳を過ぎると急激に下降していく。また男性も年齢とともに妊孕能が低下する[168]。女性が35歳以上の出産を高齢出産と呼び、流産の上昇や胎児の染色体異常の頻度などリスクも高くなる[169]

不妊については二人目不妊の問題もあり、雑誌社の調査では不妊治療経験者中で第二子のときに不妊治療を経験した人は6割を超え、その内半数が第二子で初めて不妊治療をした状態にあり、子供を望んでいて最初の妊娠で問題がなくとも加齢やセックスレスにより妊娠しづらくなる問題が起こる場合がある。このため生涯設計のため生殖可能年齢を早期に理解することも重要である[170]

日本産科婦人科学会によると不妊治療の体外受精によって2017年に誕生した子どもの数は、この年に生まれた子どものおよそ16人に1人の割合となっており[171]、誰もが自然妊娠するとも限らない現状がある。女性の胎内で胎児が育たない不育症の問題もある。2021年には厚生労働省が不妊治療費用の助成を拡大することを決定した[172]

一方で、若い女性に正しい性知識が不足が普及していないことで2008年には女性歌手(当時25)が、35歳を過ぎた母体では羊水が腐るため早期の出産をという発言をラジオでして批判にさらされるなど誤解を生む状況がある[173]。2020年10月には女性芸能人(80)が不妊原因は9割9分は堕胎とテレビ番組内で発言し、物議を醸しその後謝罪している。[174]

世界保健機構(WHO)の発表によると、不妊症の方のうち、不妊症の原因が女性側のみというケースは41%、男性のみは24%、男女双方は24%、原因不明は11%となっている[175]

クラミジア感染症が不妊の原因となる場合もある。また不妊には肥満や喫煙が影響する場合があり、男性は70代でも生殖可能な一方で、サプリメント摂取による男性不妊も指摘されている[176]

胎児の出生前診断の普及により、不妊治療後に授かった子でも診断結果によって異状があった場合中絶する覚悟で検査をする実態もある。2013年から5年半の間に、6万人を超える妊婦が新型出生前診断を受けて陽性確定の9割が中絶したと報道されている[177]

コロナ禍における妊娠[編集]

2020年現在では、コロナ禍において全国の妊娠届の件数は、感染への不安が高まった3月ごろに妊娠した人が届け出る5月以降で7月まで前年同期を1割超下回っているため、来年度は出生数が80万人を割り込む可能性がある[178]

ただしこれは日本人女性の産み控えだけではなく、日本に来ていた外国籍の家族滞在者などが本国に帰り日本で出産しなくなったことが影響している可能性もある。なお、同時期に「嫡出推定」制度見直が報道された。これは離婚から300日以内に生まれた子どもは前の夫の子と見做すことなどが規定されているが、離婚前に既に前の夫ではない男性と交際があった場合や早産、医学の発達により未熟児も生存可能となったことなどを背景として改定される見込みとなった。現状では前の夫の戸籍に入らないようにするため出生届がなされず無戸籍になることがある[179]

月経をめぐるトラブル[編集]

このほか、性にまつわる問題として現代の女性は初経が早く、妊娠・出産の回数も少ないため、生涯の月経回数が多く月経トラブルも増加している。低用量ピルによる治療が有効だが普及率は3%となっている[180]

ピルは子宮内膜症、機能性卵巣嚢胞、子宮体がん、不妊症になる可能性を低下させる効能も言われている[181]

働く女性の8割以上が生理痛やPMS(月経前症候群)による仕事への影響を感じており、その影響で野経済的損失は年間6828億円との調査結果がある。このため、福利厚生制度で生理痛やPMSをやわらげる低用量ピルの服薬の支援を始めた企業もある[182]

アスリートが心身を追い込むと生理が止まることがあるが[183]、低用量ピルは2008現在で欧米で行われた調査によると82%のトップアスリートが低用量ピルを服用さしており、継続的に月経対策を行われてコンディションを整えている。月経困難症やPMS(月経前症候群)、過多月経(経血量が多い)にも処方されている[184]

子宮内に装着する子宮内システム(IUS)も最長5年に渡る高い避妊効果と月経困難症の緩和が効能としてある[185]

感染症[編集]

1980年代以降、後天性免疫不全症候群(エイズ)の存在が取り上げられるようになり、性教育もその存在を無視することはできなくなった。エイズが流行しているとまで言える状態にまで達してしまったアフリカ各国においては、研究者たちのほとんどが、性教育をきわめて重要な公共衛生計画と捉えている。米国家族計画連盟など、国際的な組織の中には、幅広い性教育を実践していくことは、人口爆発の危機を乗り越える/女性の権利を向上させるといった地球規模的な成果を達成することに繋がる、と考えている人々もいる。

性教育により、クラミジア梅毒HIV性感染症や、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染による子宮頸がん中咽頭がん肛門癌陰茎がんなどから身を守る方法を学ぶことができる。

2019年、淋病は男性が6,467人、女性が1,738人で男性は1999年より減少、女性は同水準である。2019年梅毒は男性4,384人、女性2,255人となり平成22年までは男性は同水準、女性は減少だったものが一転し増加傾向にある[186]

性器ヘルペス以外の性感染症は全て男性が多く罹患している。梅毒の増加については風俗を利用する中高年の男性や、そこに勤める20代の女性などから感染が広がっているとみられている。男女ともに年齢関係なく、正しい性知識の普及が必要とされている[187]

子宮頸がん[編集]

子宮頸がんはそのほとんどを性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を原因とし、年間約1万人が罹患し、約2,800人が死亡している[188]

ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染は20歳前後が多く[189]、最も感染機会が多いのは性体験を始めた直後で性器の挿入の有無に関わらず性器の皮膚部分でも感染する。

正常な免疫状態の女性が感染から子宮頸がんに進行するには15年から20年かかる[190]

妊娠・出産年齢や子育て世代と発症のピークが重なることから、子宮頸がんは「マザーキラー」とも呼ばれる[191]

HPV感染を防ぐヒトパピローマウイルスワクチンを公費でうてる定期接種は小学校6年生から高校1年の女子が対象であったが、2020年現在、男子へも対象を拡大する方針となった[192]

私費の場合、2013年時点で1回あたり1.5万から2万円で3回接種を要する。HPV感染者がワクチンを打っても病状進行はしないが治癒効力もない[193]

ただし罹患していない型は防げる。罹患当時29歳だった女優も子宮頸がんの経験を公表し、検診を呼びかけている[194]

2021年1月、国立研究開発法人国立がん研究センターは、母から子供にがんが移行することを公表した。出産直後の赤子が母親の子宮頸がんのがん細胞が混じった羊水を肺に吸い込むことによって、母親の子宮頸がんのがん細胞が子どもの肺に移行して小児での肺がんを発症した2事例を発表した[195]

1組目の男児は免疫療法薬で治療できたが、2組目の男児は手術で肺がんを切除した。母親2人は出産後や出産時にがんと診断され、その後死亡したと報道されている[196]

その他の感染症[編集]

このほか、出生児を守るために母子感染による「先天性風疹症候群」を防ぐため、ワクチンの定期予防接種制度により一度も風疹の定期予防接種を受ける機会がなかった40代と50代一部男性を対象に2019年から2021年度末までの約3年間に原則無料で抗体検査・予防接種が行われている[197]

性行為がなくとも唾液を交換するディープキスで罹患する病気もある。伝染性単核症(infectious mononucleosis)は乳幼児期に初感染をうけた場合は不顕性感染であるが、思春期以降に感染した場合に発症することが多く、kissing disease とも呼ばれる。罹患で多くの場合38℃以上の高熱で 1 - 2週間持続する場合が多い[198]

2021年にはコロナワクチンの接種が開始する見込みだが、新型コロナワクチンとその他のワクチンは、互いに、片方のワクチンを受けてから2週間後に接種できるため、接種間隔に留意し接種計画をたてる必要がある[199]

性犯罪[編集]

性的同意年齢[編集]

日本では明治時代に制定された性犯罪に関する制度の継続により、13歳の中学1年生から性行為に同意する能力があるとしている。2020年5月には、性的同意年齢を13歳からとしていた韓国では通信アプリのチャットルームで、脅迫などにより行わせた女性のわいせつな動画や画像を提供して暴利を得た「n番の部屋事件」に中学生とみられる被害者が含まれていたことをきっかけとして年齢を16歳に引き上げた。またフランスも性犯罪事件によって15歳に引きあげられた結果、日本やアメリカ、ドイツ、イギリス、スウェーデンなど14~18歳とする各国より最も低い13歳となっている[200][201]ことにより、一層若年層に自己を守る知識が不可欠となっている。

カナダでは的関係を持つことができる同意年齢は、16歳であるが刑法は「年齢が近い場合」あるいは「ピアグループ(同年齢集団)」の例外規定を設けており、12歳及び13歳に対しても「年齢が近い場合」の例外がある。イングランド・ウェールズでも犯罪認定年齢は16歳だが、性犯罪法は、性的虐待の場合以外の16未満同士による性行為承諾の規制を目的としてない。ただし児童保護の視点から、法令は13未満の承諾は法的効用を持たないとし、12歳以下の児童との性的行為はもっとも重度な刑法が適応される[202]。第二次成長が起こった12歳頃から妊娠可能な性交は生物的に可能なため、このように諸外国では同世代での性行為については性的合意年齢の除外規定を設けている場合がある。

身近な人からの性犯罪が多い[編集]

加害者は知人や親族など身近な人からのことが多い。実父に小学生時代から性虐待を受けていた女性は「家族がばらばらになる」とその被害を長期間打ち明けられなかったが、父親は避妊しない性行為すら虐待だと認識していないことが裁判で明らかにされている[203]

教師や塾講師など信頼する身近な大人から猥褻行為や性暴力を受ける事件もあり、被害者は自傷行為に陥ったり成長してからその意味を理解して深く傷つく場合がある[204]

2015年版犯罪白書によれば、摘発した性犯罪事件のうち、約3割は顔見知りによるものという[205]

特定非営利活動法人 性暴力救援センターの東京理事長の報告では、加害者の7割が顔見知りであった。性暴力では殺される恐怖で抵抗することができない被害者を見て、加害者が勝手に被害者が性交に同意したのだと思い込むことの多い被害がある。顔見知りでない場合でも地方から上京したばかりの女性が道を教えてくれと頼まれ、駐車場の車内などで被害にあうこともある[206]

中学校で、部活動の副顧問をしていた男性教諭からわいせつ行為を受けた女子生徒が、高校進学後自殺した事件も起こっている[207]

小学校3年生の担任が複数の受け持ち女児を呼び出し日々下着の中に手を入れるなどの猥褻行為を行い懲戒処分で失職となった教員が、その後障害のある子どもたちの支援施設に就労している実態もある[208]

シッターによるわいせつ被害事件では、2020年8月まで6回逮捕された加害者はNPOキャンプのボランティアスタッフ、児童福祉設の職員などの場でも犯罪を繰り返していた[209]

フランスではどのような相手でも体の大切な部分を触らせない教育の重要性を説いている[210]

性犯罪は再犯性が高い[編集]

1988年におきた東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件では、最終的に犯人は幼女を裸にして写真を撮影していたところをその父親に見つかり警察に通報され逮捕に至ったが、少女の父親が仏心を出して通報しなかったら事件は解決しなかったとも言われている。わいせつ行為には再犯制性が高く通報することは次の被害者を生まない意義もある[211]

小児への性犯罪は再犯罪率も高く、9歳の特別支援学級女児を裸にして撮影した教員は以前に別の中学で猥褻行為をした後小学校で復職し犯行に及んだことが分かっている[212]

男女間における暴力に関する調査[編集]

内閣府が平成30年3月公表した 「男女間における暴力に関する調査報告書」によると、これまで結婚したことのある女性のうち、配偶者などから、「身体的暴行」「性的強要」などの暴力を受けたことが「何度もあった」人はおよそ7人に1人がくり返し暴力を受けた経験がある[213]

平成30年の内閣府男女共同参画局の「男女間における暴力に関する調査」によると、無理やりに性交等をされた被害者の女性は 7.8%、男性は1.5%であり、18歳未満のときにあった被害について、「その加害者は監護する者(例:父母等)でしたか」という質問に対して、「監護する者」が 19.4%であった。被害の相談をしなかったのは、女性で58.9%、男性で39.1%で、半数が羞恥心によると回答している[214][215]

レイプ[編集]

国際政治学者の三浦瑠麗は中学3年生のとき車に連れ込まれ、集団レイプ被害を受けたことをその著作で公表している。当時は家族などにもその被害を打ち明けることができなかったと語っている[216]

法務省は2020年3月、性犯罪を厳罰化した2017年の改正刑法施行から3年の実態を調査した報告書を公表し、被害者や心理学の専門家、加害者臨床に携わる医師らへのヒアリングで被害者は必ずしも強い抵抗を示すわけではないこと、激しく抵抗しないと被害が認められにくいなどの指摘があった。準強制性交等罪の要件である「抗拒不能(身体的・心理的に抵抗するのが難しい状態)」の定義が曖昧だとの課題もある[217]

性暴力の被害者心理に詳しい精神科医の小西聖子は、抵抗しないほうが早く終わるという理由で自分から応じる場合や、加害者の機嫌を損ねてさらに危険にさらされないように笑って応じることもあると父から娘への性暴力の公判で証言している[218]誘拐事件や監禁事件などの犯罪被害者についての臨床においても、被害者が生存戦略として犯人との間に心理的なつながりを築きその支配下に置いて協力的になるストックホルム症候群もよく知られるところである[219]

報道機関の推計では、警察が被害届を受理した事件数は、推定被害者数の4.71%でしかなく、レイプ事件が裁判となる事例は1.92%としている。その被害者の多くは泣き寝入りしている実態がある[220]

被害にあったときの凍りつき[編集]

実際に被害に合った時にはフリーズ(もしくは凍りつき)反応がスウェーデンではレイプ被害者の70%で見られている。これは動物にも見られる擬死状態で、強直性不動状態になることにより捕食者の意欲をそぎ生存確率を上げる役割がある[221]

災害や被害にあった際に想定外のことに頭が真っ白になって反応ができなくなってしまうことを「凍り付き症候群」と呼び逃げ遅れる要因として知られている[222][223]

男性への性被害[編集]

2017年に性犯罪を厳罰化する刑法改正案が可決成立し、第177条の強姦罪が「強制性交等罪」に改められ、被害者を女性に限っていた強姦および準強姦の罰則規定が、男性にも等しく適用となった。日本の未成年男子で何らかの性被害を受けたことがある人は高校生男子で5~10人に1人、レイプ被害率は1.5%となっているとの統計もあり、男児だから性被害に合わないというわけではなく、自身を恥じ入りトラウマとなって精神的にも被害を受けるケースもあるため男女共に性犯罪を防ぐ知識と犯罪に合ってしまった時のケアが大切となる[224]

2020年9月、大阪市では元中学校教師の男らが男性に睡眠薬を飲ませ準強制性交の疑いなどで逮捕され、被害者は100名以上にのぼると見られている。教材の写真と偽って人材を募集していた[225]

2021年1月には大阪府の私立中学校の修学旅行引率教諭が男子生徒に薬物入り飲料を飲ませて猥褻行為をし、逮捕されており、男性も被害者になることがある[226]

痴漢[編集]

電車内での痴漢行為という性犯罪に日常的にさらされた被害者の女子中学が自殺念慮を抱きリストカットした事例もある[227]

児童虐待[編集]

厚生労働省の虐待死の統計では、その被害者は半数以上が0歳であり、児童虐待死が最も多いのは「0歳0ヶ月0日」となっている[228][229][230]

社会福祉法人恩賜財団母子愛育会の平成26年度調査によると、児童相談所一時保護所入所者の虐待は性的虐待年齢が13.03歳となっている[231]

強制わいせつ[編集]

男女交際の場においても、束縛や性行為の強要などが起こるデートDV危険性がある。現在、児童ポルノ被害の約4割は「児童が自らを撮影した画像に伴う被害」で、児童がだまされたり、脅されたりして自分の裸体を撮影させられた上、メール等で送らされる被害が増加している[232]

年上男性と学生層の女性との間である買春行為も含むいわゆる「パパ活」「援助交際」ではホテルで睡眠薬を盛られて強制性交被害に合い、わいせつ画像を撮影されたり強盗被害にあうこともある[233]

盗撮・リベンジポルノ[編集]

学習塾で生徒が講師から盗撮された事件では犯人は千葉県の迷惑防止条例違反で逮捕されたが、県により条例が異なっているため他県では犯罪として取り締まれない状態があり問題視されている。スマホの普及もあり盗撮の検挙件数は10年前の2倍超に達していることから、「盗撮罪」としての刑法改正が望まれている[234]

陸上競技や水着での協議で中高生を含む女性選手を狙った赤外線での盗撮や性的な意図による撮影により性的画像が拡散し被害にさらされている問題もある[235]

Vリーグではトイレの盗撮事件も起こっており被害者が特定できる状況でネットに画像が流出している[236]

同性間の事件もありスーパー銭湯の脱衣場で男性客らを盗撮したとして逮捕された中学教諭が、自校の男子生徒の着替えの様子を盗撮し児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)で起訴された事件も発生している[237]

その背景には刑法の犯罪者として前科がつかないことで抑止力が働かないこと、被害者となる女性への人権軽視の可能性がある。本人の承諾がなくとも一度インターネットに掲載され拡散された画像や動画は完全に回収することはできず、性的画像を提供したり撮影されたことから取り返しがつかない被害を長期に被る危険性も現代に生きる子どもには不可欠な知識となっている。

交際相手による性行為映像がポルノサイトに投稿された女子高生が学校から迫られて高校を退学、推薦入学も辞退せざるを得なかった事件もある[238]

三鷹ストーカー殺人事件では被害者の女子高生が撮影された性的画像が加害者にリベンジポルノで海外のポルノサイトに投稿されたが、被写体が未成年であったことからその投稿はサイトからは削除されている。セーファーインターネット協会の活動では、リベンジポルノや児童ポルノは団体の依頼によってその9割が削除されているので、被害に合った場合拡散を防ぐためにも速やかに相談するよう呼び掛けている[239]

韓国でも公衆トイレなどで盗撮が行われている。サイトに投稿された盗撮動画の多くは、トイレや店の更衣室で隠し撮りや過去の恋人が報復のために投稿したリベンジポルノであり、動画に撮影された複数の女性が自殺したと報道されている[240]。イギリスでは既に盗撮法が成立している[241]

コロナ禍での性[編集]

2020年3月から5月にかけて、新型コロナウイルス感染症拡大予防のためにとられた全国での一斉休校において、学校や部活も無くなり自宅にいる中高校生が性行為の機会を持ち望まない妊娠に至ったり、妊娠の不安を感じてこうのとりのゆりかごを設置する熊本市の慈恵病院の妊娠相談窓口に、過去最多の中高生からの相談が寄せられている[242]

コロナ禍の最中に性虐待が判明した少女には、10歳での母の恋人からの性暴力の妊娠や12歳での父からの性強要による事件も含まれ、日本は他国に比較し性虐待の顕在化がされていない可能性が高い一方で自分の体を守り大切にする性教育が不足しているため自らを責めたり我慢をする少女もいる[243]

女性の心身を守るうえでも性教育は重要である。更にコロナ禍の中では、在宅勤務や外出自粛要請で、女性や子どもがDV被害にあうことも懸念される[244]。国連人口基金は4月、ウイルス感染への恐れや外出制限により、女性が医療機関に行かないことが予期せぬ妊娠につながると指摘している[245]

相談窓口[編集]

性暴力を受けたときに相談できるワンストップ支援センターの大阪支部では、2010年度~18年度に来所し、受診につながった者のうち19歳以下の子どもは1285人で6割を占めている。また17、18年度、家族からの性暴力を訴えた子どもは161人となり、実父からが36%、実兄・義兄からが18%を占め、そのほか母の恋人・祖父・いとこが加害者の事例もある[246]

生活苦から援助交際と言われる年上男性との性行為の結果、妊娠に至った高校生もおり、親に打ち明けるにも「小さないのちのドア」などの支援者の援助を得て乗り切るケースもある[247]

2020年12月、産科医療機関でつくる「あんしん母と子の産婦人科連絡協議会」(本部・埼玉県)が、18歳以下の女性を対象に、無料で相談や初診を受け付ける事業を始めている[248]

性暴力被害の相談については「#8891」となり、2020年10月より全国共通の短縮ダイヤルが開設された[249]

日本以外の国の性教育[編集]

北欧の性教育[編集]

デンマークでは、性教育をカリキュラムの特定の部分に限定せず、必要な際には授業のあらゆる過程で議論される。スウェーデンでも同様であり、かつ性教育は1956年以降必修である。フィンランドでは15歳時に学校でコンドームなどの入った小包を渡される。これらの国はこのような教育の一方で性の早熟化には至っていない[250]

キリスト教と純潔教育[編集]

アメリカでは1980年代半ばから、性病エイズ感染症の予防からコンドームの使用指導をしていた。しかし1990年代初めより、キリスト教右派の「絶対禁欲性教育(Abstinence-Only Sex Education)」が導入された。結婚するまで絶対にセックスをしてはならず、妊娠の医学的仕組み、避妊の仕方も教えてはならないというもの。ブッシュ政権は莫大な資金援助をしたが、避妊を教えた場合は助成金を打ち切った。その結果、一部の州で未成年者の性病罹患と妊娠が急増した[251][252][253]

この純潔教育の顛末は、ドキュメンタリー映画『The Education of Shelby Knox』などで知ることができる。ピュアボール(Purity ball)という、父親と10代の娘が「結婚するまで処女を守る」と誓うダンスイベントも存在する。

2004年共同通信によると、18歳以上の成人1009人に行われた電話調査で、アメリカ国民の79%、キリスト教徒では87%が、聖母マリア処女懐胎を信じていることが明らかになった[254]

2016年にはカトリック系高校の女子生徒が保健室の先生に「生理が来ない」と相談したところ、「処女懐胎かも」と言われたエピソードも話題となった(国や年代は不明)[255]

アメリカでの論争[編集]

アメリカでは、「絶対禁欲性教育(Abstinence-Only Sex Education)」「包括的性教育(comprehensive sex education)」他の複数のカリキュラムがある。この二つについてはどちらが良いかについて論争がある。特に、子どもの性的行動を取り扱っていくことを善しとするか害と見るかに関して、激しく意見が割れている。より具体的に言えば、コンドーム経口避妊薬などの産児制限避妊具婚外妊娠に与える影響力、若年での妊娠、性感染症の伝染などの扱うことの是非である。アメリカの性教育をめぐる論争の火種となっているものの1つとしては、保守系の人々が推奨する純潔教育や絶対禁欲性教育(Abstinence-Only Sex Education)への支持が高まっていることを挙げることができる。性教育に対して、アメリカや英国も含めたより保守的な態度を示す国では、性感染症の蔓延や若年妊娠が高い率で生じている。

アメリカ心理学会の研究では、「包括的性教育(comprehensive sex education)」の有効性が示されているとした[256]。包括的・総合的な性教育の有効性は、査読誌の記事の複数によって明白であるとする一方、「絶対禁欲性教育(Abstinence-Only Sex Education)」は深刻な危険があるとの指摘がなされている[257]

アダルト業界の性教育[編集]

カリスマAV男優として名高い加藤鷹1988年デビュー)は、『秘戯伝授 最終章』(ISBN 4845412381)や各種メディアで、爪のケアなど衛生面の徹底、女性の反応を重視するセックステクニックを推奨している。また、加藤はパートナーと妊娠を望まない性交に及ぶ際に必ずコンドームを着用し、性感染症、望まない妊娠等を防止するよう呼びかけている。

女性が作る女性のためのAVメーカー「シルクラボ」にて圧倒的人気を博した一徹は、加藤鷹の時代から「AVはファンタジーである」という発信は多くの人が言い続けているが、気づかないままAVに影響されてしまう者が多いとした。ネット時代において、情報リテラシーが高い者は正しい情報を手に入れており、格差も大きいとしている。2014年に『恋に効くSEXセラピー』(ISBN 4040662296)を出版。大事なのは相手の立場に立って考えるコミュニケーションだとし、女性は勇気を出して違和感を伝え、男性はそれを受け止めて、やり方や考え方を変えていくことを提案している。2017年時点で、男性向けの激しいAVはもういい、女性が嫌がっている顔を見たくないという理由で、女性向け作品を見ている男性も少しずつ増えているとした[258]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 富士製薬工業の「レボノルゲストレル錠」[75]

出典[編集]

  1. ^ 小学校学習指導要綱体育
  2. ^ 中学校学習指導要綱保健体育
  3. ^ たなか成長クリニック・思春期 男子は約11歳6ヶ月で小学校5・6年生頃、女子は約9歳9ヶ月で小学校3・4年生頃
  4. ^ ワコール探検隊|実は…お母さんも自信がないはじめてのブラ
  5. ^ ワコール探検隊|「少女」から「おとな」へ約4年間で変化する成長期のバストブラジャー着乗率はstep1(思春期初来(乳首の成長開始)から初経の1年以上前)で31%、step2(初経前後)で56%、step3(初経の1年以上後から成人型乳房になるまで)で90%(大人用のブラジャー57%)
  6. ^ 朝日新聞2002年2月25日朝刊家庭欄
  7. ^ ジェンダーフリーとの戦い―「過激な性教育」実態と克服[リンク切れ]世界日報
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関連項目[編集]

外部リンク[編集]