タスマニアスギ属
タスマニアスギ属 | |||||||||||||||||||||
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1. タスマニアスギ
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Athrotaxis D.Don (1838)[4] | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Tasmanian cedar[5] | |||||||||||||||||||||
下位分類 | |||||||||||||||||||||
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タスマニアスギ属[6][7](タスマニアスギぞく、学名: Athrotaxis)は、裸子植物マツ綱のヒノキ科[注 2]に分類される常緑針葉樹の1属である(図1)。葉は鱗状であり、枝を覆っている。タスマニアスギ属にはタスマニアスギ(A. cupressoides)とオオタスマニアスギ(A. selaginoides)の2種と、この2種の雑種であるヒメタスマニアスギ(A. × laxifolia)が知られており、いずれもオーストラリアのタスマニア島の山地に分布する。属名の Athrotaxis はギリシア語で「密な配置」を意味しており、おそらく枝を密に覆う葉を示している[5]。
特徴
[編集]常緑性の高木であり(図1, 2a, b)、大きなものは樹高20–30メートル (m) になる[5][8][9][6][7]。比較的長命であり、樹齢1,000年以上のものも知られる[8]。ふつう1本の幹が直立するが(下図2a, b)、亜高山帯などでは強風などのためしばしば複数に分岐したり矮性で変形した樹形(krummholz)となる[5][8][9](図1, 下図4a, b)。樹冠は円錐形であるが、ふつう古くなると不規則になる[5][7](下図2a, b)。樹皮は赤褐色から褐色、最初は平滑であるが、のちに縦に剥がれる[5][6](下図2b)。冬芽をつけない[7]。葉は鱗状、重なってらせん状につき、枝を覆っている[5][6](下図2c, 3)。
雌雄同株[5]。雄球花("雄花")[注 3]は枝先に単生、基部は鱗片葉で囲まれ、らせん状に配置した10-15個の三角形の小胞子葉("雄しべ")からなる[5][8][9]。各小胞子葉には2個の花粉嚢がある[7]。球果も枝先に単生し、球形、1年で成熟し、木質でらせん状に配列した果鱗からなり、果鱗を構成する種鱗と苞鱗は完全に癒合しており、頂端背面に突起がある[5][7][6](下図3)。種子は各種鱗に3–6個、長楕円形で薄く、両側に翼をもつ[5][6][7]。子葉は2枚[5]。染色体数は 2n = 22[13]。
分布・生態
[編集]タスマニア島の温帯雨林の山地から亜高山帯(標高 800–1200 m)に分布し、いくつかの国立公園(クレードル山国立公園, Mount Field National Park など)で容易に見ることができる[5][7](下図4)。多雨林に生育し、氷河性池沼の周囲に生育していることも多い[7][8][9](上図2a, 下図4a)。
種子による増殖のほか、根による栄養繁殖もふつうに見られる[8]。自生および移入哺乳類(ヒツジ、ウサギ)に食べられることがある[8][14]。外来のエキビョウキン属(卵菌)による被害が報告されている[8]。
いずれの種も個体数が少なく、国際自然保護連合 (IUCN) のレッドリストでは、タスマニアスギ(Athrotaxis cupressoides)、オオタスマニアスギ(Athrotaxis selaginoides)ともに危急種(VU)に指定されている[14][15]。またヒメタスマニアスギ(Athrotaxis × laxifolia)は絶滅危惧種(EN)とされる[16]。
タスマニアスギ属の種は、山火事によって大きな影響を受けている。オオタスマニアスギは、過去200年の間に山火事によって約40%が失われたと推定されている[15]。また1960–1961年の人為的な火災によって、タスマニアスギの約10%が失われ、その後も復活していない[8]。
人間との関わり
[編集]人間がアクセスしにくい地域に生育しており、成長も遅いことから、木材の商業的な利用はほとんど行われていない[5]。材は耐朽性に富み、軽量で加工しやすいため、古くは窓枠や船、楽器に用いられていた[7][9]。
タスマニアスギ属の種は、過去の気候などを推定する年輪年代学の試料として用いられている[5]。
分類
[編集]タスマニアスギ属には、タスマニアスギ(Athrotaxis cupressoides; 下図5a)、オオタスマニアスギ(Athrotaxis selaginoides; 下図5b)の2種が分類され、またその雑種であるヒメタスマニアスギ(Athrotaxis × laxifolia; 下図5c)が知られる[4][5]。ヒメタスマニアスギは独立種とされることもあるが[6][7]、調査されたものは全てタスマニアスギを母親、オオタスマニアスギを父親とするものであることが報告されている[5]。
タスマニアスギ属は、ふつうスギ科に分類されていた[7][6]。しかし21世紀になるとスギ科はヒノキ科に含められるようになり、タスマニアスギ属はヒノキ科に分類されるようになった[4][5]。タスマニアスギ属は、1属のみでタスマニアスギ亜科(Athrotaxoideae)に分類される[1]。
タスマニアスギ属の化石記録としては、Athrotaxis ungeri が前期白亜紀のパタゴニアから報告されている[17]。また、タスマニアスギ属と関連すると考えられている化石属として、前期ジュラ紀から白亜紀の北米、南米、インド、マダガスカルから報告されている Athrotaxites がある[17][18]。
表1. タスマニアスギ亜科の分類の1例
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脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f Stevens, P. F. (2001 onwards). “Cupressales”. Angiosperm Phylogeny Website. 2023年2月20日閲覧。
- ^ 米倉浩司・邑田仁 (2013). 維管束植物分類表. 北隆館. p. 45. ISBN 978-4832609754
- ^ 大場秀章 (2009). 植物分類表. アボック社. p. 19. ISBN 978-4900358614
- ^ a b c d e “Athrotaxis”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2023年4月12日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s “Athrotaxis”. The Gymnosperm Database. 2023年4月12日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 杉本順一 (1987). “タスマニスギ属”. 世界の針葉樹. 井上書店. p. 86. NCID BN01674934
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 鈴木三男 (1997). “タスマニアスギ”. 週刊朝日百科 植物の世界 11. p. 217. ISBN 9784023800106
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r “Athrotaxis cupressoides”. The Gymnosperm Database. 2023年4月14日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o “Athrotaxis selaginoides”. The Gymnosperm Database. 2023年4月14日閲覧。
- ^ 長谷部光泰 (2020). 陸上植物の形態と進化. 裳華房. p. 205. ISBN 978-4785358716
- ^ 清水建美 (2001). 図説 植物用語事典. 八坂書房. p. 260. ISBN 978-4896944792
- ^ アーネスト M. ギフォード、エイドリアンス S. フォスター『維管束植物の形態と進化 原著第3版』長谷部光泰、鈴木武、植田邦彦監訳、文一総合出版、2002年4月10日、332–484頁。ISBN 4-8299-2160-9。
- ^ 清水建美 (1990). “針葉樹の分類・地理, とくに 2, 3 の 亜高山生の属について その 1”. 植生史研究 6: 25-30. doi:10.34596/hisbot.06.0_25.
- ^ a b Farjon, A. (2013年). “Athrotaxis cupressoides”. The IUCN Red List of Threatened Species 2013. IUCN. 2023年4月14日閲覧。
- ^ a b Farjon, A. (2013年). “Athrotaxis selaginoides”. The IUCN Red List of Threatened Species 2013. IUCN. 2023年4月14日閲覧。
- ^ Farjon, A. (2013年). “Athrotaxis laxifolia”. The IUCN Red List of Threatened Species 2013. IUCN. 2023年4月14日閲覧。
- ^ a b Stockey, R. A., Kvaček, J., Hill, R. S., Rothwell, G. W., & Kvaček, Z. (2005). “The fossil record of Cupressaceae s. lat”. In Farjon, A.. A monograph of Cupressaceae and Sciadopitys. Royal Botanic Gardens. pp. 54-68. ISBN 1842460684
- ^ a b “†Athrotaxites Unger 1849”. fossilworks. 2024年2月2日閲覧。
- ^ Escapa, I. H., Gandolfo, M. A., Crepet, W. L. & Nixon, K. C. (2016). “A new species of Athrotaxites (Athrotaxoideae, Cupressaceae) from the Upper Cretaceous Raritan Formation, New Jersey, USA”. Botany 94 (9): 831-845. doi:10.1139/cjb-2016-0061.
- ^ “†Athrotaxis ungeri Florin 1940”. fossilworks. 2024年2月2日閲覧。
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- ^ “Athrotaxis cupressoides”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2023年4月12日閲覧。
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- ^ “Athrotaxis × laxifolia”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2023年4月12日閲覧。
- ^ GBIF Secretariat (2022年). “Athrotaxis laxifolia (D.Don) Endl.”. GBIF Backbone Taxonomy. 2023年4月14日閲覧。
- ^ a b c d e “Athrotaxis x laxifolia”. The Gymnosperm Database. 2023年4月15日閲覧。
- ^ “Athrotaxis laxifolia Don 1841”. fossilworks. 2024年2月2日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- “Athrotaxis”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2023年4月12日閲覧。(英語)
- “Athrotaxis”. The Gymnosperm Database. 2023年4月12日閲覧。(英語)