自閉症

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自閉症(じへいしょう、Autism)は、社会性や他者とのコミュニケーション能力の発達が遅滞する発達障害の一種、先天性の脳機能障害、認知障害である。時に、早期幼児自閉症、小児自閉症、あるいはカナー自閉症と呼ばれる。

うつ病や、ひきこもり、内気な性格を指して自閉症と呼ぶこともあるが、これは誤った認識である。詳しくは#病気概念を参照のこと。

自閉症のデータ
ICD-10 F84.0
統計 出典:日本自閉症協会
世界の患者数
日本の患者数 360,000~1,200,000
学会
日本 日本自閉症スペクトラム学会
世界
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目次

[編集] 定義

アメリカ精神医学によるDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental disorders)によると 第一軸の「通常、幼児期、小児期、または青年期に初めて診断される障害」における広汎性発達障害(pervasive developmental disoders)に位置づけられている。

自閉性障害の基本的特徴は3歳位までに症状があらわれ、以下の3つを主な特徴とする行動的症候群である。

  1. 対人相互反応の質的な障害
  2. 意思伝達の著しい異常またはその発達の障害 
  3. 活動と興味の範囲の著しい限局性

[編集] 原因

現在では先天性の脳機能障害によるとされており、多くの遺伝的因子が関与すると考えられている。保護者の教育や生まれ育った環境が原因で自閉症になるということはあり得ない。

  • フランス・パスツール研究所の研究チームが、フランス国立医学研究機構およびスウェーデン・イエーテボリ大学と行った共同研究では、自閉症者の脳内で遺伝子「シャンク3(SHANK3)」に異常があることが指摘されている。ただし、研究チームからはシャンク3で自閉症の全ての症状を説明できるわけではないと警告が発せられており、主要な社会的障害についてある程度説明ができるかもしれないと述べるにとどまっている。
  • 父親が中高年のときに授かった子供である場合、新生児が自閉症になりやすいとする近年の米国の研究がある。同研究によると、父親が40歳以上の新生児は、自閉症や関連の症例が30歳未満の父親の場合の約6倍で、30~39歳の父親と比較すると1.5倍以上であったとされている。一方、母親については、高齢者で多少の影響を及ぼす可能性は排除できないものの、子供の自閉症に与える影響はほとんど認められなかったとされている[1]
  • 日本の独立行政法人理化学研究所は、神経細胞の生存や分化に重要な神経栄養因子の分泌を調節する遺伝子(CADPS2遺伝子)の異常が、自閉症の発症メカニズムに関係しているとの研究成果を発表している[2]

[編集] ミラーニューロンの活動低下の影響

自閉症に関係するとされている脳領域。ミラーニューロンは自閉症との関連性が指摘されているが、確固とした証拠はまだ見つかっていない。

ミラーニューロンとは、他者の動作を観察している際に、自分が動いている時と同じように反応する神経細胞(ニューロン)で、イタリアにあるパルマ大学のジアコーモ・リゾラッティ(Giacomo Rizzolatti)らの研究グループによって、1996年に発見された。

詳細は「ミラーニューロン」を参照

サルなどの動物の大脳皮質前頭葉運動前野と呼ばれる領域があり、この領域にあるニューロンは、サルが自分で動いている時に反応するだけでなく、ヒトが自分と同じ動きをしているのを見ている時にも反応した。このように他者の動作に対しても、まるで鏡を見ている様に反応することから、ミラーニューロンと名づけられ、その後、fMRIによってヒトでも同様のミラーニューロンの存在が示唆された。

ヒトのミラーニューロンは大脳のいくつかの部位に存在していると見られており、例えば、前帯状皮質の一部の領域は、自分の痛みだけでなく、他人が痛がっている場面を見た場合も同じように反応することが確認されている。

カリフォルニア大学のV.S.ラマチャンドランとL.M.オバーマン(Lindsay M.Oberman)らのグループ、スコットランドのセントアンドリューズ大学のホイッテン(Andrew Whitten)らのグループは、ほぼ同じ時期に、対人スキルや共感の欠如、言語障害、模倣が上手く出来ない等の自閉症の特徴は、すべてミラーニューロンの機能不全と同じ特徴を持つとの説を発表した。

この仮説に基づき、カリフォルニア大学のアルトシュラーが、知的障害が少なく低年齢でもない自閉症児達の脳波を調べた結果、手を握ったり開いたりするなど、意識的に体を動かす「随意運動」を行なう際に抑制される「ミュー波」が、正常なヒトでは他者の随意運動を見ている時も抑制されるのに対し、自閉症児の場合、自分で動く時には抑制されるものの、他者の動作を見ている時に抑制されることはなかった。

ヘルシンキ工科大学のハリ(Rittea Hari)のグループは、脳磁図を使って、自閉症児の子供ではミラー・ニューロンが存在すると見られる領域に活動の異常があることを見出した。ハリと同様のことは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のダプレット(Mirella Dapretto)らによっても、fMRIを使って観察された。

以上のようにミラーニューロンと自閉症との関係が示唆されている。しかし、ミラーニューロンがヒトに存在すること自体がまだ完全に証明された訳ではなく、このニューロンと自閉症との関係もいまだ不透明である。また、異常があると自閉症になるという可能性はあるが、体を揺らす、アイコンタクトの回避、知覚過敏、特定の音に対する嫌悪などの自閉症特有の症状は、ミラーニューロンの異常だけでは説明できない。

これらの症状の原因については、ラマチャンドランらのグループから出された「突出風景理論」(salience landscape theory)と呼ばれる仮説で、大脳の感覚野扁桃体のあいだの連絡が正しく行なわれない為に、外部刺激に対する反応が正常に行なわれず、極端な感情反応を示すことになると説明されている。

しかし、ミラーニューロン仮説も、突出風景理論も、自閉症の原因の全てを解明するものではない[3]

[編集] 統計

国際的な統計は少なく、現段階では増加傾向にあることだけがはっきりしている。

日本では1000人に1~2人の割合で生じているが、どこまでを自閉症の範囲とするかによって発生率は大きく違う。男性と女性の比率は4:1程度と言われている[4]

しかし、この障害を持つ女子は、より重度の精神遅滞を示す傾向がある。[5]X染色体の異常に起因する脆弱X症候群による説明の可能性が考慮される。

日本自閉症協会によると現在日本国内に推定36万人、知的障害言語障害を伴わない高機能自閉症(アスペルガー症候群、またはアスペルガー障害)など含めると120万人いるといわれている。

[編集] 分類

自閉症は症例が多彩であり、健常者から重度自閉症者までの間にははっきりとした壁はなく、のように境界が曖昧であるため、その多様性・連続性を表した概念図を自閉症スペクトラム自閉症連続体などと呼ぶ。

知的障害を伴う場合が多いが、知的能力(一般的にIQで判断される)が低くない自閉症のことを高機能自閉症と呼ぶことがある。また、知的能力の優劣に関わらず、一部の分野で驚異的な能力を有する場合もあり、その驚異的な能力を有する者をサヴァン症候群と呼ぶ。なお、「高機能自閉症」と「アスペルガー症候群」、「低機能自閉症」と「カナー症候群」は基本的には類似しており、臨床的には区別がつきにくい場合が多い(DSM-IV、ICD-10では言語障害がないものをアスペルガー症候群、言語障害があるものを自閉性障害、小児自閉症(カナー症候群)と分類する)。本記事では同一のものとして扱う。

[編集] 分類図

この図は一般的な自閉症スペクトラムを表しきっているわけではなく、知能指数と自閉傾向の強弱のみによる分類図にすぎない。

ファイル:自閉症.PNG

[編集] 高機能自閉症

自閉症スペクトラムのうち、知的障害がないもの(一般的にはIQ70以上)を高機能自閉症(知的遅れのないカナータイプ)アスペルガー症候群(言語障害は無いが、視覚認知・空間認知力に、問題を生じる)と呼ぶことがある。「高機能」というのは知能指数が高いという意味であるが、平均的な健常者より高いとは限らず、知的障害との境界域の場合もあれば、一部平均的な健常者をはるかに上回る場合もある。1980年代以降、急速に認知されてきた。

アスペルガー症候群」も参照

[編集] サヴァン症候群

詳細は「サヴァン症候群」を参照

一部の自閉症児者は、カレンダーも見ずに何千年も前の特定の日の曜日を瞬時に答えたり、驚異的な記憶力を有していたりする、いわゆるサヴァン症候群と呼ばれる能力を持つ場合もある。しかし、サヴァンでなくても大なり小なり特異な才能を示す事が多いため(例:線描、裁縫など)、どこからをサヴァンと言うかが非常に難しい。

[編集] 症状

言語の発達の遅れ、対人面での感情的な交流の困難さ、反復的な行動を繰り返す、行動様式や興味の対象が極端に狭いなどの様々な特徴がある。

喋らなすぎるにせよ、喋りすぎるにせよ、プロトコルの互換性が低いがために対他的コミュニケーションポートが相対的に“閉じ”気味の存在であることは、あらゆる自閉症児に共通する。

「自閉」という言葉から、他者とのかかわりを一切持たない、寡黙というイメージを連想することもあるが、実際の自閉症の場合は、一般的に恥ずかしいと思って秘密にするような事でも正直に話してしまうなど、むしろイメージ的には自閉とは逆の「自開」である[要出典]という人もいる。

なお、自閉症の症状は人によってかなり異なり、以下の特徴が当てはまらない場合もある。

[編集] DSMの診断基準

DSMの診断基準に挙げられている症状は次の通り。

  • コミュニケーションにおける質的な障害
    • 視線の相対・顔の表情・体の姿勢・身振り等、非言語行動がうまく使えない。
      • (例)会話をしていても目線が合わない。叱られているのに、笑っている。
    • 発達の水準にふさわしい仲間関係が作れない。
    • 興味のあるものを見せたり指さしたりする等、楽しみ・興味・成果を他人と自発的に共有しようとしない。
    • 対人的または情緒的な相互性に欠ける。
      • (例)初対面の人に対する無関心。
  • 意思伝達の質的な障害
    • 話し言葉の発達に遅れがある。または全く話し言葉がない。
      • (例)クレーン現象[6]
    • 言語能力があっても、他人と会話をし続けることが難しい。
      • (例)一問一答の会話になってしまう。長文で会話ができない。
    • 同じ言葉をいつも繰り返し発したり、独特な言葉を発する。
      • (例)人と会話をする際に同じ返事や会話を何度もする。
    • 発達の水準にふさわしい、変化に富んだ『ごっこ遊び』や社会性を持った『物まね遊び』ができない。
  • 限定され、いつも同じような形で繰り返される行動・興味・活動(いわゆる「こだわり」)
    • 非常に強く、常に繰り返される決められた形の一つ(もしくはいくつか)の興味にだけ熱中する。
      • (例)特定の物、行動などに対する強い執着心。
    • 特定の機能的でない習慣・儀式にかたくなにこだわる。
      • (例)物を規則正しく並べる行動[7]
      • (例)水道の蛇口を何度も開け閉めする行動。
    • 常同的で反復的な衒奇(げんき)的運動物体の一部に持続的に熱中する。
      • (例)おもちゃや本物の自動車の車輪・理髪店の回転塔・換気扇など、回転するものへの強い興味。
      • (例)手をヒラヒラさせて凝視する。

[編集] その他の特徴

  • 数字や風景など、特定のものに対する高い記憶能力。
  • ある特定の音に対する強い不快感。
  • 客観性を持たない文章。または、事実だけを羅列した文章を書くこと。

[編集] 視覚の優位性

自閉症児者は、耳で聞くよりも眼で見るほうが認識しやすいという視覚優位の特性がある。このため、自閉症児に注意を与える時は紙などに書いて見せると効果があるとされる[8]。ただし、高機能自閉症及びアスペルガー症候群の中には、目で見た情報がかえって伝わりにくい場合もある(各個の症状の出方による。アスペルガーにおいても視覚優位特性のあるケースは多数確認されている)。

[編集] 心の理論

心の理論とは、「自己と他者の識別、自分や他者の心の動きを推測する能力」のことであり、自閉症者はこの「心の理論」において障害があるため、相互の人間関係に疎い、会話やその場の雰囲気を理解出来ない、冗談を冗談と受け止めず真に受けてしまう、言外の意味を捉えられないなど、対人関係に問題を生じやすい。

これは知的障害がない高機能自閉症においてもあてはまり、やはり対人関係に問題を生じるケースがある。

また、他人のする事を自分の立場に置き換えられずにそのまま真似するため、手のひらを自分側に向けてバイバイする。言語においても同様に相手の言葉を自分に置き換えて返答することが苦手で自分の事を「あなた」などの二人称で、相手の事を「わたし」などの一人称で呼んだりすることや、自分に対して「~してあげようか」と聞かれると「~してあげたい」等と返答したり、オウム返しなどの現象が見られる。

心の理論の能力を調べる検査として、「サリーとアン課題」などがある。

[編集] 時間の概念形成の未発達

他の例として時間の「概念」が希薄な場合もある。時計で時間が分かるような自閉症児者のなかには、時間に強迫的になり全ての事柄がまさにその定められていた瞬間に起こる事を要求する例がみられる事がある。

  • (例)「5分待っていて」と約束したくせに6分17秒も待たせたと被害感を持つ。
  • (例)逆に4分20秒で戻れば、まだ5分経っていないので待ち続ける。

このような症状がある場合でも施設を利用出来るよう、ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートでは、提示する事により待ち時間を0にするホワイトカードと呼ばれるサービスが行われているように、比較的認知された症例である。

[編集] 日常生活における困難

当事者が普段の生活で気になる・困る事項は下記のようなものがあげられる。

  • 同一性が保持されない。
    • (例)本棚の本が巻数ごとにちゃんと並べてない。(一見乱雑だが、本人のこだわりとして寸分違わず物を配置していることもある)
    • (例)同じ時間にくる電車・バスだが、形式等が違う。(細部であっても許容できない場合もある)
  • 未経験、予想外の状況、急な予定変更。(特に本人にとって不都合な事態が生じた場合)
    • (例)学校などで行事のため普段と日課が変わってしまった。
    • (例)楽しみにしていた行事が突然中止になった。
    • (例)気に入っていたおもちゃなどが紛失・破損してしまった。
  • 本人のこだわりが内的要因、外的要因問わずできなくなってしまう。
    • (例)周囲の人が本人のこだわりと理解していないため、その行為をやめさせてしまう。

同一性の無さや、先の見通しが立たないこと、自分のやりたいこと(特にこだわり)が実現できないことに非常に不安、ストレスを感じる場合が多く、そういったことに対するストレス耐性は強くない人が多い。

ストレスが過度に高まった状態で、さらにストレスを増加させる事態(普段は本人も気にしないような日常の些細な出来事でも)に遭遇すると、それをきっかけに突然「パニック発作」を起こしたり「自傷・他害行為」を行うこともある。ストレスの原因が取り除かれる、あるいはパニック行為が終わった後は普段の状態に戻るが、情緒の不安定さはしばらく続くこともある。

しかし、事前に連絡を受けていたり、詳しい内容を把握できていれば、大抵のことは納得して受け入れられる当事者は多い。

[編集] 診断

医学的には、DSM-IVICD-10の診断基準により診断される。なお、知的障害の有無は診断に関係ない。

診断名について、一般に「自閉症」と呼ばれる場合には、DSM-IVでは「自閉性障害」「アスペルガー障害」「他に分類されない広汎性発達障害、PDDNOS」、ICD-10では「小児自閉症」「アスペルガー障害」「非定型自閉症」と診断される。いずれのカテゴリーも、「広汎性発達障害」の下位カテゴリーである。なお、「高機能自閉症」というカテゴリーはDSM-IV、ICD-10では無い。

「自閉症」という言葉には様々なイメージがあり、中には誤っているイメージも多い。このため、医師が親に話すときに「自閉症」という言葉を使うと、親が誤ったイメージを持ってしまう危険がある。このため、より広い概念の「広汎性発達障害」という言葉を使う場合もある。

[編集] 主な検査法

脳波や、行動などで判断する。

  • 言語検査
    • イリノイ式言語学習能力診断検査(ITPA)
    • 絵画語い発達検査(PVT)
    • 国リハ式<S-S法>言語発達遅滞検査
  • 行動検査
  • 発達検査
    • 乳幼児発達スケール
    • 遠城寺式乳幼児分析的発達検査
    • 津守式乳幼児精神発達診断法
    • TK式幼児発達検査
    • 改訂新版幼児総合発達診断検査
    • 改訂日本版デンバー式発達スクリーニング検査
    • 早期発達診断検査
    • 新訂版自閉児・発達障害児教育診断検査
    • 新版K式発達検査
    • 日本版ミラー幼児スクリーニング検査
  • 絵画検査
    • DAP(人物画)

[編集] 自閉症スペクトラム指数(AQ)

自閉度(自閉症傾向)を測る指標の一種[9]正常知能の成人を対象にしており、自己回答方式で、自分の「自閉症傾向」を測ることができる[10] [11] [12]

ただし、AQは「診断ツール」ではなく、自閉症傾向のスクリーニング用ツール、つまり、自閉かどうか診断する前の、おおまかなふるい分け用のツールなので、AQだけで自閉症であるかどうかの診断はできない

  • AQ測定による調査でわかったこと
    • 社会人や大学生の中にも、少数だがAQ上でAS/HFA群と同じ程度の高得点を示す人がいる
    • 自閉症の診断を受けていない人にも、自閉症的な傾向を持つ人がいる
    • AQで測定される自閉症スペクトラム傾向にはかなりの個人差がある
    • 今後自閉症症状のメカニズムを解明する上で、アナログ研究的アプローチが可能である
    • コントロール群の平均スコアは16.4(♂~17、♀~15)[13]
  • 自閉症スペクトラム指数のカット・オフ点
    • 自閉症スペクトラム指数で高得点(33点以上)をとった学生12名を診断したところ、12名中7名が自閉性障害またはアスペルガー障害の診断基準にあてはまった(ただし、生育史が不明であることと、現在不適応を起こしていないため、自閉性障害とは診断されていない)。
    • 自閉症スペクトラム指数33点以上には成人のアスペルガー症候群・高機能自閉症者群の9割近く(87.8%)が含まれるのに対し、健常群で33点以上をとるのはわずかに3%弱であることから、自閉症スペクトラム指数のカット・オフ点(健常者と自閉症の識別点)は33点と決定された[14]
    • アスペルガー症候群の診断スクリーニングとして使用する場合、スコア26以下で有効に除外可能であることが示唆される[15]

[編集] 治療

現代医学では根本的な原因を治療する事は不可能とされている。 「TEACCH」「ソーシャルスキルトレーニング」などの各種プログラムなどによって、健常者に近い社会生活が送れるようになる場合もあるが、これらのプログラムは本人の社会生活における困難を軽減するものであって、根本的な原因が治癒したわけではないとされる。

原因が完全に究明されていない現在、疫学・予防策は確立されていない。

[編集] 診療科

[編集] 合併症

自閉症は、ADHD学習障害などを併発する場合がある。知的障害も合併していることが少なくない。まれにダウン症と合併する例もある。

なお、自閉症者は非自閉症者と比べて統合失調症に罹患する確率が極めて低いという報告がある。例えば非自閉症者の統合失調症罹患率は0.8%だが、自閉症者の罹患率はこれよりもずっと低く、報告は世界で10例に満たない[18]

[編集] 歴史

  • 病気の発見(認知)の歴史的変遷
    • アメリカジョンズ・ホプキンス大学児童精神科医であるレオ・カナーが「早期幼児自閉症」として1943年に報告した[19]。カナーは、「聡明な容貌・常同行動・高い記憶力・機械操作の愛好」などを特徴とする一群の幼児に対し、統合失調症(精神分裂病)の一症状を表す用語である「自閉」という言葉を用い、「自閉症」(オーティズム)と名づけたのである。カナーの報告した子供たちは、現在の低機能自閉症に当たるとされる。なお、カナーは自閉症の研究で自説に反する新事実が発見されると、自説の誤りを認識し訂正していった。
    • 翌年の1944年オーストリアウィーン大学小児科ハンス・アスペルガーが、カナーの報告よりも一見軽度ではあるが、共通点がある一群の子供たちのことを報告した(両者に交流はない)[20]。当時ヨーロッパは大戦中であり、オーストリアは敗戦国側であったため、この報告は戦勝国側では1980年代まで脚光を浴びることはなかった。アスペルガーの報告した子供たちは、現在の高機能自閉症に当たるとされる。
  • 原因の発見の歴史的変遷
  • 症状の歴史的変遷
    • カナーは自閉症児について、「先天的な知的障害があるわけではなく、心を閉ざしているだけであり、本来は聡明なのだろう」と考えた。
  • 分類の歴史的変遷
    • アスペルガーの死去の翌年の1981年に、自身にも自閉症の娘がいるモズレー病院の医師ローナ・ウィングが、英語圏ではほとんど忘れられていたアスペルガーの論文を英訳して再発表し、高機能自閉症の存在を広く知らせた。それまでのイギリスでは知的障害のある自閉症児にしか福祉の手が差し伸べられていなかったのであるが、自閉症の本質は知的障害や言語障害ではなく対人関係の障害であるため、高機能自閉症も支援の対象にするべきだとの考えである。
  • 診断の歴史的変遷
    • カナーは自閉症を統合失調症の幼児版であると考え、「小児分裂病」とも呼んだ。
    • ラターによる脳障害説以降、自閉症と統合失調症はまったく違う障害である事が分かってくる。
  • 治療の歴史的変遷
    • カナー、ベッテルハイムにより唱えられた後天的原因説によって、各地の治療施設では、虐待によって発症したのならばその逆をやればよいとの考えのもと、「絶対受容」という治療方針が取られたが、あまり治療効果はなく、むしろ成年以降の社会適応が困難になったといわれる。ベッテルハイム自身も障害児の入所施設の所長であったが、入所児童への虐待やデータ捏造などがあったという疑惑がある。なお、ベッテルハイムはのちに自殺した。
    • アメリカの精神分析のメッカであるカール・メニンガー病院では、一時期自閉症も精神分析治療の対象としたが、精神分析が自閉症に効果がないと判明すると、潔く自閉症部門を閉鎖した。このように精神分析や受容療法などの試みが一時期脚光を浴びたが、あまり効果がないと次第に分かってきた。

[編集] 日本での社会的影響

[編集] 病気概念

「自閉症」の語感から、内気な性格やひきこもりに至るような精神状態、うつ病の事を含んでいるように思われ、しばしば混同される事もあるが、これは自閉症に対する誤った認識である。

一部の創作作品では不適切な意味で「自閉症」を誤用したり、また後天的な自閉症の存在をほのめかす描写がされる場合がある。

  • ロックバンド黒夢の曲、『autism-自閉症-』[21]
    • 「自閉症」という言葉の意味を歌詞内で取り違えていたことにより、自閉症協会から抗議を受け、曲自体が絶版となる。ただし、この曲は自閉症患者のことを歌ったものではなく、当時のレコード会社を批判した歌である。

[編集] 原因

  • 遺伝子の異常が原因だとの説、水銀などの重金属の蓄積が原因だとの説[22]などがある。ただしMMRワクチンに含まれる水銀化合物が自閉症の原因であるとする論文はデータに捏造があったことが発覚した[23]。一時期、七田眞岩佐京子らによって「テレビの見せすぎが自閉症の原因」などの環境原因説が流行し、自閉症の子を持つ親は周囲から責められてつらい立場であったが、現在ではごく一部の学者以外は、自閉症は先天性の障害であり、育て方が原因ではないとしている(岩佐はのちに自説を一部撤回)。
  • 日本ではベッテルハイムの著書「虚ろな砦」が広く読まれたため、未だに自閉症は虐待や過保護が原因である「母原病」であるとの認識が一部に根強い。
  • 日本大学文理学部体育学科の教授である森昭雄2004年2005年前後にかけ、ゲーム脳についての講演の中で、自閉症を持つ子どもたちを「おかしい子ども」の一言で表現したうえ、「未熟な状態である赤ちゃんの頃から朝から晩までテレビを垂れ流して育てると、正常に育たず自閉症的な子供として育つ。」「最近自閉症の人数が増えているが、先天的なものは非常に少ない。テレビやビデオを見ている子どもは自閉症の状態になることがある。」と発言していたように、近年でも大学教授でさえ誤った認識を持っていた例がある。

[編集] 福祉制度

日本では2005年に発達障害者支援法が施行されるなど、高機能自閉症患者に対する福祉の整備が進められている。また、公式には対象外だが、実務上は療育手帳精神障害者保健福祉手帳の取得や障害年金の受給が認められる場合もあり、自治体によっては自閉症者にも療育手帳等が交付されている。

[編集] 自閉症を扱った作品

[編集] 関連項目

[編集] 関連人物

[編集] 脚注

  1. ^ Reichenberg A, Gross R et al. (2006). “Advancing paternal age and autism.”. Arch Gen Psychiatry. 63 (9): 1026-1032. PMID 16953005.
  2. ^ 自閉症に関連する遺伝子異常を発見 -自閉症の病因解明や早期診断に向けた新知見- 2007/3/23 独立行政法人 理化学研究所
  3. ^ V.S.ラマチャンドラン・L.M.オバーマン 「自閉症の原因に迫る」『日経サイエンス別冊』159号、日経サイエンス、2007年(平成19年)。
  4. ^ 氏家・松田・森・若山・村上・山本「自閉症児309例の臨床特徴の分析:高機能自閉症とアスペルガー症候群の臨床特徴に関する調査研究」
  5. ^ 高橋・大野・染矢訳「DSMーⅣ 精神疾患の診断・統計のマニュアル」
  6. ^ 何かして欲しい事があった場合に、そのことを直接言葉では伝えず(伝えられず)、近くの人の手を引っ張って対象物の所まで連れていく行動。
  7. ^ 「規則」といってもあくまで本人の基準による「規則」の場合があり、健常者から見た場合、乱雑であったり、規則性が無いように見えることもある。
  8. ^ 門 眞一郎「自閉症の人の理解(認知)の特徴(視覚的構造化の理論的根拠)」『自閉症は自閉症』2002年、4-5ページ
  9. ^ Baron-Cohen他、Autism-Spectrum Quotient、2001
  10. ^ 自閉症スペクトラム指数(英語版)
  11. ^ 自閉症スペクトラム指数(日本語版)
  12. ^ 自閉症スペクトラム指数(日本語版)のWWW版(採点機能付き)
  13. ^ Baron-Cohen S, Wheelwright S, Skinner R, Martin J, Clubley E (2001). “The Autism-Spectrum Quotient (AQ): evidence from Asperger syndrome/high functioning autism, males and females, scientists and mathematicians” (PDF). J Autism Dev Disord 31 (1): 5–17. DOI: 10.1023/A:1005653411471. 2008-08-28 閲覧。
  14. ^ 若林明雄「自閉症スペクトラム指数AQ 日本語版について」『自閉症とADHDの子どもたちへの教育支援とアセスメント』国立特殊教育総合研究所科学研究費報告書、2003年、47-56ページ
  15. ^ Woodbury-Smith MR, Robinson J, Wheelwright S, Baron-Cohen S (2005). “Screening adults for Asperger Syndrome using the AQ: a preliminary study of its diagnostic validity in clinical practice” (PDF). J Autism Dev Disord 35 (3): 331–5. DOI: 10.1007/s10803-005-3300-7. 2009-01-02 閲覧。
  16. ^ Baron-Cohen S. The extreme male brain theory of autism. Trends in Cognitive Sciences 6: 248-254, 2002.和訳
  17. ^ 同上 解説新聞記事(英文)
  18. ^ 川崎葉子「自閉症研究の歴史…病因論の変遷」『自閉症概念の移り変わり…研究の動向を通して』
  19. ^ Kanner, L:Autistic disturbances of affective contact. Nervous Child, 2:217 250, 1943.
  20. ^ Asperger, H. :Die“Autistischen Psychopathen”im Kindesalter. Archiv. fur Psychiatrie und Nervenkrankheiten, 117:76-136, 1944.
  21. ^ この曲が収録されていた『LIVE OR DIE-Corkscrew A Go Go』(VHS:1999、DVD:2000)と『pictures vol.1』(DVD:2000)は廃盤、回収された。
  22. ^ Michael Lesserなど
  23. ^ 解説新聞記事(英文)“TIMESONLINE MMR doctor Andrew Wakefield fixed data on autism”

[編集] 外部リンク