アンジオテンシン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

アンジオテンシン(angiotensin)とは、ポリペプチドの1種で、昇圧作用を持つ生理活性物質である。なお、アンギオテンシンと呼ばれることもあるが、近年ではあまり用いられない(厚生労働省のウェブサイトでは両者の混用[1][2]がみられる)。

概説[編集]

アンジオテンシンにはI~IVの4種が存在し、これらのうち、アンジオテンシンII〜IVは心臓の収縮力を高め、細動脈を収縮させることで血圧を上昇させる。なお、アンジオテンシンIには血圧を上昇させる効果は無い。

アンジオテンシンの原料となるアンジオテンシノーゲン肝臓で産生される他、肥大化した脂肪細胞からも産生・分泌される[3]。 このアンジオテンシノーゲンは、腎臓傍糸球体細胞から分泌されるタンパク質分解酵素であるレニンの作用によって、アミノ酸10残基から成るアンジオテンシンI が作り出される。その後、これがアンジオテンシン変換酵素(ACE)、キマーゼカテプシンGの働きによってC末端の2残基が切り離され、アンジオテンシンII に変換される。アンジオテンシンIIはACE2により、血管拡張作用と抗増殖作用を有するヘプタペプチドであるアンジオテンシン-(1-7)へと変換される。

  • アンジオテンシンI: Asp - Arg - Val - Tyr - Ile - His - Pro - Phe - His - Leu - OH
  • アンジオテンシンII: Asp- Arg - Val - Tyr - Ile - His - Pro - Phe - OH
  • アンジオテンシンIII: Arg - Val - Tyr - Ile - His - Pro - Phe - OH
  • アンジオテンシンIV: Val - Tyr - Ile - His - Pro - Phe - OH

アンジオテンシンI は昇圧作用を有さず、アンジオテンシンII が最も強い活性を持つ。(アンジオテンシンIII は II の4割程度の活性で、IV は更に低い)。また、アンジオテンシンII は副腎に作用して、鉱質コルチコイドで血液におけるナトリウムとカリウムのバランスを制御するアルドステロンを分泌させる。また、脳下垂体に作用し利尿を抑えるホルモンである抗利尿ホルモンであるバソプレッシン(ADH)の分泌させる。

作用機序[編集]

アンジオテンシンII は副腎皮質にある受容体に結合すると、副腎皮質からのアルドステロンの合成・分泌が促進される。このアルドステロンの働きによって、腎集合管でのナトリウムの再吸収を促進し、これによって体液量が増加する事により、昇圧作用をもたらす[4]。また、脳下垂体に作用し利尿を抑えるホルモンである抗利尿ホルモンであるバソプレッシン(ADH)の分泌を促進し、水分の再吸収を促進することにより、昇圧作用をもたらす[5]

降圧剤の標的として[編集]

アンジオテンシンII には血圧上昇作用があるため、これを作らせないか、またはその作用をブロックする化合物ができれば血圧降下剤として用いることができる。前者、つまりアンジオテンシン変換酵素 (ACE) の働きを止めるタイプの薬剤を ACE阻害薬と呼ぶ。またアンジオテンシンII の受容体に結合し、その作用をブロックするタイプの薬剤をアンジオテンシンII受容体拮抗薬 (angiotensin receptor blocker, ARB) と言う。いずれも臨床上重要な降圧剤として広く用いられている。また近年、これらの前の段階である、レニンを阻害するタイプの降圧剤も登場している。

関連項目[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 医薬品・医療用具等安全性情報168号
  2. ^ 医薬品等安全性情報No.157
  3. ^ 脂肪細胞とインスリン抵抗性、星薬科大学オープンリサーチセンター 鎌田勝雄
  4. ^ 塩分の摂りすぎによる血圧上昇のしくみを解明 東大病院研究トピックス 藤田敏郎
  5. ^ 利尿を抑えるホルモン"バソプレシン"の脳の中の新たな作用を発見、自然科学研究機構 生理学研究所 岡田泰伸ほか