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「パレスチナ問題」の版間の差分

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[[1949年]]2月にエジプトとイスラエルの[[停戦]]協定が成立。イスラエルがパレスチナの80%を占領し、残り20%の[[ヨルダン川西岸地区]]はトランスヨルダンが占領した。[[エルサレム]]は[[エルサレムの旧市街とその城壁群|旧市街]]はヨルダンに新市街はイスラエルに占領された。[[ガザ地区]]がエジプト領となり、パレスチナ難民が押し寄せた。
[[1949年]]2月にエジプトとイスラエルの[[停戦]]協定が成立。イスラエルがパレスチナの80%を占領し、残り20%の[[ヨルダン川西岸地区]]はトランスヨルダンが占領した。[[エルサレム]]は[[エルサレムの旧市街とその城壁群|旧市街]]はヨルダンに新市街はイスラエルに占領された。[[ガザ地区]]がエジプト領となり、パレスチナ難民が押し寄せた。


イスラエルに残留した非ユダヤ人(パレスチナ人)は、イスラエル国防軍の軍政下に敷かれた。すなわち、イスラエル政府による民政下のユダヤ人と、イスラエル軍による軍政下の非ユダヤ人という、二重体制が敷かれた。非ユダヤ人は参政権など市民権は与えられたが、居住移転の自由や職業選択の自由などを厳しく制限された<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/yudayaisuraerukenkyu/29/0/29_23/_pdf イスラエルのアラブ人市民の政治参加―キリスト教徒を中心に―] - 菅瀬晶子</ref>。
イスラエルに残留した非ユダヤ人(パレスチナ人)は、イスラエル国防軍の軍政下に敷かれた。すなわち、イスラエル政府による民政下のユダヤ人と、イスラエル軍による軍政下の非ユダヤ人という、二重体制が敷かれた。非ユダヤ人は参政権など市民権は与えられたが、居住移転の自由や職業選択の自由などを厳しく制限された<ref>菅瀬晶子, [https://doi.org/10.20655/yudayaisuraerukenkyu.29.0_23 イスラエルのアラブ人市民の政治参加]」『ユダヤ・イスラエル研究』 2015年 29巻 p.23-, 日本ユダヤ学会, ,{{naid|130007905808}}, {{doi|10.20655/yudayaisuraerukenkyu.29.0_23}}。</ref>。


[[1950年]]に施行された不在者財産没収法により、1947年のパレスチナ分割決議から翌年9月までの間に居住地を離れて近隣に避難するなどしたパレスチナ人は家屋・財産を没収されることになった。こうして没収された土地はユダヤ人入植者たちに与えられた(これが下記の[[難民]]の帰還権問題に繋がる。イスラエルは、難民であること自体を認めていない) 。ヨルダンは占領しているヨルダン川西岸地区の正式併合を宣言する。
[[1950年]]に施行された不在者財産没収法により、1947年のパレスチナ分割決議から翌年9月までの間に居住地を離れて近隣に避難するなどしたパレスチナ人は家屋・財産を没収されることになった。こうして没収された土地はユダヤ人入植者たちに与えられた(これが下記の[[難民]]の帰還権問題に繋がる。イスラエルは、難民であること自体を認めていない)。ヨルダンは占領しているヨルダン川西岸地区の正式併合を宣言する。


[[1956年]]7月エジプトが[[スエズ運河]]国有化を宣言し、それを阻止するために10月にイスラエル・イギリス・フランスがエジプトに侵攻し、[[第二次中東戦争]](シナイ作戦、[[スエズ戦争]])が勃発した。アメリカとソ連の即時[[停戦]]要求を受け入れ、イギリス・フランスは11月に戦闘を中止した。アメリカの共和党の[[ドワイト・D・アイゼンハワー|アイゼンハワー]]大統領が経済援助の停止という圧力をかけて、[[1957年]]3月にイスラエルをシナイ半島から撤退させた。この戦争により、中東の主導権はイギリス・フランスからアメリカ・ソ連に移った。
[[1956年]]7月エジプトが[[スエズ運河]]国有化を宣言し、それを阻止するために10月にイスラエル・イギリス・フランスがエジプトに侵攻し、[[第二次中東戦争]](シナイ作戦、[[スエズ戦争]])が勃発した。アメリカとソ連の即時[[停戦]]要求を受け入れ、イギリス・フランスは11月に戦闘を中止した。アメリカの共和党の[[ドワイト・D・アイゼンハワー|アイゼンハワー]]大統領が経済援助の停止という圧力をかけて、[[1957年]]3月にイスラエルをシナイ半島から撤退させた。この戦争により、中東の主導権はイギリス・フランスからアメリカ・ソ連に移った。
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{{See also|第1次インティファーダ}}
{{See also|第1次インティファーダ}}


イスラエルは[[東エルサレム]]、[[ガザ地区]]、[[シナイ半島]]、[[ヨルダン川西岸地区|ヨルダン川西岸]]、[[ゴラン高原]]を占領し、[[国際連合安全保障理事会]]は停戦決議を可決した。11月に国連安保理でイスラエルの承認、イスラエルの占領地からの撤退、中東地域の航海自由の保障、避難民問題の解決などを決議した([[:en:United Nations Security Council Resolution 242|国連安保理決議242号]])。しかし、イスラエルの占領地については、[[英語|英文]]版と[[フランス語|仏文]]版で解釈が異なり、英文版では、必ずしもすべての占領地から撤退する必要はないと解釈できる余地があった<ref>[https://undocs.org/S/RES/242(1967) 国際連合安全保障理事会決議242号] - eSubscription to United Nations Documents {{en icon}}{{fr icon}}</ref><ref>[https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/1/15201/20141016122840547545/hps_13_101.pdf 国際連合安全保障理事会決議242号と中東和平の展望] - 大石悠二 『広島平和科学』13号</ref><ref>[https://core.ac.uk/download/pdf/228943432.pdf 誤訳のメッセージ性と真実性:試論] - [[袖川裕美]]</ref><ref>[https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=1812 第5回国連研究会から-歴史としての日本の国連外交(2) 2007年10月18日] - [[東京財団政策研究所]]</ref>。占領地では再び軍政が敷かれ({{仮リンク|イスラエル国防軍軍律|en|Israeli Military Order}})、パレスチナ人など非ユダヤ人住民のみが[[軍律]]に拘束された。
イスラエルは[[東エルサレム]]、[[ガザ地区]]、[[シナイ半島]]、[[ヨルダン川西岸地区|ヨルダン川西岸]]、[[ゴラン高原]]を占領し、[[国際連合安全保障理事会]]は停戦決議を可決した。11月に国連安保理でイスラエルの承認、イスラエルの占領地からの撤退、中東地域の航海自由の保障、避難民問題の解決などを決議した([[:en:United Nations Security Council Resolution 242|国連安保理決議242号]])。しかし、イスラエルの占領地については、[[英語|英文]]版と[[フランス語|仏文]]版で解釈が異なり、英文版では、必ずしもすべての占領地から撤退する必要はないと解釈できる余地があった<ref>[https://undocs.org/S/RES/242(1967) 国際連合安全保障理事会決議242号] - eSubscription to United Nations Documents {{en icon}}{{fr icon}}</ref><ref>[https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/1/15201/20141016122840547545/hps_13_101.pdf 国際連合安全保障理事会決議242号と中東和平の展望] - 大石悠二 『広島平和科学』13号</ref><ref>[https://core.ac.uk/download/pdf/228943432.pdf 誤訳のメッセージ性と真実性:試論] - [[袖川裕美]]</ref><ref>[https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=1812 第5回国連研究会から-歴史としての日本の国連外交(2) 2007年10月18日] - [[東京財団政策研究所]]</ref>。占領地では再び軍政が敷かれ({{仮リンク|イスラエル国防軍軍律|en|Israeli Military Order}})、パレスチナ人など非ユダヤ人住民のみが[[軍律]]に拘束された。


[[1973年]]10月にエジプトとシリアがイスラエルを奇襲し、[[第四次中東戦争]](ヨム・キプール戦争、ラマダーン戦争)が勃発した。[[石油輸出国機構|アラブ石油輸出国機構]]10カ国はイスラエルを占領地から撤退させるまで石油生産の5%以上を毎月削減するとの決議を可決し、[[オイルショック|石油危機]]が起こった。国際連合安全保障理事会は[[停戦]]決議を可決した。
[[1973年]]10月にエジプトとシリアがイスラエルを奇襲し、[[第四次中東戦争]](ヨム・キプール戦争、ラマダーン戦争)が勃発した。[[石油輸出国機構|アラブ石油輸出国機構]]10カ国はイスラエルを占領地から撤退させるまで石油生産の5%以上を毎月削減するとの決議を可決し、[[オイルショック|石油危機]]が起こった。国際連合安全保障理事会は[[停戦]]決議を可決した。
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その後もイスラエルとパレスチナの断続的な衝突が続いた。[[11月1日]]、イスラエルは再びガザ地区に侵攻。7日までにパレスチナは軍民合わせて50人以上、イスラエルは兵士1人が死亡した。イスラエルは撤退を表明したが、翌8日すぐに攻撃を再開、ガザ地区北部のベイト・ハヌーンでパレスチナ市民が少なくとも19人死亡し、アッバース議長は「イスラエルは平和への機会を破壊している」と非難。ハマースは報復を宣言した。イスラエルは誤爆と主張。事件の解明まで攻撃を中止すると発表したが、パレスチナ活動家の[[暗殺]]は続けている。ベイト・ハヌーンの事件について、再びカタールは国連安保理に非難決議案を提出した。[[フランス]]などの要求で、パレスチナ側のロケット攻撃も非難する修正案に改められたが、[[11月11日]]、やはり米国の拒否権で否決された(日本は[[棄権]]した)。
その後もイスラエルとパレスチナの断続的な衝突が続いた。[[11月1日]]、イスラエルは再びガザ地区に侵攻。7日までにパレスチナは軍民合わせて50人以上、イスラエルは兵士1人が死亡した。イスラエルは撤退を表明したが、翌8日すぐに攻撃を再開、ガザ地区北部のベイト・ハヌーンでパレスチナ市民が少なくとも19人死亡し、アッバース議長は「イスラエルは平和への機会を破壊している」と非難。ハマースは報復を宣言した。イスラエルは誤爆と主張。事件の解明まで攻撃を中止すると発表したが、パレスチナ活動家の[[暗殺]]は続けている。ベイト・ハヌーンの事件について、再びカタールは国連安保理に非難決議案を提出した。[[フランス]]などの要求で、パレスチナ側のロケット攻撃も非難する修正案に改められたが、[[11月11日]]、やはり米国の拒否権で否決された(日本は[[棄権]]した)。


パトリック・オコナーによると、2000年から2006年11月3日までの、パレスチナ側とイスラエル側の犠牲者数の比率は39:10である。そして、イスラエル諜報機関の元長官[[アヴィ・ディクター]]は、分離壁の建設によって自爆テロを90%阻止することが出来たと証言している。<ref>[Online NewsHour  http://www.pbs.org/newshour/bb/middle_east/jan-june06/israel_2-02.html]</ref>実際、自爆テロは未遂の時点で逮捕されているケースが多く<ref>[haaretz 2008年2月29日 エルサレムで17歳の少女を自爆容疑で逮捕 http://www.haaretz.com/]</ref>、ハマース側が自粛しているのではなく、物理的に自爆テロが出来ない状況になっているという主張である。なお、このような状況下でハマースはロケット砲による無差別攻撃に攻撃を転換したとの指摘もある。<br />
パトリック・オコナーによると、2000年から2006年11月3日までの、パレスチナ側とイスラエル側の犠牲者数の比率は39:10である。そして、イスラエル諜報機関の元長官[[アヴィ・ディクター]]は、分離壁の建設によって自爆テロを90%阻止することが出来たと証言している。<ref>[Online NewsHour http://www.pbs.org/newshour/bb/middle_east/jan-june06/israel_2-02.html]</ref>実際、自爆テロは未遂の時点で逮捕されているケースが多く<ref>[haaretz 2008年2月29日 エルサレムで17歳の少女を自爆容疑で逮捕 http://www.haaretz.com/]</ref>、ハマース側が自粛しているのではなく、物理的に自爆テロが出来ない状況になっているという主張である。なお、このような状況下でハマースはロケット砲による無差別攻撃に攻撃を転換したとの指摘もある。<br />


パレスチナ内部でも、米欧・イスラエルの支持を受けるファタハと、ハマースの内部抗争が続いている。2006年にハマースは選挙での多数を根拠に単独内閣を組んだものの、国際社会は認知しようとしなかった。ファタハとハマースの間で連立政権の交渉が進められたが、両者の抗争で2006年中だけで28人の死者を出している<ref>AFP通信 [https://web.archive.org/web/20070102173900/http://www.afpbb.com/article/1174867 ハマースとファタハ間の緊張高まる - パレスチナ自治区 2006年12月15日 01:21] - [[インターネットアーカイブ]]による保存<br />なお、この記事にあるガザ地区での[[デモ行進]]で、「子どもを殺さないで」と書かれた[[プラカード]]に[[涼宮ハルヒシリーズの登場人物#涼宮ハルヒ|涼宮ハルヒ]]のイラストが使われていたことが話題になった。</ref><ref>AFP通信 [http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2239820/1693049 イスラム原理主義組織ハマースがガザ地区の主要拠点を占拠 - ハマースとファタハの対立、2年間の軌跡 - 2007年06月15日 14:15 発信地:ガザ市/パレスチナ自治区]</ref>。
パレスチナ内部でも、米欧・イスラエルの支持を受けるファタハと、ハマースの内部抗争が続いている。2006年にハマースは選挙での多数を根拠に単独内閣を組んだものの、国際社会は認知しようとしなかった。ファタハとハマースの間で連立政権の交渉が進められたが、両者の抗争で2006年中だけで28人の死者を出している<ref>AFP通信 [https://web.archive.org/web/20070102173900/http://www.afpbb.com/article/1174867 ハマースとファタハ間の緊張高まる - パレスチナ自治区 2006年12月15日 01:21] - [[インターネットアーカイブ]]による保存<br />なお、この記事にあるガザ地区での[[デモ行進]]で、「子どもを殺さないで」と書かれた[[プラカード]]に[[涼宮ハルヒシリーズの登場人物#涼宮ハルヒ|涼宮ハルヒ]]のイラストが使われていたことが話題になった。</ref><ref>AFP通信 [http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2239820/1693049 イスラム原理主義組織ハマースがガザ地区の主要拠点を占拠 - ハマースとファタハの対立、2年間の軌跡 - 2007年06月15日 14:15 発信地:ガザ市/パレスチナ自治区]</ref>。


[[2007年]]には、両者の抗争で50人に及ぶ死者を出した。[[5月16日]]には、ハニーヤ首相の自宅に何者かの発砲事件があり、[[5月17日]]には、ハマースによるアッバース議長の暗殺計画が発覚。5度に及ぶ停戦合意がなされているが、合意の直後に抗争が再開される状況が続いている。[[6月11日]]からの抗争は、ハマースが[[ガザ地区]]を武力占拠したことで、本格的な内戦に突入。アッバース大統領は[[非常事態宣言]]を出し、内閣の解散を宣言。イスラエルや米国は、ハマースを排除したファイヤード政権を正式な交渉相手と認めた。[[6月20日]]、アッバース大統領は「人殺しのテロリストたちとは対話はしない」と、ハマースを相手にしないことを表明した。
[[2007年]]には、両者の抗争で50人に及ぶ死者を出した。[[5月16日]]には、ハニーヤ首相の自宅に何者かの発砲事件があり、[[5月17日]]には、ハマースによるアッバース議長の暗殺計画が発覚。5度に及ぶ停戦合意がなされているが、合意の直後に抗争が再開される状況が続いている。[[6月11日]]からの抗争は、ハマースが[[ガザ地区]]を武力占拠したことで、本格的な内戦に突入。アッバース大統領は[[非常事態宣言]]を出し、内閣の解散を宣言。イスラエルや米国は、ハマースを排除したファイヤード政権を正式な交渉相手と認めた。[[6月20日]]、アッバース大統領は「人殺しのテロリストたちとは対話はしない」と、ハマースを相手にしないことを表明した。
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平行して、イスラエルによる攻撃も続いている。[[4月24日]]、ハマースはイスラエルによるパレスチナ自治区ヨルダン川西岸とガザ地区攻撃への報復として、ガザ地区からイスラエルにロケット弾の攻撃を行った。ハマース側はイスラエルの攻撃に対する応戦であり、停戦そのものを破棄するつもりはないと主張したが、イスラエルはガザ地区への空襲を繰り返し行い、さらに地上部隊の再侵攻を主張する声も強くなった。[[極右]]政党「[[わが家イスラエル]]」党首のリーバーマン副首相は「イスラエル軍がハマース壊滅のための地上作戦に踏み切らなければ、連立政権から離れる」と主張した。
平行して、イスラエルによる攻撃も続いている。[[4月24日]]、ハマースはイスラエルによるパレスチナ自治区ヨルダン川西岸とガザ地区攻撃への報復として、ガザ地区からイスラエルにロケット弾の攻撃を行った。ハマース側はイスラエルの攻撃に対する応戦であり、停戦そのものを破棄するつもりはないと主張したが、イスラエルはガザ地区への空襲を繰り返し行い、さらに地上部隊の再侵攻を主張する声も強くなった。[[極右]]政党「[[わが家イスラエル]]」党首のリーバーマン副首相は「イスラエル軍がハマース壊滅のための地上作戦に踏み切らなければ、連立政権から離れる」と主張した。


[[5月20日]]には、ハマースのハリール・アル=ハヤ立法評議員(国会議員)宅が空襲を受け、アルハヤはハマースとファタハの停戦協議のため不在で難を逃れたが、8人が死亡した。イスラエル側はアルハヤを標的にしたものではなく、付近にいた武装集団を狙ったものと主張した。[[5月21日]]、パレスチナ側の攻撃でイスラエル人1人が死亡すると、イスラエルのリブニ外相は共同記者会見で「停戦は幻想で、ロケット弾はハマースが平穏に乗じて武器の密輸を行った結果だ。われわれはハマースと戦い続ける」と述べた。また、同国のアビ・デヒテル警察相は、ハマースの事実上の最高指導者であるハーリド・マシャアルについて、「彼の存在は正当な標的である以上だ。困難な使命ではあるが機会さえあればいつでも、彼を我々の前から消すことだろう」と[[暗殺]]を公言し、さらにハニーヤ首相の暗殺についても「(イスラエルに対する)攻撃命令を出している者の中にハニーヤが連なっているならば、彼も正当な標的となる」と実行に含みを持たせた(「[http://www.afpbb.com/article/1616624 警察相、ハマース最高指導者の殺害を予告 - イスラエル * 2007年05月21日 20:10 発信地:イスラエル]」)。
[[5月20日]]には、ハマースのハリール・アル=ハヤ立法評議員(国会議員)宅が空襲を受け、アルハヤはハマースとファタハの停戦協議のため不在で難を逃れたが、8人が死亡した。イスラエル側はアルハヤを標的にしたものではなく、付近にいた武装集団を狙ったものと主張した。[[5月21日]]、パレスチナ側の攻撃でイスラエル人1人が死亡すると、イスラエルのリブニ外相は共同記者会見で「停戦は幻想で、ロケット弾はハマースが平穏に乗じて武器の密輸を行った結果だ。われわれはハマースと戦い続ける」と述べた。また、同国のアビ・デヒテル警察相は、ハマースの事実上の最高指導者であるハーリド・マシャアルについて、「彼の存在は正当な標的である以上だ。困難な使命ではあるが機会さえあればいつでも、彼を我々の前から消すことだろう」と[[暗殺]]を公言し、さらにハニーヤ首相の暗殺についても「(イスラエルに対する)攻撃命令を出している者の中にハニーヤが連なっているならば、彼も正当な標的となる」と実行に含みを持たせた(「[http://www.afpbb.com/article/1616624 警察相、ハマース最高指導者の殺害を予告 - イスラエル * 2007年05月21日 20:10 発信地:イスラエル]」)。


さらに、[[5月31日]]、ユダヤ教スファルディーの前首席[[ラビ]]であるモルデハイ・エリヤフは、オルメルト首相に「ユダヤ人の戦争倫理によると、個人の不道徳な行為について、市全体が集団的な責任を負う。ガザではカッサムロケットの発射を止めないから、すべての人口に責任がある」と主張する手紙を出し、[[シナゴーグ]]に内容を配布した。パレスチナ『エレクトロニック・インティファーダ』紙のアリ・アブニマーは、「イスラエルでこの類のパレスチナ人に対する[[大量虐殺]]をそそのかす[[憎悪]]が語られるのは珍しいことではない。では、ムスリムやパレスチナの指導者がこのようなことを言ったらどうなるか。[[イラン]]の[[マフムード・アフマディーネジャード|アフマディー
さらに、[[5月31日]]、ユダヤ教スファルディーの前首席[[ラビ]]であるモルデハイ・エリヤフは、オルメルト首相に「ユダヤ人の戦争倫理によると、個人の不道徳な行為について、市全体が集団的な責任を負う。ガザではカッサムロケットの発射を止めないから、すべての人口に責任がある」と主張する手紙を出し、[[シナゴーグ]]に内容を配布した。パレスチナ『エレクトロニック・インティファーダ』紙のアリ・アブニマーは、「イスラエルでこの類のパレスチナ人に対する[[大量虐殺]]をそそのかす[[憎悪]]が語られるのは珍しいことではない。では、ムスリムやパレスチナの指導者がこのようなことを言ったらどうなるか。[[イラン]]の[[マフムード・アフマディーネジャード|アフマディー
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[[11月27日]]、米国の仲介で開かれた中東和平国際会議において、ブッシュ米大統領、オルメルト・イスラエル首相、アッバース・パレスチナ自治政府議長は和平交渉再開を確認した。だが、イスラエルは交渉再開を表明する一方、連日ガザ地区の攻撃や空襲を行い、[[11月30日]]には、ガザ再侵攻の準備が整ったことを発表した。
[[11月27日]]、米国の仲介で開かれた中東和平国際会議において、ブッシュ米大統領、オルメルト・イスラエル首相、アッバース・パレスチナ自治政府議長は和平交渉再開を確認した。だが、イスラエルは交渉再開を表明する一方、連日ガザ地区の攻撃や空襲を行い、[[11月30日]]には、ガザ再侵攻の準備が整ったことを発表した。


[[2008年]]1月、ブッシュ米大統領はイスラエル・パレスチナを歴訪。[[1月9日]]にはイスラエルでオルメルト首相と会談し、[[1月10日]]には初めてパレスチナを訪問し、アッバース議長と会談した。ブッシュ大統領は、イスラエルの入植地について「1967年に始まった占領を終結させる必要がある」と述べ、またパレスチナ自治区を入植地が分断している現状について「スイスチーズ(穴あきチーズ)ではうまくいかない」と批判した<ref>[http://www.usfl.com/Daily/News/08/01/0110_028.asp?id=58016 「穴あき国家」は問題 ブッシュ大統領]</ref>。一方、パレスチナに対しては「テロとの戦い」の継続と、ハマースからのガザ地区奪還を要求した。<br />
[[2008年]]1月、ブッシュ米大統領はイスラエル・パレスチナを歴訪。[[1月9日]]にはイスラエルでオルメルト首相と会談し、[[1月10日]]には初めてパレスチナを訪問し、アッバース議長と会談した。ブッシュ大統領は、イスラエルの入植地について「1967年に始まった占領を終結させる必要がある」と述べ、またパレスチナ自治区を入植地が分断している現状について「スイスチーズ(穴あきチーズ)ではうまくいかない」と批判した<ref>[http://www.usfl.com/Daily/News/08/01/0110_028.asp?id=58016 「穴あき国家」は問題 ブッシュ大統領]</ref>。一方、パレスチナに対しては「テロとの戦い」の継続と、ハマースからのガザ地区奪還を要求した。<br />
しかし、イスラエルのガザ地区攻撃については「パレスチナ領域がテロ組織の天国になってはならない」と理解を示し、イスラエル領への帰還を望むパレスチナ難民についてはこれを認めず、保証金で解決する考えを示した<ref>『東京新聞』『中日新聞』[http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2008011102078732.html パレスチナ難民帰還権 米大統領 『補償金で解決を』2008年1月11日 夕刊]{{リンク切れ|date=2017年10月}}</ref>。入植地についても、具体的にまとまったのはイスラエル政府が違法とする入植施設の撤去を約束したことだけで、既存の入植地・検問所については追認する考えを示すなど、イスラエルに有利な現状を追認するに留まった。『東京新聞』『中日新聞』は、これを「イスラエルの『独り勝ち』」と評した<ref>[http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2008011202078856.html 米大統領の中東和平外交 イスラエルの『独り勝ち』 2008年1月12日 朝刊]</ref>。パレスチナではブッシュに抗議するデモが行われ<ref>[http://electronicintifada.net/v2/article9213.shtml George W. Bush: You are not welcome](英語)</ref>、イスラエルでの世論調査では、和平の進展に懐疑的な意見が多数を占めた<ref>AFP通信 [http://www.afpbb.com/article/politics/2334752/2512374 ブッシュ大統領訪問の成果、イスラエル国民は「懐疑的」 2008年01月10日 23:03]</ref>。
しかし、イスラエルのガザ地区攻撃については「パレスチナ領域がテロ組織の天国になってはならない」と理解を示し、イスラエル領への帰還を望むパレスチナ難民についてはこれを認めず、保証金で解決する考えを示した<ref>『東京新聞』『中日新聞』[http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2008011102078732.html パレスチナ難民帰還権 米大統領 『補償金で解決を』2008年1月11日 夕刊]{{リンク切れ|date=2017年10月}}</ref>。入植地についても、具体的にまとまったのはイスラエル政府が違法とする入植施設の撤去を約束したことだけで、既存の入植地・検問所については追認する考えを示すなど、イスラエルに有利な現状を追認するに留まった。『東京新聞』『中日新聞』は、これを「イスラエルの『独り勝ち』」と評した<ref>[http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2008011202078856.html 米大統領の中東和平外交 イスラエルの『独り勝ち』 2008年1月12日 朝刊]</ref>。パレスチナではブッシュに抗議するデモが行われ<ref>[http://electronicintifada.net/v2/article9213.shtml George W. Bush: You are not welcome](英語)</ref>、イスラエルでの世論調査では、和平の進展に懐疑的な意見が多数を占めた<ref>AFP通信 [http://www.afpbb.com/article/politics/2334752/2512374 ブッシュ大統領訪問の成果、イスラエル国民は「懐疑的」 2008年01月10日 23:03]</ref>。


並行して、ハマース側はイスラエルをロケット弾で攻撃し、イスラエルは報復にガザ地区を攻撃。[[1月15日]]にはガザ市街に侵攻し、民間人5人を含む17人を殺害した。ハマース側は、イスラエルの集団農場([[キブツ]])で作業していた[[エクアドル人]]ボランティア1人を殺害した。[[1月18日]]には、イスラエルの空襲でガザにある内務省ビルが破壊された。1月の間に、パレスチナ側からは少なくとも96人の犠牲者が出た。イスラエルのバラク国防相はロケット弾攻撃の報復にガザ地区の完全封鎖を指示し、国連の援助車両も閉め出した。燃料の供給が止まったため、ガザ地区唯一の[[発電所]]は操業不能となり、ガザの電気の1/3(イスラエル側の主張によれば、1/4)が供給できなくなった。また、食料などの生活必需品も、イスラエルの兵糧攻めにより深刻な状況となっているという<ref>[http://0000000000.net/p-navi/info/news/200801190158.htm 2008.01.19 ガザへの攻撃、続く 内務省ビル崩壊、一週間で死者30人超]</ref>。17日には、国連の[[潘基文]][[国際連合事務総長|事務総長]]が「パレスチナ人による襲撃の即時停止、ならびイスラエル軍の最大限の自制を求め」る声明を出したが<ref>[http://www.unic.or.jp/mainichi/mainichi.html 毎日の動き(2008年1月17日の項目)]</ref>、イスラエルとハマースはこれを無視した。
並行して、ハマース側はイスラエルをロケット弾で攻撃し、イスラエルは報復にガザ地区を攻撃。[[1月15日]]にはガザ市街に侵攻し、民間人5人を含む17人を殺害した。ハマース側は、イスラエルの集団農場([[キブツ]])で作業していた[[エクアドル人]]ボランティア1人を殺害した。[[1月18日]]には、イスラエルの空襲でガザにある内務省ビルが破壊された。1月の間に、パレスチナ側からは少なくとも96人の犠牲者が出た。イスラエルのバラク国防相はロケット弾攻撃の報復にガザ地区の完全封鎖を指示し、国連の援助車両も閉め出した。燃料の供給が止まったため、ガザ地区唯一の[[発電所]]は操業不能となり、ガザの電気の1/3(イスラエル側の主張によれば、1/4)が供給できなくなった。また、食料などの生活必需品も、イスラエルの兵糧攻めにより深刻な状況となっているという<ref>[http://0000000000.net/p-navi/info/news/200801190158.htm 2008.01.19 ガザへの攻撃、続く 内務省ビル崩壊、一週間で死者30人超]</ref>。17日には、国連の[[潘基文]][[国際連合事務総長|事務総長]]が「パレスチナ人による襲撃の即時停止、ならびイスラエル軍の最大限の自制を求め」る声明を出したが<ref>[http://www.unic.or.jp/mainichi/mainichi.html 毎日の動き(2008年1月17日の項目)]</ref>、イスラエルとハマースはこれを無視した。


2008年[[2月28日]]、来日中のオルメルト首相は、[[コンドリーザ・ライス]][[アメリカ合衆国国務長官|米国国務長官]]と会談し、同日帰国した。オルメルトは、攻撃の自重を求めるライスに対し、「脅威が去るまでは(攻撃を)続ける」とこれを拒否した。また、[[2月29日]]、イスラエルの[[マタン・ヴィルナイ]]国防[[副大臣]]は、「カッサムロケット弾がさらに撃ち込まれ、遠くまで着弾するようになれば、パレスチナ人はわが身のうえに大規模なהשואה(shoah、ショアー、[[ホロコースト|ナチスによるユダヤ人大虐殺]]を意味する)を引きよせることになるだろう。というのは、我々は防衛のために全力を使うからだ。」<ref>[[英国放送協会|BBC]] [http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/7272329.stm Dozens die in Israel-Gaza clashes]、[[ロイター通信]] [http://jp.reuters.com/article/topNews/idUSL2868601720080229 Israel warns Gaza of "shoah"]</ref>と述べ、ハマースが攻撃を止めないならば、パレスチナ人を大虐殺すると脅した。この発言にイタン・ギンツブルグ国防副大臣などは、「ショアーは災害を表す普通名詞で、[[ジェノサイド|ジェノサイド(大量虐殺)]]を意味しない」<ref>shoahはdisaster(災害、惨事)を表す普通名詞であり、ナチスのユダヤ人大虐殺を指す時は、[[冠詞|定冠詞]]のHaをつけて、Hashoahという表現を使うという。ただし、ナチスによる惨事(すなわちユダヤ人虐殺)に対して、惨事を表す他の単語ではなく、shoahが主に使われる表現であることも、また事実である。</ref>と火消しした。ハマースは、この発言に「(やはりイスラエルは)新しい[[国家社会主義ドイツ労働者党|ナチス]]」であったと反発した。
2008年[[2月28日]]、来日中のオルメルト首相は、[[コンドリーザ・ライス]][[アメリカ合衆国国務長官|米国国務長官]]と会談し、同日帰国した。オルメルトは、攻撃の自重を求めるライスに対し、「脅威が去るまでは(攻撃を)続ける」とこれを拒否した。また、[[2月29日]]、イスラエルの[[マタン・ヴィルナイ]]国防[[副大臣]]は、「カッサムロケット弾がさらに撃ち込まれ、遠くまで着弾するようになれば、パレスチナ人はわが身のうえに大規模なהשואה(shoah、ショアー、[[ホロコースト|ナチスによるユダヤ人大虐殺]]を意味する)を引きよせることになるだろう。というのは、我々は防衛のために全力を使うからだ。」<ref>[[英国放送協会|BBC]] [http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/7272329.stm Dozens die in Israel-Gaza clashes]、[[ロイター通信]] [http://jp.reuters.com/article/topNews/idUSL2868601720080229 Israel warns Gaza of "shoah"]</ref>と述べ、ハマースが攻撃を止めないならば、パレスチナ人を大虐殺すると脅した。この発言にイタン・ギンツブルグ国防副大臣などは、「ショアーは災害を表す普通名詞で、[[ジェノサイド|ジェノサイド(大量虐殺)]]を意味しない」<ref>shoahはdisaster(災害、惨事)を表す普通名詞であり、ナチスのユダヤ人大虐殺を指す時は、[[冠詞|定冠詞]]のHaをつけて、Hashoahという表現を使うという。ただし、ナチスによる惨事(すなわちユダヤ人虐殺)に対して、惨事を表す他の単語ではなく、shoahが主に使われる表現であることも、また事実である。</ref>と火消しした。ハマースは、この発言に「(やはりイスラエルは)新しい[[国家社会主義ドイツ労働者党|ナチス]]」であったと反発した。
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[[3月1日]]、イスラエルはガザ地区への地上部隊の侵攻を本格化させ、この日だけでパレスチナ側に61人の犠牲者が出た。イスラエル軍は、これを「暖冬作戦」と称している。イスラエル軍が、ハマースのロケット弾攻撃による死者が出たことを理由に攻撃を激化させた2月27日以降、ガザ地区からひとまず撤退した[[3月3日]]までの6日間に、パレスチナ側は116人(約半数は非戦闘員)、イスラエル側は3人(1人は非戦闘員)殺害されている。[[3月2日]]、国連の潘基文事務総長は、イスラエルに作戦中止を要請し、またハマースのロケット弾攻撃を「テロ行為」と批判した。しかし、イスラエルのオルメルト首相は「テロとの戦いをやめるつもりはない」と作戦継続を宣言し、これを拒否した。同日、パレスチナ自治政府のアッバース大統領は、ガザ侵攻を止めるまで和平交渉の中断を発表した。
[[3月1日]]、イスラエルはガザ地区への地上部隊の侵攻を本格化させ、この日だけでパレスチナ側に61人の犠牲者が出た。イスラエル軍は、これを「暖冬作戦」と称している。イスラエル軍が、ハマースのロケット弾攻撃による死者が出たことを理由に攻撃を激化させた2月27日以降、ガザ地区からひとまず撤退した[[3月3日]]までの6日間に、パレスチナ側は116人(約半数は非戦闘員)、イスラエル側は3人(1人は非戦闘員)殺害されている。[[3月2日]]、国連の潘基文事務総長は、イスラエルに作戦中止を要請し、またハマースのロケット弾攻撃を「テロ行為」と批判した。しかし、イスラエルのオルメルト首相は「テロとの戦いをやめるつもりはない」と作戦継続を宣言し、これを拒否した。同日、パレスチナ自治政府のアッバース大統領は、ガザ侵攻を止めるまで和平交渉の中断を発表した。


3月3日、イスラエル軍はガザ地区から撤退し、ハマースは勝利宣言を出した。しかし、オルメルト首相は「寛大な措置を施す時期ではない。(パレスチナへの)応戦を続けるが、応戦は具体的な作戦や日時に限ったものではない」と再侵攻の意志を示し、さらにあるイスラエル政府高官は、[[3月4日]]と5日にライス米国務長官がイスラエルとパレスチナを訪問する予定に触れ、「(ライス)長官の訪問に合わせ、二日間の中休みを取っただけ」と言った<ref>『[[北海道新聞]]』[http://www.hokkaido-np.co.jp/news/international/79521.html イスラエル軍 地上部隊、ガザから撤退 ハマースは「勝利」を宣言(03/04 07:40)]</ref>。3月4日夜、イスラエル軍は戦車で再侵攻を行い、武装勢力幹部宅を襲撃し、幹部を殺害。ライス米国務長官は、アッバース大統領に対し、ガザ侵攻中止は和平交渉再開の条件にはならないとの見解を示し、またイスラエルのガザ侵攻については、「自衛の権利があることを理解する」とこれを容認した。アッバースは、和平交渉の再開は認めたが、双方の見解の相違もあり、具体的な日程の見通しは立っていない。イスラエルは、「暖冬作戦」の第2弾として、都市に隠された武器捜索を予定しているという。
3月3日、イスラエル軍はガザ地区から撤退し、ハマースは勝利宣言を出した。しかし、オルメルト首相は「寛大な措置を施す時期ではない。(パレスチナへの)応戦を続けるが、応戦は具体的な作戦や日時に限ったものではない」と再侵攻の意志を示し、さらにあるイスラエル政府高官は、[[3月4日]]と5日にライス米国務長官がイスラエルとパレスチナを訪問する予定に触れ、「(ライス)長官の訪問に合わせ、二日間の中休みを取っただけ」と言った<ref>『[[北海道新聞]]』[http://www.hokkaido-np.co.jp/news/international/79521.html イスラエル軍 地上部隊、ガザから撤退 ハマースは「勝利」を宣言(03/04 07:40)]</ref>。3月4日夜、イスラエル軍は戦車で再侵攻を行い、武装勢力幹部宅を襲撃し、幹部を殺害。ライス米国務長官は、アッバース大統領に対し、ガザ侵攻中止は和平交渉再開の条件にはならないとの見解を示し、またイスラエルのガザ侵攻については、「自衛の権利があることを理解する」とこれを容認した。アッバースは、和平交渉の再開は認めたが、双方の見解の相違もあり、具体的な日程の見通しは立っていない。イスラエルは、「暖冬作戦」の第2弾として、都市に隠された武器捜索を予定しているという。


[[3月6日]]、イスラエルの[[神学校]]にパレスチナ人の男が乱入、生徒ら8人を射殺し、男はイスラエル治安当局に射殺された。神学校は、ユダヤ人入植者の思想的拠点だった。アッバース大統領、米ブッシュ大統領、潘国連事務総長らは相次いでテロ非難声明を出した。また、ブッシュ大統領は、オルメルト首相に電話で弔意を伝えると共に、「米国はイスラエルを強く支持する」と述べた。一方、ハマースは「(パレスチナ人)虐殺に対する自然な反応だ」と、犯行を支持する声明を出した。米国は、国連安保理でテロ事件として非難声明の採択を要求したが、[[リビア]]がイスラエルによるパレスチナ攻撃も非難すべきと主張し、採択は見送られた。犯行そのものについては、ハマースが認めたという報道<ref>『[[日本経済新聞]]』 [http://www.nikkei.co.jp/kaigai/asia/20080307D2M0703K07.html エルサレムで銃乱射テロ、ハマースが犯行認める]</ref>と、ヒズボラ関係者とする報道<ref>[[CNN]] [http://www.cnn.co.jp/world/CNN200803080012.html ハマースが犯行否定、ヒズボラの関与示唆 エルサレム乱射]</ref>があり、情報は錯綜している。<br />
[[3月6日]]、イスラエルの[[神学校]]にパレスチナ人の男が乱入、生徒ら8人を射殺し、男はイスラエル治安当局に射殺された。神学校は、ユダヤ人入植者の思想的拠点だった。アッバース大統領、米ブッシュ大統領、潘国連事務総長らは相次いでテロ非難声明を出した。また、ブッシュ大統領は、オルメルト首相に電話で弔意を伝えると共に、「米国はイスラエルを強く支持する」と述べた。一方、ハマースは「(パレスチナ人)虐殺に対する自然な反応だ」と、犯行を支持する声明を出した。米国は、国連安保理でテロ事件として非難声明の採択を要求したが、[[リビア]]がイスラエルによるパレスチナ攻撃も非難すべきと主張し、採択は見送られた。犯行そのものについては、ハマースが認めたという報道<ref>『[[日本経済新聞]]』 [http://www.nikkei.co.jp/kaigai/asia/20080307D2M0703K07.html エルサレムで銃乱射テロ、ハマースが犯行認める]</ref>と、ヒズボラ関係者とする報道<ref>[[CNN]] [http://www.cnn.co.jp/world/CNN200803080012.html ハマースが犯行否定、ヒズボラの関与示唆 エルサレム乱射]</ref>があり、情報は錯綜している。<br />
[[3月10日]]、エジプトの仲介で、イスラエルとハマースは当面の攻撃自制に同意した。しかし、オルメルト首相は「軍はガザで必要なだけ行動する」と述べており、また停戦の条件として、ハマースはイスラエルのガザ封鎖解除を、イスラエルはハマースの武器密輸停止を要求している。[[3月12日]]、イスラエルは[[ベツレヘム]]などでイスラム原理主義組織[[イスラーム聖戦 (パレスチナ)|イスラム聖戦]]の幹部ら5人を暗殺し、イスラム聖戦はガザ地区からロケット弾で報復攻撃した。イスラエルはガザ地区を空襲し、イスラム聖戦の戦闘員4人を殺害した。
[[3月10日]]、エジプトの仲介で、イスラエルとハマースは当面の攻撃自制に同意した。しかし、オルメルト首相は「軍はガザで必要なだけ行動する」と述べており、また停戦の条件として、ハマースはイスラエルのガザ封鎖解除を、イスラエルはハマースの武器密輸停止を要求している。[[3月12日]]、イスラエルは[[ベツレヘム]]などでイスラム原理主義組織[[イスラーム聖戦 (パレスチナ)|イスラム聖戦]]の幹部ら5人を暗殺し、イスラム聖戦はガザ地区からロケット弾で報復攻撃した。イスラエルはガザ地区を空襲し、イスラム聖戦の戦闘員4人を殺害した。


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4月に入ってもガザ地区での攻撃は続いており、4月中だけでパレスチナ側は46人以上、イスラエル側は10人の犠牲者が出ている。この他、[[4月16日]]には、ロイター通信のファデル・シャナ[[カメラマン]]が、イスラエル軍の砲撃で殺されている。また、イスラエルは国連人権委員会によって調査のためにイスラエル入りする予定であった[[リチャード・フォーク]]の入国を、「イスラエルの行いをナチスと比べるなど、調査官として不公平」という理由で拒否した。
4月に入ってもガザ地区での攻撃は続いており、4月中だけでパレスチナ側は46人以上、イスラエル側は10人の犠牲者が出ている。この他、[[4月16日]]には、ロイター通信のファデル・シャナ[[カメラマン]]が、イスラエル軍の砲撃で殺されている。また、イスラエルは国連人権委員会によって調査のためにイスラエル入りする予定であった[[リチャード・フォーク]]の入国を、「イスラエルの行いをナチスと比べるなど、調査官として不公平」という理由で拒否した。


[[6月19日]]、エジプトの仲介でハマースとイスラエルは6ヶ月の停戦に踏み切った。断続的に衝突は続くもののまだ平和であった。しかし、[[11月4日]]、イスラエルはエジプトとの地下通路が掘られているという理由で空襲した。その結果、ハマースは停戦中として攻撃を手控えたが、[[イスラーム聖戦_(パレスチナ)|イスラーム聖戦]]などが報復としてロケット弾を発射し、緊張が高まった。イスラエル系の諜報テロ情報センターは、ハマースは注意深く停戦を守り、一方で他の無法組織(イスラム聖戦などのこと)との衝突は避け、停戦を維持させるための政治面からの説得を試みていると分析している<ref>[http://www.terrorism-info.org.il/malam_multimedia/English/eng_n/pdf/hamas_e017.pdf December, 2008 The Six Months of the Lull Arrangement] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20091013120923/http://www.terrorism-info.org.il/malam_multimedia/English/eng_n/pdf/hamas_e017.pdf |date=2009年10月13日 }}</ref>。
[[6月19日]]、エジプトの仲介でハマースとイスラエルは6ヶ月の停戦に踏み切った。断続的に衝突は続くもののまだ平和であった。しかし、[[11月4日]]、イスラエルはエジプトとの地下通路が掘られているという理由で空襲した。その結果、ハマースは停戦中として攻撃を手控えたが、[[イスラーム聖戦_(パレスチナ)|イスラーム聖戦]]などが報復としてロケット弾を発射し、緊張が高まった。イスラエル系の諜報テロ情報センターは、ハマースは注意深く停戦を守り、一方で他の無法組織(イスラム聖戦などのこと)との衝突は避け、停戦を維持させるための政治面からの説得を試みていると分析している<ref>[http://www.terrorism-info.org.il/malam_multimedia/English/eng_n/pdf/hamas_e017.pdf December, 2008 The Six Months of the Lull Arrangement] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20091013120923/http://www.terrorism-info.org.il/malam_multimedia/English/eng_n/pdf/hamas_e017.pdf |date=2009年10月13日 }}</ref>。


===2008 - 2009:ガザ紛争 ===
===2008 - 2009:ガザ紛争 ===
{{See also|ガザ紛争 (2008年-2009年)}}
{{See also|ガザ紛争 (2008年-2009年)}}


12月に入り、再度エジプトの仲介のもとで停戦延長をイスラエルは試みたが、ハマースが「イスラエルがガザの封鎖解除に応じなかった」と主張し、延長を拒否したため[[12月19日]]失効した。イスラエル側は、当初の合意事項であった「ガザに対する封鎖の段階的解除」は実質行われており、武器兵器などは勿論論外であるが人道物資などを初めとする様々な流通があったとしている。しかし、[[赤十字社]]は11月4日以降、封鎖は再び厳しくなり、ガザの状況を「破滅的」と報告した。国連調査官のリチャード・フォークは[[12月9日]]、イスラエルが流入を認める物資は「飢餓と病を避けるにはギリギリ」であり、イスラエルによる「パレスチナ人への集団的懲罰は[[人道に対する罪]]」であるとの見解を示した。また、ガザ地区からの輸出は、2月以来完全に禁止されたままである<ref>[http://www.ochaopt.org/documents/ocha_opt_humanitarian_monitor_2008_11_1_english.pdf occupied Palestinian territory The Humanitarian Monitor November 2008 Number 31]</ref>。
12月に入り、再度エジプトの仲介のもとで停戦延長をイスラエルは試みたが、ハマースが「イスラエルがガザの封鎖解除に応じなかった」と主張し、延長を拒否したため[[12月19日]]失効した。イスラエル側は、当初の合意事項であった「ガザに対する封鎖の段階的解除」は実質行われており、武器兵器などは勿論論外であるが人道物資などを初めとする様々な流通があったとしている。しかし、[[赤十字社]]は11月4日以降、封鎖は再び厳しくなり、ガザの状況を「破滅的」と報告した。国連調査官のリチャード・フォークは[[12月9日]]、イスラエルが流入を認める物資は「飢餓と病を避けるにはギリギリ」であり、イスラエルによる「パレスチナ人への集団的懲罰は[[人道に対する罪]]」であるとの見解を示した。また、ガザ地区からの輸出は、2月以来完全に禁止されたままである<ref>[http://www.ochaopt.org/documents/ocha_opt_humanitarian_monitor_2008_11_1_english.pdf occupied Palestinian territory The Humanitarian Monitor November 2008 Number 31]</ref>。


ヨルダン川西岸地区では、[[12月12日]]、イスラエルは主要入植地4箇所を含む西岸の6.8%を自国領として併合し、難民の帰国を5000人にとどめる提案を行った。イスラエルは当初の要求であった7.3%から譲歩したが、いずれにせよパレスチナ国家樹立に欠かせない土地であるとして、自治政府は要求を拒否した。
ヨルダン川西岸地区では、[[12月12日]]、イスラエルは主要入植地4箇所を含む西岸の6.8%を自国領として併合し、難民の帰国を5000人にとどめる提案を行った。イスラエルは当初の要求であった7.3%から譲歩したが、いずれにせよパレスチナ国家樹立に欠かせない土地であるとして、自治政府は要求を拒否した。


停戦の期限が切れる前から、ハマースは[[ロケット弾]]や[[迫撃砲]]などで攻撃を再開。このハマースの度重なるロケット砲によってイスラエル人、一人が死亡した。<ref>『[[Ynetnews]]』 [http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-3644954,00.html Man killed in rocket strike, 12.27.2008]、英語</ref>また、再三のイスラエル側からの警告があったにも関わらず無差別のロケット砲攻撃をハマースはやめなかった。<ref>{{cite news|url=http://www.asahi.com/international/update/1225/TKY200812250302.html|title=ハマース、ガザから迫撃砲攻撃 イスラエル側は反撃示唆|date=2008-12-25|publisher=[[朝日新聞]]|accessdate=2008-12-26|archiveurl=https://web.archive.org/web/20081227003233/http://www.asahi.com/international/update/1225/TKY200812250302.html|archivedate=2008年12月27日|deadlinkdate=2013-11-02|deadurldate=2017年9月}}</ref>
停戦の期限が切れる前から、ハマースは[[ロケット弾]]や[[迫撃砲]]などで攻撃を再開。このハマースの度重なるロケット砲によってイスラエル人、一人が死亡した。<ref>『[[Ynetnews]]』 [http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-3644954,00.html Man killed in rocket strike, 12.27.2008]、英語</ref>また、再三のイスラエル側からの警告があったにも関わらず無差別のロケット砲攻撃をハマースはやめなかった。<ref>{{cite news|url=http://www.asahi.com/international/update/1225/TKY200812250302.html|title=ハマース、ガザから迫撃砲攻撃 イスラエル側は反撃示唆|date=2008-12-25|publisher=[[朝日新聞]]|accessdate=2008-12-26|archiveurl=https://web.archive.org/web/20081227003233/http://www.asahi.com/international/update/1225/TKY200812250302.html|archivedate=2008年12月27日|deadlinkdate=2013-11-02|deadurldate=2017年9月}}</ref>
[[12月21日]]、イスラエル軍はガザ地区を[[ヘリコプター]]で攻撃した。さらに[[12月27日]](現地時間午前11:30、[[協定世界時|UTC]]午前9:30<ref>{{cite news|url=http://www.haaretz.com/hasen/spages/1050405.html|title=ANALYSIS / IAF strike on Gaza is Israel’s version of ‘shock and awe’ |last=Harel|first=Amos|date=2008-12-27|publisher=Ha’aretz|accessdate= 2008-12-27}}</ref>)、本格的にガザ地区を空襲し、同日だけで200人以上が犠牲者となった。イスラエル軍は、「ハマースのテロ作戦従事者」および訓練キャンプと武器庫を標的としたと声明を出した。なおイスラエルは武器輸入を止めないハマースを6ヶ月前、即ち停戦期間中からその拠点を調べ、今後起こりうるであろう軍事作戦の計画をしていた。<ref>『[[ハアレツ]]』2008年12月28日号 「[http://www.haaretz.com/hasen/spages/1050426.html Disinformation, secrecy and lies: How the Gaza offensive came about]」、Barak Ravid、英語</ref>。両者の交渉を仲介した[[ジミー・カーター]]によると、イスラエルは非公式に、48時間ロケット弾を発射しないのならば、通常の15%の物資供給は可能だとの見解を示したが、ハマースは拒否し、その結果イスラエルの報復攻撃が始まったという<ref>『[[ワシントン・ポスト]]』2009年1月8日 [http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/01/07/AR2009010702645_pf.html An Unnecessary War By Jimmy Carter Thursday, January 8, 2009; A15]、英語</ref>。
[[12月21日]]、イスラエル軍はガザ地区を[[ヘリコプター]]で攻撃した。さらに[[12月27日]](現地時間午前11:30、[[協定世界時|UTC]]午前9:30<ref>{{cite news|url=http://www.haaretz.com/hasen/spages/1050405.html|title=ANALYSIS / IAF strike on Gaza is Israel’s version of ‘shock and awe’ |last=Harel|first=Amos|date=2008-12-27|publisher=Ha’aretz|accessdate= 2008-12-27}}</ref>)、本格的にガザ地区を空襲し、同日だけで200人以上が犠牲者となった。イスラエル軍は、「ハマースのテロ作戦従事者」および訓練キャンプと武器庫を標的としたと声明を出した。なおイスラエルは武器輸入を止めないハマースを6ヶ月前、即ち停戦期間中からその拠点を調べ、今後起こりうるであろう軍事作戦の計画をしていた。<ref>『[[ハアレツ]]』2008年12月28日号 「[http://www.haaretz.com/hasen/spages/1050426.html Disinformation, secrecy and lies: How the Gaza offensive came about]」、Barak Ravid、英語</ref>。両者の交渉を仲介した[[ジミー・カーター]]によると、イスラエルは非公式に、48時間ロケット弾を発射しないのならば、通常の15%の物資供給は可能だとの見解を示したが、ハマースは拒否し、その結果イスラエルの報復攻撃が始まったという<ref>『[[ワシントン・ポスト]]』2009年1月8日 [http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/01/07/AR2009010702645_pf.html An Unnecessary War By Jimmy Carter Thursday, January 8, 2009; A15]、英語</ref>。


[[2009年]][[1月17日]]までの22日間で、地上戦も含めパレスチナ側で殺害された人数は少なくとも1300人<ref>民間人とはっきりしている女性は100人、子供は410人。</ref>([[フランス通信社|AFP通信]]、パレスチナ自治政府保健省)を数え、第三次中東戦争以来最悪の数である。イスラエル側の殺害された人数は13人(イスラエル政府筋、ただし味方の誤射で死亡した4人を含む。3人は民間人。ハマース側は、地上戦で10人を殺害したと主張<ref>地上戦までのイスラエル側で殺害された人数は4人。</ref>)パレスチナ側死者のうち、イスラエル側主張<ref>『讀賣新聞』<!--元記事は『ハアレツ』-->2009年1月21日 [http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090120-OYT1T01062.htm?from=navr ガザ死者1315人、被害額1750億円に…自治政府発表]</ref>によれば、ハマースの戦闘員500人を殺害、130人を拘束<ref>[[戦時国際法]]の保護を受ける[[捕虜]]ではない、とのイスラエルの主張による。</ref>した。ハマースのアブジャアファル(仮名)小隊司令官は、殺害されたのは48人と主張した。家屋全壊は4100棟、損壊は17000棟。地上戦突入後は[[救急車]]が現場に向かえず、死者の実数は把握し切れていないという。
[[2009年]][[1月17日]]までの22日間で、地上戦も含めパレスチナ側で殺害された人数は少なくとも1300人<ref>民間人とはっきりしている女性は100人、子供は410人。</ref>([[フランス通信社|AFP通信]]、パレスチナ自治政府保健省)を数え、第三次中東戦争以来最悪の数である。イスラエル側の殺害された人数は13人(イスラエル政府筋、ただし味方の誤射で死亡した4人を含む。3人は民間人。ハマース側は、地上戦で10人を殺害したと主張<ref>地上戦までのイスラエル側で殺害された人数は4人。</ref>)パレスチナ側死者のうち、イスラエル側主張<ref>『讀賣新聞』<!--元記事は『ハアレツ』-->2009年1月21日 [http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090120-OYT1T01062.htm?from=navr ガザ死者1315人、被害額1750億円に…自治政府発表]</ref>によれば、ハマースの戦闘員500人を殺害、130人を拘束<ref>[[戦時国際法]]の保護を受ける[[捕虜]]ではない、とのイスラエルの主張による。</ref>した。ハマースのアブジャアファル(仮名)小隊司令官は、殺害されたのは48人と主張した。家屋全壊は4100棟、損壊は17000棟。地上戦突入後は[[救急車]]が現場に向かえず、死者の実数は把握し切れていないという。
 国際連合も、攻撃に巻き込まれた。[[国際連合パレスチナ難民救済事業機関]](UNRWA)によると、イスラエル軍のガザ侵攻で、約15,000人の住民が自宅を失うなど難民化し、国連が設けた23箇所の避難所に収容中と発表した。避難所のうち、国連が運営する学校はイスラエル軍の砲撃で、少なくとも48人が殺害された<ref name="「鋳られた鉛」パレスチナ犠牲者数">前記1,300人に含む</ref>。イスラエル側は、死者に数人のハマース[[戦闘員]]が含まれていると発表したが、UNRWAガザ事務所のジョン・ギング所長は「学校に戦闘員などいなかったし、校内からの攻撃もなかった」と反論した。またイスラエルは誤爆したことを認めたとジョン・ギング所長は語っているが、イスラエル軍は、誤爆を認めておらず、学校に導火線が張り巡らされているのを軍用犬が見つけ、ハマースの攻撃があったと兵士が証言している。<br />
国際連合も、攻撃に巻き込まれた。[[国際連合パレスチナ難民救済事業機関]](UNRWA)によると、イスラエル軍のガザ侵攻で、約15,000人の住民が自宅を失うなど難民化し、国連が設けた23箇所の避難所に収容中と発表した。避難所のうち、国連が運営する学校はイスラエル軍の砲撃で、少なくとも48人が殺害された<ref name="「鋳られた鉛」パレスチナ犠牲者数">前記1,300人に含む</ref>。イスラエル側は、死者に数人のハマース[[戦闘員]]が含まれていると発表したが、UNRWAガザ事務所のジョン・ギング所長は「学校に戦闘員などいなかったし、校内からの攻撃もなかった」と反論した。またイスラエルは誤爆したことを認めたとジョン・ギング所長は語っているが、イスラエル軍は、誤爆を認めておらず、学校に導火線が張り巡らされているのを軍用犬が見つけ、ハマースの攻撃があったと兵士が証言している。<br />
[[1月8日]]には、UNRWAの輸送トラックがイスラエル軍に砲撃され、1人が殺害された<ref name="「鋳られた鉛」パレスチナ犠牲者数">前記1,300人に含む</ref>。UNRWAは、イスラエル軍が職員の安全を保証するまで活動を停止すると発表<ref>AFP通信 [http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2556033/3664630 国連車両をイスラエル軍が攻撃、ガザ援助活動停止 2009年01月09日 11:54 発信地:エルサレム/イスラエル]</ref>したが、[[1月9日]]にイスラエル政府から安全確保の保証が得られたとして活動を再開した。[[1月14日]]、UNRWA本部が空襲を受け、支援物資の食糧・医薬品などが焼き払われた<ref>BBC [http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/7830501.stm UN building on fire in Gaza]</ref>。また、3人が負傷した。
[[1月8日]]には、UNRWAの輸送トラックがイスラエル軍に砲撃され、1人が殺害された<ref name="「鋳られた鉛」パレスチナ犠牲者数">前記1,300人に含む</ref>。UNRWAは、イスラエル軍が職員の安全を保証するまで活動を停止すると発表<ref>AFP通信 [http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2556033/3664630 国連車両をイスラエル軍が攻撃、ガザ援助活動停止 2009年01月09日 11:54 発信地:エルサレム/イスラエル]</ref>したが、[[1月9日]]にイスラエル政府から安全確保の保証が得られたとして活動を再開した。[[1月14日]]、UNRWA本部が空襲を受け、支援物資の食糧・医薬品などが焼き払われた<ref>BBC [http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/7830501.stm UN building on fire in Gaza]</ref>。また、3人が負傷した。


[[1月9日]]、国連人道問題調整事務所(OCHA)は、パレスチナ自治区ガザ地区のガザ市近郊のザイトゥン地区で5日、イスラエル軍が約110人のパレスチナ人市民を1軒の住宅に集めた上でそこに戦車で複数回砲撃を行い、子供を含む約30人が死亡したと発表した<ref>[https://web.archive.org/web/20090118034708/http://mainichi.jp/select/world/news/20090110k0000m030062000c.html イスラエル軍:住民を住宅に集め砲撃…30人死亡 ガザ] 毎日新聞 2009年1月9日</ref>。
[[1月9日]]、国連人道問題調整事務所(OCHA)は、パレスチナ自治区ガザ地区のガザ市近郊のザイトゥン地区で5日、イスラエル軍が約110人のパレスチナ人市民を1軒の住宅に集めた上でそこに戦車で複数回砲撃を行い、子供を含む約30人が死亡したと発表した<ref>[https://web.archive.org/web/20090118034708/http://mainichi.jp/select/world/news/20090110k0000m030062000c.html イスラエル軍:住民を住宅に集め砲撃…30人死亡 ガザ] 毎日新聞 2009年1月9日</ref>。


イスラエルのニシム・ベンシトリット駐日大使は[[2008年]]12月28日、「われわれは国民を守るために、ハマースの施設への攻撃実施を決めた。(ハマースが)何らかの対応をとった場合は、われわれも考え直すだろう。しかし、彼らが攻撃を続けるなら、われわれも攻撃を続ける」と主張した。
イスラエルのニシム・ベンシトリット駐日大使は[[2008年]]12月28日、「われわれは国民を守るために、ハマースの施設への攻撃実施を決めた。(ハマースが)何らかの対応をとった場合は、われわれも考え直すだろう。しかし、彼らが攻撃を続けるなら、われわれも攻撃を続ける」と主張した。
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[[1月7日]]、人道物資輸送のため、イスラエル軍は隔日で3時間の攻撃停止を行なった。これによりガザの住民はごく短時間ではあったが、安堵する時間が与えられた。しかし困難な状況は変わっていない。
[[1月7日]]、人道物資輸送のため、イスラエル軍は隔日で3時間の攻撃停止を行なった。これによりガザの住民はごく短時間ではあったが、安堵する時間が与えられた。しかし困難な状況は変わっていない。


[[1月8日]]のイスラエル軍によるUNRWAへの攻撃は、攻撃停止されているはずの時間帯であった。同日、国連安保理は英国提出による双方に「即時かつ永続的停戦を求める」決議を採択した。米国は拒否権発動を見送り、棄権した。しかし、当事者は停戦決議を無視した。また、米国の上下院は相次いでイスラエル全面支持の決議を行った。[[1月13日]]、ガザ市で地上戦に突入した。[[1月14日]]、[[ボリビア]]と[[ベネズエラ]]はイスラエルと断交した。イスラエル、ハマース双方は実質的にエジプトを介して停戦交渉中である。しかし、イスラエルは一切の譲歩を避けるため、一方的に停戦を宣言した<ref>AFP通信 [http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2559153/3692135 イスラエル、ガザ地区での戦闘で一方的停戦の構え * 2009年01月17日 09:25 発信地:ガザ市/パレスチナ自治区]</ref>。ハマースはこれを拒否し、その後も衝突は続いたが、[[1月18日]]にハマース側が1週間の停戦を表明したことで、一応の終結を見た。[[1月21日]]にイスラエル国防軍は、ガザ地区から撤退した。これは、[[1月20日]]の[[バラク・オバマ]]のアメリカ大統領就任に配慮したものといわれている。オバマは「イスラエルの自衛権」に理解を示す声明を出し、引き続き米国はイスラエル支持を鮮明にした。一方、ジョージ・ミッチェル元上院議員を中東問題特使に任命したが、米国最大のユダヤ人団体[[名誉毀損防止同盟]]の[[エイブラハム・フォックスマン]][[委員長]]は、「ミッチェル氏は中立だ」「だから心配だ」と不満を口にした<ref>『The Jewish Week(週刊ユダヤ人)』 [http://www.thejewishweek.com/viewArticle/c37_a14675/News/National.html 01/21/2009 Mitchell As Envoy Could Split Center]、英語</ref>。
[[1月8日]]のイスラエル軍によるUNRWAへの攻撃は、攻撃停止されているはずの時間帯であった。同日、国連安保理は英国提出による双方に「即時かつ永続的停戦を求める」決議を採択した。米国は拒否権発動を見送り、棄権した。しかし、当事者は停戦決議を無視した。また、米国の上下院は相次いでイスラエル全面支持の決議を行った。[[1月13日]]、ガザ市で地上戦に突入した。[[1月14日]]、[[ボリビア]]と[[ベネズエラ]]はイスラエルと断交した。イスラエル、ハマース双方は実質的にエジプトを介して停戦交渉中である。しかし、イスラエルは一切の譲歩を避けるため、一方的に停戦を宣言した<ref>AFP通信 [http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2559153/3692135 イスラエル、ガザ地区での戦闘で一方的停戦の構え * 2009年01月17日 09:25 発信地:ガザ市/パレスチナ自治区]</ref>。ハマースはこれを拒否し、その後も衝突は続いたが、[[1月18日]]にハマース側が1週間の停戦を表明したことで、一応の終結を見た。[[1月21日]]にイスラエル国防軍は、ガザ地区から撤退した。これは、[[1月20日]]の[[バラク・オバマ]]のアメリカ大統領就任に配慮したものといわれている。オバマは「イスラエルの自衛権」に理解を示す声明を出し、引き続き米国はイスラエル支持を鮮明にした。一方、ジョージ・ミッチェル元上院議員を中東問題特使に任命したが、米国最大のユダヤ人団体[[名誉毀損防止同盟]]の[[エイブラハム・フォックスマン]][[委員長]]は、「ミッチェル氏は中立だ」「だから心配だ」と不満を口にした<ref>『The Jewish Week(週刊ユダヤ人)』 [http://www.thejewishweek.com/viewArticle/c37_a14675/News/National.html 01/21/2009 Mitchell As Envoy Could Split Center]、英語</ref>。


[[File:Daily Life in Southern Israel under rocket fire.wmv.ogv|イスラエル南部でロケット弾攻撃のビデオ, 2009年3月|thumb|right|150px]]
[[File:Daily Life in Southern Israel under rocket fire.wmv.ogv|イスラエル南部でロケット弾攻撃のビデオ, 2009年3月|thumb|right|150px]]
イスラエルはガザ地区の封鎖を継続しており、ハマースはもとより、他の住民も密輸トンネルの再建で対抗しようとしている。これは民生品が長期の包囲で不足しているためである。ハマースは1年の、イスラエルは1年半の停戦案を提示したが、進展は見られない。
イスラエルはガザ地区の封鎖を継続しており、ハマースはもとより、他の住民も密輸トンネルの再建で対抗しようとしている。これは民生品が長期の包囲で不足しているためである。ハマースは1年の、イスラエルは1年半の停戦案を提示したが、進展は見られない。


双方による報道管制も行われている。特に、イスラエルは報道関係者のガザ地区への立ち入りを一切禁じ<ref>共同通信 2008年12月29日 [http://www.47news.jp/news/photonews/2008/12/post_1946.php イスラエルが情報統制 記者の立ち入り禁止]</ref>、[[アルジャジーラ]]など従来よりガザ地区に記者が駐在しているマスコミ以外は、直接取材は不可能に近い状況になっている。1月3日の地上侵攻作戦では、規制解除前に報じたイランの記者を逮捕した<ref>『[[産経新聞|産經新聞]]』(共同通信配信) [http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/090106/mds0901062317013-n1.htm 【ガザ侵攻】事前報道でイランTV記者ら逮捕 2009.1.6 23:16 ]</ref>。[[1月9日]]には米3大ネットワーク([[アメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー|ABC]]、[[CBS]]、[[NBC]])や[[CNN]]、欧州の主要メディアなどが連名で、現地取材を認めるよう声明を出した。イスラエル最高裁は、外国メディアの現地取材を認める判決を出したが、イスラエル国防軍側はまだ認めていない<ref>『産經新聞』 [http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/090112/mds0901121931003-n2.htm 【ガザ侵攻】新しい戦場・インターネット 宣伝戦も熾烈 (2/2ページ) 2009.1.12 19:28]</ref>。<br />
双方による報道管制も行われている。特に、イスラエルは報道関係者のガザ地区への立ち入りを一切禁じ<ref>共同通信 2008年12月29日 [http://www.47news.jp/news/photonews/2008/12/post_1946.php イスラエルが情報統制 記者の立ち入り禁止]</ref>、[[アルジャジーラ]]など従来よりガザ地区に記者が駐在しているマスコミ以外は、直接取材は不可能に近い状況になっている。1月3日の地上侵攻作戦では、規制解除前に報じたイランの記者を逮捕した<ref>『[[産経新聞|産經新聞]]』(共同通信配信) [http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/090106/mds0901062317013-n1.htm 【ガザ侵攻】事前報道でイランTV記者ら逮捕 2009.1.6 23:16]</ref>。[[1月9日]]には米3大ネットワーク([[アメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー|ABC]]、[[CBS]]、[[NBC]])や[[CNN]]、欧州の主要メディアなどが連名で、現地取材を認めるよう声明を出した。イスラエル最高裁は、外国メディアの現地取材を認める判決を出したが、イスラエル国防軍側はまだ認めていない<ref>『産經新聞』 [http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/090112/mds0901121931003-n2.htm 【ガザ侵攻】新しい戦場・インターネット 宣伝戦も熾烈 (2/2ページ) 2009.1.12 19:28]</ref>。<br />


===2010 - 2017:パレスチナ側の手詰まりと米トランプ政権発足===
===2010 - 2017:パレスチナ側の手詰まりと米トランプ政権発足===
アメリカ合衆国仲介の和平交渉が暗礁に乗り上げ、2010年12月には南アメリカ諸国においてパレスチナの国家承認の動きが起こった<ref>{{cite web|url=http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-12-31/2010123105_01_1.html|title=南米 連携/パレスチナ国家 相次ぎ承認|work=[[しんぶん赤旗]]|publisher=[[日本共産党]]|date=2010-12-31|accessdate=2011-09-30}}</ref>。
アメリカ合衆国仲介の和平交渉が暗礁に乗り上げ、2010年12月には南アメリカ諸国においてパレスチナの国家承認の動きが起こった<ref>{{cite web|url=http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-12-31/2010123105_01_1.html|title=南米 連携/パレスチナ国家 相次ぎ承認|work=[[しんぶん赤旗]]|publisher=[[日本共産党]]|date=2010-12-31|accessdate=2011-09-30}}</ref>。


2011年5月15日、ヨルダン川西岸、ガザ地区、レバノンのイスラエル国境付近、シリアのゴラン高原などで、イスラエルの占領に抗議する集会・デモが行われ、国境を越えた参加者をイスラエル軍が砲撃・発砲し、合計で12人が死亡した<ref>http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-05-17/2011051707_01_1.html 2011年5月17日(火)「しんぶん赤旗」 占領から63年「大災厄」の日 イスラエル軍 抗議行動に発砲 界のパレスチナ難民ら12人死亡</ref>。
2011年5月15日、ヨルダン川西岸、ガザ地区、レバノンのイスラエル国境付近、シリアのゴラン高原などで、イスラエルの占領に抗議する集会・デモが行われ、国境を越えた参加者をイスラエル軍が砲撃・発砲し、合計で12人が死亡した<ref>http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-05-17/2011051707_01_1.html 2011年5月17日(火)「しんぶん赤旗」 占領から63年「大災厄」の日 イスラエル軍 抗議行動に発砲 界のパレスチナ難民ら12人死亡</ref>。


9月9日から10日には[[エジプト革命 (2011年)|エジプト革命]]で政権が崩壊したエジプトで今度はイスラエル大使館がデモ隊に襲撃される騒ぎがあった<ref>{{cite web|url=http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23130120110911|title=エジプトのイスラエル大使館襲撃、双方が関係悪化回避の姿勢|publisher=[[ロイター]]|date=2011-09-11|accessdate=2011-09-30}}</ref>。
9月9日から10日には[[エジプト革命 (2011年)|エジプト革命]]で政権が崩壊したエジプトで今度はイスラエル大使館がデモ隊に襲撃される騒ぎがあった<ref>{{cite web|url=http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23130120110911|title=エジプトのイスラエル大使館襲撃、双方が関係悪化回避の姿勢|publisher=[[ロイター]]|date=2011-09-11|accessdate=2011-09-30}}</ref>。


9月23日にはパレスチナが史上初めて国際連合への加盟申請を行ったが、国際連合安全保障理事会においてアメリカが拒否権を行使するとみられている<ref>{{Cite news
9月23日にはパレスチナが史上初めて国際連合への加盟申請を行ったが、国際連合安全保障理事会においてアメリカが拒否権を行使するとみられている<ref>{{Cite news
|url = http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110924-OYT1T00095.htm
|url = http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110924-OYT1T00095.htm
|title = パレスチナ、国連加盟を申請…米は拒否権行使へ
|title = パレスチナ、国連加盟を申請…米は拒否権行使へ
|work = YOMIURI ONLINE
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|newspaper = [[読売新聞]]
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|date = 2011-09-24
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|archivedate = 2011年9月24日
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|deadurldate = 2017年9月
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}}</ref>。加盟申請後、アッバース議長は「[[アラブの春]]」になぞらえ「パレスチナの春」として独立を求めると声明を発表した<ref>{{cite web|url=http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-09-25/2011092501_03_1.html|title=パレスチナ 国連加盟申請|work=[[しんぶん赤旗]]|publisher=[[日本共産党]]|date=2011-09-25|accessdate=2011-09-25}}</ref>。2011年10月31日には[[国際連合教育科学文化機関]](UNESCO)の加盟国として承認された<ref>{{Cite news
}}</ref>。加盟申請後、アッバース議長は「[[アラブの春]]」になぞらえ「パレスチナの春」として独立を求めると声明を発表した<ref>{{cite web|url=http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-09-25/2011092501_03_1.html|title=パレスチナ 国連加盟申請|work=[[しんぶん赤旗]]|publisher=[[日本共産党]]|date=2011-09-25|accessdate=2011-09-25}}</ref>。2011年10月31日には[[国際連合教育科学文化機関]](UNESCO)の加盟国として承認された<ref>{{Cite news
|url = http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20111031-OYT1T01157.htm
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|title = パレスチナ、ユネスコ加盟…米は「時期尚早」
|title = パレスチナ、ユネスコ加盟…米は「時期尚早」
|work = YOMIURI ONLINE
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|newspaper = [[読売新聞]]
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2012年11月29日、国際連合総会において参加資格をオブザーバー組織からオブザーバー国家に格上げする決議案が賛成多数で承認された<ref>{{Cite news
2012年11月29日、国際連合総会において参加資格をオブザーバー組織からオブザーバー国家に格上げする決議案が賛成多数で承認された<ref>{{Cite news
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|title=パレスチナ 「国家」格上げ決議採択 国連総会
|title=パレスチナ 「国家」格上げ決議採択 国連総会
|work=TOKYO Web
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|newspaper=[[東京新聞]]
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11月30日、イスラエルは占領地の東エルサレムとヨルダン川西岸の入植地に計約3000棟の入植者住宅の建設を決定した。国連で、パレスチナをオブザーバー国家として承認されたことに対する報復としている。また、西岸の大規模入植地マーレアドミムと東エルサレムの間の「E1地区」などの建設計画手続き開始も盛り込まれた。「E1地区」は東エルサレムをヨルダン川西岸から完全に切り離し、またヨルダン川西岸の南北も事実上分断することになるため、「パレスチナ国家の樹立を困難にする」として米国が反対し、計画推進が見送られてきた経緯があった<ref>{{Cite news
11月30日、イスラエルは占領地の東エルサレムとヨルダン川西岸の入植地に計約3000棟の入植者住宅の建設を決定した。国連で、パレスチナをオブザーバー国家として承認されたことに対する報復としている。また、西岸の大規模入植地マーレアドミムと東エルサレムの間の「E1地区」などの建設計画手続き開始も盛り込まれた。「E1地区」は東エルサレムをヨルダン川西岸から完全に切り離し、またヨルダン川西岸の南北も事実上分断することになるため、「パレスチナ国家の樹立を困難にする」として米国が反対し、計画推進が見送られてきた経緯があった<ref>{{Cite news
|url=https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0102O_R01C12A2FF8000/
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|title=イスラエルが入植決定 パレスチナ「国家」に報復
|title=イスラエルが入植決定 パレスチナ「国家」に報復
|newspaper=共同通信社/日本経済新聞
|newspaper=共同通信社/日本経済新聞
|date=2012-12-01
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{{See also|ガザ侵攻 (2014年)}}
{{See also|ガザ侵攻 (2014年)}}


2014年の1年間では、パレスチナ側は2285人、イスラエル側は84人が紛争で殺害された<ref>[https://israelpalestinetimeline.org/2014deaths/ PHOTOS: Israelis and Palestinians killed in 2014] - Israel-Palestine Timeline The Human Cost of the Conflict{{en icon}}</ref>。
2014年の1年間では、パレスチナ側は2285人、イスラエル側は84人が紛争で殺害された<ref>[https://israelpalestinetimeline.org/2014deaths/ PHOTOS: Israelis and Palestinians killed in 2014] - Israel-Palestine Timeline The Human Cost of the Conflict{{en icon}}</ref>。


2015年4月1日、パレスチナは[[国際刑事裁判所]]にオブザーバーとして加盟した。2014年のガザ侵攻などで、イスラエルを追及する方針である。イスラエルのネタニヤフ首相は繰り返し「加盟は容認できない」と批判。イスラエルは、同国が代行して徴収した税金をパレスチナ側に支払わずに凍結するなど、パレスチナ側への牽制を強めてきた<ref>{{cite news2|url=https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM01H6K_R00C15A4FF2000/|title=パレスチナ、国際刑事裁判所に正式加盟 イスラエル反発|newspaper=[[日本経済新聞]]|date=2015-04-01|accessdate=2020-09-18}}</ref>。
2015年4月1日、パレスチナは[[国際刑事裁判所]]にオブザーバーとして加盟した。2014年のガザ侵攻などで、イスラエルを追及する方針である。イスラエルのネタニヤフ首相は繰り返し「加盟は容認できない」と批判。イスラエルは、同国が代行して徴収した税金をパレスチナ側に支払わずに凍結するなど、パレスチナ側への牽制を強めてきた<ref>{{cite news2|url=https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM01H6K_R00C15A4FF2000/|title=パレスチナ、国際刑事裁判所に正式加盟 イスラエル反発|newspaper=[[日本経済新聞]]|date=2015-04-01|accessdate=2020-09-18}}</ref>。


6月30日、過激派組織「[[ISIL|イスラム国]]」は、「ユダヤ人国家(イスラエル)」、ファタハ、ハマースに「宣戦布告」した<ref>{{cite news2|url=https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM01H6K_R00C15A4FF2000/|title=
6月30日、過激派組織「[[ISIL|イスラム国]]」は、「ユダヤ人国家(イスラエル)」、ファタハ、ハマースに「宣戦布告」した<ref>{{cite news2|url=https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM01H6K_R00C15A4FF2000/|title=
Islamic State sends warning to Hamas and Fatah|newspaper=[[:en:The Times of Israel]]|date=2015-06-30|accessdate=2020-09-18}} {{en icon}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.jiji.com/jc/d4?p=ilc808-jpp019505593&d=d4_ll|title=過激派組織「イスラム国」 写真特集|newspaper=時事通信社|date=2015-06-30|accessdate=2020-09-18}}</ref>。
Islamic State sends warning to Hamas and Fatah|newspaper=[[:en:The Times of Israel]]|date=2015-06-30|accessdate=2020-09-18}} {{en icon}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.jiji.com/jc/d4?p=ilc808-jpp019505593&d=d4_ll|title=過激派組織「イスラム国」 写真特集|newspaper=時事通信社|date=2015-06-30|accessdate=2020-09-18}}</ref>。


2015年の1年間では、パレスチナ側は192人、イスラエル側は25人が紛争で殺害された<ref>[https://israelpalestinetimeline.org/2015deaths/ PHOTOS: Israelis and Palestinians killed in 2015] - Israel-Palestine Timeline The Human Cost of the Conflict{{en icon}}</ref>。
2015年の1年間では、パレスチナ側は192人、イスラエル側は25人が紛争で殺害された<ref>[https://israelpalestinetimeline.org/2015deaths/ PHOTOS: Israelis and Palestinians killed in 2015] - Israel-Palestine Timeline The Human Cost of the Conflict{{en icon}}</ref>。


2016年12月23日、[[国際連合|国連]][[国際連合安全保障理事会|安保理]]でイスラエルのパレスチナ占領地への入植活動を「法的な正当性がなく国際法に違反する」とし「東エルサレムを含む占領地でのすべての入植活動を迅速かつ完全に中止するよう求める」決議が採択され、賛成14票、反対1票で可決された。同様の決議に対ししばしば拒否権を行使していた[[アメリカ合衆国|アメリカ]]は今回は棄権した<ref>[http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM24H0W_U6A221C1NNE000/] - 2016年12月27日閲覧。</ref>。しかし、同年の[[2016年アメリカ合衆国大統領選挙|アメリカ大統領選挙]]で当選を決めた[[ドナルド・トランプ]]([[2017年]][[1月20日]]就任)は、選挙中から親イスラエルを公約しており<ref>{{cite news2|url=http://www.jpost.com/Jerusalem-Report/Donald-Trump-Israel-and-the-Jews-438335|title=Analysis: Donald Trump, Israel and the Jews|newspaper=[[エルサレム・ポスト]]|date=2015-12-28|accessdate=2020-02-17}} {{en icon}}</ref><ref>{{cite news2|url=http://jp.reuters.com/article/usa-election-trump-israel-idJPKCN0WO02R|title=トランプ氏、イスラエルとの強固な同盟を公約 米大統領選に向け|newspaper=[[ロイター]]|date=2016-03-22|accessdate=2020-02-17}}</ref>、トランプ政権は、従来のアメリカ以上に親イスラエル政策を実行に移した。
2016年12月23日、[[国際連合|国連]][[国際連合安全保障理事会|安保理]]でイスラエルのパレスチナ占領地への入植活動を「法的な正当性がなく国際法に違反する」とし「東エルサレムを含む占領地でのすべての入植活動を迅速かつ完全に中止するよう求める」決議が採択され、賛成14票、反対1票で可決された。同様の決議に対ししばしば拒否権を行使していた[[アメリカ合衆国|アメリカ]]は今回は棄権した<ref>[http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM24H0W_U6A221C1NNE000/] - 2016年12月27日閲覧。</ref>。しかし、同年の[[2016年アメリカ合衆国大統領選挙|アメリカ大統領選挙]]で当選を決めた[[ドナルド・トランプ]]([[2017年]][[1月20日]]就任)は、選挙中から親イスラエルを公約しており<ref>{{cite news2|url=http://www.jpost.com/Jerusalem-Report/Donald-Trump-Israel-and-the-Jews-438335|title=Analysis: Donald Trump, Israel and the Jews|newspaper=[[エルサレム・ポスト]]|date=2015-12-28|accessdate=2020-02-17}} {{en icon}}</ref><ref>{{cite news2|url=http://jp.reuters.com/article/usa-election-trump-israel-idJPKCN0WO02R|title=トランプ氏、イスラエルとの強固な同盟を公約 米大統領選に向け|newspaper=[[ロイター]]|date=2016-03-22|accessdate=2020-02-17}}</ref>、トランプ政権は、従来のアメリカ以上に親イスラエル政策を実行に移した。


2016年の1年間では、パレスチナ側は115人(うち、子供36人)、イスラエル側は12人(うち、子供1人)が紛争で殺害された<ref>[https://israelpalestinetimeline.org/2016deaths/ PHOTOS: Israelis and Palestinians killed in 2016] - Israel-Palestine Timeline The Human Cost of the Conflict{{en icon}}</ref>。
2016年の1年間では、パレスチナ側は115人(うち、子供36人)、イスラエル側は12人(うち、子供1人)が紛争で殺害された<ref>[https://israelpalestinetimeline.org/2016deaths/ PHOTOS: Israelis and Palestinians killed in 2016] - Israel-Palestine Timeline The Human Cost of the Conflict{{en icon}}</ref>。


2017年5月1日、ハマースは「ユダヤ人殲滅」を掲げる「ハマース憲章」を事実上修正し、安保理決議242および「アラブ平和イニシアティブ」の枠内でのパレスチナ国家建国を認める新指針を明らかにした。ただし、イスラエルの国家承認は否定した。ハマース代弁者のファウジ・バルフムは、「世界への我々のメッセージは、ハマスは過激でなく、現実的で開明的な運動だということ。我々はユダヤ人を憎んでいない。我々が闘っているのは我々の土地を占領し、我々の人民を殺す者たちだ」と述べた。一方、イスラエルのデイビッド・キーズ報道官は、ハマースが「世界をだまそうとしているが成功しない」「彼らはテロ目的のトンネルを掘り、数多くのミサイルをイスラエル市民に向けて打ち込んでいる。これが本当のハマスだ」と批判した<ref>{{cite news2|url=https://www.bbc.com/japanese/39775880|title=ハマスが「国境」新指針 対外関係改善狙いか|newspaper=BBC|date=2017-05-02|accessdate=2020-09-16}}</ref>。
2017年5月1日、ハマースは「ユダヤ人殲滅」を掲げる「ハマース憲章」を事実上修正し、安保理決議242および「アラブ平和イニシアティブ」の枠内でのパレスチナ国家建国を認める新指針を明らかにした。ただし、イスラエルの国家承認は否定した。ハマース代弁者のファウジ・バルフムは、「世界への我々のメッセージは、ハマスは過激でなく、現実的で開明的な運動だということ。我々はユダヤ人を憎んでいない。我々が闘っているのは我々の土地を占領し、我々の人民を殺す者たちだ」と述べた。一方、イスラエルのデイビッド・キーズ報道官は、ハマースが「世界をだまそうとしているが成功しない」「彼らはテロ目的のトンネルを掘り、数多くのミサイルをイスラエル市民に向けて打ち込んでいる。これが本当のハマスだ」と批判した<ref>{{cite news2|url=https://www.bbc.com/japanese/39775880|title=ハマスが「国境」新指針 対外関係改善狙いか|newspaper=BBC|date=2017-05-02|accessdate=2020-09-16}}</ref>。


12月6日、[[エルサレムをイスラエルの首都とするアメリカ合衆国の承認|アメリカはエルサレムをイスラエルの首都であると承認]]した。国連安保理でのアメリカ非難決議は、アメリカの拒否権で否決された<ref>{{cite news2|url=https://www.cnn.co.jp/world/35112155.html|title=エルサレム首都宣言批判の決議案、米が拒否権 安保理|newspaper=CNN|date=2017-12-19|accessdate=2020-09-16}}</ref>。パレスチナはアメリカの拒否権発動を受けて、国連総会開催を呼びかけた。<br />
12月6日、[[エルサレムをイスラエルの首都とするアメリカ合衆国の承認|アメリカはエルサレムをイスラエルの首都であると承認]]した。国連安保理でのアメリカ非難決議は、アメリカの拒否権で否決された<ref>{{cite news2|url=https://www.cnn.co.jp/world/35112155.html|title=エルサレム首都宣言批判の決議案、米が拒否権 安保理|newspaper=CNN|date=2017-12-19|accessdate=2020-09-16}}</ref>。パレスチナはアメリカの拒否権発動を受けて、国連総会開催を呼びかけた。<br />
アラブ連盟は非難決議を出したが、具体的な制裁などは決議されなかった。
アラブ連盟は非難決議を出したが、具体的な制裁などは決議されなかった。


12月21日、国連総会の緊急特別会合は、エルサレムに外交使節(暗に大使館)を設置しないよう求める決議を、賛成128、反対9(イスラエル、アメリカ、[[グアテマラ]]、[[ホンジュラス]]、[[マーシャル諸島]]、[[ミクロネシア連邦]]、[[ナウル]]、[[パラオ]]、[[トーゴ]])、棄権35、欠席21で可決した。ただし、法的拘束力は無い。イスラエルのネタニヤフ首相は、国連を「うそ議会」と呼び、投票結果を拒否すると非難した。パレスチナの報道官は「パレスチナの勝利」と歓迎した<ref>[https://www.un.org/press/en/2017/ga11995.doc.htm General Assembly Overwhelmingly Adopts Resolution Asking Nations Not to Locate Diplomatic Missions in Jerusalem] - 国際連合{{en icon}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.cnn.co.jp/world/35112155.html|title=エルサレム首都宣言批判の決議案、米が拒否権 安保理|newspaper=CNN|date=2017-12-19|accessdate=2020-09-16}}</ref>。米トランプ政権は、「賛成国への経済援助を打ち切る」と圧力を掛け、日本にも水面下で反対か、少なくとも棄権するよう求める打診があった。日本は、米国を除く五大国全てが賛成に回る見込みであること、反対すれば従来の「2国家解決」支持と矛盾する恐れがあること、決議案がアメリカの名指しを避けたことなどを理由に賛成に回った<ref>{{cite news2|url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24960730S7A221C1000000/|title=賛成の日本、米の要請断る エルサレム非難決議|newspaper=日本経済新聞|date=2017-12-22|accessdate=2020-09-18}}</ref>。
12月21日、国連総会の緊急特別会合は、エルサレムに外交使節(暗に大使館)を設置しないよう求める決議を、賛成128、反対9(イスラエル、アメリカ、[[グアテマラ]]、[[ホンジュラス]]、[[マーシャル諸島]]、[[ミクロネシア連邦]]、[[ナウル]]、[[パラオ]]、[[トーゴ]])、棄権35、欠席21で可決した。ただし、法的拘束力は無い。イスラエルのネタニヤフ首相は、国連を「うそ議会」と呼び、投票結果を拒否すると非難した。パレスチナの報道官は「パレスチナの勝利」と歓迎した<ref>[https://www.un.org/press/en/2017/ga11995.doc.htm General Assembly Overwhelmingly Adopts Resolution Asking Nations Not to Locate Diplomatic Missions in Jerusalem] - 国際連合{{en icon}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.cnn.co.jp/world/35112155.html|title=エルサレム首都宣言批判の決議案、米が拒否権 安保理|newspaper=CNN|date=2017-12-19|accessdate=2020-09-16}}</ref>。米トランプ政権は、「賛成国への経済援助を打ち切る」と圧力を掛け、日本にも水面下で反対か、少なくとも棄権するよう求める打診があった。日本は、米国を除く五大国全てが賛成に回る見込みであること、反対すれば従来の「2国家解決」支持と矛盾する恐れがあること、決議案がアメリカの名指しを避けたことなどを理由に賛成に回った<ref>{{cite news2|url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24960730S7A221C1000000/|title=賛成の日本、米の要請断る エルサレム非難決議|newspaper=日本経済新聞|date=2017-12-22|accessdate=2020-09-18}}</ref>。


2017年の1年間では、パレスチナ側は96人(うち、子供20人)、イスラエル側は17人(うち、子供0人)が紛争で殺害された<ref>[https://israelpalestinetimeline.org/2017deaths/ PHOTOS: Israelis and Palestinians killed in 2017] - Israel-Palestine Timeline The Human Cost of the Conflict{{en icon}}</ref>。
2017年の1年間では、パレスチナ側は96人(うち、子供20人)、イスラエル側は17人(うち、子供0人)が紛争で殺害された<ref>[https://israelpalestinetimeline.org/2017deaths/ PHOTOS: Israelis and Palestinians killed in 2017] - Israel-Palestine Timeline The Human Cost of the Conflict{{en icon}}</ref>。


===2018 - :現在――「繁栄に至る平和」と「アブラハム合意」===
===2018 - :現在――「繁栄に至る平和」と「アブラハム合意」===
[[2018年]][[1月3日]]、アメリカのトランプ大統領はTwitterで「(和平)協議の一番難しい部分のエルサレムを議題から外した。だが、パレスチナ人には和平を協議する意志がない。今後、膨大な支援額を支払う理由などあるだろうか」と、パレスチナに対する報復を示唆した<ref>[https://twitter.com/realDonaldTrump/status/948322497602220032 ...peace treaty with Israel. We have taken Jerusalem, the toughest part of the negotiation, off the table, but Israel, for that, would have had to pay more. But with the Palestinians no longer willing to talk peace, why should we make any of these massive future payments to them?] - Donald J. Trump Twitter</ref>。
[[2018年]][[1月3日]]、アメリカのトランプ大統領はTwitterで「(和平)協議の一番難しい部分のエルサレムを議題から外した。だが、パレスチナ人には和平を協議する意志がない。今後、膨大な支援額を支払う理由などあるだろうか」と、パレスチナに対する報復を示唆した<ref>[https://twitter.com/realDonaldTrump/status/948322497602220032 ...peace treaty with Israel. We have taken Jerusalem, the toughest part of the negotiation, off the table, but Israel, for that, would have had to pay more. But with the Palestinians no longer willing to talk peace, why should we make any of these massive future payments to them?] - Donald J. Trump Twitter</ref>。


1月16日、アメリカ国務省は、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に対して1月上旬に支払う予定だった拠出金1億2500万ドル(約138億円)のうち6500万ドルを凍結すると発表した。国務省のナウアート報道官は「(凍結は)誰かを罰することを狙ったものではない」「UNRWAの資金が最善の使い方をされているか確認する必要がある」と主張した<ref>{{cite news2|url=https://www.asahi.com/articles/ASL1K2PWVL1KUHBI00N.html|title=パレスチナ支援、米が拠出金を半分凍結 圧力は否定|newspaper=朝日新聞|date=2018-01-17|accessdate=2020-09-17}}</ref>。
1月16日、アメリカ国務省は、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に対して1月上旬に支払う予定だった拠出金1億2500万ドル(約138億円)のうち6500万ドルを凍結すると発表した。国務省のナウアート報道官は「(凍結は)誰かを罰することを狙ったものではない」「UNRWAの資金が最善の使い方をされているか確認する必要がある」と主張した<ref>{{cite news2|url=https://www.asahi.com/articles/ASL1K2PWVL1KUHBI00N.html|title=パレスチナ支援、米が拠出金を半分凍結 圧力は否定|newspaper=朝日新聞|date=2018-01-17|accessdate=2020-09-17}}</ref>。


3月、イスラエルのテレビ局『Channel 10 News』によると、サウジアラビアの[[ムハンマド・ビン・サルマーン]]皇太子はニューヨークのユダヤ人指導者との会合に出席し、パレスチナに対して「(米国の)和平案の受け入れを開始するか、"黙っている "べき」との見解を示した。また、「過去40年間、パレスチナ指導者は何度も何度も機会を逃し、与えられたすべての申し出を拒否してきた」と非難し、パレスチナ問題よりもイラン対策の方が緊急の課題であるとの見解を示した<ref>{{cite news2|url=https://www.timesofisrael.com/palestinians-must-make-peace-or-shut-up-saudi-crown-prince-said-to-tell-us-jews/|title=Palestinians must make peace or shut up, Saudi crown prince said to tell US Jews|newspaper=The Times of Israel|date=2018-04-29|accessdate=2020-09-17}} {{en icon}}</ref>。この発言は、アラブの指導者が、イスラエル寄りに舵を切ったことを示していた<ref>{{cite news2|url=https://www3.nhk.or.jp/news/special/new-middle-east/israel-new-era/|title=イスラエルが描く中東の“未来予想図”|newspaper=日本放送協会|date=2018-05-15|accessdate=2020-09-17}}</ref>。
3月、イスラエルのテレビ局『Channel 10 News』によると、サウジアラビアの[[ムハンマド・ビン・サルマーン]]皇太子はニューヨークのユダヤ人指導者との会合に出席し、パレスチナに対して「(米国の)和平案の受け入れを開始するか、"黙っている "べき」との見解を示した。また、「過去40年間、パレスチナ指導者は何度も何度も機会を逃し、与えられたすべての申し出を拒否してきた」と非難し、パレスチナ問題よりもイラン対策の方が緊急の課題であるとの見解を示した<ref>{{cite news2|url=https://www.timesofisrael.com/palestinians-must-make-peace-or-shut-up-saudi-crown-prince-said-to-tell-us-jews/|title=Palestinians must make peace or shut up, Saudi crown prince said to tell US Jews|newspaper=The Times of Israel|date=2018-04-29|accessdate=2020-09-17}} {{en icon}}</ref>。この発言は、アラブの指導者が、イスラエル寄りに舵を切ったことを示していた<ref>{{cite news2|url=https://www3.nhk.or.jp/news/special/new-middle-east/israel-new-era/|title=イスラエルが描く中東の“未来予想図”|newspaper=日本放送協会|date=2018-05-15|accessdate=2020-09-17}}</ref>。


3月30日、ガザ地区で、パレスチナ難民の帰還を求める大規模なデモが行われた。数万の群衆がイスラエル軍と衝突し、パレスチナ側は少なくとも16人が殺害された。イスラエル軍は、パレスチナ側が先に発砲したと主張した<ref>{{cite news2|url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28845420R30C18A3NNE000/|title=ガザ大規模デモ、死者16人に イスラエル軍と衝突|newspaper=日本経済新聞|date=2018-03-31|accessdate=2020-09-17}}</ref>。
3月30日、ガザ地区で、パレスチナ難民の帰還を求める大規模なデモが行われた。数万の群衆がイスラエル軍と衝突し、パレスチナ側は少なくとも16人が殺害された。イスラエル軍は、パレスチナ側が先に発砲したと主張した<ref>{{cite news2|url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28845420R30C18A3NNE000/|title=ガザ大規模デモ、死者16人に イスラエル軍と衝突|newspaper=日本経済新聞|date=2018-03-31|accessdate=2020-09-17}}</ref>。


5月9日、イスラエル国防軍は「[[ユダヤ・サマリア地区|ユダヤ・サマリア]]<ref name="JudeaSamaria">ヨルダン川西岸で、イスラエルが実効支配する地域を指す。</ref>」に軍律1797を布告した。これは、イスラエル軍が「違法」と判断した新築建造物(未完成または竣工6ヶ月以内または居住30日以内の建造物)を、従来の司法手続きを省略して、96時間以内に異議申立が無ければ一方的に破壊できる内容である。軍律自体は、ユダヤ人入植者も対象となるが、パレスチナ人住民の建築許可が困難な現状で、パレスチナ人を主要な標的にした内容と『ハアレツ』のアミラ・ハス記者は指摘した<ref>[https://www.haaretz.com/opinion/.premium-a-new-tool-for-dispossessing-palestinians-1.6173092?v=1600061150113 Israel's New Tool for Dispossessing Palestinians] - Amira Hass 『[[ハアレツ]]』{{en icon}}</ref>。
5月9日、イスラエル国防軍は「[[ユダヤ・サマリア地区|ユダヤ・サマリア]]<ref name="JudeaSamaria">ヨルダン川西岸で、イスラエルが実効支配する地域を指す。</ref>」に軍律1797を布告した。これは、イスラエル軍が「違法」と判断した新築建造物(未完成または竣工6ヶ月以内または居住30日以内の建造物)を、従来の司法手続きを省略して、96時間以内に異議申立が無ければ一方的に破壊できる内容である。軍律自体は、ユダヤ人入植者も対象となるが、パレスチナ人住民の建築許可が困難な現状で、パレスチナ人を主要な標的にした内容と『ハアレツ』のアミラ・ハス記者は指摘した<ref>[https://www.haaretz.com/opinion/.premium-a-new-tool-for-dispossessing-palestinians-1.6173092?v=1600061150113 Israel's New Tool for Dispossessing Palestinians] - Amira Hass 『[[ハアレツ]]』{{en icon}}</ref>。


5月14日、アメリカは在イスラエル大使館をエルサレムに移転した<ref>{{cite news2|url=https://www.asahi.com/articles/ASL5G0P55L5FUHBI02H.html|title=米大使館、エルサレム移転 米主導の中東和平は絶望的に|newspaper=朝日新聞|date=2018-05-14|accessdate=2020-09-17}}</ref>。ガザ地区ではパレスチナ人による大規模な抗議集会が暴動に発展し、イスラエル軍が発砲した。パレスチナ側によると、5月15日時点で55人が殺害され、約2700人が負傷した<ref>[https://www.bbc.com/japanese/44118585 ガザ地区でイスラエル軍発砲、パレスチナ人55人死亡 米大使館移転抗議で] - BBC</ref>。5月18日までに、パレスチナ側の死者は61人にのぼり(3月30日 - 5月13日の死者を含めると、118人)<ref>{{cite news2|url=https://www.20minutes.fr/monde/2274059-20180519-gaza-deux-palestiniens-succombent-blessures-infligees-lundi-nouveau-bilan-61-morts|title=Gaza: Deux Palestiniens succombent à leurs blessures infligées lundi, nouveau bilan de 61 morts|newspaper=20minutes|date=2018-05-20|accessdate=2020-09-17}} {{en icon}}</ref>、2014年のガザ侵攻以来、1度の衝突では最多の死者となった。<br />
5月14日、アメリカは在イスラエル大使館をエルサレムに移転した<ref>{{cite news2|url=https://www.asahi.com/articles/ASL5G0P55L5FUHBI02H.html|title=米大使館、エルサレム移転 米主導の中東和平は絶望的に|newspaper=朝日新聞|date=2018-05-14|accessdate=2020-09-17}}</ref>。ガザ地区ではパレスチナ人による大規模な抗議集会が暴動に発展し、イスラエル軍が発砲した。パレスチナ側によると、5月15日時点で55人が殺害され、約2700人が負傷した<ref>[https://www.bbc.com/japanese/44118585 ガザ地区でイスラエル軍発砲、パレスチナ人55人死亡 米大使館移転抗議で] - BBC</ref>。5月18日までに、パレスチナ側の死者は61人にのぼり(3月30日 - 5月13日の死者を含めると、118人)<ref>{{cite news2|url=https://www.20minutes.fr/monde/2274059-20180519-gaza-deux-palestiniens-succombent-blessures-infligees-lundi-nouveau-bilan-61-morts|title=Gaza: Deux Palestiniens succombent à leurs blessures infligées lundi, nouveau bilan de 61 morts|newspaper=20minutes|date=2018-05-20|accessdate=2020-09-17}} {{en icon}}</ref>、2014年のガザ侵攻以来、1度の衝突では最多の死者となった。<br />
パレスチナのアッバース大統領は、「本日またしても、我が民に対する虐殺が続く」とイスラエルを非難し、3日間の服喪を発表した。国連の[[ザイド・ラード・アル・フセイン|フセイン]]人権高等弁務官は、「イスラエルの発砲で何十人が死亡し、数百人が負傷したのは、衝撃的だ」と、「甚だしい人権侵害」を非難した。一方、イスラエルのネタニヤフ首相は「テロ組織ハマスは、イスラエル破壊の意図を宣言し、この目的達成のため国境フェンス突破を目指して何千人を送り込んでいる。我々は自分たちの主権と市民を守るため、引き続き断固たる行動をとる」と主張した。米ホワイトハウスのラージ・シャー報道官は、「大勢が悲劇的に死亡した責任のすべては、ハマスにある」とイスラエル支持を表明した。クウェートは、国連安保理での調査を要求したが、米国の反対で採決はできなかった。
パレスチナのアッバース大統領は、「本日またしても、我が民に対する虐殺が続く」とイスラエルを非難し、3日間の服喪を発表した。国連の[[ザイド・ラード・アル・フセイン|フセイン]]人権高等弁務官は、「イスラエルの発砲で何十人が死亡し、数百人が負傷したのは、衝撃的だ」と、「甚だしい人権侵害」を非難した。一方、イスラエルのネタニヤフ首相は「テロ組織ハマスは、イスラエル破壊の意図を宣言し、この目的達成のため国境フェンス突破を目指して何千人を送り込んでいる。我々は自分たちの主権と市民を守るため、引き続き断固たる行動をとる」と主張した。米ホワイトハウスのラージ・シャー報道官は、「大勢が悲劇的に死亡した責任のすべては、ハマスにある」とイスラエル支持を表明した。クウェートは、国連安保理での調査を要求したが、米国の反対で採決はできなかった。


8月24日、アメリカ国務省高官によると、トランプ政権はパレスチナへの約2億ドル(約222億円)の経済支援を撤回し、他の用途に資金を振り向けることを明らかにした<ref>{{cite news2|url=https://www.asahi.com/articles/ASL8T2F47L8TUHBI006.html|title=米、パレスチナへの2億ドル支援を撤回 和平交渉へ圧力|newspaper=朝日新聞|date=2018-08-25|accessdate=2020-09-17}}</ref>。
8月24日、アメリカ国務省高官によると、トランプ政権はパレスチナへの約2億ドル(約222億円)の経済支援を撤回し、他の用途に資金を振り向けることを明らかにした<ref>{{cite news2|url=https://www.asahi.com/articles/ASL8T2F47L8TUHBI006.html|title=米、パレスチナへの2億ドル支援を撤回 和平交渉へ圧力|newspaper=朝日新聞|date=2018-08-25|accessdate=2020-09-17}}</ref>。


8月31日、アメリカのナウアート報道官は、UNRWAへの資金拠出を停止すると発表した。従来、UNRWA予算の1/3~1/4程度を米国が負担していたが、1月に行った拠出額の削減に留まらず、それが全く途絶えることになった。ナウアートはUNRWAの運営に「修復不可能な欠陥」があると指摘し、パレスチナ難民の子供達に対しては「国連機関を通じない直接支援などを検討する」と表明した。<br />
8月31日、アメリカのナウアート報道官は、UNRWAへの資金拠出を停止すると発表した。従来、UNRWA予算の1/3~1/4程度を米国が負担していたが、1月に行った拠出額の削減に留まらず、それが全く途絶えることになった。ナウアートはUNRWAの運営に「修復不可能な欠陥」があると指摘し、パレスチナ難民の子供達に対しては「国連機関を通じない直接支援などを検討する」と表明した。<br />
UNRWAは、パレスチナ難民を、1948年のイスラエル建国当時の難民及びその子孫と定義しており、その数は2017年1月現在で534万人に上る。アメリカはこの中から、子孫を難民から外すように主張していた。子孫を外せば、いずれ難民は全員死亡して居なくなるからである。これはイスラエルの意向を反映したものだが、UNRWAは応じていなかった<ref>{{cite news2|url=https://www.sankei.com/world/news/180901/wor1809010004-n1.html|title=【トランプ政権】米、UNRWA通じたパレスチナ支援停止「修復不能な欠陥ある」|newspaper=産経新聞|date=2018-09-01|accessdate=2020-09-17}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.asahi.com/articles/ASL914SV3L91UHBI01N.html|title=仕事クビ、先生いない 米の拠出金停止、パレスチナ直撃|newspaper=朝日新聞|date=2018-09-04|accessdate=2020-09-17}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_int_palestine20180907j-05-w350|title=【図解・国際】国連パレスチナ難民救済事業機関に登録のパレスチナ難民数(2018年9月)|newspaper=時事通信社|date=2018-09-07|accessdate=2020-09-17}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.sankei.com/world/news/180918/wor1809180001-n1.html|title=【中東見聞録】危うい「トランプ式中東和平」 支援停止で圧力、パレスチナ難民“ゼロ”狙う|newspaper=産経新聞|date=2018-09-18|accessdate=2020-09-17}}</ref>。UNRWAの予算は当面、日本など約40ヶ国の拠出金の増額で凌ぐことになった<ref>{{cite news2|url=https://www.newsweekjapan.jp/kawakami/2018/12/40_2.php|title=トランプ政権がパレスチナ難民支援を停止した時、40カ国が立ち上がった|newspaper=Newsweek日本版|date=2018-12-13|accessdate=2020-09-17}}</ref>。
UNRWAは、パレスチナ難民を、1948年のイスラエル建国当時の難民及びその子孫と定義しており、その数は2017年1月現在で534万人に上る。アメリカはこの中から、子孫を難民から外すように主張していた。子孫を外せば、いずれ難民は全員死亡して居なくなるからである。これはイスラエルの意向を反映したものだが、UNRWAは応じていなかった<ref>{{cite news2|url=https://www.sankei.com/world/news/180901/wor1809010004-n1.html|title=【トランプ政権】米、UNRWA通じたパレスチナ支援停止「修復不能な欠陥ある」|newspaper=産経新聞|date=2018-09-01|accessdate=2020-09-17}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.asahi.com/articles/ASL914SV3L91UHBI01N.html|title=仕事クビ、先生いない 米の拠出金停止、パレスチナ直撃|newspaper=朝日新聞|date=2018-09-04|accessdate=2020-09-17}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_int_palestine20180907j-05-w350|title=【図解・国際】国連パレスチナ難民救済事業機関に登録のパレスチナ難民数(2018年9月)|newspaper=時事通信社|date=2018-09-07|accessdate=2020-09-17}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.sankei.com/world/news/180918/wor1809180001-n1.html|title=【中東見聞録】危うい「トランプ式中東和平」 支援停止で圧力、パレスチナ難民“ゼロ”狙う|newspaper=産経新聞|date=2018-09-18|accessdate=2020-09-17}}</ref>。UNRWAの予算は当面、日本など約40ヶ国の拠出金の増額で凌ぐことになった<ref>{{cite news2|url=https://www.newsweekjapan.jp/kawakami/2018/12/40_2.php|title=トランプ政権がパレスチナ難民支援を停止した時、40カ国が立ち上がった|newspaper=Newsweek日本版|date=2018-12-13|accessdate=2020-09-17}}</ref>。


9月11日、アメリカ国務省は在パレスチナ[[政府代表部|総代表部]]の閉鎖を発表した。[[ジョン・ボルトン]]大統領補佐官は、9月10日の講演で「米国は常に、友人で同盟国のイスラエルの側に立つ」「パレスチナがイスラエルとの意味ある直接交渉への一歩を拒否し続ける限り、総代表部を開くことはない」と主張していた<ref>{{cite news2|url=https://mainichi.jp/articles/20180911/k00/00m/030/142000c|title=米国 パレスチナ代表部を閉鎖 和平交渉巡り圧力か|newspaper=毎日新聞|date=2018-09-11|accessdate=2020-09-17}}</ref>。
9月11日、アメリカ国務省は在パレスチナ[[政府代表部|総代表部]]の閉鎖を発表した。[[ジョン・ボルトン]]大統領補佐官は、9月10日の講演で「米国は常に、友人で同盟国のイスラエルの側に立つ」「パレスチナがイスラエルとの意味ある直接交渉への一歩を拒否し続ける限り、総代表部を開くことはない」と主張していた<ref>{{cite news2|url=https://mainichi.jp/articles/20180911/k00/00m/030/142000c|title=米国 パレスチナ代表部を閉鎖 和平交渉巡り圧力か|newspaper=毎日新聞|date=2018-09-11|accessdate=2020-09-17}}</ref>。


9月12日、国連貿易開発会議(UNCTAD)は、2017年にパレスチナ自治区の失業率が27%を超え、農業生産も11%減ったとの報告書をまとめた。国際援助の減少やイスラエルによる経済封鎖が理由としている。パレスチナの失業率は、世界最悪水準にあるという。また、ガザ地区では2008年からのガザ侵攻で生産的資本蓄積の6割が失われ、2014年のガザ侵攻では、残っていた生産的資本の85%が失われた。世紀の変わり目(2001年)と比較して、実質所得は3割減り、2018年初めの電力供給は、1日平均2時間であった<ref>[https://unctad.org/en/pages/PressRelease.aspx?OriginalVersionID=467 Occupied Palestinian Territory Has World’s Highest Unemployment Rate – UNCTAD Report] - 国際連合貿易開発会議{{en icon}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://r.nikkei.com/article/DGXMZO35302740T10C18A9EAF000?s=5|title=パレスチナの失業率27%超、国連調べ |newspaper=日本経済新聞|date=2018-09-13|accessdate=2020-09-18}}</ref>。
9月12日、国連貿易開発会議(UNCTAD)は、2017年にパレスチナ自治区の失業率が27%を超え、農業生産も11%減ったとの報告書をまとめた。国際援助の減少やイスラエルによる経済封鎖が理由としている。パレスチナの失業率は、世界最悪水準にあるという。また、ガザ地区では2008年からのガザ侵攻で生産的資本蓄積の6割が失われ、2014年のガザ侵攻では、残っていた生産的資本の85%が失われた。世紀の変わり目(2001年)と比較して、実質所得は3割減り、2018年初めの電力供給は、1日平均2時間であった<ref>[https://unctad.org/en/pages/PressRelease.aspx?OriginalVersionID=467 Occupied Palestinian Territory Has World’s Highest Unemployment Rate – UNCTAD Report] - 国際連合貿易開発会議{{en icon}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://r.nikkei.com/article/DGXMZO35302740T10C18A9EAF000?s=5|title=パレスチナの失業率27%超、国連調べ |newspaper=日本経済新聞|date=2018-09-13|accessdate=2020-09-18}}</ref>。


2018年の1年間では、パレスチナ側は290人(うち、子供56人)、イスラエル側は14人(うち、子供0人)が紛争で殺害された<ref>[https://israelpalestinetimeline.org/2018deaths/ PHOTOS: Israelis and Palestinians killed in 2018] - Israel-Palestine Timeline The Human Cost of the Conflict{{en icon}}</ref>。
2018年の1年間では、パレスチナ側は290人(うち、子供56人)、イスラエル側は14人(うち、子供0人)が紛争で殺害された<ref>[https://israelpalestinetimeline.org/2018deaths/ PHOTOS: Israelis and Palestinians killed in 2018] - Israel-Palestine Timeline The Human Cost of the Conflict{{en icon}}</ref>。


2019年[[3月22日]]、米トランプ大統領はTwitterで、「今こそ米国は、ゴラン高原のイスラエルの主権を認める時が来た」と表明した。従来は米国を含め、ゴラン高原はシリア領と認識し、イスラエル領有を公認した国家・政権は存在しなかった<ref>[https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1108772952814899200 After 52 years it is time for the United States to fully recognize Israel’s Sovereignty over the Golan Heights, which is of critical strategic and security importance to the State of Israel and Regional Stability!] - Donald J. Trump Twitter{{en icon}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.bbc.com/japanese/47663449|title= トランプ大統領「ゴラン高原、イスラエルに主権」 国連決議違反との声も |newspaper=BBC|date=2019-03-22|accessdate=2020-09-24}}</ref>。
2019年[[3月22日]]、米トランプ大統領はTwitterで、「今こそ米国は、ゴラン高原のイスラエルの主権を認める時が来た」と表明した。従来は米国を含め、ゴラン高原はシリア領と認識し、イスラエル領有を公認した国家・政権は存在しなかった<ref>[https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1108772952814899200 After 52 years it is time for the United States to fully recognize Israel’s Sovereignty over the Golan Heights, which is of critical strategic and security importance to the State of Israel and Regional Stability!] - Donald J. Trump Twitter{{en icon}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.bbc.com/japanese/47663449|title= トランプ大統領「ゴラン高原、イスラエルに主権」 国連決議違反との声も |newspaper=BBC|date=2019-03-22|accessdate=2020-09-24}}</ref>。


[[3月25日]]、アメリカは、ゴラン高原をイスラエル領と正式に承認した<ref>{{cite news2|url=https://www.asahi.com/articles/ASM3V2621M3VUHBI003.html|title= ゴラン高原「イスラエルに主権」 トランプ氏が正式署名 |newspaper=朝日新聞|date=2019-03-26|accessdate=2020-09-24}}</ref>。
[[3月25日]]、アメリカは、ゴラン高原をイスラエル領と正式に承認した<ref>{{cite news2|url=https://www.asahi.com/articles/ASM3V2621M3VUHBI003.html|title= ゴラン高原「イスラエルに主権」 トランプ氏が正式署名 |newspaper=朝日新聞|date=2019-03-26|accessdate=2020-09-24}}</ref>。


アメリカ・トランプ政権では、2017年11月から、トランプの娘婿である[[ジャレッド・クシュナー]][[大統領上級顧問 (ホワイトハウス)#大統領上級顧問(Senior Advisor to the President)|大統領上級顧問]]が中心になって、[[ディナ・ハビブ・パウエル]]大統領副補佐官、デービッド・フリードマン駐イスラエル大使らと共に、新たな和平案の腹案を練っていた<ref>{{cite news2|url=https://www.nytimes.com/2017/11/11/world/middleeast/trump-peace-israel-palestinians.html|title= Trump Team Begins Drafting Middle East Peace Plan|newspaper=ニューヨーク・タイムズ|date=2017-11-11|accessdate=2020-09-24}} {{en icon}}</ref>。クシュナーらはいずれも親イスラエルで知られ、従ってイスラエルに有利な案が取り沙汰された。一方、クシュナーの相談を受けた、元外交官のアーロン・デービッド・ミラーによると、クシュナーは「イスラエル人とパレスチナ人にも歴史の話をするなといった」と述べ、白紙で一から和平案を作る考えを示した<ref>{{cite news2|url=https://www.theguardian.com/us-news/2020/jan/27/jared-kushner-israel-palestine-peace-plan|title= 'Don't talk about history': how Jared Kushner crafted his Middle East 'peace' plan |newspaper=ガーディアン|date=2020-01-28|accessdate=2020-09-24}} {{en icon}}</ref>。
アメリカ・トランプ政権では、2017年11月から、トランプの娘婿である[[ジャレッド・クシュナー]][[大統領上級顧問 (ホワイトハウス)#大統領上級顧問(Senior Advisor to the President)|大統領上級顧問]]が中心になって、[[ディナ・ハビブ・パウエル]]大統領副補佐官、デービッド・フリードマン駐イスラエル大使らと共に、新たな和平案の腹案を練っていた<ref>{{cite news2|url=https://www.nytimes.com/2017/11/11/world/middleeast/trump-peace-israel-palestinians.html|title= Trump Team Begins Drafting Middle East Peace Plan|newspaper=ニューヨーク・タイムズ|date=2017-11-11|accessdate=2020-09-24}} {{en icon}}</ref>。クシュナーらはいずれも親イスラエルで知られ、従ってイスラエルに有利な案が取り沙汰された。一方、クシュナーの相談を受けた、元外交官のアーロン・デービッド・ミラーによると、クシュナーは「イスラエル人とパレスチナ人にも歴史の話をするなといった」と述べ、白紙で一から和平案を作る考えを示した<ref>{{cite news2|url=https://www.theguardian.com/us-news/2020/jan/27/jared-kushner-israel-palestine-peace-plan|title= 'Don't talk about history': how Jared Kushner crafted his Middle East 'peace' plan |newspaper=ガーディアン|date=2020-01-28|accessdate=2020-09-24}} {{en icon}}</ref>。


6月25日 - 26日、アメリカ主催でバーレーンで行われた会議「繁栄に向けた和平(繁栄に至る平和)」で、まず「経済部分」の素案が発表された。パレスチナ・エジプト・レバノン・ヨルダンへの約500億ドルの投資を目玉としたが、出資者が誰になるかは、アラブ諸国の出資に期待するとした。パレスチナ側は「パレスチナに国家樹立を諦めさせるための買収劇である」として出席をボイコットした。イスラエル側は直接の出席はしなかったが、代わりに民間のビジネスマンを出席させた<ref>[https://www.scgr.co.jp/report/topics/2019070138485/ 中東和平に関する経済ワークショップの開催] - 住友商事グローバルリサーチ 広瀬真司</ref>。
6月25日 - 26日、アメリカ主催でバーレーンで行われた会議「繁栄に向けた和平(繁栄に至る平和)」で、まず「経済部分」の素案が発表された。パレスチナ・エジプト・レバノン・ヨルダンへの約500億ドルの投資を目玉としたが、出資者が誰になるかは、アラブ諸国の出資に期待するとした。パレスチナ側は「パレスチナに国家樹立を諦めさせるための買収劇である」として出席をボイコットした。イスラエル側は直接の出席はしなかったが、代わりに民間のビジネスマンを出席させた<ref>[https://www.scgr.co.jp/report/topics/2019070138485/ 中東和平に関する経済ワークショップの開催] - 住友商事グローバルリサーチ 広瀬真司</ref>。
<br />同日、クシュナーは「[[アルジャジーラ]]」の取材に応え、トランプ政権は従来と「異なる」アプローチをしており、その一つがパレスチナの財政的[[コミットメント]]の優先だと説いた。また、アラブ諸国は2002年に採択された「アラブ和平イニシアティブ」をパレスチナ問題の基本線としていた。これは原則として、安保理決議242に基づく要求である。しかしクシュナーは、それは不可能だと主張し、イスラエルの立場との妥協をすべきだと主張した。また、エルサレムをイスラエルの首都と公認したことを、「主権国家であるイスラエルには、首都を決める権利がある」と改めて擁護した<ref>[https://www.aljazeera.com/programmes/talktojazeera/2019/06/jared-kushner-israel-palestine-deal-time-190625113553537.html Jared Kushner on Israel-Palestine deal: Time to try something new] - アルジャジーラ {{en icon}}</ref>。
<br />同日、クシュナーは「[[アルジャジーラ]]」の取材に応え、トランプ政権は従来と「異なる」アプローチをしており、その一つがパレスチナの財政的[[コミットメント]]の優先だと説いた。また、アラブ諸国は2002年に採択された「アラブ和平イニシアティブ」をパレスチナ問題の基本線としていた。これは原則として、安保理決議242に基づく要求である。しかしクシュナーは、それは不可能だと主張し、イスラエルの立場との妥協をすべきだと主張した。また、エルサレムをイスラエルの首都と公認したことを、「主権国家であるイスラエルには、首都を決める権利がある」と改めて擁護した<ref>[https://www.aljazeera.com/programmes/talktojazeera/2019/06/jared-kushner-israel-palestine-deal-time-190625113553537.html Jared Kushner on Israel-Palestine deal: Time to try something new] - アルジャジーラ {{en icon}}</ref>。


11月6日、UNRWAのクレヘンビュール事務局長が、職権濫用の疑いで事実上の辞職に追い込まれた<ref>{{cite news2|url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2019110700159&g=int|title=国連パレスチナ機関トップ辞任 職権乱用疑惑で調査|newspaper=時事通信社|date=2019-11-07|accessdate=2020-09-18}}</ref>。
11月6日、UNRWAのクレヘンビュール事務局長が、職権濫用の疑いで事実上の辞職に追い込まれた<ref>{{cite news2|url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2019110700159&g=int|title=国連パレスチナ機関トップ辞任 職権乱用疑惑で調査|newspaper=時事通信社|date=2019-11-07|accessdate=2020-09-18}}</ref>。


11月18日、アメリカの[[マイク・ポンペオ]][[アメリカ合衆国国務長官|国務長官]]は記者会見で、ヨルダン川西岸のイスラエル入植地は、国際法に反しているとは認識しないとの見解を示した。これは従来の政府見解を変更するものであるが、ポンペオは1981年にレーガン元大統領が示した見解を正当としたと述べた<ref>[https://www.state.gov/secretary-michael-r-pompeo-remarks-to-the-press/ Secretary Michael R. Pompeo Remarks to the Press] - [[アメリカ合衆国国務省]]{{en icon}}</ref>。イスラエルのネタニヤフ首相は、アメリカの方針転換を「歴史の過ちを正す」ものだと歓迎した。PLOのサエブ・エリカット事務局長は、「世界の安定と安全、平和」を危険にさらすものと批判した<ref>[https://www.bbc.com/japanese/50469832 イスラエル入植地「違法ではない」 米政府が方針転換 2019年11月19日] - BBC</ref>。
11月18日、アメリカの[[マイク・ポンペオ]][[アメリカ合衆国国務長官|国務長官]]は記者会見で、ヨルダン川西岸のイスラエル入植地は、国際法に反しているとは認識しないとの見解を示した。これは従来の政府見解を変更するものであるが、ポンペオは1981年にレーガン元大統領が示した見解を正当としたと述べた<ref>[https://www.state.gov/secretary-michael-r-pompeo-remarks-to-the-press/ Secretary Michael R. Pompeo Remarks to the Press] - [[アメリカ合衆国国務省]]{{en icon}}</ref>。イスラエルのネタニヤフ首相は、アメリカの方針転換を「歴史の過ちを正す」ものだと歓迎した。PLOのサエブ・エリカット事務局長は、「世界の安定と安全、平和」を危険にさらすものと批判した<ref>[https://www.bbc.com/japanese/50469832 イスラエル入植地「違法ではない」 米政府が方針転換 2019年11月19日] - BBC</ref>。


12月1日、イスラエルの[[ナフタリ・ベネット]]国防相は関係当局に、ヘブロンの内側にあるユダヤ人入植地を拡大するよう指示した。このことで、ユダヤ人入植者を800人から倍増させるとしている<ref>{{cite news2|url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2019120200124&g=int|title=ヘブロンで入植地拡大計画 パレスチナ自治区侵食―イスラエル|newspaper=時事通信社|date=2019-12-02|accessdate=2020-09-14}}</ref>。
12月1日、イスラエルの[[ナフタリ・ベネット]]国防相は関係当局に、ヘブロンの内側にあるユダヤ人入植地を拡大するよう指示した。このことで、ユダヤ人入植者を800人から倍増させるとしている<ref>{{cite news2|url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2019120200124&g=int|title=ヘブロンで入植地拡大計画 パレスチナ自治区侵食―イスラエル|newspaper=時事通信社|date=2019-12-02|accessdate=2020-09-14}}</ref>。


2019年の1年間では、パレスチナ側は149人(うち、子供31人)、イスラエル側は10人(うち、子供1人)が紛争で殺害された<ref>[https://israelpalestinetimeline.org/2019deaths/ PHOTOS: Israelis and Palestinians killed in 2019] - Israel-Palestine Timeline The Human Cost of the Conflict{{en icon}}</ref>。
2019年の1年間では、パレスチナ側は149人(うち、子供31人)、イスラエル側は10人(うち、子供1人)が紛争で殺害された<ref>[https://israelpalestinetimeline.org/2019deaths/ PHOTOS: Israelis and Palestinians killed in 2019] - Israel-Palestine Timeline The Human Cost of the Conflict{{en icon}}</ref>。


2020年1月5日から6日にかけて、イスラエルはヨルダン川西岸での、新たに入植地1900棟の計画を承認した。日本の大鷹正人外務報道官は「強い遺憾の意」を表明した<ref>[https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_005543.html イスラエルによる入植地建設計画の推進について (外務報道官談話)] - 外務省</ref>。
2020年1月5日から6日にかけて、イスラエルはヨルダン川西岸での、新たに入植地1900棟の計画を承認した。日本の大鷹正人外務報道官は「強い遺憾の意」を表明した<ref>[https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_005543.html イスラエルによる入植地建設計画の推進について (外務報道官談話)] - 外務省</ref>。


1月8日、イスラエルのベネット国防相は、占領地のC地区を「領土」と称し、「C地区を(併合するための)『戦い』をパレスチナと進めている」と述べた。ベネットは、入植地の建築を進めることで、10年以内に100万人のユダヤ人を移住させると述べ、「我々は国連にはいない」と述べた。また、パレスチナ人の「違法な」建築を止めるために何もしなかったとネタニヤフ政権を非難し、EUが「違法」建築に資金を提供していると非難した<ref>{{cite news2|url=https://www.jpost.com/israel-news/bennett-gov-policy-is-that-area-c-belongs-to-israel-613543|title=Bennett: Area C of West Bank belongs to us, we’re waging a battle for it|newspaper=エルサレム・ポスト|date=2020-01-08|accessdate=2020-09-14}} {{en icon}}</ref>。またベネットは翌週、7つの「[[自然保護区]]」を新たに承認した。これは、名目は自然保護区だが、パレスチナ人の立ち入りを禁じることで、事実上イスラエルの支配を進める施策である<ref>{{cite news2|url=https://www.jpost.com/israel-news/civil-administration-destroys-illegal-palestinian-home-south-of-hebron-614339|title=IDF razes Palestinian home, school as Israel tightens hold on Area C|newspaper=エルサレム・ポスト|date=2020-01-17|accessdate=2020-09-14}} {{en icon}}</ref>。
1月8日、イスラエルのベネット国防相は、占領地のC地区を「領土」と称し、「C地区を(併合するための)『戦い』をパレスチナと進めている」と述べた。ベネットは、入植地の建築を進めることで、10年以内に100万人のユダヤ人を移住させると述べ、「我々は国連にはいない」と述べた。また、パレスチナ人の「違法な」建築を止めるために何もしなかったとネタニヤフ政権を非難し、EUが「違法」建築に資金を提供していると非難した<ref>{{cite news2|url=https://www.jpost.com/israel-news/bennett-gov-policy-is-that-area-c-belongs-to-israel-613543|title=Bennett: Area C of West Bank belongs to us, we’re waging a battle for it|newspaper=エルサレム・ポスト|date=2020-01-08|accessdate=2020-09-14}} {{en icon}}</ref>。またベネットは翌週、7つの「[[自然保護区]]」を新たに承認した。これは、名目は自然保護区だが、パレスチナ人の立ち入りを禁じることで、事実上イスラエルの支配を進める施策である<ref>{{cite news2|url=https://www.jpost.com/israel-news/civil-administration-destroys-illegal-palestinian-home-south-of-hebron-614339|title=IDF razes Palestinian home, school as Israel tightens hold on Area C|newspaper=エルサレム・ポスト|date=2020-01-17|accessdate=2020-09-14}} {{en icon}}</ref>。


1月28日、アメリカのトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は、共同で和平案"Peace to Prosperity"(「{{仮リンク|繁栄に至る平和|en|Trump peace plan}}」)の全文を発表した<ref>[https://www.whitehouse.gov/peacetoprosperity/ Peace to Prosperity(繁栄に至る平和)] - ホワイトハウス {{en icon}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3265610|title=トランプ氏、中東和平案を公表 イスラエルの希望多く反映|newspaper=[[フランス通信社]]|date=2020-01-29|accessdate=2020-02-17}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202001/CK2020012902000256.html|title=米「入植地はイスラエル領」 中東和平案発表 難民帰還認めず|newspaper=[[中日新聞]]|date=2020-01-29|accessdate=2020-02-17}}</ref>。クシュナーの素案に基づくもので、主な内容は以下の通りである。
1月28日、アメリカのトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は、共同で和平案"Peace to Prosperity"(「{{仮リンク|繁栄に至る平和|en|Trump peace plan}}」)の全文を発表した<ref>[https://www.whitehouse.gov/peacetoprosperity/ Peace to Prosperity(繁栄に至る平和)] - ホワイトハウス {{en icon}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3265610|title=トランプ氏、中東和平案を公表 イスラエルの希望多く反映|newspaper=[[フランス通信社]]|date=2020-01-29|accessdate=2020-02-17}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202001/CK2020012902000256.html|title=米「入植地はイスラエル領」 中東和平案発表 難民帰還認めず|newspaper=[[中日新聞]]|date=2020-01-29|accessdate=2020-02-17}}</ref>。クシュナーの素案に基づくもので、主な内容は以下の通りである。


*前提認識。パレスチナ・イスラエル両者とも、平和を望んでいる。しかしパレスチナはテロ組織であるハマースによるイスラエルへの攻撃、自治政府の腐敗や失政、テロを煽動する法律・教育や政府系メディアなどの問題を抱えている。他方、イスラエルはエジプトと国交を結んだ時に平和のために広大な領土と交換したなど、暴力とテロの被害にもかかわらず、常に平和を望んできた。すなわち、紛争の全責任はパレスチナ側にあるとする
*前提認識。パレスチナ・イスラエル両者とも、平和を望んでいる。しかしパレスチナはテロ組織であるハマースによるイスラエルへの攻撃、自治政府の腐敗や失政、テロを煽動する法律・教育や政府系メディアなどの問題を抱えている。他方、イスラエルはエジプトと国交を結んだ時に平和のために広大な領土と交換したなど、暴力とテロの被害にもかかわらず、常に平和を望んできた。すなわち、紛争の全責任はパレスチナ側にあるとする
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*市場経済による経済振興、社会基盤・教育・医療などの整備、生活の質の改善、政府機構の改革を行い、汚職を断つ。パレスチナ指導部は、[[日本]]、[[大韓民国|韓国]]、[[シンガポール]]の政府が困難に立ち向かったのと同じようにすべきである
*市場経済による経済振興、社会基盤・教育・医療などの整備、生活の質の改善、政府機構の改革を行い、汚職を断つ。パレスチナ指導部は、[[日本]]、[[大韓民国|韓国]]、[[シンガポール]]の政府が困難に立ち向かったのと同じようにすべきである


トランプはTwitterで、イスラエルとユダヤ人のための和平案であることを自賛した<ref>[https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1222223636779741184 I will always stand with the State of Israel and the Jewish people. I strongly support their safety and security and their right to live within their historical homeland. It's time for peace!] - Donald J. Trump {{en icon}}</ref>。パレスチナの国家承認を除き、全面的にイスラエルの主張に従った内容で、ネタニヤフは「我々の主権を認めた」内容を歓迎した<ref>[https://twitter.com/netanyahu/status/1222297127046520833 אנו עושים היסטוריה, זהו יום מכונן למדינת ישראל.התוכנית של נשיא ארה"ב דונלד טראמפ מחזקת אותנו בצורה בלתי רגילה, היא מכירה בריבונותנו על כל הישובים היהודיים.מאחורינו שנים של עמידה בלחץ, וכעת נקבע את חבלי מולדתינו מלפני אלפי שנים.אני גאה לייצג אתכם!] - Benjamin Netanyahu {{he icon}}</ref>。パレスチナのアッバース大統領は、この案を「歴史のごみ箱に投げ捨てる」と拒否した<ref>{{cite news2|url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202001/CK2020013002000130.html|title=和平案 エジプト・サウジ容認 アッバス議長反発「歴史のごみ箱に捨てる」|newspaper=[[中日新聞]]|date=2020-01-30|accessdate=2020-02-17}}</ref>。また、元パレスチナ情報庁長官のムスタファ・バルグーティは、和平案の地図におけるパレスチナは、「かつての[[南アフリカ]]における[[アパルトヘイト]]での[[バントゥースタン]]と同じ」「唯一の違いは、パレスチナ人の孤立した地理的状況は[[ゲットー]]とも比較される」と非難した<ref>{{cite news2|url=https://edition.cnn.com/2020/01/30/opinions/trump-middle-east-peace-deal-proposal-apartheid-barghouti/index.html?fbclid=IwAR3c-xVgFpjiKfPhHp5wF-SA5j7e-NmY2TI_E6-bp_V5xt7mwQoI_uywTsM|title=What Trump's Middle East plan means for Palestinians|newspaper=[[CNN]]|date=2020-01-31|accessdate=2020-08-16}} {{en icon}}</ref><ref>[https://www.ngo-jvc.net/jp/projects/palestine-report/2020/03/20200304-article-peaceplan.html 外部記事の紹介「トランプの中東(和平)案はパレスチナ人にとって何を意味するか」] - 日本国際ボランティアセンター 山村順子、中村俊也</ref>。さらに、パレスチナは安保理非常任理事国の[[チュニジア]]の協力を得て、和平案に反対する決議案を安保理採決に掛けるよう働きかけた<ref>{{cite news2|url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2020013000384&g=int|title=パレスチナ議長、安保理演説へ 米和平案で決議案調整も|newspaper=時事通信社|date=2020-01-30|accessdate=2020-09-18}}</ref>。
トランプはTwitterで、イスラエルとユダヤ人のための和平案であることを自賛した<ref>[https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1222223636779741184 I will always stand with the State of Israel and the Jewish people. I strongly support their safety and security and their right to live within their historical homeland. It's time for peace!] - Donald J. Trump {{en icon}}</ref>。パレスチナの国家承認を除き、全面的にイスラエルの主張に従った内容で、ネタニヤフは「我々の主権を認めた」内容を歓迎した<ref>[https://twitter.com/netanyahu/status/1222297127046520833 אנו עושים היסטוריה, זהו יום מכונן למדינת ישראל.התוכנית של נשיא ארה"ב דונלד טראמפ מחזקת אותנו בצורה בלתי רגילה, היא מכירה בריבונותנו על כל הישובים היהודיים.מאחורינו שנים של עמידה בלחץ, וכעת נקבע את חבלי מולדתינו מלפני אלפי שנים.אני גאה לייצג אתכם!] - Benjamin Netanyahu {{he icon}}</ref>。パレスチナのアッバース大統領は、この案を「歴史のごみ箱に投げ捨てる」と拒否した<ref>{{cite news2|url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202001/CK2020013002000130.html|title=和平案 エジプト・サウジ容認 アッバス議長反発「歴史のごみ箱に捨てる」|newspaper=[[中日新聞]]|date=2020-01-30|accessdate=2020-02-17}}</ref>。また、元パレスチナ情報庁長官のムスタファ・バルグーティは、和平案の地図におけるパレスチナは、「かつての[[南アフリカ]]における[[アパルトヘイト]]での[[バントゥースタン]]と同じ」「唯一の違いは、パレスチナ人の孤立した地理的状況は[[ゲットー]]とも比較される」と非難した<ref>{{cite news2|url=https://edition.cnn.com/2020/01/30/opinions/trump-middle-east-peace-deal-proposal-apartheid-barghouti/index.html?fbclid=IwAR3c-xVgFpjiKfPhHp5wF-SA5j7e-NmY2TI_E6-bp_V5xt7mwQoI_uywTsM|title=What Trump's Middle East plan means for Palestinians|newspaper=[[CNN]]|date=2020-01-31|accessdate=2020-08-16}} {{en icon}}</ref><ref>[https://www.ngo-jvc.net/jp/projects/palestine-report/2020/03/20200304-article-peaceplan.html 外部記事の紹介「トランプの中東(和平)案はパレスチナ人にとって何を意味するか」] - 日本国際ボランティアセンター 山村順子、中村俊也</ref>。さらに、パレスチナは安保理非常任理事国の[[チュニジア]]の協力を得て、和平案に反対する決議案を安保理採決に掛けるよう働きかけた<ref>{{cite news2|url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2020013000384&g=int|title=パレスチナ議長、安保理演説へ 米和平案で決議案調整も|newspaper=時事通信社|date=2020-01-30|accessdate=2020-09-18}}</ref>。
<br />この他、オスロ合意当時にイスラエル側で交渉に携わったダニエル・レヴィは、「降伏文書と和平案には違いがある。しかし、降伏文書の条件であっても、敗者側の自尊心を形だけでも保つやり方で作成されれば、この和平案よりはもっと永続する可能性が大きいだろう」「この案は、アメリカ人(さらにはイスラエル人)からパレスチナ人への憎悪の手紙である」と批判した<ref>[https://prospect.org/world/dont-call-it-a-peace-plan-israel-palestine-trump/ Don’t Call It a Peace Plan] - Daniel Levy "The American Prospect"{{en icon}}</ref><ref>[http://www.diplo.jp/articles20/2005-02Israel-Palestine.html 根強く残る植民地主義 イスラエル・パレスチナ問題 戦争に繋がる「和平」案] - アラン・グレシュ 訳:大津乃子 『[[ル・モンド・ディプロマティーク]]』</ref>。
<br />この他、オスロ合意当時にイスラエル側で交渉に携わったダニエル・レヴィは、「降伏文書と和平案には違いがある。しかし、降伏文書の条件であっても、敗者側の自尊心を形だけでも保つやり方で作成されれば、この和平案よりはもっと永続する可能性が大きいだろう」「この案は、アメリカ人(さらにはイスラエル人)からパレスチナ人への憎悪の手紙である」と批判した<ref>[https://prospect.org/world/dont-call-it-a-peace-plan-israel-palestine-trump/ Don’t Call It a Peace Plan] - Daniel Levy "The American Prospect"{{en icon}}</ref><ref>[http://www.diplo.jp/articles20/2005-02Israel-Palestine.html 根強く残る植民地主義 イスラエル・パレスチナ問題 戦争に繋がる「和平」案] - アラン・グレシュ 訳:大津乃子 『[[ル・モンド・ディプロマティーク]]』</ref>。
<br />一方で、ユダヤ人入植者からは、「ユダヤ・サマリア<ref name="JudeaSamaria" />」がイスラエル固有の領土という認識の元、入植地が敵対的なパレスチナ自治区に「包囲」され、これ以上の入植拡大が望めなくなることへの危機感も表明された<ref>{{cite news2|url=https://www.jta.org/2020/02/03/opinion/ive-been-an-israeli-settler-for-30-years-trumps-peace-plan-puts-our-communities-in-danger|title=I’ve been an Israeli settler for 30 years. Trump’s peace plan puts our communities in danger.|newspaper={{仮リンク|ユダヤ通信社|en|Jewish Telegraphic Agency}}|date=2020-02-03|accessdate=2020-09-21}} {{en icon}}</ref>。また、150以上の入植地を管理するイェシャ評議会のデイビッド・エルハヤニ委員長は、併合が一時凍結されたことを「クシュナーはナイフでネタニヤフを背後から刺した<ref>{{cite news2|url=https://www.washingtonpost.com/world/middle_east/reports-jared-kushner-angers-netanyahu-camp-by-slowing-annexation-moves/2020/02/04/82376ac6-4719-11ea-91ab-ce439aa5c7c1_story.html|title=Jared Kushner put a knife ‘in Netanyahu’s back’ over annexation delay, says Israeli settler leader|newspaper=[[ワシントン・ポスト]]|date=2020-02-04|accessdate=2020-09-22}} {{en icon}}(有料記事)</ref><ref>{{cite news2|url=https://thehill.com/policy/international/middle-east-north-africa/481441-israeli-settler-leader-kushner-took-a-knife-and|title=Israeli settler leader: 'Kushner took a knife and put it in Netanyahu's back'|newspaper=ザ・ヒル|date=2020-02-04|accessdate=2020-09-22}} {{en icon}}</ref>」と非難した。エルハヤニによると、当初、アメリカはパレスチナが48時間以内に和平案に応じなければ、イスラエルの併合強行を認める予定だったが、後から翻意したという。
<br />一方で、ユダヤ人入植者からは、「ユダヤ・サマリア<ref name="JudeaSamaria" />」がイスラエル固有の領土という認識の元、入植地が敵対的なパレスチナ自治区に「包囲」され、これ以上の入植拡大が望めなくなることへの危機感も表明された<ref>{{cite news2|url=https://www.jta.org/2020/02/03/opinion/ive-been-an-israeli-settler-for-30-years-trumps-peace-plan-puts-our-communities-in-danger|title=I’ve been an Israeli settler for 30 years. Trump’s peace plan puts our communities in danger.|newspaper={{仮リンク|ユダヤ通信社|en|Jewish Telegraphic Agency}}|date=2020-02-03|accessdate=2020-09-21}} {{en icon}}</ref>。また、150以上の入植地を管理するイェシャ評議会のデイビッド・エルハヤニ委員長は、併合が一時凍結されたことを「クシュナーはナイフでネタニヤフを背後から刺した<ref>{{cite news2|url=https://www.washingtonpost.com/world/middle_east/reports-jared-kushner-angers-netanyahu-camp-by-slowing-annexation-moves/2020/02/04/82376ac6-4719-11ea-91ab-ce439aa5c7c1_story.html|title=Jared Kushner put a knife ‘in Netanyahu’s back’ over annexation delay, says Israeli settler leader|newspaper=[[ワシントン・ポスト]]|date=2020-02-04|accessdate=2020-09-22}} {{en icon}}(有料記事)</ref><ref>{{cite news2|url=https://thehill.com/policy/international/middle-east-north-africa/481441-israeli-settler-leader-kushner-took-a-knife-and|title=Israeli settler leader: 'Kushner took a knife and put it in Netanyahu's back'|newspaper=ザ・ヒル|date=2020-02-04|accessdate=2020-09-22}} {{en icon}}</ref>」と非難した。エルハヤニによると、当初、アメリカはパレスチナが48時間以内に和平案に応じなければ、イスラエルの併合強行を認める予定だったが、後から翻意したという。


クシュナーは[[イアン・ブレマー]]によるインタビューで、パレスチナ側の批判に次のように反論した。「パレスチナは、長い間被害者カードを使ってきた」「和平案はイスラエルにとって大きな妥協だ。なぜならイスラエルにとって妥協をするこれと言った理由がないからだ。イスラエルがすでに強い国で、さらにその力を増す中で、我々が彼らに妥協を迫ったのだ」<ref>[https://www.gzeromedia.com/jared-kushners-put-up-or-shut-up-peace-plan Jared Kushner's 'Put Up or Shut Up' Peace Plan January 31, 2020] - GZERO Media{{en icon}}</ref><ref>[https://twitter.com/gzeromedia/status/1223286508234452998 Jared Kushner: The peace plan "is a big compromise from the Israelis, because they don't have a strong reason to compromise. Because they're strong and getting stronger."] - Twitter GZERO Media{{en icon}}</ref><ref>[https://www3.nhk.or.jp/news/special/new-middle-east/trump-peace-plan-revealed/ 2020-2-5 「トランプ和平案」が突きつけた中東の新たな現実] - 日本放送協会 澤畑剛</ref>。<br />
クシュナーは[[イアン・ブレマー]]によるインタビューで、パレスチナ側の批判に次のように反論した。「パレスチナは、長い間被害者カードを使ってきた」「和平案はイスラエルにとって大きな妥協だ。なぜならイスラエルにとって妥協をするこれと言った理由がないからだ。イスラエルがすでに強い国で、さらにその力を増す中で、我々が彼らに妥協を迫ったのだ」<ref>[https://www.gzeromedia.com/jared-kushners-put-up-or-shut-up-peace-plan Jared Kushner's 'Put Up or Shut Up' Peace Plan January 31, 2020] - GZERO Media{{en icon}}</ref><ref>[https://twitter.com/gzeromedia/status/1223286508234452998 Jared Kushner: The peace plan "is a big compromise from the Israelis, because they don't have a strong reason to compromise. Because they're strong and getting stronger."] - Twitter GZERO Media{{en icon}}</ref><ref>[https://www3.nhk.or.jp/news/special/new-middle-east/trump-peace-plan-revealed/ 2020-2-5 「トランプ和平案」が突きつけた中東の新たな現実] - 日本放送協会 澤畑剛</ref>。<br />
[[サイモン・ウィーゼンタール・センター]]の[[エイブラハム・クーパー]]副所長は、パレスチナ側の主張する国境線は、イスラエルにとって「ヨルダン(川西岸)と地中海の間の幅がわずか9マイル(約14.48㎞)しかな」く、「テロリストやイランのミサイル攻撃の格好の標的となり」、「自殺行為」であるから、同意すべきでは無いと主張した。また、「国連とその構成部分は、総会、国連人権理事会、国連救済事業庁(UNRWA)を含む、無限の反イスラエルの決議とイニシアチブを打ち出して来たが、パレスチナの侵略は何十年にもわたってフリーパスを与えている」と主張した。さらに、「ドイツにはユダヤ国家を決して危険にさらしてはならない義務がある」と主張し、チュニジアが安保理採決を予定している和平案非難決議案に賛成しないよう牽制した<ref>{{cite news2|url=https://thehill.com/opinion/international/482368-all-eyes-on-germany-as-un-security-council-debates-anti-israel|title=All eyes on Germany as UN Security Council debates anti-Israel resolution|newspaper=[[ザ・ヒル]]|date=2020-02-12|accessdate=2020-09-18}} {{en icon}}</ref>。
[[サイモン・ウィーゼンタール・センター]]の[[エイブラハム・クーパー]]副所長は、パレスチナ側の主張する国境線は、イスラエルにとって「ヨルダン(川西岸)と地中海の間の幅がわずか9マイル(約14.48㎞)しかな」く、「テロリストやイランのミサイル攻撃の格好の標的となり」、「自殺行為」であるから、同意すべきでは無いと主張した。また、「国連とその構成部分は、総会、国連人権理事会、国連救済事業庁(UNRWA)を含む、無限の反イスラエルの決議とイニシアチブを打ち出して来たが、パレスチナの侵略は何十年にもわたってフリーパスを与えている」と主張した。さらに、「ドイツにはユダヤ国家を決して危険にさらしてはならない義務がある」と主張し、チュニジアが安保理採決を予定している和平案非難決議案に賛成しないよう牽制した<ref>{{cite news2|url=https://thehill.com/opinion/international/482368-all-eyes-on-germany-as-un-security-council-debates-anti-israel|title=All eyes on Germany as UN Security Council debates anti-Israel resolution|newspaper=[[ザ・ヒル]]|date=2020-02-12|accessdate=2020-09-18}} {{en icon}}</ref>。


2月6日、チュニジアはバーティ国連大使を解任した。和平案非難決議案提出を阻止しようとする、米国の圧力に屈したと取り沙汰された<ref>{{cite news2|url=https://www.47news.jp/culture/news/4501854.html|title= チュニジアが国連大使を突如解任 中東和平巡り米圧力か|newspaper=共同通信社|date=2020-02-08|accessdate=2020-09-18}}</ref>。
2月6日、チュニジアはバーティ国連大使を解任した。和平案非難決議案提出を阻止しようとする、米国の圧力に屈したと取り沙汰された<ref>{{cite news2|url=https://www.47news.jp/culture/news/4501854.html|title= チュニジアが国連大使を突如解任 中東和平巡り米圧力か|newspaper=共同通信社|date=2020-02-08|accessdate=2020-09-18}}</ref>。


2月9日、[[アフリカ連合]]は米トランプ政権が公表した和平案は違法であると強く非難した。また、「パレスチナの大義」への連携を表明した<ref>{{cite news2|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3267634|title= トランプ氏の中東和平案は違法、アフリカ連合 パレスチナに連帯表明|newspaper=フランス通信社|date=2020-02-10|accessdate=2020-09-18}}</ref>。
2月9日、[[アフリカ連合]]は米トランプ政権が公表した和平案は違法であると強く非難した。また、「パレスチナの大義」への連携を表明した<ref>{{cite news2|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3267634|title= トランプ氏の中東和平案は違法、アフリカ連合 パレスチナに連帯表明|newspaper=フランス通信社|date=2020-02-10|accessdate=2020-09-18}}</ref>。
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2月11日、パレスチナのアッバース大統領は国連安保理で、米国による和平案の拒否を呼びかけた。しかし、非難決議案の採決を行うことはできなかった。外交筋によると、米国は採決阻止のため安保理各国に強い圧力を加えており、欧州の一部の国でさえ、採決には消極的だったという<ref>{{cite news2|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3267821|title= パレスチナ議長、トランプ氏の中東和平案の拒否呼び掛け 国連安保理 |newspaper=フランス通信社|date=2020-02-12|accessdate=2020-09-18}}</ref>。
2月11日、パレスチナのアッバース大統領は国連安保理で、米国による和平案の拒否を呼びかけた。しかし、非難決議案の採決を行うことはできなかった。外交筋によると、米国は採決阻止のため安保理各国に強い圧力を加えており、欧州の一部の国でさえ、採決には消極的だったという<ref>{{cite news2|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3267821|title= パレスチナ議長、トランプ氏の中東和平案の拒否呼び掛け 国連安保理 |newspaper=フランス通信社|date=2020-02-12|accessdate=2020-09-18}}</ref>。


2月25日、イスラエルは東エルサレムに5000棟、隣接するE1地区の入植地に3500棟の建設計画を発表した。ネタニヤフ首相は「E1の建物は "巨大な意義 "を持っている」と強調した<ref>{{cite news2|url=https://www.jpost.com/arab-israeli-conflict/netanyahu-says-authorizing-3500-settler-homes-in-west-banks-e1-618710|title=Netanyahu advances plans for 3,500 settler homes in West Bank’s E1|newspaper=エルサレム・ポスト|date=2020-02-25|accessdate=2020-09-14}} {{en icon}}</ref>。PLOは、イスラエルは国際法に違反しており、安保理の支持する2国家解決案に反していると改めて非難した<ref>[http://www.plo.ps/en/article/164/Statement-by-Dr-Saeb-Erakat-SG-PlO-February-,25-th-2020-The-UN-Security-Council-reaffirmed-its-support-for-a-two-state-solution Statement by Dr. Saeb Erakat S.G. P.l.O .February ,25 th 2020: The UN Security Council reaffirmed its support for a two-state solution.] - パレスチナ解放機構{{en icon}}</ref>。また、PLOのエリカット事務局長はTwitterで、「実行されれば2国家解決は終わりです」と非難した<ref>[https://twitter.com/ErakatSaeb/status/1232354615380803586 That is pm Netanyahu’s response to all those who asked him to stop building settlements E1. If carried out it is the end of two states] - Saeb Erakat Twitter{{en icon}}</ref>。日本の大鷹外務報道官は、入植地計画推進に「強い遺憾の意」を表明した<ref>[https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_005114.html イスラエルによる入植地建設計画の推進について (外務報道官談話)] - 外務省</ref>
2月25日、イスラエルは東エルサレムに5000棟、隣接するE1地区の入植地に3500棟の建設計画を発表した。ネタニヤフ首相は「E1の建物は "巨大な意義 "を持っている」と強調した<ref>{{cite news2|url=https://www.jpost.com/arab-israeli-conflict/netanyahu-says-authorizing-3500-settler-homes-in-west-banks-e1-618710|title=Netanyahu advances plans for 3,500 settler homes in West Bank’s E1|newspaper=エルサレム・ポスト|date=2020-02-25|accessdate=2020-09-14}} {{en icon}}</ref>。PLOは、イスラエルは国際法に違反しており、安保理の支持する2国家解決案に反していると改めて非難した<ref>[http://www.plo.ps/en/article/164/Statement-by-Dr-Saeb-Erakat-SG-PlO-February-,25-th-2020-The-UN-Security-Council-reaffirmed-its-support-for-a-two-state-solution Statement by Dr. Saeb Erakat S.G. P.l.O .February ,25 th 2020: The UN Security Council reaffirmed its support for a two-state solution.] - パレスチナ解放機構{{en icon}}</ref>。また、PLOのエリカット事務局長はTwitterで、「実行されれば2国家解決は終わりです」と非難した<ref>[https://twitter.com/ErakatSaeb/status/1232354615380803586 That is pm Netanyahu’s response to all those who asked him to stop building settlements E1. If carried out it is the end of two states] - Saeb Erakat Twitter{{en icon}}</ref>。日本の大鷹外務報道官は、入植地計画推進に「強い遺憾の意」を表明した<ref>[https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_005114.html イスラエルによる入植地建設計画の推進について (外務報道官談話)] - 外務省</ref>


5月6日、イスラエルのベネット国防相は、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地を、新たに7000棟許可したと発表した。[[ベツレヘム]]近郊のエフラト入植地に「数千棟」の建築を認めたという<ref>{{cite news2|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3282025|title= 退任間近のイスラエル国防相、ヨルダン川西岸の入植地拡大を承認|newspaper=フランス通信社|date=2020-05-07|accessdate=2020-09-14}}</ref>。
5月6日、イスラエルのベネット国防相は、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地を、新たに7000棟許可したと発表した。[[ベツレヘム]]近郊のエフラト入植地に「数千棟」の建築を認めたという<ref>{{cite news2|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3282025|title= 退任間近のイスラエル国防相、ヨルダン川西岸の入植地拡大を承認|newspaper=フランス通信社|date=2020-05-07|accessdate=2020-09-14}}</ref>。


5月17日、イスラエルのネタニヤフ首相は閣議で、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地を自国に併合する法整備について、早期実現する考えを示した。[[新型コロナウイルス感染症 (2019年)]]以外の法案は当面保留する方針だが、入植地併合は例外とした<ref>{{cite news2|url=https://www.yomiuri.co.jp/world/20200518-OYT1T50111/|title=イスラエル新政権、ユダヤ人入植地併合向け法整備へ…パレスチナ「宣戦布告だ」 |newspaper=[[読売新聞]]|date=2020-05-18|accessdate=2020-05-22}}</ref>。ネタニヤフ政権は、「[[青と白]]」との連立合意<ref>イスラエルは3度の総選挙を経ても与野党伯仲が続き、組閣ができない状況が続いていた。4月20日、ネタニヤフ首相の与党「リクード」と、政党連合で野党最大会派の「青と白」・[[ベニー・ガンツ]]共同代表の連立協議が合意に至った。{{cite news2|url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58291900R20C20A4000000/|title= イスラエル与野党が挙国一致内閣 ネタニヤフ氏続投へ|newspaper=[[日本経済新聞]]|date=2020-04-21|accessdate=2020-08-26}}</ref>の中で、併合に向けた議論を7月以降に始めると明記した<ref>{{cite news2|url=https://www.asahi.com/articles/ASN5L61NBN5LUHBI006.html|title= イスラエル新政権、夏以降に併合議論 米政権の対応注目|newspaper=朝日新聞|date=2020-05-18|accessdate=2020-08-26}}</ref>。
5月17日、イスラエルのネタニヤフ首相は閣議で、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地を自国に併合する法整備について、早期実現する考えを示した。[[新型コロナウイルス感染症 (2019年)]]以外の法案は当面保留する方針だが、入植地併合は例外とした<ref>{{cite news2|url=https://www.yomiuri.co.jp/world/20200518-OYT1T50111/|title=イスラエル新政権、ユダヤ人入植地併合向け法整備へ…パレスチナ「宣戦布告だ」 |newspaper=[[読売新聞]]|date=2020-05-18|accessdate=2020-05-22}}</ref>。ネタニヤフ政権は、「[[青と白]]」との連立合意<ref>イスラエルは3度の総選挙を経ても与野党伯仲が続き、組閣ができない状況が続いていた。4月20日、ネタニヤフ首相の与党「リクード」と、政党連合で野党最大会派の「青と白」・[[ベニー・ガンツ]]共同代表の連立協議が合意に至った。{{cite news2|url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58291900R20C20A4000000/|title= イスラエル与野党が挙国一致内閣 ネタニヤフ氏続投へ|newspaper=[[日本経済新聞]]|date=2020-04-21|accessdate=2020-08-26}}</ref>の中で、併合に向けた議論を7月以降に始めると明記した<ref>{{cite news2|url=https://www.asahi.com/articles/ASN5L61NBN5LUHBI006.html|title= イスラエル新政権、夏以降に併合議論 米政権の対応注目|newspaper=朝日新聞|date=2020-05-18|accessdate=2020-08-26}}</ref>。


5月30日、東エルサレムで、イスラエルの警察官が、パレスチナ人男性を射殺した。警察官は、男性が拳銃を所持していることを疑い、止まるように命じたが男性は従わず、発砲した。男性は[[自閉症]]による[[知的障害]]があり、付き添いがそのことを訴えたが、警察官は聞かず、さらに発砲して止めを刺した。男性は武器を何も持っていなかった<ref>{{cite news2|url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2020053000329|title= 丸腰のパレスチナ人男性射殺 イスラエル警察|newspaper=時事通信社|date=2020-05-30|accessdate=2020-09-11}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.cnn.co.jp/world/35154590.html|title= 警官が非武装のパレスチナ人射殺 エルサレム|newspaper=CNN|date=2020-05-31|accessdate=2020-09-11}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.haaretz.com/israel-news/.premium.MAGAZINE-he-s-disabled-the-aide-yelled-i-m-with-her-eyad-cried-the-cop-still-shot-him-1.8896746|title= 'He's Disabled,' the Caregiver Screamed. 'I'm With Her,' Eyad Cried. The Cop Opened Fire Anyway|newspaper=ハアレツ|date=2020-06-05|accessdate=2020-09-11}} {{en icon}}</ref>。パレスチナ人たちは抗議デモで、「[[ブラック・ライヴズ・マター|黒人の命は大切]]」にならって「パレスチナ人の命は大切」と訴えた<ref>{{cite news2|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3285804|title= イスラエル警察、パレスチナ人障害者を射殺 拳銃所持と誤認|newspaper=フランス通信社|date=2020-05-31|accessdate=2020-09-11}}</ref>。[[5月31日]]、ガンツ国防相は「極めて遺憾」であると表明し、迅速な調査を行うことを明らかにした。イスラエルの人権団体"B'Tselem"によると、2011年4月から2020年5月までの間に、イスラエルの治安部隊は、イスラエル領およびイスラエル占領下のパレスチナ自治区で、パレスチナ人3408人を殺害した。しかし、イスラエルの治安部隊で有罪となったのは5人だけであった<ref>{{cite news2|url=https://www.aljazeera.com/news/2020/06/family-slain-autistic-palestinian-optimistic-inquiry-200603073001069.html|title= Family of slain autistic Palestinian not optimistic over inquiry|newspaper=アルジャジーラ|date=2020-06-03|accessdate=2020-09-11}} {{en icon}}</ref>。
5月30日、東エルサレムで、イスラエルの警察官が、パレスチナ人男性を射殺した。警察官は、男性が拳銃を所持していることを疑い、止まるように命じたが男性は従わず、発砲した。男性は[[自閉症]]による[[知的障害]]があり、付き添いがそのことを訴えたが、警察官は聞かず、さらに発砲して止めを刺した。男性は武器を何も持っていなかった<ref>{{cite news2|url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2020053000329|title= 丸腰のパレスチナ人男性射殺 イスラエル警察|newspaper=時事通信社|date=2020-05-30|accessdate=2020-09-11}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.cnn.co.jp/world/35154590.html|title= 警官が非武装のパレスチナ人射殺 エルサレム|newspaper=CNN|date=2020-05-31|accessdate=2020-09-11}}</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.haaretz.com/israel-news/.premium.MAGAZINE-he-s-disabled-the-aide-yelled-i-m-with-her-eyad-cried-the-cop-still-shot-him-1.8896746|title= 'He's Disabled,' the Caregiver Screamed. 'I'm With Her,' Eyad Cried. The Cop Opened Fire Anyway|newspaper=ハアレツ|date=2020-06-05|accessdate=2020-09-11}} {{en icon}}</ref>。パレスチナ人たちは抗議デモで、「[[ブラック・ライヴズ・マター|黒人の命は大切]]」にならって「パレスチナ人の命は大切」と訴えた<ref>{{cite news2|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3285804|title= イスラエル警察、パレスチナ人障害者を射殺 拳銃所持と誤認|newspaper=フランス通信社|date=2020-05-31|accessdate=2020-09-11}}</ref>。[[5月31日]]、ガンツ国防相は「極めて遺憾」であると表明し、迅速な調査を行うことを明らかにした。イスラエルの人権団体"B'Tselem"によると、2011年4月から2020年5月までの間に、イスラエルの治安部隊は、イスラエル領およびイスラエル占領下のパレスチナ自治区で、パレスチナ人3408人を殺害した。しかし、イスラエルの治安部隊で有罪となったのは5人だけであった<ref>{{cite news2|url=https://www.aljazeera.com/news/2020/06/family-slain-autistic-palestinian-optimistic-inquiry-200603073001069.html|title= Family of slain autistic Palestinian not optimistic over inquiry|newspaper=アルジャジーラ|date=2020-06-03|accessdate=2020-09-11}} {{en icon}}</ref>。


6月23日、ロイターによると、「米政府当局者と協議に詳しい関係筋」の情報として、アメリカのクシュナー大統領上級顧問、オブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)、バーコウィッツ中東担当特使、フリードマン駐イスラエル大使の4人が、イスラエルによる併合を承認するかどうかの協議を開始した。トランプ政権は併合を承認する方向だが、「イスラエルの急激な動き」を容認すればパレスチナを協議に参加させられなくなることを恐れ、エルサレムに近い複数の入植地の(イスラエルの)主権承認から段階的に検討しているという<ref>{{cite news2|url=https://jp.reuters.com/article/israel-palestinians-annexation-usa-idJPKBN23V0P8|title= 米大統領側近、イスラエルの入植地併合計画巡る協議開始=関係筋|newspaper=ロイター|date=2020-06-24|accessdate=2020-08-26}}</ref>。
6月23日、ロイターによると、「米政府当局者と協議に詳しい関係筋」の情報として、アメリカのクシュナー大統領上級顧問、オブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)、バーコウィッツ中東担当特使、フリードマン駐イスラエル大使の4人が、イスラエルによる併合を承認するかどうかの協議を開始した。トランプ政権は併合を承認する方向だが、「イスラエルの急激な動き」を容認すればパレスチナを協議に参加させられなくなることを恐れ、エルサレムに近い複数の入植地の(イスラエルの)主権承認から段階的に検討しているという<ref>{{cite news2|url=https://jp.reuters.com/article/israel-palestinians-annexation-usa-idJPKBN23V0P8|title= 米大統領側近、イスラエルの入植地併合計画巡る協議開始=関係筋|newspaper=ロイター|date=2020-06-24|accessdate=2020-08-26}}</ref>。
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6月24日、国連安保理のオンライン会合で、国連の[[アントニオ・グテーレス]]事務総長は「イスラエル政府に対し、併合計画の放棄を求める」と呼びかけた。ベルギー、イギリス、エストニア、フランス、ドイツ、アイルランド、ノルウェーの欧州7か国は共同声明で、「国際法の下、併合は、われわれのイスラエルとの親密な関係に影響を及ぼすことになる。また併合をわれわれが承認することはない」と警告した。アラブ連盟のアハメド・アブルゲイト事務局長は併合について、「将来のいかなる和平の見通しをも破壊」することになると批判した。一方、アメリカのポンペオ国務長官は記者会見で、「イスラエル人がこれらの地域に主権を拡大するという決断は、イスラエル人がなすべき決断だ」と併合を擁護した<ref>{{cite news2|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3290230|title= 西岸併合計画でイスラエルに警告、米は支持 安保理会合|newspaper=フランス通信社|date=2020-06-25|accessdate=2020-08-26}}</ref>。
6月24日、国連安保理のオンライン会合で、国連の[[アントニオ・グテーレス]]事務総長は「イスラエル政府に対し、併合計画の放棄を求める」と呼びかけた。ベルギー、イギリス、エストニア、フランス、ドイツ、アイルランド、ノルウェーの欧州7か国は共同声明で、「国際法の下、併合は、われわれのイスラエルとの親密な関係に影響を及ぼすことになる。また併合をわれわれが承認することはない」と警告した。アラブ連盟のアハメド・アブルゲイト事務局長は併合について、「将来のいかなる和平の見通しをも破壊」することになると批判した。一方、アメリカのポンペオ国務長官は記者会見で、「イスラエル人がこれらの地域に主権を拡大するという決断は、イスラエル人がなすべき決断だ」と併合を擁護した<ref>{{cite news2|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3290230|title= 西岸併合計画でイスラエルに警告、米は支持 安保理会合|newspaper=フランス通信社|date=2020-06-25|accessdate=2020-08-26}}</ref>。


8月13日、アメリカの仲介で、イスラエルは[[アラブ首長国連邦]]との国交正常化に合意したことを発表した([[アブラハム合意]])<ref>{{cite news2|url=https://www.haaretz.com/israel-news/with-trump-s-help-israel-and-the-uae-reach-historic-deal-to-normalize-relations-1.9070687|title=Israel Suspends West Bank Annexation in Deal to Normalize Relations With the UAE |newspaper=ハアレツ|date=2020-08-14|accessdate=2020-08-26}}{{en icon}}</ref><ref>[https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200814/k10012566251000.html イスラエルとUAE 国交正常化へ「歴史的な外交上成果」と強調 2020年8月14日 10時00分] - 日本放送協会</ref>。これは、従来のアラブ連盟が「アラブ平和イニシアティブ」で示した、イスラエルが占領地明け渡しを履行した上での国交正常化という方針の根本的な転換だった。
8月13日、アメリカの仲介で、イスラエルは[[アラブ首長国連邦]]との国交正常化に合意したことを発表した([[アブラハム合意]])<ref>{{cite news2|url=https://www.haaretz.com/israel-news/with-trump-s-help-israel-and-the-uae-reach-historic-deal-to-normalize-relations-1.9070687|title=Israel Suspends West Bank Annexation in Deal to Normalize Relations With the UAE |newspaper=ハアレツ|date=2020-08-14|accessdate=2020-08-26}}{{en icon}}</ref><ref>[https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200814/k10012566251000.html イスラエルとUAE 国交正常化へ「歴史的な外交上成果」と強調 2020年8月14日 10時00分] - 日本放送協会</ref>。これは、従来のアラブ連盟が「アラブ平和イニシアティブ」で示した、イスラエルが占領地明け渡しを履行した上での国交正常化という方針の根本的な転換だった。
<br />イスラエルのネタニヤフ首相は記者会見で、アメリカより合意の条件として、ヨルダン川西岸の併合の「一時停止」を求められたとしたが、「ユダヤ・サマリア<ref name="JudeaSamaria" />に主権を適用し、米国と完全に協調するという私の計画に変更はない」と、将来の併合を進める計画に変わりは無いとする見解を示した<ref>[https://www.i24news.tv/en/news/israel/diplomacy-defense/1597342425-netanyahu-says-no-change-in-west-bank-annexation-plans-despite-uae-peace-deal Netanyahu says no change in West Bank annexation plans despite UAE peace deal] - [[:en:i24 News]] {{en icon}}</ref>。一方、アラブ首長国連邦の[[ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン|ムハンマド・ビン・ザーイド]]・[[アブダビ]]皇太子は、「パレスチナ領土のさらなるイスラエル併合の停止に合意した」として、将来についてはイスラエル側と見解の相違を見せた<ref>[https://twitter.com/MohamedBinZayed/status/1293925353560461312 During a call with President Trump and Prime Minister Netanyahu, an agreement was reached to stop further Israeli annexation of Palestinian territories. The UAE and Israel also agreed to cooperation and setting a roadmap towards establishing a bilateral relationship.] - Twitter ムハンマド・ビン・ザーイド{{en icon}}</ref>。
<br />イスラエルのネタニヤフ首相は記者会見で、アメリカより合意の条件として、ヨルダン川西岸の併合の「一時停止」を求められたとしたが、「ユダヤ・サマリア<ref name="JudeaSamaria" />に主権を適用し、米国と完全に協調するという私の計画に変更はない」と、将来の併合を進める計画に変わりは無いとする見解を示した<ref>[https://www.i24news.tv/en/news/israel/diplomacy-defense/1597342425-netanyahu-says-no-change-in-west-bank-annexation-plans-despite-uae-peace-deal Netanyahu says no change in West Bank annexation plans despite UAE peace deal] - [[:en:i24 News]] {{en icon}}</ref>。一方、アラブ首長国連邦の[[ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン|ムハンマド・ビン・ザーイド]]・[[アブダビ]]皇太子は、「パレスチナ領土のさらなるイスラエル併合の停止に合意した」として、将来についてはイスラエル側と見解の相違を見せた<ref>[https://twitter.com/MohamedBinZayed/status/1293925353560461312 During a call with President Trump and Prime Minister Netanyahu, an agreement was reached to stop further Israeli annexation of Palestinian territories. The UAE and Israel also agreed to cooperation and setting a roadmap towards establishing a bilateral relationship.] - Twitter ムハンマド・ビン・ザーイド{{en icon}}</ref>。


国交正常化交渉でパレスチナの領土問題が協議されたにもかかわらず、当のパレスチナに事前の連絡は無く、協議に加わることもできなかった<ref>[https://www.jpost.com/middle-east/abu-dhabis-crown-prince-says-uae-israel-deal-will-halt-annexation-638546 Palestinians fume over Israel-UAE deal Fatah: UAE betrayed Arabs, Palestinians] - KHALED ABU TOAMEH 『エルサレム・ポスト』{{en icon}}</ref><ref>[https://www.jpost.com/arab-israeli-conflict/the-israel-uae-agreement-winners-and-losers-edition-638632 The Israel-UAE agreement, winners and losers edition] - BEN SALES/JTA 『エルサレム・ポスト』{{en icon}}</ref>。パレスチナのアッバース大統領は「パレスチナの人々に対する攻撃だ」と国交正常化を非難し、マルキ外相は駐アラブ首長国連邦大使の召還を発表した<ref>[https://www.jiji.com/jc/article?k=2020081400346&g=int パレスチナ、正常化合意に猛反発 駐UAE大使を召還 2020年08月14日08時43分] - 時事通信社</ref>。<br />
国交正常化交渉でパレスチナの領土問題が協議されたにもかかわらず、当のパレスチナに事前の連絡は無く、協議に加わることもできなかった<ref>[https://www.jpost.com/middle-east/abu-dhabis-crown-prince-says-uae-israel-deal-will-halt-annexation-638546 Palestinians fume over Israel-UAE deal Fatah: UAE betrayed Arabs, Palestinians] - KHALED ABU TOAMEH 『エルサレム・ポスト』{{en icon}}</ref><ref>[https://www.jpost.com/arab-israeli-conflict/the-israel-uae-agreement-winners-and-losers-edition-638632 The Israel-UAE agreement, winners and losers edition] - BEN SALES/JTA 『エルサレム・ポスト』{{en icon}}</ref>。パレスチナのアッバース大統領は「パレスチナの人々に対する攻撃だ」と国交正常化を非難し、マルキ外相は駐アラブ首長国連邦大使の召還を発表した<ref>[https://www.jiji.com/jc/article?k=2020081400346&g=int パレスチナ、正常化合意に猛反発 駐UAE大使を召還 2020年08月14日08時43分] - 時事通信社</ref>。<br />
しかしネタニヤフ首相は意に介さず、自らの方針である「'''平和のための平和'''」「'''力による平和'''」の正当さを自賛した。これは、従来の和平交渉での「'''土地と平和の交換'''」を否定する主張で、パレスチナへの占領地(イスラエルの見解に拠れば、固有の領土)返還を行わず、一方的に屈服させることが平和に繋がるという意味である。その上で、領土問題を「人質に取った」パレスチナを無視してアラビア諸国と国交を結ぶことで、パレスチナを従わせることが平和に繋がるとする見解を示した<ref>[https://www.gov.il/en/departments/news/spoke_peace_uae160820 PM Netanyahu on the Historic Peace Agreement with the UAE] - イスラエル首相官邸{{en icon}}</ref>。さらに、ネタニヤフは自らの「ネタニヤフ・ドクトリン」の説明として、エフード・ヤアリの「パレスチナとの泥沼の交渉に引きずり込まれるよりも、パレスチナは後回しにしてアラビアはじめ諸外国との国際関係を構築し、パレスチナの拒否権を奪う」「(パレスチナの声明は)怒りよりも欲求不満を示している。アブ・マーゼン(アッバース)らはもはや、アラビア諸国にイスラエルと敵対するよう命令することはできない」とする論説を引いた<ref>[https://twitter.com/netanyahu/status/1294891868673708033 דוקטרינת נתניהו: שלום תמורת שלום, שלום מתוך עוצמה] - Benjamin Netanyahu Twitter{{he icon}}</ref><ref>[https://www.mako.co.il/news-columns/2020_q3/Article-9560d63d469e371027.htm זה הזמן לדבר על "דוקטרינת נתניהו": האיגוף המדיני לפלסטינים מניב פירות היסטוריים] - אהוד יערי N12News{{he icon}}</ref>。アラブ首長国連邦のアンワル・ガルガッシュ外務担当国務大臣<ref>アラブ首長国連邦は、外交担当の大臣を2人設けている。アブダッラー・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン外務兼国際協力大臣の方が序列が上である。</ref>は、ネタニヤフ首相の発言について「イスラエルの(国内)政治についてはよく分からない」「短期間の(併合)停止では無いと思う」と問題にはせず、改めてパレスチナ・イスラエルの両者に交渉に戻るよう呼びかけた<ref>[https://www.axios.com/uae-foreign-minister-interview-israel-deal-5d064ed8-559c-46e3-85c0-9632fda13063.html Exclusive: UAE wants Israel normalization finalized "as soon as possible," minister says] - Barak Ravid [[:en:Axios (website)|Axios]]{{en icon}}</ref>。
しかしネタニヤフ首相は意に介さず、自らの方針である「'''平和のための平和'''」「'''力による平和'''」の正当さを自賛した。これは、従来の和平交渉での「'''土地と平和の交換'''」を否定する主張で、パレスチナへの占領地(イスラエルの見解に拠れば、固有の領土)返還を行わず、一方的に屈服させることが平和に繋がるという意味である。その上で、領土問題を「人質に取った」パレスチナを無視してアラビア諸国と国交を結ぶことで、パレスチナを従わせることが平和に繋がるとする見解を示した<ref>[https://www.gov.il/en/departments/news/spoke_peace_uae160820 PM Netanyahu on the Historic Peace Agreement with the UAE] - イスラエル首相官邸{{en icon}}</ref>。さらに、ネタニヤフは自らの「ネタニヤフ・ドクトリン」の説明として、エフード・ヤアリの「パレスチナとの泥沼の交渉に引きずり込まれるよりも、パレスチナは後回しにしてアラビアはじめ諸外国との国際関係を構築し、パレスチナの拒否権を奪う」「(パレスチナの声明は)怒りよりも欲求不満を示している。アブ・マーゼン(アッバース)らはもはや、アラビア諸国にイスラエルと敵対するよう命令することはできない」とする論説を引いた<ref>[https://twitter.com/netanyahu/status/1294891868673708033 דוקטרינת נתניהו: שלום תמורת שלום, שלום מתוך עוצמה] - Benjamin Netanyahu Twitter{{he icon}}</ref><ref>[https://www.mako.co.il/news-columns/2020_q3/Article-9560d63d469e371027.htm זה הזמן לדבר על "דוקטרינת נתניהו": האיגוף המדיני לפלסטינים מניב פירות היסטוריים] - אהוד יערי N12News{{he icon}}</ref>。アラブ首長国連邦のアンワル・ガルガッシュ外務担当国務大臣<ref>アラブ首長国連邦は、外交担当の大臣を2人設けている。アブダッラー・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン外務兼国際協力大臣の方が序列が上である。</ref>は、ネタニヤフ首相の発言について「イスラエルの(国内)政治についてはよく分からない」「短期間の(併合)停止では無いと思う」と問題にはせず、改めてパレスチナ・イスラエルの両者に交渉に戻るよう呼びかけた<ref>[https://www.axios.com/uae-foreign-minister-interview-israel-deal-5d064ed8-559c-46e3-85c0-9632fda13063.html Exclusive: UAE wants Israel normalization finalized "as soon as possible," minister says] - Barak Ravid [[:en:Axios (website)|Axios]]{{en icon}}</ref>。


イスラエル・アラブ首長国連邦の国交正常化は、日本を含め多くの国が歓迎の意志を示し、あるいは賛否そのものを示さなかった。明確に批判したのはイラン、トルコ、シリア(アサド政権)のみであった。パレスチナ問題についても、イスラエル非国交国を含め、多くはパレスチナの独立や2国家共存への支持を表明したのみで、先の3ヶ国以外で明示的にイスラエルやUAEに遺憾や懸念を示した国は、[[ルクセンブルク]](後に撤回)、[[南アフリカ共和国]]<ref>[http://www.dirco.gov.za/docs/2020/isra0814.htm United Arab Emirates (UAE) and Israel Peace Agreement] - 南アフリカ共和国 国際関係・協力省{{en icon}}</ref>のみに留まった。
イスラエル・アラブ首長国連邦の国交正常化は、日本を含め多くの国が歓迎の意志を示し、あるいは賛否そのものを示さなかった。明確に批判したのはイラン、トルコ、シリア(アサド政権)のみであった。パレスチナ問題についても、イスラエル非国交国を含め、多くはパレスチナの独立や2国家共存への支持を表明したのみで、先の3ヶ国以外で明示的にイスラエルやUAEに遺憾や懸念を示した国は、[[ルクセンブルク]](後に撤回)、[[南アフリカ共和国]]<ref>[http://www.dirco.gov.za/docs/2020/isra0814.htm United Arab Emirates (UAE) and Israel Peace Agreement] - 南アフリカ共和国 国際関係・協力省{{en icon}}</ref>のみに留まった。


[[8月30日]]、イスラエルのネタニヤフ首相は、エルサレムでアメリカのクシュナー大統領上級顧問らと会談した。ネタニヤフは共同記者会見で「もはやパレスチナに(イスラエルとアラブの和平進展を)拒否する権利はないと理解すべきだ」と主張し、クシュナーは「パレスチナにも現実的な提案をしている」「彼らに和平を実現する意思があれば、そのチャンスはある」と主張した<ref>{{cite news2|url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63230000R30C20A8000000/|title= パレスチナに拒否権ない 国交合意でイスラエル首相|newspaper=日本経済新聞|date=2020-08-31|accessdate=2020-09-15}}</ref>。
[[8月30日]]、イスラエルのネタニヤフ首相は、エルサレムでアメリカのクシュナー大統領上級顧問らと会談した。ネタニヤフは共同記者会見で「もはやパレスチナに(イスラエルとアラブの和平進展を)拒否する権利はないと理解すべきだ」と主張し、クシュナーは「パレスチナにも現実的な提案をしている」「彼らに和平を実現する意思があれば、そのチャンスはある」と主張した<ref>{{cite news2|url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63230000R30C20A8000000/|title= パレスチナに拒否権ない 国交合意でイスラエル首相|newspaper=日本経済新聞|date=2020-08-31|accessdate=2020-09-15}}</ref>。


[[9月4日]]、[[コソボ]]と[[セルビア]]は、アメリカ合衆国の仲介で、経済関係の正常化で合意した。米国はまた、コソボとイスラエルの国交正常化と、セルビアの在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移転すると発表した<ref>{{cite news2|url=https://www.yomiuri.co.jp/world/20200905-OYT1T50168/|title= コソボ、イスラエルと国交樹立へ…セルビアは大使館をエルサレムに移転|newspaper=読売新聞|date=2020-09-05|accessdate=2020-09-11}}</ref>。また、イスラエルのネタニヤフ首相は、「エルサレムに大使館を開設する、初めてのイスラム教徒が多数を占める国家であるコソボ」と述べ、コソボの在イスラエル大使館も、エルサレムに開設されることを明らかにした<ref>[https://twitter.com/netanyahu/status/1302300166842712064 שבוע טוב! אני מברך על ההסכם עם קוסובו שתהיה המדינה המוסלמית הראשונה שתפתח שגרירות בירושלים. סרביה תהיה המדינה הראשונה שתפתח שגרירות בירושלים - בהמשך לפריצת הדרך ההיסטורית עם איחוד האמירויות.] - Benjamin Netanyahu Twitter{{he icon}}</ref>。
[[9月4日]]、[[コソボ]]と[[セルビア]]は、アメリカ合衆国の仲介で、経済関係の正常化で合意した。米国はまた、コソボとイスラエルの国交正常化と、セルビアの在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移転すると発表した<ref>{{cite news2|url=https://www.yomiuri.co.jp/world/20200905-OYT1T50168/|title= コソボ、イスラエルと国交樹立へ…セルビアは大使館をエルサレムに移転|newspaper=読売新聞|date=2020-09-05|accessdate=2020-09-11}}</ref>。また、イスラエルのネタニヤフ首相は、「エルサレムに大使館を開設する、初めてのイスラム教徒が多数を占める国家であるコソボ」と述べ、コソボの在イスラエル大使館も、エルサレムに開設されることを明らかにした<ref>[https://twitter.com/netanyahu/status/1302300166842712064 שבוע טוב! אני מברך על ההסכם עם קוסובו שתהיה המדינה המוסלמית הראשונה שתפתח שגרירות בירושלים. סרביה תהיה המדינה הראשונה שתפתח שגרירות בירושלים - בהמשך לפריצת הדרך ההיסטורית עם איחוד האמירויות.] - Benjamin Netanyahu Twitter{{he icon}}</ref>。


[[9月9日]]、アラブ連盟はオンラインで外相会議を開き、イスラエルとアラブ首長国連邦の国交正常化について意見交換をした。パレスチナのマリキ外相は、両国の国交正常化はアラブ和平イニシアティブに反する物と主張し、合意への非難声明のとりまとめを求めた。しかし、アラブ連盟内部でも、既にイスラエルと国交のあるエジプト、ヨルダンに加え、バーレーン、オマーンも国交正常化を支持したことから、非難声明の採択を行うことはできなかった<ref>{{cite news2|url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200910/k10012610251000.html|title= アラブ連盟 パレスチナ求めた声明 採択されず |newspaper=日本放送協会|date=2020-09-10|accessdate=2020-09-11}}</ref>。
[[9月9日]]、アラブ連盟はオンラインで外相会議を開き、イスラエルとアラブ首長国連邦の国交正常化について意見交換をした。パレスチナのマリキ外相は、両国の国交正常化はアラブ和平イニシアティブに反する物と主張し、合意への非難声明のとりまとめを求めた。しかし、アラブ連盟内部でも、既にイスラエルと国交のあるエジプト、ヨルダンに加え、バーレーン、オマーンも国交正常化を支持したことから、非難声明の採択を行うことはできなかった<ref>{{cite news2|url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200910/k10012610251000.html|title= アラブ連盟 パレスチナ求めた声明 採択されず |newspaper=日本放送協会|date=2020-09-10|accessdate=2020-09-11}}</ref>。


[[9月11日]]、アメリカのトランプ大統領は、イスラエルのネタニヤフ首相、バーレーンの[[ハマド・ビン・イーサ・アール・ハリーファ|ハリーファ]]国王と会談し、イスラエルとバーレーンの国交正常化で合意したと発表した。パレスチナ問題については、併合の是非には触れず、「紛争の公正かつ包括的で永続的な解決を達成するための努力を続ける」とした<ref>[https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1304464848831631361 Joint Statement of the United States, the Kingdom of Bahrain, and the State of Israel] - Donald J. Trump Twitter{{en icon}}</ref><ref>[https://bh.usembassy.gov/joint-statement-of-the-united-states-the-kingdom-of-bahrainand-the-state-of-israel/ Joint Statement of the United States, the Kingdom of Bahrain,and the State of Israel] - アメリカ合衆国バーレーン大使館{{en icon}}</ref>。また、(イスラエル占領下の)東エルサレムにある[[アル=アクサー・モスク]]への、イスラム教徒の自由な往来を認めると表明した。<br />
[[9月11日]]、アメリカのトランプ大統領は、イスラエルのネタニヤフ首相、バーレーンの[[ハマド・ビン・イーサ・アール・ハリーファ|ハリーファ]]国王と会談し、イスラエルとバーレーンの国交正常化で合意したと発表した。パレスチナ問題については、併合の是非には触れず、「紛争の公正かつ包括的で永続的な解決を達成するための努力を続ける」とした<ref>[https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1304464848831631361 Joint Statement of the United States, the Kingdom of Bahrain, and the State of Israel] - Donald J. Trump Twitter{{en icon}}</ref><ref>[https://bh.usembassy.gov/joint-statement-of-the-united-states-the-kingdom-of-bahrainand-the-state-of-israel/ Joint Statement of the United States, the Kingdom of Bahrain,and the State of Israel] - アメリカ合衆国バーレーン大使館{{en icon}}</ref>。また、(イスラエル占領下の)東エルサレムにある[[アル=アクサー・モスク]]への、イスラム教徒の自由な往来を認めると表明した。<br />
ネタニヤフ首相は「他のアラブ国家との和平合意締結に興奮している」との声明を発表した。バーレーンの国営通信は、パレスチナとイスラエルの対立を終わらせるための「戦略的な選択」だとするザヤニ外相の声明を伝えた。一方、パレスチナは「アラブの大義への裏切り」であり「パレスチナを占領するイスラエルの醜い犯罪の正当化につながる」と強く反発した<ref>{{cite news2|url=https://www.47news.jp/5249016.html|title= イスラエル、正常化に喜びの声明 バーレーン「戦略的選択」 |newspaper=共同通信社|date=2020-09-11|accessdate=2020-09-13}}</ref>。アメリカのクシュナー大統領上級顧問は、電話での記者会見で「これにより、イスラム世界の緊張が緩和され、パレスチナ問題を自分たちの国益と、自分たちの国内優先事項に焦点を当てるべき外交政策から切り離すことができるようになる」との見解を示した<ref>{{cite news2|url=https://www.timesofisrael.com/kushner-normalization-allows-arabs-to-favor-own-interests-over-palestinians/#gs.fmq74a|title= Kushner: Accords allow Arab states to separate own interests from Palestinians’ |newspaper=The Times of Israel|date=2020-09-11|accessdate=2020-09-15}} {{en icon}}</ref>。佐々木伸と『朝日新聞』は、一連の国交正常化はパレスチナを孤立させ、アメリカ・イスラエルによる和平案「繁栄に至る平和」を呑ませる思惑があると解説した<ref>[https://www.asahi.com/articles/ASN9D7J75N9DUHBI00P.html トランプ氏、選挙目当て外交、バーレーン・イスラエル国交を発表] - 佐々木伸 WEDGE Infinity</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.asahi.com/articles/ASN9D7J75N9DUHBI00P.html|title= パレスチナ孤立、背景にアラブ諸国の国益 焦点はサウジ |newspaper=朝日新聞|date=2020-09-13|accessdate=2020-09-15}}</ref>。
ネタニヤフ首相は「他のアラブ国家との和平合意締結に興奮している」との声明を発表した。バーレーンの国営通信は、パレスチナとイスラエルの対立を終わらせるための「戦略的な選択」だとするザヤニ外相の声明を伝えた。一方、パレスチナは「アラブの大義への裏切り」であり「パレスチナを占領するイスラエルの醜い犯罪の正当化につながる」と強く反発した<ref>{{cite news2|url=https://www.47news.jp/5249016.html|title= イスラエル、正常化に喜びの声明 バーレーン「戦略的選択」 |newspaper=共同通信社|date=2020-09-11|accessdate=2020-09-13}}</ref>。アメリカのクシュナー大統領上級顧問は、電話での記者会見で「これにより、イスラム世界の緊張が緩和され、パレスチナ問題を自分たちの国益と、自分たちの国内優先事項に焦点を当てるべき外交政策から切り離すことができるようになる」との見解を示した<ref>{{cite news2|url=https://www.timesofisrael.com/kushner-normalization-allows-arabs-to-favor-own-interests-over-palestinians/#gs.fmq74a|title= Kushner: Accords allow Arab states to separate own interests from Palestinians’ |newspaper=The Times of Israel|date=2020-09-11|accessdate=2020-09-15}} {{en icon}}</ref>。佐々木伸と『朝日新聞』は、一連の国交正常化はパレスチナを孤立させ、アメリカ・イスラエルによる和平案「繁栄に至る平和」を呑ませる思惑があると解説した<ref>[https://www.asahi.com/articles/ASN9D7J75N9DUHBI00P.html トランプ氏、選挙目当て外交、バーレーン・イスラエル国交を発表] - 佐々木伸 WEDGE Infinity</ref><ref>{{cite news2|url=https://www.asahi.com/articles/ASN9D7J75N9DUHBI00P.html|title= パレスチナ孤立、背景にアラブ諸国の国益 焦点はサウジ |newspaper=朝日新聞|date=2020-09-13|accessdate=2020-09-15}}</ref>。


[[9月15日]]、アメリカのホワイトハウスで、イスラエル、アメリカ、アラブ首長国連邦、バーレーンの4者で「アブラハム合意」が調印された<ref>[https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/the-abraham-accords-declaration/ The Abraham Accords Declaration Foreign Policy Issued on: September 15, 2020] - ホワイトハウス{{en icon}}</ref>。合意では、トランプ政権の和平案「繁栄に至る平和」を前提に、「両国民の正当なニーズと願望を満たすイスラエル・パレスチナ紛争の交渉による解決を実現」するとした<ref>[https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/abraham-accords-peace-agreement-treaty-of-peace-diplomatic-relations-and-full-normalization-between-the-united-arab-emirates-and-the-state-of-israel/ Abraham Accords Peace Agreement: Treaty of Peace, Diplomatic Relations and Full Normalization Between the United Arab Emirates and the State of Israel Foreign Policy Issued on: September 15, 2020(アブラハム合意和平協定 アラブ首長国連邦とイスラエルとの間の平和、外交関係及び完全な国交正常化のための条約)] - ホワイトハウス{{en icon}}</ref><ref>[https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/abraham-accords-declaration-peace-cooperation-constructive-diplomatic-friendly-relations/ Abraham Accords: Declaration of Peace, Cooperation, and Constructive Diplomatic and Friendly Relations Foreign Policy Issued on: September 15, 2020(アブラハム合意 平和、協力、建設的な外交・友好関係の宣言)] - ホワイトハウス イスラエル-バーレーン国交正常化部分{{en icon}}</ref>。
[[9月15日]]、アメリカのホワイトハウスで、イスラエル、アメリカ、アラブ首長国連邦、バーレーンの4者で「アブラハム合意」が調印された<ref>[https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/the-abraham-accords-declaration/ The Abraham Accords Declaration Foreign Policy Issued on: September 15, 2020] - ホワイトハウス{{en icon}}</ref>。合意では、トランプ政権の和平案「繁栄に至る平和」を前提に、「両国民の正当なニーズと願望を満たすイスラエル・パレスチナ紛争の交渉による解決を実現」するとした<ref>[https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/abraham-accords-peace-agreement-treaty-of-peace-diplomatic-relations-and-full-normalization-between-the-united-arab-emirates-and-the-state-of-israel/ Abraham Accords Peace Agreement: Treaty of Peace, Diplomatic Relations and Full Normalization Between the United Arab Emirates and the State of Israel Foreign Policy Issued on: September 15, 2020(アブラハム合意和平協定 アラブ首長国連邦とイスラエルとの間の平和、外交関係及び完全な国交正常化のための条約)] - ホワイトハウス{{en icon}}</ref><ref>[https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/abraham-accords-declaration-peace-cooperation-constructive-diplomatic-friendly-relations/ Abraham Accords: Declaration of Peace, Cooperation, and Constructive Diplomatic and Friendly Relations Foreign Policy Issued on: September 15, 2020(アブラハム合意 平和、協力、建設的な外交・友好関係の宣言)] - ホワイトハウス イスラエル-バーレーン国交正常化部分{{en icon}}</ref>。
<br />米トランプ大統領は記者会見で、「我々はパレスチナ人に大金<ref>同日のネタニヤフとの2者会談前の記者会見では、年間7億5000万ドルとしている。</ref>を払ってきたが、我々は適切に扱われていなかった。(だからUNRWAなどへの)支払を止めた」「彼らが敬意を払わないなら、我々はもう関わらない。彼らは状況を見ていると思うし、我々は強い信号を送ってきた」とパレスチナを非難し、「繁栄に至る平和」の受け入れを迫った<ref>[https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-minister-bin-zayed-united-arab-emirates-bilateral-meeting/ Remarks by President Trump and Minister bin Zayed of the United Arab Emirates Before Bilateral Meeting Foreign Policy Issued on: September 15, 2020] - ホワイトハウス{{en icon}}</ref>。またトランプは、「他の国は彼ら(パレスチナ)に援助を与えている。あなた(ネタニヤフ)が相手にしているのは、非常に裕福な国だ。そして、これらの国々は我々と(和平の)署名をしている。全ての国が署名をするだろう」と、これまでパレスチナを援助して来たアラブ諸国が、「我々」(イスラエル・アメリカ)の側に付いたことを暗示した<ref>[https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-prime-minister-netanyahu-state-israel-bilateral-meeting-091520/ Remarks by President Trump and Prime Minister Netanyahu of the State of Israel Before Bilateral Meeting Foreign Policy Issued on: September 15, 2020] - ホワイトハウス{{en icon}}</ref>。
<br />米トランプ大統領は記者会見で、「我々はパレスチナ人に大金<ref>同日のネタニヤフとの2者会談前の記者会見では、年間7億5000万ドルとしている。</ref>を払ってきたが、我々は適切に扱われていなかった。(だからUNRWAなどへの)支払を止めた」「彼らが敬意を払わないなら、我々はもう関わらない。彼らは状況を見ていると思うし、我々は強い信号を送ってきた」とパレスチナを非難し、「繁栄に至る平和」の受け入れを迫った<ref>[https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-minister-bin-zayed-united-arab-emirates-bilateral-meeting/ Remarks by President Trump and Minister bin Zayed of the United Arab Emirates Before Bilateral Meeting Foreign Policy Issued on: September 15, 2020] - ホワイトハウス{{en icon}}</ref>。またトランプは、「他の国は彼ら(パレスチナ)に援助を与えている。あなた(ネタニヤフ)が相手にしているのは、非常に裕福な国だ。そして、これらの国々は我々と(和平の)署名をしている。全ての国が署名をするだろう」と、これまでパレスチナを援助して来たアラブ諸国が、「我々」(イスラエル・アメリカ)の側に付いたことを暗示した<ref>[https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-prime-minister-netanyahu-state-israel-bilateral-meeting-091520/ Remarks by President Trump and Prime Minister Netanyahu of the State of Israel Before Bilateral Meeting Foreign Policy Issued on: September 15, 2020] - ホワイトハウス{{en icon}}</ref>。


[[9月22日]]、パレスチナはアラブ連盟理事会の議長を返上した。議長は加盟国の持ち回りで6ヶ月の任期であるが、パレスチナのマリキ外相は「議長職の間に、アラブ人が(イスラエルとの)正常化に向けて突進するのを見ることは名誉なことではない」と、加盟国への失望を示した<ref>{{cite news2|url=https://www.aljazeera.com/news/2020/9/22/palestine-quits-arab-league-role-in-protest-over-israel-deals|title= Palestine quits Arab League role in protest over Israel deals |newspaper=アルジャジーラ|date=2020-09-22|accessdate=2020-09-24}} {{en icon}}</ref>。
[[9月22日]]、パレスチナはアラブ連盟理事会の議長を返上した。議長は加盟国の持ち回りで6ヶ月の任期であるが、パレスチナのマリキ外相は「議長職の間に、アラブ人が(イスラエルとの)正常化に向けて突進するのを見ることは名誉なことではない」と、加盟国への失望を示した<ref>{{cite news2|url=https://www.aljazeera.com/news/2020/9/22/palestine-quits-arab-league-role-in-protest-over-israel-deals|title= Palestine quits Arab League role in protest over Israel deals |newspaper=アルジャジーラ|date=2020-09-22|accessdate=2020-09-24}} {{en icon}}</ref>。
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== パレスチナ問題への各国対応 ==
== パレスチナ問題への各国対応 ==
[[アメリカ合衆国]]は[[ユダヤ人]]の[[ロビー活動]]もあって、イスラエルと極めて関係が深く、[[国際連合安全保障理事会|国連安保理]]でイスラエル非難決議案が出されると、ほぼ確実に[[拒否権]]を発動している<ref>これが、「アメリカは[[ユダヤ人]]に握られている」とするユダヤ陰謀論に根拠を与える理由になっている</ref>。民間レベルでも、2010年2月の[[ギャラップ (企業)|ギャラップ社]]の[[世論調査]]によれば、イスラエルへの好感度は67%で、調査した20ヶ国・地域中上から5番目(上から[[カナダ]]、[[イギリス]]、[[ドイツ]]、[[日本]]の順)と比較的高い。逆にパレスチナ自治区への好感度は20%で下から4番目(下から[[イラン]]、[[朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮]]、[[アフガニスタン]]の順)と低く、アメリカは親イスラエル・反パレスチナの国民感情を示している<ref>[http://www.gallup.com/poll/126116/Canada-Places-First-Image-Contest-Iran-Last.aspx February 19, 2010 In U.S., Canada Places First in Image Contest; Iran Last]。なお、2008年3月の調査では22ヶ国・地域中イスラエルは71%で上から5番目、パレスチナは14%で下から3番目だった([http://www.gallup.com/poll/104734/Americans-Most-Least-Favored-Nations.aspx March 3, 2008 Americans’ Most and Least Favored Nations])。</ref>。また、同じくギャラップ社が2010年2月に中東問題に関して行った世論調査では、米国民のイスラエル支持率は63%、パレスチナ支持率は15%を記録している<ref>[http://www.gallup.com/poll/126155/Support-Israel-Near-Record-High.aspx February 24, 2010 Support for Israel in U.S. at 63%, Near Record High]。特に[[共和党_(アメリカ)|共和党]]支持者のイスラエル支持率は高く、85%に達している。諸派・[[無党派]]は60%、[[民主党_(アメリカ)|民主党]]支持者は48%。</ref>。逆に[[イギリス|英]][[BBC]]と[[読売新聞社]]が22カ国で「良い影響を及ぼしている国」と「悪い影響を及ぼしている国」を調査した結果、悪い影響を及ぼしている国では、1位イラン55%、2位のパキスタン51%に続き、3位に北朝鮮とイスラエルで50%となり世界的には否定的に捉えられている事が判明した<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120510-OYT1T01606.htm 「世界に良い影響」日本トップ…BBC読売調査]</ref><ref>[http://www.ips-j.com/entry/210;jsessionid=C5465EB8A71884C97740435F02437187 好感度調査:低いイスラエル、イラン、米国]</ref>。
[[アメリカ合衆国]]は[[ユダヤ人]]の[[ロビー活動]]もあって、イスラエルと極めて関係が深く、[[国際連合安全保障理事会|国連安保理]]でイスラエル非難決議案が出されると、ほぼ確実に[[拒否権]]を発動している<ref>これが、「アメリカは[[ユダヤ人]]に握られている」とするユダヤ陰謀論に根拠を与える理由になっている</ref>。民間レベルでも、2010年2月の[[ギャラップ (企業)|ギャラップ社]]の[[世論調査]]によれば、イスラエルへの好感度は67%で、調査した20ヶ国・地域中上から5番目(上から[[カナダ]]、[[イギリス]]、[[ドイツ]]、[[日本]]の順)と比較的高い。逆にパレスチナ自治区への好感度は20%で下から4番目(下から[[イラン]]、[[朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮]]、[[アフガニスタン]]の順)と低く、アメリカは親イスラエル・反パレスチナの国民感情を示している<ref>[http://www.gallup.com/poll/126116/Canada-Places-First-Image-Contest-Iran-Last.aspx February 19, 2010 In U.S., Canada Places First in Image Contest; Iran Last]。なお、2008年3月の調査では22ヶ国・地域中イスラエルは71%で上から5番目、パレスチナは14%で下から3番目だった([http://www.gallup.com/poll/104734/Americans-Most-Least-Favored-Nations.aspx March 3, 2008 Americans’ Most and Least Favored Nations])。</ref>。また、同じくギャラップ社が2010年2月に中東問題に関して行った世論調査では、米国民のイスラエル支持率は63%、パレスチナ支持率は15%を記録している<ref>[http://www.gallup.com/poll/126155/Support-Israel-Near-Record-High.aspx February 24, 2010 Support for Israel in U.S. at 63%, Near Record High]。特に[[共和党_(アメリカ)|共和党]]支持者のイスラエル支持率は高く、85%に達している。諸派・[[無党派]]は60%、[[民主党_(アメリカ)|民主党]]支持者は48%。</ref>。逆に[[イギリス|英]][[BBC]]と[[読売新聞社]]が22カ国で「良い影響を及ぼしている国」と「悪い影響を及ぼしている国」を調査した結果、悪い影響を及ぼしている国では、1位イラン55%、2位のパキスタン51%に続き、3位に北朝鮮とイスラエルで50%となり世界的には否定的に捉えられている事が判明した<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120510-OYT1T01606.htm 「世界に良い影響」日本トップ…BBC読売調査]</ref><ref>[http://www.ips-j.com/entry/210;jsessionid=C5465EB8A71884C97740435F02437187 好感度調査:低いイスラエル、イラン、米国]</ref>。


また、[[軍事]]援助も継続して行っている。2007年[[7月29日]]にイスラエルの[[オルメルト]]首相が明かしたところによると、イスラエルはアメリカに対し、従来の25%増となる、10年間で300億ドル(約3兆5000億円)の軍事援助を取り付けた。従来は年間24億ドル(約2,800億円)([[フランス通信社|AFP通信]] 「[http://www.afpbb.com/article/politics/2261221/1950348 米政府、イスラエルに10年で300億ドルの軍事支援に合意 * 2007年07月29日 21:35 発信地:エルサレム/イスラエル]」)。この金額は、イスラエルの[[軍事費]]の2割以上に相当する。2016年には、アメリカはイスラエルに対し、2019年 - 2028年の10年間で380億ドル(約3兆9000億円)の軍事援助を行うことで同意した<ref>{{cite news2|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3101042|title= 米、イスラエルに3.9兆円の軍事支援 史上最大規模 |newspaper=フランス通信社|date=2016-09-15|accessdate=2020-09-18}}</ref>。
また、[[軍事]]援助も継続して行っている。2007年[[7月29日]]にイスラエルの[[オルメルト]]首相が明かしたところによると、イスラエルはアメリカに対し、従来の25%増となる、10年間で300億ドル(約3兆5000億円)の軍事援助を取り付けた。従来は年間24億ドル(約2,800億円)([[フランス通信社|AFP通信]] 「[http://www.afpbb.com/article/politics/2261221/1950348 米政府、イスラエルに10年で300億ドルの軍事支援に合意 * 2007年07月29日 21:35 発信地:エルサレム/イスラエル]」)。この金額は、イスラエルの[[軍事費]]の2割以上に相当する。2016年には、アメリカはイスラエルに対し、2019年 - 2028年の10年間で380億ドル(約3兆9000億円)の軍事援助を行うことで同意した<ref>{{cite news2|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3101042|title= 米、イスラエルに3.9兆円の軍事支援 史上最大規模 |newspaper=フランス通信社|date=2016-09-15|accessdate=2020-09-18}}</ref>。


これは無償援助のみの額で、有償での[[借款]]や兵器の売買などを含めると、アメリカによる出資はさらに巨額になる。
これは無償援助のみの額で、有償での[[借款]]や兵器の売買などを含めると、アメリカによる出資はさらに巨額になる。
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アジア、アフリカ諸国は、大部分がパレスチナを承認している。[[中華人民共和国]]はパレスチナを承認する一方、[[2007年]]1月10日 - 11日には[[胡錦涛]]国家主席、[[温家宝]]首相がイスラエルのオルメルト首相と会談するなど、両にらみの態度を取っている。中南米諸国は、2010年[[12月3日]]に[[ブラジル]]が承認したのを皮切りに、承認国が大勢を占めるようになった。
アジア、アフリカ諸国は、大部分がパレスチナを承認している。[[中華人民共和国]]はパレスチナを承認する一方、[[2007年]]1月10日 - 11日には[[胡錦涛]]国家主席、[[温家宝]]首相がイスラエルのオルメルト首相と会談するなど、両にらみの態度を取っている。中南米諸国は、2010年[[12月3日]]に[[ブラジル]]が承認したのを皮切りに、承認国が大勢を占めるようになった。


日本は、パレスチナは未承認であり、現在は将来の承認を予定した自治区として扱っている。パレスチナに物資の援助は行うが、ハマースへの対応は欧米に歩調を合わせている。また、日本の援助で建てられたパレスチナの施設が、イスラエルにしばしば破壊されているが、これについてイスラエルに抗議は行っていない。[[2008年]][[2月25日]]、イスラエルのオルメルト首相は来日し、[[2月27日]]、[[福田康夫]]首相と会談した。福田首相は、「平和と繁栄の回廊」構想の具体化を急ぐ考えを改めて表明し、会談後両国の関係強化などを盛り込んだ共同声明を発表した。また、イスラエルが北朝鮮によるシリア、イランへの軍事協力を示す情報を提供することも分かった。しかし、イスラエルのガザ地区などへの攻撃については、日本は何も触れなかった。翌[[2月28日]]、オルメルト首相は、日本の[[記者クラブ]]の講演で「北朝鮮とイラン、シリア、[[ヒズボラ]]、ハマースは[[悪の枢軸]]だ」と述べた。北朝鮮はこの動きに反発し、「イスラエルこそ危険な反動勢力」と主張した<ref>[http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2008/05/0805j0314-00003.htm 〈論調〉 イスラエルこそ危険な反動勢力] 『[[朝鮮新報]]』[[3月14日]]号、『[[労働新聞]]』[[3月9日]]号より[[転載]]</ref>。
日本は、パレスチナは未承認であり、現在は将来の承認を予定した自治区として扱っている。パレスチナに物資の援助は行うが、ハマースへの対応は欧米に歩調を合わせている。また、日本の援助で建てられたパレスチナの施設が、イスラエルにしばしば破壊されているが、これについてイスラエルに抗議は行っていない。[[2008年]][[2月25日]]、イスラエルのオルメルト首相は来日し、[[2月27日]]、[[福田康夫]]首相と会談した。福田首相は、「平和と繁栄の回廊」構想の具体化を急ぐ考えを改めて表明し、会談後両国の関係強化などを盛り込んだ共同声明を発表した。また、イスラエルが北朝鮮によるシリア、イランへの軍事協力を示す情報を提供することも分かった。しかし、イスラエルのガザ地区などへの攻撃については、日本は何も触れなかった。翌[[2月28日]]、オルメルト首相は、日本の[[記者クラブ]]の講演で「北朝鮮とイラン、シリア、[[ヒズボラ]]、ハマースは[[悪の枢軸]]だ」と述べた。北朝鮮はこの動きに反発し、「イスラエルこそ危険な反動勢力」と主張した<ref>[http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2008/05/0805j0314-00003.htm 〈論調〉 イスラエルこそ危険な反動勢力] 『[[朝鮮新報]]』[[3月14日]]号、『[[労働新聞]]』[[3月9日]]号より[[転載]]</ref>。


報道については、双方が相手に有利な[[偏向報道]]を行っていると主張している<ref>[http://www.geocities.jp/uruknewsjapan/2006_Rules_of_the_Western_Media.html 中東問題を扱う西側メディアの規則](パレスチナ)<br />[[シモン・ペレス]] [http://www.peres-center.org/ The Peres Center For Peace](イスラエル、英語)</ref>。2008年[[3月12日]]、イスラエルは[[カタール]]の放送局[[アルジャジーラ]]の取材を、ハマース偏向報道を理由に拒否した。さらに、アルジャジーラ本社やカタール政府に懸念を表明する文書の送付や、アルジャジーラ記者の[[ビザ]]発給制限も検討している。
報道については、双方が相手に有利な[[偏向報道]]を行っていると主張している<ref>[http://www.geocities.jp/uruknewsjapan/2006_Rules_of_the_Western_Media.html 中東問題を扱う西側メディアの規則](パレスチナ)<br />[[シモン・ペレス]] [http://www.peres-center.org/ The Peres Center For Peace](イスラエル、英語)</ref>。2008年[[3月12日]]、イスラエルは[[カタール]]の放送局[[アルジャジーラ]]の取材を、ハマース偏向報道を理由に拒否した。さらに、アルジャジーラ本社やカタール政府に懸念を表明する文書の送付や、アルジャジーラ記者の[[ビザ]]発給制限も検討している。
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''詳細は「[[ヨルダン川西岸地区]]」および「[[イスラエル西岸地区の分離壁]]」を参照''
''詳細は「[[ヨルダン川西岸地区]]」および「[[イスラエル西岸地区の分離壁]]」を参照''


パレスチナのヨルダン川西岸地区は、パレスチナ自治政府が行政権、警察権共に実権を握るA地区、パレスチナ自治政府が行政権、イスラエル軍が警察権の実権を握るB地区、イスラエル軍が行政権、軍事権共に実権を握るC地区に分けられ、[[2000年]]現在、面積の59%がC地区である。なお、イスラエルはこの他に「[[軍事基地]](Military base)」「射撃場(Firing zone)」「[[自然保護区]](Nature Reserve)」も分類しているが<ref>[https://www.ochaopt.org/sites/default/files/westbank_a0_25_06_2020_final.pdf WEST BANKACCESS RESTRICTIONS - JUNE 2020] - [[国際連合人道問題調整事務所]](OCHA)</ref>、実質的にC地区の一部である。また、イスラエル軍占領地、ユダヤ人入植地は、これらの面積には含まれない(詳細は[[ヨルダン川西岸地区#統治者による区分]]参照)<ref>地図 [http://palestine-heiwa.org/map/s-note/img/l/westbank4c_rgb_dl-l.png ヨルダン川西岸]</ref>。<br />
パレスチナのヨルダン川西岸地区は、パレスチナ自治政府が行政権、警察権共に実権を握るA地区、パレスチナ自治政府が行政権、イスラエル軍が警察権の実権を握るB地区、イスラエル軍が行政権、軍事権共に実権を握るC地区に分けられ、[[2000年]]現在、面積の59%がC地区である。なお、イスラエルはこの他に「[[軍事基地]](Military base)」「射撃場(Firing zone)」「[[自然保護区]](Nature Reserve)」も分類しているが<ref>[https://www.ochaopt.org/sites/default/files/westbank_a0_25_06_2020_final.pdf WEST BANKACCESS RESTRICTIONS - JUNE 2020] - [[国際連合人道問題調整事務所]](OCHA)</ref>、実質的にC地区の一部である。また、イスラエル軍占領地、ユダヤ人入植地は、これらの面積には含まれない(詳細は[[ヨルダン川西岸地区#統治者による区分]]参照)<ref>地図 [http://palestine-heiwa.org/map/s-note/img/l/westbank4c_rgb_dl-l.png ヨルダン川西岸]</ref>。<br />
イスラエル支配下のパレスチナ人地区では、住居の建設はイスラエルの許可が必要だが、イスラエルの市民団体「ピース・ナウ」によれば、申請の94%が却下される<ref>[http://www.imemc.org/article/52988 94% of applications for construction permits are rejected by Israel](英語)</ref>。特にC地区では、2008年2月現在、パレスチナ人の住居は、自分の土地であっても過去10年間1軒も許可されていない。
イスラエル支配下のパレスチナ人地区では、住居の建設はイスラエルの許可が必要だが、イスラエルの市民団体「ピース・ナウ」によれば、申請の94%が却下される<ref>[http://www.imemc.org/article/52988 94% of applications for construction permits are rejected by Israel](英語)</ref>。特にC地区では、2008年2月現在、パレスチナ人の住居は、自分の土地であっても過去10年間1軒も許可されていない。


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イスラエルは単に壁を作るだけではなく、道路の通行規制も行っている。パレスチナ自治区であるべき地域に、イスラエル人専用道路(パレスチナ人立ち入り禁止)や、パレスチナ人の通行制限されている道路が多数存在している([http://palestine-heiwa.org/feature/oda/img/westbank07.html 地図:ヨルダン渓谷沿い入植地群])。
イスラエルは単に壁を作るだけではなく、道路の通行規制も行っている。パレスチナ自治区であるべき地域に、イスラエル人専用道路(パレスチナ人立ち入り禁止)や、パレスチナ人の通行制限されている道路が多数存在している([http://palestine-heiwa.org/feature/oda/img/westbank07.html 地図:ヨルダン渓谷沿い入植地群])。


また、イスラエル軍や、ユダヤ人入植者などのイスラエル民間人は事実上[[治外法権]]であり、たとえパレスチナ自治政府が警察権を握るA地区であっても、イスラエル軍民の犯罪を摘発することはできない状況である<ref name="Amnesty2009">[https://www.amnesty.or.jp/library/report/pdf/troubledwaters_101108.pdf 我田引水 公平な水利を得られないパレスチナ人] - アムネスティ・インターナショナル</ref>。
また、イスラエル軍や、ユダヤ人入植者などのイスラエル民間人は事実上[[治外法権]]であり、たとえパレスチナ自治政府が警察権を握るA地区であっても、イスラエル軍民の犯罪を摘発することはできない状況である<ref name="Amnesty2009">[https://www.amnesty.or.jp/library/report/pdf/troubledwaters_101108.pdf 我田引水 公平な水利を得られないパレスチナ人] - アムネスティ・インターナショナル</ref>。


パレスチナ人在住・所有の土地の没収も、日常的に行われている。イスラエルの行政法は、今日でもオスマン帝国・イギリス委任統治領パレスチナ時代の法律が多く残っており、イスラエルはこれらの法律も利用している。たとえば、第三次中東戦争での占領後、1967年7月31日にイスラエル国防軍は軍律59を布告し、「敵国」、すなわち従来ヨルダン・エジプトが国有地としていた土地を全て自国の国有地と宣言した。しかし私有地の没収については1979年、イスラエル最高裁で違法判決が出たため、新たな法的根拠を用意する必要があった。そこでイスラエル軍は、軍律59を改正し、イスラエルが国有地と宣言した土地に対しては、私有地であることを証明する手続きが必要であるようにした。占領地には、未登記でパレスチナ人が生活の用に供している土地が少なくなく、イスラエル軍は全てこれを国有地と宣言した。また、異議申立は通常の裁判所では無く、イスラエル軍運営の「異議申立委員会」でしか行えないようにした。これにより、イスラエル軍はさらに多くのパレスチナ人を追放した。さらに、イスラム法に端を発する、「3年間未耕作の土地は[[スルターン|スルタン]]が収公する」規定を国家の収公と読み替え、パレスチナ人の耕作を妨害することによって、私有地についても多くの土地を国有地として没収した。没収した土地は、ユダヤ人に入植地として、本来のイスラエル領内の1/3程度の価格で販売されている<ref>[http://geo.d51498.com/SilkRoad-Lake/2917/middleeast/gaza.html 地域全体が難民キャンプか、はたまた監獄か ガザ 帰属未定地(パレスチナ暫定自治政府管轄地域)] - [[吉田一郎]]</ref><ref>[https://irdb.nii.ac.jp/en/00985/0004065391 土地の歴史 ― パレスチナ所有の根源はどこに ― イスラエル入植地の構造 中東百年紛争史(第4回)] - 森戸幸次 『環境と経営 : 静岡産業大学論集』25巻1号</ref>。
パレスチナ人在住・所有の土地の没収も、日常的に行われている。イスラエルの行政法は、今日でもオスマン帝国・イギリス委任統治領パレスチナ時代の法律が多く残っており、イスラエルはこれらの法律も利用している。たとえば、第三次中東戦争での占領後、1967年7月31日にイスラエル国防軍は軍律59を布告し、「敵国」、すなわち従来ヨルダン・エジプトが国有地としていた土地を全て自国の国有地と宣言した。しかし私有地の没収については1979年、イスラエル最高裁で違法判決が出たため、新たな法的根拠を用意する必要があった。そこでイスラエル軍は、軍律59を改正し、イスラエルが国有地と宣言した土地に対しては、私有地であることを証明する手続きが必要であるようにした。占領地には、未登記でパレスチナ人が生活の用に供している土地が少なくなく、イスラエル軍は全てこれを国有地と宣言した。また、異議申立は通常の裁判所では無く、イスラエル軍運営の「異議申立委員会」でしか行えないようにした。これにより、イスラエル軍はさらに多くのパレスチナ人を追放した。さらに、イスラム法に端を発する、「3年間未耕作の土地は[[スルターン|スルタン]]が収公する」規定を国家の収公と読み替え、パレスチナ人の耕作を妨害することによって、私有地についても多くの土地を国有地として没収した。没収した土地は、ユダヤ人に入植地として、本来のイスラエル領内の1/3程度の価格で販売されている<ref>[http://geo.d51498.com/SilkRoad-Lake/2917/middleeast/gaza.html 地域全体が難民キャンプか、はたまた監獄か ガザ 帰属未定地(パレスチナ暫定自治政府管轄地域)] - [[吉田一郎]]</ref><ref>[https://irdb.nii.ac.jp/en/00985/0004065391 土地の歴史 ― パレスチナ所有の根源はどこに ― イスラエル入植地の構造 中東百年紛争史(第4回)] - 森戸幸次 『環境と経営 : 静岡産業大学論集』25巻1号</ref>。


[[国際連合人道問題調整事務所]](OCHA)の報告<ref name="OCHA2019">[https://www.ochaopt.org/content/demolitions-west-bank-undermine-access-water#ftn1 Demolitions in West Bank undermine access to water Rate increases in first quarter of 2019] - OCHA</ref>によると、2019年の第1四半期(1~3月)に、ヨルダン川西岸地区でイスラエル軍によって、136のパレスチナ人による建造物が破壊された。イスラエル軍が破壊したのは、42%が住宅、38%が住宅関連施設、7%が水道・衛生施設だった。これにより、218人が事実上追放され、約25000人が影響を受けた。もっとも深刻な被害は、2月17日に行われた水道管の破壊で、ベイトフリック村、ベイトダジャン村(いずれもB地区)のあわせて約18000人が影響を受けた。また、ヘブロン南部のマッサファー・ヤッタ地区(イスラエルは「射撃場」に指定し、住民の立ち退きを要求)では、2018年10月にoPt人道基金の寄付で灌漑が整備されたが、2019年2月にイスラエル軍によって破壊された。また、A地区・B地区においても、住宅2軒がイスラエル軍によって破壊され、8人が避難した。OCHAは2009年より、パレスチナ側の被害状況を集計しているが、2019年第1四半期は過去2年より多いペースで、最多を記録した2016年は下回った。
[[国際連合人道問題調整事務所]](OCHA)の報告<ref name="OCHA2019">[https://www.ochaopt.org/content/demolitions-west-bank-undermine-access-water#ftn1 Demolitions in West Bank undermine access to water Rate increases in first quarter of 2019] - OCHA</ref>によると、2019年の第1四半期(1~3月)に、ヨルダン川西岸地区でイスラエル軍によって、136のパレスチナ人による建造物が破壊された。イスラエル軍が破壊したのは、42%が住宅、38%が住宅関連施設、7%が水道・衛生施設だった。これにより、218人が事実上追放され、約25000人が影響を受けた。もっとも深刻な被害は、2月17日に行われた水道管の破壊で、ベイトフリック村、ベイトダジャン村(いずれもB地区)のあわせて約18000人が影響を受けた。また、ヘブロン南部のマッサファー・ヤッタ地区(イスラエルは「射撃場」に指定し、住民の立ち退きを要求)では、2018年10月にoPt人道基金の寄付で灌漑が整備されたが、2019年2月にイスラエル軍によって破壊された。また、A地区・B地区においても、住宅2軒がイスラエル軍によって破壊され、8人が避難した。OCHAは2009年より、パレスチナ側の被害状況を集計しているが、2019年第1四半期は過去2年より多いペースで、最多を記録した2016年は下回った。


2020年9月のOCHA報告によると、イスラエル軍によるパレスチナ人所有の建造物の破壊は、2017年は月平均35件、2018年は38件であったが、2019年は52件と増加した。2020年は、新型コロナウイルス感染症流行初期の1-2月は、月平均45件に減少したが、3-8月は65件と、2017年からの4年間で最も多くなった。また、2020年3月から8月の間だけで、442人のパレスチナ人が家を失った。特に、8月は205人が家を失ったが、これは過去4年間で最多であった。<br />
2020年9月のOCHA報告によると、イスラエル軍によるパレスチナ人所有の建造物の破壊は、2017年は月平均35件、2018年は38件であったが、2019年は52件と増加した。2020年は、新型コロナウイルス感染症流行初期の1-2月は、月平均45件に減少したが、3-8月は65件と、2017年からの4年間で最も多くなった。また、2020年3月から8月の間だけで、442人のパレスチナ人が家を失った。特に、8月は205人が家を失ったが、これは過去4年間で最多であった。<br />
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**[[エリコ]]、その他の地域に関する問題
**[[エリコ]]、その他の地域に関する問題
**[[入植地]]問題
**[[入植地]]問題
*[[水]]資源問題<ref>[http://nautilus.org/network/associates/richard-tanter/6c3452296a29306e652f914d-30a430b930e930a830eb5bfe30ec30b930c130ca62264e89306e898b904e3055308c305f4e009762/#axzz38psfFBvr 水利権の支配:イスラエル対パレスチナ戦争の見過ごされた一面] - Nautilus Institute for Security and Sustainability</ref><ref>[https://www.amnesty.or.jp/library/report/pdf/troubledwaters_101108.pdf 我田引水 公平な水利を得られないパレスチナ人] - [[アムネスティ・インターナショナル]]</ref><ref>[https://www.ochaopt.org/content/demolitions-west-bank-undermine-access-water Demolitions in West Bank undermine access to water Rate increases in first quarter of 2019] - [[国際連合人道問題調整事務所]]{{en icon}}</ref>
*[[水]]資源問題<ref>[http://nautilus.org/network/associates/richard-tanter/6c3452296a29306e652f914d-30a430b930e930a830eb5bfe30ec30b930c130ca62264e89306e898b904e3055308c305f4e009762/#axzz38psfFBvr 水利権の支配:イスラエル対パレスチナ戦争の見過ごされた一面] - Nautilus Institute for Security and Sustainability</ref><ref>[https://www.amnesty.or.jp/library/report/pdf/troubledwaters_101108.pdf 我田引水 公平な水利を得られないパレスチナ人] - [[アムネスティ・インターナショナル]]</ref><ref>[https://www.ochaopt.org/content/demolitions-west-bank-undermine-access-water Demolitions in West Bank undermine access to water Rate increases in first quarter of 2019] - [[国際連合人道問題調整事務所]]{{en icon}}</ref>
*[[経済]]問題
*[[経済]]問題
*「[[難民]]」の「帰還権」
*「[[難民]]」の「帰還権」
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==関連文献==<!--脚注に反映されてないようなので参考文献→関連文献に -->
==関連文献==<!--脚注に反映されてないようなので参考文献→関連文献に -->
*広河隆一『パレスチナ』岩波新書
*広河隆一『パレスチナ』岩波新書
*岡倉徹志『パレスチナ・アラブ その歴史と現在』三省堂
*岡倉徹志『パレスチナ・アラブ その歴史と現在』三省堂
*エリアス・サンバー『パレスチナ 動乱の100年』創元社
*エリアス・サンバー『パレスチナ 動乱の100年』創元社
*奈良本英佑『パレスチナの歴史』明石書店
*奈良本英佑『パレスチナの歴史』明石書店
*横田勇人『パレスチナ紛争史』集英社
*横田勇人『パレスチナ紛争史』集英社
*山崎雅弘『中東戦争全史』学習研究社
*山崎雅弘『中東戦争全史』学習研究社
*立山良司『図説 中東戦争全史』学習研究社
*立山良司『図説 中東戦争全史』学習研究社
*森戸幸次『中東百年紛争 パレスチナと宗教ナショナリズム』平凡社
*森戸幸次『中東百年紛争 パレスチナと宗教ナショナリズム』平凡社
*PLO研究センター『パレスチナ問題』亜紀書房
*PLO研究センター『パレスチナ問題』亜紀書房
*阿部俊哉『パレスチナ』ミネルヴァ書房
*阿部俊哉『パレスチナ』ミネルヴァ書房
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*エドワード・サイード『戦争とプロパガンダ4』みすず書房
*エドワード・サイード『戦争とプロパガンダ4』みすず書房
*エドワード・サイード『イスラム報道』みすず書房
*エドワード・サイード『イスラム報道』みすず書房
*イアン・ミニス『世界の紛争を考える アラブ・イスラエル紛争』文溪堂
*イアン・ミニス『世界の紛争を考える アラブ・イスラエル紛争』文溪堂
*市川裕『ユダヤ教の精神構造』東京大学出版会
*市川裕『ユダヤ教の精神構造』東京大学出版会
*立山良司『揺れるユダヤ人国家 ポスト・シオニズム』文藝春秋
*立山良司『揺れるユダヤ人国家 ポスト・シオニズム』文藝春秋
*池田明史『イスラエル国家の諸問題』アジア経済研究所
*池田明史『イスラエル国家の諸問題』アジア経済研究所
*ウリ・ラーナン『イスラエル現代史』明石書店
*ウリ・ラーナン『イスラエル現代史』明石書店
*高橋和夫『アラブとイスラエル パレスチナ問題の構図』講談社
*高橋和夫『アラブとイスラエル パレスチナ問題の構図』講談社
*立山良司『イスラエルとパレスチナ 和平への接点をさぐる』中央公論社
*立山良司『イスラエルとパレスチナ 和平への接点をさぐる』中央公論社
*鏡武『中東紛争』有斐閣
*鏡武『中東紛争』有斐閣
*土井敏邦『和平合意とパレスチナ イスラエルとの共存は可能か』朝日新聞社
*土井敏邦『和平合意とパレスチナ イスラエルとの共存は可能か』朝日新聞社
*M・ブーバー『ひとつの土地にふたつの民 ユダヤ、アラブ問題によせて』みすず書房
*M・ブーバー『ひとつの土地にふたつの民 ユダヤ、アラブ問題によせて』みすず書房
*ミシェル・ワルシャウスキー『イスラエル・パレスチナ民族共生国家への挑戦』柘植書房新社
*ミシェル・ワルシャウスキー『イスラエル・パレスチナ民族共生国家への挑戦』柘植書房新社
*デイヴィッド・フロムキン『平和を破滅させた和平 中東問題の始まり[1914-1922]』紀伊國屋書店
*デイヴィッド・フロムキン『平和を破滅させた和平 中東問題の始まり[1914-1922]』紀伊國屋書店


==外部リンク==
==外部リンク==
*[http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/plo/kankei.html 日本国外務省(パレスチナ概況)]
* [http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/plo/kankei.html 日本国外務省(パレスチナ概況)]
**[http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/18/rls_0713b_3.html イスラエルとパレスチナの共存共栄に向けた日本の中長期的な取組:「平和と繁栄の回廊」創設構想 平成18年7月]
** [http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/18/rls_0713b_3.html イスラエルとパレスチナの共存共栄に向けた日本の中長期的な取組:「平和と繁栄の回廊」創設構想 平成18年7月]
*[http://www.palst-jp.com/jp/jp_top.html 駐日パレスチナ常駐総代表部(日本語)]
* [http://www.palst-jp.com/jp/jp_top.html 駐日パレスチナ常駐総代表部(日本語)]
**[https://state-recognition.themedia.jp/ パレスチナ国家承認 特設ウェブサイト(公式サイト)]
** [https://state-recognition.themedia.jp/ パレスチナ国家承認 特設ウェブサイト(公式サイト)]
*[http://palestine-heiwa.org/ パレスチナ情報センター]
* [http://palestine-heiwa.org/ パレスチナ情報センター]
*[https://haaretz-headline.hatenadiary.org/ Haaretz Headline](イスラエルの新聞『ハアレツ』のヘッドラインを翻訳)
* [https://haaretz-headline.hatenadiary.org/ Haaretz Headline](イスラエルの新聞『ハアレツ』のヘッドラインを翻訳)
*[http://www.nakba.jp/ パレスチナ1948 NAKBA 公式サイト]
* [http://www.nakba.jp/ パレスチナ1948 NAKBA 公式サイト]
*[http://www.palestinercs.org/reference_maps.htm Reference Maps(パレスチナ赤新月社による地図)]
* [http://www.palestinercs.org/reference_maps.htm Reference Maps(パレスチナ赤新月社による地図)]
*[[:en:Palestine|Palestine]]
* [[:en:Palestine|Palestine]]
*[[:en:History_of_Palestine|History of Palestine]]
* [[:en:History_of_Palestine|History of Palestine]]
*[[:en:Mandate_for_Palestine|British Mandate of Palestine]]
* [[:en:Mandate_for_Palestine|British Mandate of Palestine]]
*[[:en:Israeli-Palestinian_conflict|Israeli-Palestinian conflict]]
* [[:en:Israeli-Palestinian_conflict|Israeli-Palestinian conflict]]
*[https://www.youtube.com/user/idfnadesk IDF Spokesperson's Unit] - イスラエル国防軍の動画配信
* [https://www.youtube.com/user/idfnadesk IDF Spokesperson's Unit] - イスラエル国防軍の動画配信


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2020年10月5日 (月) 06:39時点における版

パレスチナ問題

アラビア語: قضية فلسطينية

ヘブライ語: הסכסוך הישראלי-פלסטיני
中東戦争
20世紀初期 - 現在
場所イスラエルパレスチナ自治区
結果 現在進行中
衝突した勢力
イスラエルの旗 イスラエル パレスチナ国の旗 パレスチナ
和平プロセス

パレスチナ問題(パレスチナもんだい、アラビア語: القضية الفلسطينية‎、ヘブライ語: הסכסוך הישראלי-פלסטיני‎)は、パレスチナの地を巡るイスラエル人シオニストユダヤ人ら)とパレスチナ人(パレスチナ在住のアラブ人)との関係から生じた紛争を一個の政治問題として扱った呼称。パレスチナ・イスラエル問題と表記することもある。

歴史

古称は「フル」、「カナン」という。パレスチナあたりはペリシテ人の土地で、パレスチナという言葉はペリシテという言葉がなまったものと考えられている。紀元前13世紀頃にペリシテ人によるペリシテ文明が栄えていた。しかしペリシテ民族は完全に滅亡した。

その後は紀元前10世紀ごろにイスラエル民族によるイスラエル王国エルサレムを中心都市として繁栄した。

やがて三大陸の結節点に位置するその軍事上地政学上の重要性からイスラエル王国は相次いで周辺大国の侵略を受け滅亡し、紀元135年にバル・コクバの乱を鎮圧したローマ皇帝ハドリアヌスは、それまでのユダヤ属州の名を廃し、属州シリア・パレスチナ (en:Syria Palaestina) と改名した。ローマとしては、幾度も反乱を繰り返すユダヤ民族を弾圧するため、それより千年も昔に滅亡したペリシテ民族の名を引用したのである。この地がパレスチナと呼ばれるようになったのはこれ以降である。

7世紀にはイスラム帝国が侵入してきた、シリアを支配する勢力とエジプトを支配する勢力の間の対立戦争の舞台となった。11世紀にはヨーロッパから十字軍が攻め込んできた結果としてエルサレム王国が建国されるが、12世紀末にはアイユーブ朝サラーフッディーンに奪還され、パレスチナ地の大半は王朝の支配下に入った。16世紀になると、マムルーク朝を滅ぼしたオスマン帝国がパレスチナの地の支配者となる。

後期19世紀 - 1920:起源

サイクス・ピコ協定。濃い赤はイギリス直接統治、濃い青はフランス直接統治、薄い赤はイギリスの、薄い青はフランスの勢力圏。紫(パレスチナ)は共同統治領

本来は民族紛争ではなかった。第一次世界大戦において連合国側のイギリス同盟国側の一角であるオスマン帝国に対し側面から攻撃を加える意図の下、トルコの統治下にあったアラブ人イエフディ(現地ユダヤ人)やキリスト教徒も含む)たちに対してオスマン帝国への武装蜂起を呼びかけた。その際この対価として1915年10月にフサイン=マクマホン協定を結びこの地域の独立を認めた。

他方、膨大な戦費を必要としていたイギリスはユダヤ人豪商ロスチャイルド家に対して資金の援助を求めていた。この頃、世界各地に広がっているユダヤ人の中でも、ヨーロッパでは改宗圧力を含め差別が厳しかった為、シオンに還ろうという運動(初期シオニズム)が19世紀末以降盛り上がりを見せていた。そこでイギリスは外相バルフォアを通じ1917年ユダヤ人国家の建設を支持する書簡をだし、ロスチャイルド家からの資金援助を得ることに成功した(バルフォア宣言)。

しかしイギリスは同じ連合国であったフランスロシアとの間でも大戦後の中東地域の分割を協議しており、本来の狙いはこの地域に将来にわたって影響力を確保することであった(サイクス=ピコ協定)。

こうしたイギリスの「三枚舌外交」はロシア革命が起こりレーニンらによって外交秘密文書がすべて公表されるに至り公のものとなった。

第一次世界大戦でアラブ軍・ユダヤ軍は共にイギリス軍の一員としてオスマン帝国と対決し、現在のヨルダンを含む「パレスチナ」はイギリスの委任統治領となった。

1920 - 1948:イギリスによるパレスチナの委任統治

現在のパレスチナの地へのユダヤ人帰還運動は長い歴史を持っており、ユダヤ人と共に平和な世俗国家を築こうとするアラブ人も多かった。ユダヤ人はヘブライ語を口語として復活させ、アラブ人とともに嘆きの壁事件など衝突がありながらも、安定した社会を築き上げていた。しかし、1947年の段階で、ユダヤ人入植者の増大とそれに反発するアラブ民族主義者によるユダヤ人移住・建国反対の運動の結果として、ヨルダンのフセイン国王、アミール・ファイサル・フサイニー(1933年アラブ過激派により暗殺)、ファウズィー・ダルウィーシュ・フサイニー(1946年暗殺)、マルティン・ブーバーらの推進していたイフード運動(民族性・宗教性を表に出さない、平和統合国家案)は非現実的な様相を呈する。

「パンとワイン」紛争

とはいえ初期の問題において、民族自体はあまり関係がなかった。衝突は、銀行と工業により避けようもなく次第に深まっていく。その主な原因は、オスマンから切り離された事で、外国貿易が重要性を増した事にある。そしてイギリスは荒廃した土地を復興させ、輸出農業の生産の増大を計った。農民の多くはアラブ人であった。ただし、農業金融を一手に引き受けていたのは1922年以後増大したユダヤ系銀行であり、製粉所等の加工工業もまたユダヤ人の手にあった。パレスチナの土地に適していたのはオレンジとリンゴであり、英国に対してはオレンジの輸出が多くアラブ人達は柑橘類を望んでいたが、製粉所含む食品工業のため銀行は穀物の増産を図っていく。また、葡萄園はユダヤ人の所有にあった。

当時のパレスチナにおいて工業の外国貿易に対する価値は非常に大きかった。英国に次いでシリアがパレスチナを助けていたが、ドイツとアメリカもまたパレスチナに対し工業生産材の輸出を行っており、アメリカには加工した工業品を輸出することによって貿易のバランスを保っていたため、このバランスを維持するために工業の発展が不可欠だった。そして、パレスチナの外国貿易に関する諸々の取り決めは、委任統治領という立場にも関わらず、国内有力事業家の組合によって決定されていた。その事業家の多くが外部からの投資を受けた人間(即ち原住民ではなくユダヤ人の移民ら)であり、柑橘類を主軸に求めるアラブ人と、穀物類を主軸に求めるユダヤ人との農業問題への価値観の差異は、アラブ人への一方的な抑圧となり、やがて対立が深まっていく。16年設立のハマシュビール(en:Hamashbir Lazarchan)は勢力が大きくなり市場取引を支配し、また英国との連携を強め、ニール[要出典]はドイツ人に代わり産業を支配、耕地を購入し所有していった。また人口の増大、特にユダヤ人増大による小麦の需要に基づく土地の疲弊は著しく、39年には1ha辺り480kgの小麦しか収穫できない(英国では2200kg、エジプトでは1630kg)など、問題への期限は迫っていた。

パレスチナ分割

国連による「パレスチナ分割決議」 1947

後にイスラエル首相となるベギン率いるイルグンシャミル率いるレヒ等のユダヤ人テロ組織のテロと、アメリカの圧力に屈したイギリスは遂に国際連合にこの問題の仲介を委ねた。

ユダヤ人の人口はパレスチナ人口の3分の1に過ぎなかったが、1947年11月29日の国連総会では、パレスチナの56.5%の土地をユダヤ国家、43.5%の土地をアラブ国家とし、エルサレムを国際管理とするという国連決議181号パレスチナ分割決議が、賛成33・反対13・棄権10で可決された[1]。この決議は、国内の選挙において、ユダヤ人の投票獲得を目当てにしたアメリカ大統領トルーマンの強烈な圧力によって成立している。ユダヤ人を自国から追い出したいキリスト教徒が主なアメリカ、ソ連、フランス、ブラジルなどが賛成し、アラブ諸国が反対した。(イギリスはこれ以上反感を買うことを恐れて棄権)

1948年2月アラブ連盟加盟国は、カイロでイスラエル建国の阻止を決議した。アラブ人によるテロが激化する中、1948年3月アメリカは国連で分割案の支持を撤回し、パレスチナの国連信託統治の提案をした。1948年4月9日、ユダヤ人テロ組織、イルグン、レヒの混成軍が、エルサレム近郊のデイル・ヤシーン村で村民の大量虐殺を行い、その話が広まって、恐怖に駆られたパレスチナアラブ人の大量脱出が始まった。1948年5月イギリスのパレスチナ委任統治が終了し、国連決議181号(通称パレスチナ分割決議)を根拠に、1948年5月14日に独立宣言しイスラエルが誕生した。同時にアラブ連盟5カ国(エジプト・トランスヨルダン・シリア・レバノン・イラク)の大部隊が独立阻止を目指してパレスチナに進攻し、第一次中東戦争(イスラエル独立戦争、パレスチナ戦争)が起こった。

1948 - 1967:中東戦争

1949グリーンラインの境界線

勝利が予想されたアラブ側は内部分裂によって実力を発揮できず、イスラエルは人口の1%が戦死しながらも列強からの豊富な物資援助により勝利する。1948年の時点でパレスチナの地に住んでいた70〜80万人のアラブ人などが難民となった(いわゆるパレスチナ難民)。パレスチナ人を主とするアラブ人は、「ナクバ(النكبة)」(アラビア語で「大破局」「大災厄」を意味する)と呼ぶ。

パレスチナ難民の発生原因については、当時は、ユダヤ人軍事組織によって追放されたというパレスチナ側の主張とパレスチナ人が自発的に立ち去ったというイスラエル側の主張があった。現在では、イスラエルの政府資料や米国の諜報資料が公開され、イスラエル側の主張が虚構であり、大多数のパレスチナ難民は、ユダヤ人軍事組織による大量虐殺(イスラエルの歴史学者のイラン・パペによれば、総計2千人〜3千人が犠牲になった)、銃器による脅迫、また、ユダヤ人軍事組織による攻撃を恐れて、難民となったことは、学術的に明らかになっている。現在の学術的な争点は、パレスチナ人の追放が計画されたものか、それとも戦闘激化に伴った偶発的なものかという点である。

また、イスラエル建国に伴うアラブ諸国におけるユダヤ人への迫害の増加により、セファルディムなどアラブ諸国のユダヤ人住民40万人がイスラエルに移住し、アラブ諸国に残された財産の大部分は没収された。

1949年2月にエジプトとイスラエルの停戦協定が成立。イスラエルがパレスチナの80%を占領し、残り20%のヨルダン川西岸地区はトランスヨルダンが占領した。エルサレム旧市街はヨルダンに新市街はイスラエルに占領された。ガザ地区がエジプト領となり、パレスチナ難民が押し寄せた。

イスラエルに残留した非ユダヤ人(パレスチナ人)は、イスラエル国防軍の軍政下に敷かれた。すなわち、イスラエル政府による民政下のユダヤ人と、イスラエル軍による軍政下の非ユダヤ人という、二重体制が敷かれた。非ユダヤ人は参政権など市民権は与えられたが、居住移転の自由や職業選択の自由などを厳しく制限された[2]

1950年に施行された不在者財産没収法により、1947年のパレスチナ分割決議から翌年9月までの間に居住地を離れて近隣に避難するなどしたパレスチナ人は家屋・財産を没収されることになった。こうして没収された土地はユダヤ人入植者たちに与えられた(これが下記の難民の帰還権問題に繋がる。イスラエルは、難民であること自体を認めていない)。ヨルダンは占領しているヨルダン川西岸地区の正式併合を宣言する。

1956年7月エジプトがスエズ運河国有化を宣言し、それを阻止するために10月にイスラエル・イギリス・フランスがエジプトに侵攻し、第二次中東戦争(シナイ作戦、スエズ戦争)が勃発した。アメリカとソ連の即時停戦要求を受け入れ、イギリス・フランスは11月に戦闘を中止した。アメリカの共和党のアイゼンハワー大統領が経済援助の停止という圧力をかけて、1957年3月にイスラエルをシナイ半島から撤退させた。この戦争により、中東の主導権はイギリス・フランスからアメリカ・ソ連に移った。

1964年5月にPLO(パレスチナ解放機構)が結成された。

1966年、イスラエルのアラブ人(パレスチナ人)住民に対する軍政を終了した。

1967年5月エジプトのナーセル大統領はシナイ半島の兵力を増強し、国連監視軍の撤退を要請し、イスラエル艦船に対するチラン海峡封鎖を宣言した。6月4日にイスラエルはエジプトを奇襲し、6日戦争(第三次中東戦争)が勃発した。イスラエルをアメリカが支援し、アラブ諸国をソ連が支援した。

1967 - 1993:第一次インティファーダ

イスラエルは東エルサレムガザ地区シナイ半島ヨルダン川西岸ゴラン高原を占領し、国際連合安全保障理事会は停戦決議を可決した。11月に国連安保理でイスラエルの承認、イスラエルの占領地からの撤退、中東地域の航海自由の保障、避難民問題の解決などを決議した(国連安保理決議242号)。しかし、イスラエルの占領地については、英文版と仏文版で解釈が異なり、英文版では、必ずしもすべての占領地から撤退する必要はないと解釈できる余地があった[3][4][5][6]。占領地では再び軍政が敷かれ(イスラエル国防軍軍律)、パレスチナ人など非ユダヤ人住民のみが軍律に拘束された。

1973年10月にエジプトとシリアがイスラエルを奇襲し、第四次中東戦争(ヨム・キプール戦争、ラマダーン戦争)が勃発した。アラブ石油輸出国機構10カ国はイスラエルを占領地から撤退させるまで石油生産の5%以上を毎月削減するとの決議を可決し、石油危機が起こった。国際連合安全保障理事会は停戦決議を可決した。

1974年10月 PLOが国連でオブザーバーの地位を獲得した。

アメリカによる和平交渉により1978年9月にキャンプ・デービッド合意が成立し、1979年3月にエジプト・イスラエル平和条約が調印された。これによりシナイ半島がエジプトに返還され、「土地と平和の交換英語版」と称された。

1980年3月1日、国連安保理で、イスラエルが1967年以降、アラブ側の領土を占領し、また入植地を建設した行動を全て無効とし、速やかな撤退の要求を決議した[7]。この時はアメリカも賛成に回ったが(棄権するつもりだったが間違えたと声明)、イスラエルはこの決議を無視した。

1981年、アメリカのレーガン大統領は、ユダヤ系ロビーやイスラエルの反対を押し切って、サウジアラビアに武器を輸出した。1978年4月にシナイ半島がエジプトに返還された。6月にイスラエルがレバノンに侵攻しレバノン戦争が起こった。PLOはベイルートから撤退した。9月にアメリカのレーガン大統領が中東和平案を提示し、アラブ首脳会議でフェズ憲章が採択された。

1987年にイスラエル占領地でパレスチナ人の抵抗運動である(第一次インティファーダ)が発生した。1988年7月31日にはヨルダンがイスラエル占領下のヨルダン川西岸地区への領有権主張を取り下げ、PLOが唯一正統なパレスチナ人の代表であると宣言する。

1993 - 2000:オスロ和平プロセス

調印後に握手をするイスラエル・ラビン首相とPLOアラファート議長。中央は仲介したビル・クリントン米大統領

1991年10月マドリードで中東和平会議開催。

1993年9月13日調印、イスラエルとPLOパレスチナ人の暫定自治の原則宣言にワシントンで調印(写真参照)(オスロ協定*)成立。その結果1994年5月よりガザエリコ先行自治が開始され、自治政府も組織されはじめた。PLOのアラファト議長とイスラエルのラビン首相、ペレス外相がノーベル平和賞を受賞した。

1996年1月にパレスチナ評議会の選挙が行われた。 その矢先の1995年11月4日に和平に尽力したイスラエルのラビン首相はテルアビブにおいてカハネ主義者のイガール・アミルに射殺された。 イスラエルでは原則として労働党が「和平推進」(エルサレムとヨルダン川西岸の戦略的に重要な土地を併合)、リクードが「和平反対」(パレスチナ全土を併合)とみなされてはいる。しかし、イスラエルがシナイ半島からの撤退に基づく対エジプト和平を推進したのは右派政党のリクードのベギン政権であった。また、パレスチナ暫定合意や対ヨルダン和平を推進したのは左派政党の労働党のラビン政権ではあるが、ラビンは政界で活動する以前はイスラエル国防軍の参謀総長として6日戦争を指導していた。

1996年、イスラエルに対する、アラブ・イスラム原理主義者(ハマースイスラーム聖戦ヒズボラ)によるテロが激化する。

1997年1月17日、ヘブロン・プロトコル、自治拡大。

1998年10月23日、ワイリバー覚書、自治拡大。

2000年7月には、キャンプデービッド2000年サミット 首脳会談後のアラファート議長 イスラエル側の「西岸地区の91%の支配権を認める、ただしこれとは別に西岸地区の1割の面積を当分の間(6〜21年)イスラエル側の支配下に置く」とする和平案を拒否した。イスラエル側は「寛大な申し出を拒否した」と非難。

2000 - 2005:第二次インティファーダ

2000年9月30日、アル・アクサ・インティファーダ(第二次インティファーダ)発生によりPLOとの和平交渉が決裂した。

双方の市民には平和運動や交流活動、イスラエルでの徴兵拒否や予備役兵の赴任拒否などの運動がある。パレスチナ自治政府は和平を進めることを公式方針としているが、武力の弱さをおぎなうためとしてテロ戦略を採用する武装組織も存在し、若者や女性を頻繁に自爆テロ攻撃に使っている。

一方で、イスラエル政府も占領中のヨルダン川西岸地区に入植者を送り込み、一般市民を不法な領土拡張政策に利用している。イスラエル人の入植者達がパレスチナ人住民のオリーブ畑に放火した後、畑を耕して自分たちの土地として既成事実化している。またパレスチナ人住民はイスラエル軍も放火に加担していると証言している。

最近ではパレスチナ人の自爆テロは、イスラエル側が建設した分離壁(下記参照)によって困難になっており、パレスチナの各武装組織はカッサムロケットによる砲撃に重点を移しつつある。その結果イスラエルの民間人に多数の犠牲者がでている。これに対しイスラエル側は戦闘ヘリコプターによる爆撃、ブルドーザーによる住居破壊(イスラエル軍のブルドーザーは、米国キャタピラー社の特注品である)、戦車による砲撃などでパレスチナに反撃している。

また、2002年4月にイスラエル軍のジェニーン地区侵攻でパレスチナ人の虐殺が行われたとパレスチナが主張したが、イスラエルはそれを否定し、国連の査察受け入れを拒否して国連査察団が現地に入ることなく解体してしまうなど、イスラエルは国連や第3国からの介入を基本的に拒否している。

2002年2月にサウジアラビアアブドラ皇太子がイスラエルが全占領地から撤退すれば、国家として承認するという中東和平の提案をした。3月27日には、アラブ連盟で「アラブ和平イニシアティブ(アラブ和平構想)[8]」の採択が行われ、満場一致で可決された。主な内容は以下である。

  1. イスラエルは、1967年6月4日以降の占領地から撤退する(国連安保理決議242に基づく要求)
  2. イスラエルは、国連総会決議194に基づく、パレスチナ難民問題の解決を行う
  3. イスラエルは、1967年6月4日以降の、パレスチナ自治政府領に相当する占領地をパレスチナに返還し、東エルサレムをパレスチナの首都と認める
  4. 以上の代償として、アラブ諸国はイスラエルとの和平協定に署名し、地域の全ての国の平和を達成する
  5. 同時に、アラブ諸国はイスラエルとの国交正常化に踏み切る

6月、アメリカ大統領のブッシュがパレスチナ暫定国家建設を支持し、イスラエルが入植活動を停止し、パレスチナがテロ組織を解体するという中東和平構想を発表した。
2003年4月アメリカEUロシア国際連合の4者により中東和平案のロードマップがイスラエルとパレスチナ自治政府に提示された。10月に国連総会で分離壁の建設中止についての決議が採択された。

2005 - 2008:アッバース時代のはじまり

アラファト議長(正式には大統領であるが、日本などはまだ国家として承認していないためこのように呼んだ。日本政府の正式な呼称は「自治政府長官」であったが、2006年に「自治政府大統領」に改められた)の死後、2005年1月の自治政府議長選ではマフムード・アッバースが当選した。しかし、選挙中に武装部門のファタハに担ぎ上げられたり、その一方で武装闘争は誤りであったと述べるなどという言動もあったので過激派への対策がどのようになるかは不透明である。

2005年4月には、アメリカのブッシュ大統領がイスラエル首相のアリエル・シャロンとの会談で、2005年8月を目処にイスラエル側がガザ地区の入植地からの撤退を予定する一方でエルサレムに隣接しているヨルダン川西岸地区最大のマーレ・アドミム地区への入植地拡大を計画していることに対し、「中東和平の行程表(ロードマップ)に反する」として、強い懸念を示した。シャロンと「約束の地」への思い入れが強い宗教右派の間には対立が存在し、更には入植者が強い抵抗を示す中で、治安部隊によるガザからの退去作業が8月17日より開始され、ガザの入植地は解体された。しかし、ヨルダン川西岸地区の入植地は明け渡さず、逆に新たな入植地の拡大を進めている。

2006年1月には、パレスチナ総選挙でハマースが第一党になり、3月29日、アッバース議長の元でハマースのハニーヤ内閣が成立した。ハマースをテロ組織と指定するEU、アメリカ、日本などは援助を差し止め、ファタハとハマースの武装衝突が激化するなど、パレスチナの混迷が続いている。

2006年6月27日には、アッバース議長とハマースのハニーヤ首相が1967年の国連停戦決議に基づく国境線の合意(事実上のイスラエル承認)で合意した。しかし、イスラエルはパレスチナ人に対する予防拘禁の強化を図る一方、兵士の拉致を理由に逆にガザ侵攻を拡大。ヨルダン川西岸地区では閣僚を含む立法評議員(国会議員に相当)、地方首長を約80人を拉致し、評議会を機能停止に追い込んだ。カタールは国連安保理にイスラエルのガザ撤退および閣僚等の解放を求める決議案を提出した。しかし、7月13日、米国の拒否権で否決されている。また、同月12日から13日にかけて、日本の小泉純一郎首相はイスラエル、パレスチナを訪問し、イスラエルのオルメルト首相、パレスチナのアッバース議長と会談。しかしハニーヤ首相と会おうとはしなかった。小泉首相はヨルダンを含めた4ヶ国協議を提案し、それぞれの賛同を得た。しかし、イスラエルにガザ侵攻への自制を求めた件については「イスラエルの立場は明確だ」と退けられている。また、ハマース政権成立後では初めて、パレスチナに対する約3,000万ドルの人道支援を発表した。ただし、直接援助はイスラエルの反発に配慮し行わず、国際連合世界食糧計画などを介した形となる。

その後もイスラエルとパレスチナの断続的な衝突が続いた。11月1日、イスラエルは再びガザ地区に侵攻。7日までにパレスチナは軍民合わせて50人以上、イスラエルは兵士1人が死亡した。イスラエルは撤退を表明したが、翌8日すぐに攻撃を再開、ガザ地区北部のベイト・ハヌーンでパレスチナ市民が少なくとも19人死亡し、アッバース議長は「イスラエルは平和への機会を破壊している」と非難。ハマースは報復を宣言した。イスラエルは誤爆と主張。事件の解明まで攻撃を中止すると発表したが、パレスチナ活動家の暗殺は続けている。ベイト・ハヌーンの事件について、再びカタールは国連安保理に非難決議案を提出した。フランスなどの要求で、パレスチナ側のロケット攻撃も非難する修正案に改められたが、11月11日、やはり米国の拒否権で否決された(日本は棄権した)。

パトリック・オコナーによると、2000年から2006年11月3日までの、パレスチナ側とイスラエル側の犠牲者数の比率は39:10である。そして、イスラエル諜報機関の元長官アヴィ・ディクターは、分離壁の建設によって自爆テロを90%阻止することが出来たと証言している。[9]実際、自爆テロは未遂の時点で逮捕されているケースが多く[10]、ハマース側が自粛しているのではなく、物理的に自爆テロが出来ない状況になっているという主張である。なお、このような状況下でハマースはロケット砲による無差別攻撃に攻撃を転換したとの指摘もある。

パレスチナ内部でも、米欧・イスラエルの支持を受けるファタハと、ハマースの内部抗争が続いている。2006年にハマースは選挙での多数を根拠に単独内閣を組んだものの、国際社会は認知しようとしなかった。ファタハとハマースの間で連立政権の交渉が進められたが、両者の抗争で2006年中だけで28人の死者を出している[11][12]

2007年には、両者の抗争で50人に及ぶ死者を出した。5月16日には、ハニーヤ首相の自宅に何者かの発砲事件があり、5月17日には、ハマースによるアッバース議長の暗殺計画が発覚。5度に及ぶ停戦合意がなされているが、合意の直後に抗争が再開される状況が続いている。6月11日からの抗争は、ハマースがガザ地区を武力占拠したことで、本格的な内戦に突入。アッバース大統領は非常事態宣言を出し、内閣の解散を宣言。イスラエルや米国は、ハマースを排除したファイヤード政権を正式な交渉相手と認めた。6月20日、アッバース大統領は「人殺しのテロリストたちとは対話はしない」と、ハマースを相手にしないことを表明した。

平行して、イスラエルによる攻撃も続いている。4月24日、ハマースはイスラエルによるパレスチナ自治区ヨルダン川西岸とガザ地区攻撃への報復として、ガザ地区からイスラエルにロケット弾の攻撃を行った。ハマース側はイスラエルの攻撃に対する応戦であり、停戦そのものを破棄するつもりはないと主張したが、イスラエルはガザ地区への空襲を繰り返し行い、さらに地上部隊の再侵攻を主張する声も強くなった。極右政党「わが家イスラエル」党首のリーバーマン副首相は「イスラエル軍がハマース壊滅のための地上作戦に踏み切らなければ、連立政権から離れる」と主張した。

5月20日には、ハマースのハリール・アル=ハヤ立法評議員(国会議員)宅が空襲を受け、アルハヤはハマースとファタハの停戦協議のため不在で難を逃れたが、8人が死亡した。イスラエル側はアルハヤを標的にしたものではなく、付近にいた武装集団を狙ったものと主張した。5月21日、パレスチナ側の攻撃でイスラエル人1人が死亡すると、イスラエルのリブニ外相は共同記者会見で「停戦は幻想で、ロケット弾はハマースが平穏に乗じて武器の密輸を行った結果だ。われわれはハマースと戦い続ける」と述べた。また、同国のアビ・デヒテル警察相は、ハマースの事実上の最高指導者であるハーリド・マシャアルについて、「彼の存在は正当な標的である以上だ。困難な使命ではあるが機会さえあればいつでも、彼を我々の前から消すことだろう」と暗殺を公言し、さらにハニーヤ首相の暗殺についても「(イスラエルに対する)攻撃命令を出している者の中にハニーヤが連なっているならば、彼も正当な標的となる」と実行に含みを持たせた(「警察相、ハマース最高指導者の殺害を予告 - イスラエル * 2007年05月21日 20:10 発信地:イスラエル」)。

さらに、5月31日、ユダヤ教スファルディーの前首席ラビであるモルデハイ・エリヤフは、オルメルト首相に「ユダヤ人の戦争倫理によると、個人の不道徳な行為について、市全体が集団的な責任を負う。ガザではカッサムロケットの発射を止めないから、すべての人口に責任がある」と主張する手紙を出し、シナゴーグに内容を配布した。パレスチナ『エレクトロニック・インティファーダ』紙のアリ・アブニマーは、「イスラエルでこの類のパレスチナ人に対する大量虐殺をそそのかす憎悪が語られるのは珍しいことではない。では、ムスリムやパレスチナの指導者がこのようなことを言ったらどうなるか。イランアフマディー ネジャード大統領が伝えられたところでは、イスラエルを取り除くことを述べたときに、国際社会がどう激しく抗議をしたかを私たちは知っている。イランのアフマディネジャドを非難して、ご機嫌取りをしていたすべてのEU官僚は、このイスラエルの前首席ラビに対して、同じような強く、公的な立場を取るのだろうか?」と批判した。

6月28日、イスラエルはガザに地上部隊を侵攻させ、軍民合わせて少なくとも12人を殺害。さらに、15歳から50歳の男性に家から出るように命じ、町の広場に集めさせた。

11月27日、米国の仲介で開かれた中東和平国際会議において、ブッシュ米大統領、オルメルト・イスラエル首相、アッバース・パレスチナ自治政府議長は和平交渉再開を確認した。だが、イスラエルは交渉再開を表明する一方、連日ガザ地区の攻撃や空襲を行い、11月30日には、ガザ再侵攻の準備が整ったことを発表した。

2008年1月、ブッシュ米大統領はイスラエル・パレスチナを歴訪。1月9日にはイスラエルでオルメルト首相と会談し、1月10日には初めてパレスチナを訪問し、アッバース議長と会談した。ブッシュ大統領は、イスラエルの入植地について「1967年に始まった占領を終結させる必要がある」と述べ、またパレスチナ自治区を入植地が分断している現状について「スイスチーズ(穴あきチーズ)ではうまくいかない」と批判した[13]。一方、パレスチナに対しては「テロとの戦い」の継続と、ハマースからのガザ地区奪還を要求した。
しかし、イスラエルのガザ地区攻撃については「パレスチナ領域がテロ組織の天国になってはならない」と理解を示し、イスラエル領への帰還を望むパレスチナ難民についてはこれを認めず、保証金で解決する考えを示した[14]。入植地についても、具体的にまとまったのはイスラエル政府が違法とする入植施設の撤去を約束したことだけで、既存の入植地・検問所については追認する考えを示すなど、イスラエルに有利な現状を追認するに留まった。『東京新聞』『中日新聞』は、これを「イスラエルの『独り勝ち』」と評した[15]。パレスチナではブッシュに抗議するデモが行われ[16]、イスラエルでの世論調査では、和平の進展に懐疑的な意見が多数を占めた[17]

並行して、ハマース側はイスラエルをロケット弾で攻撃し、イスラエルは報復にガザ地区を攻撃。1月15日にはガザ市街に侵攻し、民間人5人を含む17人を殺害した。ハマース側は、イスラエルの集団農場(キブツ)で作業していたエクアドル人ボランティア1人を殺害した。1月18日には、イスラエルの空襲でガザにある内務省ビルが破壊された。1月の間に、パレスチナ側からは少なくとも96人の犠牲者が出た。イスラエルのバラク国防相はロケット弾攻撃の報復にガザ地区の完全封鎖を指示し、国連の援助車両も閉め出した。燃料の供給が止まったため、ガザ地区唯一の発電所は操業不能となり、ガザの電気の1/3(イスラエル側の主張によれば、1/4)が供給できなくなった。また、食料などの生活必需品も、イスラエルの兵糧攻めにより深刻な状況となっているという[18]。17日には、国連の潘基文事務総長が「パレスチナ人による襲撃の即時停止、ならびイスラエル軍の最大限の自制を求め」る声明を出したが[19]、イスラエルとハマースはこれを無視した。

2008年2月28日、来日中のオルメルト首相は、コンドリーザ・ライス米国国務長官と会談し、同日帰国した。オルメルトは、攻撃の自重を求めるライスに対し、「脅威が去るまでは(攻撃を)続ける」とこれを拒否した。また、2月29日、イスラエルのマタン・ヴィルナイ国防副大臣は、「カッサムロケット弾がさらに撃ち込まれ、遠くまで着弾するようになれば、パレスチナ人はわが身のうえに大規模なהשואה(shoah、ショアー、ナチスによるユダヤ人大虐殺を意味する)を引きよせることになるだろう。というのは、我々は防衛のために全力を使うからだ。」[20]と述べ、ハマースが攻撃を止めないならば、パレスチナ人を大虐殺すると脅した。この発言にイタン・ギンツブルグ国防副大臣などは、「ショアーは災害を表す普通名詞で、ジェノサイド(大量虐殺)を意味しない」[21]と火消しした。ハマースは、この発言に「(やはりイスラエルは)新しいナチス」であったと反発した。

3月1日、イスラエルはガザ地区への地上部隊の侵攻を本格化させ、この日だけでパレスチナ側に61人の犠牲者が出た。イスラエル軍は、これを「暖冬作戦」と称している。イスラエル軍が、ハマースのロケット弾攻撃による死者が出たことを理由に攻撃を激化させた2月27日以降、ガザ地区からひとまず撤退した3月3日までの6日間に、パレスチナ側は116人(約半数は非戦闘員)、イスラエル側は3人(1人は非戦闘員)殺害されている。3月2日、国連の潘基文事務総長は、イスラエルに作戦中止を要請し、またハマースのロケット弾攻撃を「テロ行為」と批判した。しかし、イスラエルのオルメルト首相は「テロとの戦いをやめるつもりはない」と作戦継続を宣言し、これを拒否した。同日、パレスチナ自治政府のアッバース大統領は、ガザ侵攻を止めるまで和平交渉の中断を発表した。

3月3日、イスラエル軍はガザ地区から撤退し、ハマースは勝利宣言を出した。しかし、オルメルト首相は「寛大な措置を施す時期ではない。(パレスチナへの)応戦を続けるが、応戦は具体的な作戦や日時に限ったものではない」と再侵攻の意志を示し、さらにあるイスラエル政府高官は、3月4日と5日にライス米国務長官がイスラエルとパレスチナを訪問する予定に触れ、「(ライス)長官の訪問に合わせ、二日間の中休みを取っただけ」と言った[22]。3月4日夜、イスラエル軍は戦車で再侵攻を行い、武装勢力幹部宅を襲撃し、幹部を殺害。ライス米国務長官は、アッバース大統領に対し、ガザ侵攻中止は和平交渉再開の条件にはならないとの見解を示し、またイスラエルのガザ侵攻については、「自衛の権利があることを理解する」とこれを容認した。アッバースは、和平交渉の再開は認めたが、双方の見解の相違もあり、具体的な日程の見通しは立っていない。イスラエルは、「暖冬作戦」の第2弾として、都市に隠された武器捜索を予定しているという。

3月6日、イスラエルの神学校にパレスチナ人の男が乱入、生徒ら8人を射殺し、男はイスラエル治安当局に射殺された。神学校は、ユダヤ人入植者の思想的拠点だった。アッバース大統領、米ブッシュ大統領、潘国連事務総長らは相次いでテロ非難声明を出した。また、ブッシュ大統領は、オルメルト首相に電話で弔意を伝えると共に、「米国はイスラエルを強く支持する」と述べた。一方、ハマースは「(パレスチナ人)虐殺に対する自然な反応だ」と、犯行を支持する声明を出した。米国は、国連安保理でテロ事件として非難声明の採択を要求したが、リビアがイスラエルによるパレスチナ攻撃も非難すべきと主張し、採択は見送られた。犯行そのものについては、ハマースが認めたという報道[23]と、ヒズボラ関係者とする報道[24]があり、情報は錯綜している。
3月10日、エジプトの仲介で、イスラエルとハマースは当面の攻撃自制に同意した。しかし、オルメルト首相は「軍はガザで必要なだけ行動する」と述べており、また停戦の条件として、ハマースはイスラエルのガザ封鎖解除を、イスラエルはハマースの武器密輸停止を要求している。3月12日、イスラエルはベツレヘムなどでイスラム原理主義組織イスラム聖戦の幹部ら5人を暗殺し、イスラム聖戦はガザ地区からロケット弾で報復攻撃した。イスラエルはガザ地区を空襲し、イスラム聖戦の戦闘員4人を殺害した。

一方、パレスチナ自治区内のイスラエル入植地については、3月9日には、イスラエルは「9年前に決定していた」ことを理由に、ギバットゼーブ入植地の拡大を決定した。日本や国連などは、入植地拡大に懸念を表明した。3月31日にも、「拡大凍結の対象外」と主張し、東エルサレム郊外の入植地増設を発表した。ライス米国務長官は、「入植を止めるべきだ」と批判した。一方、イスラエルが設けている400以上の検問所・道路封鎖について、約50箇所で撤去を発表した。

4月に入ってもガザ地区での攻撃は続いており、4月中だけでパレスチナ側は46人以上、イスラエル側は10人の犠牲者が出ている。この他、4月16日には、ロイター通信のファデル・シャナカメラマンが、イスラエル軍の砲撃で殺されている。また、イスラエルは国連人権委員会によって調査のためにイスラエル入りする予定であったリチャード・フォークの入国を、「イスラエルの行いをナチスと比べるなど、調査官として不公平」という理由で拒否した。

6月19日、エジプトの仲介でハマースとイスラエルは6ヶ月の停戦に踏み切った。断続的に衝突は続くもののまだ平和であった。しかし、11月4日、イスラエルはエジプトとの地下通路が掘られているという理由で空襲した。その結果、ハマースは停戦中として攻撃を手控えたが、イスラーム聖戦などが報復としてロケット弾を発射し、緊張が高まった。イスラエル系の諜報テロ情報センターは、ハマースは注意深く停戦を守り、一方で他の無法組織(イスラム聖戦などのこと)との衝突は避け、停戦を維持させるための政治面からの説得を試みていると分析している[25]

2008 - 2009:ガザ紛争

12月に入り、再度エジプトの仲介のもとで停戦延長をイスラエルは試みたが、ハマースが「イスラエルがガザの封鎖解除に応じなかった」と主張し、延長を拒否したため12月19日失効した。イスラエル側は、当初の合意事項であった「ガザに対する封鎖の段階的解除」は実質行われており、武器兵器などは勿論論外であるが人道物資などを初めとする様々な流通があったとしている。しかし、赤十字社は11月4日以降、封鎖は再び厳しくなり、ガザの状況を「破滅的」と報告した。国連調査官のリチャード・フォークは12月9日、イスラエルが流入を認める物資は「飢餓と病を避けるにはギリギリ」であり、イスラエルによる「パレスチナ人への集団的懲罰は人道に対する罪」であるとの見解を示した。また、ガザ地区からの輸出は、2月以来完全に禁止されたままである[26]

ヨルダン川西岸地区では、12月12日、イスラエルは主要入植地4箇所を含む西岸の6.8%を自国領として併合し、難民の帰国を5000人にとどめる提案を行った。イスラエルは当初の要求であった7.3%から譲歩したが、いずれにせよパレスチナ国家樹立に欠かせない土地であるとして、自治政府は要求を拒否した。

停戦の期限が切れる前から、ハマースはロケット弾迫撃砲などで攻撃を再開。このハマースの度重なるロケット砲によってイスラエル人、一人が死亡した。[27]また、再三のイスラエル側からの警告があったにも関わらず無差別のロケット砲攻撃をハマースはやめなかった。[28] 12月21日、イスラエル軍はガザ地区をヘリコプターで攻撃した。さらに12月27日(現地時間午前11:30、UTC午前9:30[29])、本格的にガザ地区を空襲し、同日だけで200人以上が犠牲者となった。イスラエル軍は、「ハマースのテロ作戦従事者」および訓練キャンプと武器庫を標的としたと声明を出した。なおイスラエルは武器輸入を止めないハマースを6ヶ月前、即ち停戦期間中からその拠点を調べ、今後起こりうるであろう軍事作戦の計画をしていた。[30]。両者の交渉を仲介したジミー・カーターによると、イスラエルは非公式に、48時間ロケット弾を発射しないのならば、通常の15%の物資供給は可能だとの見解を示したが、ハマースは拒否し、その結果イスラエルの報復攻撃が始まったという[31]

2009年1月17日までの22日間で、地上戦も含めパレスチナ側で殺害された人数は少なくとも1300人[32]AFP通信、パレスチナ自治政府保健省)を数え、第三次中東戦争以来最悪の数である。イスラエル側の殺害された人数は13人(イスラエル政府筋、ただし味方の誤射で死亡した4人を含む。3人は民間人。ハマース側は、地上戦で10人を殺害したと主張[33])パレスチナ側死者のうち、イスラエル側主張[34]によれば、ハマースの戦闘員500人を殺害、130人を拘束[35]した。ハマースのアブジャアファル(仮名)小隊司令官は、殺害されたのは48人と主張した。家屋全壊は4100棟、損壊は17000棟。地上戦突入後は救急車が現場に向かえず、死者の実数は把握し切れていないという。

国際連合も、攻撃に巻き込まれた。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によると、イスラエル軍のガザ侵攻で、約15,000人の住民が自宅を失うなど難民化し、国連が設けた23箇所の避難所に収容中と発表した。避難所のうち、国連が運営する学校はイスラエル軍の砲撃で、少なくとも48人が殺害された[36]。イスラエル側は、死者に数人のハマース戦闘員が含まれていると発表したが、UNRWAガザ事務所のジョン・ギング所長は「学校に戦闘員などいなかったし、校内からの攻撃もなかった」と反論した。またイスラエルは誤爆したことを認めたとジョン・ギング所長は語っているが、イスラエル軍は、誤爆を認めておらず、学校に導火線が張り巡らされているのを軍用犬が見つけ、ハマースの攻撃があったと兵士が証言している。

1月8日には、UNRWAの輸送トラックがイスラエル軍に砲撃され、1人が殺害された[36]。UNRWAは、イスラエル軍が職員の安全を保証するまで活動を停止すると発表[37]したが、1月9日にイスラエル政府から安全確保の保証が得られたとして活動を再開した。1月14日、UNRWA本部が空襲を受け、支援物資の食糧・医薬品などが焼き払われた[38]。また、3人が負傷した。

1月9日、国連人道問題調整事務所(OCHA)は、パレスチナ自治区ガザ地区のガザ市近郊のザイトゥン地区で5日、イスラエル軍が約110人のパレスチナ人市民を1軒の住宅に集めた上でそこに戦車で複数回砲撃を行い、子供を含む約30人が死亡したと発表した[39]

イスラエルのニシム・ベンシトリット駐日大使は2008年12月28日、「われわれは国民を守るために、ハマースの施設への攻撃実施を決めた。(ハマースが)何らかの対応をとった場合は、われわれも考え直すだろう。しかし、彼らが攻撃を続けるなら、われわれも攻撃を続ける」と主張した。

12月29日、米国家安全保障会議のジョンドロー報道官は記者団に「米国はイスラエルに自衛が必要であることを理解している」とイスラエルの正当性を擁護し、今回の事態の発端となったハマースの攻撃停止を要求した。イギリス、ドイツもイスラエルの自衛権の発動であると認め、さらにエジプトやパレスチナ自治政府さえもハマースの暴挙を非難している。ハマースは自治政府とエジプトの態度に「裏切り者」と反発した。また、エジプト情報当局は12月26日夜、48時間以内の攻撃はないであろうとの予測をハマース側に伝えていたが、ハマースが挙行した警察学校卒業式会場などが空襲の格好の標的となり、死者を増やした。そのため、ハマースは「エジプトに騙された」と非難した。

一方、湾岸協力会議首脳会議は12月30日、イスラエル非難を声明した。国連の潘基文事務総長は29日までに連日双方に停戦を呼びかける声明を出したが、事実上黙殺されている。日本は12月31日、麻生太郎首相が民間人の犠牲に遺憾の意を表明し、イスラエルに対し速やかに攻撃の停止を求めた。

2008年12月30日と2009年1月1日、フランスは人道物資搬入のための48時間の停戦案を出したが、ハマースの継続的なロケット砲攻撃を停止するためには不十分であるとし、イスラエルは拒否した。イスラエルのリブニ外相は、仏サルコジ大統領に対し、「われわれは、ガザの人道的状況をあるべき姿に維持している」と主張した。ハマースは、イスラエルの攻撃停止とガザ地区包囲解除が停戦の前提との見解を示した。

12月29日、イスラエルのバラク国防相はハマースとの「全面戦争」を宣言した。

カッサムロケットのガザ地区での民間人地区からイスラエル南部に向けて発射, 2009年1月
イスラエル軍の攻撃を受けるガザ地区郊外, 2009年1月

ガザ地区の住民は、ハマースの実効支配を理由に、地区外への避難は負傷者の手当などの特例を除き認められていない[40]。2009年1月2日、イスラエルは非パレスチナ人に限り脱出を許可し、約200人が退去した。

一方、イスラエル世論の空襲支持は高く、イスラエル国内のメディア・『ハアレツ』紙2009年1月1日号によると、52%が空爆継続、19%が地上侵攻を支持。停戦支持は20%だった。また、2月に予定されているクネセト総選挙の議席予想では、空爆直前の調査では与党は定数120中55議席だったが、60に伸ばす見込みであるという[41]。このため、攻撃は一説に2006年のレバノン侵攻失敗や自身の金銭スキャンダルを帳消しにしたいオルメルト暫定首相[42]ら与党側が仕組んだ「選挙対策」ではないかとする見方も出ている [43]

1月3日夜、イスラエル軍はガザ地区の地上侵攻に踏み切った。イスラエル軍はガザ地区に三方から侵攻し、ガザ地区を三分断。ガザ地区最大の都市ガザ市を包囲した。国連の潘事務総長はオルメルト首相に「深い懸念と失望」を伝え、攻撃の即時停止を求めた。パレスチナ自治政府とエジプトも地上戦開始に非難声明を出した。リビアが国連安保理にイスラエルを非難する停戦決議案を出したが、米英の反対で採決には掛けられなかった。フランスを中心とした欧州連合は停戦を働きかけたが、イスラエルは拒否。しかし、欧州連合はイスラエルとアッバース大統領の自治政府とは交渉しているが、ハマースを「テロ組織」とする立場から、ハマースへの直接交渉は一切行っていない。イスラエルも同様である。

米国ブッシュ大統領は1月5日、「自衛を望むイスラエルの立場を理解する」と述べ、イスラエルが目標を達成するまで攻撃を支持する構えを見せた。一方、米国は停戦の条件として〈1〉ガザを実効支配するハマースのロケット弾発射停止〈2〉エジプトからガザへの武器密輸ルートとなっているトンネルへの対処〈3〉ガザとイスラエルとの境界にある検問所の再開を提示したが、ハマースはイスラエル寄りであるとして拒否した。ハマースは同日、エジプトに外交団を派遣した。ベネズエラ1月6日、イスラエルへの抗議として、イスラエル大使を追放した。

1月7日、人道物資輸送のため、イスラエル軍は隔日で3時間の攻撃停止を行なった。これによりガザの住民はごく短時間ではあったが、安堵する時間が与えられた。しかし困難な状況は変わっていない。

1月8日のイスラエル軍によるUNRWAへの攻撃は、攻撃停止されているはずの時間帯であった。同日、国連安保理は英国提出による双方に「即時かつ永続的停戦を求める」決議を採択した。米国は拒否権発動を見送り、棄権した。しかし、当事者は停戦決議を無視した。また、米国の上下院は相次いでイスラエル全面支持の決議を行った。1月13日、ガザ市で地上戦に突入した。1月14日ボリビアベネズエラはイスラエルと断交した。イスラエル、ハマース双方は実質的にエジプトを介して停戦交渉中である。しかし、イスラエルは一切の譲歩を避けるため、一方的に停戦を宣言した[44]。ハマースはこれを拒否し、その後も衝突は続いたが、1月18日にハマース側が1週間の停戦を表明したことで、一応の終結を見た。1月21日にイスラエル国防軍は、ガザ地区から撤退した。これは、1月20日バラク・オバマのアメリカ大統領就任に配慮したものといわれている。オバマは「イスラエルの自衛権」に理解を示す声明を出し、引き続き米国はイスラエル支持を鮮明にした。一方、ジョージ・ミッチェル元上院議員を中東問題特使に任命したが、米国最大のユダヤ人団体名誉毀損防止同盟エイブラハム・フォックスマン委員長は、「ミッチェル氏は中立だ」「だから心配だ」と不満を口にした[45]

イスラエル南部でロケット弾攻撃のビデオ, 2009年3月

イスラエルはガザ地区の封鎖を継続しており、ハマースはもとより、他の住民も密輸トンネルの再建で対抗しようとしている。これは民生品が長期の包囲で不足しているためである。ハマースは1年の、イスラエルは1年半の停戦案を提示したが、進展は見られない。

双方による報道管制も行われている。特に、イスラエルは報道関係者のガザ地区への立ち入りを一切禁じ[46]アルジャジーラなど従来よりガザ地区に記者が駐在しているマスコミ以外は、直接取材は不可能に近い状況になっている。1月3日の地上侵攻作戦では、規制解除前に報じたイランの記者を逮捕した[47]1月9日には米3大ネットワーク(ABCCBSNBC)やCNN、欧州の主要メディアなどが連名で、現地取材を認めるよう声明を出した。イスラエル最高裁は、外国メディアの現地取材を認める判決を出したが、イスラエル国防軍側はまだ認めていない[48]

2010 - 2017:パレスチナ側の手詰まりと米トランプ政権発足

アメリカ合衆国仲介の和平交渉が暗礁に乗り上げ、2010年12月には南アメリカ諸国においてパレスチナの国家承認の動きが起こった[49]

2011年5月15日、ヨルダン川西岸、ガザ地区、レバノンのイスラエル国境付近、シリアのゴラン高原などで、イスラエルの占領に抗議する集会・デモが行われ、国境を越えた参加者をイスラエル軍が砲撃・発砲し、合計で12人が死亡した[50]

9月9日から10日にはエジプト革命で政権が崩壊したエジプトで今度はイスラエル大使館がデモ隊に襲撃される騒ぎがあった[51]

9月23日にはパレスチナが史上初めて国際連合への加盟申請を行ったが、国際連合安全保障理事会においてアメリカが拒否権を行使するとみられている[52]。加盟申請後、アッバース議長は「アラブの春」になぞらえ「パレスチナの春」として独立を求めると声明を発表した[53]。2011年10月31日には国際連合教育科学文化機関(UNESCO)の加盟国として承認された[54]

2012年11月29日、国際連合総会において参加資格をオブザーバー組織からオブザーバー国家に格上げする決議案が賛成多数で承認された[55]

11月30日、イスラエルは占領地の東エルサレムとヨルダン川西岸の入植地に計約3000棟の入植者住宅の建設を決定した。国連で、パレスチナをオブザーバー国家として承認されたことに対する報復としている。また、西岸の大規模入植地マーレアドミムと東エルサレムの間の「E1地区」などの建設計画手続き開始も盛り込まれた。「E1地区」は東エルサレムをヨルダン川西岸から完全に切り離し、またヨルダン川西岸の南北も事実上分断することになるため、「パレスチナ国家の樹立を困難にする」として米国が反対し、計画推進が見送られてきた経緯があった[56]

2014年4月23日、パレスチナのファタハとハマースは連立政権の組閣で合意した。ハマースをテロ組織とするイスラエルはこれに反発し、4月25日、和平交渉の中断を発表した。

6月12日、イスラエル人入植者である3人の少年が行方不明となった。イスラエル側はハマースの犯行と主張し、パレスチナ人約400人を逮捕、9-10人を殺害した。一方、ガザ地区から報復としてロケット弾などの攻撃があった。3人が遺体で発見されると、イスラエルは報復としてガザ地区を空襲した。7月2日には、パレスチナ人の少年が焼死体で発見され、ユダヤ人過激派6人がイスラエル側により逮捕された。7月8日、イスラエルは本格的なガザ侵攻を開始し、8月26日の一応の停戦までに、パレスチナ側2158人、イスラエル側73人の死者が出た。

2014年の1年間では、パレスチナ側は2285人、イスラエル側は84人が紛争で殺害された[57]

2015年4月1日、パレスチナは国際刑事裁判所にオブザーバーとして加盟した。2014年のガザ侵攻などで、イスラエルを追及する方針である。イスラエルのネタニヤフ首相は繰り返し「加盟は容認できない」と批判。イスラエルは、同国が代行して徴収した税金をパレスチナ側に支払わずに凍結するなど、パレスチナ側への牽制を強めてきた[58]

6月30日、過激派組織「イスラム国」は、「ユダヤ人国家(イスラエル)」、ファタハ、ハマースに「宣戦布告」した[59][60]

2015年の1年間では、パレスチナ側は192人、イスラエル側は25人が紛争で殺害された[61]

2016年12月23日、国連安保理でイスラエルのパレスチナ占領地への入植活動を「法的な正当性がなく国際法に違反する」とし「東エルサレムを含む占領地でのすべての入植活動を迅速かつ完全に中止するよう求める」決議が採択され、賛成14票、反対1票で可決された。同様の決議に対ししばしば拒否権を行使していたアメリカは今回は棄権した[62]。しかし、同年のアメリカ大統領選挙で当選を決めたドナルド・トランプ2017年1月20日就任)は、選挙中から親イスラエルを公約しており[63][64]、トランプ政権は、従来のアメリカ以上に親イスラエル政策を実行に移した。

2016年の1年間では、パレスチナ側は115人(うち、子供36人)、イスラエル側は12人(うち、子供1人)が紛争で殺害された[65]

2017年5月1日、ハマースは「ユダヤ人殲滅」を掲げる「ハマース憲章」を事実上修正し、安保理決議242および「アラブ平和イニシアティブ」の枠内でのパレスチナ国家建国を認める新指針を明らかにした。ただし、イスラエルの国家承認は否定した。ハマース代弁者のファウジ・バルフムは、「世界への我々のメッセージは、ハマスは過激でなく、現実的で開明的な運動だということ。我々はユダヤ人を憎んでいない。我々が闘っているのは我々の土地を占領し、我々の人民を殺す者たちだ」と述べた。一方、イスラエルのデイビッド・キーズ報道官は、ハマースが「世界をだまそうとしているが成功しない」「彼らはテロ目的のトンネルを掘り、数多くのミサイルをイスラエル市民に向けて打ち込んでいる。これが本当のハマスだ」と批判した[66]

12月6日、アメリカはエルサレムをイスラエルの首都であると承認した。国連安保理でのアメリカ非難決議は、アメリカの拒否権で否決された[67]。パレスチナはアメリカの拒否権発動を受けて、国連総会開催を呼びかけた。
アラブ連盟は非難決議を出したが、具体的な制裁などは決議されなかった。

12月21日、国連総会の緊急特別会合は、エルサレムに外交使節(暗に大使館)を設置しないよう求める決議を、賛成128、反対9(イスラエル、アメリカ、グアテマラホンジュラスマーシャル諸島ミクロネシア連邦ナウルパラオトーゴ)、棄権35、欠席21で可決した。ただし、法的拘束力は無い。イスラエルのネタニヤフ首相は、国連を「うそ議会」と呼び、投票結果を拒否すると非難した。パレスチナの報道官は「パレスチナの勝利」と歓迎した[68][69]。米トランプ政権は、「賛成国への経済援助を打ち切る」と圧力を掛け、日本にも水面下で反対か、少なくとも棄権するよう求める打診があった。日本は、米国を除く五大国全てが賛成に回る見込みであること、反対すれば従来の「2国家解決」支持と矛盾する恐れがあること、決議案がアメリカの名指しを避けたことなどを理由に賛成に回った[70]

2017年の1年間では、パレスチナ側は96人(うち、子供20人)、イスラエル側は17人(うち、子供0人)が紛争で殺害された[71]

2018 - :現在――「繁栄に至る平和」と「アブラハム合意」

2018年1月3日、アメリカのトランプ大統領はTwitterで「(和平)協議の一番難しい部分のエルサレムを議題から外した。だが、パレスチナ人には和平を協議する意志がない。今後、膨大な支援額を支払う理由などあるだろうか」と、パレスチナに対する報復を示唆した[72]

1月16日、アメリカ国務省は、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に対して1月上旬に支払う予定だった拠出金1億2500万ドル(約138億円)のうち6500万ドルを凍結すると発表した。国務省のナウアート報道官は「(凍結は)誰かを罰することを狙ったものではない」「UNRWAの資金が最善の使い方をされているか確認する必要がある」と主張した[73]

3月、イスラエルのテレビ局『Channel 10 News』によると、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子はニューヨークのユダヤ人指導者との会合に出席し、パレスチナに対して「(米国の)和平案の受け入れを開始するか、"黙っている "べき」との見解を示した。また、「過去40年間、パレスチナ指導者は何度も何度も機会を逃し、与えられたすべての申し出を拒否してきた」と非難し、パレスチナ問題よりもイラン対策の方が緊急の課題であるとの見解を示した[74]。この発言は、アラブの指導者が、イスラエル寄りに舵を切ったことを示していた[75]

3月30日、ガザ地区で、パレスチナ難民の帰還を求める大規模なデモが行われた。数万の群衆がイスラエル軍と衝突し、パレスチナ側は少なくとも16人が殺害された。イスラエル軍は、パレスチナ側が先に発砲したと主張した[76]

5月9日、イスラエル国防軍は「ユダヤ・サマリア[77]」に軍律1797を布告した。これは、イスラエル軍が「違法」と判断した新築建造物(未完成または竣工6ヶ月以内または居住30日以内の建造物)を、従来の司法手続きを省略して、96時間以内に異議申立が無ければ一方的に破壊できる内容である。軍律自体は、ユダヤ人入植者も対象となるが、パレスチナ人住民の建築許可が困難な現状で、パレスチナ人を主要な標的にした内容と『ハアレツ』のアミラ・ハス記者は指摘した[78]

5月14日、アメリカは在イスラエル大使館をエルサレムに移転した[79]。ガザ地区ではパレスチナ人による大規模な抗議集会が暴動に発展し、イスラエル軍が発砲した。パレスチナ側によると、5月15日時点で55人が殺害され、約2700人が負傷した[80]。5月18日までに、パレスチナ側の死者は61人にのぼり(3月30日 - 5月13日の死者を含めると、118人)[81]、2014年のガザ侵攻以来、1度の衝突では最多の死者となった。
パレスチナのアッバース大統領は、「本日またしても、我が民に対する虐殺が続く」とイスラエルを非難し、3日間の服喪を発表した。国連のフセイン人権高等弁務官は、「イスラエルの発砲で何十人が死亡し、数百人が負傷したのは、衝撃的だ」と、「甚だしい人権侵害」を非難した。一方、イスラエルのネタニヤフ首相は「テロ組織ハマスは、イスラエル破壊の意図を宣言し、この目的達成のため国境フェンス突破を目指して何千人を送り込んでいる。我々は自分たちの主権と市民を守るため、引き続き断固たる行動をとる」と主張した。米ホワイトハウスのラージ・シャー報道官は、「大勢が悲劇的に死亡した責任のすべては、ハマスにある」とイスラエル支持を表明した。クウェートは、国連安保理での調査を要求したが、米国の反対で採決はできなかった。

8月24日、アメリカ国務省高官によると、トランプ政権はパレスチナへの約2億ドル(約222億円)の経済支援を撤回し、他の用途に資金を振り向けることを明らかにした[82]

8月31日、アメリカのナウアート報道官は、UNRWAへの資金拠出を停止すると発表した。従来、UNRWA予算の1/3~1/4程度を米国が負担していたが、1月に行った拠出額の削減に留まらず、それが全く途絶えることになった。ナウアートはUNRWAの運営に「修復不可能な欠陥」があると指摘し、パレスチナ難民の子供達に対しては「国連機関を通じない直接支援などを検討する」と表明した。
UNRWAは、パレスチナ難民を、1948年のイスラエル建国当時の難民及びその子孫と定義しており、その数は2017年1月現在で534万人に上る。アメリカはこの中から、子孫を難民から外すように主張していた。子孫を外せば、いずれ難民は全員死亡して居なくなるからである。これはイスラエルの意向を反映したものだが、UNRWAは応じていなかった[83][84][85][86]。UNRWAの予算は当面、日本など約40ヶ国の拠出金の増額で凌ぐことになった[87]

9月11日、アメリカ国務省は在パレスチナ総代表部の閉鎖を発表した。ジョン・ボルトン大統領補佐官は、9月10日の講演で「米国は常に、友人で同盟国のイスラエルの側に立つ」「パレスチナがイスラエルとの意味ある直接交渉への一歩を拒否し続ける限り、総代表部を開くことはない」と主張していた[88]

9月12日、国連貿易開発会議(UNCTAD)は、2017年にパレスチナ自治区の失業率が27%を超え、農業生産も11%減ったとの報告書をまとめた。国際援助の減少やイスラエルによる経済封鎖が理由としている。パレスチナの失業率は、世界最悪水準にあるという。また、ガザ地区では2008年からのガザ侵攻で生産的資本蓄積の6割が失われ、2014年のガザ侵攻では、残っていた生産的資本の85%が失われた。世紀の変わり目(2001年)と比較して、実質所得は3割減り、2018年初めの電力供給は、1日平均2時間であった[89][90]

2018年の1年間では、パレスチナ側は290人(うち、子供56人)、イスラエル側は14人(うち、子供0人)が紛争で殺害された[91]

2019年3月22日、米トランプ大統領はTwitterで、「今こそ米国は、ゴラン高原のイスラエルの主権を認める時が来た」と表明した。従来は米国を含め、ゴラン高原はシリア領と認識し、イスラエル領有を公認した国家・政権は存在しなかった[92][93]

3月25日、アメリカは、ゴラン高原をイスラエル領と正式に承認した[94]

アメリカ・トランプ政権では、2017年11月から、トランプの娘婿であるジャレッド・クシュナー大統領上級顧問が中心になって、ディナ・ハビブ・パウエル大統領副補佐官、デービッド・フリードマン駐イスラエル大使らと共に、新たな和平案の腹案を練っていた[95]。クシュナーらはいずれも親イスラエルで知られ、従ってイスラエルに有利な案が取り沙汰された。一方、クシュナーの相談を受けた、元外交官のアーロン・デービッド・ミラーによると、クシュナーは「イスラエル人とパレスチナ人にも歴史の話をするなといった」と述べ、白紙で一から和平案を作る考えを示した[96]

6月25日 - 26日、アメリカ主催でバーレーンで行われた会議「繁栄に向けた和平(繁栄に至る平和)」で、まず「経済部分」の素案が発表された。パレスチナ・エジプト・レバノン・ヨルダンへの約500億ドルの投資を目玉としたが、出資者が誰になるかは、アラブ諸国の出資に期待するとした。パレスチナ側は「パレスチナに国家樹立を諦めさせるための買収劇である」として出席をボイコットした。イスラエル側は直接の出席はしなかったが、代わりに民間のビジネスマンを出席させた[97]
同日、クシュナーは「アルジャジーラ」の取材に応え、トランプ政権は従来と「異なる」アプローチをしており、その一つがパレスチナの財政的コミットメントの優先だと説いた。また、アラブ諸国は2002年に採択された「アラブ和平イニシアティブ」をパレスチナ問題の基本線としていた。これは原則として、安保理決議242に基づく要求である。しかしクシュナーは、それは不可能だと主張し、イスラエルの立場との妥協をすべきだと主張した。また、エルサレムをイスラエルの首都と公認したことを、「主権国家であるイスラエルには、首都を決める権利がある」と改めて擁護した[98]

11月6日、UNRWAのクレヘンビュール事務局長が、職権濫用の疑いで事実上の辞職に追い込まれた[99]

11月18日、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は記者会見で、ヨルダン川西岸のイスラエル入植地は、国際法に反しているとは認識しないとの見解を示した。これは従来の政府見解を変更するものであるが、ポンペオは1981年にレーガン元大統領が示した見解を正当としたと述べた[100]。イスラエルのネタニヤフ首相は、アメリカの方針転換を「歴史の過ちを正す」ものだと歓迎した。PLOのサエブ・エリカット事務局長は、「世界の安定と安全、平和」を危険にさらすものと批判した[101]

12月1日、イスラエルのナフタリ・ベネット国防相は関係当局に、ヘブロンの内側にあるユダヤ人入植地を拡大するよう指示した。このことで、ユダヤ人入植者を800人から倍増させるとしている[102]

2019年の1年間では、パレスチナ側は149人(うち、子供31人)、イスラエル側は10人(うち、子供1人)が紛争で殺害された[103]

2020年1月5日から6日にかけて、イスラエルはヨルダン川西岸での、新たに入植地1900棟の計画を承認した。日本の大鷹正人外務報道官は「強い遺憾の意」を表明した[104]

1月8日、イスラエルのベネット国防相は、占領地のC地区を「領土」と称し、「C地区を(併合するための)『戦い』をパレスチナと進めている」と述べた。ベネットは、入植地の建築を進めることで、10年以内に100万人のユダヤ人を移住させると述べ、「我々は国連にはいない」と述べた。また、パレスチナ人の「違法な」建築を止めるために何もしなかったとネタニヤフ政権を非難し、EUが「違法」建築に資金を提供していると非難した[105]。またベネットは翌週、7つの「自然保護区」を新たに承認した。これは、名目は自然保護区だが、パレスチナ人の立ち入りを禁じることで、事実上イスラエルの支配を進める施策である[106]

1月28日、アメリカのトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は、共同で和平案"Peace to Prosperity"(「繁栄に至る平和英語版」)の全文を発表した[107][108][109]。クシュナーの素案に基づくもので、主な内容は以下の通りである。

  • 前提認識。パレスチナ・イスラエル両者とも、平和を望んでいる。しかしパレスチナはテロ組織であるハマースによるイスラエルへの攻撃、自治政府の腐敗や失政、テロを煽動する法律・教育や政府系メディアなどの問題を抱えている。他方、イスラエルはエジプトと国交を結んだ時に平和のために広大な領土と交換したなど、暴力とテロの被害にもかかわらず、常に平和を望んできた。すなわち、紛争の全責任はパレスチナ側にあるとする
  • パレスチナの独立を承認するが、イスラエルの脅威にならないようにする。必然的に、治安維持や航空交通管制などにおいて、パレスチナの主権は制限される
  • パレスチナの非軍事化。テロ組織であるハマースなどの武装解除。イスラエルの安全を脅かさないため、軍備を認めない。外交権も制限され、イスラエルに対する一切の政治的・司法的戦争を禁じる(すなわち、イスラエルの行動に対する、国連安保理や国際司法裁判所などを通した一切の異議申立が禁止される)。パレスチナがこれらを遵守した場合は、米国はパレスチナを国際機関の一員として受け入れるよう働きかける
  • 安保理決議242を含む国連決議の否定。決議は「相互に矛盾」しており、「歴史的役割は尊重」するが、複雑な問題の解決を妨げると認識
  • イスラエルに誤りの余地は無い。アメリカは、イスラエル国家と国民が、より安全になると信じる妥協案の作成を要請するだけである
  • 自衛戦争で得た領土から撤退したのは、国際的にも珍しいことである。イスラエルは、1967年以降の占領地の88%から既に撤退しており[110]、イスラエルとアメリカは、安保理決議242は1967年以前の領域の100%提供を法的に拘束したものでは無いと認識している[111]
  • イスラエルをユダヤ人国家として、パレスチナをパレスチナ人国家として相互承認する
  • イスラエルが実効支配する入植地の97%を、イスラエル領として承認。ヨルダン川西岸の3割が新たなイスラエル領となる。また、ヨルダンとの国境線は、イスラエルの安全保障に必要であるから、全てイスラエル領とし、パレスチナをイスラエル領内に孤立させる
  • 入植地によって生じたパレスチナの飛び地は、道路・橋・トンネルの建設により相互の交通を保証する。ただし、イスラエルの安全保障を優先する
  • 和平交渉が始まれば、イスラエルは新たな入植地の建設を4年間凍結する
  • 代地として、ヨルダン川西岸のごく一部(パレスチナ人住民の多い地域)と、エジプト国境のネゲヴ砂漠の一部をパレスチナに譲渡する
  • エルサレム全域をイスラエルの首都として承認。パレスチナの首都としてアブ・ディス(エルサレムの東方に隣接する地域)などを提案
  • 貿易港の利用は、イスラエルが安全と認めるまで最低5年間はガザ地区の港は認めず、その間はイスラエル及びヨルダンの港を利用するものとする
  • 国連が認めていた、パレスチナ難民の帰還権の否定。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の解体。パレスチナ国家への移住は、「イスラエルの安全を脅かさない範囲で」認め、残りは現在の難民受入国またはイスラム協力機構加盟国で引き取る
  • パレスチナは報道の自由・表現の自由・自由な選挙・信教の自由などを遵守する義務を負う。また、近隣諸国への憎悪を煽る教育その他一切の行動、同様に本協定に反する教育・煽動などを禁じる
  • パレスチナおよび周辺地域(エジプト、レバノン、ヨルダン)への、10年間で総計約500億ドル(約5兆5000億円)の投資
  • 市場経済による経済振興、社会基盤・教育・医療などの整備、生活の質の改善、政府機構の改革を行い、汚職を断つ。パレスチナ指導部は、日本韓国シンガポールの政府が困難に立ち向かったのと同じようにすべきである

トランプはTwitterで、イスラエルとユダヤ人のための和平案であることを自賛した[112]。パレスチナの国家承認を除き、全面的にイスラエルの主張に従った内容で、ネタニヤフは「我々の主権を認めた」内容を歓迎した[113]。パレスチナのアッバース大統領は、この案を「歴史のごみ箱に投げ捨てる」と拒否した[114]。また、元パレスチナ情報庁長官のムスタファ・バルグーティは、和平案の地図におけるパレスチナは、「かつての南アフリカにおけるアパルトヘイトでのバントゥースタンと同じ」「唯一の違いは、パレスチナ人の孤立した地理的状況はゲットーとも比較される」と非難した[115][116]。さらに、パレスチナは安保理非常任理事国のチュニジアの協力を得て、和平案に反対する決議案を安保理採決に掛けるよう働きかけた[117]
この他、オスロ合意当時にイスラエル側で交渉に携わったダニエル・レヴィは、「降伏文書と和平案には違いがある。しかし、降伏文書の条件であっても、敗者側の自尊心を形だけでも保つやり方で作成されれば、この和平案よりはもっと永続する可能性が大きいだろう」「この案は、アメリカ人(さらにはイスラエル人)からパレスチナ人への憎悪の手紙である」と批判した[118][119]
一方で、ユダヤ人入植者からは、「ユダヤ・サマリア[77]」がイスラエル固有の領土という認識の元、入植地が敵対的なパレスチナ自治区に「包囲」され、これ以上の入植拡大が望めなくなることへの危機感も表明された[120]。また、150以上の入植地を管理するイェシャ評議会のデイビッド・エルハヤニ委員長は、併合が一時凍結されたことを「クシュナーはナイフでネタニヤフを背後から刺した[121][122]」と非難した。エルハヤニによると、当初、アメリカはパレスチナが48時間以内に和平案に応じなければ、イスラエルの併合強行を認める予定だったが、後から翻意したという。

クシュナーはイアン・ブレマーによるインタビューで、パレスチナ側の批判に次のように反論した。「パレスチナは、長い間被害者カードを使ってきた」「和平案はイスラエルにとって大きな妥協だ。なぜならイスラエルにとって妥協をするこれと言った理由がないからだ。イスラエルがすでに強い国で、さらにその力を増す中で、我々が彼らに妥協を迫ったのだ」[123][124][125]
サイモン・ウィーゼンタール・センターエイブラハム・クーパー副所長は、パレスチナ側の主張する国境線は、イスラエルにとって「ヨルダン(川西岸)と地中海の間の幅がわずか9マイル(約14.48㎞)しかな」く、「テロリストやイランのミサイル攻撃の格好の標的となり」、「自殺行為」であるから、同意すべきでは無いと主張した。また、「国連とその構成部分は、総会、国連人権理事会、国連救済事業庁(UNRWA)を含む、無限の反イスラエルの決議とイニシアチブを打ち出して来たが、パレスチナの侵略は何十年にもわたってフリーパスを与えている」と主張した。さらに、「ドイツにはユダヤ国家を決して危険にさらしてはならない義務がある」と主張し、チュニジアが安保理採決を予定している和平案非難決議案に賛成しないよう牽制した[126]

2月6日、チュニジアはバーティ国連大使を解任した。和平案非難決議案提出を阻止しようとする、米国の圧力に屈したと取り沙汰された[127]

2月9日、アフリカ連合は米トランプ政権が公表した和平案は違法であると強く非難した。また、「パレスチナの大義」への連携を表明した[128]

2月11日、パレスチナのアッバース大統領は国連安保理で、米国による和平案の拒否を呼びかけた。しかし、非難決議案の採決を行うことはできなかった。外交筋によると、米国は採決阻止のため安保理各国に強い圧力を加えており、欧州の一部の国でさえ、採決には消極的だったという[129]

2月25日、イスラエルは東エルサレムに5000棟、隣接するE1地区の入植地に3500棟の建設計画を発表した。ネタニヤフ首相は「E1の建物は "巨大な意義 "を持っている」と強調した[130]。PLOは、イスラエルは国際法に違反しており、安保理の支持する2国家解決案に反していると改めて非難した[131]。また、PLOのエリカット事務局長はTwitterで、「実行されれば2国家解決は終わりです」と非難した[132]。日本の大鷹外務報道官は、入植地計画推進に「強い遺憾の意」を表明した[133]

5月6日、イスラエルのベネット国防相は、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地を、新たに7000棟許可したと発表した。ベツレヘム近郊のエフラト入植地に「数千棟」の建築を認めたという[134]

5月17日、イスラエルのネタニヤフ首相は閣議で、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地を自国に併合する法整備について、早期実現する考えを示した。新型コロナウイルス感染症 (2019年)以外の法案は当面保留する方針だが、入植地併合は例外とした[135]。ネタニヤフ政権は、「青と白」との連立合意[136]の中で、併合に向けた議論を7月以降に始めると明記した[137]

5月30日、東エルサレムで、イスラエルの警察官が、パレスチナ人男性を射殺した。警察官は、男性が拳銃を所持していることを疑い、止まるように命じたが男性は従わず、発砲した。男性は自閉症による知的障害があり、付き添いがそのことを訴えたが、警察官は聞かず、さらに発砲して止めを刺した。男性は武器を何も持っていなかった[138][139][140]。パレスチナ人たちは抗議デモで、「黒人の命は大切」にならって「パレスチナ人の命は大切」と訴えた[141]5月31日、ガンツ国防相は「極めて遺憾」であると表明し、迅速な調査を行うことを明らかにした。イスラエルの人権団体"B'Tselem"によると、2011年4月から2020年5月までの間に、イスラエルの治安部隊は、イスラエル領およびイスラエル占領下のパレスチナ自治区で、パレスチナ人3408人を殺害した。しかし、イスラエルの治安部隊で有罪となったのは5人だけであった[142]

6月23日、ロイターによると、「米政府当局者と協議に詳しい関係筋」の情報として、アメリカのクシュナー大統領上級顧問、オブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)、バーコウィッツ中東担当特使、フリードマン駐イスラエル大使の4人が、イスラエルによる併合を承認するかどうかの協議を開始した。トランプ政権は併合を承認する方向だが、「イスラエルの急激な動き」を容認すればパレスチナを協議に参加させられなくなることを恐れ、エルサレムに近い複数の入植地の(イスラエルの)主権承認から段階的に検討しているという[143]

6月24日、国連安保理のオンライン会合で、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「イスラエル政府に対し、併合計画の放棄を求める」と呼びかけた。ベルギー、イギリス、エストニア、フランス、ドイツ、アイルランド、ノルウェーの欧州7か国は共同声明で、「国際法の下、併合は、われわれのイスラエルとの親密な関係に影響を及ぼすことになる。また併合をわれわれが承認することはない」と警告した。アラブ連盟のアハメド・アブルゲイト事務局長は併合について、「将来のいかなる和平の見通しをも破壊」することになると批判した。一方、アメリカのポンペオ国務長官は記者会見で、「イスラエル人がこれらの地域に主権を拡大するという決断は、イスラエル人がなすべき決断だ」と併合を擁護した[144]

8月13日、アメリカの仲介で、イスラエルはアラブ首長国連邦との国交正常化に合意したことを発表した(アブラハム合意[145][146]。これは、従来のアラブ連盟が「アラブ平和イニシアティブ」で示した、イスラエルが占領地明け渡しを履行した上での国交正常化という方針の根本的な転換だった。
イスラエルのネタニヤフ首相は記者会見で、アメリカより合意の条件として、ヨルダン川西岸の併合の「一時停止」を求められたとしたが、「ユダヤ・サマリア[77]に主権を適用し、米国と完全に協調するという私の計画に変更はない」と、将来の併合を進める計画に変わりは無いとする見解を示した[147]。一方、アラブ首長国連邦のムハンマド・ビン・ザーイドアブダビ皇太子は、「パレスチナ領土のさらなるイスラエル併合の停止に合意した」として、将来についてはイスラエル側と見解の相違を見せた[148]

国交正常化交渉でパレスチナの領土問題が協議されたにもかかわらず、当のパレスチナに事前の連絡は無く、協議に加わることもできなかった[149][150]。パレスチナのアッバース大統領は「パレスチナの人々に対する攻撃だ」と国交正常化を非難し、マルキ外相は駐アラブ首長国連邦大使の召還を発表した[151]
しかしネタニヤフ首相は意に介さず、自らの方針である「平和のための平和」「力による平和」の正当さを自賛した。これは、従来の和平交渉での「土地と平和の交換」を否定する主張で、パレスチナへの占領地(イスラエルの見解に拠れば、固有の領土)返還を行わず、一方的に屈服させることが平和に繋がるという意味である。その上で、領土問題を「人質に取った」パレスチナを無視してアラビア諸国と国交を結ぶことで、パレスチナを従わせることが平和に繋がるとする見解を示した[152]。さらに、ネタニヤフは自らの「ネタニヤフ・ドクトリン」の説明として、エフード・ヤアリの「パレスチナとの泥沼の交渉に引きずり込まれるよりも、パレスチナは後回しにしてアラビアはじめ諸外国との国際関係を構築し、パレスチナの拒否権を奪う」「(パレスチナの声明は)怒りよりも欲求不満を示している。アブ・マーゼン(アッバース)らはもはや、アラビア諸国にイスラエルと敵対するよう命令することはできない」とする論説を引いた[153][154]。アラブ首長国連邦のアンワル・ガルガッシュ外務担当国務大臣[155]は、ネタニヤフ首相の発言について「イスラエルの(国内)政治についてはよく分からない」「短期間の(併合)停止では無いと思う」と問題にはせず、改めてパレスチナ・イスラエルの両者に交渉に戻るよう呼びかけた[156]

イスラエル・アラブ首長国連邦の国交正常化は、日本を含め多くの国が歓迎の意志を示し、あるいは賛否そのものを示さなかった。明確に批判したのはイラン、トルコ、シリア(アサド政権)のみであった。パレスチナ問題についても、イスラエル非国交国を含め、多くはパレスチナの独立や2国家共存への支持を表明したのみで、先の3ヶ国以外で明示的にイスラエルやUAEに遺憾や懸念を示した国は、ルクセンブルク(後に撤回)、南アフリカ共和国[157]のみに留まった。

8月30日、イスラエルのネタニヤフ首相は、エルサレムでアメリカのクシュナー大統領上級顧問らと会談した。ネタニヤフは共同記者会見で「もはやパレスチナに(イスラエルとアラブの和平進展を)拒否する権利はないと理解すべきだ」と主張し、クシュナーは「パレスチナにも現実的な提案をしている」「彼らに和平を実現する意思があれば、そのチャンスはある」と主張した[158]

9月4日コソボセルビアは、アメリカ合衆国の仲介で、経済関係の正常化で合意した。米国はまた、コソボとイスラエルの国交正常化と、セルビアの在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移転すると発表した[159]。また、イスラエルのネタニヤフ首相は、「エルサレムに大使館を開設する、初めてのイスラム教徒が多数を占める国家であるコソボ」と述べ、コソボの在イスラエル大使館も、エルサレムに開設されることを明らかにした[160]

9月9日、アラブ連盟はオンラインで外相会議を開き、イスラエルとアラブ首長国連邦の国交正常化について意見交換をした。パレスチナのマリキ外相は、両国の国交正常化はアラブ和平イニシアティブに反する物と主張し、合意への非難声明のとりまとめを求めた。しかし、アラブ連盟内部でも、既にイスラエルと国交のあるエジプト、ヨルダンに加え、バーレーン、オマーンも国交正常化を支持したことから、非難声明の採択を行うことはできなかった[161]

9月11日、アメリカのトランプ大統領は、イスラエルのネタニヤフ首相、バーレーンのハリーファ国王と会談し、イスラエルとバーレーンの国交正常化で合意したと発表した。パレスチナ問題については、併合の是非には触れず、「紛争の公正かつ包括的で永続的な解決を達成するための努力を続ける」とした[162][163]。また、(イスラエル占領下の)東エルサレムにあるアル=アクサー・モスクへの、イスラム教徒の自由な往来を認めると表明した。
ネタニヤフ首相は「他のアラブ国家との和平合意締結に興奮している」との声明を発表した。バーレーンの国営通信は、パレスチナとイスラエルの対立を終わらせるための「戦略的な選択」だとするザヤニ外相の声明を伝えた。一方、パレスチナは「アラブの大義への裏切り」であり「パレスチナを占領するイスラエルの醜い犯罪の正当化につながる」と強く反発した[164]。アメリカのクシュナー大統領上級顧問は、電話での記者会見で「これにより、イスラム世界の緊張が緩和され、パレスチナ問題を自分たちの国益と、自分たちの国内優先事項に焦点を当てるべき外交政策から切り離すことができるようになる」との見解を示した[165]。佐々木伸と『朝日新聞』は、一連の国交正常化はパレスチナを孤立させ、アメリカ・イスラエルによる和平案「繁栄に至る平和」を呑ませる思惑があると解説した[166][167]

9月15日、アメリカのホワイトハウスで、イスラエル、アメリカ、アラブ首長国連邦、バーレーンの4者で「アブラハム合意」が調印された[168]。合意では、トランプ政権の和平案「繁栄に至る平和」を前提に、「両国民の正当なニーズと願望を満たすイスラエル・パレスチナ紛争の交渉による解決を実現」するとした[169][170]
米トランプ大統領は記者会見で、「我々はパレスチナ人に大金[171]を払ってきたが、我々は適切に扱われていなかった。(だからUNRWAなどへの)支払を止めた」「彼らが敬意を払わないなら、我々はもう関わらない。彼らは状況を見ていると思うし、我々は強い信号を送ってきた」とパレスチナを非難し、「繁栄に至る平和」の受け入れを迫った[172]。またトランプは、「他の国は彼ら(パレスチナ)に援助を与えている。あなた(ネタニヤフ)が相手にしているのは、非常に裕福な国だ。そして、これらの国々は我々と(和平の)署名をしている。全ての国が署名をするだろう」と、これまでパレスチナを援助して来たアラブ諸国が、「我々」(イスラエル・アメリカ)の側に付いたことを暗示した[173]

9月22日、パレスチナはアラブ連盟理事会の議長を返上した。議長は加盟国の持ち回りで6ヶ月の任期であるが、パレスチナのマリキ外相は「議長職の間に、アラブ人が(イスラエルとの)正常化に向けて突進するのを見ることは名誉なことではない」と、加盟国への失望を示した[174]

9月24日、『エルサレム・ポスト』は、"The New Ararb"及びパレスチナ情報サービスのデータによると、ラマッラー(のパレスチナ政府)の収入が前年比で7割減少したと報じた。2019年は、外国から5億ドル(約526億9千万円)の援助を得ていたが、2020年は2億5500万ドルとほぼ半減した。特に、アラブ諸国からの援助は2億6700万ドルから3800万ドルに、85%減少した。すなわち、減少の大半はアラブ諸国の援助縮小で占められた。アラビア語放送局"Al-Araby"および"Al-Jadeed"は、9月15日のトランプ・ネタニヤフの2者会談で、トランプは「裕福なアラブ諸国に、パレスチナ人にお金を払わないように頼んだ」と、アラブ諸国に圧力を掛けたことを語ったという[175]

9月25日、パレスチナのファタハとハマースは、半年以内に選挙を行うことで合意した。まず立法評議会(国会)総選挙を行い、続いて大統領選、最後にPLO評議員選を行う予定である。国会議員の任期は2010年、大統領の任期は2012年で切れていたが、選挙が行えずにそのままになっていた[176]

パレスチナ問題への各国対応

アメリカ合衆国ユダヤ人ロビー活動もあって、イスラエルと極めて関係が深く、国連安保理でイスラエル非難決議案が出されると、ほぼ確実に拒否権を発動している[177]。民間レベルでも、2010年2月のギャラップ社世論調査によれば、イスラエルへの好感度は67%で、調査した20ヶ国・地域中上から5番目(上からカナダイギリスドイツ日本の順)と比較的高い。逆にパレスチナ自治区への好感度は20%で下から4番目(下からイラン北朝鮮アフガニスタンの順)と低く、アメリカは親イスラエル・反パレスチナの国民感情を示している[178]。また、同じくギャラップ社が2010年2月に中東問題に関して行った世論調査では、米国民のイスラエル支持率は63%、パレスチナ支持率は15%を記録している[179]。逆にBBC読売新聞社が22カ国で「良い影響を及ぼしている国」と「悪い影響を及ぼしている国」を調査した結果、悪い影響を及ぼしている国では、1位イラン55%、2位のパキスタン51%に続き、3位に北朝鮮とイスラエルで50%となり世界的には否定的に捉えられている事が判明した[180][181]

また、軍事援助も継続して行っている。2007年7月29日にイスラエルのオルメルト首相が明かしたところによると、イスラエルはアメリカに対し、従来の25%増となる、10年間で300億ドル(約3兆5000億円)の軍事援助を取り付けた。従来は年間24億ドル(約2,800億円)(AFP通信米政府、イスラエルに10年で300億ドルの軍事支援に合意 * 2007年07月29日 21:35 発信地:エルサレム/イスラエル」)。この金額は、イスラエルの軍事費の2割以上に相当する。2016年には、アメリカはイスラエルに対し、2019年 - 2028年の10年間で380億ドル(約3兆9000億円)の軍事援助を行うことで同意した[182]

これは無償援助のみの額で、有償での借款や兵器の売買などを含めると、アメリカによる出資はさらに巨額になる。

また、英オックスフォード大学の講師サラ・ヤエル・ハーシュホーンによると、2015年現在、ユダヤ人入植地の入植者の15%はアメリカ国籍であるという[183]

ドイツは、ナチスによるユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の負い目もあって、イスラエルの全面支援を表明している。その他の欧州諸国は、パレスチナは未承認だが、米独に比べるとイスラエルに批判的である。

アジア、アフリカ諸国は、大部分がパレスチナを承認している。中華人民共和国はパレスチナを承認する一方、2007年1月10日 - 11日には胡錦涛国家主席、温家宝首相がイスラエルのオルメルト首相と会談するなど、両にらみの態度を取っている。中南米諸国は、2010年12月3日ブラジルが承認したのを皮切りに、承認国が大勢を占めるようになった。

日本は、パレスチナは未承認であり、現在は将来の承認を予定した自治区として扱っている。パレスチナに物資の援助は行うが、ハマースへの対応は欧米に歩調を合わせている。また、日本の援助で建てられたパレスチナの施設が、イスラエルにしばしば破壊されているが、これについてイスラエルに抗議は行っていない。2008年2月25日、イスラエルのオルメルト首相は来日し、2月27日福田康夫首相と会談した。福田首相は、「平和と繁栄の回廊」構想の具体化を急ぐ考えを改めて表明し、会談後両国の関係強化などを盛り込んだ共同声明を発表した。また、イスラエルが北朝鮮によるシリア、イランへの軍事協力を示す情報を提供することも分かった。しかし、イスラエルのガザ地区などへの攻撃については、日本は何も触れなかった。翌2月28日、オルメルト首相は、日本の記者クラブの講演で「北朝鮮とイラン、シリア、ヒズボラ、ハマースは悪の枢軸だ」と述べた。北朝鮮はこの動きに反発し、「イスラエルこそ危険な反動勢力」と主張した[184]

報道については、双方が相手に有利な偏向報道を行っていると主張している[185]。2008年3月12日、イスラエルはカタールの放送局アルジャジーラの取材を、ハマース偏向報道を理由に拒否した。さらに、アルジャジーラ本社やカタール政府に懸念を表明する文書の送付や、アルジャジーラ記者のビザ発給制限も検討している。

当事者の宣伝も活発で、インターネットでも互いの関連サイトが多数存在する(イスラエルの広報宣伝活動は、Hasbara(説明)と称している)。2008年12月29日には、イスラエル国防軍によるYouTubeチャンネルが設けられた。

地勢に関する現状

2005年5月現在の分離壁のルート
西岸地区に築かれた分離壁

ヨルダン川西岸

詳細は「ヨルダン川西岸地区」および「イスラエル西岸地区の分離壁」を参照

パレスチナのヨルダン川西岸地区は、パレスチナ自治政府が行政権、警察権共に実権を握るA地区、パレスチナ自治政府が行政権、イスラエル軍が警察権の実権を握るB地区、イスラエル軍が行政権、軍事権共に実権を握るC地区に分けられ、2000年現在、面積の59%がC地区である。なお、イスラエルはこの他に「軍事基地(Military base)」「射撃場(Firing zone)」「自然保護区(Nature Reserve)」も分類しているが[186]、実質的にC地区の一部である。また、イスラエル軍占領地、ユダヤ人入植地は、これらの面積には含まれない(詳細はヨルダン川西岸地区#統治者による区分参照)[187]
イスラエル支配下のパレスチナ人地区では、住居の建設はイスラエルの許可が必要だが、イスラエルの市民団体「ピース・ナウ」によれば、申請の94%が却下される[188]。特にC地区では、2008年2月現在、パレスチナ人の住居は、自分の土地であっても過去10年間1軒も許可されていない。

また、イスラエルは自国領・占領地・入植地と、パレスチナ人居住区とを分断する壁を一方的に築いている。イスラエルは「壁(חומה, wall)」ではなく「フェンス、柵(גדר, fence)」であると主張し、「反テロフェンス」と呼んでいる。壁は、イスラエル領土だけで無く、イスラエル領域外の入植地を囲む形で建設が進められている。第1次中東戦争の停戦ラインでパレスチナ側とされた領域も壁の内部に取り込まれており、事実上の領土拡大を進めている。2004年7月9日、国際司法裁判所は、イスラエルによる占領下にあるパレスチナにおける壁の建設が国際法に違反するという勧告的意見を下した。イスラエル側は現在も壁の建設を続行している(エルサレム周辺地図(英語) 青地がイスラエル入植地、灰地がパレスチナ人居留区、黒実線が壁、灰実線が計画中の壁。全体図は外部リンクからパレスチナ赤新月社による地図参照)

イスラエルは単に壁を作るだけではなく、道路の通行規制も行っている。パレスチナ自治区であるべき地域に、イスラエル人専用道路(パレスチナ人立ち入り禁止)や、パレスチナ人の通行制限されている道路が多数存在している(地図:ヨルダン渓谷沿い入植地群)。

また、イスラエル軍や、ユダヤ人入植者などのイスラエル民間人は事実上治外法権であり、たとえパレスチナ自治政府が警察権を握るA地区であっても、イスラエル軍民の犯罪を摘発することはできない状況である[189]

パレスチナ人在住・所有の土地の没収も、日常的に行われている。イスラエルの行政法は、今日でもオスマン帝国・イギリス委任統治領パレスチナ時代の法律が多く残っており、イスラエルはこれらの法律も利用している。たとえば、第三次中東戦争での占領後、1967年7月31日にイスラエル国防軍は軍律59を布告し、「敵国」、すなわち従来ヨルダン・エジプトが国有地としていた土地を全て自国の国有地と宣言した。しかし私有地の没収については1979年、イスラエル最高裁で違法判決が出たため、新たな法的根拠を用意する必要があった。そこでイスラエル軍は、軍律59を改正し、イスラエルが国有地と宣言した土地に対しては、私有地であることを証明する手続きが必要であるようにした。占領地には、未登記でパレスチナ人が生活の用に供している土地が少なくなく、イスラエル軍は全てこれを国有地と宣言した。また、異議申立は通常の裁判所では無く、イスラエル軍運営の「異議申立委員会」でしか行えないようにした。これにより、イスラエル軍はさらに多くのパレスチナ人を追放した。さらに、イスラム法に端を発する、「3年間未耕作の土地はスルタンが収公する」規定を国家の収公と読み替え、パレスチナ人の耕作を妨害することによって、私有地についても多くの土地を国有地として没収した。没収した土地は、ユダヤ人に入植地として、本来のイスラエル領内の1/3程度の価格で販売されている[190][191]

国際連合人道問題調整事務所(OCHA)の報告[192]によると、2019年の第1四半期(1~3月)に、ヨルダン川西岸地区でイスラエル軍によって、136のパレスチナ人による建造物が破壊された。イスラエル軍が破壊したのは、42%が住宅、38%が住宅関連施設、7%が水道・衛生施設だった。これにより、218人が事実上追放され、約25000人が影響を受けた。もっとも深刻な被害は、2月17日に行われた水道管の破壊で、ベイトフリック村、ベイトダジャン村(いずれもB地区)のあわせて約18000人が影響を受けた。また、ヘブロン南部のマッサファー・ヤッタ地区(イスラエルは「射撃場」に指定し、住民の立ち退きを要求)では、2018年10月にoPt人道基金の寄付で灌漑が整備されたが、2019年2月にイスラエル軍によって破壊された。また、A地区・B地区においても、住宅2軒がイスラエル軍によって破壊され、8人が避難した。OCHAは2009年より、パレスチナ側の被害状況を集計しているが、2019年第1四半期は過去2年より多いペースで、最多を記録した2016年は下回った。

2020年9月のOCHA報告によると、イスラエル軍によるパレスチナ人所有の建造物の破壊は、2017年は月平均35件、2018年は38件であったが、2019年は52件と増加した。2020年は、新型コロナウイルス感染症流行初期の1-2月は、月平均45件に減少したが、3-8月は65件と、2017年からの4年間で最も多くなった。また、2020年3月から8月の間だけで、442人のパレスチナ人が家を失った。特に、8月は205人が家を失ったが、これは過去4年間で最多であった。
OCHAは、2018年に布告された軍律1797によって建造物の迅速な破壊が可能になり、所有者が異議申立の手続きを取れなくなっていることを懸念している[193]

水利権についても、同様にイスラエルによる占有が進められている。イスラエル軍は、1967年にヨルダン川西岸とガザ地区を占領すると、軍律58で水道施設の許認可権を布告し、拒否に際して理由を示す必要はないとした[194]。同年8月15日の軍律92では、イスラエル軍が水利権の全権を握ると布告した[189]。同年11月19日の軍律119では、全ての水利はイスラエル軍司令官の完全な指揮下にあり、無許可の全ての施設・資源は没収されると布告した。1968年11月29日の軍律291では、1967年以前(イスラエル占領以前)の地権・水利権の契約は全て無効と布告した。

オスロ合意では、ヨルダン川西岸におけるパレスチナ人の水利権が公認されたが、地下水の1/4に留まり、ヨルダン川については水利権が認められなかった。オスロ合意では、パレスチナへの将来の水利権拡大を含めた最終的な地位協定が予定されていたが、実施されていない。2009年時点でも、イスラエルが8割の水利権を握っている[189]

OCHAによると、C地区のパレスチナ人住民27万人のうち、9万5000人は、WHOの推奨する1日の水消費量である100リットルの、半分以下の水しか利用できていない。また、パレスチナ・トゥーバース県の推計によると、県内のイスラエル人入植者は、パレスチナ人の8倍の水を割り当てられているという[192]

人口の歴史

19世紀 - 1948

パレスチナの人口[195]
ユダヤ人 アラブ人 合計
1800 6,700 268,000 274,700
1880 24,000 525,000 549,000
1915 87,500 590,000 677,500
1931 174,000 837,000 1,011,000
1936 400,000 800,000 1,200,000
1947 630,000 1,310,000 1,940,000

1949 - 1967

イスラエルの人口[196]
イスラエル 合計
ユダヤ人 アラブ人
1949 1,013,900 159,100 1,173,000
1961 ? ? ?
エジプト占領ガザ地区内の人口とは、ヨルダンのヨルダン川西岸地区占有[197]
エジプトのガザ地区を占領 ヨルダンのヨルダン川西岸地区を占領 合計
ユダヤ人 アラブ人 ユダヤ人 アラブ人
1950 ? 240,000 ? 765,000 ?
1960 ? 302,000 ? 799,000 ?

1967-2016まで

イスラエルの人口[196]
イスラエル 合計
ユダヤ人 アラブ人
1967 2,383,600 392,700 2,776,300
1973 2,845,000 493,200 3,338,200
1983 3,412,500 706,100 4,118,600
1990 3,946,700 875,000 4,821,700
1995 4,522,300 1,004,900 5,527,200
2000 4,955,400 1,188,700 6,144,100
2006 5,137,800 1,439,700 6,652,896
イスラエル占領ガザ地区内の人口統計と、イスラエルの占領ヨルダン川西岸地区で[198]
イスラエルのガザ地区を占領 イスラエルのヨルダン川西岸地区を占領 合計
ユダヤ人 アラブ人 ユダヤ人 アラブ人
1970 ? 368,000 ? 677,000 ?
1980 ? 497,000 ? 964,000 ?
1985 ? 532,288 ? 1,044,000 ?
1990 ? 642,814 ? 1,254,506 ?
1995 ? 875,231 ? 1,626,689 ?
2000 ? 1,132,063 ? 2,020,298 ?
2006 0 1,428,757 255,600 2,460,492 4,144,849

「パレスチナ問題」の核心の簡素なまとめ

脚注

  1. ^ ◆パレスチナの歴史的変遷図
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    なお、この記事にあるガザ地区でのデモ行進で、「子どもを殺さないで」と書かれたプラカード涼宮ハルヒのイラストが使われていたことが話題になった。
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関連項目

関連文献

  • 広河隆一『パレスチナ』岩波新書
  • 岡倉徹志『パレスチナ・アラブ その歴史と現在』三省堂
  • エリアス・サンバー『パレスチナ 動乱の100年』創元社
  • 奈良本英佑『パレスチナの歴史』明石書店
  • 横田勇人『パレスチナ紛争史』集英社
  • 山崎雅弘『中東戦争全史』学習研究社
  • 立山良司『図説 中東戦争全史』学習研究社
  • 森戸幸次『中東百年紛争 パレスチナと宗教ナショナリズム』平凡社
  • PLO研究センター『パレスチナ問題』亜紀書房
  • 阿部俊哉『パレスチナ』ミネルヴァ書房
  • エドワード・サイード『パレスチナとは何か』岩波書店
  • エドワード・サイード『パレスチナ問題』みすず書房
  • エドワード・サイード『戦争とプロパガンダ』みすず書房
  • エドワード・サイード『戦争とプロパガンダ2』みすず書房
  • エドワード・サイード『戦争とプロパガンダ3』みすず書房
  • エドワード・サイード『戦争とプロパガンダ4』みすず書房
  • エドワード・サイード『イスラム報道』みすず書房
  • イアン・ミニス『世界の紛争を考える アラブ・イスラエル紛争』文溪堂
  • 市川裕『ユダヤ教の精神構造』東京大学出版会
  • 立山良司『揺れるユダヤ人国家 ポスト・シオニズム』文藝春秋
  • 池田明史『イスラエル国家の諸問題』アジア経済研究所
  • ウリ・ラーナン『イスラエル現代史』明石書店
  • 高橋和夫『アラブとイスラエル パレスチナ問題の構図』講談社
  • 立山良司『イスラエルとパレスチナ 和平への接点をさぐる』中央公論社
  • 鏡武『中東紛争』有斐閣
  • 土井敏邦『和平合意とパレスチナ イスラエルとの共存は可能か』朝日新聞社
  • M・ブーバー『ひとつの土地にふたつの民 ユダヤ、アラブ問題によせて』みすず書房
  • ミシェル・ワルシャウスキー『イスラエル・パレスチナ民族共生国家への挑戦』柘植書房新社
  • デイヴィッド・フロムキン『平和を破滅させた和平 中東問題の始まり[1914-1922]』紀伊國屋書店

外部リンク