新型コロナウイルス感染拡大による東京オリンピック・パラリンピックへの影響

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
東京オリンピックのボクシング競技会場となる国技館(2020年5月)

2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックは、もともと2020年令和2年)の7月24日から8月9日と8月25日から9月6日にかけてそれぞれ開催される予定だった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)世界的流行により、2020年3月24日、日本の首相安倍晋三国際オリンピック委員会(IOC)会長のトーマス・バッハが電話会談を行い、1年程度日程を延期して2021年夏までに開催することに合意し、直後に実施されたIOC理事会で決定した[1][2][3]

2020年3月30日、IOCと大会組織委員会東京都日本政府は、オリンピックの日程を2021年(令和3年)7月23日から8月8日、パラリンピックについても同年8月24日から9月5日に開催することで合意した[4]。開催の延期は近代オリンピック史上初めてのことである。

大会延期の決定まで[編集]

感染症の流行[編集]

2020年1月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生により大会の競技者や訪問者が受ける潜在的な影響について懸念が持ち上がった[5]。その近年の大会でも国際オリンピック委員会(IOC)は感染症の脅威に対処していたが[6]2016年リオデジャネイロオリンピック時のジカ熱の場合と異なり、SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)はヒトから直接感染する可能性があり、また2010年バンクーバーオリンピック時の新型インフルエンザの場合と比べ、COVID-19の致死率は高く、有効なワクチンも2020年12月まで承認されたものは無かった。

IOC委員のディック・パウンドは、2020年2月に「開催の可否は2020年5月までに決まる」と発言し[7]、その後の会見で「1年延期」の可能性があると言及している[8]。IOCは2020年3月17日に臨時の理事会を開き、東京大会について予定通りの開催に向けて準備を進める考えを示したが[9]、2日後の19日にはIOCのトーマス・バッハ会長が米ニューヨーク・タイムズの取材に対して「もちろん違うシナリオは検討している」と述べた[10]

開催1年延期の決定[編集]

2020年3月24日夜(日本時間)、日本の首相である安倍晋三は首相公邸にて、IOC会長のトーマス・バッハとオリンピックの開催延期について電話会談した。安倍は2021年の開催を提案し、バッハがこれに理解を示した[11]。また、会談に同席した東京都知事の小池百合子は、その後の記者会見で、大会名称は「TOKYO 2020」のまま変更がないことも確認されたと発言した[12]。これらの直後に実施されたIOC理事会で延期が決定した。

開催時期については猛暑を避けて春季に開催する案も出ていた[13][14]。春季開催は大型スポーツイベントとのバッティングが少なく、当初懸念されていた猛暑の問題も解決できるとされた。しかし感染症終息までの期間や予選日程などを考慮し、当初の日程をほぼ1年スライドさせる7月の開催で最終調整が行われた[13][15]。なお一部では当初の日程をほぼ2年スライドさせた2022年(令和4年)夏に開催する案も出ていた[16]

2020年3月30日、大会組織委員会、IOC、東京都、日本政府は2021年7月23日に東京大会を開会することで合意した[17]。延期は近代オリンピック史上初で、奇数年に開催されるのも初めてのことである。

選手と競技[編集]

テニス会場前の検温、感染症対策
  • 延期後の開催期間と重なる2021年7月15日から7月25日には、アメリカ・バーミングハムでIOC後援国際総合競技大会・ワールドゲームズ2021の開催も予定されていた。東京オリンピックでも実施されるソフトボール空手スポーツクライミングが競技・種目構成に含まれていた。ワールドゲームズ2021は2022年7月7日から17日開催に延期された[18]。東京オリンピックと異なり、呼称もワールドゲームズ2022に変更となった。
  • また、2021年世界陸上競技選手権大会(2021年8月6日-8月15日)や2021年世界水泳選手権(2021年7月16日-8月1日)も、大会日程が延期後の開催期間と重なることから、それぞれ約1年延期され、呼称も2022年世界陸上競技選手権大会(2022年7月15日-7月24日)2022年世界水泳選手権(2022年5月13日-5月29日)に変更された。
  • 2024年パリオリンピックの追加種目に内定しているスケートボード、サーフィン、スポーツクライミングについて東京オリンピックでの実施状況を見て2020年12月のIOC理事会で最終決定する予定だった。最終決定の締切はオリンピック憲章によれば2021年7月である。
  • 延期決定以前はオリンピックにおけるボクシング競技やその国際競技連盟であり資格停止中のAIBAの将来について東京オリンピック終了後にIOCで決定する計画であった。

聖火リレー[編集]

聖火の採火式は2020年3月12日にギリシャオリンピアで行われたが、1984年ロサンゼルス大会以来の無観客で実施された[19]。ギリシャ国内で予定されていたリレーは、翌13日の途中から中止となった[20]

同月日本に到着した聖火は国内リレーに先立ち宮城、岩手、福島で「復興の火」として展示されたが、その最終日を前に大会の延期が決定[21]。2020年3月26日に予定されていたリレーのグランドスタートが凍結された。聖火は日本に残り、2020年9月から日本オリンピックミュージアムにて展示され、11月からは14道府県の73市町村で巡回展示されることとなった[22]

経費[編集]

2020年12月、東京2020大会の延期と感染症対策にかかる追加費用2940億円のうち、東京都が1200億円、大会組織委員会 (TOCOG) が1030億円、国が710億円を負担することで合意した。大会経費は感染症流行前の試算から22%増の1兆6440億円となった[23]

経済損失[編集]

東京大会が1年延期された場合の経済効果の損失は6408億円に上るという推計が大学の専門家から出された。中止となった場合は、大会の運営費や観客の消費支出が失われるなど、4兆5151億円の経済損失があると推計された[24]

延期決定後[編集]

  • 2020年6月4日、日本政府や東京都が、大会時の感染予防策として、選手を含む大会関係者や観客へのPCR検査の実施や、観客の削減や開閉会式の簡素化など、運営方式の簡素化などを検討している事が発表された[25]。同時に、開幕1年前の大規模イベントを見送る方針であることも発表された[26]
  • 2020年9月7日、IOC副会長のジョン・ダウリング・コーツは感染症の流行状況に関わらず、予定通り大会を開催すると語った[27]。しかし、9月9日、IOC会長のバッハはコーツの発言について「文脈をみなければならない」とし、「コーツ氏は全ての参加者にとって安全安心な環境で大会を行うという原則で取り組んでいる」と述べ「大会に関わる全ての人にとって安全安心な環境で実現する」とする従来の見解を改めて強調した[28]
  • 2021年1月16日、海外メディアが東京オリンピック・パラリンピックの中止に相次いで言及していると報道された。米ブルームバーグ通信と米有力紙ニューヨーク・タイムズは15日、「第二次世界大戦以来、最初の中止となる可能性がある」と報じた。また、日本国内に緊急事態宣言が発出された1月7日にはAP通信が「ウイルスの急速な広がりが五輪の計画を危うくしている」と報じていることなどを挙げ、「中止や再延期を否定するIOC、政府、組織委と国内世論との温度差を指摘する報道が目立っている」とした[29][30]
  • 2021年1月21日、世界最古の日刊新聞である英タイムズ紙は、日本政府が新型コロナウイルスの感染拡大で、東京五輪・パラリンピックを中止せざるをえないと非公式に結論づけたと報じた。また、「現在の焦点は次に開催枠が空いている2032年の五輪大会を確保することにある」とも報じている。しかしながら、これら一連の報道に対し、坂井学官房副長官は22日の記者会見で「そのような事実がないということをきっちり否定させていただきたい」と強調し、タイムズの報道を否定した。また、オーストラリアと米国の五輪委員会は22日、予定通り五輪の準備を進めていると表明し、米オリンピック・パラリンピック委員会は「五輪が予定通りに実施されないとの情報は受け取っていない」とTwitterで表明した[31][32][33]
  • 2021年2月2日、東京五輪組織委員会の森喜朗会長は、今夏の開催について「私たちはコロナがどういう形であろうと必ずやる」と明言し、さらに「一番大きな問題は世論とコロナ」「やるか、やらないか、という議論ではなく、どうやるか」などと語った。これに対し、オーストラリアのen:News.com.auは「五輪組織委員会が、東京に巨大な中指をおっ立ててみせた」と報じ[34]、フランスのAFP通信も「大会を開催するという絶対的な決意表明の協調努力は、日本の人々に対する顔面への平手打ちだ。」と報道するなど、海外メディアが大きくかみついた[35]
  • 2021年4月6日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)体育省は「新型コロナウイルスによる世界的な保健の危機状況から選手たちを守るため」を理由として、大会への参加を断念することを発表した[36]。IOCには北朝鮮が大会出場を取り止める正式な通知が届いていないとして、体育省に対し、事実確認を含む話し合いを模索してきたが、「(北朝鮮が獲得している)出場枠の再振り分けを行うタイムリミットが来ている」として、同年6月8日に不参加を事実上容認することを発表した。その他の国は予定通り参加したため、新型コロナウイルスを理由とした不参加を表明した唯一のケースになった。なお、北朝鮮が夏季五輪不参加となるのは1988年のソウルオリンピック以来である[37][38]
  • 2021年5月28日、4月以降にオリンピック・パラリンピックの大会関係者や選手らが入国し、そのうち87%にあたる1432人は政府が入国者に求める2週間の待機を免除したことが判明した。通常の入国者は自宅や宿泊施設で2週間待機する事が必要だが、選手やコーチ、審判などの大会関係者は、待機期間を短縮する例外措置が適用される[39]
  • 2021年5月25日、公衆衛生専門家らによる「緊急提言、五輪参加者をコロナから守るためのリスク管理」と題する論文が世界的な医学雑誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンのウェブ版に掲載された[40]。この論文では、「国際オリンピック委員会(IOC)の開催決意は最善の科学的根拠に欠ける」と断じ、IOCのコロナ対策指針(プレーブック)と本来取るべき方策とが比較された[41]。なお、丸川珠代五輪担当大臣は「論文ではアスリートへの検査頻度が明確ではないとしているが、プレーブックにはアスリートに原則として毎日検査することが明示してある」などとして反論したが[42]、同論文で推奨しているのは「毎日の検査」ではなく「毎日のPCR検査」である。
  • 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会尾身茂会長は「今の状況で(大会開催を)やるのは普通はないわけだ。パンデミック(世界的大流行)の状況でやるのであれば、開催規模をできるだけ小さくして管理体制をできるだけ強化するのは主催者の義務だ」と述べた[43]。感染症対策の専門家らが五輪に関して発言を強めることに、政権幹部は「現場を知らない作文だ」などとしていら立ちを見せている[44]
  • 2021年6月18日、オリンピック・パラリンピックと感染拡大のリスク評価に関して、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長などの専門家が提言をまとめ、大会組織委員会の橋本会長と西村経済再生担当大臣に提出した[45]。無観客での開催が、感染拡大のリスクが最も低く「望ましい」としている[46]
  • 2021年6月23日、選手村の村長を務める川淵三郎はインタビューで「(オリンピックを)返上すれば、『日本人は意気地がない、気概がないのか』と、世界から蔑視される可能性がある。国を挙げた努力もしなかったという汚名が何十年、百年以上残る。」と、開催に消極的な国内世論を批判した[47]

観客の有無[編集]

「無観客」選挙旗、2021年6月27日

東京オリンピックは、大会の根幹とも言える観客の扱いが開幕直前になって二転三転する異例の事態となった[48]

2021年3月20日、5者協議を行い、日本側が「世界のコロナ禍の状況を考慮して海外観客の日本への受け入れは断念する」ことを、国際オリンピック委員会(IOC)国際パラリンピック委員会(IPC)に伝えた[49]。海外客受入断念による経済的打撃は大きく、2360億円の損失になるとの試算も発表されている[50]

5者は6月下旬の会議で、緊急事態宣言が出るか蔓延防止等重点措置が延長された場合には、「無観客も含めた対応を基本とする」と合意したものの、観客を入れるか否かの最終的な判断は先送りとした[51]

7月に入っても観客の有無すら決まらない状態であった[52]。観客数の上限は6月21日の5者協議で、政府方針に合わせて「最大1万人」と決定したはずだった。上限を超える枚数を販売した時間帯ではチケットを再抽選し、6日未明に結果を通知するはずだったが、無観客を推す意見が高まったことで、抽選結果の発表を先送りする可能性も浮上している[52]。7月上旬まで関係者内では、複数のシナリオが検討されており、あくまで観客を入れる案が基本線であった[53]

2021年7月8日、1都3県の会場では無観客と5者会議で決定した。政府や東京都、組織委員会がギリギリまで模索した「有観客」の可能性は、混乱のうちに潰えた[51]。この時点では1都3県に含まれない、宮城・福島・静岡・北海道の会場では観客を入れると決定していた[54]。茨城県についても1都3県に隣接していることから観戦客を入れるのは困難だとし、一般客の入場を断念し、学校連携プログラムで参加を希望している一部の県内学校のみの受け入れとなった[55][56]。しかし、翌9日には組織委員会は一転して、北海道での競技も無観客で開催すると発表した[57]。北海道は組織委員会に対して、1都3県の住民が観戦しないように求めていたが、組織委から実効性を担保する対策は示されなかった[58]。知事の鈴木直道は「道民の安全・安心を最優先した」と方針転換の理由を話した[58]。さらに翌10日には、組織委員会は福島県での競技も無観客で開催すると発表した[48]

2021年8月16日、東京オリンピック終了後までペンディングにされていた東京パラリンピックの観客の扱いについて政府・東京都・組織委員会・IPCの4者による協議が行われ、競技の全会場を無観客とすることが決まった[59]

無観客開催で警備費が縮減され、来日する大会関係者を絞ることで宿泊・輸送費を減らすなどの簡素化に努めたことから、292億円減額された。負担の内訳は組織委が6404億円、東京都が5965億円、国が1869億円[60]

ワクチン[編集]

もともと、東京大会はCOVID-19ワクチンを接種することを前提とせず準備を進めている。2021年2月には丸川珠代五輪担当相が「ワクチン接種を前提としなくても安全安心な大会を開催できるよう、総合的な感染症対策の検討を進めている」と答弁し[61]、大会組織委員会も同様の立場を強調してきた[62]

オリンピック・パラリンピックに出場する日本選手に優先接種するかについても、4月9日時点では、丸川珠代・橋本聖子ともに「全く検討していない、これから先も検討と行う予定はない」と否定していた[63][64]

6月1日には、日本選手団への新型コロナウイルスのワクチン接種が本格的に始まった。国内では「優先接種」との批判の声も上がり、選手らは困惑していた[65]。記者会見では、報道陣に対してワクチンに関して選手に質問しないように要請する競技団体もあった[65]

大会のボランティア7万人にCOVID-19ワクチンを接種することが決まった。しかし、モデルナ社製のワクチンの1回目の接種が始まるのは6月30日からであり、多くの人は2回の接種を経て十分な免疫を得るのが大会期間に間に合わない[66]。この点を指摘された丸川珠代は、「そもそもが、ワクチン接種を前提としない中で安全な大会を運営できるよう準備を進めてきた。1回目の接種でまず1次的な免疫を付けてもらうということ」と説明した[66]。厚生労働省のホームページにはモデルナ社・ファイザー社のワクチンとも「2回の接種が必要」と明記していて、「一次的な免疫」ができるなどという記述はない[67]

感染対策[編集]

2021年7月19日の野党ヒアリングにおいて、大会組織委員会が東京五輪で来日した大会関係者やメディア関係者に対し、入国後の隔離期間中であっても「15分以内の外出は許可する」との案内板を宿泊先に出していたことを政府は認めた[68]。宿泊先の案内板には「入国から14日間経過していないので、外出簿に『ルームナンバー、出発時間』を記載してください。15分以内に戻るようにお願いします」と記載されている[68]

東京オリンピック・パラリンピック選手等の感染対策として、東京医科歯科大学医学部附属病院を「東京オリンピック・パラリンピック指定病院」とした[69]

東京都の感染拡大と開催[編集]

7月15日に開かれた都のモニタリング会議では、「新規感染者の増加が今のペースで続けば、五輪閉幕直後の8月11日には1週間平均の感染者数が約2400人に達する」との試算が示された。だが、政府高官は「それくらいなら大丈夫。中止はない」と気に留めなかった[70]。さらに翌週の7月22日のモニタリング会議では、「新規感染者の増加が今のペースで続いた場合、2週間後の8月3日には1週間平均の感染者数が約2600人に達し、2週間を待たずに第3波をはるかに超える危機的な感染状況になる」と強い懸念が示された[71]。首相はどのような感染状況になれば中止を検討するのかといった、オリンピック開催に関する明確な判断基準を記者会見などで示していない[70]

複数の政府関係者や閣僚は、3度目の緊急事態宣言(2021年4月25日〜)の際に五輪の中止を進言したが、首相は取り合わなかったと証言している[72]。首相は孤立を深め、首相に直言する人はほとんどいなくなった[72]

オリンピック開始後[編集]

東京オリンピックは2021年7月21日に競技が開始された[73]。7月23日には開会式が無観客で実施された[74]

新型コロナウイルスの感染が、首都圏を中心に全国的に拡大傾向が続く中での開幕となり[75]、大会期間中の2021年8月4日に茨城県で290人[76]、5日に東京都で5,042人[77]埼玉県で1,235人[78]、6日に神奈川県で2,082人[79]千葉県で1,057人[80]とそれぞれ各開催都県において、過去最多の感染者数を記録。全国でも同月5日に過去最多となる15,192人の感染者が確認される事態となり[81]、日本政府は7月30日に開催都道県では既に緊急事態宣言が発令されている東京都に加え、8月2日から埼玉県と千葉県、神奈川県も対象地域を追加することや北海道にもまん延防止等重点措置を適用すること、8月5日に同月8日から福島県と茨城県、静岡県にも同重点措置の対象地域に追加することをそれぞれ決定した[82][83]。この措置は8月31日まで適用されるため、東京オリンピックに加え、東京パラリンピックについても緊急事態宣言下で開幕することになった[83][84]

感染対策、プレーブック[編集]

7月23日の開会式では、一部の国の選手団が入場行進の際にマスクを着用しなかった。大会組織委員会は、個別に注意しないことを明らかにしたが、IOCは「露骨な場合は何らかの措置を講じる」との警告を発した。プレーブック(規則集)では、マスクの常時着用を選手や大会関係者らに対して求めている[85][86]

また、7月24日には、JOCの会長の山下泰裕もマスクをせずに関係者と話しているのが確認された[87]。プレーブックに違反するこの行為について、組織委は「どう対処したか把握していない」として説明を拒んだ[88]

7月25日、IOCは新型コロナウイルス感染防止策の一部を緩和し、表彰台において、時間制限付きでマスクを外しての写真撮影やマスク着用での集合写真を認めることを発表し、即日適用された[89][90]

7月27日の深夜、ジョージア代表の柔道選手が東京タワー周辺を観光していたことを同月29日付の日刊ゲンダイが報じた[91]。その後、大会組織委員会は同月31日に選手村から観光目的で無断外出したとして、大会関係者2人の大会参加資格証を剥奪したことを発表した。所属国などの詳細は明らかにしなかったが、同日にジョージア・オリンピック委員会の広報担当が資格を剥奪されたのが同国の柔道男子選手2人であることを明らかにしたため、この報道を事実上認める形となった。なお、資格を剥奪された選手2人は発表時点で既に日本を出国している。また、この2人は大会において、銀メダルを獲得しているが、大会組織委員会はメダルについての剥奪処分は行わないとしている[92][93]

オリンピック・パラリンピック終了後[編集]

  • 東京都知事小池百合子は2021年9月10日の定例記者会見で「東京オリンピック・パラリンピックの開催が新型コロナウイルスの感染爆発につながるというのは結果的になかった」と大会終了時点での認識を示した[94]。また、その上で「オリ・パラの開催が感染を増やすと言っていた方はエビデンス(根拠)を示していただきたい」と強気の攻勢で語った[95]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ 東京五輪・パラ、「1年程度」の延期決定 「東京2020」の名称は維持”. BBC NEWS (2020年3月24日). 2020年3月25日閲覧。
  2. ^ 安倍総理大臣、森会長、バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長との電話会談について”. TOKYO 2020 (2020年3月24日). 2020年3月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月17日閲覧。
  3. ^ 莫大な追加費用はどこが負担? IOC守る「不平等条約」 東京オリンピック延期”. 毎日新聞 (2020年3月25日). 2020年3月25日閲覧。
  4. ^ 東京五輪、21年7月23日〜8月8日開催へ 日本経済新聞 (2020年3月30日)
  5. ^ Swift, Rocky (2020年1月23日). “Coronavirus spotlights Japan contagion risks as Olympics loom” (英語). Reuters. オリジナルの2020年1月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200124225619/https://www.reuters.com/article/us-olympics-2020-china-virus/coronavirus-spotlights-japan-contagion-risks-as-olympics-loom-idUSKBN1ZM0YJ 2021年5月6日閲覧。 
  6. ^ García-Hodges, Ahiza; Talmazan, Yuliya; Yamamoto, Arata (2020年3月24日). “Tokyo 2020 Olympics postponed over coronavirus concerns”. https://www.nbcnews.com/news/world/tokyo-2020-olympics-postponed-over-coronavirus-concerns-n1165046 2021年5月6日閲覧。 
  7. ^ IOC委員、東京五輪開催の判断「5月下旬が期限」”. 読売新聞. 2020年3月2日閲覧。
  8. ^ “IOCパウンド委員 東京オリンピック「1年延期」に言及 新型肺炎”. 毎日新聞. (2020年2月27日). https://mainichi.jp/articles/20200227/k00/00m/050/126000c.amp 2020年3月2日閲覧。 
  9. ^ 日本放送協会 (2020年3月18日). “IOC オリンピック予定どおり開催へ 準備進める考えを確認”. NHKニュース. 2020年3月22日閲覧。
  10. ^ 五輪「違うシナリオは検討」 IOCのバッハ会長(写真=ロイター)”. 日本経済新聞 電子版 (2020年3月20日). 2020年3月22日閲覧。
  11. ^ livedoor NEWS
  12. ^ 日刊スポーツ
  13. ^ a b 急浮上した五輪の春開催案 暑さ解消? 「寒い」の声も:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2020年3月27日閲覧。
  14. ^ 東京五輪、複数の国際競技連盟が春開催を希望…IOC臨時会議”. 読売新聞オンライン (2020年3月27日). 2020年3月27日閲覧。
  15. ^ 五輪開幕、来年7月で調整 IOCと東京都・組織委 産経ニュース (2020年3月28日)
  16. ^ 消えた「五輪2年延期、中止論」 1年延期決定の舞台裏”. 朝日新聞デジタル. 2021年7月21日閲覧。
  17. ^ NHKニュース
  18. ^ 2021 WORLD GAMES POSTPONED TO 2022 TO ACCOMMODATE OLYMPIC MOVE”. SwimSwam. 2020年6月25日閲覧。
  19. ^ “<東京2020>聖火採火式 無観客に ギリシャ”. 東京新聞. (2020年3月10日). https://www.tokyo-np.co.jp/article/22556 
  20. ^ “ギリシャで聖火リレー中止 新型コロナで五輪委”. 日本経済新聞. (2020年3月13日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56790760T10C20A3000000/ 2021年3月28日閲覧。 
  21. ^ “「復興の火」一般公開最終日 当面は福島で保管”. 日本経済新聞. (2020年3月25日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57215840V20C20A3CC1000/ 2021年4月3日閲覧。 
  22. ^ “五輪聖火、本県で来年2月に展示 妙高、小千谷、加茂、新潟、胎内で”. 新潟日報. (2020年10月27日). https://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20201027577411.html 2021年4月3日閲覧。 
  23. ^ “東京五輪の追加経費は2940億円 東京都1200億、新型コロナで税収減「簡単に出せない」”. 東京新聞. (2020年12月5日). https://www.tokyo-np.co.jp/article/72479 
  24. ^ “東京五輪・パラ 1年延期の経済損失 6400億円余 専門家試算”. NHK. (2020年3月23日). https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200323/k10012345211000.html 
  25. ^ 『北日本新聞』2020年6月5日付1面『五輪簡素化を検討』より。
  26. ^ 『北日本新聞』2020年6月5日付1面『開幕1年前催し見送り』より。
  27. ^ 【新型コロナ】インド感染者数、世界2位に-東京五輪は開催とIOC(Bloomberg、2020年9月7日)
  28. ^ 細川倫太郎 (2020年9月10日). “東京五輪「安全安心の環境で」 IOCバッハ会長”. 日経電子版. 日本経済新聞. 2020年9月11日閲覧。
  29. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2021年1月16日). “東京五輪コロナ理由に中止の可能性 米NYタイムズ報道”. 産経ニュース. 2021年1月16日閲覧。
  30. ^ 東京五輪 海外紙中止言及相次ぐ 理由に「開催国のサポート喪失」と米ブルームバーグ”. デイリースポーツ. 2021年1月16日閲覧。
  31. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2021年1月22日). “日本「五輪中止」非公式に結論と英紙報道、2032年目指す”. 産経ニュース. 2021年1月22日閲覧。
  32. ^ “政府、東京オリンピック中止報道を否定 官房副長官「そのような事実ない」”. 毎日新聞. (2021年1月22日). https://mainichi.jp/articles/20210122/k00/00m/010/073000c 2021年1月22日閲覧。 
  33. ^ Staff, Reuters (2021年1月22日). “日本政府、コロナのため五輪中止が必要と非公式に結論=タイムズ紙”. Reuters. https://jp.reuters.com/article/olympics-japan-covid-idJPKBN29Q35U 2021年1月22日閲覧。 
  34. ^ Olympics organisers give giant middle finger to Tokyo” (英語). NewsComAu (2021年2月3日). 2021年2月4日閲覧。
  35. ^ 【東京五輪】森喜朗会長の「必ず開催」発言に世界メディアあぜん「日本の人々に対する顔面への平手打ち」”. 中日スポーツ・東京中日スポーツ. 2021年2月4日閲覧。
  36. ^ 日本放送協会 (2021年4月6日). “北朝鮮 東京オリンピック不参加の方針 新型コロナを理由に”. NHKニュース. 2021年8月1日閲覧。
  37. ^ IOC、北朝鮮の五輪出場枠を振り替えへ…不参加の正式通知ないが「これ以上待てない」”. 読売新聞 (2021年6月9日). 2021年8月1日閲覧。
  38. ^ 北朝鮮の東京五輪不参加、IOCが容認 話し合い進まず”. 朝日新聞 (2021年6月9日). 2021年8月1日閲覧。
  39. ^ オリパラ関係者1432人、2週間待機を免除 4・5月”. 朝日新聞デジタル. 2021年5月29日閲覧。
  40. ^ Sparrow, Annie (2021-07-01). “Protecting Olympic Participants from Covid-19 - The Urgent Need for a Risk-Management Approach”. The New England journal of medicine 385 (1): e2. doi:10.1056/NEJMp2108567. PMID 34033274. 
  41. ^ 「五輪安全性に疑義」波紋広げる米専門家集団の寄稿”. 2021年8月14日閲覧。
  42. ^ 丸川氏、コロナ対策で米医学誌に反論「事実誤認や誤解」”. 2021年8月14日閲覧。
  43. ^ 五輪開催「今の状況でやるのは普通はない」と尾身氏、選手村への酒持ち込みも疑問視”. 東京新聞 TOKYO Web. 2021年6月18日閲覧。
  44. ^ 尾身氏らの発言は「現場知らぬ作文」 五輪開催狙う政権いら立つ”. 毎日新聞. 2021年6月18日閲覧。
  45. ^ 日本放送協会. “尾身会長ら提言 五輪無観客望ましい 入れるなら厳しい基準で”. NHKニュース. 2021年6月22日閲覧。
  46. ^ 五輪無観客、望ましい 尾身氏ら、国・組織委に提言”. 毎日新聞. 2021年6月22日閲覧。
  47. ^ 五輪選手村・川淵村長単独インタビュー 開催消極的な世論に疑問、成功させて“努力の証”に”. Sponichi Annex. 2021年6月24日閲覧。
  48. ^ a b 日本放送協会. “五輪 福島県の会場も一転 無観客に ソフトボールと野球”. NHKニュース. 2021年7月11日閲覧。
  49. ^ 東京2020大会における海外観客について”. 東京2020. 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 (2021年3月20日). 2021年3月23日閲覧。
  50. ^ どうなる五輪招致の意義 海外客ゼロなどで経済損失1兆6258億円、ボランティア意欲低下…”. 東京新聞 TOKYO Web. 2021年3月24日閲覧。
  51. ^ a b 観客数、迷走の果て 世界から観客→「無観客覚悟」→上限1万人→無観客 東京五輪”. 朝日新聞デジタル. 2021年7月9日閲覧。
  52. ^ a b 強まる東京五輪「無観客開催」論 感染再燃、消えぬ中止の声恐れ”. 毎日新聞. 2021年7月2日閲覧。
  53. ^ 日本放送協会. “東京オリンピック “無観客”決定までの舞台裏”. NHKニュース. 2021年7月9日閲覧。
  54. ^ 日本放送協会. “五輪 北海道でのサッカー“無観客”開催を決定 道の意向で一転”. NHKニュース. 2021年7月11日閲覧。
  55. ^ 茨城のカシマ、五輪観客は昼の学校関係者のみ”. 日本経済新聞 (2021年7月9日). 2021年8月12日閲覧。
  56. ^ 東京五輪、学校連携プログラムで小学生ら現地観戦”. 日本教育新聞 (2021年8月2日). 2021年8月12日閲覧。
  57. ^ 日本放送協会. “五輪 北海道でのサッカー“無観客”開催を決定 道の意向で一転”. NHKニュース. 2021年7月11日閲覧。
  58. ^ a b 北海道も一転無観客に 組織委が対策示せず 道知事「安全最優先」”. 毎日新聞. 2021年7月11日閲覧。
  59. ^ 東京パラ、全会場で原則無観客 政府、組織委など4者決定〔パラリンピック〕」『』、2021年8月16日。2021年8月16日閲覧。
  60. ^ 東京五輪の経費1兆4238億円、試算より292億円減…無観客での警備費縮減などで”. 読売新聞オンライン (2022年6月21日). 2024年3月9日閲覧。
  61. ^ 丸川五輪相「接種前提とせず開催」ワクチン供給遅れでも”. 朝日新聞デジタル. 2021年7月3日閲覧。
  62. ^ 新型コロナ 「優先接種」選手戸惑い JOC、ワクチン来月初旬で調整”. 毎日新聞. 2021年7月3日閲覧。
  63. ^ 丸川五輪相「ワクチンを前提にしない大会を準備中」五輪・パラ選手への優先接種を否定”. 東京新聞 TOKYO Web. 2021年7月3日閲覧。
  64. ^ 日本テレビ. “橋本会長 現時点で、選手の優先接種を否定”. 日テレNEWS24. 2021年7月3日閲覧。
  65. ^ a b 東京オリンピックの分岐点:/13 開幕1カ月前「無観客に切り替えないと持たない」”. 毎日新聞. 2021年7月11日閲覧。
  66. ^ a b 丸川五輪相「1回目の接種で1次的な免疫」 ぞんざいな発言に批判”. 毎日新聞. 2021年7月3日閲覧。
  67. ^ 厚労省も使わない…丸川五輪担当相の「一次的な免疫」発言に批判殺到 2回目接種は必要ないの?”. 東京新聞 TOKYO Web. 2021年7月3日閲覧。
  68. ^ a b 五輪関係者「15分外出OK」謎ルール 政府が撤回要求”. 朝日新聞デジタル. 2021年7月19日閲覧。
  69. ^ [令和3年、文部科学省高等教育局長通知]
  70. ^ a b 五輪後、2400人感染も「それくらいなら大丈夫」 政府に開催中止の選択肢なし”. 東京新聞 TOKYO Web. 2021年7月21日閲覧。
  71. ^ 日本放送協会. “「第3波はるかに超える危機的状況も」東京都モニタリング会議”. NHKニュース. 2021年7月23日閲覧。
  72. ^ a b 孤立する首相 「五輪中止」再三の進言、取り合わず”. 朝日新聞デジタル. 2021年7月31日閲覧。
  73. ^ 日本放送協会. “オリンピック 21日から競技開始 ソフトボールとサッカー女子”. NHKニュース. 2021年7月25日閲覧。
  74. ^ 日本放送協会. “東京オリンピック開会式 大坂なおみ選手が聖火台点火【詳細】”. NHKニュース. 2021年7月25日閲覧。
  75. ^ 「最悪のタイミングで開幕」 感染拡大止まらず、病床逼迫の危険”. 毎日新聞 (2021年7月23日). 2021年7月25日閲覧。
  76. ^ 日本放送協会 (2021年8月4日). “茨城県 新型コロナ 1人死亡 290人感染確認 過去最多”. NHKニュース. 2021年8月5日閲覧。
  77. ^ 日本テレビ (2021年8月5日). “新型コロナ東京で5042人感染 過去最多”. 日テレNEWS24. 2021年8月5日閲覧。
  78. ^ 【速報】埼玉で1235人感染、1人死亡 過去最多を更新 4日の1200人を上回る”. 埼玉新聞 (2021年8月5日). 2021年8月5日閲覧。
  79. ^ 神奈川で新たに2082人感染 2千人を超えるのは初”. 朝日新聞 (2021年8月6日). 2021年8月6日閲覧。
  80. ^ 【新型コロナ詳報】千葉県内1057人感染 初の千人超え 死者1人、市川と千葉でクラスター”. 千葉日報 (2021年8月6日). 2021年8月6日閲覧。
  81. ^ 【速報】全国の新型コロナ感染者1万5000人超 過去最多を更新”. TBS NEWS (2021年8月5日). 2021年8月5日閲覧。
  82. ^ 緊急事態宣言、首都圏3県と大阪府の追加決定 2日から”. 朝日新聞 (2021年7月30日). 2021年7月31日閲覧。
  83. ^ a b 「経験したことがないような桁違いな増加」8県にまん延防止、分科会が了承”. 読売新聞 (2021年8月5日). 2021年8月5日閲覧。
  84. ^ 日本テレビ (2021年7月29日). “首都圏3県と大阪に8/2~31“宣言”へ”. 日テレNEWS24. 2021年7月31日閲覧。
  85. ^ 五輪開会式でルール違反のノーマスク 組織委は注意しない方針”. 毎日新聞 (2021年7月24日). 2021年7月25日閲覧。
  86. ^ マスク外し、「露骨なら措置」 IOCの五輪統括部長が強調〔五輪〕”. 時事通信 (2021年7月24日). 2021年7月27日閲覧。
  87. ^ JOC山下泰裕会長、柔道の会場でマスク無しの会話”. 朝日新聞 (2021年7月24日). 2021年7月25日閲覧。
  88. ^ 突き進むしかない五輪 東京は過去最多の感染者 医療逼迫懸念も”. 毎日新聞. 2021年7月28日閲覧。
  89. ^ IOC、表彰台でノーマスク容認 写真撮影で最大30秒”. 共同通信 (2021年7月25日). 2021年7月27日閲覧。
  90. ^ 五輪メダリストに朗報、表彰台で30秒上限にマスク非着用可に”. AFP通信 (2021年7月26日). 2021年7月27日閲覧。
  91. ^ “バブル崩壊”の証拠画像!柔道「銀」のジョージア代表ご一行が東京タワーに出没”. 日刊ゲンダイ (2021年7月29日). 2021年8月1日閲覧。
  92. ^ 柔道ジョージア代表2選手が追放 無断で選手村から外出し東京タワー観光”. スポーツニッポン (2021年8月1日). 2021年8月1日閲覧。
  93. ^ “【東京五輪】ジョージアの銀メダル選手2人、東京観光 規則違反で資格はく奪”. BBCNEWS JAPAN. (2021年8月1日). https://www.bbc.com/japanese/58044611 2021年8月1日閲覧。 
  94. ^ 小池知事 五輪と感染増は無関係 報道陣の質問に失笑「エビデンスお示しを」”. デイリースポーツ (2021年9月10日). 2021年9月11日閲覧。
  95. ^ 小池都知事、オリパラ「感染増やしてない」=赤字負担は国と協議”. 時事メディカル. 時事通信社 (2021年9月10日). 2021年9月11日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]