ノストラダムスの大予言 (映画)

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ノストラダムスの大予言
PROPHECIES OF NOSTRADAMUS[1]
監督 舛田利雄
脚本 八住利雄
原作 五島勉
製作 田中友幸
田中収
ナレーター 中江真司(冒頭)
岸田今日子
出演者 丹波哲郎
黒沢年男
由美かおる
司葉子
山村聡
音楽 冨田勲
撮影 西垣六郎
鷲尾馨
配給 東宝
公開 日本の旗 1974年8月3日
上映時間 114分[1]
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
製作費 6億5000万円[2]
配給収入 8億8300万円[3]
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ノストラダムスの大予言』(ノストラダムスのだいよげん)は、1974年8月3日に公開された特撮映画。副題は『Catastrophe 1999』[注釈 1]。製作は東宝映像、配給は東宝[1]。『ルパン三世 念力珍作戦』と同時上映された[1]。1974年の邦画部門の興行収入第2位。文部省(当時)の推薦映画でもあった。

あらすじ[編集]

環境学者である西山良玄は、企業や企業の肩を持つ警察の圧力に屈することなく公害の実態調査をする一方、代々西山家に伝わる『諸世紀』の研究をしていた。西山家の『諸世紀』は、良玄の先祖である幕末期蘭学者玄学、第二次世界大戦末期の哲学者玄哲を非業の死に追い遣る原因となった不吉の書であったが、良玄もまた先祖達と同様に国を憂える良心から、彼らと似たような生き様を歩んでいたのである。

そんなある日、娘・まり子の恋人の中川が帰国。まり子と中川の前で、父の西山良玄は「今の時代、先がどうなるかわからない。結婚しても子供は作るな」と残酷な忠告をした。数日後、夢の島で何らかの有害物が原因で巨大化したナメクジが大発生する。日本各地では奇形児が増加する一方で、亜鉛鉱山周辺では特定の能力が異常に発達した子供が現れる。中川の実家がある漁村が赤潮で全滅した夜、中川とまり子は互いに惹かれ、ついに船の上で結ばれる。

良玄は、人類の行き過ぎた開発が人類を滅亡させるとして、必要以上の生産を止めるよう提言するが、人々の興味は生活の向上や生産の増加に向いており、逆に「ヒューマニズムの崩壊」と批判される[注釈 2]始末。国際会議も、発展途上国の人口増加が環境破壊に拍車をかけていると主張する先進国と、先進国の資源浪費が環境破壊の原因だと反論する発展途上国が対立して紛糾する。そんな中、太平洋上の海面が凍りつき、エジプトで雪が降るなどの異常気象が発生。さらに、成層圏に滞留した放射能ニューギニアに降り注いだとの知らせが届き、国際合同調査隊が派遣されることになった。良玄の研究所からも2人の部下が派遣される。しかし合同調査隊は行方不明になり、良玄や中川らによる第2次合同調査隊が派遣された。そこで彼らが目の当たりにしたのは、放射能によって巨大化した動植物や、食人鬼となり襲いかかる原住民、そして洞窟の奥で生きる屍と化した第1次調査隊隊員の姿であった。彼らに拳銃を向ける外国人隊員を制止する中川だが、「こうするほかに何ができますか?」と反論された良玄は、自ら自分の部下を射殺するしかなかった。

その頃、SST事故によるオゾン層の破壊で日本列島に超紫外線が降り注ぎ、山火事やコンビナートの炎上が続発。さらに、異常気象は世界各地に拡大し、各国の穀倉地帯は軒並み全滅。暴騰する食料価格や大災害で人心は荒廃し、食料目当ての暴動や若者の退廃が進行。ついにそれによる二次災害までが発生し、東京の空はオゾン層の歪みで巨大な鏡と化した。大災害が頻発する中、良玄の妻・伸枝は病に倒れ、良玄の腕に抱かれながら息を引き取る。その一方で、まり子の体には新しい命が宿っていた。

たび重なる天変地異に、良玄は国会で様々な人類滅亡のパターンを警告し地球の危機を力説[注釈 3]、破滅への展望を展開していく。その凄惨な内容に衝撃を受けた内閣総理大臣は、政治家として大きな決断を迫られた。

解説[編集]

前年の『日本沈没』の大ヒットを受けて東宝が製作したパニック映画の第二弾。1973年11月に発売されて大ベストセラーとなっていた五島勉の著書『ノストラダムスの大予言』を原作としているが[4]、フィクション脚本による娯楽性の高い作品となっている。映画のプロットを練る際の科学考証の過程で、アドバイザーの1人であった農林省食品総合室長(当時)の西丸震哉の影響を色濃く受けた。西丸は五島との対談形式の著書『実説大予言』(祥伝社)を映画の公開直前に出版しているが、ここに表れた西丸の極度に悲観的な環境観・食糧観は、映画の基本的なモチーフと一致している[5][6]

当時のパニック映画と同様に、派手な爆発シーンや地震のシーンが新たに撮影されている[7]。特に赤潮のシーンでは、東宝特撮伝統の寒天で海を表現する技法が用いられており[注釈 4]、核ミサイルの発射シーンでは石膏製のサイロ扉に重りを封入することで重量感を増すといったような工夫が随所になされている。超紫外線が降り注ぎ山林が一気に枯死していくシーンでは、杉の芽を植えた山のセットに希硫酸を降りかけることで表現されたが、スタッフの予想よりも茶色くなるのに時間がかかり、中野昭慶は「改めて自然の強靭さを知らされた」と語っている[8]。熱帯の海が氷結するシーンでは、25トンの氷塊が用いられた[7]。一方、本作のクライマックスの核戦争や大地震のシーンは新撮もされているが、映像の一部は前年の『日本沈没』や『世界大戦争』からの流用である。

製作者側の「環境問題への真剣な警告という側面を強く打ち出す」というテーマも、その描写の方法などからSF映画としての評価は芳しいものとはいえず、特撮作品としても特撮シーンは少ない。

本作の続編として、『ノストラダムスの大予言II 恐怖の大魔王(仮題)』の企画が進められた[9]。原作者の五島勉を主人公に、五島の講演中に1999年7月にタイムスリップした講演会の参加者たちが、「恐怖の大魔王」降臨を目の当たりにする様子を描くもので、プロデューサーの田中友幸による企画書やポスターの原案が現存するが、制作には至っていない。

撮影事故[編集]

1974年5月に「オゾン層破壊による超紫外線の影響で山火事が発生する」という特撮場面を世田谷区の東宝撮影所第7スタジオにて撮影中、ライトを照射しすぎて高温となったためにミニチュアセットが発火し、火災が発生した[注釈 5]成城消防署などから消防車36台が駆けつけたが火の回りは早く、第7スタジオは全焼してしまった。けが人などは出なかった。これ以降、撮影所は第4スタジオを廃し、番号を1つずつ移行して使用された。

焼失後の第7スタジオを用いて本編(焼け跡に雨が降るシーン)の撮影が行われ、廃材の一部は後年の映画でセットの材料として利用された。

本編修正およびビデオソフト未発売についての経緯[編集]

劇中、成層圏放射能が一気に降下したためにニューギニアの原住民が被曝食人鬼と化して探検隊に襲いかかるシーン[注釈 6]や、近代文明が核戦争で滅亡した後に放射能で異形の姿となった新人類のデザイン(井口昭彦による)が、実際の原爆症による奇形をデフォルメしたものではないかとして反倫理的・差別的であると取り沙汰され、1974年11月には大阪の被爆者団体「大阪府原爆被害者団体協議会」と反核団体「原水爆禁止全面軍縮大阪府協議会」(現・大阪平和人権センター)が東宝関西支社に抗議して上映の中止を求めた。それを受け、同年12月にそれらの描写の一部(約1分45秒)をカットした修正版フィルムと差し替える措置がとられたが、公開自体は続けられて同年の邦画興行収入第2位を記録した。

その後、1980年11月3日に修正版(食人シーンはそのまま)が、テレビ朝日系の『ホリデースペシャル』枠(19時 - 20時51分)にテレビ放送され、1986年春には2か所のカットを行ったビデオLDの発売が東宝から予告されたものの、社内の要請によって中止となる(同年3月1日にビデオが12800円で、4月21日にはLDが9500円で、それぞれ発売予定となっていた)。サウンドトラック・アルバムに関しては、公開当時に東宝レコードより全曲ステレオ音源で発売され(一部、本編とはアレンジの異なる音源を収録。後年、「メインテーマ」「愛のテーマ」と呼称される2曲をカップリングしたシングル盤も発売された)、1991年ビクターエンタテインメントより同じ内容でCDが発売された(『惑星大戦争』とのカップリング盤)後、1996年には本編で使用された音源をモノラルで収録したもの(上記のシングル盤の2曲をステレオで追加収録)がバップから発売されたものの、本編に関わるソフトは1995年にアメリカでパラマウント・ホームビデオから発売された英語吹き替え版のビデオとLD(こちらは食人シーンはカットされたが、新人類のシーンはごく一部のカットのみで収録)以外は発売されないままだった。

1996年7月13日に日本テレビ系列で放送された『ガメラ2 レギオン襲来』の宣伝番組『ガメラ2スペシャル 日本超大作SFX映画博覧会』にて過去の特撮映画の紹介が行われ、本作も巨大ナメクジを退治しているシーンと核戦争後の地球のシーンが放送されている(本作の映像がテレビで流れたのは、この時が最後であると思われる)。

1998年8月に『獣人雪男』と同じく本編の音声を収録したドラマCDが、東宝の協力を得たとするメーカー(グリフォン)より発売され、翌年には「株式会社セプト」というメーカーから再発売された。なお、1998年の発売後には完全ノーカット版の海賊版ビデオが出回っており、グリフォンとの関係が指摘されているが、同社の代表者の詳細な素性が不明なこともあって詳細は不明となっている(この事情に関しては、安藤健二の『封印作品の謎』に詳しい)。また、このドラマCD発売・海賊版ビデオ流出以前には、本作を出版物で扱うことは特に問題が無かったようだが、これ以後は出版物での扱いもできなくなり、増刷時に本作の紹介がカットされた書籍もあった[注釈 7]。2014年7月に発売された『ゴジラ キャラクター大全 東宝特撮映画全史』(講談社)には本作の解説が写真付きで収録されているが、食人シーンや異形の姿となった新人類に関する説明および写真は掲載されていない。

1980年代に発売された東宝特撮映画の予告編集ビデオ『特撮グラフティー4』に収録されている予告編が、国内での唯一の正規ソフト化商品となっている。

登場キャラクター[編集]

諸元
大ナメクジ
GIANT SLUG[10]
身長 40cm[10]
体重 200g[10]
出身地 東京・夢の島[10]
大ナメクジ[11][9][10]
夢の島に異常発生した巨大なナメクジ[11][10]。食物に含まれる防腐剤AF2の影響によるとされる[11]。自衛隊の火炎放射により一掃された[10]
  • 造形物は、当初村瀬継蔵が製作したものが用いられたが、火炎放射で想定以上に燃焼してしまい、安丸信行によりホットメルトで作り直された[10]。内部には歩行用メカを内蔵している[10]
諸元
大コウモリ
GIANT BAT[10]
身長 1m[10]
体重 10kg[10]
出身地 ニューギニア奥地[10]
大コウモリ[11][9][10]
ニューギニアに棲息するコウモリが放射能により凶暴化したもの[11][10]
軟体人間[11]
良玄が想像する核戦争後の世界で生き延びているミュータント[11]
  • デザインは井口昭彦、造型は安丸信行が担当した[7][10]。頭部はソフトラバー、胴体は女性向けの肌色タイツを用いている[10]

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

※以下ノンクレジット出演者

原作[編集]

  • 五島勉『ノストラダムスの大予言 迫りくる1999年7月の月人類滅亡の日(ノン・ブック)』祥伝社(原著1973年11月25日)。ISBN 4396100558

サウンドトラック[編集]

  • ノストラダムスの大予言 (1996年10月2日、バップ
  • ノストラダムスの大予言 (2015年12月27日、LP再販盤、CONTEMPO RECORDS)
  • J-CINE サントラコレクション ノストラダムスの大予言(2016年5月12日、バップ
  • ノストラダムスの大予言(2019年4月24日、CINEMA-KAN、音楽:冨田勲、品番:CINE-74)[12]

関連テレビ番組[編集]

『㊙ノストラダムスの大予言』
1974年7月25日に、フジテレビ系列の1時間単発特別番組枠木曜大特集』(木曜20:00 - 20:55)にて放送されたトーク番組。本作の宣伝を兼ねて特撮部分を紹介しながら、5人の預言者・気象学・食生態学の専門家が、それぞれの立場から「1999年人類滅亡説」を推理する。出演者は五木ひろしあべ静江山本リンダに、本作から丹波哲郎・司葉子・黒沢年男・由美かおるが参加した[13]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ これは海外公開時のタイトルにもなった。
  2. ^ ただしこの批判は、良玄の独白が前述の生産活動停止の提言から「「生産圏と生活圏完全分離」「食糧危機に備え食品統制分配を実施」「ヒエアワを食っても生きていけるように体質を改善」等と続いていき、終に「人口抑制の為には弱き者、能力無き者は・・・」とジェノサイドを肯定しかねない発言に至る流れを遮るように放たれたものであり、その批判に対する「(これらを実行してでも)人類を存続させる事こそ真のヒューマニズムだ」という良玄の反論に対しては、「君の発言はナチスを思わせる」との批判が重ねられた。
  3. ^ 国会内でのラスト・シークエンスの中でも、人類が滅亡へと向かう映像が展開されてゆくが、これらはそれ以前のシーンで起こる災害や天変地異が「劇中、実際に起こった出来事」であるのに対し、良玄の言にもある通り「このままでは、こうなる」という良玄の警告をビジュアル化したものとなっている。
  4. ^ 通常なら青く着色するところを食紅で着色している。
  5. ^ 川北紘一によると、森林火災のシーン撮影のためにミニチュアに着火したところ発泡スチロールに燃え移り、一度はスタッフの手で鎮火させたように見えたが、翌日再炎上したと述べている[7]
  6. ^ 食人シーンは準備稿から記述されており、決定稿では削除されていたが、完成作品で復活している[9]
  7. ^ 竹書房の『ゴジラ画報』で本作と『獣人雪男』の解説が掲載されていたが、増補版『ゴジラ画報 第3版』では削除されている。

出典[編集]

  1. ^ a b c d 東宝特撮映画大全集 2012, p. 176, 「『ノストラダムスの大予言』」
  2. ^ ノストラダムスの大予言 映画パンフレット プロダクションノートより
  3. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン全史: 1946-2002』キネマ旬報社、2003年、198-199頁。ISBN 4-87376-595-1
  4. ^ 東宝特撮映画大全集 2012, p. 177, 「『ノストラダムスの大予言』作品解説/俳優名鑑」
  5. ^ 安藤健二:『封印作品の謎』太田出版ISBN 4872338871(2004年)、pp.108-156
  6. ^ 安藤健二:「封印作品の謎 テレビアニメ・特撮編」、彩図社、ISBN 978-4801301863(2016年)。
  7. ^ a b c d 東宝特撮映画大全集 2012, p. 179, 「『ノストラダムスの大予言』撮影秘話/川北監督に訊く」
  8. ^ 東宝株式会社出版事業室 編『東宝特撮映画全史』東宝 1983年 ISBN 9784924609006
  9. ^ a b c d 東宝特撮映画大全集 2012, p. 178, 「『ノストラダムスの大予言』怪獣図鑑/資料館」
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q オール東宝怪獣大図鑑 2014, p. 192, 「『ノストラダムスの大予言』」
  11. ^ a b c d e f g ゴジラ大全集 1994, p. 128, 「昭和40年代 怪獣グラフィティ」
  12. ^ ノストラダムスの大予言 完全版 オリジナルサウンドトラック
  13. ^ 産経新聞産経新聞社、1974年7月25日付テレビ欄。 

参考文献[編集]

外部リンク[編集]