透明人間 (1954年の映画)
透明人間 | |
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Transparent Man | |
監督 | 小田基義 |
脚本 | 日高繁明 |
製作 | 北猛夫 |
出演者 |
河津清三郎 三條美紀 土屋嘉男 |
音楽 | 紙恭輔 |
撮影 | 円谷英二(特技指導) |
編集 | 庵原周一 |
配給 | 東宝 |
公開 |
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上映時間 | 70分 |
製作国 |
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言語 | 日本語 |
『透明人間』(とうめいにんげん) は、1954年12月29日に公開された、東宝制作の特撮SF映画。上映時間70分、モノクロ作品。同時上映は『岩見重太郎 決戦天の橋立』。
戦時中の人体実験によって自分の存在を物理的に消された男が、普通の人間として生活しながら、彼を名乗って暗躍するギャング集団に立ち向かう姿を描いた作品である。
概要[編集]
本作は『ゴジラ』に続く特撮技術を駆使した映画として企画・製作された[1]。『ゴジラ』が縫いぐるみとミニチュアによる特撮を主としていたのに対し、本作では光学合成が多用されている。円谷英二は本編撮影を兼ねており、本編カメラマンとしてはこれが最後の仕事である。
後に制作される変身人間シリーズの先駆的作品との扱いを受けている。特に『美女と液体人間』は本作との共通点が多く、オマージュではないかとされる[2]。
あらすじ[編集]
銀座4丁目で旧日本軍の特殊部隊「透明人間特攻隊」の生き残りの轢死体が遺書と共に発見された。遺書の内容から、透明人間の生き残りが少なくとももう1人いることが判明。この一件が報道されるや、「透明人間」と名乗るギャング集団による強盗事件が多発する。一方、キャバレー「黒船」でサンドウィッチマンのピエロとして働く南條は、同じアパートに住む盲目の少女まりに『金髪のジェニー』のオルゴールを買う約束をしていた。最初の自殺に遭遇して以来、透明人間の調査を進めていた新聞記者の小松は、襲撃された宝石店を訪れていた南條に目を付ける。そして南條の部屋に乗り込んだ小松は、そこで驚くべき光景を目にする。南條が常にピエロの格好をしている理由―それは彼こそがもう一人の透明人間だからであった。南條は自分の名誉を汚し、まりの祖父を利用した挙句殺害したギャング集団の正体を暴くべく、小松の協力を得て独自捜査を開始。やがて2人の調査の結果、ギャング事件の黒幕は「黒船」の中にいることが判明する。
透明人間[編集]
設定[編集]
戦時中、西崎博士は、サイクロトロンにより「リンの放射性同位体に対する陽子の連続衝撃実験」を行った。その時、偶然発見した粒子「ホストン」を吸収することで、可視光線を完全に透過するようになった人間である(劇中では、詳しい資料は残っていないと語られている)。太平洋戦争末期、透明人間で編成される特攻隊がサイパン島で玉砕したとされていたが、実はそのうちの2人が生き残っていた。ホストンの効果は元に戻すことができないため、透明人間化した者は死なないかぎり目視できない(ただし、出血後の血液は実体化する)。南條が常にフェイスペインティングをしているのは、そのためである。
演出[編集]
透明人間の描写には、円谷英二の指導によって光学合成をはじめ様々な工夫がされている。南條が透明のまま物を投げつけたり演奏するシーンにはピアノ線が、南條が顔のペイントを落とすと透明になるシーンには逆に墨を塗りつけて黒くなったところへ背景を合成するという方法が、それぞれ用いられた[1]。また、南條がラビットスクーターに乗って矢島を追うシーンは、車体にキャスターを取り付け、倒れないようにして無人のまま走行させている[1]。
スタッフ[編集]
- 製作:北猛夫
- 原案:別府啓
- 脚本:日高繁明
- 美術:安倍輝明
- 録音:藤縄正一
- 照明:岸田九一郎
- 音楽:紙恭輔
- 監督助手:丸輝夫
- 編集:庵原周一
- 特殊技術:東宝技術部
- 現像:東宝現像所
- 製作担当者:黒田達雄
※映画クレジット順
キャスト[編集]
- 南條:河津清三郎
- 美千代:三條美紀
- 矢島:高田稔
- 小松:土屋嘉男
- 健:植村謙二郎
- まりの祖父:藤原釜足
- 山田社会部長:村上冬樹
- 科学者:汐見洋
- 野村代議士:沢村宗之助
- 警視総監:恩田清二郎
- 龍田警部:大友伸
- ダンサー:重山規子(日劇ダンシングチーム)
- まり:近藤圭子(キングレコード)
- 矢島の子分:松尾文人、中山豊、吉田新、峰三平、鈴木治夫、高瀬将敏
- ジョー(矢島の子分):水野匡雄
- 国会委員長:土屋博敏
- 南条の仲間・路面電車の乗客:佐田豊
- 秋田晴夫(轢かれた透明人間)・河津清三郎スタント:中島春雄
- 屋台の親父:瀬良明
- クラブの客:津田光男
- 街頭テレビを観る男・クラブの客:吉頂寺晃
- アナウンサー・銀座の通行人:岡豊
- 警官:広瀬正一
- 宝石商の店長:堤康久
- 大塚:熊谷二良
- 管理人:勝本圭一郎
- 車の男:伊藤実
- 守衛:榊田敬二
- 車の女:森啓子
- クラブの店員・銀座の通行人:東静子
- 振付:縣洋二
※映画クレジット順
※以下クレジット表記なし
- 宣伝会社社員・朝夕新聞の社員:日方一夫
- 靴磨き屋:岩本弘司
- 銀座の野次馬:篠原正記
- 宝石店の刑事:緒方燐作
- 宝石店の警官:河辺昌義
- ナイトクラブのボーイ:越後憲三
- 街頭テレビを観る男・宝石商の店員・銀座の通行人・路面電車の車掌:安芸津宏
- 宝石店での事件を報せる男:夏木順平
- 代議士:大西康雅
- 朝夕新聞記者・路面電車の乗客・刑事:向井淳一郎
- 路面電車の乗客・刑事:鈴川二郎、坂本晴哉、坪野鎌之
- 路面電車運転士・刑事:宇野晃司
- 路面電車の乗客:小沢憬子、記平佳枝
- 記者:松下正秀
- カメラマン:桂伸夫
- 警官:伊原徳、砂川繁視
- タクシーの運転手:帯一郎
- 街頭テレビを観る男・刑事:須田準之助
- 街頭テレビを観る男・記者:岡部正、橘正晃
- 街頭テレビを観る男・黒船の客:松本光男
- ナイトクラブの客:牧壮吉
- ナイトクラブの店員:田辺和佳子
- ナイトクラブの客・街頭テレビを観る男:西條悦郎
- ナイトクラブの客・路面電車の乗客:渋谷英男
- ナイトクラブの客・記者:由起卓也
- 東洋銀行総裁:光秋次郎
- 平和荘の住人:一万慈鶴恵
映像ソフト[編集]
- 2007年2月23日に発売された。
- 2014年2月7日に<期間限定プライス版>として再発売された。
- 2015年7月15日に<東宝DVD名作セレクション>として再発売された。
- 2018年10月10日に講談社「ゴジラ&全怪獣DVDマガジン」の完結巻として再発される予定。
脚注[編集]
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 透明人間 - 日本映画データベース
- 透明人間 - allcinema
- 透明人間 - KINENOTE
- Transparent Man - インターネット・ムービー・データベース(英語)
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