惑星大戦争
惑星大戦争 | |
---|---|
The War in Space | |
監督 |
福田純(監督) 中野昭慶(特技監督) |
脚本 |
中西隆三 永原秀一 |
原案 | 神宮寺八郎[注釈 1] |
製作 |
田中友幸 田中文雄 |
出演者 |
森田健作 浅野ゆう子 宮内洋 新克利 沖雅也 池部良 |
音楽 | 津島利章 |
撮影 |
逢沢譲(本編) 山本武(特撮) |
編集 | 池田美千子 |
製作会社 |
株式会社東宝映画 東宝映像株式会社 |
配給 | 東宝[1][注釈 2] |
公開 |
![]() |
上映時間 | 91分 |
製作国 |
![]() |
言語 | 日本語 |
『惑星大戦争』(わくせいだいせんそう)は、1977年12月17日に公開された東宝製作の、異星人の地球侵略に対する防衛戦争を描いた特撮SF映画。同時上映は『霧の旗』。
解説[編集]
映画『海底軍艦』の宇宙版リメイク作品である。1988年、太陽系外惑星から飛来した異星人の地球侵略に対抗するため、宇宙防衛艦「轟天」が、金星を前線基地とした異星人の「大魔艦」に立ち向かう。
本作製作の背景には、1977年はアメリカでSF映画『未知との遭遇』『スター・ウォーズ』、日本ではアニメ映画『宇宙戦艦ヤマト』が公開され、空前のSFブームを迎えていたことがあった。1978年夏の『スター・ウォーズ』の日本公開を控え、東宝は本作を急遽製作して正月映画として公開した[注釈 3]。正月映画として年末から公開の予定でありながら脚本が仕上がったのはその前の10月に入ってからで、クランクインが公開の2か月前というタイトな製作期間であった[注釈 4]。監督の福田純も、後に「とにかくもっと時間があれば面白くなったと思うね」と述べている[2]。
監督と特技監督には、1970年代の東宝でゴジラシリーズとSF作品を手がけてきた福田純と中野昭慶のコンビがあたった。福田と脚本の中西隆三はゴジラシリーズの新作『ゴジラの復活』の企画に、中野は日英合作映画『ネッシー』の制作準備にそれぞれあたっていたが、製作が急遽決定した本作にスライドする形となった[3]。福田は本作を監督した後、東宝との専属契約を打ち切ったため、本作が最後の監督作品となった。
『惑星大戦争』というタイトルは『スター・ウォーズ』の邦題になる予定だったが、『スター・ウォーズ』の本国アメリカでの大ヒットや、日本ではアメリカの翌年に公開されることなどに加え、ジョージ・ルーカスが「全世界で(『スター・ウォーズ』という)タイトルを統一させる」との意向から却下され、最終的に本作のタイトルとして流用された[4]。
製作期間が非常に短いことから、それを補うために本編は3班、特撮は2班で撮影された[3]。破壊される各国の都市などは『宇宙大戦争』や『世界大戦争』『ノストラダムスの大予言』からの流用である。これは前述したようなあまりに短すぎる製作期間のため、苦肉の策であった。
当初は小松左京に原作の依頼が持ち込まれたが、彼のブーム便乗企画でない本格的なSF映画を作りたいという希望により別途企画が立てられ、『さよならジュピター』が製作されている。『海底軍艦』の宇宙版という企画自体はプロデューサーの田中友幸がかねてから温めていたもので、実現の機会をうかがっていた[3]。
国内での評判はおおむね芳しくないが、海外、特にドイツ(当時は西ドイツ)では大ヒットを記録した。有名人の賛辞としては、矢作俊彦の「なぜ日本アカデミー賞が『惑星大戦争』であってはいけないのか」という一文がある[5]。
ストーリー[編集]
1980年代、世界各地でUFO騒ぎが起き、また電波障害により大混乱が発生した。これを宇宙からの侵略の前兆と捉えた国連宇宙局・宇宙防衛軍 (UNSF) は、宇宙防衛艦の設計建造を滝川正人に依頼、一方で隊員の訓練を開始した。しかし次第にその騒ぎは収まり、滝川は平和な地球には必要ないとして宇宙防衛艦の建造を中止、退任してしまった。
1988年秋、再びUFO騒動と大規模な通信障害が発生。国連宇宙局の三好は宇宙防衛艦轟天を完成させる使命を帯び、滝川を説得するため日本に帰還する。滝川は消極的だったが、彼を暗殺しようとした刺客から三好、室井、冬木によって救われる。さらに、宇宙ステーション「テラ」が「巨大なローマ船」という通信を残して爆発。国防軍は滝川に「轟天」建造の再開と乗員の編成を要請する。
敵のUFO(ヘル・ファイター)によって世界各地の大都市と地上の国連軍基地が壊滅状態となる中、滝川は隊員達を再招集、太平洋マウグ島で「轟天」完成を急ぐ。侵入した工作員の妨害も排除しつつ「轟天」は完成、地球上を飛び回っていたヘル・ファイターを全滅させ、侵略軍の前線基地がある金星へと進撃を開始する。しかしその途中、三笠の遺体に扮して侵入した敵兵によって滝川の娘・ジュンが拉致されてしまう。三好は冬木達とともに、敵艦の心臓部爆破とジュンの救出のため大魔艦に潜入する。
犠牲を払いつつもジュンを救出した三好は大魔艦からの脱出に成功。轟天と大魔艦は金星の空で激突する。
登場キャラクター[編集]
ヨミ惑星人[編集]
太陽系から2万2千光年、地球がメシエ13と呼ぶ球状星団、恒星ヨミの第三惑星から来た侵略宇宙人。司令官ヘル(演:睦五郎)は劇中で母星をその位置とともに「銀河帝国」と称し、惑星自体が年老いたため新しい星を求め、第3惑星に似た地球に目をつけたと語る。金星に大魔艦で根城を構え、地球をヘル・ファイターで攻撃する。
ヘルの装束や大魔艦はローマ帝国風にまとめられている。地球人と風貌は似ているが、体色が緑色をしている。ヘルはテレキネシスを発する杖を武器にしている。
兵士は全員、布製の覆面をかぶっており、地球人に化けて行動するシーンが見られた。
- ヘルの兜は小林知己らによってFRPで作られた。つま先が丸く反り返った兵士の靴は、『怪獣大戦争』のX星人のものの流用。光線銃は『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』に登場する「赤イ竹」の自動小銃の小道具を流用。
宇宙獣人[編集]
宇宙獣人 | |
---|---|
身長 | 3m[6] |
体重 | 300kg[6] |
大魔艦内で警護に当たる全身毛むくじゃらの怪物。知能は高くないが、ヘルの命令には従順で、ジュンを捕縛し、相手を光線銃をも無力化する鉞型の武器で攻撃する。脱走したジュンと三好に襲いかかるが、三好の投げた電磁ナイフによって絶命する。
登場メカニック[編集]
地球側[編集]
- 宇宙防衛艦「轟天」
- 詳細は「轟天号#惑星大戦争」を参照
スペース・ファイター | |
---|---|
全長 | 17m |
全幅 | 3.8m |
最大速度 | 195,000 km/s |
兵装 | レーザーカノン砲(2門) |
- スペース・ファイター
- 轟天に21機が艦載されている宇宙戦闘機。轟天側面のリボルバー式カタパルト射出口から発進する。本編では室井、ジミーら5人が乗り込んで、ランドローバーの攻撃隊を支援するため、バリアーを張った大魔艦に攻撃を仕掛け、ヘルファイターとドッグファイトを繰り広げるが、次々撃墜され、最後に残った室井機も、浮上した大魔艦の攻撃に粉砕される。
ランドローバー | |
---|---|
全長 | 27m |
全幅 | 5.7m |
最大速度 | (陸上)350 km/h (空中)マッハ3.8 |
兵装 | レーザーカノン砲(2門) |
- ランドローバー
- 「轟天」から発進する探査用装甲車。4人乗りでルーフからは気象観測装置を出す。ホバークラフトで空中も移動できる。武装として車体前上部にレーザーカノンを有するが、未使用。
ヨミ惑星人側[編集]
金星大魔艦 | |
---|---|
全長 | 159m[注釈 5] |
全幅 | 72m |
最大速度 | ワープ航法可能 |
航続距離 | 無限 |
兵装 | スペース・ビーム砲(1門) 艦橋ビーム砲(9門) 艦尾ビーム砲(8門) 艦側オール状ビーム砲(左右18門ずつ、合計36門) 艦首底部ビーム砲(4門) ヘル・ミサイル(64発) 重力砲[注釈 6] バリアー発生装置 多次元スタビライザー |
主な搭載機 | ヘル・ファイター(75機) |
- 金星大魔艦
- ワープ航法が可能な恒星ヨミ第三惑星人の宇宙戦艦で、劇中では「ローマ船」「大魔艦」と呼ばれる。金星地表のその艦体が収まる巨大な岩山に潜み、そこを前線基地としてきた。
- 帆船のキャビン風の後部には怪物型の像があり、そこが起き上がってヘル・ファイターを発進させる。着地時は上部のスタビライザーを畳み、回転式のバリアー発生装置を使って艦全体を覆い、敵の攻撃を寄せ付けないが、ヘルファイター発進時にはバリアーを一時解除しなければならない。
- スペースファイターのジミー達の犠牲でバリアー発生装置を潰され、艦首部の怪物の頭を模したエアーダクトから、轟天攻撃隊の侵入を許すが、艦内には籠形の電磁バリアーや、レリーフ型の侵入者攻撃ビームなどのセキュリティ機能も持つ。メカは6進法によってコントロールされる。
- 轟天との一騎討ちで、互角の砲撃戦を行うが、次第に轟天が優勢になり、砲撃と体当たり攻撃で砲座を潰されたものの、奥の手である艦橋下の秘密兵器重力砲で反撃し、轟天を大破させるが、滝川博士が開発したエーテル爆弾を搭載したメインドリルの特攻には重力砲も無力で、その体当たり自爆によって墜落し、金星と共に吹き飛んだ。
ヘル・ファイター | |
---|---|
全長 | 9m |
全幅 | 6m |
最大速度 | ワープ航法可能 |
兵装 | 50ミリバルカン砲(1門) コスモ・レーザー砲(2門) パルス・レーザー砲(1門) |
- ヘル・ファイター
- 大魔艦から発進する球形に小さな翼と長砲身が付いたワープ航法が可能な小型戦闘円盤。地球に飛来して円盤騒ぎと電波障害を引き起こし、パルス・レーザー砲で世界各国の都市を攻撃するが、地球に攻めてきた編隊は、浮上した轟天の航空爆雷で全滅する。金星では轟天のスペースファイターとの戦いを展開する。
- 1尺サイズのミニチュアが数機作られた。透明ポリ樹脂のセパレート式で、ボルトで上下を固定して球体型にしている。その形状から、スタッフから「お釜ファイター」と呼ばれた。電飾を仕込んであり、発光する。
スタッフ[編集]
- 製作:株式会社東宝映画、東宝映像株式会社
- 製作:田中友幸、田中文雄
- 原案:神宮寺八郎[注釈 1]
- 脚本:中西隆三、永原秀一
- 撮影:逢沢譲
- 美術:薩谷和夫
- 録音:伴利也
- 照明:小島真二
- 音楽:津島利章
- サントラ盤:東宝レコード
- 電子音響デザイン:大野松雄
- 効果:東宝効果集団
- 整音:東宝録音センター
- 監督助手:今村一平
- 編集:池田美千子
- スチール:石月美徳
- 現像:東京現像所
- 製作担当者:橋本利明
- 特殊技術
- 技斗:ジャパン・アクション・クラブ
- 特技監督:中野昭慶
- 監督:福田純
ノンクレジット(スタッフ)[編集]
キャスト[編集]
- 三好孝次(国連宇宙局):森田健作(松竹)
- 滝川ジュン(国連宇宙局):浅野ゆう子
- 冬木和夫(空挺隊員):宮内洋
- 三笠忠(宇宙ステーション):新克利
- 松沢博士(国連宇宙局):大滝秀治
- 大石国防軍司令:平田昭彦
- 研究員:橋本功
- 国防軍幕僚:中山昭二
- 銀河帝国司令官ヘル:睦五郎
- 轟天号操艦士:山本亘
- 研究員:遠藤剛
- 宇宙獣人[1]:マンモス・鈴木
- シュミット博士:ウィリアム・ロス
- ジミー(国連宇宙局):デビット・ペーレン
- 日下鉄夫(空挺隊員):兼松隆
- 湊吾郎(空挺隊員):菊地太
- 轟天号管制員:早田文次
- パイロット:村嶋修
- 轟天号通信士:竹村洋介
- 轟天号管制員:川端真二
- 石山(轟天砲術班長):森田川利一
- 轟天号管制員:吉田耕一
- パイロット:大谷進
- パイロット:江藤純一
- 轟天通信士:吉宮慎一
- レーダー係:瀬戸山功
- 轟天副操艦士:直木悠
- 室井礼介(パイロット教官):沖雅也
- 滝川正人(轟天艦長):池部良
ノンクレジット(キャスト)[編集]
![]() |
漫画[編集]
映像ソフト[編集]
- 1997年12月21日にレーザーディスク(LD)が東宝ビデオより発売された[10]。
- 2004年11月26日、DVDが発売された。
- 2014年2月7日、期間限定プライス版として再発売された。
- 2015年8月19日、東宝DVD名作セレクションとして再発売された。
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ a b c d e f g h “映画資料室”. viewer.kintoneapp.com. 2020年5月19日閲覧。
- ^ 福田純、染谷勝樹「第二章 福田純監督インタビューII 『惑星大戦争』(77)」『東宝映画100発100中! 映画監督福田純』ワイズ出版、161頁。ISBN 4-89830-063-4。
- ^ a b c 『東宝特撮映画大全集』 ヴィレッジブックス、2012年、196 - 199頁。ISBN 9784864910132。
- ^ 『SCREEN』2005年10月号 「スター・ウォーズ」シリーズ トリビア30連発[要ページ番号]
- ^ 矢作俊彦「夢を獲える檻」『複雑な彼女と単純な場所』東京書籍、107頁。ISBN 4-487-75115-2。
- ^ a b 怪獣大全集 1991, p. 79, 「東宝モンスター名鑑」
- ^ a b c 特撮全史 2016, p. 122-123, 「惑星大戦争」
- ^ 『特撮映画美術監督 井上泰幸』キネマ旬報社、2012年、163頁。ISBN 978-4-87376-368-2。
- ^ 「撮影秘話」『東宝特撮映画DVDコレクション』第34号、デアゴスティーニ・ジャパン、2011年2月、 11頁、 雑誌コード:20691-2/1。
- ^ 『宇宙船YEAR BOOK 1998』朝日ソノラマ〈宇宙船別冊〉、1998年4月10日、62頁。雑誌コード:01844-04。
参考文献[編集]
- 『ゴジラvsキングギドラ 怪獣大全集』構成・執筆・編集:岩畠寿明、小野浩一郎(エープロダクション)、講談社〈講談社ヒットブックス20〉、1991年12月5日。ISBN 4-06-177720-3。
- 『キャラクター大全 特撮全史 1970年代 ヒーロー大全』講談社、2016年1月29日。ISBN 978-4-06-219821-9。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 惑星大戦争 - 映画資料室 - 東宝
- 惑星大戦争 - allcinema
- 惑星大戦争 - KINENOTE
- 惑星大戦争 - Movie Walker
- 惑星大戦争のチラシ - ぴあ
- The War in Space - オールムービー(英語)
- Wakusei daisenso - インターネット・ムービー・データベース(英語)
|
|