素股

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素股(すまた)とは、その字が指し示すように素(直)に股がって行う性プレーの一つ。陰茎大陰唇に密着させて圧迫・摩擦することで疑似挿入感を与える性プレーである。潤滑剤(ローション)を使う場合もある。

男性同士で行う素股を兜合わせ女性同士で行う素股を貝合せと言い、いずれも性器同士を直接擦り合わせることで性感を得る股間交接英語: Intercrural sexである。

概説[編集]

現在では一般のカップル間でも行われる性プレーの一つではあるが、主に箱ヘルデリヘルホテヘルイメクラエステ (風俗店)と呼ばれる非本番系風俗店で、風俗嬢が男性客に行う擬似挿入行為である。

後述するが、一部の成人女性はクリトリスへの刺激によってオーガズムに達することができ、多くの男性は圧迫と摩擦による疑似挿入感によって射精できる。

アダルトビデオなどの映像媒体でも素股は一般的であるが、その行為自体は男女が互いの性器を擦り付けることが前提となっている。

前述のように直に性器を用いる性プレーであるが、一部の風俗店では性感染症の伝染や望まない妊娠などの可能性があるため、下着水着越しであったり、コンドームやトリップスキンの着用を前提にしている場合もある。 

また、本来の素股をマンコキ称して分別し、直に性器を用いずに下腹部太腿に密着させて疑似挿入感を与えたり、下腹部付近で手コキをさせる場合もあるようである。[1]

歴史[編集]

同性間[編集]

素股をおこなうゼピュロスヒュアキントス:古代ギリシャの壺絵には素股が見られる。 ヒュアキントスの手はゼピュロスの腰に回されており、互いの性器を擦り合わせている様子が伺える。

古代ギリシャ社会のパイデラスティアと呼ばれる少年愛の関係性において、素股は、精神的な指導相手を辱める行為と考えられていたアナルセックス[2]に代わって一般的に行われていた[3]。古代ギリシャ語ではディアメリゼイン(希:διαμηρίζειν, diamērizein(「二量体化する」))と呼ばれていた[4]

歴史学者のケネス・ドーバー英語版は、彼の著書『ギリシャの同性愛』("Greek Homosexuality")(1978年)の中でこのことをについて紙面を大きく割いており、また、古代ギリシャにおける男性間のセックスに関する現在の理論がここで導き出されている[5]。 ジョーン・ラフガーデン英語版は、ドーバーの著作から引き、彼女の著書『進化の虹』("Evolution's Rainbow")(2004年)の中の一節で、古代ギリシャにおける「ゲイ男性にとっての通常位」として、対面立位の素股に言及している[6]

近代の英語圏においては、男性が同性同士で行う素股は「プリンストン・ファーストイヤー」(Princeton First-Year)、「オックスフォード・スタイル」(Oxford Style)、「オックスフォード・ラブ」(Oxford Rub)、または「アイビー・リーグ ・ラブ」(Ivy League Rub)と呼ばれる、口語的には「フロット」(frot)とも言われる兜合わせであった[7][8]。これらの語彙は、「家を遠く離れた男子校で、長く寒い冬を過ごす盛りのついた若い青年たちの行動」、特に19世紀のそれを表している[8]

同性間の素股は、バイセクシャルゲイとして知られる、あるいはそうだったと考えられる歴史上の人物のうち、一部の彼らの性生活には欠かせないものだったと考えられている。伝記作家リチャード・エルマンによると、オスカー・ワイルドは彼の愛人であったロバート・ボールドウィン・ロスから素股を紹介されてからは、オーラルセックス以上に好んで行っていたようである[9]アレクサンドロス大王について、キュニコス派の哲学者が述べたとされる話によれば、生前彼は寵愛するヘファイスティオンと頻繁に素股を行っていたらしい[10][2][注釈 1]

歴史的に西欧において、素股はソドミー法や宗教的な制限を受けてきたが、そのほとんどがキリスト教の価値観に基づいて制定されたものだった[11]。『ヘレナガニメデの議論』(: Altercatio Ganimedis et Helene)と題された中世の文書には、ガニメデが、「臭く、スカスカで緩んだ女の洞窟」よりも「少年のツルツルした股ぐら」の方が優れていると述べている様子が描かれている[12][13]

カルカッタ郊外で実施された男性と性交渉をする男性の性的健康ニーズに関する1997年の調査の報告書によると、人口統計学的要因に基づいて回数にはばらつきがあるものの、全回答者の73%が素股を行っていた。セックスワーカーのうちわずか54%が、低所得者層は50%、ムスリムは40%しか同性間の素股を経験していない一方、ヒンドゥー教徒は82%、中所得者層のくくりでは88%が同性間の素股を経験していた[14]

異性間[編集]

青少年向けの性教育や青少年同士の性行為においては、避妊純潔を護る手段として注目されることが多い。性科学者シェア・ハイトによる女性のセクシュアリティに関する1976年1981年の研究によれば、一部の成人女性は素股によるクリトリスへの刺激によってオーガズムに達することができると報告している。

異性間で行われる素股は、北米およびヨーロッパ以外の文化圏でのものが、いくつか知られている。

日本語の「素股」はそのまま"sumata"として日本国外で認知されている。

日本においては、遅くとも近世以降には行われていたようである。古くは江戸時代遊女達は月経の最中であっても働かなければ生きられない環境下にあり、経血を付着させてしまうなど客に不快な思いをさせないため、男性器が女性器に挿入しなくて良い手技として編み出された。古来より受け継がれてきた伝統的な行為だとされる説もある[15][16]。概ね2010年以前の違法風俗店において、性器同士を擦る行為を業務内容として指導していたという。違反行為を推奨することで競合店との格差を付けようとしていた背景がある。しかし、令和現代のホワイト化が進む風俗業界においては、性器の擦り付けは不適切だと認識共有されているとする説もある[17]

ズールー語ではオクソマ(okusoma)と言い、アフリカ大陸南部の若者たちに受け入れられてきた習慣として長い歴史がある。

種類[編集]

騎乗位素股
男性が仰向けになり、女性が陰茎に跨がり、大陰唇に陰茎を密着させて前後に体を動かして摩擦する。女性主体のため男性が疲れにくい体位であり、最もスタンダードな素股である。[18]
正常位素股
女性が仰向けになり、男性がペニスを大陰唇に密着させて前後に体を動かす。男性主体のため女性が疲れにくい体位ではあるが、女性よりも男性は体重があることが多いため、男性は配慮が必要である。
後背位素股
女性がうつ伏せになり、男性が女性の側より股にペニスを挟み込んで上下に体を動かす。男性主体のため女性が疲れにくい体位ではあるが、女性よりも男性は体重があることが多いため、正常位素股同様に男性は配慮が必要である。
対面素股
女性と男性双方が向かい合い、女性の股にペニスを挟み込んで前後に体を動かす。大きく体を動かすことは難しいが、疲れにくく、男女が相互に愛撫しやすい。

通常のセックスの体位になぞらえて素股をすることが出来る。 フェラチオや手コキにも色々な手法があるのと同様に、上記のもの以外にも様々な手法が存在する[19]

感染予防[編集]

セーファーセックスあるいはセーフセックス(: Safer sex, Safe sex)は、性感染症およびHIV(以下、性病等)に感染するリスクを減少させる行動をとりながら、互いに粘膜接触をさせないよう配慮した性行為をする考え方である[20]

素股は前述のように直に性器を用いる性プレーであるためセーファーセックスには分類されない。素股は粘膜接触が原因による性病にかかる可能性がある。また女性はヒトパピローマウイルスの感染によって子宮頚癌を発症するリスクもある[21][22]

近年では特に、性感染症の定期検査を受けていない人達が梅毒の感染を広げているのではないかと懸念の声もある[23]。20代〜30代女性の梅毒罹患者数は急激に増加傾向にあり、自ら性病検査をする女性が増えたことにより認知できる数が増えたとも言える[24]

また男性も同様に30代〜50代の梅毒罹患者数は増加傾向にある。男女別患者報告数は、男性は女性のおよそ2倍となっている。

各々が十分な知識を持ち、無症状だからといって自分だけは大丈夫などと思わず、定期的に性病検査を行う必要がある[25]

俗説と迷信[編集]

インターネットなどで、素股で女性が快感を得られると謳う記事も存在するが、デメリットに関しては触れられていないことが多い。故に正確な知識を得ることが困難な人々に対して、誤認を生み出す原因となっている。前記のように、性病感染または望まない妊娠という女性特有の不安を抱えた状態の性行為において、恐怖感を抱えることは少なくない[26][リンク切れ]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ シノペのディオゲネス大王に宛てた手紙で「ヘファイスティオンの太腿に支配されているうちは善い大人になれない」と諌めている。

出典[編集]

  1. ^ 性戯の味方 
  2. ^ a b 藤村シシン (2020-06-05). 古代ギリシャのリアル (初版 ed.). 実業之日本社. p. 232. ISBN 978-4-408-13362-1 
  3. ^ Nussbaum, Sex and Social Justice, pp. 268, 335; Ferrari, Figures of Speech, p. 145.
  4. ^ Dover, K. J. (1978). “The Prosecution of Timarkhus”. Greek Homosexuality. Cambridge, Massachusetts: Harvard University Press. p. 98. ISBN 0674362616. OCLC 3088711. https://books.google.com/books?id=fstPVlTPBRQC&pg=PA98 
  5. ^ Dover, K.J. (1977). Greek Homosexuality. MJF Books 
  6. ^ Roughgarden, Joan (2004). Evolution's Rainbow. Berkeley: University of California Press. https://archive.org/details/evolutionsrainbo00roug 
  7. ^ The Oxford English Dictionary, s.v. "Princeton"
  8. ^ a b Piepenburg, Erik (February 2006). “What's rub got to do with it?”. Out: 74 and 76. https://books.google.com/books?id=M2IEAAAAMBAJ&pg=PA74 2011年2月18日閲覧。. 
  9. ^ Salon.com Sex | The Oscar Wilde centenary Archived 29 September 2007 at the Wayback Machine.
  10. ^ Lane Fox, Robin (1994). Alexander the Great. London: Penguin Books 
  11. ^ Project MUSE
  12. ^ Boswell, John (2005). Christianity, Social Tolerance, and Homosexuality: Gay People in Western Europe from the Beginning of the Christian Era to the Fourteenth Century. Chicago: University of Chicago Press 
  13. ^ Europe: Medieval”. glbtq. glbtq, Inc. (2004年). 2020年10月30日閲覧。
  14. ^ needs assessment of males who have sex with males in Calcutta and its suburbs”. Naz Foundation International (1997年). 2020年10月30日閲覧。
  15. ^ 「素股」は江戸時代初期から庶民に親しまれていた?
  16. ^ ローションはないが江戸時代にも「素股」はあった
  17. ^ 性戯の味方
  18. ^ 新人風俗嬢必見!体位別【素股】のやり方・テクニック大公開♪
  19. ^ 粘膜・体液接触を防ぐおすすめセーファーサービス体位32体位
  20. ^ 粘膜・体液接触を防ぐおすすめセーファーサービス体位32体位
  21. ^ http://www.std-support.com/ 性感染症コラム/素股行為で性感染症に感染する?.html
  22. ^ http://healthy.secret.jp/leavealone/ アソコが痒い!痛い!まさか性病?3大性病経験者の私が教えてあげる
  23. ^ NHK生活情報ブログ 梅毒患者が急増!(2019/02/06)
  24. ^ 東京都感染症情報センター
  25. ^ STD研究所
  26. ^ AskDoctors 素股での妊娠について相談させて下さい。

参考文献[編集]

Donnay, Catherine S. (2018年). “[https://dc.ewu.edu/cgi/viewcontent.cgi?referer=https://scholar.google.com/&httpsredir=1&article=1497&context=theses Pederasty in ancient Greece: a view of a now forbidden institution]” (英語). Eastern Washington University EWU Digital Commons. 2020年10月30日閲覧。

関連項目[編集]