2019新型コロナウイルスによる急性呼吸器疾患

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2019新型コロナウイルス > 新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)
2019新型コロナウイルスによる急性呼吸器疾患
Symptoms of coronavirus disease 2019.svg
Symptoms of coronavirus disease 2019 (COVID-19)
症候学 発熱咳嗽呼吸困難
原因 2019新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)
診断法 PCR法

2019新型コロナウイルスによる急性呼吸器疾患(2019しんがたコロナウイルスによるきゅうせいこきゅうきしっかん、: Coronavirus disease 2019, COVID-19〈コビッド19〉[1])は、2019新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)によって発症するウイルス呼吸器疾患である。日本では主に「新型コロナウイルス感染症」と呼ばれている(#名称も参照)。

2019年11月、中国武漢市で初めて検出され新興感染症となり、以降世界各地で感染が拡大パンデミック)している。

感染予防と拡散抑止[編集]

世界保健機関 WHOでは、2020年03月18日に、「こまめに水と石鹸による手洗い(または手用エタノール剤による)」、「公共の場などで1mほどの間隔をとる」、「目、口、鼻などにできるだけ触れない」、「他者のため肘やティッシュや布なので鼻と口を覆う」、「発熱や咳(せき)、呼吸困難な場合、電話などで医療機関に相談する」、「最新で確実な情報にもとづき、また地域の医療従事者等の助言に従う」と表記した[2]


医薬品を使わない介入 (NPI)・集団感染緩和策[編集]

医薬品を使わない介入(NPI)による集団感染緩和策(Community Mitigation)
(1) 流行のピークを遅延させる
(2) ピーク時の医療への負荷を下げるために曲線を平坦化する
(3) 感染者数と健康への影響を減らす[3]

厚生労働省によれば、ウイルスなどによる感染対策の原則としては、

  1. (病原体を)持ち込まない
  2. (病原体を)持ち出さない
  3. (病原体を)拡げない

の3つがある[4]

新型インフルエンザなどのウイルスによる感染対策には、医薬品による対策と、医薬品を使わない対策がある[5][6]

  • 医薬品による対策 (Pharmaceutical measures)とは、ワクチン、抗ウイルス薬など医薬品を用いた対策のことである。

新型コロナ感染症の治療法新規治療薬・予防薬参照

  • 医薬品を使わない対策・介入(Nonpharmaceutical Interventions, NPIs)は、集団感染緩和策(Community Mitigation)とも呼ばれ、以下の対策、予防が含まれる[7]
学校、職場、イベント、集会など日頃集団が密集するような空間で、相互に間隔を置く。
  • 閉鎖 (Closures)
学校、職場、イベント、スポーツ、宗教的な集会、フェスティバル、会議など人が集まる場所の閉鎖。

新型ウイルスに対して人間は免疫を持っていないので感染が拡大するが、ワクチンが使用できない場合はNPIsは感染を制御する有効な方法とされる[7]。これまでの疫学解析で、最も有効な対策の組み合わせを最適なタイミングで実施することでかなりの程度被害が抑えられる[5]

パンデミック発生リスクのフェーズが3から4(効率的なヒト-ヒト感染の発生)になった段階[8] で、サーベイランス(監視調査)中心の対策から、

  • 早期封じ込め(rapid containment)
  • 早期対応(early response)
  • 被害の最小化(mitigation)

といった戦略が段階的に検討され、さまざまな対策が実施される[5]

参考:Nonpharmaceutical Interventions (NPIs)Community Mitigation Guidelines(CDC)

感染経路[編集]

新型コロナウイルスの構造
  赤い突起:スパイクタンパク(S)[9]
  灰色の被膜がエンベロープ、主成分は脂質でアルコールや石鹸で破壊できる[9]
  黄色の付着物:エンベロープタンパク[9]
オレンジの付着物が膜タンパク質[9]

感染経路としては、ウイルスが付着した手で鼻や目や口を触ることによる接触感染と、くしゃみによる飛沫感染がある[10]。また、中国の衛生当局は飛沫感染、接触感染に加えて「閉鎖された環境で長時間、高濃度のウイルスの粒子を吸った場合」のエアロゾル感染も追加した[11]

気道が主要のウイルス伝播経路になるとみられるが、SARSコロナウイルス感染と同様、消化管および粘膜組織(結膜など)もウイルスの体内侵入方法である可能性がある[12]

個人でできる予防対策[編集]

下記方法で体内への侵入を防止すること。また、普段から睡眠や食事などの健康管理免疫力を高めておくことも重要である[13]

石鹸による、手指からひじまでの洗浄、アルコールによる消毒・殺菌、うがい、洗顔[編集]

エンベロープをもつRNAウイルスのため、こまめな石鹸による手洗い、アルコール消毒も有効とされる[14]。石鹸などの界面活性剤にも弱い[15]

流水と石鹸によりこまめに手洗いすることが推奨されている[16]。特に、以下のような時にこまめに手洗いを行うべきだとされる[17]

  • 外出後の帰宅時
  • 調理前後
  • 食事
  • (自分の顔に触れる前は毎回)

手首を回しながら爪先、指の間から手首の方まで時間をかけて洗う[18]。「感染予防のための正しい手の洗い方」があり、まず手を濡らし、石鹸をつけ、手のひら側をこする→手の甲の側を洗い→指先、爪の間を念入りにこすり→(指と指をからませるようにして)指の間をよく洗い→(親指を手で包むようにして)「親指のねじり洗い」をし→手首までしっかりと洗う[17]。なお『医療従事者用の感染症対策マニュアル』では「手首からひじまでしっかり洗う」となっており、より一層安全である。

米国CDCは、トイレの後、食事の前、およびくしゃみや咳などをした後には、最低20秒間の石鹸と水(湯)による手洗いを勧告している。手洗いが出来ない場合は濃度60%以上の消毒用エタノールを使用すること、手の汚れは常に石鹸と水(湯)で洗い落とすこと、としている[19][20][21]

ウイルスが付いて感染源になりやすい場所・もの[編集]

スペインの鉄道駅の消毒

多くの人が触れた可能性のあるものには触らないようにする[22]。例えば、トイレの便座の蓋、流水レバー、蛇口ドアノブハンドルエレベータボタン電話機の取っ手、照明スイッチテーブル椅子パソコンキーボードなどにウイルスは付着しやすい[23]。銀行や郵便局にペンが置いてあるが、使わないようにし、ペンは携帯する[22]。ドアノブに触るときは、清潔なペーパータオルなどを使う[22]

どうしても触らざるをえない時は、触ったあと、すぐによく手を洗う[22][16]。また、触る前にも手を洗う[16]

ドイツルール大学ボーフムグライフスヴァルト大学病院英語版衛生研究所の研究グループによれば、病室内で患者が使用した道具に付着したSARSコロナウイルスMERSコロナウイルスは、消毒しないと平均4~5日生存を続ける可能性があるとし、「この特徴が新型コロナウイルスにもあてはまる可能性が高い」と発表された[24]

2020年3月報告の、米国の研究者が実験室環境でSARS-CoV-2を試験したところ、SARS-CoV-1(SARSコロナウイルスレトロニム)と同様に、プラスチックやステンレスの表面上では比較的安定し、72時間後(3日後)も活性のあるウイルスが検出されたと言う。段ボールの表面上では、SARS-CoV-1の8時間に対し、SARS-CoV-2では24時間であった[25]

咳・くしゃみのエチケットとマスク[編集]

感染症を予防するため、咳・くしゃみが直接人にかからないようにカバーすることが大切です。
  • 咳・くしゃみをするときはティシュなどで口と鼻を覆います。
  • 使用したティシュには病原体が付着しているため、すぐゴミ箱に捨てましょう。
  • 咳・くしゃみが続くときはマスクをつけましょう。
  • マスクは鼻と口を覆うようにつけましょう。
  • マスクをしていない時のとっさの咳・くしゃみは手ではなく、上着の内側で覆います。
  • 手で覆ったときは、すぐに手を洗いましょう。
—  東京都感染症情報センター [26]、 咳エチケットについて - 新型コロナウイルス感染症に関する情報[27]

一般的な流行疾患に対する情報であるが、マスクの捨て方について、警視庁は「マスクの外気に当たる面は、埃やウイルス等で汚れています。マスクを使い終わったらひも部分を持って外し、マスク本体には触らないようにビニール袋に入れ、口を縛って密閉してからゴミ箱に捨てましょう」と呼びかけた[28]

WHOでは世界的な医療用マスクの不足等を鑑み、「無症状の人には、いかなるタイプのマスクの着用も推奨されない。不必要な医療用マスクの着用は、不要なコストと調達の負担を生じ、また誤った安心感をもたらして他の必須予防手技を怠ってしまいかねない。」としている [29] [30] [31] [32]

CDCでも同様に、「咳など呼吸器系症例のある患者およびそれらの治療等にあたる従事者などを除き、無症状の人のマスク着用は必要ない」としている [33] [34]。 該当情報は2020年04月03日の改版が表記され[35]、 「無症状であっても拡散元となる可能性があり、医療従事者等のためいわゆるマスクは用いず、他者への配慮のため、2歳児以下を除き、布状のものを、口と鼻とにかぶせる」ことが表記された[34]

一方で香港大学の研究グループの実験により、感染者がマスクを着用することでウィルスの飛散を抑えられたという結果が確認されており、当ウイルスの潜伏期間が2週間前後とされることから、マスクを着用すれば無症状の感染者による感染拡大を遅らせる効果がある[36]

日本国政府は、感染者がマスクをすると、咳やくしゃみによる飛沫および、それらに含まれる病原体の飛散を防ぐ効果が高いとされ、マスク着用を「咳エチケット」として、推奨している[17]。だがその後、米国の研究者が実験を行って調べたところ、飛沫感染・接触感染以外にもエアロゾル感染もすると判明し、2020年3月にそれを報告した[25]。 日本国政府は、相当混み合っている場所、また屋内・乗り物など換気が不十分な場所でのマスク着用を推奨している[17][37]。→#マスクの着用を参照

東北医科薬科大学病院が作成した市民向け感染予防ハンドブックでは、以下に記述した複数の対策を組み合わせることで感染リスクを減らすことが出来るとしている[38]。ただし、屋外や人の少ない場所では、マスクをつけていてもつけていなくても さほど変わりは無いとしている[17]

洗って再利用できるガーゼマスク(布マスク)は使い捨ての不織布タイプと比較して効果が小さく、洗浄が不完全の場合は細菌が繁殖するなどの問題もあり医療従事者には推奨されていない[39][40]。ただし不織布マスクが不足している状況下においては、無症状の感染者を含む一般市民が布マスクを使用すれば供給量に余裕が生まれ、使い捨てマスクを必要とする医療現場に行き渡らないという事態を防ぐ効果がある[41][42]。塩素系漂白剤などを使い一定の手順で洗浄する必要があるため、関係機関が布マスクの洗浄方法を公開している[43][44]

気温・湿度・二酸化炭素濃度のコントロール[編集]

新型コロナウイルスでは不明なものの、他のコロナウイルスでは低温低湿で活性状態が続き、温度20度/湿度50%で不活性化が進みやすいという屋内環境での実験結果が存在する(ただし単純に湿度の高い方が良いというわけでは無い)[45]。また、空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下してしまうので、乾燥しやすい室内では加湿器などを使って、適切な湿度(50〜60%)を保つ[17]

日本の一般的環境においては、法令上労働安全衛生法ではオフィスにおける室温17度以上28度以下、相対湿度40%以上70%以下の努力義務があるものの、2014年時点において相対湿度の法令に対する不適合率は高いものとなっている[46]

新型コロナウィルス厚生労働省対策本部では、リスク要因の一つである「換気の悪い密閉空間[注 1]」を改善するため、多数の人が利用する商業施設等においてどのような換気を行えば良いのかについて、有識者の意見を聴取しつつ、文献、国際機関の基準、国内法令基準等を考察し、推奨される換気の方法として、「「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法」を取りまとめた。その中ではビル管理法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)における空気環境の調整に関する基準に適合していれば、必要換気量(一人あたり毎時30m3=CO2濃度:1000 ppm以下)を満たすとになり、「換気が悪い空間」には当てはまらないと考えられている。

人混みの多い・人の密度が高い場所を避ける[編集]

集団感染を避けるためには、換気が悪く、人が密集して過ごす空間、不特定多数の人が接触する場所に行くことを避けることが重要である[47][17]。特に、限られた空間に多人数「ぎゅうぎゅう詰め」になるライブハウス、狭い船内に隣り合わせや対面で座って宴会をする屋形船、限られた船内空間で人口密度が高くなるクルーズ客船[48]スポーツジムビュッフェスタイルの会食雀荘スキーゲストハウス、密閉された仮設テント(さっぽろ雪まつりでの屋台)などでは実際に集団感染が発生している[47][49]

名称[編集]

疾患名は世界保健機関(WHO)が2020年2月11日COVID-19[注 2]と命名した[50][51][52][53][54]。読み方はコビッド(コヴィッド)じゅうきゅう[55]、あるいはナインティーン[50][53][54]。WHOの命名以降、欧米圏各国のニュース報道などでも原則この呼称が採用されている[注 3]。なお、元英語名の“2019-nCoV acute respiratory disease”は、WHOによって暫定的に命名されたものである。

日本の法令では同年1月28日時点で「新型コロナウイルス感染症[注 4]」と定められており[56]、同年2月1日より1年間の予定で、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)に基づいて強制的な入院などの措置を取ることができる指定感染症に指定された[56]

WHOのガイドラインと呼称に関する論争[編集]

名称について、WHOは地域の名称や地名と結びついた中東呼吸器症候群(MERS)やスペインかぜエボラ出血熱ジカ熱などの呼称に批判的な見解を示しており、2015年に策定されたWHOの「名称決定についてのガイドライン」(Best Practices for the Naming of New Human Infectious Diseases) では、新たなヒト感染症・ウイルスの名称に地理的な位置、人名、動物や食品に関する名前、特定の文化や産業に関する名前を含むべきでないという立場をとっている[57][58][59]

一方、中華民国台湾)の衛生福利部疾病管制署では、COVID-19の簡称として「武漢肺炎」の呼称を公的文書で使用している[60]。また、台湾では新聞などでも「武漢肺炎」と表記している[61]。さらに、台湾だけでなく中国本土においても発生当初には「武漢肺炎」と呼ばれていた[要出典]

この他、麻生太郎財務大臣[62]や米国のマイク・ポンペオ国務長官[63]らをはじめ、日米の政治家やジャーナリスト[64]の間では発生地の名前をとった「武漢肺炎」「武漢コロナウイルス」などと呼ぶべきと主張する意見もあり、中華人民共和国外交部はこれに反発している[65]

病理[編集]

病原体[編集]

SARS-CoV-2に感染することによって発症する[1]

感染経路[編集]

飛沫感染、接触感染が中心とされている。空気感染は確認されていないが、エアロゾルを発生する医療処置がなされた際には感染に関与する可能性が指摘されている[66]

宿主細胞受容体[編集]

SARS-CoV-2はSARSコロナウイルスと同じく宿主細胞のアンジオテンシン変換酵素II(ACE2)受容体に結合して感染するとみられている[67]。ACE2受容体は気管支、肺、心臓、腎臓、消化器等に発現している[68]Human Protein Atlas英語版によればACE2受容体腎臓に多く発現している[69]

通常、ACE2受容体は刺激されるとアンジオテンシンIIを分解することで血圧上昇のためのレニン・アンジオテンシン系(RA系)を阻害するが、このRA系阻害作用は臓器の保護に重要な可能性がある[70][71][72]。SARSコロナウイルスではマウスでの動物実験においてACE2受容体の発現を減少させるとされ[73]、新型コロナウイルス感染症の患者の血漿においてもアンジオテンシンIIが高いレベルにあるという情報がある[74]。そのため、新型コロナウイルス感染症の治療においてRA系の阻害が提案されている[75][74]

なお、高血圧患者は新型コロナウイルス感染症で重症化しやすいとされる[76]

また埼玉県立循環器・呼吸器病センターによれば、ACE2は肺において主にII型肺胞上皮細胞で発現しているため、SARS-CoV-2ではその細胞への感染によって肺サーファクタントの産生が阻害されて肺胞体積低下に陥ると推察している[77]

症状と徴候[編集]

症状[66] %
発熱 87.9
空咳 67.7
倦怠感・だるさ 38.1
33.4
嗅覚障害味覚障害[78] 30 - 66
息切れ 18.6
筋肉痛関節痛 14.8
のどの痛み 13.9
頭痛 13.6
悪寒 11.4
吐き気・嘔吐 5.0
鼻づまり 4.8
下痢 3.7 - 31[79]
喀血 0.9
結膜充血 0.8

初期症状[編集]

症状は特異的ではなく、症状のないもの(無症候性)から重症の肺炎、死亡まで幅広い。典型的な症状・徴候としては発熱、空咳、疲労、喀痰、息切れ、咽頭痛、頭痛、下痢などがある(表参照)[66]くしゃみ鼻水のどの痛みなどの上気道症状は少ない[80]。WHOの進藤奈邦子シニアアドバイザーは、この病気は下気道に親和性が強く、排ウイルスのピークは発症日から3、4日後くらいと報告している[81]

初期症状は、風邪とそっくりであるために、発症早期の段階では区別が困難である[82]。感染から潜伏期間(推定2日間-14日間)を経た後に、微熱発熱と風邪症状が約1週間続く。2020年1月25日時点での中国では、初期症状は、肺炎に特有の発熱や咳だけとは限らず、下痢吐き気頭痛や全身のだるさなど、消化器系神経系の症状の場合もあり、早期の診断を難しくしていると伝えられた[83]。また特に発症早期の場合は発熱が必ずしも現れるわけではないため、発熱検知装置だけで検出できない可能性がある[84]

一方、2月14日の横浜での緊急シンポジウムで、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、現在は「軽微な呼吸器症状を見極め、感染者を早期に見つけることが重要な時期」として以下のように述べた[81]

胸部レントゲンCT検査の両方を実施した41歳日本人男性の症例では、CTのみで左肺の尖部と舌区に一部湿潤影を伴うすりガラス影を認めて肺炎と診断できた。レントゲンではとても見抜けない非常に小範囲な陰影だった。通常、こうした臨床像の患者にCTを撮ることは現実ではないが、背景に感染の流行という特殊な状況があったため実施してキャッチできた。

複数の軽微な症例を診察した結果、感冒症状が一週間続き、かつ倦怠感が強いという臨床上の経過は、感冒やインフルの経過と明らかに異なる。

—  国際感染症センター長・大曲貴夫 、 [81]

進行症状[編集]

二次的な細菌性肺炎もあるが、感染後1 - 2週間以内に発症した肺炎はウイルス性のものが多いと見られている[85]

重症化すると急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や急性肺障害(ALI)などを起こし[86]、人工呼吸適応となる場合が多い[87]

潜伏期間[編集]

潜伏期間については、世界保健機関(WHO)は2日間から10日間[88]アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は2日間から14日間[89]とそれぞれ推定している。

暫定推定値1 - 12.5日間、平均5日程度。ただし極少数ながらそれ以上の潜伏期間例報告もある。[要出典]

ある感染者の発症(1次症例)から、2次感染者の発症(2次症例)までの「発症間隔」は、SARSの 5.3 - 19日に対して、本症は 3.5 - 5.9日と見られており、潜伏期間に感染能力を持つ可能性が指摘されている[90]

合併症[編集]

約1週間の初期症状期に回復しない場合は、高熱、気管支炎肺炎の初期症状などが併発してくる。重症例では、呼吸不全が起こる。また、血液に乗ってウイルスが体内に拡散され、肝不全腎不全心不全脳炎もしくは中枢神経系感染、多臓器不全などを引き起こすことが確認されている[91][92][93]

中国本土ではウイルス性脳炎や髄膜炎疑い症例が報告されており、日本では2020年3月7日に山梨県で髄膜炎の発症が初めて報告された[94]。髄膜炎徴候患者の髄液を採取してPCR検査したところ陽性だった[94]

ウイルス株についての相違点[編集]

本ウイルスの株はL型(L亜型)とS型(S亜型)に主要型が分かれる[95][96]。ウイルスDNAの28,144番目の塩基ロイシン(L型)かセリン(S型)かで区別される[97]

L型[編集]

中国武漢市での初期流行はL型が支配的だったが[97]、2020年1月以降減少に転じた[95][96]。 L型はより攻撃的で、より急速に蔓延する[注 5]。そのため、流行対策による人的介入のため選択圧が掛かり割合的に減少したと見られている[96]

S型[編集]

進化的に古く、変異前(先祖型)と見られている。攻撃性が低いため選択圧が弱く、相対的に割合が増加したと見られる[95][96]。日本での感染株はS型が多いと推測されている[95]

鑑別診断[編集]

他のウイルス性気道感染症、細菌性肺炎その他から外観所見上は鑑別が難しいのでレントゲン画像または肺CT画像による。病変は中国の81症例中、無症候の時期の病変は、片側性、multifocal(多発斑状)、すりガラス状陰影が優位であり、発症後1週間以内では両側性やすりガラス状陰影が卓越、びまん性が優位となる。発症後1週間を越えるとコンソリデーションや混在病変が優位となる[98]

病変は末梢に分布しやすく、リング状陰影(reversed halo sign)は特徴的である。胸水やリンパ節腫脹は少ないが有る[98]

免疫抑制下では易感染でありニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎)との鑑別が重要である[99]

検査[編集]

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査統計・手法英語版」も参照

血液検査[編集]

血液検査での確定診断は現時点で困難である。COVID-19患者において約8割にリンパ球減少がみられ、血小板減少、白血球減少がそれぞれ約3割にみられる。CRP上昇、AST上昇、ALT上昇、LDH上昇、D-dimer上昇などもみられることがある。重症例ほど異常値が現れやすい傾向にある[100]

SARS-CoV-2に対するIgM抗体やIgG抗体を血液から検出するキットが開発され、中国ではCOVID-19の標準診断法としてガイドラインに記載されている。日本でもクラボウより販売されているが[101]、2020年3月17日現在、保険適用外である。

画像診断[編集]

CTで確認される陰影の一例

写真付きの論文[102]によれば、CT所見において一般的に両側性のすりガラス陰影と浸潤影を呈することが分かったという。また、他の早期診断に有用と思われる特徴として、結節性陰影、網状影、病変の辺縁性分布が挙げられた。一方、空洞、不連続な結節胸水貯留、リンパ節腫脹は見られなかった。初回CT検査で異常所見がなくても(すなわち陰性でも)、COVID-19の可能性を除外できるとは限らないという[103]

なお、胸部レントゲン画像からの診断は難しい場合が多いとされる[104]が、機械学習によって胸部レントゲン画像から判定を行うソフトウェアが研究開発されており、その中の一つ「COVID-Net」[2]がオープンソースで公開されているもののまだ未完成となっている[105]

超音波診断[編集]

超音波診断装置による肺エコーをCOVID-19の診断に使える可能性が検討されており、院内感染リスクを減らせる可能性が指摘されている[106][107]

ウイルスの存在診断[編集]

2019年3月現在、「PCR検査陽性」とは、本項で記述する検査で陽性だったことを指す。

概要[編集]

下気道由来検体(喀痰もしくは気管吸引液)または鼻咽頭ぬぐい液を用いてPCR検査を行うことでウイルスの存在を診断する。検体ごとに陽性率は異なっており、気管支肺胞洗浄液が93%、喀痰が72%、鼻ぬぐい液が63%、咽頭ぬぐい液が32%と報告されている[108]。下気道にウイルス量が多いため、なるべく下気道由来検体を採取する[109]。下気道由来検体を採取する際にはN95 マスク(または DS2 など、それに準ずるマスク)、眼の防護具(ゴーグルまたはフェイスシールド)、長袖ガウン、手袋を装着する[110]。鼻咽頭ぬぐい液を採取する際には、サージカルマスク、眼の防護具(ゴーグルまたはフェイスシールド)、長袖ガウン (不足の場合はエプロン可)、手袋を装着する[110]。検体は三重梱包を行い、公用車・社用車等の自動車または「カテゴリーB」を取り扱う輸送業者を利用して送付する[109]

検査ツールの開発[編集]

ロシュ

2020年1月30日、スイスの製薬会社ロシュは、ウイルスの存在が浮上した時に分子診断医からなる緊急対応チームをスタートさせたと語った。提携先と協力し、スタッフがいれば数時間で診断できる検査ツールを開発した。中国では同ツールの使用に必要なハイテク装置が少なくとも150台必要なことが分かった。この検査ツールの利用に必要なハイテク装置「マグナピュア24」「ライトサイクラー480」などを増産している[111]

CDC
CDCの検査キット

2020年2月6日、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、本ウイルスの検査キットを開発し、国内外の検査機関に配布をはじめたと発表した。検査キットは通常のインフルエンザの診断で使用する機器で利用でき、4時間で結果が出る。1キットで700~800の検体を診断できる。それまでは採取した検体を国内の検査機関から受け取ってCDCが診断していたが、各検査機関の中で診断できるようになり迅速化する[112]

リアルタイムPCR

DNAを増幅しながら量も測れるリアルタイムPCRで新型コロナウイルスが検出できるということが報告され、WHOから25000のキットが159カ国の検査所に送られた[113]

島津製作所

2020年3月4日、島津製作所は従来のPCR検査薬に余分な成分の影響を受けないようにする薬品を加えることで前処理を省くことができる検査試薬を開発し、研究用としての供給を行うと発表した[114]

ウイルス検出手順[編集]

国立感染症研究所が2020年2月5日に発表し、その後も改訂を続けている「病原体検出マニュアル 2019-nCoV」によれば、新型コロナウイルスの検出手順は以下のようになる[115]

検体の取り扱いは、バイオセーフティーレベル(BSL)2+でおこなう[115]PCR検査法は2019-nCoVの遺伝子領域からオープンリーディングフレーム(ORF)1aとスパイクタンパク質(S)を検出する2-step RT-PCR 法(2ステップ逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法)またはリアルタイム one-step RT-PCR 法(TaqMan プローブ法)が使用される[115]

RNAの抽出

キアゲン(QIAGEN)社のQIAamp Viral RNA Mini Kit (QIAGEN、Cat.No.52904)[116]、また、他のRNA抽出キットでもよい。

2-step RT-PCR 法
リアルタイム one-step RT-PCR 法(TaqMan プローブ法)
  • QuantiTect® Probe RT-PCR Kit (QIAGEN Cat#204443) [122]
  • AgPath-ID One-step RT-PCR Reagents (Thermo Cat# AM1005)[123]
  • TaqMan Fast Virus 1-Step Master Mix (Thermo Cat#4,444,432)[124]

簡易検査キット[編集]

抗原抗体反応を利用したイムノクロマト法によりウイルスの抗原を検出できる簡易検査キットの開発が期待されていて、2020年3月8日、台湾で新型コロナウイルス抗原を認識するモノクローナル抗体の作成に成功したことを明らかにした[125]。原理はイムノアッセイで、鼻腔ぬぐい液、鼻腔吸引液、あるいは咽頭ぬぐい液を検体として用い、感染有無を15分程度で判定可能。特殊な機器や技術を必要としないため、診療所(クリニック)で迅速検査が可能となる。

既にキット化された抗原は、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、A型β溶連菌、RSウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス、ヒトメタニューモウイルス、などがある[126]

抗体検査[編集]

新型コロナウイルスに対する抗体があるかどうかを調べる。陽性であれば、ウイルスに感染したことがあり、その結果、免疫力を獲得したことになると考えられている[127]

感染に対する免疫反応の一部は、IgMおよびIgGを含む抗体の産生である。これらの抗体は、症状発症後7日程度から始まる個人の感染を検出したり、免疫力を判定したり、集団サーベイランスで使用することができる[要出典]

アッセイは中央検査室(CLT)または臨床現場即時検査(PoCT)で実施することができる。多くの臨床検査室で使用されているハイスループット自動化システムは、これらのアッセイを実施することができるが、その利用可能性は各システムの生産速度に依存する。CLTでは末梢血の1検体が一般的に使用されるが、免疫反応を追跡するため、時間経過を追った検体を使用することもできる。PoCTでは、血液の単一検体は通常、皮膚穿刺によって得られる。PCR法とは異なり、アッセイ前の抽出ステップは必要ない。

米国では3月30日までに臨床現場即時検査検査が可能になることが期待されていた[128]

2020年3月9日現在、抗体を検出する血液検査が開発されている[129]。これまでに感染したことがあるかどうかの判定が可能になり、症状が出たかどうかに関係なく機能することが期待されている[129]。IgM抗体とIgG抗体の両方を検出することで、15分で結果が返ってくることが期待されている[130]

2020年3月下旬、Euroimmun Medical Laboratory Diagnostics社とEpitope Diagnostics社は、血液サンプル中のウイルスに対するIgGおよびIgA抗体を検出できる検査キットの欧州承認を取得した。検査能力は数時間以内に数百サンプルであるため、従来のウイルスRNAのPCRアッセイよりもはるかに高速である。抗体は通常、感染発症から14日後に検出可能である[131]

各国の検査体制[編集]

中華人民共和国の検査体制[編集]

2月14日中国国家衛生健康委員会副主任・曽益新は、国内の無症状病原体保有者について情報公開対象外であるとし、保健当局の内部のみで報告すると説明した[132]。PCR検査で陽性であっても発熱や咳のような症状がなければ感染者として発表しないという基準に変更された[133][134][135]。2月末時点で中国の無症状感染者4万3000人が統計から除外されており、公式発表の8万人に無症状者を含めると感染者数は12万人を超える[136]

3月15日に北京大学姚洋国家発展研究院長は論文で「地方当局者は『新たな感染者を1人でも出せば処分する』という指令を受けている」と異例の指摘をした[133][134][信頼性要検証]湖北省では3月18日-19日に新たな感染者が確認されていないが、中国は感染症鎮圧の目標達成を装うために統計を改ざんしていると指摘された[133][135][134][信頼性要検証]

日本の検査体制[編集]

厚生労働省は2020年2月18日、1日に最大3,800人のPCR検査ができる体制を整備したと発表した[137]。しかし、2月18日から2月24日の間に実施された検査件数は約6,300件で、1日平均約900件だったため、各界から実態との乖離があるなどと批判された[138]

3月1日国立感染症研究所は「PCR検査の拡大を感染研OBが妨害している」「検査件数を抑えることで感染者数を少なく見せかけようとしている」といった主張は事実と異なり、職員や関係者を不当に扱うもので、対策へ悪影響を及ぼしていると反論した[139]

3月7日厚生労働省は、かかりつけ医が必要と考える場合は、すべての患者が検査を受けることができる十分な1日6,000件程度の検査能力を確保しているとし、3月末には8,000件を超えると発表した[140]

また、PCR検査の医療保険適用によって、帰国者・接触者相談センター(24時間対応)から紹介された帰国者、接触者外来で検査が必要とされたときは、保健所を経由することなく、民間の検査機関に直接、検査依頼を行うことが可能となった[140]。かかりつけの医者が検査が必要と判断した場合には、帰国者・接触者外来を紹介受診し、検査を行う[140]。地域の検査能力に限界があるために断られるということがないようにするとし、同時に、検査時間を大幅に短縮できる新しい簡易検査機器の開発を進めていくと述べた[140]

また、厚生労働省は疑似症報告制度を採用している[注 6]。この疑似症報告制度によるPCR検査実施人数には、退院時の確認検査や、疑似症報告に該当しない検査、クルーズ船やチャーター便に関する検査等は含まれておらず、実際の実施総数より少ないことに留意する必要がある[142][注 7]

3月27日現在のPCR検査実施人数(累計)は27,005件、確認検査等を含む累計は46,869件(2月18日〜3月25日分)[144]

韓国の検査体制[編集]

韓国の屋外検査場

2020年3月までに韓国では21万人以上が検査を受け、現在も毎日約2万人を検査している[145]

イギリスの検査体制[編集]

2020年3月までにイギリスでは2万9700人以上が検査を受け、1日の検査人数は1000人を超える[145]

アメリカの検査体制[編集]

アメリカ合衆国では2020年1月以降、1万1079個の検体が調べられた(CDC発表)[145]。ただ、患者1人が少なくとも2つの検体を提出するのが一般的なため、検査を受けた人数は検体数より少ないとされる[145]。民間の病院での検査はCDCに報告されないケースもあり、当局は全体の把握が難しいとしている[145]

アメリカは1月、WHOが承認した検査キットの使用を断り、CDCが独自に検査を開発したが、その製造過程において欠陥が見つかり、多くの検査結果が判定不能となった[145]。3月に感染が拡大してからは、検体を取るための綿棒や手袋も不足し、CDCは「十分な器具も人も内部能力もない」「公衆衛生の研究所に対する投資が少な過ぎた」と述べた[145]

3月12日、アメリカ国立アレルギー感染症研究所アンソニー・ファウチは、現在の米国の検査体制は必要に即していない、「他の国のように、誰もが簡単に(検査を)受けられるという体制になっていない」と述べた[145]

また、ワシントン大学病院のアレックス・アダミ博士は、今回の感染症の予防、検査、治療法について「誰も実際に訓練を受けた人はいなかった」と述べ、その結果、院内感染が発生したという[145]。病院は当初、新型ウイルスに対応するスタッフは少ない方が、感染のリスクを限定できると判断していた[145]。アダミ博士は、「他の病院は私たちの例を見て、『どうすれば、もっとうまくいく?』と考えてほしい。国民には私たちの例から、後手後手に回るのではなく早め早めの対応が必要だと学んでほしい」と述べた[145]

ドイツの検査体制[編集]

3月26日時点でドイツにおける検査実施数は週に50万件にのぼる[146]。シャリテ大学病院ウイルス学研究所長クリスチャン・ドロステンは「ドイツで感染者に比して死者がここまで少ないのは、診断検査を非常に大規模に実施している事実によって説明し得る」と述べた[146]

治療法[編集]

治療法の概要[編集]

2020年3月末現在、各国の暫定的な治療指針はあっても安定した治療法が確立したとはいえず、人工呼吸器の必要な重症・重篤者、そして死亡者も世界で増加している。

医学界・製薬業界では、次の両面戦略を進めている[147][148][149][150]

  1. 過去のSARSMERSエボラ出血熱、エイズウイルス(HIV)等のウイルスに有効であった薬剤や、実際のMERSやこのSARS-CoV-2に試験管レベルで有効な薬剤を網羅的に探索する研究(スクリーニング)などで候補薬剤を探して、転用(適応拡大)する(以下に詳述)。COVID-19での臨床研究が個々に進められている。
  2. 新技術を頼りに、かつてないスピードでワクチン(→ #ワクチンの開発)や抗体医薬(→ #抗体医薬の開発)その他の新薬を開発している。

2020年3月末現在、日本において有望ではないかと注目されている主な薬剤は以下である(五十音順)[151][152][153][154]

(五十音順)(★:日本で特に報道の多いもの)

  1. クロロキン(→ #リン酸クロロキン (抗マラリア薬)・アルビドール (抗インフルエンザ薬)・完治患者の血漿)または ヒドロキシクロロキンプラケニル)(→ #ヒドロキシクロロキン(全身性エリテマトーデス治療薬)
  2. シクレソニド(帝人ファーマのオルベスコ)(→ #シクレソニド (吸入ステロイド;喘息治療薬)
  3. トシリズマブ(中外製薬のアクテムラ
  4. ナファモスタットメシル酸塩(日医工のフサン)(→ #カモスタットおよびナファモスタット (セリンプロテアーゼ阻害剤)
  5. ファビピラビル(富士フイルム富山化学のアビガン)(→ #ファビピラビル (アビガン) (抗インフルエンザ薬)
  6. レムデシビル(ギリアドのGS-5734)(→ #レムデシビル (抗エボラ出血熱薬)
  7. ロピナビル・リトナビル(アッヴィのカレトラ配合錠)(→ #ロピナビル・リトナビル(抗HIV薬;プロテアーゼ阻害剤)の合剤
  8. 武田薬品工業の高免疫グロブリン製剤 TAK-888(3月18日に開発着手発表)(→ #武田薬品工業

時系列[編集]

2020年1月末の時点で確立された治療法はなく[155]、主として対症療法のみが行われていた[155]

2月に入り中国国家薬監局[注 8]ファビピラビル(アビガン錠)(→ #ファビピラビル (アビガン) (抗インフルエンザ薬))を承認した[156]

日本では日本感染症学会が、2月26日、抗ウイルス薬の選択として、以下を呈示した。

(→ #医療機関の対応方法)。同学会はまた、3月2日、吸入ステロイド喘息治療薬 シクレソニド の三例の著効例もサイトに掲載し、大きな反響を呼んだ(→ #シクレソニド (吸入ステロイド;喘息治療薬))。

3月17日に、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第1版」が作成された[157]

中国の当初の処方[編集]

医学論文誌『ランセット』に掲載された、中国の2020年1月2日までに発症した41人の患者の研究報告によれば[158]、38人(93%)の患者に抗インフルエンザ薬のオセルタミビル(タミフル)を処方した。さらに、9人(22%)の患者に副腎皮質ホルモンが全身[注 9]投与された。

中華人民共和国国家衛生健康委員会(NHC)は1月23日公表の指針で、暫定的に抗HIVリトナビル(カレトラ)、その効果を補強する経口抗ウイルス薬サキナビル(インビラーゼ)およびアルファインターフェロンネブライザーによる投与を推奨した[159][160]

また、中華人民共和国国家衛生健康委員会(NHC)は「対新型コロナウイルス肺炎診療方案(第7版)」の中で、「十.治療 (二)一般治療 3.鼻カニューラ、酸素マスク、経鼻ハイフロー酸素療法など、効果的な酸素療法をタイムリーに実施。条件があえば、電気分解式水素ガス吸入器(H2/O2:66.6%/33.3%)を加えて治療をする(原文は中国語)」と水素ガス吸入療法いた治療方法の提案を発表している[161]

既存薬探索[編集]

中国での探索研究[編集]

2020年1月25日、中国の20以上の機関からなる研究グループは、有効な可能性のある薬剤等のスクリーニング(探索)を行った結果、候補物質30種類を発見したと発表した[162]。そのリストには、インジナビルサキナビルロピナビルカルフィルゾミブリトナビル、その他12の抗HIV薬、また、サンズコン(山豆根)などの漢方薬イタドリ(虎杖)などの天然物も含まれている。

1月29日、中国科学院(CAS)の軍事医学科学院および武漢病毒研究所(WIV)の共同研究により、本ウイルス阻害効果がまずまずよい(fairly good)既存薬を3種類発見したと報道された[163]

すなわち、RNAポリメラーゼ阻害剤レムデシビル[164][165][166][167]クロロキン および リトナビル である。それらは臨床使用承認申請手続中と述べた。

そのレムデシビル、また、I型インターフェロンロシアの抗ウイルス剤トリアザビリンTriazavirin英語版[168][169]の試験はその時期に始まった。

北欧での探索研究[編集]

ノルウェー科学技術大学のPetter I. Andersenらは、人体に対して安全で薬効範囲の広い120種類の抗ウイルス薬からなるデータベースを作成し、本ウイルス疾患の治療に有効な可能性のある31種類の薬剤を以下のように例示されている (2020年2月12日第6版)。


韓国での探索研究[編集]

2020年3月2日、韓国パスツール研究所などのチームは、FDA承認薬と生物活性分子を含む5,406個の化合物の中から、MERSコロナウイルスの臨床分離株を用いスクリーニングを行ってCOVID-19を含む広範囲のコロナウイルスに効く薬の候補を絞れたとbioRxivで報告した(※未査読論文)[178][179](PDF)。その中で以下の、12個のFDA承認薬と6個の生理活性物質が示された。

— bioRxivScreening of FDA-approved drugs using a MERS-CoV clinical isolate from South Korea identifies potential therapeutic options for COVID-19

同論文の表1にランクインし治癒指数T1が6.1以上と記載されたシクレソニドは、2020年2月日本で3例で処方が試されて著効を上げた(→ #シクレソニド (吸入ステロイド;喘息治療薬))。実験の結果、シクレソニドはウイルスのライフサイクルの初期ステージ[181]で働いていることが分かり、そのターゲットはグルココルチコイドリガンドと推定されている。また、この論文では、治癒指数T1が非常に大きい強心配糖体類が特に有望としている。

ロピナビル・リトナビル(抗HIV薬;プロテアーゼ阻害剤)の合剤[編集]

概要[編集]

ロピナビルリトナビル(商品はこれらの成分からなる合剤である。商品名:カレトラ®(Kaletra)配合錠またはアルビア®(Aluvia);略称 LPV/r)は、上記のように中国での初期の治療から広く用いられている(→ #中国での探索研究)。ロピナビルとリトナビルはどちらもHIV感染症に対するHAART療法に用いられ、プロテアーゼを阻害する作用を持つ。

2020年2月26日の日本感染症学会の文書でも、現時点で日本での入手可能性や有害事象等の観点を考慮した抗ウイルス薬の選択肢として、筆頭に名前が上がっている[182]

症例報告レベルでは有効であったとする報告がみられる一方[183][184]復旦大学のチームが2020年1月から2月に行ったロピナビルリトナビル投与群52例を含む134例の比較臨床試験の結果、「症状緩和やウイルス除去促進の影響が見られなかった」と報告した[185]。また、同様の時期に行われた、中国 首都医科大学など多くの医療機関の共同研究でも、計199例で半数にロピナビルリトナビルを投与する無作為化対照非盲検試験を行った結果、「重度の患者では標準治療を超える利益(benefit)は観察されなかった」と報告した。[186]

時系列[編集]

米製薬会社アッヴィは2020年1月26日、中国保健当局からの要請でアルビア英語版を試験的に使用していることを明らかにした[159]。アルビアは、冷蔵不要という特徴がある[187]

2月2日、タイ保健省は本剤とオセルタミビルの併用によって治療効果を認めたと以下のように発表した。

バンコクの病院で中国人女性旅行客(70代)の患者に抗HIVリトナビルおよびロピナビル(これら合剤の商品名カレトラ)、ならびに抗インフルエンザオセルタミビル (oseltamivir)(商品名 タミフル等)を混合して投与した。

10日に渡って症状が悪化し続けていた重症患者であったが、投与後48時間以内にコロナウイルスが消失した[188][189][190]

2月4日、浙江大学教授李蘭娟研究チームはロピナビルとリトナビルは大きな効果はなく、しかも副作用があると述べた[191]。(→#アビドルとダルナビル)

2月10日、上海市公共卫生临床中心(中国語版)の 陈军凌云(Chen Jun LY)らは、「新型コロナウイルス肺炎の治療における、ロピナビルリトナビルおよびアビドルの有効性」(直訳)という報告を行った[185]。134症例中52例が経口LPV/r治療、34例は経口 アビドール治療、残り48例は抗ウイルス薬を不使用(なお、全例でインターフェロン-α2b スプレーと対症療法は実施)。研究の結果、両方の薬剤とも、症状緩和の効果もウイルス除去促進の効果も見つからず、有効性についてさらなる調査が必要と結論づけている。

3月3日、杏林大学医学部付属病院のグループは、症例報告「COVID-19肺炎の2症例:クルーズ船内感染例および市中感染例」で、「症例2」の場合にLPV/rを投与しても呼吸状態が増悪したことを説明し、上記復旦大学チームの報告書[185]を引いて、「LPV/r は中国からの報告ではウイルス量の低下、症状の改善には影響を与えておらず、COVID-19肺炎への過度な期待は難しいと考えられる。」と考察した[192]

3月3日、国際医療福祉大学熱海病院のチームは、症例報告「ロピナビル・リトナビルで治療した新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)の症例報告」で、無症状から高熱と肺炎に増悪した患者に LPV/r を投与して治療を行ったところ、投与から2日後に解熱など好転し、入院後20日間でPCR検査が陰性化し退院したことを報告した[183]。「本例に限って言えばカレトラは好意的に評価できる。酸素化低下などの重症化の徴候を待たず、肺炎の診断を得た時点で早期に治療介入を行うことで、重症化の阻止、致命率の低下ができるかもしれない」と考察している。

3月10日、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院のグループは、症例報告「ロピナビル/リトナビル合剤が有効であったと考えられたCOVID-19関連肺炎の一例」で、入院4日目に低酸素血症と全身倦怠感の増悪があり急性肺傷害に移行する懸念があった患者にLPV/rを投与したところ、投与2日目には解熱鎮痛薬なしでも発熱しない状態になったと報告した[184]。これは、有効性の高い対象症例であった可能性と、投与時期が的確であった可能性があると考察している。

3月18日、中国で行われたCOVID-19を対象としてLPV/rを投与する臨床試験の結果が報告されたが、LPV/rの有効性を示すことができなかった[186]

レムデシビル (抗エボラ出血熱薬)[編集]

2020年1月23日、米国の製薬大手ギリアド・サイエンシズは、エボラ出血熱治療の実験薬 レムデシビル(開発コード GS-5734)[193]がこの治療で有効かどうかを検証中であると表明した[194]。レムデシビルはコンゴエボラ出血熱の治療法を緊急に見い出すために2019年に精力的に臨床試験が行われていた4種類の薬剤のうちのひとつで、試験の結果、エボラ出血熱の患者生存率改善効果を示した[195]

1月31日の、米ワシントン州2019-nCoV症例調査チーム[196]の報告[197]「2019年の新規コロナウイルスの米国での最初の症例」(直訳)によれば、以下のように上記レムデシビルの効果があったという。

1月15日に武漢を訪ね米国に戻った男性(35)の症例では、咳と発熱があり検査後自宅隔離。

1月20日新型コロナウイルス陽性で入院。発病9日めから肺炎症状で酸素飽和度は90%に低下し酸素補給。

10日めには基底の筋状混濁や両肺のラ音[注 10]を認め非定型肺炎の所見となりバンコマイシンセフェピムの投与を開始した。

11日め夕方から、コンパッショネート使用(未承認薬の人道的使用)としてレムデシビル静脈注射を行い他の薬剤を順次停止。

翌日状態が改善し食欲が出て、酸素補給なしに酸素飽和度96%に落ち着いた。

軽い咳を除きすべての症状が解消した。

2月2日、中国当局にレムデシビルの臨床試験申請が受理された。さっそく2月3日には北京中日友好医院により武漢で臨床試験が開始された[198]。軽・中等度の肺炎を発症した患者のうち最大270人が無作為に選ばれ、二重盲検プラセボ対照の試験に参加[199]。同年4月に結果が出る予定[200]

同社は進行中の臨床試験外の緊急治療(コンパッショネート使用)を目的にレムデシビルを提供している。日本国内でも2月22日、加藤勝信厚生労働大臣が、患者に対し2月中にもレムデシビルの投与を開始し、3月にもレムデシビルの承認を目指した臨床試験を始める考えを示した[201][202]

中国を視察した世界保健機関WHO)の担当者が24日、レムデシビルは「現時点で本当に治療効果があるとみられる唯一の薬」と発言した[203]。ある製薬会社担当者の意見では「緊急性を考えて特例扱いだとしても、最短でも2020年内の承認だろう」という。

2月26日、ギリアド・サイエンシズは、レムデシビルのふたつの第III相試験の治験届がFDAに受理されたと発表した[200][204]。この治験で、世界各国から重度約400人、中等度約600人の被験者で3月にも開始し、順調なら4月にも結果が出る[201]。3月11日、数百人のCOVID-19患者が本剤で治療を受けた[205][206]。米厚生省はその前週、日本の重症患者に未承認薬のコンパッショネート使用の一環としてレムデシビルを提供するため、同省公衆衛生局士官部隊が、在日米国大使館、日本の厚生労働省、ギリアドと協力していると発表している。

ファビピラビル (アビガン;抗インフルエンザ薬)[編集]

ファビピラビル(アビガン)は富士フイルム富山化学が開発し、「浙江海正薬業股份有限公司(Zhejiang Hisun Pharmaceutical)」社に2016年に中国におけるライセンスを導出済[207]。アビガンは、神奈川県特区で7年前(2013年)からフジフイルムの新型インフルエンザの特効薬として開発と国際展開に協力してきた薬剤である[208][209]。中国ではCOVID-19に対する治療選択肢の1つとして挙げられており、有効であることが証明された[210]。日本でもCOVID-19に対する治験が計画されている[211][212]

時系列

2020年1月28日時点で、開発元の富士フイルム富山化学は本ウイルスに効果があるかどうかの検証に取り組んでいない[213]

2020年2月18日の報道によれば、抗インフルエンザ薬ファビピラビル(商品名 アビガン錠; 中国語製品名 法維拉韋)[214]が中国の国家薬監局から販売許可を得た[215]

中国の科学技術部の15日の発表によると、ファビピラビルは現在、COVID-19の治療の臨床試験で使われている[216]薬のうちのひとつである。比較的高い治療効果と副作用が少ないことを示しているとされる(治験番号 ChiCTR2000029548[217]注意:本剤は動物実験において初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、使用にあたっては男性女性にかかわらず注意事項厳守が必要である。[214]

2月22日、加藤勝信厚生労働大臣読売テレビの番組の中で、「アビガンが効くということになれば、全国に展開をして治療に使っていきたい」、「効果があると考えられている他の治療薬の使用も並行して考えていく」と述べた[218][219]。アビガンは新型インフルエンザ治療薬として日本国内で製造され、約200万人分が備蓄されている。政府関係者によると、中国で本ウイルスへの効果が確認されているという。アビガンの人道的使用と臨床試験の早期開始を国に提言したのは自身であると黒岩祐治神奈川県知事が2月23日に表明した[220][221]

2月22日から日本国内のひとつの医療機関で、本疾患の患者にアビガンの投与が始まった[202]

3月17日、中国政府はファビピラビルが有効であったと発表した[210]。ファビピラビルはロピナビル・リトナビルとの非盲検比較試験において、ウイルス排出期間を短縮し(4日 vs. 11日)、X線画像の改善率を高め(91.43% vs. 62.22%)、さらに安全性にも問題がなかった[222]

シクレソニド (吸入ステロイド;喘息治療薬)[編集]

シクレソニド(CIC)は気管支喘息を適応症として承認済の吸入ステロイド薬である[223][224][225]

国立感染症研究所では、同剤のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス効果を基礎実験で確認したという。他の吸入ステロイドには同様の抗ウイルス効果が見られず、シクレソニド特有の作用と考えられた。本知見をもとに3例のCOVID-19患者に投与したところ改善効果がみられた[226][227]。その後、さらなる症例の集積が進行。

商品

帝人の100%子会社である製薬会社帝人ファーマが2007年から販売している[228][229]。米国では Alvesco(アルベスコ; 2008年発売), Omnaris(オムナリス; 2008年発売)および Zettona(ゼトナ; 2012年発売)(いずれも、Covis Pharma[180]社製)の商品名で販売されている[230]

開発・権利

シクレソニドはドイツアルタナが開発した。2006年にアルタナの製薬部門はスイスナイコメッド社に買収され、2011年にナイコメッドは武田薬品工業に買収された。

日本では帝人(2002年に帝人ファーマに分社)により1999年より臨床試験が行われ、2007年に気管支喘息を適応症とし製造・販売を承認され発売された[231][232]。しかし、海外メーカーからの導入品のため、増産する場合も帝人ファーマの一存ではできないという[233]

日本向けの製剤がどこで製造されているかに関して、帝人ファーマは非開示である。

米国販売権は、上記武田薬品工業から米Sunovion Pharmaceuticals Inc.(英語版)(大日本住友製薬の子会社)に譲渡され、2017年に、大日本住友製薬から上記Covis Pharmaに譲渡された[230]。海外での権利は[234]Sunovion Pharmaceuticals Inc.、2015年に英アストラゼネカに移り[235]、2018年より上記Covis Pharma(本社オランダ、アポロ・グローバル・マネジメント傘下)[注 11]が保有している[237]

シクレソニドを承認している国は2010年でも59カ国あった[238]。がん幹細胞の阻害[239]など、本剤の有用性が多数報告されている。

時系列

2020年2月19日、国立感染症研究所村山庁舎のコロナウイルス研究室は、「新型コロナウイルス感染症への対応に関する緊急拡大対策会議」で次のことを紹介した。

本ウイルスに対し既存の気管支喘息(ぜんそく)治療用の吸入ステロイド薬「シクレソニド」(Ciclesonide(英語版)[240](商品名 オルベスコ[241])が強い抗ウイルス活性を有する。

これを参考に神奈川県立足柄上病院のチームは、重症化のおそれがあり治療が難航していたCOVID-19患者3名への投与治療をすぐに行った。その結果、3例とも2日ほどで状態が好転、という著しい効果があった

3月2日、その症例報告を日本感染症学会サイトで以下内容で発表し[226][227]、多くのニュース番組等で紹介された。

  • クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号」に乗り合わせたCOVID-19陽性者で、肺炎が増悪中の患者3名にシクレソニドを投与したところ、良好な結果が得られた。うち2例は咽頭ぬぐいPCR検査でまだ陽性のため、吸入量を増量して継続中。
  • COVID-19は(多くの報告のとおり)初期が軽症でも発症後7-10日で急速に悪化する印象。シクレソニドの投与時期は、重症化する前の、感染早期〜中期あるいは肺炎初期が望ましい。
  • ウイルスの早期陰性化重症肺炎への進展防止効果が期待される。
  • 本ウイルスが肺胞上皮細胞で増殖し、肺障害を引き起こしながら、同時に肺胞マクロファージ等に感染し局所の炎症を起こすと推定され、それに対しシクレソニドの持つ抗ウイルス作用と抗炎症作用が、重症化しつつある肺傷害の治療に有効であることが期待されている。
  • COVID-19に対し広く投与されているロピナビルリトナビルカレトラ錠)(略号 LPV/r)[242]対シクレソニドの比較
  1. in vitro試験管レベルでの研究)でウイルス増殖防止効果は同等以上、
  2. 肺胞到達時の組織濃度は数十倍、
  3. 副作用は前者が「下痢,吐き気,嘔吐,腹痛等」で高齢者における薬物動態については十分な検討がなされていない[242]。後者は添付文書に副作用の記載はあるが、未熟児・新生児から高齢者まで広く用いられる安全な薬剤で、報告時点までで同院で有害事象はなかった。
  4. 価格は前者が 1,289.6円/日、後者は1キット2,169円(同院の1,200μg/日処方で)と安価。
  • この3例のみの症例数で効果を論じることはできないので、今後症例の蓄積と検討が望まれる。
— 日本感染症学会COVID-19肺炎初期~中期にシクレソニド吸入を使用し改善した3例

3月2日に韓国パスツール研究所などのチームが発表(→ #韓国での探索研究)したCOVID-19有効薬剤候補の中にも、本剤シクレソニドが含まれていた。候補はMERSコロナウイルス株を使ったスクリーニング研究で得られたもの。

3月6日、国立感染症研究所は、上記3症例について「シクレソニドが、ウイルスの遺伝情報を担うリボ核酸(RNA)の複製を阻害した」との見方を示した。また、MERSで抗ウイルス作用を示したとのデータがあったと述べた[243]

3月9日に厚生労働省健康局結核感染症課より要請を受け、帝人ファーマと親会社の帝人は翌10日、COVID-19治療薬の検討に資するべく、同社が製造販売承認を有するオルベスコの供給体制を(本剤使用中の気管支喘息患者への安定供給を確保した上で)確保すると発表した[244][245]。同社が要請されたのはオルベスコ2万本分の確保。いつまでに出荷という期限は設けられていない。オルベスコは海外のメーカーから導入していて帝人の一存では増産できないが、メーカーと協議しながら数量を確保していく[246]

3月10日、日本環境感染学会(会員数約1万名)は、「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第2版改訂版 ver.2.1)」を公開し[247]、治療に関する説明の中に、3月2日の前版にはなかった本剤に関する記載を追加した(下線部)[248]

治療・予防(ワクチン) 新型コロナウイルス感染症(COVID- 19) に対して、現在、有効性が証明された治療法はありません。ただし、抗HIV薬のロピナビル/リトナビル、抗インフルエンザ薬のアビガン、エボラ出血熱の治療薬として開発されたレムデシビル、および吸入ステロイドの喘息治療薬であるシクレソニドなどが治療薬の候補として挙がっており、今後の検証によって効果が証明されれば治療薬として用いられる可能性があると思われます。

— 日本環境感染学会、 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第2版改訂版 ver.2.1)

3月12日に掲載された国立感染症研究所松山州徳らの審査前論文によれば、シクレソニドはコロナウイルスのもつ非構造タンパク質であるNSP15に作用してウイルスのRNA複製を抑制する[249]。したがって、シクレソニドはコロナウイルスであるMERSまたはCOVID-19の患者の治療の候補薬となる。

3月16日の時点で、オルベスコで治療を受けているCOVID-19の患者は、10人程度であった[250]

3月20日、韓国のパスツール研究所のSangeun JeonらのチームはbioRxivサイト(未査読論文掲載サイト)に、「直訳:FDA承認済み医薬品からのSARS-CoV-2に対する抗ウイルス薬候補の特定)」と題する論文を掲載した[251][252]。同研究所は既にMERS株でのスクリーニング結果を発表していた(→ # 韓国での探索研究)。発表によれば、同研究所は「COVID-19の治療にアルベスコ(シクロソニド)が有効である」と判断した。同研究所では本ウイルスSARS-CoV-2を入手してスクリーニングで24種の薬剤を抽出した。これらは、レムデシビルカレトラおよびクロロキンと同等かそれ以上の抗ウイルス活性を細胞実験で確認した。特に、シクレソニドの安全性、薬効、関連する海外の症例、および韓国国内での同剤の販売状況をレビューした結果、シクレソニドを「最も実現可能な医薬品(most feasible medication)」に選んだ。また、シクレソニドと並んでサナダムシ駆虫薬ニクロサミド富士フイルム和光純薬関東化学などが販売)(別名 ニクロシド[253]にも注目した。

3月22日に放送されたNHKのインタビューで、国立感染症研究所の松山州徳室長は次のことを明らかにした[254]

  1. 同研究所では2年前から、MERSに効く薬を1,200種の薬剤ライブラリからスクリーニング研究を実施し、シクレソニドが有効である可能性を見つけていた。
  2. 今回新型コロナウイルスに感染させた細胞にシクレソニドを作用させる実験を行ったところ、ウイルス量は100分の1程度にまで減った
  3. シクレソニドはウイルスの増殖を抑えると同時に、炎症を抑える効果もあると思われる。

3月23日、国立国際医療研究センターは、肺炎症状のないCOVID-19患者を対象として、シクレソニドの臨床試験(特定臨床研究)を早期に始める予定でプロトコール検討中であることを明らかにした[255][256][257]。(なお、同時期に、肺炎があり参加条件を満たす患者はレムデシビルの国際共同臨床試験に参加させる。一方、肺炎があるが当該条件を満たさない患者には、ファビピラビル富士フイルム富山化学アビガン)、ナファモスタットメシル酸塩(日医工フサン)での臨床試験を検討中、と述べた。)

3月30日(日本時間)、ユネスコが開催した世界127カ国の閣僚級やWHOの専門家等が出席したテレビ会議で、韓国科学技術情報通信部は、シクレソニドおよびニクロサミドがCOVID-19に効果があったという事実を共有した[258]

3月31日の日本集中治療医学会の報告[259]によれば、体外式膜型人工肺(ECMO)によるCOVID-19治療対象患者(の一部)である21例のうち43%の9例の治療でシクレソニド(オルベスコ)投与。ちなみに、同じ統計で、ファビピラビルアビガン)は38%の8例、リン酸クロロキンは5%の1例、カレトラは95%の21例(※ 母集団は厳密に同一ではない模様)

ウミフェノビル(アルビドール;抗インフルエンザ薬)[編集]

2020年2月4日、浙江大学教授李蘭娟の研究チームは、細胞実験で、ウミフェノビルアビドル、Abidol)とダルナビルDarunavir)の2種類の薬剤がコロナウイルスを効果的に阻害するのに有効であると発表した[191]。この報道により欧米株が急上昇した[260]

  • 李教授によれば、前臨床試験(preliminary tests)の in vitro 細胞実験で、アビドル(Abidol)[261]ダルナビルDarunavir)の2種類の薬剤がこのウイルスを阻害するのに有効であることが分かった。
  • 李教授は、新たに感染した患者の緊急治療を強化しようという望みをかけて、中国東部の浙江省から中国中央の湖北省に医療従事者を連れてきた。
  • 李教授は、現在使用されている 抗HIVロピナビルリトナビル錠(商品名 Kelizhi[262])(上記カレトラと同種類の薬剤)はあまり大きな効果はなく、しかも副作用(複数)があると述べた。
  • 李教授は、2つの新薬を、コロナウイルスによる新型肺炎の国家衛生健康委員会の治療プログラムに含めることを推奨した。
  • チームの別の研究者、陳作炳(Chen Zuobing)は、2つの薬は医学的指導なしに服用すべきではない、と釘をさした。
  • 浙江大学医学院附属第一医院の副理事長 (deputy president ) でもある陳作炳は、この2つの薬は浙江省でこのウイルスに感染した患者たちの治療に使用されてきており、次の段階で、有効性で劣っているほかの薬に取って代わるだろうと述べた[191]

なお中国語の阿比多尔をラテン文字表記した際の混乱があり、当初は鎮痛薬であるAbidolであるとする報道も見られたが、中国当局は阿比多尔が抗ウイルス薬であると主張していることから、正しくはウミフェノビルの商品名であるArbidolであると考えられる[263]

2020年2月18日、中国政府の専門家チームは、本ウイルスの診療ガイドラインを新たに発表し、抗インフルエンザ薬の「アルビドール」を治療薬として加えた[11]

完治患者の血漿[編集]

中国政府の専門家チームは、危険な状態や重症の患者に対して、完治した人の血漿(けっしょう)を治療に使うことを勧めた[11]

重症例5例に投与して有効であったと報告もされている[264]

アメリカや日本でも臨床試験が開始されることになった[265][266]

漢方薬 (清肺排毒湯)[編集]

2020年1月27日、中国国家中医薬管理局は本疾患の予防と治療のための中医薬(漢方薬)の効果的処方を発見するための臨床研究を開始し[267]山西省河北省黒竜江省陝西省で漢方薬の清肺排毒湯(中国語 清肺排毒汤)での治療の臨床的観察とデータ分析を行った。臨床的に有効なデータ214件により、2月6日、国家衛生健康委員会と国家中医薬管理局は共同で全国に、清肺排毒湯の使用を勧告する文書を発行した。発表されている効果は以下のとおり。

2月19日の中国国家中医薬管理局の発表[268]によると、10省57指定医療機関で701例を投与して観察した結果、130例(19%)が治癒して退院、51例(7%)が症状が消失し、268例(38%)で症状が改善し、212例(30%)は症状が安定し悪化しなかったという[268]

そのうち351症例が詳しく分析され、うち112人の患者の体温が37.3°Cを超えていたところ、服薬1日後で51.8%、服薬6日後で94.6%の患者が平熱に戻り、また、咳症状214人のうち46.7%が服用して短期に改善した[269]

また、だるさや吐き気、のどの痛みなどの症状にも顕著な治療効果が見られた。351例の中でひとりも、軽度の患者も普通の患者は重篤にはなっていないという[270]

効果100%ではないものの約半数以上の改善がみられることから、中国国家衛生健康委員会と国家中医薬管理局は2月6日、清肺排毒湯の使用を推奨するむね中国全土に通達した[271]

2月19日付、国民健康衛生委員会発行の「新型コロナウイルス肺炎の診断と治療(試行6版)」[272]とその解説[273][274][275]によれば、以下のとおり。

一般的な処方“清肺排毒湯”は臨床治療期間中に推奨される。軽度、一般的、重度、重大、および回復期間の臨床症状がえられた。推奨される処方と投与量、および投与方法は、3つの側面から説明されている。

2月21日の中国国務院の記者会見で、全国6万例以上の症例で西洋医学に漢方薬を併用して結果良好と以下のように発表された。

漢方薬の併用により、臨床症状が消えるまでが2日間短縮、平熱への解熱が1.7日間短縮、入院日数は2.2日間短縮、CT画像は22%改善され、臨床治癒率はが33%改善、重症化率は27.4%減少、リンパ球は70%増加したという[276]

清肺排毒湯を処方された患者たちのインタビューが2月23日に記事になり国家中医薬管理局のサイトに掲載された[277]

なお、日本では、漢方薬と中医薬を同じものだと認識しているが、中国当局は、漢方薬と中医薬は厳密には別の物であると認識しているため留意が必要である。

リン酸クロロキン (抗マラリア薬)・ヒドロキシクロロキン(全身性エリテマトーデス治療薬)[編集]

2020年2月18日、中国政府の専門家チームは、本ウイルスの診療ガイドラインを新たに発表した[11]。これまで効果的な治療法はないとしていたが、今回、抗マラリア薬の「リン酸クロロキン」と抗インフルエンザ薬の「アルビドール」を治療薬として加えた。このうちリン酸クロロキンは「特効薬ではないが検討に値する」、また、「ウイルス検査で陰性になるのが早いほか、副作用も大きくない」という。北京市広東省などの病院に入院する患者に対する臨床試験で症状の改善を確認した。15日に開いた国内の専門家会議で、臨床試験の対象を拡大することで一致したという[278][279]

ヒドロキシクロロキン(商品名 プラケニル)は全身性エリテマトーデス治療薬として承認されている。日本でCOVID-19患者2例に投与し、有効であったと報告されている[280]

ヒドロキシクロロキンだけでも効果があるが、抗生物質のアジスロマイシン(商品名 ジスロマックまたはアジスロシン)と併用すると上気道からのウイルス消失効果がより高い可能性があるという研究が3月20日にフランスの大学病院研究所(I.H.U.)[281]地中海感染症院などの研究チームから発表された[282][283]

カモスタットおよびナファモスタット (セリンプロテアーゼ阻害剤)[編集]

ドイツの研究によればセリンプロテアーゼ阻害剤のカモスタットはin vitroにおいてSARS-CoV-2が細胞へと侵入する際に使われる宿主側酵素のTMPRSS2プロテアーゼを阻害するため、新型コロナウイルスに効果のある可能性がある[284][285]。SARSコロナウイルスでは動物実験においてカモスタット単独投与の効果が確認されており[286]、その用量をヒトに当てはめると日本で既に承認されている量でも効果のある可能性がある[287]東京大学大学院医学系研究科は新型コロナウイルス感染症患者に対するカモスタット投与の臨床研究を計画している[288]

また中国の研究によればセリンプロテアーゼ阻害剤のナファモスタットVero E6細胞においてSARS-CoV-2の感染を防いだものの、その50%効果濃度 (EC50値) は高めの22.50μMとなっている[289]東京大学医科学研究所は新型コロナウイルス患者に対しナファモスタットの試験投与を行う予定となっている[290]

日本ではカモスタットは慢性膵炎や術後逆流性食道炎に、ナファモスタットは膵炎や播種性血管内凝固症候群などに対して保険適用されている[291][292]

トシリズマブ (抗IL-6抗体;リウマチ・膠原病・血管炎治療薬)[編集]

2020年3月4日、中華人民共和国国家衛生健康委員会は強力なIL-6阻害薬であるトシリズマブ中外製薬アクテムラ[293])のCOVID-19患者に対する投与を認可し[294]、医療規定の標準治療に組み込んだ[295]

イタリアにおいても重度の新型コロナウイルス患者2人に対しトシリズマブの投与が行われ、これにより24時間で症状が改善した[296]。この投与は在コッリ病院会社イタリア語版及びIRCCS財団国立がん研究所イタリア語版の協力によってコトゥーニョ病院イタリア語版の患者に対し行われた[296]

カリウムおよびナトリウム補充療法[編集]

審査前論文ではあるものの中国温州の病院の報告によれば、多くのCOVID-19患者が尿からのカリウムイオン (K+) 排出によって軽度〜重度の低カリウム血症を起こしており、カリウム補充療法は回復傾向の患者で良い反応を示したとされる[297]

また日本感染症学会に報告された症例において低ナトリウム血症が報告されており、その場合に電解質輸液剤による補液が行われている[298]

なおSARSにおいても低カリウム血症および低ナトリウム血症が報告されていた[299]

酸水素混合吸入[編集]

酸水素混合吸入は中国においてCOVID-19の治療に使われている[300][301]

2020年2月5日、上海潓美医療科技の酸水素吸入器 (水素66.66%/酸素33.33%) が武漢中央病院武漢大学中南医院中国語版などの病院へと届けられ、使用されるようになった[300]。この酸水素吸入器は慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、喘息気管支拡張症気道狭窄などに向けて開発されていた[300]

2月17日、中国非公立医療機構協会 (CNMIA)がこの酸水素吸入器を推奨し[300][302]、3月3日、中華人民共和国国家衛生健康委員会(NHC)はガイドライン第七版で酸水素吸入器を標準治療に組み込んだ[301][295]。ただし二重盲検比較試験は行われておらず論争も起きている[300][301]

ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬[編集]

新型コロナウイルス感染症の患者の血漿では著しく高いレベルのアンジオテンシンIIが確認されており[303]、それによる障害を防ぐためにアンジオテンシンII受容体拮抗薬 (ARB) を使うことがインドマハラシュトラ保健大学の Mrudula Phadke 教授から提案された[303][304]#宿主細胞受容体も参照)。ARBにはテルミサルタンロサルタンなどがある[304]

欧州製薬団体連合会英語版 (EFPIA)は、降圧剤であるアンジオテンシンII生成を阻害するアンジオテンシン変換酵素阻害薬 (ACE阻害剤) の効果の検証を含む治療法の特定を、会員企業に求めている[305]

ACEI又はARBの静脈内投与がACE2受容体の発現を増やし重症化リスクを高める可能性があるとする仮説も存在する[306]が、中国におけるCOVID-19患者のメタアナリシスの審査前論文によれば65歳以上の高血圧患者におけるARBの服用者は重症化リスクが有意に低かったとされる[307]

リコンビナントACE2[編集]

ヒト組み換え可溶性ACE2はin vitroにおいてSARS-CoV-2の細胞への感染を阻害することが見つかっている[308][309]。SARSでの研究ではマウスでの動物実験においてアンジオテンシンIIの分解を行うリコンビナント(組み換え)ACE2の投与がSARSの重症化を防ぐことが見つかっている[310]

ヒト組み換え可溶性ACE2にはApeiron Biologics製の「APN01」が存在し[308]、既に第II相臨床試験を開始している[311]。また、日本の医薬基盤・健康・栄養研究所は量産可能なバクテリア由来のACE2様酵素「B38-CAP」を発見し、それが新型コロナウイルス患者の重症化抑制に使える可能性のあることを発表した[312][313]

メプラズマブ(抗CD147抗体)[編集]

ACE2以外のウイルス受容体としてCD147が関与している可能性が示唆されている。抗CD147抗体であるメプラズマブによりウイルス陰性化までの期間が短縮されたと報告された(2020年3月26日現在、査読前論文であるため解釈に注意が必要)[314]

BCGワクチン[編集]

世界のCOVID-19感染率(2020/4/1時点)
東西ドイツのCOVID-19感染率の相違

ハーバード大学医学大学院国際保健リサーチコア教授メガン・マリーは3月13日BCGワクチンの再接種によって上気道感染症が減った報告や、trained immunity(訓練免疫状態)[注 12]によるオフターゲット効果の可能性にも触れ、BCGワクチンのCOVID-19への効果の研究価値があると述べた[316][317]。BCG接種状況[318]と世界のCOVID-19感染率の類似が指摘されている[319][320]

オランダの研究チームは医療従事者にBCGワクチン接種を行う者1000人を募集したと『サイエンス』誌が3月23日に掲載した[321]。このグループはBCGが血液エピジェネティックを変化させるという仮説を人間で確かめることを目的としている[315]

マウントサイナイ医科大学助教授アニー・スパローは、2016年のWHOのシステマティック・レビューでもBCGワクチンのオフターゲット効果[注 13]の有効性が報告されているとし[322]、BCGワクチンが医療従事者を救う可能性については研究する価値があると3月24日に述べた[323][317]

マードック・チルドレンズ研究所英語版BCGワクチンが免疫力を高め、SARS-CoV-2にも効果のある可能性があるとして臨床試験することを発表したと3月27日に報じられた[324]

大阪大学名誉教授(免疫動態学)の宮坂昌之は、BCG投与で、結核ではない感染症が子供で減ることがわかってきており、BCGの刺激によって自然免疫が強化されたことが考えられると述べた[317]

もっとも、日本ワクチン学会は、「「新型コロナウイルスによる感染症に対してBCGワクチンが有効ではないか」という仮説は、いまだその真偽が科学的に確認されたものではなく、現時点では否定も肯定も、もちろん推奨もされない。」との見解を示している。[325]

VPM1002(BCGワクチンベースのワクチン)[編集]

マックス・プランク研究所は3月21日、BCGワクチンをベースにしたワクチン候補VPM1002が、SARS-CoV-2の感染に対して有効かどうかを第III相試験すると発表した[326]。VPM1002は、ステファン・H・E・カウフマンのグループが開発したもので、従来の標準的なBCGワクチンよりも安全で結核や癌に効果があるとされる[326]。このワクチンは現在、インドで治験されており、2020年半ばに完了予定で、Vakzine Project Management(VPM)と世界最大級のワクチンメーカーであるインド血清研究所(Serum Institute of India )と共同で開発する[326]

イベルメクチン(駆虫薬)[編集]

2020年4月4日、オーストラリア南東部メルボルンのモナッシュ大学の研究チームは、イベルメクチン(Ivermectin)(MSD社、マルホ社のストロメクトール)が、実験の結果、本ウイルスの抑制に効果があったと発表した。1回量のイベルメクチンで本ウイルスの複製を48時間以内に止めることができた。今後臨床試験を行い、できるだけ早くCOVID-19の治療薬に応用したいとしている[327][328]

イベルメクチンは、数々の業績をあげて2015年ノーベル生理学・医学賞を受賞した化学者北里大学特別栄誉教授の大村 智により開発された[329]

コンピューター創薬[編集]

タンパク質間相互作用(PPI)に関する原理的な知見として、相互作用を生じるふたつのタンパク質などは、それらの一部同士が空間的に合致する(嵌まる)形であることが多いことが分かっている。この原理を利用して、本ウイルスSARS-CoV-2の立体構造に対して、既知のあらゆるタンパク質の立体構造をいろいろ当ててみてどこかが嵌まらないかとしらみつぶしに調べることで、抗SARS-CoV-2薬の候補となるタンパク質群を発見するアプローチが可能である。しかしこれには膨大な計算量が必要になる。そこで、1台のコンピュータだけでなく多数のコンピュータで分散して計算させることが、発見の近道となる。世界中から無償ボランティアを募集してコンピュータを自動的に借りながら発見作業を進めるというオープンなプロジェクトが、いくつかスタートしている。

こうしたプロジェクトには世界の誰でも参加して自分のパソコンやゲーム機で薬剤発見に貢献できる[330]。インストールしたプログラムアプリがデータを自動的にダウンロードして解析してサーバに次々報告する。参加者はインストールと必要に応じて設定を行えばよい[331]

その代表的なものとして、2020年2月末、セントルイス・ワシントン大学に拠点を持つ分散コンピューティングプロジェクトのFolding@home(FAH、フォールディング・アット・ホーム)では、本ウイルスへの取り組みの基盤を提供し、個人・企業が所有するパソコンの余剰パワーの提供を募集した[332]

グレッグ・ボウマン博士は「近い将来に最も期待がかかるのは、いずれかの部位に結合できる既存の薬剤を見つけられるかどうかだ」と述べた[332]NVIDIAGitHubなどIT大手、redditのパソコン・ゲーム愛好家グループなど2週間で40万人以上が専用アプリをダウンロードした[332]。3月25日、Folding@homeの演算能力は約1.5エクサFLOPSに達した[333]TOP500の上位100スーパーコンピュータの合算を上回る能力を獲得し、これまでの数千倍長いタンパク質を対象とするシミュレーションが可能となっている。

新規治療薬、予防薬の開発[編集]

本感染症の感染拡大を受けて、

  1. 抗原投与による予防薬であるワクチン、および、
  2. 抗体投与による予防薬または治療薬である抗体医薬

などを緊急に開発しようという取り組みが複数はじまった。

ワクチンの開発[編集]

ノババックス社[編集]

2020年1月21日、米国の感染症薬メーカー、ノババックス (Novavax Inc.) は、本ウイルスの感染予防のためのワクチンの開発をはじめたと語った[334][335]

感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)[編集]

感染症流行対策イノベーション連合 (CEPI; Coalition for Epidemic Preparedness Innovations)はノルウェー政府、インド政府、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、および公益信託団体ウェルカム・トラストの出資によって2017年にダボス会議(スイス)にて発足した、公的機関、民間機関、慈善団体および市民団体の間でのグローバルな協働体である[336]。日本の厚生労働省も創設に関わり2017年より拠出を行ってきた[337]

2020年1月23日、CEPIは以下3研究チームがワクチン開発に向けた作業を開始し、少なくとも1種類のワクチンの臨床試験を6月までに開始すると発表した[338][337]。また、夏にも人へ臨床試験を行い、ワクチン承認は早ければ年内になるとも述べた[339]

  1. 米医薬品・ワクチン開発のモデルナ(Moderna, Inc.)(英語) (MRNA.O)とアメリカ国立アレルギー・感染症研究所 (NIAID)の連携、
  2. 製薬会社イノビオ・ファーマシューティカルズ(Inovio Pharmaceuticals, Inc.) (INO.O)、
  3. クイーンズランド大学のチーム。

この他、米Vir Biotechnology社もワクチン開発計画に加わり、SARSMERSの生存者から同定されたモノクローナル抗体(mAbs)が本ウイルスに有効かどうか調べる[340]

イノビオはMERSの最も先進的なワクチン候補 INO-4700をもっており[341]、ウイルスのDNA塩基配列が公表されて3時間以内にウイルスをデザインできた。CEPIから最大900万ドル(約9億8000万円)の助成金を受け、2020年初夏にも中東アフリカ現地での第II相臨床試験に入る予定[342][343]で、大規模な臨床試験は年末までに中国で行いたいという[344]

2月3日、英グラクソ・スミスクライン(GSK)パンデミックワクチンで確立されたアジュバント(抗原性補強剤)の基盤技術を提供するためにCEPIの協働に参加すると発表した[345]

2月25日、モデルナは開発中のCOVID-19のワクチンを、ヒトに投与する安全性試験(第I相試験)向けに米国立アレルギー感染症研究所NIAID)に出荷した。ヒトへの臨床試験は2カ月以内の開始を見込むが、一般に入手できるようになるには1年半かかる可能性があるという[346]

中国・ロシア[編集]

2020年1月26日、中国CDC(疾病管理予防センター)の関係者は、ワクチンの開発を開始したと語った[347]。1月29日、広州ロシア領事館は新型コロナウイルスのゲノムが中国からロシアに提供され、中露がワクチンの共同開発に着手したと発表した[348]

(上記と同じものかどうかは分からないが)開発したワクチンの治験開始が3月17日に中国で承認され、同じ週から中国人民解放軍軍事科学院の研究者らが治験を開始[349]

ジョンソン・エンド・ジョンソン社[編集]

2020年1月29日、米医薬品・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、COVID-19 ワクチンの開発に着手したと発表した。エボラ出血熱のワクチン開発に利用した技術を応用する。このワクチンは現在、コンゴ民主共和国ルワンダで投与されている[194]。「すでに多数の研究者をワクチン開発に投入しており、1ヶ月以内には何らかの成果が出せると確信している。世界市場に向けた量産体制はすでに整っているので、ワクチンが完成すれば、1年以内に億単位の出荷が可能」という[350]

サノフィ社[編集]

2020年2月18日、フランスのサノフィは、米国保健福祉省(HHS)の生物医学先端研究開発局(BARDA)と協力して、COVID-19 のための遺伝子組換えワクチンの速やかな開発を目指すと発表した[351]

アンジェス・大阪大学・タカラバイオ[編集]

2020年3月5日、大阪大学発の創薬企業アンジェスは、本ウイルスのワクチンを大阪大学と共同で開発し、タカラバイオが製造すると発表した[352][353]DNAプラスミド技術を活かしDNAワクチンという種類とするので、他の方法のワクチンよりも短期間に製造工程が作れるという。

抗体医薬の開発[編集]

リジェネロン社[編集]

2020年2月4日、米国厚生省(保健福祉省; HHS)は、米製薬大手リジェネロン・ファーマシューティカルズ英語版と提携し、本ウイルス感染症の治療のためのモノクローナル抗体の開発を行っていると発表した。HHSによると、リジェネロンはコンゴ民主共和国内で発生したエボラ出血熱の試験薬を開発する際に使用された技術と同様の技術を使用するという[354][355]。同社は2月6日、同治療法が数カ月以内には一部の患者に使える可能性が大きいと発表した。その治療法には、コンパッショネート使用(未承認薬の人道的使用)が適用されるかもしれないという[356]

トランスクロモソミックス社[編集]

2020年2月27日、医薬品開発の「Trans Chromosomics(トランスクロモソミックス)」社[357](鳥取県米子市)は、独自の抗体作製技術などを活用し、本ウイルスの治療用の抗体医薬(ヒト型モノクローナル抗体)の作製に着手すると発表した[358]。同社は、鳥取大学発の創薬ベンチャーである「カイオム・バイオサイエンス」社[359]の共同研究先[360]

その他治療薬の開発[編集]

ファイザー社[編集]

2020年3月2日に米国の製薬会社ファイザーが明らかにした情報によれば、本ウイルスを抑制する可能性のある抗ウイルス性化合物を同定し、第三者機関と検査を進めている。同年3月末までに検査終了、2020年末までに臨床試験開始を目指す[361]

武田薬品工業[編集]

2020年3月4日、武田薬品工業は、本疾患に対して、2019年に買収したアイルランドの大手製薬会社シャイアーが持っていた血液由来の医薬品技術で治療薬を開発すると発表した[362]。免疫機能を高める治療薬「TAK-888」を作る。TAK-888は、回復した患者の血漿から採取した病原体特異的な抗体を濃縮したもので、これを投与すると患者の免疫系の活性が高まり、回復の可能性が高まることが期待できるという[363]。すでに米国やアジア、欧州の規制当局と調整を進めている。9カ月から18カ月程度で治験を終える計画としている。

当症状の禁忌薬[編集]

3月17日、世界保健機関(WHO)の報道官は、本ウイルス感染の疑いがある場合、医師の助言なしに抗炎症薬「イブプロフェン」を服用しないよう注意を促した。抗炎症作用の少ない「アセトアミノフェン」服用が望ましいとしていたが[364]、3月20日に「通常の副作用以外に、症状を悪化させるという報告はなかった」ことから「控えることを求める勧告はしない」とし、先の発表を事実上撤回した[365]。そのため、3月20日時点において禁忌薬に指定されている薬品は存在しない。ただし、ロキソニンなどのNSAIDSはサイトカインストームを起こし肺炎の可能性を上げるリスクは肯定もされていないが否定もされていない状況であるため、可能なら使わないほうが無難といえる。一般的な副作用を防ぐという観点も含め、解熱剤としての第一選択はアセトアミノフェンをと考えるのが現時点では妥当なところである(もちろん副作用のためアセトアミノフェンが使えない患者も存在する)。

医療機器[編集]

人工呼吸器[編集]

新型コロナウイルスは急性呼吸窮迫症候群肺炎をもたらし、肺にダメージを与える[366]。治療法がまだない現状では、重篤化した場合に人工呼吸器が必要不可欠な医療機器となる[366]。イギリスの呼吸器疾患・救命救急医ラハルデブ・サーカーは「集中治療室に入った患者の死亡率は50―60%と推測される」とし、重篤患者に人工呼吸器を使用できなければ「数時間で死に至る」と言う[367]。米国の人工呼吸器メーカーであるベンテック・ライフ・システムズのキプルCEOは「ワクチンが開発されるまでのあいだ、命を救うために人工呼吸器の供給に注力せざるをえない」と述べる[367]

WHOは3月1日、各国に人工呼吸器の確保を求めた[368]

中国[編集]

中国の医療機器メーカー北京誼安医療系統は1月20日以来、24時間体制・3交代制で、研究開発部門のスタッフまでも生産ラインで働き、対応している。誼安医療は外国からの注文殺到で、昨年の数倍の売上高を見込んでいる[369]

また、北京誼安医療はバルブやタービンといった主要コンポーネントをスイス、米国、オランダから輸入しており、パンデミックによるサプライチェーンの途絶えで困難な状況もある[367]

イタリア[編集]

3月6日、イタリア政府は医療機器企業シアレ・エンジニアリング・インターナショナル・グループ(ボローニャ)に協力を求めた[367]。陸軍技術者も同社の生産管理者と協力し、通常月間生産量160台のところ、4カ月で2000台の生産を目指す。[367]

エミリアロマーニャ州の医師チームは、1台の人工呼吸器から2人の患者に酸素を供給する方法を開発した[367]

3Dプリンター事業のイシンノーバ(Isinnova)は、ロンバルディア州にあるガルドーネ・バル・トロンピア病院の元医長レナート・ファベロの提案で、3Dプリント技術を使ったシュノーケリングマスクと人工呼吸器をつなぐ医療用バルブの試作に成功した[370]。イシンノーバはこのバルブの特許権を取得したが、設計図を公開している[370]。また、イシンノーバが使用したのは仏デカトロン社製のシュノーケリング用マスクで、デカトロンは協力に前向きで、すぐにマスクの設計図を提供したという[370]

イギリス[編集]

イギリスでは、NHSに成人用人工呼吸器が5000人分、子ども用900人分が備蓄されている[371]。英国政府は予備人工呼吸器を約8000台に積み増し、NHSは数週間で1万2000台弱まで増やすと述べた[367]

3月15日、イギリス政府は人工呼吸器またはそのコンポーネントの供給に関して企業に支援を要請した[371]。7つのF1チームはユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、イノベートUK、ハイ・バリュー・マニュファクチャリング・カタパルトと提携し取り組むとした[371]。ほか、ロールス・ロイスジャガーランドローバーエアバスなども要請を受けた[371]。コングロマリットであるマクラーレン・グループは、簡易人工呼吸器の設計を検討し、また日産自動車は、既存の人工呼吸器メーカーの支援に向けて他社と協調する[367]

3月20日、マット・ハンコック英保健相は「生産可能な台数はすべて必要になるし、買い上げる」と述べた[367]

3月27日、家電メーカーダイソンが、政府の依頼を受けて10日間で設計した新型人工呼吸器CoVentを開発したと発表した[372]。新型コロナウイルス感染症の患者に特化して対応できるもので、4月初めまでに使用態勢が整う[372]。政府からの注文は1万台で、この他ダイソンは各国に5000台を寄付するとしている[372]

掃除機や芝刈り機のメーカーのジーテック(Gtech)も2種類の人工呼吸器試作品を政府に提出して審査を受けている[372]

アメリカ合衆国[編集]

米国には16万台の人工呼吸器があり、さらに国家戦略備品として1万2700台があるが、3月22日、トランプ大統領はフォードゼネラルモーターズテスラによる人工呼吸器製造を要請した[366]GMはベンテック・ライフ・システムズと提携し、テスラはメドトロニックとの提携を発表した[366][373]。テスラは一時閉鎖していたニューヨーク州の太陽電池工場を再稼働させて人工呼吸器を組み立てるという[374]。また、既存メーカーから購入した数百台の人工呼吸器をニューヨーク市の病院に寄付した[374]。フォードは「危機を前に国を支えるために力を合わせることが不可欠だ。そうすることでこれまでにも増して強くなる」と述べた[366]

これに先立ち、3月18日にトランプ大統領は、緊急時に政府が産業界を直接的に統制できる権限を付与する国防生産法を発動した[375][376][374]

3月27日、トランプ米大統領は国防生産法に基づき、GMに人工呼吸器の生産を正式に命令した[374]。GMは同日、医療機器メーカーと組んで生産を始めると表明、トヨタ自動車も人工呼吸器メーカーの増産を支援すると発表した[374]。これにより、GMには連邦政府の発注を優先する義務が生じる[374]。GMはインディアナ州の電子部品工場に呼吸器の生産設備を導入し、4月から月間1万台のペースで生産する[374]。トヨタは人工呼吸器のメーカー2社と連携して部品供給や物流を支援し、また3Dプリンターで医療用の簡易フェースガードを生産し、マスクの生産準備も進めている[374]

全米病院協会は、旧式の人工呼吸器の復活や、麻酔機器の転用を検討している[367]。国防総省から同協会へ2000台の人工呼吸器が寄贈された[367]

オランダ(フィリップス)[編集]

オランダ電機大手フィリップスは3月22日、人工呼吸器の製造を今後約2カ月で倍増、9月までに4倍にすると発表した[377]。フィリップスは現在、週千台生産している[377]。ドイツのドレーゲルとも連携する[377]

スイス(ハミルトン)[編集]

スイスの医療機器メーカー、ハミルトン・ボナドゥーツ株式会社は、感染拡大が最も深刻なイタリアに優先的に製品を届けており、2020年3月現在昨年1年分の販売台数1500~2000台が1カ月で売れるという[378]。クローズドループ制御換気機能のある最新世代の人工呼吸器の価格は約6万フラン(約670万円)[378]

ハミルトンCEOヴィーランドは「スイスには現在、合計1000~1200台の人工呼吸器がある。もしイタリア同様に感染状況が深刻になれば、需要は絶対に満たせないだろう」と述べた[378]

スイスのハミルトンの昨年の生産台数は1万5000台だったが、今年は約2万1000台を目指す。ハミルトンは年間10億ドル以上の規模の人工呼吸器のグローバル市場で、売上高シェア約4分の1を占める[367]

ハミルトンはルーマニア工場で人工呼吸器用ホースを製造しているが、「重要な医療機器」を理由として数週間ルーマニア当局によって出荷が止められるという問題も発生したが、政府を通じて解決した[367]

ドイツ[編集]

ドイツでは、感染拡大が始まる前に各病院が約2万台の人工呼吸器を保有していたが、連邦政府はドレーゲルベルクに1万台を発注した[367]

レーベンスタイン・メディカル・イノベーションのフランス支社長クリストフ・ヘンツェは、フランスにおける需要は、通常は年間約1000―1500台だが、現在では週に数百台まで増加しているという[367]

日本[編集]

日本政府では経済産業省で人工呼吸器を3000台確保している[379]

3月25日、旭化成は同社傘下の米国ゾールメディカルが米国内の部品メーカーから供給を受け増産し、現在の生産数の約25倍となる月1万台の生産を目指す[380][381]

3月27日、広島大学トランス レーショナルリサーチセンターの木阪智彦准教授と国立病院機構新潟病院の石北直之医師は、3Dプリンターによる人工呼吸器代用装置のデータを無償提供すると発表した[382][383]。この装置は電気制御の必要がない[382]

3月29日、西村康稔経済財政再生相は人工呼吸器増産に向けた調整を開始すると発表した[379]

体外式膜型人工肺(ECMO)[編集]

重症例に対してECMOが使用されている[384]

防護具(PPE)[編集]

個人用防護具(personal protective equipment, PPE)
1.保護衣(ガウンエプロン)を着る
2.マスクN95マスクサージカルマスク)を着用
3.ゴーグルフェイスシールドを着用
4.手袋グローブ
この他、帽子(キャップ)、シューカバーなど[385]があるが、いずれも使い方を熟知したうえで使用するのが理想であり、間違った使い方をすれば感染を防ぐ効果が大きく減退するリスクがあるのは言うまでもない [386][385]

飛沫感染や接触感染を防ぐために個人用防護具(personal protective equipment,PPE)が各種ある。保護衣(ガウンエプロン)、マスクN95マスクサージカルマスク)、ゴーグルフェイスシールド手袋、帽子(キャップ)、シューカバーなど[385]

予後[編集]

初期の報告では重症化率が32%、死亡率が15%と高いものであったが[80]、症例の集積に伴い、現在では重症化率、死亡率はそれより低いことが判明している。WHOからの報告では軽症~中等症例が約80%、重症例が13.8%、重篤例が6.1%とされている[66]。死者の多くは、高血圧糖尿病、免疫系を損なう心血管疾患など、他の疾患を併せ持っていた[387]。また、免疫系の過剰反応であるサイトカインストームによる重篤化するケースもある[388]。死亡に至った初期症例によると、疾病の判明から死亡までの中央値は14日であり、6日から41日までの幅があった[389]

致死率・罹患率[編集]

スペインかぜ流行時の1918年、マスクをしていない人の乗車を拒否するシアトル路面電車

2020年現在の流行では致死率が時間とともに変化し、疾患が診断可能になるまで進行した感染者の割合が不明なため、感染による全体的な死亡率罹患率も不明である[390][391]致命率(致死率)は、感染者数に占める死者の割合で、2020年現在のように感染が流行している段階では、感染者数値が変動するのに応じて致死率も変動する(例えば2月6日時点で武漢の致死率4.1%、湖北省以外の地域0.17%[392]。2月17日時点で武漢の致死率3.2%[392]。2月18日時点で湖北省以外の地域の致死率は0.63%[392]など、これは治療中の重症患者が死亡するケースが増えているためとみられる[392])。

予備調査では2%から3%の致死率が得られている[393]。WHOの予備調査で致命率は3%程度と推定[394]

3月6日、厚生労働省は「最悪の場合、発症者は人口の1割を超える」とする流行シナリオを公表した[395][396]。そのシナリオは次のピーク時の医療需要の目安 (1日あたり)のによって表される[396]

  • 外来患者数:(0-14歳人口)×0.18/100+(15-64歳人口) ×0.29/100+(65歳以上人口) ×0.51/100
  • 入院患者数:(0-14歳人口)×0.05/100+(15-64歳人口)×0.02/ 100+(65歳以上人口) ×0.56/100
  • 重症者数:(0-14歳人口)×0.002/100+(15-64歳人口) ×0.001/100+(65歳以上人口) ×0.018/100
なお、各地によってピーク期が異なるため、全国の人口で計算することや単純に各自治体が算出するピークの数値を足し合わせることは、不適切な取扱いとなることに留意する必要がある[396]。また、この式は今後変更される可能性がある[396]

ピーク時は、感染が拡大した時点から概ね3か月後に到来すると推計されている[396]。ただし、公衆衛生対策を行うことで、ピークが下がるとともに後ろ倒しされる[396]

3月11日、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の長官ファウチ (Anthony S. Fauci) は中国を含めたデータから致死率は約3%だが、無症状患者もいるので実際の感染者はさらに多く、約1%と推定している[397]

3月12日、イギリスは最悪シナリオの罹患率はドイツの70%を上回る80% (全国民における割合)に設定して計画すると発表した[398]

3月30日医学誌ランセットに発表した論文でICLの研究者は致死率(訳文では死亡率)を0.66%とした[399][400]。これ未確定例を含む場合で、感染確定例の死亡率は1.38%だった[399]。年齢別では80歳以上の死亡率は7.8%、50歳以上で入院確率が大幅に高くなり死亡率も高まり、40歳未満では0.16%、9歳未満の死亡率は0.00161%であった[400]

他のウイルス感染症との比較[編集]

致死率 備考
スペインインフルエンザ
(スペイン風邪)

(H1N1型)[401]
2-2.5%[402]
またはそれ以上
(日本:2%[注 14])
1918-1919年流行。
患者数:世界人口の25-33%または5億人[403]
死者:4,000万~1億人 (世界人口8億人)[403]
(日本:患者2300万人、死亡者38万~45万人)[403]
第一波は感染性は高かったが致死性ではなかった。
第二波は10倍の致死率。15~35歳の若年者層において最多の致死となり死亡例の99%が65歳以下だった[403]
アジアインフルエンザ
(アジアかぜ)

(H2N2亜型)
0.5%[402]
(日本:0.02%[注 15])
1956-1957年流行。
中華人民共和国貴州省雲南省で発生し、世界へ伝播した[404]
死者:200万人 (世界人口28.5億人)[402]
(日本:罹患300万人、死者5,700人)[404]
エボラ出血熱
(アフリカ)
80-90%
(ウイルスによって異なる[405])
アフリカ1976年から度々流行[405]
軍隊により封じ込め、住民を外出させないことで収束したこともある[402]
2014年ギニアリベリアシエラレオネマリナイジェリアで大流行[405]
2018年以降はコンゴ民主共和国北キヴ州イトゥリ州で大流行、2019年7月WHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態 (PHEIC)」に指定した[405]
予防:流行地域へ旅行しない。動物や患者に触れない。洞窟に入らない[405]
モノネガウイルス目フィロウイルス科エボラウイルス属 (コウモリ由来のウイルス)
高病原性鳥インフルエンザウイルス
(H5N1型)
30-80%[402]
(または56%[406]-60%[401])
季節性インフルエンザ 0.1% [407][392]
新型インフルエンザ
(H1N1型)
0.1%以下[402]
(日本:0.001%、70歳以上は0.03%[407])
2009年流行
死者:2万人 (世界人口68億人)[402]
日本における2009年新型インフルエンザ」も参照。
風邪 (ヒトコロナウイルス229EOC43、NL63、HKU1) 不明 (非常に低い) 人類全体に蔓延しており感染数は70億人とも推計され、風邪症候群の10〜15% (流行期35%) の原因を占める[408]
ニドウイルス目コロナウイルス科 (ヒトコロナウイルス229EOC43、NL63、HKU1の4種)[408]
SARS
(重症急性呼吸器症候群)
9.6%[394][409]-11%[410] 2002-2003年流行[394][409]
ニドウイルス目コロナウイルス科 (コウモリ由来のウイルス)
MERS
(中東呼吸器症候群)
35% 2012年から流行[411]
ニドウイルス目コロナウイルス科 (コウモリ由来ウイルス)
新型コロナウイルス感染症
(COVID-19)
不明。
以下、推定致死率。
*0.1-1% (米保健省ブレット・ジロワー次官補)[412][413]
*0.66%(ICL)[399][400]
*1%以下[414][413]
*1% (NIAID[397])
*2-3% (予備調査[393])
2020年現在流行中。
ニドウイルス目コロナウイルス科 (コウモリ由来ウイルス)
PSIカテゴリー

また、CDCはインフルエンザ・パンデミック重度指数 (Pandemic severity index, PSI) を作成している。

インフルエンザ・パンデミック重度指数[415]
カテゴリー 致命率
1 0.1% 以下 季節性インフルエンザ、豚インフルエンザ[416][417]
2 0.1–0.5% アジアかぜ香港かぜ
3 0.5–1%
4 1.0%–2.0%
5 2.0% 以上 スペインかぜ

患者回復後のウイルス陽転化現象[編集]

中国武漢の病院でPCR検査により診断されたCOVID-19患者に対して、PCRと血液、血清の診断の詳細を調べる研究があった。39例中15例が治療後も腸管や血液にウイルスを有していた。また、同病院の16例の研究で、0日めに口腔サンプルが陰性でも5日めに肛門サンプルが陽性化したのが4例あり、また、血清検査では治療直後陰性が治療5日後に検査すると陽転化するものが多かったという[418]。この結果について神戸大学大学院岩田健太郎教授は以下の見解を執筆している[419]

  1. 研究のポイント:口腔スワブ(スワブとは綿棒採取サンプル)が陰性でも肛門スワブ、血液で陽性、という例が存在する。
  2. 臨床現場での考え方として、「2回の口腔スワブPCR陰性」の退院基準は誤り
    1. 強力な血清診断が利用可能になった(このような血清による抗体検査が実用化されたら強力な調査手段になるだろう。PCR検査は感度が低い)。
    2. 2回のPCRスワブ陰性は「ウイルスの非存在証明」にならない(PCR検査は感度が低いので、退院基準を「2回の検査陰性」にするのは間違い)。
    3. 大事なのは「疾患」であって、「ウイルス」ではない(臨床症状が改善、消失すれば、疾患は治癒でありそこで病院の仕事は終わる。ノロウイルスでは腸管で数カ月生きていることもあるが無症状なら手指消毒をしていれば職場復帰が可能であるがそれと同じ)。

本ウイルスについてある日本の医師が中国のある医師の話として「2回めに感染することがあってそのときは死亡してしまう」、「80年に1回の凶悪なウイルス」とのショッキングな主張の動画[420]を発信して数日で数万回の勢いで視聴された。この内容について前出の岩田教授は、「2回感染という確認事例はない。そうでなく、検査で見つけられず陰性判定されたウイルスが生き続けて再燃した可能性が高い」、「引用論文が明示されない話は信用しないで」と注意を呼びかけた[421]

一方、PCR検査で陽性反応が出て入院し、その後の検査で陰性となり症状も落ち着いたため退院したが、最初の発症から2週間以上経過して再び検査で陽性となったケースも出てきており、ウイルスの再活性化か別の型などの再感染の可能性が指摘されている[422][423][424][425]


医療機関の対応方法[編集]

医療学会[編集]

注意:以下のガイドライン、対応策は随時改訂されるので、最新情報の確認が必要)

2020年2月4日、日本透析医学会は透析例への対応策[426]を発表した。

2月6日、日本産科婦人科学会が妊産婦への対応策[427]を発表した。

2月12日、日本環境感染学会は、「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第1版)」を公開した[428]

2月16日、日本臨床腫瘍学会は、がん患者への対応を発表した。「明らかなエビデンスはないものの、米国CDC のガイダンス(2020年1月30日付)では、がんの罹患は重症化リスクの一つであるとされて」いる、また、「免疫抑制状態もリスク因子とされている」と記載されている[429]

2月17日、日本医師会は、COVID-19への医療機関が講じるべき対応策の見直しを[430]配下の各医師会に通知し特設サイト にも掲載した[431]。要点は以下のとおり。

  1. 「新型インフルエンザ等発生時の診療継続計画作りの手引き」(2013年8月31日) [432]も参照し院内感染を防ぎ診療継続計画を見直すこと[433]
  2. 今後、PCR検査は原因不明の肺炎で重症化が疑われる事例が主体となる。
  3. 特に、高齢者/糖尿病・心不全・透析・呼吸器疾患(COPD等)などの基礎疾患のある人/免疫抑制薬、抗がん薬等の使用者/妊婦 など高リスク例への対応に注意し、速やかに帰国者・接触者相談センター(外部リンク直・厚労省案内サイト)に相談すること。
— 日本医師会「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策の見直しについて(R02.2.17)」(PDF) - 新型コロナウイルス関連感染症 都道府県医師会宛て通知

2月26日、日本感染症学会は「COVID-19に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第1版」を公表した。要点は以下のとおり[182]

  • 日本で行える治療は、現在、承認済薬剤の適応外使用である(手続要)。
  • 抗ウイルス薬を開始すべき時期は、患者が低酸素血症を発症し、酸素投与が必要であることを必要条件とする。そのうえで、
  1. 概ね50歳未満の患者では肺炎を発症しても自然経過の中で治癒する例が多いため、必ずしも抗ウイルス薬を投与せずとも経過を観察してよい。
  2. 概ね50歳以上の患者では重篤な呼吸不全を起こす可能性が高く、死亡率も高いため、低酸素血症を呈し酸素投与が必要となった段階で抗ウイルス薬の投与を検討する。
  3. 糖尿病心血管疾患・慢性肺疾患、喫煙による慢性閉塞性肺疾患免疫抑制状態等のある患者においても上記2に準じる。
  4. 年齢にかかわらず、酸素投与と対症療法だけでは呼吸不全が悪化傾向にある例では抗ウイルス薬の投与を検討する。
—  日本感染症学会「COVID-19に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第1版」(PDF)

院内感染ほか[編集]

2月7日、武漢大学病院で検出された感染者のうち4割は、同大学病院で院内感染したと発表された[434]。患者138人のうち41%(57人)が院内感染で、17人が入院患者、40人が医療スタッフだった[435]

韓国でも慶尚北道の病院で院内感染が発生した[436][435]

日本の病院でも、牧田総合病院(東京都大田区)[437]相模原中央病院[438]相模原協同病院[439]済生会有田病院(和歌山県湯浅町)[440]国立循環器病研究センター(大阪府吹田市[441])などで院内感染が発生し、一時的に休診となった。

オンライン診療[編集]

病院での感染(院内感染)のおそれがあるため、厚生労働省は2月28日、オンライン診療の手続きを簡略化した[442]

オンライン診療が認められるのは複数回受診しているかかりつけ医で同じ薬を処方してもらう場合などに限られる[442]

オンライン診療の手順としては、スマートフォンテレビ電話を通じて、かかりつけの医師の診察を受け、問診を受けると薬の処方箋が薬局に送られる[442]。薬局での服薬指導もスマートフォンで受けることができ、その後、薬が自宅に配送される[442]

公衆衛生施策上の対応[編集]

社会的距離戦略[編集]

何も対策しないとねずみ算式に感染が増殖していく。
あるいは、
BBQをしにいかない、テレワーク・自宅待機など外出を自粛することによって感染の伝播が途切れ、感染の流行が抑えられる(社会距離拡大戦略)。
流行曲線を平坦化することで感染の急激な激化を防ぎ、医療崩壊を防ぐ。パニックにならず、石けんでの手洗い、顔を手指で触らない、体調不良のときは外出せず自宅にいる。このことによって感染の拡大が抑えられる。
何も対策をしないと爆発的に感染が拡大する。イベントや旅行の中止、自宅で仕事をする(テレワーク)、石けんでの手洗いなどで感染の拡大が抑えられる。(社会距離拡大戦略)

ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生学部のBruce Y. Leeは感染拡大を抑えるための社会的距離戦略として以下を列挙する[22]。(上記と重複するものもある)

  1. できるだけ家から出ない
  2. 2m以内に近づかない
  3. 体を密着させない
  4. 部屋、エレベーターのなかでも距離を置く
  5. 握手ハグキスをしない(日本人のようなお辞儀など代わりになる方法を探す)
  6. 職場、学校、映画館、スポーツイベントを避ける(在宅勤務、遠隔授業、インターネット視聴などに切り替える)
  7. 食料品店やコインランドリーは空いている時間に行く
  8. ラッシュアワーを避ける(満員電車を避ける)
  9. ペン、押しボタン、ドアノブなど、多くの人が触れたものには触らない。触った場合は、すぐによく手を洗う。ペンは携帯する。
  10. 会議、集会、ハッピーアワーバーを避ける。感染していないという確証が得られる人とだけ、少人数で集まる。

トイレおよび飲食品の管理[編集]

中国疾病予防管理センターは2020年2月15日、新型コロナウイルスには感染経路が複数あり、(例えばノロウイルスのように)糞口・経口感染することが「急速な感染の一因だと考えることができる」と論文で発表している[443]

非接触サービス、リモートワーク[編集]

中国の外食産業は新型コロナウイルスへの対策として非接触化を進めており、非接触配達サービスや非接触レストランが登場している[444]

会社業務などではリモートワーク (テレワーク・在宅勤務) の推進が行われている[445][446]。仕事や学業を効率化し、会議なども最小化してメールでできること(特に連絡事項)はすべてメールやチャットを使用し、自宅でできる仕事は自宅で行う対策が取られる[447]

また遠隔接客ロボットも登場している[448]

集団感染・スーパー・スプレッダー[編集]

厚生労働省は2020年3月1日、これまでの日本の集団感染(クラスター)事例にスポーツジム屋形船ビュッフェスタイルの会食雀荘スキーゲストハウス、密閉された仮設テントなどがあったとし、換気が悪く、人が密集して過ごす空間、不特定多数の人が接触する場所に行くことを避けるよう勧告した[47]

集団感染の事例としては、さっぽろ雪まつりでの屋台[49]、住宅設備展示会(北海道北見市)[449]、病院(東京[437]、相模原市[438][439]、和歌山県湯浅町での院内感染[440]、大阪のライブハウス[450] [451][452]、ライブバー(北海道)[453]、名古屋市ではスポーツクラブ(感染36人)と福祉施設(感染45人)でクラスターが発生した[454]

3月3日には、日本の集団感染9件では、そこからつながりのある感染者数が80人以上になることがわかった[449]。これは調査対象となった感染者260人のうち約30%を占める[449]

韓国での感染者の行動履歴の事例では、はじめにキリスト教会で集団感染が発生し、うち一人が老人福祉施設の食堂で食事をして5人が感染。さらにその福祉施設会員の感染が病院で確認され、さらにその病院で院内感染が発生した[455]

10人以上への感染拡大の感染源となった患者をスーパー・スプレッダーという[456]。韓国のMERS流行では特定の数名がスーパースプレッダーで、1人から86人に感染させた患者もいた[457]

日本での新型コロナウイルス感染者の8割は他人に感染させていないが、残りの2割が1人以上の人に感染させており、1人から9人へ感染させた事例(屋形船)や、1人から12人へ感染させた事例(スポーツジム)もある[458]感染症専門医忽那賢志もスーパースプレッダーにならないためには密集空間を避けるべきだとしている[457]

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議3月9日、これまで集団感染が確認された場所は、1.換気の悪い密閉空間[注 16]、2.多くの人が密集、3.近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話発声という3つが重なった場であり、このような場所を避けるよう勧告した[459]。同会議は集団感染を防ぐために以下を強く推奨した[459]

  1. 換気のために窓を開ける
  2. 会場を広くし、お互いの距離を1〜2mあける
  3. 近距離での会話や発声、高唱を避ける
こまめな手指衛生、咳エチケットの徹底、共用品を使わない、使う場合は十分に消毒[459]

3月12日第一種感染症指定医療機関である都立駒込病院の今村顕史感染症科長は、現在の日本の状況では流行を抑えるために一番重要なのはクラスター(感染集団)対策であるとする[395]。クラスターの中で複数の人に感染を広げている人が見つかったら、徹底的に接触者(濃厚接触者)を調べるとする[395]。ジムに通っていた陽性者で、濃厚接触者数が約1400人となった例があった[395]

3月19日に専門家会議は、現状は持ちこたえているが、あるとき突然爆発的に患者が急増(オーバーシュート)して、医療が提供できなくなれば、強硬なロックダウン措置(都市封鎖・店舗閉鎖・外出自粛など)を取らざるを得なくなると懸念した[460]。その上で引き続き、集団感染 (クラスター)の早期発見、重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保を維持し、また各地域は感染状況に応じて、密閉空間でのイベントや集会(3つの条件の重なる場所)など感染リスクの高いものは徹底的に回避しながら、感染が拡大していない地域においては感染リスクの低い活動から徐々に解除することもありえるとした[460]

上記までの見解を踏まえ、新型コロナウィルス厚生労働省対策本部では、リスク要因の一つである「換気の悪い密閉空間」を改善するため、多数の人が利用する商業施設等においてどのような換気を行えば良いのかについて、有識者の意見を聴取しつつ、文献、国際機関の基準、国内法令基準等を考察し、推奨される換気の方法として、「「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法」を取りまとめた。

集団免疫[編集]

集団免疫(Herd immunity)のモデル。
  (赤):感染者
  (青):免疫を持っていない人
  (黄):免疫を持っている人
1.上段図では、免疫を持っている人がいないため感染が激増する。
2.中段図では、集団の少数に免疫を持つ人がいる。
3.下段図では、集団の大多数が免疫を持っている。その結果、上段図のような状況と比べて、感染の拡大は圧倒的に抑えられる。

日本の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は3月2日に「感染症のなかには、大多数の人々が感染することによって、感染の連鎖が断ち切られ、感染していない人を保護する仕組みが機能できる」として集団免疫の考えに言及した[461]

集団免疫は、市中感染が拡大する以前の隔離政策、またワクチンがない場合の対策として見なされている[461]

東京大学名誉教授獣医師唐木英明は「新型コロナ騒動は、集団免疫を得るまでは終わらない。そうであれば、厳しい対策により感染者をゼロに近づけようと努力するのではなく、ドイツや英国に倣つて、医療崩壊を起こさないように注意しながら、ある程度の感染を容認して、集団免疫を得ることを考えるべきではないだろうか。そんなことをしたら死亡者が増える、という反対がある。しかし、感染の速度に関わらず、感染者が国民の最低60%にならないと新型コロナ問題は終わらないのだ。重症者の治療法を早期に確立して、死亡率を低下させることが最重要の課題である。」と指摘している[461]

イギリスでの集団免疫についての議論[編集]

3月12日に英国政府は集団免疫で対策すると表明した[461]

3月14日、イギリスの科学者は「社会距離戦略の即時実施提言」を発表し、政府の対応は不十分で、もっと厳しい「社会距離戦略」を速やかに実施すれば、国内の感染拡大を劇的に遅らせ、数万人の命を救うと主張した(3月16日迄に501人署名)[462][463]。また現時点で『集団免疫』を追求するのは有効ではないとした[463]バーミンガム大学のウィレム・ファン・シャイク教授(微生物学)は、集団免疫の効果を目指すには、国内だけで3600万人が感染し回復しなくてはならないが、その人的コストの予測は不可能で、数万人から数十万人が死亡するとし、「NHSがパンクしてしまわないよう、数百万人の感染が長期間にわたり散発的に起きるように流行期間を引き伸ばすしかない」と述べた[463]

イギリス保健省は「集団感染は、我々の行動計画の一部ではなく、感染症流行の自然な副産物だ。人命を救い、最も弱い立場の人たちを守り、NHSの負担を軽減することが、私たちの目標だ」とし、「感染対策はすでに封じ込めフェーズを過ぎて、感染拡大を遅らせる段階にきている」「今後数カ月の間に国内の免疫力がどういうレベルになるか、予測できている」と反論した[463]

都市封鎖 (ロックダウン)[編集]

世界各国で感染拡大を抑えるために外出を制限する都市封鎖(ロックダウン)政策が取られた。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 専門家会議の見解における「換気の悪い密閉空間」とは、一般的な建築物の空気環境の基準を満たしていないことを指すものと考えられる。その意味では、ビル管理法の基準に適合させるために必要とされる換気量(一人あたり必要換気量約 30m3 毎時)を満たせば、「換気の悪い密閉空間」には当てはまらないと考えられる。→「商業施設等における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について」の「P.4」を参照。厚生労働省2020年3月30日
  2. ^ COVID-19の“CO”は「Corona(コロナ)」、“VI”は「Virus(ウイルス)」、“D”は「Disease(疾患)」、“19”は最初に患者が報告された「2019年」をそれぞれ表す[50]
  3. ^ 日本のNHK BS1の国際ニュースでは、通訳者が「コヴィッドじゅうきゅう」と発音している。
  4. ^ 病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(2020年1月に中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたもの)であるものに限る。
  5. ^ "L type, which might be more aggressive and spread more quickly." doi:10.1093/nsr/nwaa036 の"ABSTRACT"より。
  6. ^ 疑似症とは「感染症を疑わせるような症状のうち、集中治療その他これに準ずるものが必要であり、かつ、直ちに特定の感染症と診断することができないと判断したもの」と定義される[141]
  7. ^ 例えば2月18日から3月11日までのPCR検査実施件数の総数は25,456件であったが、退院時の確認検査などは含まない場合は10,024件となる[143]
  8. ^ 日本の厚生労働省医薬・生活衛生局に相当。
  9. ^ 原文のsystematicはsystemicの間違い。
  10. ^ ラッセル音のこと。気管や気管支に異常があると、胸部聴診の際に聴こえる異常な肺音。→UMIN:患者状態項目 > 呼吸器症状の「肺雑音」を参照。
  11. ^ Covis Pharmaは、オランダバールンに本社、スイスツークに支社をもつ。親会社はファンド会社のアポロ・グローバル・マネジメント(本社、ニューヨーク[236]
  12. ^ 西川伸一訳による[315]
  13. ^ 「分子標的薬などで本来の標的(on-target)とは異なる別の分子(off-target)を阻害,あるいは活性化してしまう効果」off-target効果実験医学online.
  14. ^ 日本の死者45万人を患者2300万人で割ると、0.01956...となり四捨五入で0.02.[403]
  15. ^ 日本の死者5,700人を感染者300万人で割ると、0.0019...となる[404]
  16. ^ 専門家会議の見解における「換気の悪い密閉空間」とは、一般的な建築物の空気環境の基準を満たしていないことを指すものと考えられる。その意味では、ビル管理法の基準に適合させるために必要とされる換気量(一人あたり必要換気量約 30m3 毎時)を満たせば、「換気の悪い密閉空間」には当てはまらないと考えられる。→「商業施設等における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について」の「P.4」を参照。厚生労働省2020年3月30日

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]

分類
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