バラゴン

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バラゴン (Baragon) は東宝怪獣映画フランケンシュタイン対地底怪獣』などに登場する架空の怪獣である。

特徴[編集]

地底怪獣という二つ名を最初に賜った怪獣である。死滅したと思われていた中生代の大爬虫類「バラナスドラゴン」の末裔[注 1]。前後肢の巨大な爪と、背中の重なり合った大きなひだを使い、自在に地中へ潜る。普段は前肢を地に付けた四足歩行形態であるが、戦闘時には後ろ肢で立ち上がることもある。パグ犬にも似たやや寸詰まりの顔を持ち、額の中心からは大きな1本角が生えている。側頭部の後方左右には耳のようながあり、普段は頭部に沿って伏せられているが、興奮状態になると起きあがる。また初代のみ口から熱線を吐き、角が発光する。怪獣らしいフォルムで人気を得ている。二本足で立ち上がる描写は少ないものの玩具などでは二本足で造形されることが多い。

登場作品[編集]

公開順。

  1. フランケンシュタイン対地底怪獣(1965年)
  2. 怪獣総進撃(1968年)
  3. ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃(2001年)

『フランケンシュタイン対地底怪獣』のバラゴン[編集]

  • 身長:25メートル
  • 体重:250トン

地下に潜んでいた中生代の爬虫類が怪獣化したもので、秋田油田の地下から出現。日光白根山付近[1]のロッジを襲撃し、逃げた人間や家畜をすべて食べるという獰猛な肉食ぶりを見せるが、フランケンシュタインと戦い、首の骨を折られて倒される。

オリジナル公開版では、フランケンシュタインはバラゴンが地中を移動する際に掘削で生じた空洞によって起きた地盤沈下のため、その陥没に巻き込まれて生き埋めになり、絶命する。

普段は4足歩行で行動するが、戦闘時にはクマのように立ち上がる[注 2]。地中からの敏捷な奇襲で、フランケンシュタインを翻弄する。左右の耳はフランケンシュタインと組み合った際には前方に閉じ、頭部を保護している。口から吐く赤い熱線は、地底へ潜る際に用いて前肢での岩盤掘削をしやすくする描写もある。

  • スーツアクター中島春雄
  • 『フランケンシュタイン対地底怪獣』公開当時の宣材では、「もぐらの親玉」といった表現がされている。
  • 木村武によって執筆された『フランケンシュタイン対ゴジラ』と題した検討用台本ではラストシーン以外のストーリーはそのままにゴジラがバラゴンの役割で登場する予定だった[2][3]
  • 劇場公開の前年に開業した東海道新幹線の「ひかり号」が劇中本編にも出ており、バラゴンがこれを襲うイメージ写真も作られたが、こちらは劇中で描かれなかった。
  • 口から吐く赤い熱線は作画合成で処理された。スチル写真では口から稲妻状の光線を吐いていた[4]。関連書籍などでは熱線はマグマ熱線[5]殺人光線[3]とも表記される。
造形
デザインは渡辺明、頭部造形は利光貞三、胴体は八木勘寿、八木康栄、背びれは村瀬継蔵による。
アメリカ側からの「ポストゴジラ」というオファーによりデザインされた[6]
着ぐるみは従来の怪獣のものより軽量化され、吊りのシーンでも少人数で引っ張り上げることが可能であった[6]。「抜け殻状態のバラゴンのぬいぐるみを、人間形態のフランケンシュタインが担ぎ上げて振り回す」といったアクションスタイルは、翌年に円谷が手掛けたテレビ映画『ウルトラマン』(円谷特技プロダクションTBS)で、主役ヒーロー「ウルトラマン」と怪獣の格闘の基礎パターンとなった。
額の一本角は村瀬によるポリ樹脂製で、内部に仕込まれた電飾が発光する。リモコンで口の開閉のほか、塩化ビニール板のカバーで覆った眼球が中で左右に動く。この眼球の黒目を黄色い縁取りで囲み、中心に黄色い点が描き込まれているが、これは同年制作の『怪獣大戦争』(1965年、本多猪四郎監督)のゴジラと同じ技法。
崖から落ちるシーンに使用された人形は、後にデパートでの展示を経て、『怪獣総進撃』で富士山の裾野のシーンに使用された[7]
着ぐるみの流用
本作での着ぐるみは、映画公開後に円谷プロに貸し出された。高山良策によって頭をすげ替えられ、胴体を傷つけないように布で覆ったうえでラテックスが塗られ、『ウルトラQ』のパゴスに改造された。
ウルトラマン』では、佐々木明によって新造形された頭部が取り付けられてネロンガに改造され、さらにスポンジ製の棘を追加してマグラーへの改造を経てこの棘を外し、襟巻きを着けてガボラに改造された。さらには、再びネロンガに改造され、全国のアトラクション巡業に使われている[注 3]。パゴス、ネロンガ、ガボラはバラゴンと同じく中島春雄がスーツアクターを務めた。
1968年、『怪獣総進撃』が製作される際には東宝へ返却され、再びバラゴンとして復元された[8]。高山が胴体を布で覆っていたことが幸いし、酷使されたにもかかわらず胴体部の劣化は少なく済んでいる。
1966年7月19日に放送された『11PM』の大阪・よみうりスタジオで収録された「怪獣供養」では、バラゴンの着ぐるみが祭壇に飾られていることから、パゴスに改造された着ぐるみとは別の着ぐるみということになる[9]が、村瀬は着ぐるみが複数存在したという説を否定している[10]
鳴き声
ネロンガは着ぐるみと同じく、鳴き声もバラゴンのものを使用している[11]

『怪獣総進撃』のバラゴン[編集]

  • 身長・体重は初代と同じ

怪獣ランドの怪獣として登場し、キラアク星人に操られるが、劇中での破壊シーンはない。エトワール凱旋門を破壊するシーンでは「地底怪獣が出現」、各地に怪獣が現れたことを伝えるニュースのシーンでは「パリにはバラゴン」という台詞がある。また、劇中では天城山の地底で確認されたと言及されている。

  • 関連書籍などでは二代目バラゴンとも表記される[12][5]
  • エトワール凱旋門を破壊するシーンは耳が邪魔だったため、ゴロザウルスに変更された[13][8]。天城山での台詞は、最終脚本までは「マグマ」だった。富士山麓への集結シーンでは、バランマンダと共に小サイズのギニョールモデルが現れるが、キングギドラとの闘いには参加していない。復元された着ぐるみは、怪獣ランドでの棲息描写にのみ使われている。
  • 頭部は新造で、耳の形と角の向きが違う。造形物は着ぐるみのほか、遠景用の人形が製作された。

『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』のバラゴン[編集]

  • 身長:30メートル
  • 全幅:24.5メートル
  • 体重:1万トン

護国三聖獣の1体で狛犬の基になったとされる「地の神・婆羅護吽」として登場する。体色は赤く、鳴き声が昭和版と異なる。「護国聖獣伝記」では実際より細く描かれている。妙高山から出現し、暴走族を生き埋めにしたあと、箱根大涌谷でゴジラと対決する。ジャンプしての噛み付きや体当たりなどを仕掛け奮戦するも、体格差などで及ばず敗れる。武器は鋭い牙による噛みつき攻撃や、地中を掘り進む硬い爪と角で、熱線を吐く能力は持たない。

「普段マグマの近くに生息しているためゴジラの熱線に強い」と設定されているが、劇中では一度の熱線攻撃で倒される。

目撃したカップルに「可愛い」と言われて記念写真を撮られたり、ゴジラと戦っているところを現場中継している報道ヘリのディレクターから「頑張れ、赤い怪獣」と応援されるなど、ゴジラの悪役性を際立たせるための感情移入の対象として演出されている。そのためか、ゴジラに追い詰められているシーンなどでは悲痛な表情が描かれることが多い。また、劇中の人々がバラゴンをゴジラと勘違いする描写があり、作品世界でゴジラが忘れられかけた存在であることが表現されている。

  • 本作のイラストポスターでは初代バラゴン風に描かれている。
  • スーツアクターは太田理愛で、東宝怪獣映画史上初の女性スーツアクターである。小柄な女性が演じることで、ゴジラとの圧倒的な体格差(約2倍の身長差)が表現された。演技指導においては四足歩行時に膝を付かないことに注意が払われた[14]
  • 着ぐるみはメインよりひとまわり大きいものもつくられた。初代同様に角が光るギミックも作られたが劇中未使用。着ぐるみに入ったのは佐々木俊宜

『ゴジラアイランド』のバラゴン[編集]

ゴジラアイランドの「バラゴンの家」に生息する怪獣。ゴロザウルスと絡むことが多く、カマキラスの言葉を真に受けてゴロザウルスと共に一時ザグレス側に寝返る。地中の穴を掘るのが得意で、よく食べ物を探しているらしい。バラゴンのこの穴掘りの行動が、終盤では事件のきっかけになる。「ラドンおんせん」はバラゴンが掘ったものらしい。また、物語終盤でムー帝国のタイムカプセルを掘り出す。大きさはゴジラとほぼ同じ。

『怪獣王ゴジラ』のシーバラゴン[編集]

悪の科学者であるマッド鬼山が、かつてフランケンシュタインに倒されたバラゴンの体組織から製造・改造した怪獣。イッカクのような角や、セイウチのような長い牙が特徴。改造されたことで海中での活動が可能になり、体躯もゴジラと同等の100メートルまで巨大化している。

生息地の伊豆大島の近海で周囲の動物や船舶の人間を襲い、食料としている。島へ上陸して暴れようとした際にゴジラと遭遇し、戦闘となる。俊敏な動作やドリルのような角による攻撃でゴジラを追い詰めるが、角をへし折られて戦意を喪失し、ジャンプで逃げようとするも尻尾を捕まれて地面へ投げつけられ、放射熱線でとどめを刺される。

本作の怪獣たちは鳴き声に人語の翻訳が付いているのが特徴であり、バラゴンの鳴き声にも翻訳が付けられている。

その他の作品に登場するバラゴン[編集]

  • ゴジラ対ヘドラ』でバラゴンのソフビ人形が矢野研の所持しているおもちゃとして登場する。
  • PlayStation 2用ソフト『ゴジラ怪獣大乱闘 地球最終決戦』では、素早い動きで敵怪獣を翻弄、地中から奇襲をかける。武器は口から吐く火炎攻撃。他の怪獣より一回り小さく、投げ技が飛び掛かりになるなど、かなり特殊なキャラクターである。
  • ウルトラQ』の古代怪獣ゴメスや『ウルトラマンメビウス』に登場する宇宙凶険怪獣ケルビムのデザインイメージになっている。
  • 帰ってきたウルトラマン』第24話ではバラゴンのソフビ人形が、少年が遊んでいた玩具として登場。
  • ファミリーコンピュータのゲーム『ゴジラ』ではX星人の操る怪獣軍団の1匹として登場。四面から最終面まで登場するボスキャラクターである。普段は四足姿勢で行動しているが、側面を向いて咆哮している際や、立ち上がって光線を撃っている際は無敵状態であるなど、特異な性能を持つ。
  • ゴジラ ザ・シリーズ』には未登場であるがデザイン画のみ存在している。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「ゴジラ大百科 新モスラ編」(1992年・学研)の記述より[要ページ番号]「正式名称」ではない。また、それ以前の資料には「バラナスドラゴン」という名称は確認できないため公式設定かどうかも不明。
  2. ^ 宣伝素材では直立した姿勢で写ったものが多数あるが、劇中では二本足で歩行することはない。
  3. ^ 『ウルトラ怪獣大百科』では、バラゴンを含め、パゴス、ネロンガ、マグラー、ガボラを「これらの怪獣になんらかの関連性があるのではないか」という説を提唱している。

出典[編集]

  1. ^ 野村宏平 『ゴジラと東京 怪獣映画でたどる昭和の都市風景』 一迅社2014年、169頁。ISBN 978-4-7580-1397-0
  2. ^ 『「ゴジラ」東宝特撮未発表資料アーカイヴ プロデューサー・田中友幸とその時代』 木原浩勝、清水俊文、中村哲、角川書店2010年、291-318頁。ISBN 978-4-04-854465-8
  3. ^ a b 東宝特撮映画大全集 2012, p. 96.
  4. ^ 東宝特撮映画大全集 2012, p. 95.
  5. ^ a b 『ゴジラ大辞典』 笠倉出版社2004年、220頁。ISBN 4773002921 
  6. ^ a b 東宝特撮映画大全集 2012, p. 97.
  7. ^ 『ゴジラ 東宝特撮映画全史』 講談社〈キャラクター大全〉、2014年、104頁。ISBN 9784062190046
  8. ^ a b オール東宝怪獣大図鑑 2014, p. 146.
  9. ^ 『特撮ニュータイプ』、角川書店2012年4月[要ページ番号]
  10. ^ オール東宝怪獣大図鑑 2014, p. 105.
  11. ^ 『ウルトラマン特撮の秘密百科』 高橋和光、ケイブンシャ1990年、124頁。
  12. ^ 『ゴジラvsキングギドラ 怪獣大全集』 講談社〈講談社ヒットブックス20〉、1991年、75頁。ISBN 4-06-177720-3
  13. ^ 間宮尚彦 『ゴジラ1954-1999超全集』 小学館2000年1月1日、131頁。ISBN 4091014704
  14. ^ DVDの映像特典「プロジェクトGMK〜金子修介がゴジラと戦った日々」第六章「愛しのバラゴン」より。

参考文献[編集]