透明人間 (1954年の映画)

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透明人間
Invisible Man[1]
Tomei ningen poster.jpg
監督 小田基義
脚本 日高繁明
製作 北猛夫
出演者 河津清三郎
三條美紀
土屋嘉男
音楽 紙恭輔
撮影 円谷英二(特技指導)
編集 庵原周一
配給 東宝
公開 日本の旗 1954年12月29日
上映時間 70分[1]
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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透明人間』(とうめいにんげん) は、1954年12月29日に公開された、東宝制作の特撮SF映画。上映時間70分、モノクロ、スタンダード作品[1][2]。同時上映は『岩見重太郎 決戦天の橋立[1]

戦時中の人体実験によって自分の存在を物理的に消された男が普通の人間として生活しながら、彼を名を騙って暗躍するギャング集団に立ち向かう姿を描いた作品である。

概要[編集]

本作は『ゴジラ』に続く特撮技術を駆使した映画として企画・製作された[3][2]。『ゴジラ』が縫いぐるみとミニチュアによる特撮を主としていたのに対し、本作では光学合成が多用されている[3]

企画としてはスリラー映画であるが、人間に戻れなくなった透明人間の内面も描写するなど、ゴジラと同様に科学の犠牲を描く悲劇的なSFとしての側面も持つ[4][2]。後に制作される変身人間シリーズの先駆的作品との扱いを受けている[4]。特に『美女と液体人間』は本作との共通点が多く、オマージュではないかとされる[5]。1975年には、同シリーズを意識した『透明人間対火焔人間』の企画が立てられ、サイクロトロンの作用で透明化するという本作品を踏襲した設定も盛り込まれていたが、制作には至らなかった[5]

制作[編集]

特撮監督の円谷英二は本編撮影を兼ねており[2]、本編カメラマンとしてはこれが最後の仕事である。

映画監督の日高繁明が脚本を初執筆しており、続いて『ゴジラの逆襲』も執筆した[5]。最初期の台本ではまりは盲目の少女ではなく花売り娘とされ、最後は恋人とともに新天地に旅立つという結末であった[5]。続く改定台本では、南条が戦地で行方不明となった美千代の恋人であることが判明するシーンが存在したが、決定稿とされる台本では削除された[5]

プロデューサーの北猛夫は当時東宝撮影所の製作部長を務めており、組合の要望によって現職のままでの兼任であった[3]。当時の東宝ではプロデューサーへの東宝社員の登用が進んでおり、北が現職と兼任する初めての例であった[3]

主演の河津清三郎は、東宝に2本出演するという契約で小田の前作『幽霊男』に続いての出演であった[3]。当時の河津は多忙であり、本作品のクランクアップ前に日活での主演作『俺の拳銃は素早い』の撮影に入っている[3]。ヒロインの美千代役には北川町子が起用されていたが、クランクイン直後に急性虫垂炎となって降板し、河津と同じく『幽霊男』に出演していた三條美紀に代わった[3]

あらすじ[編集]

銀座4丁目で、旧日本軍の特殊部隊「透明人間特攻隊」の生き残りの轢死体が遺書と共に発見された。遺書の内容から、透明人間の生き残りが少なくとももう1人いることが判明する。この一件が報道されるや、「透明人間」と名乗るギャング集団による強盗事件が多発する。一方、キャバレー「黒船」でサンドイッチマンピエロとして働く南條は、同じアパートに住む盲目の少女まりに『金髪のジェニー』のオルゴールを買う約束をしていた。最初の自殺に遭遇して以来、透明人間の調査を進めていた新聞記者の小松は襲撃された宝石店を訪れていた南條に着目し、彼の部屋に乗り込んで驚くべき光景を目にする。常にピエロの格好をしている南條こそが、もう1人の透明人間だったのだ。南條は自分の名誉を汚してまりの祖父を利用した挙句に殺害したギャング集団の正体を暴くべく、小松の協力を得て独自捜査を開始する。やがて2人の調査の結果、ギャング事件の黒幕は「黒船」の中にいることが判明する。

透明人間[編集]

諸元
透明人間
身長 1.7m[6]
体重 80kg[6]
出身地 東京[2]

設定[編集]

戦時中、西崎博士はサイクロトロンを用いて「リン放射性同位体に対する陽子の連続衝撃実験」を行った。その時、偶然発見した粒子「ホストン」を吸収することによって可視光線を完全に透過するようになった人間が、透明人間である[5][2](劇中では、詳しい資料は残っていないと語られている)。太平洋戦争末期、透明人間で編成される特攻隊サイパン島で玉砕したとされていたが、実はそのうちの2人が生き残っていた。ホストンの効果は元に戻すことができないため、透明人間化した者は死なないかぎり目視できない(ただし、出血後の血液は実体化する)。南條が常にフェイスペインティングをしているのは、そのためである。

演出[編集]

透明人間の描写には、円谷英二の指導によって光学合成をはじめ様々な工夫がされている。

南條が透明のまま物を投げつけるシーンや演奏するシーンにはピアノ線が、南條が顔のペイントを落とすと透明になるシーンには逆に墨を塗りつけて黒くなったところへ背景を合成するという方法が、それぞれ用いられた[3]。合成用の黒装束は、中島春雄が演じた[3]

南條がラビットスクーターに乗って矢島を追うシーンは、車体にキャスターを取り付けて倒れないように加工し、無人のまま走行させている[3]

制作に際し、透明人間のアイデアが東宝社内にて懸賞金付きで公募されたが、最終的に該当作はなく佳作賞が2名に贈られるにとどまった[3]

スタッフ[編集]

※映画クレジット順

キャスト[編集]

※映画クレジット順

※以下クレジット表記なし

映像ソフト[編集]

  • 1997年10月1日にレーザーディスクが東宝ビデオより発売された[7]
  • DVD 
    • 2007年2月23日に発売された。
    • 2014年2月7日に期間限定プライス版として再発売された。
    • 2015年7月15日に東宝DVD名作セレクションとして再発売された。
    • 2018年10月10日に講談社「ゴジラ&全怪獣DVDマガジン」の完結巻として発売された。

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ a b c d クレジット表記なし。

出典[編集]

  1. ^ a b c d 東宝特撮映画大全集 2012, p. 8, 「『透明人間』」
  2. ^ a b c d e f 東宝特撮全怪獣図鑑 2014, p. 12, 「透明人間」
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m 東宝特撮映画大全集 2012, p. 11, 「『透明人間』撮影秘話/川北監督に訊く」
  4. ^ a b c d e f g 東宝特撮映画大全集 2012, p. 9, 「『透明人間』作品解説/俳優名鑑」
  5. ^ a b c d e f 東宝特撮映画大全集 2012, p. 10, 「『透明人間』怪人図鑑/資料館/撮影秘話-特別編-」
  6. ^ a b 怪獣大全集 1991, p. 66, 「東宝モンスター名鑑」
  7. ^ 『宇宙船YEAR BOOK 1998』朝日ソノラマ宇宙船別冊〉、1998年4月10日、62頁。雑誌コード:01844-04。

参考文献[編集]

  • 『ゴジラvsキングギドラ 怪獣大全集』構成・執筆・編集:岩畠寿明、小野浩一郎(エープロダクション)、講談社〈講談社ヒットブックス20〉、1991年12月5日。ISBN 4-06-177720-3
  • 『東宝特撮映画大全集』執筆:元山掌 松野本和弘 浅井和康 鈴木宣孝 加藤まさし、ヴィレッジブックス、2012年9月28日。ISBN 978-4-86491-013-2
  • 『東宝特撮全怪獣図鑑』東宝 協力、小学館、2014年7月28日。ISBN 978-4-09-682090-2

関連項目[編集]

外部リンク[編集]