メタセコイア
メタセコイア | ||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||
ENDANGERED (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) ![]() | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Metasequoia glyptostroboides Hu et W.C.Cheng[2] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
アケボノスギ[2] | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
dawn redwood |
メタセコイア(学名: Metasequoia glyptostroboides)は、ヒノキ科(またはスギ科)メタセコイア属の落葉樹。1属1種。和名はアケボノスギ[2](曙杉)[3]、イチイヒノキ。和名のアケボノスギは、英名 dawn redwood を訳したもので、dawn は曙や夜明けの意味である[3]。公園や並木などに植えられる。
イチョウとともに化石植物といわれる遺存種で[3]、当初は日本を含む北半球で化石として発見されるのみで、絶滅した植物と考えられていたが、20世紀半ばに中国南西部で自生していることが確認された。
形態・生態[編集]
落葉樹で、樹高は生長すると高さ25 - 30メートル (m) 、直径1.5 mになり、大きなものでは樹高50 m以上になる[4]。樹皮は赤褐色で、縦に裂けて剥がれる[5]。一年枝は褐色で無毛[5]。
葉は羽状に対生し[3]、モミやネズに似て線のように細長く、長さは1 - 2センチメートル (cm) 程度[6]、幅は1 - 2 ミリメートル (mm) 程度である。新葉は明るい緑色で、秋に黄褐色に紅葉した後、落葉する[6][3]。
花期は2 - 3月[6][5]。雌雄同株で、雄花は総状花序、あるいは円錐花序となって枝から垂れ下がる雌雄同株で[3]。雌花穂は枝先に1個つく[3]。
果期は10 - 12月[3]。果実は球果で[5]、結実は多く[3]、秋から冬にかけて褐色に熟して[6]多数の種が地表に落ちる。
冬芽は枝先に頂芽(雌花の葉芽)がつき、側芽(葉芽)が対生する[5]。雄花の冬芽は長い穂につき、垂れ下がる[5]。冬芽は卵形で芽鱗は4裂に並び、上から見ると四角い[5]。冬芽のつけ根の枝には、白色で円い落枝痕がある[5]。
気候条件によって生長速度に違いが見られ、温暖な南部の地域になるほど生長速度は速い傾向にある[7]。早ければ発芽から5年で樹高5 mにもなるが、大きくなると生長速度は落ちて、樹齢200年から300年で樹高50 mに達するとみられている[8]。生命力が強く、病気にかかりにくく、太い枝が切れても自ら傷口を数年で塞ぐ修復力をもつことが知られている[3]。
幹・枝
分布[編集]
メタセコイアの化石は日本各地の新生代第三紀層に見られ、カナダ北部・シベリア・グリーンランドなど北半球の北極周辺に広く分布していた[9]。1939年に日本の関西地方の第三紀層で、常緑種のセコイアに似た落葉種の植物遺体(化石の1種)が発見された[10]。発見者の三木茂により、セコイアに「のちの、変わった」という意味の接頭語である「メタ」をつけて[11]「メタセコイア」と命名され[4][12]、1941年に学会へ発表された[13]。それまで発見されていたヌマスギやセコイアと異なると考え、メタセコイア属を設けた。また、落葉樹であることも推定した[11]。
日本では2016年1月に福島県広野町の中生代白亜紀の地層から発見された化石が国内最古のメタセコイアの化石とされている[14]。
現生種の発見[編集]
当初、「化石」として発見されたために絶滅した種とされていたが、1946年に南京大学の鄭万鈞から北京の静生生物研究所の胡先驌のもとに送られた植物標本が三木論文にあるメタセコイアであることが判明した[15]。これは中国四川省磨刀渓村(現在は湖北省利川市)の「水杉(スイサン)」と呼ばれたもので、「生きている化石」と呼ばれることも多い[7]。
このあと湖北省で新たに自生しているものが見つかり[7]、1948年にアメリカのチェイニー(Ralph W. Chaney)が、湖北省から苗を持ち帰り育成。その一部が1950年に三木が結成したメタセコイア保存会に送られ、保存会により日本国内の研究機関や自治体の植物園に配布された[15][7]。
保全状況評価[編集]
- ENDANGERED (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[1]
人間との関わり[編集]
メタセコイアの20世紀発見以後、ほとんどの世界各地で植栽が流行していた[7]。生長は速いが、材の質は劣る[6]。
日本[編集]

1949年に日本政府と皇室がそれぞれメタセコイアの挿し木と種子を譲り受け、全国各地の公園、並木道の街路樹、校庭などに植えられている[6][3]。
愛媛県伊予市では市の木に指定されている。滋賀県高島市のメタセコイア並木[16]が日本紅葉の名所100選に選定されている。東京都葛飾区の水元公園も「メタセコイアの森」の紅葉で名高い[17]。
種子は英国などの種苗会社からインターネット通販などで入手できる。タネは直径2 - 3 mmの淡黄色のおがくず状で、日本の気候にはよく合い生育は早い。
中国[編集]
発見地の中国では、各地に植栽が奨励されたが、道路の並木としてだけでなく、造林木としての伐採利用も期待された[8]。
脚注[編集]
- ^ a b Farjon, A. (2013). "Metasequoia glyptostroboides". IUCN Red List of Threatened Species. Version 3.1. International Union for Conservation of Nature. 2016年2月3日閲覧。 (英語)
- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Metasequoia glyptostroboides Hu et W.C.Cheng” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2016年2月3日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l 田中潔 2011, p. 135.
- ^ a b 辻井達一 1995, p. 48.
- ^ a b c d e f g h 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 245.
- ^ a b c d e f 平野隆久監修 1997, p. 290.
- ^ a b c d e 辻井達一 1995, p. 49.
- ^ a b 辻井達一 1995, p. 50.
- ^ “メタセコイア”. 京都教育大学. 2011年11月19日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 田中紀子 (1984年9月1日). “メタセコイアの化石”. 日野市. 2011年11月19日閲覧。[リンク切れ]
- ^ a b 塚越実 著「生きている化石メタセコイア」、化石研究会編 編 『化石から生命の謎を解く : 恐竜から分子まで』〈朝日選書〉朝日新聞出版、2011年、35頁。ISBN 978-4-02-259977-3。
- ^ “メタセコイア: 京都薬用植物園”. 武田薬品工業株式会社. 2011年11月19日閲覧。
- ^ 西影裕一 (2007年5月15日). “生きた化石 メタセコイア(アケボノスギ) (PDF)”. 科学の眼. 姫路科学館. 2011年11月19日閲覧。
- ^ 福島の地層で国内最古のメタセコイア化石 県立博物館の学芸員が発見 河北新報、2021年1月20日閲覧。
- ^ a b 塚腰実「メタセコイアの発見と普及―三木 茂博士の発見から75年― (PDF) 」 『化石』第100巻、日本古生物学会、2016年9月30日、 1-2頁。
- ^ “メタメタセコイア並木”. 高島市観光情報 ―人と自然のおもてなし―. びわ湖高島観光協会. 2011年11月19日閲覧。
- ^ “水元公園の紅葉(東京都)” (日本語). 紅葉名所2020 - ウォーカープラス. 2021年4月17日閲覧。
参考文献[編集]
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』〈ネイチャーウォチングガイドブック〉誠文堂新光社、2014年10月10日、245頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 田中潔 『知っておきたい100の木:日本の暮らしを支える樹木たち』〈主婦の友ベストBOOKS〉主婦の友社、2011年7月31日、135頁。ISBN 978-4-07-278497-6。
- 辻井達一 『日本の樹木』〈中公新書〉中央公論社、1995年4月25日、48 - 501頁。ISBN 4-12-101238-0。
- 平野隆久監修 『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、290頁。ISBN 4-522-21557-6。
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- 三木茂 『メタセコイア : 生ける化石植物』日本礦物趣味の会、1953年。ASIN B000JBAK5A。OCLC 673054832。全国書誌番号:53005303。
- 藤本治義、木村達明・吉山寛 『調査資料 第10号 八王子北浅川河床で発見したメタセコイア化石林の研究』日本私学教育研究所、1971年。ASIN B000J9VEB6。OCLC 674557750。全国書誌番号:69027665。
- 藤本治義、鈴木哲 『調査資料 第29号 八王子市・北浅川河床の基盤岩から産出したメタセコイア化石樹幹の年輪研究 第1報』日本私学教育研究所、1974年。ASIN B000J9VEAM。OCLC 703761837。全国書誌番号:69027667。
- 百原新「メタセコイア属の古生態と古生物地理(生きている化石)」『化石』第57号、日本古生物学会、1994年、 24-30頁、 ISSN 00229202、 NAID 110002703604。
- 斎藤清明 『メタセコイア : 昭和天皇の愛した木』〈中公新書〉中央公論社、1995年。ISBN 4-12-101224-0。
関連項目[編集]
- 木の一覧
- セコイア
- 三木町 - 発見者・三木茂の出身地。博士の功績を記念し、メタセコイアを町のシンボルとしている。
- 東京都立秋川高等学校
- 宗方俊遃
- 大阪市立大学理学部附属植物園
- 大阪市立大学
外部リンク[編集]
- "Metasequoia glyptostroboides Hu & W. C. Cheng". Germplasm Resources Information Network (GRIN). Agricultural Research Service (ARS), United States Department of Agriculture (USDA). 2016年2月3日閲覧。 (英語)
- "Metasequoia glyptostroboides Hu & W.C. Cheng" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2016年2月3日閲覧。 (英語)
- "Metasequoia glyptostroboides". National Center for Biotechnology Information (NCBI) (英語). (英語)
- "Metasequoia glyptostroboides Hu & W. C. Cheng" - Encyclopedia of Life (英語)
- 波田善夫. “メタセコイア”. 植物雑学事典. 岡山理科大学生物地球学部. 2016年2月3日閲覧。
- “メタセコイア(化石)”. 三重県立博物館. 2016年2月3日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2011年11月19日閲覧。