富岳 (スーパーコンピュータ)

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富岳
Supercomputer Fugaku.jpg
スーパーコンピュータ「富岳」外観
稼働期間2021年 -
スポンサー文部科学省
運営者理化学研究所
所在地理化学研究所計算科学研究センター
アーキテクチャ
OS
メモリ32 GiB/ノード (HBM2)
ストレージ
  • 1.6 TB NVMe SSD/16ノード (第1階層)
  • 150 PB 共有ファイルシステム (第2階層)
  • クラウドストレージサービス (第3階層)
処理速度400+ PFLOPS (倍精度)
コスト1300億円[1]
ランキングTOP500: 1, 2020年6月
ウェブサイトwww.r-ccs.riken.jp/jp/fugaku
出典Fugaku System Configuration
PRIMEHPC FX1000(「富岳」と同様の構造のHPC。SC19にて)
2018年 SC18での「富岳」のデモブース。「京後継、ARMエコシステムの最先端」と書かれている。

富岳(ふがく、英語: Fugaku)は、理化学研究所の後継となる、日本スーパーコンピュータである。

2014年(平成26年)に開発開始、2020年(令和2年)より試行運用[2]、2021年(令和3年)に本格稼働した[3]。設置場所は兵庫県神戸市ポートアイランド理化学研究所計算科学研究センター。主要ベンダーは富士通[4]

2020年6月、11月[5][6][7]、および2021年6月のTOP500を含む4部門で1位となり3期連続の4冠を達成した。

名称[編集]

名称は2019年2月から4月まで公募を行い[8]、5月にポスト「京」ネーミング委員会により7案に絞られ、更に理化学研究所理事会議により「富岳」に決定された[9]。理化学研究所は「富岳」と決定した理由を以下と発表した。

「富岳」は"富士山"の異名で、富士山の高さがポスト「京」の性能の高さを表し、また富士山の裾野の広がりがポスト「京」のユーザーの拡がりを意味します。また"富士山"が海外の方々からの知名度も高く名称として相応しいこと、さらにはスーパーコンピュータの名称は山にちなんだ名称の潮流があること、また海外の方からも発音しやすいことから選考しました。 — 理化学研究所(2019年5月23日)[10]

なお富岳は京の最大100倍の性能を目指すことから、葛飾北斎の『富嶽百景』や太宰治の『富嶽百景』からの駄洒落(富岳100京)との説もある[11]

ハードウェア[編集]

富岳は富士通が開発したCPUであるA64FXを搭載している。このCPUは、フロントエンドをARMv8.2-Aベースに新たな拡張であるSVE(Scalable Vector Extension)を追加した[12] ものとして、バイナリレベルでARMとの互換がとられた一方、マイクロアーキテクチャは京でも使用された富士通製SPARC64の構造を踏襲している[13]。富岳は京の約100倍の性能と、世界最高水準の実用性を目指している[14]。富岳は富士通独自のTofu Interconnect Dを使用して結合された158,976個のA64FXを使用している[15]

ソフトウェア[編集]

富岳はIHK/McKernelという名前の軽量マルチカーネルオペレーティングシステムを使用している。このオペレーティングシステムはLinuxと軽量カーネルのMcKernelの両方を使用し、同時に並行して動作する。両方のカーネルが実行されるインフラストラクチャはInterface for Heterogeneous Kernels (IHK) と呼ばれる。高性能シミュレーションはMcKernelで実行され、Linuxは他の全てのPOSIX互換サービスで利用できる[16][17][18]

性能[編集]

2020年6月23日国際スーパーコンピュータ会議にて発表されたTOP500において1位となった。日本のスーパーコンピュータとしては、2011年6月・12月に京が1位となって以来9年ぶりである。また、同年11月16日、2021年6月28日に発表されたTOP500においても首位を維持。物理現象をシミュレートするHPCG(High Performance Conjugate Gradient)、人工知能計算のベンチマークHPL-AI、ビッグデーター解析のGraph500においても首位を達成。3期連続の4冠を達成した[19][20][21]

この他、消費電力当たりの性能ランキングのGreen500では9位となった[22]

コスト[編集]

2018年、日本経済新聞は、富岳のコストは1300億円 (10億米ドル)かかる想定と報じた。[23]

2020年6月、ニューヨークタイムズは米国で予定されている富岳の性能を超えるエクサ級のスパコンのコストは、最大でも6億ドルであるのに対して、10億ドルを超える富岳のコストを高額な支出と表現した[24]。 それに対して富岳の総責任者の松岡聡は、費用には設計費やデータセンターの改造費、ランニングコストなどが含まれており、全体のコストはAuroraとそれほど変わらないだろうとした。

他のシステムとの費用比較は、次項の表を参照。

世界の他のシステム[編集]

富岳は京の後継として、京の最大100倍の性能を目指して、構築費用 1300億円(国費 1100億円、民間 200億円)が投じられた。時期・用途・構成などは異なるが、他の主なスーパーコンピュータとの単純比較は下表の通り。

性能・費用比較表
システム名 運用開始年 運用終了年 性能
LINPACK
PFLOPS
費用
(億円)
消費電力
MW
TOP500順位 ベンダー CPU・GPU OS
El Capitan(開発中) 2023(予定) - 2000(理論値ピーク性能、予定) 643

(6億ドル)

40未満(予定) - HPEAMD EPYC(Zen 4)、Radeon Instinct Linux
Frontier(開発中) 2021(予定) - 1500(理論値ピーク性能、予定) 643

(6億ドル)

最大30(予定) - AMD, Nvidia EPYC(beyond Zen 2)、Radeon Instinct Linux
Aurora(開発中) 2021(予定) - 1000>(理論値ピーク性能、予定) 557

(5億ドル)以上[25]

13(予定) - Intel Xeon PhiXe Linux
LUMI(開発中)[26] 2021(予定) - 550(理論値ピーク性能、予定)

174

(1億6000万ドル)

8.5(予定)[27] - HPE AMD EPYC CPU, AMD Instinct GPU
富岳 2021 - 415 1300[23] 28.3[28] 2020年6月・11月 1位 富士通 A64FX(ARM) Linux(RedHat)
Summit 2018 - 148 350

(3億2500万ドル)[29]

10.1[28] 2020年6月 2位

2018年6月 - 2019年11月 1位

IBM POWER9, Tesla V100 Linux(RedHat)
Sierra 2018 - 94 7.4 [28] 2020年6月 3位

2018年11月 - 2019年11月 2位

神威・太湖之光 2016 - 93 300

(約18億元)[30]

15.4[28] 2020年6月 4位

2016年6月 - 2017年11月 1位

NRCPC Sunway SW26010 Linux(Raise)
2011 2019 10 1120[31] 12.7[32] 2011年6月 - 2011年11月 1位 富士通 SPARC 64 Linux

歴史[編集]

  • 2018年(平成30年)
  • 2019年(平成31年/令和元年)
    • 4月15日、富士通は理研との間でハードウェアの製造、出荷、設置の正式契約(製造開始)を発表[33]
    • 5月23日に名称を「富岳」に決定したことを発表した[10]
    • 8月27日に富岳のロゴマークが公開された[34]。ロゴマークのデザインは、「『富岳』の性能の高さとユーザーの拡がりを表現」しているとされる[34]
    • 9月17日 特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律施行規則[35]が富岳に合わせて改正され、第二条第四項に云う特定高速電子計算機施設として指定される[36]
    • 11月、同月発表のGreen500において、富岳の試作機が世界1位を獲得した[37][38][39]
    • 12月2日富士通ITプロダクツから最初の筐体6台が出荷開始[40]
  • 2020年(令和2年)
  • 2021年(令和3年)
    • 3月9日、本格運用開始[3][42][43]
    • 4月28日、立教大学、神戸大学のチームが「富岳」を使ったシミュレーションで新型コロナウイルスの変異株が人の細胞と結合する力が従来種より高いことが証明できたと発表した[44]
    • 4月30日、理化学研究所のグループが、「富岳」を使ったシミュレーションで新型コロナウイルス感染症で屋外でも屋内と同等の感染リスクがあることを証明したと発表した[45][46]
    • 6月28日、「TOP500」、「HPCG」、「HPL-AI」、「Graph500」の4部門で世界ランキング1位を獲得。3期連続4冠[47]

システム構成[編集]

主なシステム構成は以下の通り[48]

CPU[編集]

アーキテクチャ
Armv8.2-A SVE
コア
48 コア (計算用) + 4 コア (OS用)
メモリ
HBM2 32 GiB/ノード、1024 GB/s
インターコネクト
Tofu Interconnect D
入出力
PCIe Gen3
プロセス
7nm FinFET (TSMC)

ストレージ[編集]

第1階層
1.6 TB NVMe SSD/16ノード
第2階層
150 PB 共有ファイルシステム
第3階層
クラウドストレージサービス

プログラミング言語とライブラリ[編集]

コンパイラ
Fortran (Fortran 2008、Fortran 2018サブセット)
C11 (GNU及びClang拡張)
C++14及びC++17サブセット (GNU及びClang拡張)
OpenMP 4.5及びOpenMP 5.0サブセット
Java
並列プログラミング
XcalableMP
FPDPS
スクリプト言語
Python (NumPy及びSciPy)
Ruby
数学ライブラリ
BLASLAPACKScaLAPACK英語版、SSL II
Fujitsu SSL II
EigenEXA、Batched BLAS

システムソフトウェア[編集]

OS
Red Hat Enterprise Linux 8
McKernel

ミニ富岳[編集]

2020年8月、神戸ポートアイランドにある計算科学振興財団は、富岳と同じCPUを搭載した「ミニ富岳」と呼べるマシンを時間制でレンタルするサービスを始めた。本家の富岳が432台の計算機を同時に稼働させるのに対し、ミニ富岳は8台と計算能力は圧倒的に低いが、先代「京」での使用を見込んだプログラムの動作確認など、富岳を本格利用する前のテストに利用できるメリットがある[49]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ スパコン「富岳」、前倒しで本格稼働 計算速度2連覇中2021年3月9日、朝日新聞 2021年3月12日
  2. ^ a b 新型コロナウイルス対策を目的としたスーパーコンピュータ「富岳」の優先的な試行的利用について | 理化学研究所”. www.riken.jp. 2020年4月7日閲覧。
  3. ^ a b スパコン「富岳」、前倒しで本格稼働 計算速度2連覇中”. 朝日新聞デジタル. 朝日新聞社 (2021年3月9日). 2021年3月9日閲覧。
  4. ^ スーパーコンピュータ「富岳」プロジェクト”. 理化学研究所. 2019年5月25日閲覧。
  5. ^ 日本のスパコン「富岳」、8年半ぶり世界一奪還”. 日本経済新聞 (2020年6月23日). 2020年10月28日閲覧。
  6. ^ a b 日本のスパコン「富岳」世界ランキング1位、世界初の2期連続4冠”. QEEE. INTLOOP株式会社 (2020年11月17日). 2020年12月20日閲覧。
  7. ^ 株式会社インプレス (2020年11月17日). “富岳は、主要なスパコンベンチのすべてで1位を獲得することが重要”. PC Watch. 2020年12月20日閲覧。
  8. ^ 「富岳」ニュース -1.名称公募-”. 理化学研究所 計算科学研究センター. 2020年10月28日閲覧。
  9. ^ 「富岳」ニュース -2.名称決定-”. 理化学研究所 計算科学研究センター. 2020年10月28日閲覧。
  10. ^ a b ポスト「京」の名称 「富岳(ふがく)」に決定”. 理化学研究所 (2019年5月23日). 2019年5月25日閲覧。
  11. ^ その名は「富岳」!日本はスパコンで再び世界一を目指す”. ニュースイッチ (2019年5月24日). 2020年10月28日閲覧。
  12. ^ ポスト「京」のCPUの仕様を公表”. 富士通 (2018年8月22日). 2019年5月25日閲覧。
  13. ^ ポスト「京」のプロセッサ「A64FX」はArmベースながら異彩放つ重厚系” (日本語). MONOist. 2020年6月25日閲覧。
  14. ^ “スパコン「京」後継機は「富岳」 計算性能100倍、21年稼働”. 毎日新聞. (2019年5月23日). https://mainichi.jp/articles/20190523/k00/00m/040/149000c 2019年5月30日閲覧。 
  15. ^ a b Cutress, Dr Ian (2020年6月22日). “New #1 Supercomputer: Fujitsu’s Fugaku and A64FX take Arm to the Top with 415 PetaFLOPs”. www.anandtech.com. https://www.anandtech.com/show/15869/new-1-supercomputer-fujitsus-fugaku-and-a64fx-take-arm-to-the-top-with-415-petaflops 2020年6月22日閲覧。 
  16. ^ Outline of the Development of the Supercomputer Fugaku”. RIKEN Center for Computational Science. 2020年6月23日閲覧。
  17. ^ McKernel”. RIKEN. 2020年6月23日閲覧。
  18. ^ mckernel - GitHub
  19. ^ 2020年6月版TOP500 - 日本のスパコン「富岳」が4冠を達成” (日本語). マイナビニュース (2020年6月23日). 2020年6月22日閲覧。
  20. ^ スーパーコンピュータ「富岳」TOP500、HPCG、HPL-AI、Graph500において世界第1位を獲得” (日本語). 理化学研究所 (2020年6月23日). 2020年6月23日閲覧。
  21. ^ 2位でもよかったスパコン「富岳」 利用者目線で世界4冠”. SankeiBiz (2020年7月15日). 2020年7月15日閲覧。
  22. ^ 井上輝一 (2020年6月23日). “Preferred Networksがスパコン省電力ランキング「Green500」で世界1位 「富岳」と合わせて日本勢がトップ独占”. ITmedia NEWS. 2020年10月28日閲覧。
  23. ^ a b 竹居智久 (2018年9月14日). “お値段1300億円のポスト「京」、IT業界は今度こそ生かせるか”. 日経クロステック. 2020年10月28日閲覧。
  24. ^ Clark, Don (2020年6月22日). “Japanese Supercomputer Is Crowned World’s Speediest” (英語). The New York Times. 2020年10月28日閲覧。
  25. ^ 佐藤岳大 (2019年3月20日). “米エネルギー省、Intelの新GPU「Xe」採用の“エクサスケール”スパコンを導入”. PC Watch. 2020年10月28日閲覧。
  26. ^ 劉尭 (2020年10月23日). “HPE、AMD次世代EPYC採用の世界最速級スパコンを受注”. PC Watch. 2020年10月28日閲覧。
  27. ^ HPE, AMD and EuroHPC Partner for Pre-Exascale LUMI Supercomputer” (英語). HPCwire (2020年10月21日). 2021年3月14日閲覧。
  28. ^ a b c d TOP500 List - June 2020”. TOP500.org (2020年6月). 2020年10月28日閲覧。
  29. ^ Shankland, Stephen (2018年6月26日). “スパコン「TOP500」、IBM製「Summit」で米が中国を抜き首位に返り咲き”. ZDNet Japan. 2020年10月28日閲覧。
  30. ^ 伊本貴士 (2020年6月24日). “頂上極めた「富岳」の次の挑戦、日本が強い分野の開発に生かせるか”. 日経クロステック. 2020年10月28日閲覧。
  31. ^ 田中誠士 (2019年8月5日). “「2位じゃダメ」のスパコン京、見納め 6年超す長寿で”. 朝日新聞デジタル. 2020年10月28日閲覧。
  32. ^ TOP500 List - November 2011”. TOP500.org (2011年11月). 2020年10月28日閲覧。
  33. ^ a b ポスト「京」の製造を開始”. 富士通 (2019年4月15日). 2019年5月25日閲覧。
  34. ^ a b スーパーコンピュータ「富岳」ロゴマークを決定 | 理化学研究所”. www.riken.jp. 2019年9月29日閲覧。
  35. ^ 特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律施行規則”. 総務省. 2020年10月28日閲覧。
  36. ^ 文部科学省令第十六号”. 国立印刷局. 2020年10月28日閲覧。
  37. ^ 中村真司 (2019年11月19日). “国産スパコン「富岳」のプロトタイプが消費電力性能ランキングで世界1位に”. PC Watch. 2019年11月20日閲覧。
  38. ^ November 2019”. TOP500.org (2019年11月). 2019年11月20日閲覧。
  39. ^ スーパーコンピュータ「富岳」のプロトタイプがGreen500で世界1位を獲得”. 理化学研究所 (2019年11月18日). 2019年11月20日閲覧。
  40. ^ “スパコン「富岳」、速さより使い勝手 富士通が出荷開始”. 日本経済新聞社. (2019年12月2日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52878440S9A201C1TJ2000/ 2020年6月17日閲覧。 
  41. ^ 「富岳」の筐体搬入が完了しました”. 理化学研究所計算科学研究センター (2020年5月13日). 2020年5月14日閲覧。
  42. ^ 「国民の期待は高い」…スパコン「富岳」本格運用を開始”. 読売新聞オンライン. 読売新聞社 (2021年3月9日). 2021年3月9日閲覧。
  43. ^ スパコン富岳が本格稼働 理研が式典開催”. 産経ニュース. 産経新聞社 (2021年3月9日). 2021年3月9日閲覧。
  44. ^ 変異株は細胞に結びつく力が強い スパコン「富岳」が分析”. 産経ニュース. 産経新聞社 (2021年4月30日). 2021年5月28日閲覧。
  45. ^ 屋外でも新型コロナ感染リスク、スパコン「富岳」がシミュレーション”. SankeiBiz. 産経新聞社 (2021年4月30日). 2021年5月28日閲覧。
  46. ^ 屋外でもコロナ感染リスク、スパコン「富岳」飛沫シミュレーション”. ITmedia NEWS. アイティメディア株式会社 (2021年5月6日). 2021年5月28日閲覧。
  47. ^ スパコン「富岳」3期連続で世界4冠にITmedia NEWS.(2021年6月26日)2021年6月30日閲覧
  48. ^ Fugaku System Configuration及びスーパーコンピュータ「富岳」開発概要
  49. ^ 世界一のスパコンと同じCPU搭載「ミニ富岳」100円でお試し”. 神戸新聞 (2020年8月3日). 2021年3月10日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]