ビオランテ

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ゴジラvsビオランテ > ビオランテ
ビオランテ
ゴジラシリーズのキャラクター
初登場ゴジラvsビオランテ
作者 小林晋一郎(原作)
大澤哲三(造形デザイン)
竹神昌央
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ビオランテ (Biollante[1][2]) は、日本特撮映画ゴジラvsビオランテ』に登場する架空の怪獣。別名はバイオ怪獣[3][1][4]

名称[編集]

劇中では、生物学者の白神源壱郎が北欧神話に登場する植物の精霊の名前から命名したとされる[1][注釈 1]

『ゴジラvsビオランテ』の原作者である小林晋一郎はビオランテの名前について、自著の中でポール・ヴェルレーヌの詩の一節「秋の日の ヴィオロンの ためいきの……」から「ヴィオロン」を取り、末尾に怪獣の名前に使われることのなかった「テ」を付けたと記しており、バイオテクノロジーを暗示するような名前になったのは偶然であったという[5]

英語圏ではバイオランテと発音される。

各形態の名称は公開当時、朝日ソノラマの宇宙船文庫[6]内で「東宝公認正式名称」として「花獣型・獣樹型」が紹介されていたが、関連書籍やグッズなどでは「第1形態・第2形態[7][8]」「花獣・植獣[1][9][4]」「花獣タイプ・植獣タイプ[3]」「花獣形態・植獣形態[10]」「植獣タイプ・成獣タイプ[2]」など表記が統一されていない。

公開当時にバンダイから発売されたソフビ人形では、バイオビオランテという名称になっている[11]

劇中での活躍[編集]

誕生[編集]

愛娘・英理加をゴジラ細胞(以後、「G細胞」と表記)をめぐるテロ行為によって失った白神は、英理加の細胞だけでも生き永らえさせようと考え、英理加が生前に最も好んだ薔薇の花に彼女の細胞を融合させて育成を試みるが、地震の発生などもあって実験は失敗し、薔薇(英理加)は瀕死状態となってしまう。そこで白神は、自己再生能力の遺伝子を持ったG細胞を薔薇(英理加)と融合させる遺伝子操作により、永遠の命を持つ植物を作り上げようと考える。

対ゴジラを名目とした抗核エネルギーバクテリア製作の交換条件として、事前調査用に貸与されたG細胞を無断で利用し、それに"英理加の細胞を融合させた薔薇の細胞"を組み込んだ結果、ビオランテは誕生する。しかし、ビオランテは白神の意図に反して英理加の意識を侵食し、凶暴なゴジラとしての性質を徐々に発現させていった[注釈 2]

花獣形態[編集]

諸元
ビオランテ
(花獣形態)
別名 バイオ怪獣[10][4]
体長 85m[3][1][10][9][4][2]
体重 6万[3][1][10][9][4][2] - 10万t[1][10][9][4][2]
出身地 白神新植物研究所[10][9][4]
出現地 芦ノ湖[1]

当初はごく普通の薔薇であったが、次第にG細胞の影響が現れ始め、白神の研究所で抗核エネルギーバクテリアの資料を盗み出そうとしていたアメリカ企業のバイオメジャーのエージェント2人とサラジア共和国のエージェントによる銃撃戦中、テロリストの1人を触手などで締め付けて殺害する。その後、壁を突き破り(つまり移動して)失踪する。

その後、芦ノ湖に巨大な薔薇の花を咲かせた植物が出現する。ビオランテの変貌したそれは、現れたゴジラを相手に口のついた触手を伸ばして戦うも、ゴジラの放射熱線によって炎上し、一旦は黄金の胞子となって空に消滅する[1]

蔓を触手のように操ることができ、その先端には牙の生えた口がある[1]。また、蔓を束ねた壁を前面に立てて防御態勢をとる[1]や高熱には非常に弱く、ゴジラの放射熱線の直撃によって2回炎上している。また、この形態ではその場から動けない。

  • スーツアクターは竹神昌央[8]
  • 生頼範義による花獣形態を描いた初期ポスターは、前年に開催された「花の万博」をイメージしていた[10]

植獣形態[編集]

諸元
ビオランテ
(植獣形態)
体長 120m[3][1][10][9][4][2]
体重 20万t[3][1][10][9][4][2]
出身地 白神新植物研究所[4]
出現地 若狭湾沿岸[1]

ゴジラとの戦闘の際に受けた放射熱線のエネルギーによって細胞の増殖などが促進され、巨大な薔薇のような植物形態から、より怪獣らしい姿へ進化した形態[1]。口角にイノシシのような牙を生やしたワニ状の巨大な頭部を持つ。

若狭湾近くに配備された「M6000TCシステム」を持ってしてもゴジラを阻止できず、原子力発電所破壊の危機が迫る中、上空から降り注いだ光り輝く胞子が変貌して地下から出現し、再びゴジラと戦う。

花獣形態時よりも触手や体重が格段に増えており、これまでゴジラと戦ってきた怪獣たちの中では最重量クラスである。また、花獣形態時よりも格段に戦闘能力が向上しており、水辺にいなくとも地表での活動が可能となったうえに移動できるようになり、地響きとともに迫る様子はゴジラすら動揺させている。ゴジラ以上の巨体とそれを支える口のついた触手による攻撃、さらには黄色い強酸性の樹液[1]や巨大な口腔での噛み付きにより、ゴジラを追い詰める。その際に口内へ放射熱線を放たれ、後頭部まで貫通されるダメージを負うものの、まもなくゴジラには自衛隊によって打ち込まれていた抗核エネルギーバクテリアの効果が現れ、昏倒する。そして、ビオランテは失っていた人間の心を取り戻し、最後は自らの意思で黄金の粒子となって宇宙に消える。

  • スーツアクターは柴崎滋、木村義隆[8]
  • 『ゴジラvsスペースゴジラ』では、『ゴジラvsビオランテ』の映像の流用で登場している。
  • ビオランテがゴジラの前に現れた理由について、川北紘一はDVDのオーディオコメンタリーで「ゴジラと同化しようとしていた」と語っている。
  • 『ゴジラvsビオランテ』のエンドロールには、ビオランテが宇宙空間から地球を見守るような演出がある(劇中でも、三枝未希がその様子を絵に描いている)。
  • 川北は、「当初はビオランテの最期をアニメーションで描写し、ゴジラを飲み込んだあと、空へ消えていく予定だった。しかし、そのアニメを観たスタッフのほぼ全員がア然としているのを見て非常にガッカリし、上記のように変更した」と語っている。このアニメーションは、DVDに映像特典として収録されている。

デザイン[編集]

ミラーマン』などの怪獣デザインで知られる米谷佳晃が、『ゴジラvsビオランテ』の企画段階から参加していた。この時点では叩き台となるべきデザイン画がまだ存在せず、米谷が花獣形態や植獣形態も含めたさまざまな検討用デザインを描き、大森一樹などの本編班へ提供していた。花獣形態は米谷が『緊急指令10-4・10-10』の第1話用に手がけたダーリングウツボを基にしており[12]、植獣形態は米谷が『帰ってきたウルトラマン』第34話用に手がけたレオゴンを基にしたスーツアクターを2名ほど要する四つ足怪獣として描かれているが[13]、企画自体が何度も頓挫しかけた経緯もあって、ビオランテのデザイン画は決定に至らないまま、作者の米谷へ返却された。

原作者の小林晋一郎もデザインを行なっており、花の中央に女性の顔があるものや、蝶のような毒々しい花弁のものなどが描かれている[14]

特撮班の川北紘一も、本編班とは別のルートで多くの人々にビオランテのデザイン画を発注しており、企画段階では『大鉄人17』などの特撮美術で知られる松原裕志や、イラストレーターの横山宏スタジオぬえが参加している。企画段階で描かれた松原や横山などの検討用デザインを参考に、かつて『ガンヘッド』でエアロボットのデザインを手がけたスタジオOXが参加するが、ビオランテのデザイン画は決定に至らないまま本作品の撮影開始が迫る事態になった。川北は『ガンヘッド』の撮影中に面識があった西川伸司を抜擢し、東宝上層部からの注文にも沿った(本編でのデザインに近い)ビオランテを描かせ、特撮美術の大澤哲三が造形用の決定デザインに仕上げた[15][16][17]。西川の証言では、コンセプトのひとつとして「動物のパーツを植物的に構成する」ことに重点を置いたという[18]

従来の特撮怪獣よりもハリウッド映画などのSFモンスターを彷彿とさせる姿となっていることが、一般客層への作品の浸透にも貢献したとされる[8]

造形[編集]

造形はビルドアップが担当[19][17]

花獣形態の着ぐるみは、ゴジラの放射熱線によって倒されるシーンの撮影で実際に燃やされた[19]

植獣形態の造形物は3メートルにおよび[19]、操演にはキングギドラを上回る32本のピアノ線が使用されているほか、スタッフも20人あまりが動員されており[19][注釈 3]、大変だったと川北は語っている。

植獣形態での移動シーンは当初の予定になく[19][17]、撮影も最後近くになって川北が思いついたアイデアであった。動かないままでは迫力が足りないということで撮影された[17]が、DVDに収録された撮影風景ではスタッフたちの「すげー」という笑い声が聞こえる。立風書房の書籍『ゴジラvsビオランテ大百科』には「ビオランテの弱点は、地上を動けないことだ。植物のように根をおろしているからだ。」と記述されている[20]が、1992年にテレビ東京系で放映された『冒険!ゴジランド』ではゴジラ博士が「ビオランテは動けないのが弱点」と発言したため、移動シーンが流れた際には出演者から「動いているじゃないですか」と指摘され、返答に困る場面があった。操演とレール移動を併用するノウハウは、映画『ヤマトタケル』でのヤマタノオロチの撮影に活かされた[21]

本編撮影では、実物大の蔓の造形物が用いられた[19]

その他の作品[編集]

  • 漫画『怪獣王ゴジラ』では、悪の科学者であるマッド鬼山が新たに生み出した「ネオ・ビオランテ」として登場。
  • ゴジラ FINAL WARS』では、バンクーバーの子供がビオランテのソフビ人形で遊んでいるシーンがある。
  • アニメ映画『GODZILLA』の前日譚を描く小説『GODZILLA 怪獣黙示録』では、2039年9月ノルマンディー海岸に出現した新種として登場。「オペレーション・エターナルライト」でノルマンディーに上陸したGフォース(地球連合欧州派遣軍)を奇襲し、当初の花獣形態からメーサー砲の直撃を受けて炎上した後は植獣形態に進化する。巡洋艦・赤穂やマーカライトファープなどを破壊してGフォースを苦しめたが、根元の空洞にある心臓部を地底戦闘車モゲラで破壊され、死亡する。植物状の体組織や驚異的な再生能力から、ゴジラの近似種に当たるのではないかという推測が成された[22]

関連作品[編集]

  • 帰ってきたウルトラマン - 本作品の原型といえるエピソードである(原案者が同じ)第34話「許されざるいのち」には、やはり動物と植物との融合怪獣であるレオゴンが登場する。レオゴンのデザインを手がけた米谷佳晃がビオランテの検討用デザインを手がけていたり、出現場所も同じ芦ノ湖であるなどの共通点がある[23]
  • ゴジラvsスペースゴジラ - 劇中でスペースゴジラが誕生した可能性のひとつとして、本作品で宇宙に消えたビオランテの細胞が権藤千夏の推論により、挙げられている。

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ ただし、「北欧神話に出てくる」であり、北欧神話にビオランテという名はない。
  2. ^ G細胞と融合する前は超能力者に対してわずかながらの意思疎通が可能であったが、G細胞と融合した後は成長するにつれて助けを乞う精神波しか発しなくなっていく様子が、劇中の三枝を通じて語られている。
  3. ^ キングギドラは5 - 6人。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p ゴジラ1954-1999超全集 2000, pp. 20-21, 「ゴジラVSビオランテ キャラクター図鑑」
  2. ^ a b c d e f g 大辞典 2014, p. 233, 「ひ ビオランテ」
  3. ^ a b c d e f 怪獣大全集 1991, p. 79, 「東宝モンスター名鑑」
  4. ^ a b c d e f g h i j 東宝特撮全怪獣図鑑 2014, pp. 78-79, 「ゴジラVSビオランテ」
  5. ^ 小林晋一郎 1993, p. 171.
  6. ^ ゴジラvsビオランテ 1989, pp. 21-24.
  7. ^ バンダイソフビ「バイオビオランテ」。
  8. ^ a b c d 東宝特撮映画大全集 2012, p. 221, 「『ゴジラvsビオランテ』作品解説」
  9. ^ a b c d e f g オール東宝怪獣大図鑑 2014, p. 221, 「『ゴジラVSビオランテ』ビオランテ」
  10. ^ a b c d e f g h i 東宝特撮映画大全集 2012, p. 222, 「『ゴジラvsビオランテ』怪獣図鑑/資料館」
  11. ^ ASIN B006R59WGA, ゴジラVSビオランテ バイオビオランテ バンダイ (BANDAI)
  12. ^ 米谷佳晃 2014, pp. 13-14.
  13. ^ 米谷佳晃 2014, pp. 14, 43.
  14. ^ 平成ゴジラパーフェクション 2012, pp. 16-17, 「ゴジラVSビオランテアートワークス」.
  15. ^ 西川伸司 1999, p. 26.
  16. ^ 川北紘一(特別監修)『平成ゴジラ クロニクル』キネマ旬報社、2009年、24-29頁。ISBN 9784873763194
  17. ^ a b c d 東宝特撮映画大全集 2012, p. 223, 「『ゴジラvsビオランテ』撮影秘話/川北監督に訊く」
  18. ^ 西川伸司 1999, p. 27.
  19. ^ a b c d e f ゴジラ1954-1999超全集 2000, pp. 24-25, 「メイキング オブ ゴジラVSビオランテ」
  20. ^ 「ビオランテ大図解」『ゴジラVSビオランテ大百科』アネックス、立風書房、1989年12月25日、17頁。ISBN 4-651-01601-4
  21. ^ 東宝特撮映画大全集 2012, p. 243, 「『ヤマトタケル』撮影秘話/川北監督に訊く」
  22. ^ 怪獣黙示録 2017, pp. 186-212, 第4章『反撃』
  23. ^ 米谷佳晃 2014, pp. 42-43.

参考文献[編集]