トイレットペーパー騒動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
騒動の勃発地となった千里大丸プラザ
(現:ピーコックストア千里中央店)

トイレットペーパー騒動(トイレットペーパーそうどう)とは、1973年昭和48年)に、オイルショックをきっかけとする物資不足がされたことにより、日本各地で起きたトイレットペーパー買い占め騒動である。

経緯[編集]

1973年昭和48年)10月16日第四次中東戦争を背景に、中東原油産油国が、原油価格70%引き上げを決定したため、当時の田中角栄内閣中曽根康弘通商産業大臣が「節約の呼びかけ」を10月19日に発表した[1]

このため、10月下旬には「紙がなくなる」という噂が流れ始め、同年11月1日午後1時半ごろ、千里ニュータウン大阪府)の千里大丸プラザ(現:ピーコックストア千里中央店オトカリテ内)が、特売広告に「(激安の販売によって)紙がなくなる!」と書いたところ、300人近い主婦の列ができ、2時間のうちにトイレットペーパー500個が売り切れた。

その後、来店した顧客が広告の品物がないことに苦情を付けたため、店では特売品でないトイレットペーパーを並べたが、それもたちまち売り切れ、噂を聞いた新聞社が「あっと言う間に値段は二倍」と新聞見出しに書いたため、騒ぎが大きくなり、騒動に発展した。

当時は第四次中東戦争という背景もあり、原油高騰により『紙が本当に無くなるかもしれない』という集団心理から、各地に噂が飛び火し、長い行列が発生したため、マスメディアにも大きく取り上げられ、パニックは全国に連鎖的に急速拡大した。高度経済成長で大量消費に慣れていた日本人が、急に「物不足の恐怖」に直面したために起こったパニックとも言われる。パニックの火付け役は、新聞の投書だとする説もある[誰によって?]

ただ、この当時、日本の紙生産は安定しており、実際には生産量自体は同流言飛語が全国的に広まるまで、ほとんど変わっておらず、パニックが発生した後は、むしろ生産量の増加も行っていた[要出典]

マスメディアの報道や流言飛語によって、不安に駆られ、高値で沢山のトイレットペーパーを買った消費者は、山積み保管していた。

それまでトイレットペーパーは、主に特売用商品(消費者を商店に足を向けさせ、客足の増加を見込む)として扱われていたが、一変して定価どころか、倍の値段をつけても売れたという。このため商店は在庫確保に奔走、結果として問屋在庫すら空になった。

ある卸し売り商店では、買い溜めに走った主婦が、従来は一般商店向けに卸されていた段ボール箱にはいったままの大きなパッケージ単位で買い漁った事から、一般商店が仕入れる商品まで品不足となった。このような連鎖的現象により、最初の内こそ楽観視していた人までもが、実際に店頭からトイレットペーパーが消えたため確保に走ったといい、小売店では、店頭にトイレットペーパーが並ぶや否や客が押し掛け、商品を奪い合う人すら見られた。百貨店では、余りの混雑ぶりに、トイレットペーパー販売のたびに迷子も多数発生した。

また影響は、トイレットペーパーにとどまらず、洗剤(洗剤パニック[2])や砂糖などの他の日用品にも波及した[1]

日本国政府は、国民に買い溜め自粛を呼びかけたが、あまり効果はなかった。そこで政府は11月12日に、トイレットペーパー等の紙類4品目を生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律に基づく特定物資に指定し、翌1974年(昭和49年)1月28日には、国民生活安定緊急措置法の指定品目に追加し、標準価格を定めた。3月になると騒動は収束、在庫量も通常水準に回復した。

日本の歴史において、文部科学省検定済教科書やニュース写真では、騒動の様子が「オイルショックを象徴する一場面」として紹介されている。

その後のトイレットペーパー買い占め騒動[編集]

東日本大震災[編集]

東京都内のスーパーマーケット。(2011年3月16日撮影)

2011年平成23年)3月に発生した東北地方太平洋沖地震東日本大震災)では首都圏を中心にトイレットペーパーをはじめとする生活物資の買い貯めを行う動きが起きた[3]

新型コロナウイルスの流行[編集]

店頭の紙製品が品切れとなった、東京都内の店舗。(2020年2月29日撮影)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行が発生した2020年令和2年)2月に「トイレットペーパーは中国で製造・輸入しているため、新型コロナウイルスの影響でこれから不足する」といったデマ九州地方から発生し、SNSテレビによって広がり[4][5][6]、全国各地の小売店でトイレットペーパーやティッシュペーパーキッチンペーパー生理用ナプキンが品切れになる店舗が続出した[7]。後に日本製紙連合会日本国政府が「トイレットペーパーは、殆どが(日本)国内で製造しており、在庫は十分にある」と否定する事態になった[6][8]

世界でも類似する誤情報がインターネット上に流れ、台湾香港シンガポールでは日本よりも先行して買い占め騒動が発生した[9][10][11]

その後、感染が拡大して、新型コロナウイルスによる死亡者が確認されたことを受けて、オーストラリアアメリカでもトイレットペーパーや消毒用アルコールなどが小売店から売り切れる現象が発生している[12][13]

自主隔離や物資不足への懸念から、イギリスインドネシアなどでも買い占め現象が発生しており、世界各国に広がりつつある[14][15]

日本製紙連合会によると、トイレットペーパーやティッシュペーパーなど衛生用紙の2020年3月国内出荷量が、前年同月比27.8%増の20万522トンになり、統計開始した1989年以来単月で過去最高となった。これまでの最高は2005年12月の17万8,535トンだった[16][17]

出典[編集]

  1. ^ a b “佐賀新聞創刊125周年タイムトリップ1973(昭和48)年”. 佐賀新聞. http://www1.saga-s.co.jp/koremade/timetrip/47/01.html 2018年6月18日閲覧。 
  2. ^ 石けん基礎知識 石鹸洗剤の基礎(2) 日本石鹸洗剤工業会
  3. ^ デマで買い占めに走る人が何とか拭いたい恐怖”. 東洋経済新報(2020年3月2日作成). 2020年3月5日閲覧。
  4. ^ “「志村さん死去で危険認識」最多”. 読売新聞. (2020年5月8日) 
  5. ^ トイレットペーパー、発注増で卸困惑 新型コロナで誤情報”. 日本経済新聞(2020年2月28日作成). 2020年3月5日閲覧。
  6. ^ a b トイレットペーパーに続きティッシュまで買い占め 業界、デマに冷静な対応呼びかけ”. 毎日新聞(2020年2月28日作成). 2020年3月1日閲覧。
  7. ^ 店頭で品切れ相次ぐ トイレットペーパー、「在庫は十分」”. 時事通信(2020年3月1日作成). 2020年3月5日閲覧。
  8. ^ 【新型肺炎】首相、トイレットペーパー「十分在庫ある」”. 産経新聞 (2020年2月29日). 2020年3月1日閲覧。
  9. ^ 動画:トイレットペーパー不足のうわさ拡散、香港で買い占め騒動”. AFP BB NEWS (2020年2月6日). 2020年3月1日閲覧。
  10. ^ シンガポールで買いだめ騒動、新型ウイルスの警戒レベル引き上げで”. AFP BB NEWS (2020年2月8日). 2020年3月1日閲覧。
  11. ^ 店頭からトイレ紙消える 「マスク製造で原料不足に」誤情報拡散/台湾”. 中央通訊社(2020年2月10日作成). 2020年3月1日閲覧。
  12. ^ 新型コロナウイルスパニックによるトイレットペーパーや消毒剤の買い占めが海外でも発生、闇市場が形成される可能性も”. GIGAZINE(2020年3月4日作成). 2020年3月6日閲覧。
  13. ^ 海外でもトイレットペーパーなど買いだめの動き”. 日本放送協会(2020年3月5日作成). 2020年3月6日閲覧。
  14. ^ 世界各地で買い占め・転売 トイレットペーパー、マスク、食品……コロナ懸念で棚から消える”. NewSphere(2020年3月5日作成). 2020年3月14日閲覧。
  15. ^ 「パニックにならないで」 英でもトイレットペーパー買い占め、供給は十分と”. BBC News(2020年3月11日作成). 2020年3月14日閲覧。
  16. ^ トイレ紙など衛生紙出荷、3月過去最高 品薄騒動で”. 日本経済新聞(2020年4月21日作成). 2020年4月26日閲覧。
  17. ^ トイレ紙、ティッシュ 出荷、過去最高に 3月、買い占め影響”. 四国新聞(2020年4月22日作成). 2020年4月26日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]