消毒用アルコール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
消毒用アルコール。

消毒用アルコール(しょうどくようアルコール、alcohol for disinfection)とは、医療分野で消毒に用いられる製剤のアルコール外用薬で、一般用医薬品の区分では、第3類医薬品である。

日本薬局方では、消毒用エタノール(しょうどくようエタノール、ethanol for disinfection)が規定されている[1]。それ以外の製品としては消毒用イソプロピルアルコール(しょうどくようイソプロピルアルコール、Isopropyl alcohol for disinfection)製品が市販されている。

アメリカ英語でRubbing alcohol USP、イギリス英語でSurgical spirit B.P.と呼ばれる。

機序[編集]

炭素数の少ないアルコール(低級アルコール)は容易に生体膜を透過する一方、中程度の濃度以上では両親媒性を持つために、細胞膜など脂質膜やタンパク質を変性させる生理作用を有する。そのような物理化学的作用を持つアルコールのうち、エタノールイソプロピルアルコール(正式な化学名は2-プロパノール)など、ヒトへの毒性が相対的に低いものが消毒用に利用される。

中程度の濃度以上のエタノールや2-プロパノールでは、具体的には、原核生物である細菌などに作用すると、タンパク質の変性や溶菌などの殺菌作用をあらわす。また、ヒトなどの局所作用として収斂作用が現れる。つまり、ある程度水が存在する状況では、アルコールが膜を変性すると共に、透過したアルコールなどが菌の内圧を高め溶菌などの作用をあらわす一方、高濃度ではタンパク質の構造水などの脱水作用が生じるため、変性作用が強く現れる。

つまりアルコール度数が高い物は、脱水作用により細胞膜など外膜に対して浸透圧による外圧が加わり、溶菌作用を減弱させるように作用する。したがって消毒用エタノールの濃度は、76.9〜81.4 vol%のエタノールが、殺菌として最も強い作用を表す。

製品[編集]

分子量がさほど変わらないエタノールと2-プロパノールとでは、消毒薬としての効力はさほど変わらず、いずれも容易に肝臓で代謝されるため、外用消毒薬としては両者の違いはほとんどない。幾分エタノールの方が急性毒性が低い。

日本では、純粋なエタノールに対しては酒税法により、医薬品原料段階で酒税が課税されるため、エタノールは租税面で不利となる。したがって消毒用エタノール製品では、酒税法上「変性アルコール扱い」となるように、2-プロパノールやユーカリ油が微量添加されたエタノールを利用したものや、2-プロパノールやベンザルコニウム塩化物との合剤にしたものも存在する。

このような変性アルコール製品は、純粋なエタノール消毒製品と比較した時、アレルギー感作や脱脂作用のリスクを考慮した場合、粘膜への接触や食器などへの消毒には不適当なものも存在する。なお、酒税が課せられている純粋なエタノール製品もある。

アルコール濃度が高い場合は、ゴムや樹脂を膨潤させて劣化させる性質を持つ。

成分[編集]

日本薬局方では、消毒用エタノールは以下のように規格が定められている。

酒税法の関係で、イソプロピルアルコールを添加したものは「消毒用エタノールIP」という規格になる。

出典[編集]

  1. ^ a b 無水エタノールと消毒用エタノール、どこが違うの?”. 健栄製薬. 2020年2月19日閲覧。

関連項目[編集]