アンギラス

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アンギラス 『ゴジラの逆襲』(1955年)

アンギラスAnguirus)は、東宝ゴジラ映画シリーズに登場する架空の怪獣。別名は「暴竜(暴龍)」。

特徴[編集]

ゴジラと同じく原水爆の影響で蘇ったとされる太古の恐竜で、「ゴジラシリーズ」初の怪獣同士の対決を展開する怪獣でもある。

モスララドンとともに高い人気をもつ。『怪獣総進撃』にて「ゴジラのよき相棒」といった印象を与えられ、以降の作品にも登場する。

設定[編集]

1億5千万年前に棲息していたアンキロサウルスと呼ばれる恐竜が、水爆実験で現代に蘇ったもの[注 1]。脳が体じゅうに分散しているため、動きが俊敏である[注 2]

当時の東宝スタジオメールによると、「一億五千万年前から七千万年前の三畳紀に生息していた恐竜」という設定になっている[注 3]

『ゴジラの逆襲』公開当時の宣材では、シベリア出身と表記されている。

名称[編集]

アンギラスの名前は東宝内部で社員公募された。落選した名前のいくつかは杉浦茂の漫画化作品『大あばれゴジラ』[注 4]に登場するオリジナル怪獣の名前に転用された。『ゴジラの逆襲』にも出演した俳優の土屋嘉男は、「ギョットス」という名前を考えて投書した[1]。『ゴジラの逆襲』の海外版では、「アンジラ[注 5]」という名称になっている。

再登場案[編集]

海上日出男による初の総天然映画を予定していた色検討用脚本『ゴジラの花嫁?』にも登場シーンが描かれている[2]

ゴジラ対メカゴジラ』以後、『ゴジラ FINAL WARS』にて30年ぶりに登場するまではまったく出番がなかったが、企画段階では復活が何度も検討されていた。

ゴジラvsデストロイア』が『ゴジラvsゴーストゴジラ』という企画だった時期には、ゲスト怪獣としての登場が検討されており、デザイン画も描かれていた。また、デストロイア(企画段階での名前はバルバロイ)の一形態としてアンギラス型の怪獣の登場も検討されていた[3][4]

ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』の初期案ではバランとともに登場する予定だったが、興業サイドからの要望でモスラとキングギドラに差し替えられた[5][4]

ゴジラ×メカゴジラ』では機龍と戦う案が出されたほか、『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』では死骸での登場が検討されたが、カメーバに変更された[6][4]

たびたび検討されながら実現に至らなかった理由について、川北紘一は「四足のためゴジラと並んだ時に絵にならない」「膝をついて動くため、スピード感が出せない」などの理由を挙げている[4]

登場作品[編集]

公開順。

  1. ゴジラの逆襲(1955年)
  2. 怪獣総進撃(1968年)
  3. 地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン(1972年)
  4. ゴジラ対メガロ(1973年)
  5. ゴジラ対メカゴジラ(1974年)
  6. ゴジラ FINAL WARS(2004年)

ゴジラシリーズ(昭和)のアンギラス[編集]

(各作品・ならびに初代 & 二代目共通)

  • 身長:60メートル
  • 全長:100メートル
  • 体重:3万トン

『ゴジラの逆襲』[編集]

初代アンギラス。アンキロサウルスの生き残りが水爆実験の影響で突然変異を起こし誕生した。性格は非常に凶暴で、他の生物に対しては激しい敵意を抱く。頭を回し相手を威嚇する。

岩戸島でゴジラと戦った後ゴジラを追って大阪に上陸する。大阪城でゴジラと激しい格闘を繰り広げた末、ゴジラに喉を噛み切られて重傷を負い、熱線で焼かれて死亡する。この際、「断末魔の叫超音波となり、大阪城に細かくひびが入る」というカットが挿入されている。

  • スーツアクターは手塚勝巳
  • 原作小説およびプロット段階ではゴジラと同様の熱線を吐けるということになっていたが、映画にそのような描写はない。
造形
頭部造形は利光貞三、胴体は八木勘寿、八木康栄による。
2(60.6センチメートル)サイズの粘土模型が作られ、各種スチールやポスターには、この雛型の写真が使われている[7]。粘土製の検討用1尺モデルが作られた段階では、背中の甲羅は2枚に割れ、後方はめくれあがっていた[8][7]。当初は着ぐるみもそのように造られたが、動くたびに甲羅がはがれかけたため、やむを得ず甲羅を1枚に接合し、背中全体に貼り付けたという[注 6]。甲羅の重さは3(11.25キログラム)もあり、倒れると自力で起き上がれなかった[7]
利光は石膏型からの型抜きではなく、硬い素材で頭の芯を作り、そこに直付(じかづけ)で表皮を盛り付ける手法で頭部を制作している。口の開閉や顔の細かい表情のほとんどには、片手を入れて操作する手踊り式のギニョール・モデルを使用。背中のとげは丸めた金網に和紙を貼りゴムを塗ったもので、格闘などで踏むとすぐにつぶれるような軟らかいもので、造型技師の開米栄三は「補修が大変だった」と述べている。
作中での体色は白黒画面で判然としないが、造型スタッフの八木正夫によれば、明るいエメラルドグリーンだったそうである[9]
造形物は着ぐるみのほかにギニョールが製作された。

『怪獣総進撃』[編集]

二代目アンギラス。初代とは異なり、温厚さと勇敢さを兼ね備えた性質で、鳴き声も若干違う。本作ではほかの作品に比べると、二本足で立つ描写が少ない[注 7]。眼は黒目がちの明確で大きなものとなり、頭の角は7本から6本へ変更され、背中のとげは時計回りの向きに植えられ、数も少なくなっている。

怪獣ランドの怪獣として登場し、キラアク星人に操られる。その後、富士のすそ野での対キングギドラ戦では、右首にかみつく。キングギドラが飛び上がっても離さず、落とされたあとも右首を集中攻撃する。落下した際の衝撃でキラアク星人の基地が露見し、のちのゴジラの攻撃につながる。

  • スーツアクターは関田裕渡辺忠昭
  • スーツは新規造形[10][11]。造形は安丸信行[11]。背中の甲羅が初代と違い、一枚皮となった。甲羅のとげは、バルサ材を削ったものにポリ樹脂を塗って作られた。
  • 造形物は着ぐるみのほかに遠景用の人形が製作された。

『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』[編集]

ゴジラとともに宇宙人の陰謀を突き止めこれを偵察するも、襲撃と誤解した防衛隊から攻撃される。その後、刺客として現れたキングギドラおよびガイガンと戦闘。ガイガンに額を裂かれたりして苦戦するが、最後は誤って互いに攻撃を当て、喧嘩を始めた宇宙怪獣のスキをついたゴジラとの連携技を駆使し、宇宙へ追い返す。海のシーンでは頭の色が黒くなっており、赤や黄のコケらしきものが付着している。本作のみ、漫画のような吹き出しでゴジラと会話するシーンがある。

  • スーツアクターは大宮幸悦。
  • スーツは『怪獣総進撃』で作られたものの流用。円谷英二が嫌った流血シーンが本作では積極的に採り入れられ、ガイガンの腹部カッターで切り裂かれた頭からの派手な流血がゴジラと合わせて描かれる。本作で特技監督を務めた中野昭慶によると、当時「ゴジラはやられてるときどうして血が出ないの?」と子供たちからの質問があり、その影響もあったという[12]
  • 偵察を誤解した防衛隊の迎撃シーンやゴジラとともに海を渡るシーンで、アンギラスの顔にはのちのシーンでガイガンにつけられるはずの傷がすでに存在する。これは、後処理の大変な着ぐるみの濡れるシーンを、ガイガン戦やキングギドラ戦のあとに撮影したためである。

『ゴジラ対メガロ』[編集]

冒頭のシーンに登場。核実験に巻き込まれてゴジラとともに脱出しようとするが、地割れに飲み込まれて離れ離れになる。

『ゴジラ対メカゴジラ』[編集]

メカゴジラ扮する偽ゴジラの異変を察知して地面から出現し、これと交戦。ジャンプからの体当たり攻撃で偽ゴジラの右腕の皮膚の一部を剥がし、内部の金属のボディを露出させる。しかしその後の格闘戦は全く歯が立たず一方的に痛めつけられ、尻尾を掴まれ地面に何度も叩きつけられて動けなくなったところを口を無理矢理こじ開けられ、顎を裂かれ敗北。地中に逃げ去る。

  • スーツアクターは久須美護
  • 怪獣総進撃』で作られたものの流用。頭の角がかなり磨滅して短くなっていて、前作まで口にあった大きな歯(犬歯)が無くなっている。
  • 久須美は急遽アンギラスの着ぐるみに入ることになり、倉庫に向かったところ、着ぐるみ内の腹の上下がくっついていたため、これを温めてはがしたという[13]
  • 本作のあと、傷は後遺症もなく完全に回復し、ゴジラと平和に過ごしているという[14]

『ゴジラ FINAL WARS』のアンギラス[編集]

  • 全長:180メートル
  • 体高:40メートル(直立時:90メートル)
  • 体重:6万トン

ほかの作品と違いアンキロザウルスが放射能の影響を受けて怪獣になった、もしくは劇中で音無美雪の台詞にあるように「X星人の遺伝操作によってM塩基を入れられたり、一から造り出された」という設定。 頭の角は初代同様の7本となり、背中の棘も整列しているが、先代2種が後方に反っていた形状なのに対して前向きに反っているほか、肩や腿の部分に棘状の突起があるのも違いとなっている。また、全身が丸みを帯びており、尾には突起物が付いている。腹のパターンはバラゴンをモチーフとしている。体を丸めて高速で跳ね転がる「暴龍怪球烈弾」(アンギラスボール)という必殺技を駆使し、過去の映画とは異なる戦い方を見せる[注 8]

X星人に操られて上海を襲撃し、地球防衛軍の空中戦艦火龍と戦っていた最中、X星人により一度は消滅させられる。その後、地球侵略の意図を明らかにしたX星人により他の怪獣たちとともに地球へ投入され、再度上海を破壊して火龍を暴龍怪球烈弾で撃沈すると、富士の樹海でゴジラにラドンキングシーサーとともに戦いを挑むも、三位一体の攻撃はジャンプでかわされ、アンギラスは踏み台にされる。続いてラドンとの連係によるアンギラスボールとして一度はゴジラに命中するものの、二度目はよけられてラドンと衝突する。さらに空中へ弾かれた状態からキングシーサーにシュートされ、岩盤へ激突する。最後は飛び膝蹴りをかわされたキングシーサーにぶつかられ、ともにノックダウンとなる[注 9]。脚本に存在した、「とどめの放射熱線」は省略された。

なお、劇中には「バンクーバーの子供がアンギラスのソフビ人形を手に取った途端、テレビでアンギラスの上海襲撃映像が流れる」というシーンがある。

  • スーツアクター:小倉敏博
  • デザインは西川伸司
  • 『ゴジラ大辞典【新装版】』では、名称を「アンギラス(3代目)」と記載している[15]

『ゴジラアイランド』のアンギラス[編集]

ゴジラアイランドの怪獣として登場し、「アンギラスの谷」に生息している。

劇中では「ハリネズミ」と呼ばれる。非常にナイーブな性格で、みずからのとげでジュニアが怪我をした際にひどく落ち込む。しかし、サボテン怪獣ゴロリンが出現した際には、そのとげが唯一の対抗手段になる。

その他の作品[編集]

  • 1966年に朝日ソノラマから発売されたソノシート『大怪獣戦 30怪獣大あばれ!!』収録の「宇宙怪獣対地球怪獣」では、宇宙怪獣と戦う地球怪獣陸軍の1体として登場する[16]
  • 漫画『怪獣王ゴジラ』では、悪の科学者であるマッド鬼山とその子孫が、博覧祭で展示されていたアンキロサウルスを生き返らせ、怪獣化した設定で登場する。
  • 『CRゴジラ4』では、山中でゴジラと戦うムービーと、ガイガンやキングギドラとともに市街地でゴジラと戦うムービーが流れる。スーツアクターは西村郎。『FINAL WARS』の着ぐるみを使用。
  • 小説『GODZILLA 怪獣黙示録』では、複数の個体が出現する。1体目は2005年11月にシベリアの凍土から出現して南東へ移動し、北京でラドンと合流するも生物化学兵器ヘドラによって駆除される[17][18]。2体目(アンギラスII)は2006年に南アフリカ共和国に出現し、公式にはアフリカに初めて現れた怪獣とされている。4体目(アンギラスIV)はバランII、バラゴンIIとともにゴジラから逃れて太平洋からロサンゼルスに上陸したが、ゴジラに追いつかれて殺害された[19]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ただし、実在した同名の恐竜が草食恐竜(曲竜類)だったのに対し、こちらは凶暴な肉食動物と設定されており、類似点はほとんどない。
  2. ^ 製作当時、「ステゴサウルスの腰部には脳の補助をする神経塊があった」とされていたため、それを飛躍させてこの設定が作られたが、その後の研究により「神経塊ではなく、神経に栄養を送るための組織にすぎない」と改められている(詳細は「ステゴサウルス」の記事を参照)。
  3. ^ 『逆襲』本編では、単に地質時代と説明されている。なお、実際の三畳紀は約2億5100万年前から約1億9960万年前であるうえ、実在したアンキロサウルスは白亜紀後期の恐竜である。
  4. ^ おもしろブック』1955年6月号(集英社)の別冊付録に掲載されたあと、『ゴジラ漫画コレクション1954-58』(小学館ISBN 978-4-7780-3301-9)に収録された。
  5. ^ 学名ウナギを意味する。
  6. ^ 大阪港の決闘シーンでは改修前の映像がそのまま使われている[8]。また、宣伝用スチール写真やポスターの写真にも、検討用粘土モデルと合わせて甲羅の割れているものが使われている。
  7. ^ キングギドラ戦では二足歩行になっている。
  8. ^ 同様の技は、1990年代からゲーム『ゴジラ 怪獣大決戦』や漫画『怪獣王ゴジラ』などに登場する。
  9. ^ この戦いはややコメディ調でまとめられている。

出典[編集]

  1. ^ 『誕生40周年記念 ゴジラ大全集』 講談社1994年、203頁。ISBN 406178417X
  2. ^ 『「ゴジラ」東宝特撮未発表資料アーカイヴ プロデューサー・田中友幸とその時代』 木原浩勝、清水俊文、中村哲、角川書店2010年、46-81頁。ISBN 978-4-04-854465-8
  3. ^ 川北紘一(特別監修) 『平成ゴジラ クロニクル』 キネマ旬報社2009年、197頁。ISBN 9784873763194
  4. ^ a b c d 平成ゴジラパーフェクション 2012, 「平成ゴジラバーニング・コラム」No.021
  5. ^ 元山掌 et al. 2012, p. 274.
  6. ^ 『東宝SF特撮シリーズ SPECIAL EDITION』シリーズ[要文献特定詳細情報]
  7. ^ a b c 元山掌 et al. 2012, pp. 12 - 15.
  8. ^ a b 間宮尚彦 2000, p. 80.
  9. ^ 『怪獣とヒーローを創った男たち』 特撮映画研究会、辰巳出版〈タツミムック〉、2002年、27頁。ISBN 4886418082
  10. ^ 間宮尚彦 2000, pp. 130.
  11. ^ a b 元山掌 et al. 2012, p. 125.
  12. ^ 間宮尚彦 2000, p. 18.
  13. ^ 『ゴジラ 東宝チャンピオンまつり パーフェクション』 KADOKAWA〈DENGEKI HOBBY BOOKS〉、2014年、112頁。ISBN 978-4048669993
  14. ^ 『テレビマガジン』1979年10月号、56-57頁。
  15. ^ 野村宏平 2014, p. 370.
  16. ^ 野村宏平 2004, p. 284.
  17. ^ アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』OFFICIAL SITE”. 2017年11月9日閲覧。
  18. ^ 怪獣黙示録 2017, pp. 19-111, 第1章『出現』
  19. ^ 怪獣黙示録 2017, pp. 112-150, 第2章『G』

参考文献[編集]