C-17 (航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Taimusuriltupu (会話 | 投稿記録) による 2016年3月27日 (日) 23:08個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎登場作品: 説明文があるなら、定義の箇条書きにするのが望ましいはずです。)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

C-17 グローブマスターIII

C-17は、マクドネル・ダグラス(現ボーイング)社が製造し、アメリカ空軍が保有・運用する主力の用大型長距離輸送機アメリカ合衆国製輸送機としてはC-130(ハーキュリーズ)シリーズと並ぶベストセラー機であり、旧ソ連が擁したアントノフ社という東側諸国向け輸送機製造業大手(ソ連崩壊後の現在はウクライナ企業となった)が先行した東西冷戦時代に、一時的な大規模輸送力不足が指摘された西側諸国の兵站維持に欠かせない戦略輸送機として登場し、冷戦終結後の1990年代から2000年代を代表する大型輸送機となった。

愛称はグローブマスターIII(Globemaster III)で、旧ダグラス・エアクラフト社の開発した輸送機C-74 グローブマスターC-124 グローブマスターIIに由来している[1]

概要

C-17は、C-5戦略輸送機に近い大型貨物の長距離空輸能力と、C-130戦術輸送機並みの短滑走距離での離着陸が可能な性能を持つ大型輸送機である。

アメリカ空軍では、研究開発機を除く223機を航空機動軍団(AMC/Air Mobility Command)、太平洋空軍(PACAF/Pacific Air Force)、航空教育訓練軍団(AETC/Air Education and Training Command)、空軍予備役軍団(AFRC/Air Force Reserve Commnad)、州兵航空隊(ANG/Air National Guard)に配備しているほか、平和維持活動や人道支援によるの海外派遣が世界的に増えたことからその長距離・大型輸送能力が評価され、他国でも採用が広がっていた。

しかし国際的な軍事費削減の動きなどを受け、2013年9月18日ボーイング社は受注済みの22機が完成する2015年をもってC-17の製造ラインを閉鎖する計画であることを発表した。その後生産量に対して余剰分を新規発注する国家が現れ、カタールが新たに自国の空軍所属の政府専用機兼戦略輸送機として購入する契約がまとまった他、アメリカ国内からも中国脅威論が現実の問題として認識されるようになり、中東での多国籍軍による対テロ戦争が継続している事から生産の継続もしくは、C-5Mのように初期の生産分を近代化する改修工事工程を設ける提案がなされている[2]

歴史

C-17(愛称:グローブ・マスターⅢ)は、東西冷戦初期から中期を支えた傑作輸送機C-141 スターリフター(米軍内で「ハノイタクシー」との愛称でアメリカ人捕虜送還に使用された事で有名な大型機材)の後継機として、アメリカ合衆国本土よりヨーロッパNATO体制によって、将来的に東側軍事同盟ワルシャワ条約機構軍との前線地帯になると想定されていた東欧地域未整備小型飛行場独ソ戦と同様に東西両陣営の大規模な戦車戦が予測されていたポーランドからウクライナにかけて拡がる広大かつ平坦な草原地帯)に、重装甲車及び戦車などの戦略物資と空挺部隊を直接かつ大量輸送する構想で、初期構想では「戦域間空輸」(Intertheater Airlift)と謳われていた新規用兵ドクトリンの元で、対東ドイツ軍及びソ連軍機甲部隊との直接的対決を伴う作戦実施に必要不可欠とされ、新たな発想に基づき大型長距離輸送機を開発するとした「米次期輸送機計画C-X(Cargo experimental)」によって生み出された新型輸送機である。その性能要求は厳しく、未舗装の3,000フィート滑走路(914mx27m)で離着陸が可能で25m幅での転回機能を求められた。これにはボーイングロッキードなど3社が提案を行い、1981年8月にマクドネル・ダグラス社の提案が採用された。新規設計の航空機製造では珍しくない事象だが、構想開始から実機の初飛行が実現する1991年までは、約10年以上の歳月を費やした。

東西冷戦期における新型輸送機構想の必要性

この時期のアメリカ合衆国において次期輸送機計画が本格化した理由としては、様々な理由が挙げられているが、それまでの使用機材の経年化以外にも、この時期は特にアメリカ合衆国率いる西側諸国にとって、第二次大戦後も長く続いた「米ソ両大国」の軍事力と核兵器相互確証破壊戦略の存在により、戦後長らく西側諸国軍からも無敵と信じられてきたアメリカ軍部隊が、ベトナム戦争によって敗北と南ベトナムを見捨てる形で撤退を迎えるという結末は、当時の第二次大戦を知るアメリカ人にとっても初めて経験する祖国の敗戦サイゴン陥落)であり、社会的なショックに伴う自信喪失状態から立ち直るためにも、それまでの1970年代に自由主義陣営で広く流行したヒッピー文化など、一連の空想的平和主義の非現実性と偽善性が厳しく指摘されていた時期であった。

特に1970年代後半のカーター政権や英国労働党政権による地域の平和に必要な軍事バランスを崩す程の、早急かつ行き過ぎた軍縮政策が発端であると、専門家に分析されていたソ連軍アフガニスタン侵攻(1978年)や、第二次世界大戦終結時の中国政府であり、戦後は一貫して「中国」の国連代表権を保持していた中華民国台湾)から、常任理事国の特権を奪取した時期であった中華人民共和国での文化大革命1966年より1977年まで続いた毛沢東と後継者達による中国社会運動)の経過と、その凄惨な実情がこの頃から知られるようになった。特に東側陣営が共謀して実現した国連でのアルバニア決議以後は、アメリカ合衆国や西側諸国と新たに国交を結んだ中国共産党政府により、1949年の建国からの約30年間でホロコーストを超える規模で推定数千万人を超える中国人民が、人為的に大量粛清(ジェノサイド)されていた事実が明らかとなり、西側諸国ベビーブーム世代といわれ容共的な思想を持つ者も多い戦後直後に生まれた若年層が、この時期にようやくそれまで鉄のカーテンに隠されていた社会主義国家の内実を知り、失望や幻滅を覚えた社会主義への幻想を捨てる者が続出した時代でもあった。さらに軍事的なウィークポイントとなる地域であったアフガニスタンを狙った東側諸国侵略性と攻撃性を、西側諸国民が見せつけられた直後であったため、より実効的な兵員輸送力と兵站補給能力を整え、総合的戦力を強化し直す事が最優先され、その後21世紀に至るまでパクス・アメリカーナ時代と、西側経済の繁栄を維持し、さらに集団的自衛権に基づく相互協力強化を基盤とした自由主義圏の長期的安定の確保を目指したものであった。

一時的な東西冷戦におけるデタント時代が終焉し、新冷戦と呼ばれた時代の基礎となる装備刷新の必要性が認識されていた。輸送機分野ではソ連国内扱いであったウクライナ地域に集中していた東側諸国用輸送機製造業大手アントノフ社によるAn-124(ルスラーン)型輸送機が本格的な量産体制に入り、東欧諸国の輸送能力を一気に高める可能性のある輸送機シリーズの配備が始まった事も、C-17構想を練る際には大きな開発理由となった。レーガン政権の元で「600隻艦隊構想による強いアメリカの復活」を実現するためにも、急速に技術を伸ばしていたイリューシンアントノフに対抗可能で新型かつSTOL(短距離滑走による離着陸性能)可能な戦略輸送機を、なるべく早く開発する事が、西側諸国東西冷戦での最終的勝利を確実にするためにも必要不可欠な行動だと認識されていた。このために提出されたNATO加盟軍を中心とした仕様要求に応えるためマクドネル・ダグラス社は、それまでの長距離輸送機とは大きく異なる設計が必要とされている事を早期に認識した。そして、ソ連崩壊と冷戦終結がこれほど早く実現するとは当時誰も予想していなかった為に、少なくとも21世紀初頭以降の時代に東西両陣営の直接対決が発生するとの意識が強かった当時の世界的地政学上の常識も影響し、開発期間を十分に取り、慎重に設計改善と各種テストが繰り返された事が要因となり、実機が初飛行した1991年となった。しかし既にマルタ会談による冷戦終結が実現しており、この時期に東アジアを除く地域では冷戦構造が崩壊し、東欧革命や東西ドイツ再統一ソ連崩壊などを迎えた時期に差し掛かっていた。このため東側諸国軍との東ヨーロッパ地域を中心とした戦域での、未整備滑走路からのSTOL離着陸性能実現を目指して設計された機体は、21世紀初頭にその真価を発揮するまで時間を要する事になったが、当初の想定とは異なる戦場となった中東での2001年から現在まで続く長い戦役においては、充分にそのSTOL離着陸性能および「装甲車を丸ごと輸送可能」であり、最前線近くの要地まで各種兵站資材を輸送可能な余裕の大きなペイロードは、オーストラリア軍カナダ軍などアメリカ軍以外でも最大限に活用されており、旧ワルシャワ条約機構加盟国も、2001年以降個別的自衛権のみで国防を行う事が困難となった世界情勢も作用し、元東側諸国が自国の新たな集団安全保障体制を求めてNATOに加盟した現在では、成功したベストセラー輸送機として、アラブ首長国連邦カタール空軍など世界中の空軍組織で、主要戦略輸送機として活躍するようになった。

1982年7月に技術開発契約が結ばれたが、全規模開発契約は1985年12月31日までずれ込んだ。技術上の問題から開発は遅れ、原型機のロールアウトが1990年12月となった。初飛行は1991年9月15日に、カリフォルニア州ロングビーチ工場で行われた。部隊への配備開始は1993年7月であり、第437空輸航空団から開始された。その後も、価格性能比問題[3]により調達に遅れが生じたりしたが、問題払拭後は発注数が増加している。

C-17は開発目標をおおむね達成し、開発当初想定されていた戦場とは異なるがその性能と安全性に各国空軍からも高い評価が与えられており、航続距離が強化されたC-17ER型機も加わった事で、近年のアメリカ軍中東展開および東シナ海南シナ海など東アジア地域への国外展開と物資輸送には、欠かせない機材となっている。2010年以降は、カタール空軍UAE軍などが改修型「C-17ER」を確定発注し、新規受領した。2010年代からの新造機を保有するオーストラリア空軍インド空軍でも長距離兵員輸送及および救援活動などの分野で広く活躍している。[1]

ノーザン・ディレイ作戦・機上のドラゴン作戦

C-17は、イラク戦争におけるアメリカ軍初のエアボーン作戦に参加したことで知られている。この二つの作戦の成功により、強力な兵站補給基地を構築した有志連合軍は、アメリカ軍以外の主要部隊であるポーランド陸軍工兵部隊やイギリス陸軍を含めた地上戦を優位に進め、大きく戦勝に近づいた。

2003年3月26日アルビール州北部のバシュール飛行場奪取を目的として、ノーザン・ディレイ作戦英語版が発動された。本作戦には、地上部隊として第173空挺旅団から旅団長ウィリアム・C・メイヴィル大佐を含む954名が、航空部隊として第62、315、437、446空輸航空団より26機のC-17が参加した。

深夜、地上部隊を搭乗させたC-17がイタリアアヴィアーノ空軍基地より飛び立った。パラシュート降下は高度300mの低空にて実施され、午後8時10分から25分間で全隊員が降下した。夜闇と強風によって降下部隊は分散し、兵力の集結には時間を要した。しかし、アメリカ特殊部隊に支援されたクルド人民兵ペシュメルガ」と連携しており、また、敵の抵抗も微弱であったため、成功裏に飛行場を奪取した。以後、26機のC-17による空輸が行われ、4日間で旅団の残余2,200名、M119 105mm榴弾砲6門、車両400両以上、貨物3,000トンが輸送された。

その後4月7日より、旅団に配属されていた1/63機甲大隊を空輸するための機上のドラゴン作戦英語版が発動された。この作戦のもと、19日までの12日間で、新たに24機のC-17により、兵員300名と車両78両が空輸された。この作戦は朝鮮戦争での仁川上陸作戦と比較されるほど大規模な後背地への輸送作戦であったが、以前の湾岸戦争首都バグダッドを陥落する以前に兵站補給線が伸び切り、イラク政府と国連との間で停戦合意を許してしまいサッダーム・フセインを取り逃がしたという戦訓から、より即応性と地上兵力が必要とされたイラク戦争開戦時において有志連合軍が戦局を有利に進めるためには、欠かせない大規模空挺作戦であったが、C-17の本領が発揮された事で英米軍及びポーランド軍などが参加した2003年内のイラク地上戦においても貢献し、「機上のドラゴン作戦」の成功がイラク戦争全体での戦勝に大きく引き寄せたとされる。なおイラク戦争終結後に、南部の復興支援のためにイラクユーフラテス川近くサマーワに駐屯した陸上自衛隊は、2004年愛知県小牧基地から飛び立った空自C-130など既に保有していた輸送機を使い、現地に到着した。戦後初の戦勝国側での駐留任務と人道支援任務を無事達成し2009年には日本へ撤収した。有志連合軍によるイラク戦争開戦と戦後物資輸送は、C-17が主力輸送機として支えていたと評価されており、その緒戦においてC-17が持ち前の驚異的ペイロードを発揮する事により、大洋を超えて空輸した車両の内訳は、M1A1 エイブラムス 戦車(60トン)5両、M88A2戦車回収車(60トン)1両、M2A2 ブラッドレー 歩兵戦闘車(27トン)5両、重PLS輸送車(25トン)1両、HEMTT 重機動トラック(18トン)7両、M113A3 装甲兵員輸送車(12トン)12両、FMTV トラック(9トン)4両、M997改造指揮車(4トン)2両、ハンヴィー汎用車(2.5トン)37両であった。

特徴

アメリカ陸軍のすべての装甲戦闘車両航空機の搭載が可能で、C-5戦略輸送機の最大ペイロードの65%近くとなる77トンの貨物搭載ができる。

上から見たC-17
60トン近い自走砲が搭載可能な貨物室
コックピット
搭載例

最大ペイロードでの航続距離4,440km、離着陸距離910m。先進中型短距離離着陸輸送機計画(AMST)において試作されたYC-15が実証したEBF(Externally blown flap)方式のパワード・リフト・システム(Powered lift system)を用いてSTOL性能を確保している。これは、エンジン噴射流を主翼下面とスロッテッド・フラップに吹き付けて揚力を増す方式である。スラスト・リバーサーは斜め上方へ噴射することで、未舗装滑走路で異物を巻き上げ、エンジンに吸い込むことによる故障(Foreign Object Damage 略語:FOD)を最小限にしている。これらにより、戦略輸送機と戦術輸送機を兼ねられる機体としているが、厳密には降着装置の接地圧が致命的に高く、後者の条件は満たしていない。

C-17は太い胴体とともに、横に突き出したスポンソン部に4ユニット計12個の車輪を収めることで、大きな貨物の搭載を可能としている。貨物の積み下ろし口は後部ランプのみであるが、油圧ウインチと8列ローラー・コンベアによる省力化で、1人のロードマスターでも卸下運用が行えるようになっている。

コックピット内部は広く、2名のパイロット席後部の2名分の追加乗員席に加えて、ギャレーや2名分のベッドが備えられている[1]。計器は4基の多機能ディスプレイを備えたグラスコックピットとなっており、輸送機としては世界で初めてヘッドアップディスプレイを採用した。操縦装置はフライ・バイ・ワイヤで、従来の操縦輪ではなく操縦桿を採用しているが、配置はサイドスティック方式ではなく通常のセンター配置である。また、前部胴体の右側にはロードマスター用の操作席が設けられている。

多くの用輸送機と同じく高翼配置の主翼ターボファンエンジンを4基搭載し、T型尾翼となっている。翼端にはウィングレットを装備している。また、19tまでの低高度パラシュート抽出システム(LAPES)に対応している。

生産71号機以降は中央翼部に燃料タンクが増設されて航続距離が延び、ボーイング社ではこの型をC-17ERと呼んでいる。現在開発中の改良型C-17Bでは、推力向上型エンジンと新型フラップシステムの導入によって離着陸性能を向上させ、滑走路面への荷重分散のため中央胴体下に主脚を1本増設する。

採用国

現在、C-17を採用しているのは7ヶ国と1機構軍である。

C-17採用国(青色)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
アメリカ空軍のC-17
アメリカ空軍航空機動軍団(AMC)では223機が配備され運用されている。
大統領専用車の国内および国外の移動で利用されるC-17
イギリスの旗 イギリス
イギリス空軍のC-17
イギリス空軍ではエアバス A400Mの開発遅延もあり、2001年からグローブマスター C.1の名称で(ただし、この名称はすぐに廃れ、現在は単にC-17A グローブマスターIIIとなっている[4])C-17Aの運用を開始した。当初はリース契約であったが、2004年に購入契約に切り替えた。
4機の運用であったが、2009年までに6機に増強され、同年12月に更に1機が追加発注され、最終的に8機となった。イギリス空軍ではドイツ連邦軍やフランス空軍と共に、国際共同開発に参加した次期NATO主要輸送機A400Mと同時並行して導入し、使い分けている。
オーストラリアの旗 オーストラリア
オーストラリア空軍のC-17
2006年オーストラリア空軍が開発中のエアバス製戦術輸送機A400M(アトラス輸送機)との比較検討の上、国外展開用に4機の購入を決定した。費用は10億オーストラリア・ドルである。
2006年-2008年にかけて機体を受領し、第36飛行隊に配備されている。2011年に発生した東北地方太平洋沖地震においては当時利用可能であった3機全てが救援物資の輸送のため日本に派遣された。
2011年の追加発注により、2012年11月には6機に増強され、2015年までに王立オーストラリア空軍(RAAF)保有機は計8機となった。
カナダの旗 カナダ
カナダ空軍のCC-177
カナダ軍カナダ空軍)は、国外展開用に長距離輸送機を求めており、2007年からC-17Aの取得を開始した。
4機を取得し、CC-177の名称で第429航空隊に配備されている。2014年12月19日には5機目の導入を発表した。
カタールの旗 カタール
カタール空軍のC-177
カタール空軍は、2008年7月21日にC-17Aを2機発注。2009年に受領。2015年までに8機となった。うち1機はカタール航空の塗装である。
アラブ首長国連邦の旗 アラブ首長国連邦
2009年にC-17Aを2機、2010年1月に4機をさらに追加発注。2011年に最初の2機、2012年に4機が納入予定。
北大西洋条約機構の旗 NATO
C-17Aを多国籍で共同調達・共同運用を行う戦略空輸能力(SAC)構想を発表し、2008年10月1日ブルガリアエストニアハンガリーリトアニアオランダノルウェーポーランドルーマニアスロベニア、アメリカのNATO加盟10ヶ国とNATO非加盟のスウェーデンフィンランドの合計12ヶ国が了解覚書に調印。
アメリカ空軍から1機が提供されるほか、2009年に新造機2機を調達し、ハンガリー空軍のパパ空軍基地を拠点に運用が行われている。そのため、機体にはハンガリー空軍の国籍マークが描かれている。
インドの旗 インド
インド空軍のC-17
インド空軍ロシア製のIl-76 20機の後継としてC-17Aの購入を希望し、2009年2月にアメリカ空軍に対し取得費や運用コストについての情報を求めた。最終的に2011年6月に10機の発注に至り、2013年から2014年末までに10機を受領した。
2015年イエメン内戦で、孤立した自国民の出稼ぎ労働者の救出に派遣された。また、同年、ネパール地震では救援物資の輸送のためにネパールに派遣された。[5]
クウェートの旗 クウェート
2010年9月にFMS(対外有償軍事援助)形式で1機の購入を希望し、2013年に2機を発注、翌年2月13日に初号機が納入された。

検討

日本の旗 日本
航空自衛隊C-1の後継候補となったが、使用できない飛行場があり、最高巡航速度が性能要求を下回ることから採用されなかった。最終的にC-Xとして選定された後継輸送機は、新規開発された国産機であるC2輸送機となった。[6]
伊藤忠商事が日本での輸入代理店になっており、1990年代後半の『自衛隊装備年鑑』などに掲載した広告には、日本国政府専用機の塗装を施したC-17のイラストが添えられていた。空自が運用し、第二代目となる日本国政府専用機(Japanese Air Force One)の後継機はB777-300ER型機となった。
フランスの旗 フランス
2009年3月27日フランス国防省アメリカ空軍に書簡を送り、3機のC-17A購入についての価格や引き渡し時期などのデータの問い合わせを行った。
ドイツの旗 ドイツ
ドイツ連邦空軍はC-17の導入を、1990年代に実現した西ドイツ主導でのドイツ再統一後の軍備計画において戦略輸送機が必要とされ、第二次大戦後初の実戦参加となったユーゴスラビア紛争の頃より検討しており、特にA400M計画の具体化前にはC-17やC-130J型機などの大型輸送機を選定する可能性が一時報じられていたが、結果的には自国製となるA400M(アトラス輸送機)の量産と配備が実現した為、C-17最終生産機までに正式発注は行わなかった。ただしNATO軍(加盟国以外で共同保有にはスウェーデン軍及びフィンランド軍なども参加)として、C-17戦略輸送機をポーランド空軍などヨーロッパ全域10カ国以上の空軍組織にて資金を出し合って購入し、欧州での対ロシア・ベラルーシなどとの有事における集団的自衛権行使と多国間部隊の即応性を高めるための共同保有(実機配備はハンガリー共和国内空軍基地)しているため、フランス空軍イタリア空軍と共にNATO集団安全保障体制の中心国であるドイツ連邦軍も、事実上のC-17運用国であるといえる。

民間型

マクドネル・ダグラス時代の1990年代に本機の民間用バージョンとして「MD-17」が計画されており、総二階建旅客機MD-12などと共に計画のみで止まってしまい、その後MD社のボーイング社への吸収合併によって結局実現しなかった。2000年にはボーイングが民間型「BC-17X」のアナウンスを行ったが、受注は得られておらず事実上の開発停止となっているが、旧マクドネル・ダグラス時代「MD-17」構想に相当する規模を持ち、世界初の「総二階建旅客機A380」は、プロジェクト全体の黒字化が発表された2016年に、日本の大手航空会社全日本空輸(ANA)が導入を決めるなど、100機以上が生産され既に世界中の空を飛んでおり、C-5並の大きさとなる民間巨人機は、A300生産開始から僅か30年程で世界全体での旅客機生産数に占める割合が、かつての王者ボーイング社を抜き、過半数以上となるまでに成長した「独仏連合欧州企業エアバス社」によって、実現された。[7]

搭載機器

仕様

  • 全長:53.0m
  • 全幅:51.8m
  • 全高:16.8m
  • 翼面積:353.02m²
  • 巡航速度:M0.77(860km/h、高度7,620m)
  • エンジン:P&W F117-PW-100 ターボファン(18,460kg)4基
  • 航続距離:5,190km(空荷フェリー時:9,815km)
  • 貨物室:h:3.76m、w:5.48m、l:26.82m(6mランプ含む)
  • 空虚重量:128.1t
  • 最大離陸重量:265.35t
  • 最大積載量:77.519t
  • 最低着陸必要距離:1,000m(500mで着陸した実績有り)[1]
主な軍用輸送機の比較
日本の旗C-2 欧州連合の旗A400M アメリカ合衆国の旗C-17 中華人民共和国の旗Y-20 アメリカ合衆国の旗C-130J ブラジルの旗KC-390 ウクライナの旗An-178 ロシアの旗Il-276
画像
乗員 3名 3-4名 2-4名 3名 3-6名 2名 3名 2名
全長 43.9 m 45.1 m 53.0 m 47.0 m 29.79 m 35.20 m 32.95 m 33.2 m
全幅 44.4 m 42.4 m 51.8 m 50.0 m 40.41 m 35.05 m 28.84 m 30.1 m
全高 14.2 m 14.7 m 16.8 m 15.0 m 11.84 m 11.84 m 10.14 m 10.0 m
空虚重量 69.0 t 76.5 t 128.1 t 100 t 34.25 t 51 t
基本離陸重量 120 t 263 t 70.305 t
最大離陸重量 141 t 136.5 t 265.35 t 220 t 79.38 t 81.0 t 51.0 t 68.0 t
最大積載量 32 t(2.5G)
36 t(2.25G)
30 t(2.5G) 77.519 t 66 t 19.050 t 26 t 18.0 t 20.0 t
貨物室
(L×W×H)
15.65×4.0×4.0m 17.71×4.0×3.85m 26.83×5.49×3.76m 20.0×4.0×4.0m 16.76×3.02×2.74m 18.5×3.0×3.4m 16.65×2.748×2.75m
発動機 CF6-80C2K1F×2 TP400-D6×4 F117-PW-100×4 D-30KP-2×4 AE2100-D3×4 V2500-E5×2 D-436-148FM×2 PD-14M×2
ターボファン ターボプロップ ターボファン ターボプロップ ターボファン
巡航速度 マッハ0.81
マッハ0.68-0.72
781 km/h
(高度9,450 m)
マッハ0.74
830 km/h
(高度8,530 m)
マッハ0.75 マッハ0.59
671 km/h
(高度6,700 m)
マッハ0.80
870 km/h
マッハ0.77
825 km/h
マッハ0.75
810 km/h
航続距離 0 t/9,800 km
20 t/7,600 km
30 t/5,700 km
36 t/4,500 km
0 t/8,710 km
20 t/6,390 km
30 t/4,540 km
0 t/9,815 km
72 t/4,630 km
0 t/7,500 km
0 t/6,445 km
16.3 t/3,150 km
0 t/6,241 km
14 t/5,019 km
23 t/2,722 km
26 t/2,000 km
0 t/5,500 km
5.0 t/4,700km
18.0 t/1,000 km
0 t/7,300 km
4.5 t/6,000 km
20 t/3,250 km
最短離陸滑走距離 500 m 770 m 1,000 m 600 - 700 m 600 m 1,100 m 1,050 m
生産数(-2023) 19 119 279 68 500 9 2 0
運用状況 現役 実用試験中 開発中

登場作品

映画

アイアンマン
アイアンマン2
トランスフォーマー
スコルポノックの尻尾とレノックス大尉らを、カタールからアメリカ本土まで輸送する。
トランスフォーマー/リベンジ
オプティマスプライムの亡骸と対ディセプティコン特殊部隊NESTを、エジプトまで輸送空挺降下を行う。
マン・オブ・スティール
敵の巨大メカを破壊するため、かつてスーパーマンが地球まで乗ってきた宇宙船を乗せて出撃。敵の迎撃に合いながらも最後は巨大マシンに特攻し、破壊することに成功する。

ゲーム

エースコンバットシリーズ
敵や味方の輸送機として登場。
コール オブ デューティ ゴースト
キャンペーンでM1A2 エイブラムス戦車を投下するために登場。
大戦略シリーズ

出典

  1. ^ a b c d e 軍事研究2007年10月号「地球の裏へ急速空輸:C-5/C-17巨人機」
  2. ^ “ボーイング、軍用機「C17」生産を15年に打ち切り 加州工場閉鎖へ”. ウォール・ストリート・ジャーナル. (2013年9月18日). http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324353404579084751838868892.html 2013年10月8日閲覧。 
  3. ^ http://www.gao.gov/archive/1995/ns95026.pdf アメリカ会計検査院報告
  4. ^ RAF - C-17A Globemaster
  5. ^ Air Force Warrior Sentinels: C-17 Globemaster
  6. ^ 次期輸送機 政策評価書防衛省・自衛隊
  7. ^ ボーイング・プレスリリース。BC-17X

関連項目

外部リンク