アンジオテンシン変換酵素阻害薬

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アンジオテンシン変換酵素阻害薬(アンジオテンシンへんかんこうそそがいやく、Angiotensin-converting-enzyme inhibitor)は、アンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに変換するアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害する薬物である。略称はACE阻害薬(エースそがいやく)。

解説[編集]

日本薬局方に収載されているカプトプリルをはじめ、多くの薬物が臨床で用いられている。

降圧作用
アンジオテンシン変換酵素を阻害して、昇圧作用のあるアンジオテンシンIIの生成を抑制するとともにブラジキニンの分解抑制による一酸化窒素の増加により末梢血管を拡張し、血圧を下げる作用を示す。
腎保護作用
腎臓の輸出細動脈を拡張し、アンジオテンシンII受容体拮抗薬とともに糸球体内圧を下げることによる直接的な腎保護作用があるとされていたが、現在のメタアナリシスでは否定されている。なお腎機能が中程度から高度に低下し血清クレアチニン値が3mg/dL以上あるいはクレアチニンクリアランスが30未満の患者では、輸出細動脈の拡張に伴い糸球体内圧が過度に低下し、乏尿などにより腎機能が却って悪化することがある。
さらにアンギオンテンシンIIの減少に伴いアルドステロンの分泌が抑制されるため、腎臓におけるナトリウムと重炭酸の排出が増える一方、カリウムの排出が抑制されるため高カリウム血症およびアルカローシスが起こり腎機能が障害される。このため、高度の腎機能低下および高カリウム血症ではACEの使用は禁忌である。
その他
副作用
ACEは、キニナーゼIIとして、ブラジキニンやP物質を分解する働きもある。ブラジキニンやP物質の過剰産生による、血圧低下や空咳などが知られている。空咳は若い女性に比較的多くみられるが、閉経後や高齢者では少なく心保護効果や誤嚥性肺炎を防止する効果がある。
同時にアンギオンテンシンIIの減少にともないアルドステロンの分泌が抑制されるため、腎臓におけるナトリウムと重炭酸の排出が増える一方、カリウムの排出が抑制されるため高カリウム血症およびアルカローシスが起こり腎機能が障害される。このため、高度の腎機能低下ではACEの使用は禁忌である。
なお、レニン-アンギオテンシンーアルドステロン系は塩分とそれに伴う水分の喪失により腎臓血流量が低下した場合に循環血流量を確保するためにおもに陸生哺乳類で進化した系統である。したがって、現代人のように塩分が過多の状況ではレニンの分泌は抑制されている。
塩分過多の状況ではアンギオテンシンII変換酵素阻害剤ACE阻害剤)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)による降圧効果は弱い。 このため、現時点の治療としては依然として塩分の制限が中心であり、これにカルシウム拮抗剤や利尿剤をARBと組み合わせた配合錠が広く使われるようになっている。

適応[編集]

など

副作用[編集]

など

透析患者について[編集]

ACE阻害薬の服用者は、ブラジキニンの分解が遅くなるため、血液透析を行う場合、ポリアクリロニトリル共重合体膜の1種であるAN69膜を使用すると、高い確率でアナフィラキシーを起こすことが知られている [1] [2]

禁忌[編集]

  • 催奇形性があるため妊婦には禁忌
  • 高度腎機能低下

など

出典[編集]

  1. ^ Verresen 『Bradykinin is a mediator of anaphylactoid reactions during hemodialysis with AN69 membranes.]』 (1994年)
  2. ^ Brunet 『Anaphylactoid reactions during hemodialysis and hemofiltration : Role of associating AN69 membrane and angiotensin I - converting enzyme inhibitors』 (1992年)

関連項目[編集]