怪獣総進撃

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怪獣総進撃
Destroy All Monsters
監督 本多猪四郎(本編)
有川貞昌(特撮)
脚本 馬淵薫
本多猪四郎
製作 田中友幸
出演者 久保明
小林夕岐子
愛京子
佐原健二
伊藤久哉
当銀長太郎
黒部進
勝部義夫
土屋嘉男
田島義文
アンドリュー・ヒューズ
田崎潤
音楽 伊福部昭
撮影 完倉泰一(本編)
富岡素敬(特撮)
真野田陽一(特撮)
編集 藤井良平
配給 東宝
公開 日本の旗 1968年8月1日
上映時間 89分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
製作費 2億円(当時)
興行収入 2億3千万円(当時)
前作 怪獣島の決戦 ゴジラの息子
次作 ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃
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国連の宇宙港は硫黄島にあるという設定
ゴジラの放射能火炎で粉砕されるニューヨーク国連ビル(左)
ラドンの衝撃波によって吹き飛ぶモスクワのクレムリン宮殿
ゴロザウルスによってパリのエトワール凱旋門が破壊される

怪獣総進撃』(かいじゅうそうしんげき)は、1968年(昭和43年)8月1日に封切り公開された日本映画で、ゴジラシリーズの第9作。製作、配給は東宝カラーシネマスコープ[注 1]。上映時間は89分。

初回興行時の観客動員数は258万人[1]。ゴジラをはじめとする多数の東宝怪獣を集結させた作品。併映は『海底軍艦』(短縮版)、『海ひこ山ひこ』。

概要[編集]

ゴジラシリーズ第9作。当時の映画館の入場者数はすでに全盛期の4分の1まで落ち込んでおり、子供たちの興味も映画館での怪獣よりも妖怪スポ根を題材にしたテレビ番組へと向けられはじめ、怪獣ブームにも陰りが見えはじめていた。これらの要因から、東宝では本作をもって莫大な製作費を要する怪獣映画の終了を見込んでいたが、前作『ゴジラの息子』の観客動員数を10万人上回る成績を上げたことにより、東宝の怪獣路線は継続されることとなった[2][注 2]。登場怪獣の数は昭和ゴジラ映画で最多であり、2004年に『ゴジラ FINAL WARS』が公開されるまではゴジラシリーズでも最多だった。

当初の予定タイトルは『怪獣総進撃命令』であり、企画段階では『怪獣忠臣蔵』という仮題だった。1967年には関沢新一により『怪獣総出動』という脚本も書かれており、『ゴジラの息子』と共に製作ラインナップに挙げられていた[3]。検討用台本の段階では、アンギラス、ゴロザウルス、ミニラは入っておらず、マグマエビラが含まれていた[4]。特撮助監督を務めた中野昭慶は本作について「シネスコならではの企画」と掲げ、「シネスコだから歌舞伎の顔見世のようにあれだけ怪獣を並べられた」と語っている。

SFブームと宇宙開発ブームの最盛期に製作された本作は、「怪獣ランド」の設定も後年におけるテーマパーク構想の先駆けとされる。モダンなデザインの調査用宇宙艇SY-3号の活躍ぶりが描かれるほか、近未来ということで携帯テレビが登場したり、防衛隊のミサイル車両などもヘリコプターからの遠隔操縦で動くという設定が盛り込まれている。監督の本多猪四郎は、本作の劇場パンフレットに映画のSF設定について特別エッセイを寄稿している。1971年(昭和46年)のテレビ番組『帰ってきたウルトラマン』(円谷プロ、TBS)第1話ではサブタイトルに本作のものが引用されており、監督も本多が務めた。

近未来を舞台としていることから、関連書籍によっては本作を『メカゴジラの逆襲』より後の時代を描いていると解釈しているものも存在する[5]

ストーリー[編集]

20世紀末(劇中の新聞では1994年)、国連科学委員会(U.N.S.C.)は硫黄島に宇宙港を建設する一方、世界の脅威だった怪獣たちを小笠原諸島の島(通称「怪獣ランド」)に集め、平和裏に管理・研究していた。

しかし、怪獣ランドに突然謎の毒ガスが充満した直後、怪獣たちが主要都市に出現して暴れ始める。原因を突き止めるべく、国連科学委員会は月ロケットムーンライトSY-3艇長の山辺克男に怪獣ランドの調査を依頼する。

早速調査に向かった山辺たちは、怪獣ランドの職員たちによって怪獣たちがリモートコントロールで操られていることを知る。さらに、その職員たちを操るキラアク星人が姿を現し、恐るべき地球侵略計画が明らかになる。

登場キャラクター[編集]

登場怪獣する怪獣は、ゴジラミニララドンモスラ(幼虫)、アンギラスバランバラゴンゴロザウルスマンダクモンガキングギドラの11体。ゴジラ、アンギラス以外は過去の造形物を補修して流用。

キラアク星人[編集]

火星木星の間に存在する小惑星帯に住んでいた宇宙生命体。尼僧に似たケープを着た女性ヒューマノイドとして地球人の前に現わるが、正体は鉱物生命体であり、本来は人頭大の岩のような姿をしている。本作までの東宝特撮作品に登場したミステリアンナタール人とは逆に低温が弱点であり、高温下でなければ女性ヒューマノイドの姿を維持できないため、地球の火山脈を狙って侵略に乗り出した。地球人が普通に住める程度の常温下でも活動不能となるため、基地の外へ出ることはないが、低温下でも死亡には至らずに鉱物化するだけに過ぎないため、実質上は不死である。

月面カッシーニ噴火口に基地を建設し、手始めにゴジラをはじめとする地球怪獣たちを保護している小笠原怪獣ランドを襲撃すると、島を毒ガスで覆って怪獣ランドの職員たちや地球怪獣たちを拉致する。職員たちについては自分たちの意向を伝える使節や護衛として、地球怪獣たちについては侵略の戦力としてそれぞれ小型のコントロールマシンで操り、世界の主要都市を次々と攻撃する。

世界各地へ半径2000キロメートルまで電波が届く送信機(岩石や椰子の実などにカモフラージュされている)をばら撒いていたが、それらは国連によってすべて回収される。さらに、月面基地に設置していたコントロールシステム本体もムーンライトSY-3号の活躍で奪取され、地球怪獣たちを操れなくなった結果、地球人に操られた地球怪獣たちに富士の麓の本拠地を包囲される。

キングギドラに地球怪獣たちを迎撃させるが、その連係プレイにキングギドラは翻弄されて敗北する。最後の手駒として円盤を炎で包み、炎の怪獣「ファイヤードラゴン」に偽装して差し向け、怪獣ランドのコントロールシステムを破壊するが、そこから解放された地球怪獣たちは自らの意思でキラアク星人への攻撃を続行する。まもなく、ファイヤードラゴンをムーンライトSY-3号の攻撃によって撃墜されたうえ、本拠地もゴジラによって粉砕されたため、キラアク星人は全員が鉱物化して侵略も潰える。

名前の由来は『忠臣蔵』の登場人物、吉良上野介の姓「キラ」と役柄「悪(アク)」より。前述のとおり、当初は『怪獣忠臣蔵』という企画であったため、内容にちなむ名称となった。

登場メカニック[編集]

ムーンライトSY-3号
国連科学委員会(U.N.S.C.)が開発・所有する調査用宇宙艇であり、硫黄島の第二宇宙空港を母港としている。可変後退翼を有し、ジェット推進とロケット推進を併用することで大気圏内外での飛行が可能[6]。乗員は6名。大気圏脱出時には後部にブースターを装着して通常のロケットと同様に発射台から垂直離陸しており、このブースターを含めてムーンライトSY-3システムと呼ばれる。なお、このブースターは月から地球への帰還時にもドッキングされる。船内に装軌式の探検車(5人乗り。メーサー砲を4門装備しており、そのうち2門は分解して携行することも可能)とミサイルを搭載、尾部に離着陸用の履帯を格納しているほか、内部設定図では動力源である原子炉や太陽エネルギー吸収装置などの装備が確認できる[6]。機体強度は短時間であればゴジラの放射熱線に耐えられるほどで、大気圏内での最大速度はラドンの飛行速度を上回る。また、関連書籍では怪獣ランドを母港とする同型機オーラルミネスSY-7号が紹介されている[7]
デザイン・製作は井上泰幸豊島睦。デザインはサンダーバード1号ウルトラホーク1号がモチーフになっており、ロケットブースターを使う往還型ロケットの先駆けとなっている。製作にはバルサ材が用いられ、3サイズと1尺サイズのミニチュアが3つ作られた。探検車は1尺サイズのミニチュアと実物大プロットが作られた。なお、ミニチュアの下部分は『モスラ対ゴジラ』などに登場した61式戦車の流用である[8]
乗員の拳銃は、『怪獣大戦争』に登場したX星人の光線銃のプロップを、ホルスターに収まるように突起を削ったうえで再利用した。宇宙服は、同年公開の『空想天国』(松森健監督)に登場するロボットの衣装に流用された後、銀色に塗装されて『ノストラダムスの大予言』(1974年、舛田利雄監督)に登場するニューギニア調査団の放射能遮蔽服に流用されたほか、『ウルトラセブン』第35話「月世界の戦慄」での宇宙服に流用された。大型銃は、本作と同年に放送された円谷プロダクション制作の特撮ドラマ『戦え!マイティジャック』第17話で、ナナを追うQ工作員の銃として流用されている。
諸元[9]
  • 全長:46.7メートル(ブースター装着時:124メートル・ブースター全長:77メートル)
  • 全幅:13.5 - 36.3メートル(可変翼によって可変・ブースター全幅:32メートル)
  • 全高:12 - 17.5メートル(可変翼によって可変・ブースター全高:31メートル)
  • 武装:ミサイル(通常は岩石破壊用、ファイヤードラゴンとの対決の際には冷線ミサイル)×4発
キラアク円盤(ファイヤードラゴン)
キラアク星人が使用する円盤であり、直径は100メートル程度。複数が存在するが、そのうち1機は全体を高熱の炎で包んだ「ファイヤードラゴン」に偽装し、キングギドラを倒された後に最後の手駒として投入された。「燃える怪獣」とも称され、炎で包まれた機体にはラドンも近づけないなど、地球怪獣たちは打つ手なしとなったが、ムーンライトSY-3号の攻撃で撃墜されると円盤としての正体を現し、沈黙した。
デザインは井上泰幸FRP製の1尺サイズ、3尺サイズのミニチュアが数機作られた。
対怪獣用超音波障壁
作中では「磁気防壁」との説明がある。小笠原怪獣ランド周辺を取り囲む超音波障壁で、ラドンやバランなど飛行能力を有する怪獣が嫌う周波数が設定されており、怪獣を外海に逃がさないようにしている。
都市防衛システム
東京を防衛するため、郊外地域に2連装ミサイルランチャー、皇居に隣接するビルディングに多連装ロケット砲を配備し、有事の際には地下コントロールセンターからの指示で展開し、怪獣を迎撃する。キラアク星人に操られたゴジラ、ラドン、マンダ、幼虫モスラを迎撃するも有効打を与えられず、東京を蹂躙されてしまう。
小型ミサイル搭載ジープ
車体後部に対地ミサイルを2発搭載したジープ。対地ミサイルは地面に下ろして運用することも可能。富士の裾野に集結する怪獣たちを監視する防衛軍が用いる。

『怪獣総進撃』の特撮[編集]

本作の特技監督は、前作『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967年、福田純監督)に引き続き、有川貞昌が務めた。円谷英二の愛弟子だった有川が本作でこだわったのは、操演技術だったという。富士地底の基地で、竪穴から上昇したキラアク円盤がそのまま水平移動して横穴へ飛行しながら進入していくカットがあるが、これは滑車を組み合わせた支点をいくつも使って曲線的な動きを採り入れた、ピアノ線による職人芸ともいえる操演であり、マンダがモノレールに絡みつくシーンと合わせ、有川も会心の特撮と述懐している。

防衛軍のミサイル攻撃のシーンでは、発射台のミサイルの先端からピアノ線をスタジオの上部に取り付けたバネにつなぎ、火薬の点火で固定具が溶けると同時に勢いよく飛び出す工夫をしており、発射時の白煙がまっすぐ伸びるリアルな映像となっている。怪獣ランドのヘリコプター主観のカットでは、クレーンを使った俯瞰撮影が行われ、効果をあげた。キラアク星人の基地は不燃性素材で作られ、「現実感を」との有川の意向で火炎放射器を使って炎上爆発シーンが撮影されるなど、さまざまな技法が試みられている。

美術チーフを務めた井上泰幸による、「ムーンライトSY-3号」や「キラアク円盤」、「月面基地」など、そのシャープな感覚がSFを題材とした本作のイメージを高めており、有川は井上の美術を「時代劇が現代劇になったような感じ」と評している。

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

※映画クレジット順

※以下ノンクレジット出演者

  • 国連科学委員会技師、TTVカメラマン、防衛隊隊員(3役):川又由希夫

漫画[編集]

映像ソフト化[編集]

  • 8mmフィルム
    • 大沢商会から、1972年ごろに本編映像を8mmフィルムで再編集したものが、ソノシートと絵本のセットにして「巨竜マンダ」、「怪獣オリンピック」、「オール怪獣集合せよ」とそれぞれ発売された。
  • レーザーディスク
    • 1994年に発売。VHDも発売された。
  • DVD
    • 2003年8月21日にジュエルケース版が発売。
    • 2005年4月22日発売の「GODZILLA FINAL BOX」にも収録されている。
    • 2008年2月22日発売のトールケース版「ゴジラ DVDコレクションII」にも収録されており、単品版も同時発売。
    • 2014年5月14日には「ゴジラ60周年記念版」として、期間限定の廉価版が発売。
      • 劇場用予告編はオリジナル紛失のため、『ゴジラ電撃大作戦』の予告編が収録されている。上記の8mmセットも特典収録されている。
  • Blu-ray Disc
    • 2014年7月16日に発売。

再上映[編集]

1972年(昭和47年)の「東宝チャンピオンまつり」冬興行では、『ゴジラ電撃大作戦』と改題されている。それまでの改題リバイバル作品は、『怪獣大戦争』→『怪獣大戦争 キングギドラ対ゴジラ』や、『三大怪獣 地球最大の決戦』→『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 地球最大の決戦』のように、必ず原題の一部が残っており、原題が一切無いリバイバル作品は非常に珍しい。

この再上映の際、オリジナルのネガフィルムは監督の本多に無断で再編集された。オリジナルのネガはのちに復元されているが、その際に予告編フィルムの原版が紛失されている。

同時上映は『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』『パンダコパンダ』。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ この年から「シネマスコープ」呼称が版権解除され、これ以前の「東宝スコープ」呼称から「シネマスコープ」表記に変わった。
  2. ^ ただしDVDのオーディオコメンタリーで谷清次は本作が最終作である説を否定している。
  3. ^ 単独シーンのみ。

出典[編集]

  1. ^ 『ゴジラ 東宝チャンピオンまつりパーフェクション』 アスキー・メディアワークス〈DENGEKI HOBBY BOOKS〉、2014年、162頁。ISBN 978-4048669993
  2. ^ 野村宏平 2004, p. 321.
  3. ^ 『東宝特撮映画大全集』 ヴィレッジブックス2012年、118 - 125頁。ISBN 9784864910132 
  4. ^ 『ゴジラ 東宝特撮映画全史』 講談社〈キャラクター大全〉、2014年、114頁。ISBN 9784062190046
  5. ^ 野村宏平 2004, p. 300.
  6. ^ a b 川北紘一監修・岸川靖構成 『東宝特撮超兵器画報』 大日本絵画1993年、40頁。ISBN 978-4-499-20598-6
  7. ^ 『決定版ゴジラ入門』 小学館〈小学館入門百科シリーズ〉、1984年、122 - 123頁。ISBN 9784092201422
  8. ^ 『別冊映画秘宝 ウルトラマン研究読本』 洋泉社〈洋泉社MOOK〉、2014年、92 - 93頁。ISBN 9784800302625
  9. ^ マルサン製プラモデルの販促ポスターより。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]