ヘドラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

ヘドラ (Hedorah) は、特撮映画『ゴジラ対ヘドラ』等に登場する架空怪獣。別名「公害怪獣」。

特徴[編集]

1970年代に社会問題となっていた公害をモチーフとした怪獣で、その名の通りヘドロの塊のような姿をしている。公害やヘドロで汚染された田子の浦港から生まれ、オタマジャクシ状から直立2足歩行体まで、数段階に渡って変態する。

登場作品の『ゴジラ対ヘドラ』及び本怪獣は公害をテーマにしており、をテーマにした第1作『ゴジラ』以来の、社会問題が根底にあるキャラクターでもある[1][2]

登場作品[編集]

公開順

  1. ゴジラ対ヘドラ』(1971年)
  2. ゴジラ FINAL WARS』(2004年)

特撮テレビ番組『ゴジラアイランド』にも登場している。

『ゴジラ対ヘドラ』のヘドラ[編集]

  • 体長
    • 0.1ミリメートルから20メートル(水中棲息期)
    • 30メートル(上陸期)
    • 40メートル(飛行期)
    • 60メートル(完全期)
  • 体重:4万8千トン(最大時)
  • 攻撃:ヘドリューム光線、ヘドロ弾、硫酸ミスト

劇中での命名者は海洋生物学者、矢野徹の息子である研少年。また、最初に上陸した際、驚いた研に短剣で腹部を切り裂かれている。

宇宙より飛来したと思われる鉱物起源の生命体が、都市近海に堆積していたヘドロ公害による汚染物質と結合し、成長した姿。「ぼろぞうきんを重ね合わせた海坊主の幽霊みたい」[3]な姿をしており、赤い目が縦に開いている。その身体は、乾燥してしまうとボロボロに崩れてしまうが、水分が補給されると破片の個々がオタマジャクシのような生物に実体化する。それらは合体して大きな身体を形成するうえ、成長するにしたがって生える陸上用の足による二足歩行化を経て、最終的には飛行能力や光線発射能力まで発現する。飛行形態でゴジラを楽々と運ぶほどのパワーや自らの体液でもあるヘドロなど、さまざまな能力を駆使してゴジラを苦しめる。

ヘドラが通った後には硫酸ミストがまき散らされ、金属は錆びて人間は骨と化す。ヘドロや工場排気を吸い込んで取り込むため、一時的には環境を改善しているようにも思えるが、結局はその汚染物質を他の地域へ拡散させるため、「公害問題が、工業地帯など限られた地域に犠牲を強いている」という批判をも体現している。

飛行や光線の原動力は体内での核爆発と設定されており、劇中で矢野博士は「恒星同様のもの」と解釈しているが、後年の書籍[要出典]においては「ゴジラの核物質を吸収した」との記載もみられる。

生まれた当初は海でタンカーなどを襲っていたが、ある程度まで成長すると上陸して工場地帯を襲撃し、そこでゴジラとの初戦に突入する。ゴジラの熱線を受けて一度は退散したが、次に現れた時には飛行能力を得て周辺の都市と人間に大被害を与え、再戦したゴジラを翻弄する。その後、矢野博士の研究により最後まで水分を飛ばせば完全に殺すことが可能と推察され、自衛隊の協力で設置した大型の電極板に誘き寄せられるが、トラブルの連続により全く通用せず、そこに再び現れたゴジラと三度激突することになる。そこでもゴジラの片目を潰し、片腕を白骨化させるなど激しい戦いを繰り広げるが、遂にゴジラの熱線で機能を発揮した電極板の雷電攻撃を受けてダウンする。これにより絶命したかに思われたが、乾燥が完全でなかったため、残骸の内側より脱皮するように新たなヘドラが出現し、逃亡を図る。しかし、口から熱線を吐くことで空を飛んで追撃してきたゴジラに電極板へ連れ戻され、電流を浴びて再び押し倒されたうえに未乾燥の内部をえぐり出され、更なる電流を浴びせられたことで完全に駆逐される。ただ、エピローグではすでに「新たなヘドラ」が誕生していることが示唆されている。

上記のとおり、乾燥には弱いものの完全に倒すことは非常に難しく[注 1]、ゴジラ史上に残る難敵となっている。なお、他の怪獣を交えずに全編通してゴジラと1対1で戦った怪獣は、『キングコング対ゴジラ』(1962年)のキングコング以来9年ぶり。以後の作品では複数の怪獣が登場するタッグマッチ、あるいはハンディキャップ・マッチ形式が一般的になり、ヘドラは昭和ゴジラシリーズで最後にゴジラと「シングル(1体1)」で戦った怪獣となった。

スーツアクターは、後に平成ゴジラを演じることになる中山剣吾(薩摩剣八郎)。これは中山の入った最初の怪獣だが[2]、スーツデザインと重量関係であまり動けず、ゴジラ役の中島春雄がリードしてゴジラが立ち回る感じのアクションにされたという。劇中、ヘドラが工場の煙突から煙を吸い上げるシーンは中に中山が入ったままであり、「非常に苦しかった」と語っている[5]。また、一度撮影中に転んで起き上がれなくなってしまったことがある。

名称
関連書籍などでは各形態は水中棲息期上陸期飛行期と表記されるが[6][7][2]、最後の形態は成長期[8][9]完全期[7][2]巨大化期[2][10]と表記が分かれている。
劇場予告編では「公害怪獣」ではなく、「忍者怪獣」と表記されていた[注 2]
デザイン・造形
「陸・海・空」3態のデザインはすべて井上泰幸による。飛行期は空飛ぶ円盤エイをモデルにしている[2]
この年をもって利光貞三や八木康栄ら主要スタッフが退職し、代わって造形チーフを引き継いだ安丸信行が製作。ラテックス製の発泡ウレタン(フォームラバー)で作られている。ゴムと混ぜて重ね塗りした塗料の重みで、ヘドラのぬいぐるみは100キログラムを超える重量となった。美術スタッフの高木明法は、「初代ゴジラ以来の重さだったんじゃないか」と語っている。
3大の「幼生期」、「飛行期」のミニチュアが作られた。
「飛行期」の噴射する硫酸ミストは、フロンガスを使っている。
  • 監督の坂野義光は敵役ヘドラの造形に関し、自ら脚本にト書きを入れるほどのこだわり(ヘドラの目玉について脚本に「女性器のような」という記述を加えるなど)を見せ、飛行態などのデザインにも積極的に関わっている。撮影初日にはヘドラの体に毒々しい反射素材の色彩を加えようと思いつき、自ら塗装を始め、ついにはこの作業に1日を費やしてしまった。
  • 水槽内で泳ぐオタマジャクシ状の幼体ヘドラは、ドジョウバルサ材とコンドームを被せてメイクを施したもの[11]で、水槽に電気を通して動きを撮った。
  • 陸上ヘドラの頭頂部にはひび割れがあるが、公開当時は「怒ると脳味噌がはみ出てくる」と説明されていた。「脳味噌が2つある」というデザインも、坂野のアイディアである。

『ゴジラ FINAL WARS』のヘドラ[編集]

  • 身長:120メートル
  • 体重:7万トン

チューブ状の突起が付く他、顔つきも凶悪でグロテスクなデザインに変更されている。武器は赤色溶解熱線、硫酸ミスト[注 3]

X星人に操られ、エビラとともに海でゴジラと闘っていたらしい(その映像は無い)[12] が、放射熱線で陸上へ吹き飛ばされビルに激突。さらに後から飛んできたエビラのハサミが顔に刺さり、その後に出てきたゴジラの放射熱線でエビラとビル共々吹き飛ばされ爆散する。

短い出番となった[注 4]が、その後インターネットや本などで全身像が登場し、フィギュアも発売された。

  • スーツアクターは吉田和宏
  • デザインは西川伸司
  • 一部の雑誌にて“陸上でゴジラと闘うヘドラ”の画像が公開されているが、これはヘドラの登場場面の少なさを考慮して撮影されたスチール写真である。
  • 監督の北村龍平は「お台場に出現させる予定だった」と語っており、構想ではもっと活躍するはずだったことがうかがえる。北村はその場面で『踊る大捜査線』シリーズのパロディも行う予定だったが、これらの展開はプロデューサーの富山省吾によって却下され、結果的に出番が少なくなり、北村も「こんなに短くなくてもいいんじゃないの?」と不満をもらしている[13]
  • 本作の映画ポスター(登場人物と怪獣が書かれたバージョン)に描かれているヘドラは昭和版の上陸期風になっている。
  • 『ゴジラ大辞典【新装版】』では、名称を「ヘドラ(2代目)」と記載している[14]

『ゴジラアイランド』のヘドラ[編集]

X星人ザグレスの操る怪獣として、「モスラ編」に登場。武器は目からのヘドリューム光線と口からの毒ガス。その体には物理的な攻撃が通用せず、パンナトルテのビーム砲が通用しない。

隕石の姿でゴジラアイランドに飛来し、ザグレスがGガード科学プラントを爆破した影響で降り注いだ酸性雨や有毒ガスを吸収して成長、怪獣の姿になって暴れ出した。窒素酸化物などの有毒物質を拡散させる威力を持ち、ゴジラアイランドを大混乱に陥れた。熱を吸収するため、トレマの銃による攻撃やゴジラの熱線をものともせず、寿命が尽き掛けている親モスラを攻撃。ついには子モスラも襲いだしたため、それを見た親モスラにゴラス火山の火口に落とされる。

それでも生きており、火山の中で温水化物を吸ってパワーアップした後、火山から再び出現。繭になった子モスラを潰そうとして再びゴジラと戦いになる。その時、トレマの呼びかけで成虫化した新モスラの光線と、ゴジラの熱線を吸い過ぎて苦しみ出し、そこに新モスラは放った雷を受けて乾燥して崩れ落ち、その中から出てきた赤く丸い核らしきものをゴジラに踏みつぶされ、今度こそ絶命する。

ネオヘドラ[編集]

ランデスがキノコから作り出した新種のヘドラ。「ファイヤーラドン編」に登場。ピンクと水色の体色をしている。ヘドリューム光線に加え、口(?)から浴びるとキノコが生える霧を吐く。この霧は怪獣や無機物にも有効で、この霧を浴びた怪獣は背中にキノコが生え、Gガード基地の対獣レーザー砲もキノコまみれにしている。自身もキノコと同じ菌糸類で出来ており、そのため100,000度の熱を浴びせない限り倒すことが出来ず、それ以下の熱は通常のヘドラ同様吸収してしまう性質を持つ。

ランデスが「ゴジラアイランドキノコ化作戦」のためガイラ山に出現し、ゴジラアイランド中にキノコを急性繁殖させ、島の怪獣達の背中にも次々とキノコを生やしていき、Gガード基地を襲い、さらに駆けつけてきたゴジラも霧でキノコを生やし、弱らせてしまう。だが、その時炎の精霊と合体してファイヤーラドンになったラドンの火炎と、ゴジラの熱線が加わったことにより、温度が弱点の100,000度に達したため、黒焦げになった後、頭部を残して崩れ落ちる。

  • ソフビ人形はヘドラの色を塗り替えたもので、造形物は同一の物。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 後年、坂野は「ヘドラがしぶとく生き返ることで一度発生した公害は根絶が難しいことを表現したかった」と述べている[4]
  2. ^ DVDの特典映像で見ることができる。
  3. ^ 劇中未使用で、エンディング映像ではパイプ状の口から噴出している。
  4. ^ 劇中では名前すら出てこない。またエンディングに登場する都市破壊シーンは新撮されたものであり、本編の短すぎる出番に配慮したものと思われる。[独自研究?]

出典[編集]

  1. ^ ゴジラ大辞典 2004, pp. 325.
  2. ^ a b c d e f 『東宝特撮映画大全集』 ヴィレッジブックス2012年、148 - 151頁。ISBN 9784864910132 
  3. ^ 薩摩剣八郎 『ゴジラのなかみ』 筑摩書房〈ちくまプリマーブックス〉、1993年ISBN 4480041761
  4. ^ デビット・キャリシャー「社会的に観たゴジラ映画 -日米を通して-(上)」 『福岡市総合図書館研究紀要』第4号 2004年[要ページ番号]
  5. ^ DVDでの中野昭慶のオーディオコメンタリーより。
  6. ^ ゴジラ1954-1999超全集 2000, p. 140.
  7. ^ a b ゴジラ大辞典 2004, p. 238.
  8. ^ ゴジラ1954-1999超全集 2000, p. 141.
  9. ^ オール東宝怪獣大図鑑 2014, p. 164.
  10. ^ キャラクター大全 2014, p. 77.
  11. ^ 坂野義光 「第4章 7. 特殊撮影への挑戦」『ゴジラを飛ばした男 改訂版』 アットメディア、2014年ASIN B00M5KDOKG
  12. ^ ゴジラ完全解読 (別冊宝島 2207)[要ページ番号]
  13. ^ DVDのオーディオコメンタリーより。
  14. ^ ゴジラ大辞典 2014, p. 396.

参考文献[編集]

関連項目[編集]

類似キャラクター[編集]

外部リンク[編集]