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COVID-19ワクチン

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ワクチンの承認状況と展開により色分けした地図
  一般認可 (Approved) 、集団予防接種を実施中
  EUA付与、集団予防接種実施中
  EUA付与、制限付き予防接種
  一般認可、集団接種を予定
  EUA付与、集団接種を予定
  EUA保留中
COVID-19ワクチンを少なくとも1回接種した人の割合

COVID-19ワクチン(コビッド19ワクチン、: COVID-19 vaccine)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)原因ウイルスであるSARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対して、ヒト獲得免疫を提供することを目的としたワクチンである。新型コロナウイルスワクチン新型コロナワクチンとも呼ばれる。

2021年5月時点で、接種開始済みから開発中まで、複数の方式・製造元のワクチンが存在する(mRNAワクチンDNAワクチンウイルスベクターワクチン不活化ワクチン組換えタンパクワクチン、ペプチドワクチンなど)[1]

世界的に見て、2020年末や2021年初頭から複数の製薬企業の複数種のCOVID-19ワクチンの接種が始まっている。各国のワクチンの接種状況を概観すると、早期にワクチン調達契約を結ぶことに成功して既に大規模に接種が行われた国がある一方、ワクチン調達で遅れをとり接種がほとんど進んでいない国も存在する(後節の「ワクチンの確保・接種状況」を参照)。

概要

既に複数の製薬企業によってワクチンは臨床試験も済んでおり、世界各地で接種は行われている。有効性は各ワクチンごとに異なる(後節の「有効性」を参照)。

各国・各地の接種状況については後節の「ワクチンの確保・接種状況」を参照のこと。

いまだにワクチン開発に成功していない製薬会社の中には、今も新たな種類のCOVID-19ワクチンの開発の努力を続けている企業もある。なお2021年5月18日時点で、日本の製薬企業はいずれも自社のCOVID-19ワクチンの承認を得ることに成功していない。

開発開始までの経緯と開発の加速

COVID-19の大流行に先立ち、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)などの病気を引き起こすコロナウイルスの構造と機能に関する知識が確立されていた為、2020年初頭に様々なワクチン技術の開発を加速できた、とされた[2]。2020年1月10日、SARS-CoV-2の遺伝子配列データがGISAIDを通じて共有され、同年3月19日までに、世界の製薬業界がCOVID-19への取り組みを大々的に発表した[3]

2020年代に入り、COVID-19は世界規模で急ピッチに広がりを見せたことから、各国の研究機関や医薬品メーカーは、新たなワクチンの開発や他のウイルス用に開発された既存ワクチンの再評価に乗り出した。世界保健機関(WHO)は、2020年5月までに世界で118の計画が進行中とするリストを公表。うち8の計画は、その時点で既に欧米中華人民共和国(中国)で臨床試験の段階に入っていた[4]。また、WHOはワクチン開発に各国が共同出資・購入する枠組み「COVAX(コバックス)」を立ち上げた[5]

なお、2020年6月時点では、「最初に開発されるワクチンについては、感染防止よりも重症化や死亡を防ぐタイプのワクチンを開発する可能性がある」などと報道されていた[6]。また、高齢者にはワクチンが効きにくいと指摘する声もあった[7]

COVID-19用ワクチンの製造に当たり、新たな製造手法を模索する企業も現れた。これは、従来の鶏卵によるインフルエンザワクチンの生産手法を応用した場合、生産性が低いうえに時間がかかるというリスクがあること、また、卵に注入したウイルスが変異して、ワクチンの有効性が低下することも考えられるためである[8]。具体的には、DNAワクチンmRNAワクチンの開発が進められることとなった[9]

2020年5月時点で、WHO、感染症流行対策イノベーション連合 (Coalition for Epidemic Preparedness Innovations, CEPI) 、およびゲイツ財団GF)は、COVID-19感染症の継続を防ぐためにいくつかのワクチンが必要になるという見通しのため、資金と組織のリソースを投入していた[10]。ワクチン候補の迅速な投資と開発のために20億ドルの世界基金を組織しているCEPI[11]は、2020年9月に、ライセンス取得を支援するための臨床データが同年末までに入手できる可能性があることを示した。2020年5月4日には、WHOが主催したテレソン(長時間特別番組)で、40カ国から81億ドルの誓約書が寄せられた[12]。同時に、WHOは、第II/III相臨床試験に到達した複数のワクチン候補の同時評価のための国際的な「連帯試験」の展開も発表した[13]

2020年11月、バーレーンは中国のシノファーム社製ワクチンの緊急販売承認を与え、アラブ首長国連邦(UAE)がこれに続いた。12月には、バーレーンと英国が米ファイザー社製ワクチンを緊急時の使用を承認した一方[14][15]、UAEとカナダは一般使用を承認した[16][17][18]

臨床試験の状況

第III相臨床試験では、いくつかのCOVID-19ワクチンが、症候性COVID-19感染症の予防に95%という高い有効性を示している。2021年4月現在、16種のワクチンが少なくとも1つの国の規制当局から一般公衆用として認可を受けている。2種類のRNAワクチンファイザー-バイオンテック社製ワクチンモデルナ社製ワクチン)、7種類の従来型不活化ワクチンBBIBP-CorVCoronaVacCovaxinWIBP-CorV英語版CoviVacMinhai-Kangtai英語版QazVac英語版)、5種類のウイルスベクターワクチン(スプートニク・ライトスプートニクVオックスフォード-アストラゼネカコンビディシアジョンソン・エンド・ジョンソン)、2種類のタンパク質サブユニットワクチンEpiVacCoronaRBD-Dimer英語版)である[19]。合計すると、2021年3月時点で、308のワクチン候補が様々な段階で開発されており、73件が臨床研究中で、そのうち24が第I相試験、33が第I/II相試験、16が第III相試験となっている[20][19][21][22]

生産・配布計画

多くの国では、高齢者などの合併症のリスクが最も高い人や、医療従事者などのウイルスへの曝露・感染のリスクが高い人を優先して段階的に配布する計画が実施されている[23]。また、ワクチンの入手性が向上するまでの間、できるだけ多くの人々に接種を拡大するために、単回接種による暫定使用が検討されている[24][25][26][27]。2021年5月19日時点、各国の保健機関からの公式報告によると、全世界で13億回のCOVID-19ワクチンが投与された[28]。アストラゼネカ-オックスフォードは2021年に30億回、ファイザー-バイオンテック社13億回、スプートニクV、シノファーム、シノバック、ジョンソン・エンド・ジョンソン社はそれぞれ10億回の生産を見込んでいる。モデルナは2021年に6億回、コンビディシアは5億回の投与を目標としている[29][30]。2020年12月までに100億回以上のワクチンが各国から予約注文されており[31]、世界人口の14%を占める高所得国がその約半数を購入している[32]

欧米企業のワクチンを十分に調達する経済力がない中・低所得国に対しては中華人民共和国ロシア連邦インドが大量のワクチンを輸出しており、外交的影響力を拡大する意図が指摘されている[33]。日本政府は購入したアへアストラゼネカ製ワクチンを、台湾やベトナム、インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシへ無償提供している[34]

接種状況

既に世界各地でワクチンの接種が開始されている。日本含む各国・各地の接種状況については後節の「ワクチンの確保・接種状況」を参照のこと。

接種を行った人々に様々なインセンティブ(優遇)・特典を与えて接種を加速させる取り組み[35]や、接種済みであることを証明する「ワクチンパスポート」を発行する動きもある[33]。新しいガイダンスによると、完全に予防接種を受けた人は、マスクなしで、また物理的な距離を置くことなく、屋内と屋外のすべての活動に参加できるようになった[36][37]

沿革

SARSとMERS

2003年時点、鳥類感染性気管支炎ウイルス (infectious bronchitis virus) 、犬コロナウイルス、猫コロナウイルスなど、コロナウイルスによって引き起こされるいくつかの動物の病気に対してワクチンは製造されていた[38]。ヒトに影響を与えるコロナウイルスウイルスに対するワクチンを開発するための以前のプロジェクトは、重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)を対象としていた。SARS[39]およびMERS[40]に対するワクチンは、ヒト以外の動物でテストされている。

2005年と2006年に発表された研究によると、SARSを治療するための新しいワクチンと医薬品の特定と開発は、当時の世界中の政府と衛生行政機関にとって優先事項だった[41][42][43]。2020年の時点で、ヒトのSARSに対して安全で効果的であることが証明されている治療法や予防ワクチンは無い[44][45]

MERSに対し確立されたワクチンも存在しない[46]。MERSが普及したとき、既存のSARS研究は、MERS-CoV感染に対するワクチンと治療法を開発するための有用なテンプレートを提供する可能性があると考えられていた[44][47]。2020年3月現在、ヒトでの第I相臨床試験を完了した(DNAベースの)MERSワクチンが1種[48]、その他3種のワクチンが進行中であり、いずれもアデノウイルスベクター型2種(ChAdOx1-MERS、BVRS-GamVac)、MVAベクター型1種(MVA-MERS-S)である[49]

2020年のCOVID-19ワクチン開発

COVID-19が世界的に蔓延し始めた2019年末~2020年初頭の時点では、ヒトのコロナウイルス感染を予防するためのワクチンは存在していなかった[10]。2019年12月にCOVID-19コロナウイルスが検出された後[50]、COVID-19の遺伝子配列が2020年1月11日に公開され、発生に備えて予防ワクチンの開発を早めるための緊急の国際的対応が引き起こされた[51][52][53]

2020年2月時点では、世界保健機関(WHO)は、原因ウイルスであるSARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンが18カ月以内に利用可能になるとは予想していないと述べていた[54]。2020年初頭に世界的にCOVID-19の感染率が急増したことで、国際的なアライアンスや政府の取り組みが刺激され、複数のワクチンを短期間で製造するためのリソースを緊急に整理し[13]、3月には4つのワクチン候補がヒト評価に入ることとなった(後節の「2020年に開始された臨床試験」の表を参照)[51][55]

2020年4月、WHOは、異なる技術と流通を持つ3種類以上のワクチンを開発するための総費用を80億米ドルと見積もった[13][56]。2020年4月までに、「19カ国のほぼ80の企業や研究機関」がこの仮想的なゴールドラッシュに取り組んでいた[57]。また、4月には、CEPIは、COVID-19に対するワクチン候補のうち、6つのワクチンが国際的な連合によって第II-III相試験を経て開発のために選ばれ、3つのワクチンは最終的なライセンス取得に向けて規制と品質保証を経て合理化されなければならないと見積もっている[20][10][55]。別の分析によると、10のワクチン候補が同時に初期開発を必要とし、そのうちのいくつかがライセンス取得に向けた最終的な道筋として選ばれる前に、10のワクチン候補が同時に初期開発を必要とすると見積もっている。

2020年7月、英国国家サイバーセキュリティ―センター (National Cyber Security Centre) として、それぞれの政府および軍隊の英米諜報機関およびセキュリティ組織が、カナダ通信保安局 (Communications Security Establishment) 、アメリカ合衆国国土安全保障省国家保護・プログラム総局 (Cybersecurity Infrastructure Security Agency) 、アメリカ国家安全保障局(NSA)は、ロシアの国家支援ハッカーが他の国の学術機関や製薬機関からCOVID‑19治療とワクチン研究を盗もうとした可能性があると主張した。ロシアはそれを否定した[58]

開発状況

2020年の間に、年初からのCOVID-19ワクチン開発の取り組み全体の大きな変化は、多国籍製薬業界と各国政府との共同研究の増加と、COVID-19ワクチンに注力する多くの国のバイオテクノロジー企業の多様性と増加である[20]。CEPIによると、COVID-19ワクチン開発の一般的な地理的分布は、北米の組織が世界のCOVID-19ワクチン研究の約40%を占めているのに対し、アジアオーストラリアでは30%、ヨーロッパでは26%、南米とアフリカではいくつかのプロジェクトが存在している[51]

ワクチン開発がスタートすると分散コンピューティングプロジェクトのFolding@homeへの関心が高まったことで、2020年3月下旬には演算能力は約1.22 EFLOPS[59][60]、2020年4月中旬には約2.43 EFLOPSを達成し[61][62]、世界初のエクサフロップ・コンピューティング・システムとなり、TOP500の全スーパーコンピュータの合算を上回る能力を獲得した。

国際機関

ワクチン開発を加速させ、流通に備えるための国際的な提携を形成している組織があるが、その中には、2020年5月初旬に81億米ドルの資金調達を開始し、史上前例のない規模で協力、研究の加速化、国際的なコミュニケーションを促進している世界保健機関(WHO)も含まれている[12]。WHOはまた、世界的なワクチン開発を調整するためのCovid-19 Vaccines Global Access(COVAX)を実施し、GAVIやCEPIと共同で Access to COVID-19 Tools (ACT) Accelerator のワクチンの柱となっている[20][63][64]。7月、WHOは、世界人口の最大60%を占める165カ国が、最終的な認可ワクチンの公正かつ衡平な配分のためのWHO COVAX計画に合意したことを発表した。COVAXは、COVID-19ワクチンの開発と製造を加速し、「認可ワクチンへのアクセスが全ての国に公平に提供されること」を保証することを目標としている。具体的には2021年末までに、各参加国が最前線の医療従事者やリスクの高い人々を保護し、最も脆弱な20%の人口にワクチンを接種する[65]ために、保証された分量を受け取る(最大20億回分を平等に提供する)ことを保証する[66][67]

CEPIは、国際保健当局およびワクチン開発者と協力して、さらに20億米ドルの基金を創設。公的、私的、慈善団体、市民社会の組織間のグローバルパートナーシップで、8つのワクチン候補の研究と臨床試験を加速するために資金を提供し、当面(2020年〜2021年)は、ライセンスの完全な開発のためにいくつかの候補を支援することを目標としている[20][56]。英国、カナダ、ベルギーノルウェースイスドイツオランダは既に9億1500万米ドルを寄付しており[12][68]、ワクチンの研究と配布を専門とする民間の慈善団体であるビル&メリンダゲイツ財団(ゲイツ財団)は、2億5000万米ドルを寄付している[69][70]

2020年6月4日、英国のロンドンから、G7およびG20諸国の35の国家元首を含む、52カ国の民間および政府の代表者の間で仮想サミットが調整され、88億米ドルが調達された。ワクチンと予防接種のためのグローバルアライアンス(GAVI)により、2025年までに発展途上国の3億人の子供たちがワクチンを摂取できるよう準備する[71]。主な寄付はゲイツ財団からの16億米ドル[72]と英国政府による5年間で年間3億3000万ポンド(2020年6月には約21億米ドル)など。

2020年12月時点では、ACTアクセラレーターにより24億米ドルが調達されており、9つのワクチン候補がCOVAXとCEPIによって資金提供され、189カ国が最終的なワクチンの展開計画に取り組んでいる[73][74]

感染症流行対策イノベーション連合 (CEPI)

感染症流行対策イノベーション連合はノルウェー政府、インド政府、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、および公益信託団体ウェルカム・トラストの出資によって2017年に世界経済フォーラムダボス会議)にて発足した、公的機関、民間機関、慈善団体および市民団体の間でのグローバルな協働体である[75]日本厚生労働省も創設に関わり2017年より拠出を行ってきた[76]

2020年1月23日、CEPIは以下3研究チームがワクチン開発に向けた作業を開始し、少なくとも1種類のワクチンの臨床試験を6月までに開始すると発表した[76][77]。また、夏にも人へ臨床試験を行い、ワクチン承認は早ければ年内になるとも述べた[78]

  1. 米医薬品・ワクチン開発のモデルナ (Moderna, Inc.)(英語) (MRNA.O) とアメリカ国立アレルギー・感染症研究所 (NIAID) の連携
  2. 製薬会社イノビオ・ファーマシューティカルズ (Inovio Pharmaceuticals, Inc.) (INO.O)
  3. クイーンズランド大学のチーム

この他、米Vir Biotechnology社もワクチン開発計画に加わり、SARSMERSの生存者から同定されたモノクローナル抗体(mAbs)が本ウイルスに有効かどうか調べる[79]

イノビオはMERSの最も先進的なワクチン候補 INO-4700をもっており[80]、ウイルスのDNA塩基配列が公表されて3時間以内にウイルスをデザインできた。CEPIから最大900万ドル(約9億8000万円)の助成金を受け、2020年初夏にも中東アフリカ現地での第II相臨床試験に入る予定[81][82]で、大規模な臨床試験は年末までに中国で行いたいという[83]

2月3日、英グラクソ・スミスクライン (GSK) はパンデミックワクチンで確立されたアジュバント(抗原性補強剤)の基盤技術を提供するためにCEPIの協働に参加すると発表した[84]

2月25日、モデルナは開発中のCOVID-19のワクチンを、ヒトに投与する安全性試験(第I相試験)向けに米国立アレルギー感染症研究所 (NIAID) に出荷した。ヒトへの臨床試験は2カ月以内の開始を見込むが、一般に入手できるようになるには1年半かかる可能性があるという[85]

日本

2020年3月12日、田辺三菱製薬は、カナダの子会社が製造する植物由来の粒子を利用し、ワクチン開発に着手すると発表した[86]

2020年3月5日、大阪大学発の創薬企業アンジェスは、DNAプラスミド技術を活かしたDNAワクチンを大阪大学と共同で開発し、タカラバイオが製造すると発表した[87][88][89]。同年6月30日より治験を開始し、7月末までに30人を対象に実施する[90][91]

2020年5月7日、塩野義製薬は、子会社のUMNファーマが国立感染症研究所と共同で、年内の臨床試験開始を目指していることを公表した。最短で2020年内の臨床試験開始を予定している。市場への投入は2021年秋になる見込みで、同年末までに3,000万人分の生産を目標とする[92][93]

第一三共東京大学医科学研究所は、最短で2021年3月からワクチンの臨床試験を開始することを目指すと報道された[93]

2020年6月27日、九州大学は、九州大学発のベンチャー企業であるKAICOと共同で、新型コロナウイルスのワクチン候補となるたんぱく質の開発に成功したと発表した[94][95]。2021年からワクチンの臨床試験開始を目指している[95]

2020年8月時点でワクチンの開発が急がれた一方、(その時点では)専門家からは「感染そのものを予防する効果は証明が難しい」という懸念が出た。また、東京大学医科学研究所の石井健教授は「(ワクチン開発を)急げば急ぐほど安全性の担保はおろそかになる」と訴えている[93]。この懸念に対し、米国国立研究機関博士研究員でウイルス学、免疫学を専門とする峰宗太郎医は「動物実験などの結果を踏まえると、『(感染予防効果は)あると考えてよい』と思います」[96]と述べている。

日本国内でも「臨床試験の段階で発熱などの副作用が発生しているケースも見られる[93]」とか、2020年12月20日時点で「ファイザー/バイオンテックのワクチンは、27万人への接種で6人(100万人あたり22人)のアナフィラキシーが報告されている[97]」とか、2020年1月23日の報道では「モデルナのワクチンは、400万人の接種でアナフィラキシーが起きたのは10人(100万人あたり2.5人)であり、いずれの患者もその後回復した」と報道された[98]

日本では2020年12月18日にファイザーが厚生労働省に承認申請を行ったほか、国内メーカや大学などで実用化を目指して開発が行われているが、いずれも2021年に臨床試験を開始する目標であり、まだ実用化はされていない[99]、とされた。

2021年2月5日、アストラゼネカが厚生労働省に承認申請を行った[100]

2021年2月12日、ファイザー製のコロナワクチンである「コミナティ」の特例承認が了承され、2021年2月14日に正式に特例承認された[101][102]。なお、当該ワクチンの法令上の名称は「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」である[103]

2021年3月5日、モデルナのワクチンについて、日本での窓口企業の武田薬品工業が厚生労働省に承認申請を行った[104]

2021年5月20日、アストラゼネカのコロナワクチンである「バキスゼブリア」とモデルナのコロナワクチンである「COVID-19ワクチンモデルナ」の特例承認が了承され、2021年5月21日に正式に特例承認された[105][106]。なお、アストラゼネカのウイルスベクターワクチンについての法令上の名称は「コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン(遺伝子組換えサルアデノウイルスベクター)」である[107]。ただ、モデルナのワクチンについてはファイザーに続いて公的接種の対象とされたものの(後述する大規模会場で使用されている)、アストラゼネカのワクチンについては、諸外国で副反応と見られる血栓症の発生があったことから、薬事承認はされたものの公的接種の対象外とされた[108]。その後、同年8月3日に原則40歳以上を対象に公的接種の対象に追加された[99]

2021年5月24日、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンについて、傘下のヤンセンファーマが厚生労働省に承認申請を行った[109]

2021年7月12日、第一三共はmRNAワクチンの臨床試験を年内に開始すると発表した[110][111]。国内では既に他のワクチン接種が始まっていることから偽薬との比較は倫理上の問題があるため、他のワクチンとの効果の差を比較する劣性試験を行う予定[110]

KMバイオロジクスでは2023年の実用化を目指し不活化ワクチンの開発を進めている[112]

中国

2020年1月26日、中国CDC(疾病管理予防センター)の関係者は、ワクチンの開発を開始したと語った[113]。1月29日、広州のロシア領事館は新型コロナウイルスのゲノムが中国からロシアに提供され、中露がワクチンの共同開発に着手したと発表した[114]

(上記と同じものかどうかは不明であるが)開発したワクチンの治験開始が3月17日に中国で承認され、陳薇をリーダーとする中国人民解放軍軍事科学院軍事医学研究院の研究者らが治験を開始[115]。3月18日に中国中央電視台も報道した[116]

3月23日、軍事科学院軍事医学研究院生物工程研究所とカンシノ・バイオロジクス英語版は、独自に開発した新型コロナウイルスワクチン(アデノウイルス媒体)の108人への第1期臨床試験を開始すると報道した[117]。プロジェクト責任者は陳薇 (Chen Wei) 少将で、複製欠陥型ヒト5型アデノウイルスを媒体とし、新型ウイルスのS抗原を作る[117]。感染予防のため、陳薇チーム7人は既に接種済みである[117]。陳薇少将はウイルスのワクチンの研究で博士号を取得しており、これまでに抗SARSウイルス製剤やエボラ出血熱のワクチン開発に成功したと発表されている[116]

2020年5月25日、カンシノ・バイオロジクスは、同年3月から開始していたウイルスベクターワクチンの第1相臨床試験で、ヒトへの効果を世界で初めて確認したと報告した[118][119]。6月25日、中華人民共和国中央軍事委員会は国産ワクチン「Ad5-nCoV」の使用を中国人民解放軍に限定して認可したことを決定した[120]。7月22日より、医療従事者らを対象にワクチンの緊急使用を開始した[121]

2020年12月30日、中国のシノファーム社は国産ワクチン「BBIBP-CorV」の有効性を79.34%とし、同年12月9日に中国より先にワクチンを承認して首相のムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥームらが接種していたアラブ首長国連邦が発表した86%よりも低く発表した[122]。翌31日、中国の国家薬品監督管理局はシノファームの「BBIBP-CorV」を承認した[123]

2021年2月、中国の国家薬品監督管理局はシノバック・バイオテック社のCoronaVacとカンシノ・バイオロジクス社の国産ワクチン2種類を承認した[124][125]

2021年5月、世界保健機関は欧米以外のワクチンでは初めてシノファーム社のBBIBP-CorVの緊急使用を承認し[126]、有効性は79%と推定した[127]

ロシア

2020年8月中旬にロシア政府が国内で製造されたワクチンを薬事承認し、10月以降医療従事者などを対象とした接種を開始する予定と発表した[128]。その後、8月11日にウラジーミル・プーチン大統領がガマレヤ記念国立疫学・微生物学研究センターの国産ワクチン「Gam-COVID-Vac」(スプートニクV)を世界に先駆けて認可したことを発表した[129]

2020年11月11日、スプートニクVが発症を防ぐ有効性が92%に上ったとする最終第3段階の臨床試験の第1回中間結果をロシアは発表した[130]

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国連邦政府は2020年、ワクチンの研究・製造への補助や買取事前契約などに100億ドル以上を投じる「オペレーション・ワープ・スピード」(超高速作戦)を開始した[131]アメリカ生物医学先端研究開発局アストラゼネカ(イギリス)やサノフィ(フランス)など他国の製薬企業のワクチン開発も支援している[132]

2020年1月21日、アメリカの感染症薬メーカー、ノババックス(Novavax Inc.) は、本ウイルスの感染予防のためのワクチンの開発を始めたと語った[133][134]

2020年1月29日、米医薬品・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン (J&J) は、COVID-19 ワクチンの開発に着手したと発表した。エボラ出血熱のワクチン開発に利用した技術を応用する。このワクチンは現在、コンゴ民主共和国ルワンダで投与されている[135]。「すでに多数の研究者をワクチン開発に投入しており、1カ月以内には何らかの成果が出せると確信している。世界市場に向けた量産体制はすでに整っているので、ワクチンが完成すれば、1年以内に億単位の出荷が可能」という[136]

2020年3月16日、アメリカ国立衛生研究所は、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所とバイオ医薬企業のモデルナが開発していたmRNAワクチンが治験に至ったことを発表。治験は、ワシントン州シアトル市内で始まり[137]、同年5月18日までに複数の治験参加者から抗体を確認することができた[138]。全世界に1年間で5〜10億回分の供給を計画している[93]

ファイザーのワクチンが2020年に供給開始予定。2021年までに数億人規模の接種を目指す。日本にはワクチンが完成した場合には、2021年6月までに1億2,000回分を供給することで、日本国政府と基本合意されている[93]。その後、2020年11月9日に初期の治験のデータが発表され、予防の有効性が90%越えとなった[139]。これを受け、2020年11月中にもアメリカの食品医薬品局に承認の申請を行う[139]

ノババックスのワクチンは、1年に1億回分の生産を目標としている。生産はアメリカ合衆国の富士フイルム子会社と協力し、日本では武田薬品工業が原薬から製造し販売する予定[93]

イギリス

アストラゼネカオックスフォード大学と共同でワクチン開発を開始し、そ2020年4月より臨床試験を開始した。同年9月以降、翌21年にかけて10億回分の生産が可能と目され、5月の時点で既に4億回分(アメリカ3億回分、イギリス1億回分)の供給を9月から開始することが予定されていた[140]。その後に供給計画を20億回分に増加し、日本には1億2,000万回分、うち3,000万回分は2021年3月までに供給することをが日本国政府と基本合意された[93]。治験については、参加者の中に深刻な副反応の疑いが確認されたため、9月9日から中断していた[141]が、9月12日に再開したことを明らかにした[142]

しかし、アストラゼネカのワクチンについてはその後、各国で懸念が示されることとなる。2021年1月29日にはフランスのエマニュエル・マクロン大統領が、同社製のワクチンは60~65歳以上の高齢者にはほぼ効果がないと発言し[143]、同国保健当局が2月2日に65歳以上の高齢者には接種しないよう勧告したのをはじめ、ドイツ、イタリア、スウェーデンの保健当局も高齢者への接種を行わないよう勧告した[144]。ただし、欧州医薬品庁(EMA)は全年齢層の成人への接種を推奨した[143]

また2021年3月になってアストラゼネカ製のワクチンに接種後に血栓が発生するなどの副反応事例が報告されたためドイツ、フランス、イタリア、スペイン、デンマーク[145]、アイスランド、ノルウェー[146]、オランダ[147]、タイ[148]など接種を中断する国が続出した。3月15日にはWHOが同社製ワクチンと血栓の発生に因果関係は認められず、ワクチン接種を継続するようコメントを発表する事態となった[149]。これを受けフランスやドイツでは接種を再開した[150]

アストラゼネカによる臨床試験では79%の有効性が確認されたと2021年3月22日に発表されている[150]。しかしアメリカ国立アレルギー・感染症研究所は、古い不完全な治験データが含まれていた可能性があると指摘し、最新の正確な情報を提供するよう要求。アストラゼネカも48時間以内の最新データ提供を表明した[151]。その結果、有効性は76%へと訂正された[152]

フランス

2020年2月18日、フランスのサノフィは、米国保健福祉省 (HHS) の生物医学先端研究開発局 (BARDA) と協力して、COVID-19のための遺伝子組換えワクチンの速やかな開発を目指すと発表した[153]。アメリカ生物医学先端研究開発局からも支援を受けている[132]

インド

インドでは国産ワクチン2種の接種が2021年1月16日に開始された。インドには世界最大級のワクチン製造機関であるインド血清研究所(SII)があり、輸出も行われているが、原材料はアメリカやEUからの輸入に頼っている[154]

国内で流通するのは国内の製薬企業バーラト・バイオテック英語版社とインド医学研究評議会英語版が共同開発しSIIで製造されている「コバクシン[154]と、アストラゼネカが開発しバーラト・バイオテックがライセンス生産する「コビシールド」であり、前者は承認段階で有効性を証明するデータが示されていなかった[155]。その後の治験では有効性81%と評価されている[156]

台湾

台湾中華民国)では、メディゲン・ワクチン・バイオロジクス中国語版中国語: 端疫苗生物製剤新竹県)がアメリカ国立衛生研究所の協力を得て開発したMVC COVID-19ワクチン英語版対して2021年7月に緊急使用許可が出された。2021年8月23日に接種が開始され、蔡英文総統は同日早朝に率先して接種を受けた[157][158]

蔡英文は、従来は中国の妨害により民間の調達や日本やアメリカからの無償供与以外ではワクチンの輸入が難しかったと述べている[159]

東南アジア諸国

ベトナムのナノジェン製薬バイオテクノロジーはベトナム軍医大学と共同で「ナノコバックス」を開発中であり、2021年2月に第2段階の治験、6月10日に最終段階の治験を開始した[160]

インドネシアではアイルランガ大学など7つの研究機関が開発中[161]

タイ王国ではタイ製薬公団(GPO)とマヒドン大学熱帯医学部が共同開発を進めている[161]

イラン

イランの最高指導者アリー・ハーメネイーが2021年6月25日に接種を受けたワクチンは、イランで開発されている複数のワクチンのうち、同月に緊急承認されたものとイラン国営メディアにより報道された[162]

キューバ

キューバは、WHO未承認であるものの国産ワクチンを製造しており、2021年9月16日には子供(2~11歳)にも接種対象を広げた[163]

ワクチンの種類

SARS-CoV-2タンパク質を形成して免疫反応を促すための3種類のワクチンを示す概念図。(1)RNAワクチン、(2)サブユニットワクチン、(3)ウイルスベクターワクチン
SARS-CoV-2に採用されているワクチンのプラットフォーム。全ウイルスワクチンには、弱毒化されたウイルス不活性化されたウイルスの両方が含まれる。タンパク質およびペプチドサブユニットワクチンは通常、免疫原性を高めるためにアジュバントと組み合わされる。SARS-CoV-2ワクチン開発では、三量体のスパイクタンパク質全体、または受容体結合領域(RBD)などの構成要素を使用することに重点が置かれている。複数の非複製ウイルスベクターワクチンが開発されており、特にアデノウイルスに焦点が当てられている。一方、複製ウイルスベクターのコンストラクトはあまり重視されていない。[164]

2021年1月時点、COVID-19に対する有効なワクチンを作成するために、9つの異なる技術プラットフォーム(多数の候補の技術が未定義のまま)が研究開発中である[20]

臨床試験中のワクチン候補のプラットフォームのほとんどは、COVID-19感染の主要抗原としてのコロナウイルススパイクタンパク質とその変異体に焦点を当てている[20]。2020年に開発されたプラットフォームには、核酸技術(ヌクレオシド修飾メッセンジャーRNAおよびDNA)、非複製ウイルスベクターペプチド組換えタンパク質弱毒化ウイルス不活化ウイルスなどがある[2][10][51]

COVID-19のために開発されている多くのワクチン技術は、インフルエンザを予防するために既に使用されているワクチンとは異なり、COVID‑19感染メカニズムの精度を高めるために「次世代」戦略を使用している[2][20]。いくつかの合成ワクチンでは、2P変異を利用してスパイクタンパク質を融合前構造に固定し、ウイルスがヒトの細胞に付着する前に免疫応答を刺激する[165]。開発中のワクチンプラットフォームは、抗原操作の柔軟性を高め、医療従事者、高齢者、子供、妊婦、免疫力が低下している人など、COVID-19の感染しやすい人々の感染メカニズムをターゲットとした効果が期待できる。[20][51]

RNAワクチン

RNAワクチンの動作説明図。ワクチンに含まれるメッセンジャーRNAが細胞内に入り、外来タンパク質に翻訳されることで免疫応答を引き起こす。

RNAワクチンにはRNAが含まれており、組織に導入されるとメッセンジャーRNA(mRNA)として働き、細胞に外来タンパク質を作らせ、適応免疫反応を刺激して、対応する病原体がん細胞を識別して破壊する方法を体に教える。RNAワクチンは、ヌクレオシド修飾メッセンジャーRNAを使用することがよくあるが、必ずしもそうとは限らない。mRNAの送達は、RNA鎖を保護し、細胞への吸収を助ける脂質ナノ粒子に分子を共製剤化することによって実現される[166][167][168][169]。この技術の開発は、ペンシルベニア大学の免疫学者、ドリュー・ワイスマンカリコー・カタリンによる[170][171]

RNAワクチンは、米国および欧州連合で認可された最初のCOVID-19ワクチンである[172][173]。2021年1月時点、このタイプの認可されたワクチンは、ファイザー-バイオンテックワクチン[174][175][176]モデルナワクチン[177][178]である。2021年2月現在、EUではCureVac社のCVnCoV英語版 RNAワクチンが認可を待っている[179]

重度のアレルギー反応はまれである。2020年12月、ファイザー-バイオンテックCOVID-19ワクチンの初回投与1,893,360回では、重度のアレルギー反応が175例発生し、そのうち21件がアナフィラキシーであった[180]。2020年12月および2021年1月に行われたモデルナ COVID-19ワクチンの4,041,396回の投与では、アナフィラキシーの報告は10件のみであった[180]脂質ナノ粒子がアレルギー反応に関与している可能性が最も高い[180]

アデノウイルス・ベクター・ワクチン

これらのワクチンは、SARS-CoV-2タンパク質をコードするDNAを含むアデノウイルス・シェルを用いた、非複製ウイルスベクターの例である[181]。COVID-19に対するウイルスベクターを用いたワクチンは、新しいウイルス粒子を生成するのではなく、全身の免疫反応を誘発する抗原のみを生成するという非複製性を持っている。[181]

2021年1月時点、このタイプのワクチンとして認可されているのは、英国のオックスフォード-アストラゼネカワクチン[182][183][184]、ロシアのスプートニクV[185]、中国のコンビディシア、そしてジョンソン・エンド・ジョンソンワクチンである[186][187]

コンビディシアとジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは、いずれもワンショットワクチンで、物流の煩雑さがなく、通常の冷蔵保存で数ヶ月間保存できる[188][189]

スプートニクVは、ジョンソン・エンド・ジョンソン社のワクチンと同じAd26を1回目に使用し、コンビディシアと同じAd5を2回目に使用しており、単回投与と同様の有効性を得ることができ、1回の投与で同じ効果があるか完全試験が行われている。

不活化ウイルスワクチン

不活化ワクチンとは、培養したウイルス粒子を熱やホルムアルデヒドなどの方法で死滅させることにより、病気を引き起こす能力を失わせ、かつ免疫反応を起こさせるワクチンである[190]

2021年1月時点、中国のCoronaVac[191][192][193]BBIBP-CorV[194]、IBP-CorV、インドのCovaxin、ロシアのCoviVac[195]が認可されている。臨床試験中のワクチンには、Valneva社のワクチンがある[196][197]

サブユニットワクチン

サブユニットワクチンは、病原体の粒子全体を導入することなく、1つまたは複数の抗原を提示する。抗原はしばしばタンパク質サブユニットであるが、病原体の断片であればどのような分子でもよいとされている[198]

2021年4月時点、このタイプのワクチンとして承認されているのは、ペプチドワクチンEpiVacCorona[199]RBD-Dimer英語版[200]の2つである。認可が保留されているワクチンには、Novavax COVID-19ワクチン[201]と、SOVERANA 02コンジュゲートワクチン)、Sanofi-GSKワクチン英語版がある。V451ワクチン英語版は以前、臨床試験が行われていたが、その後のHIV検査で誤った結果を引き起こす可能性があることが判明したため中止された[202][203]

自己増殖型RNAワクチン

自己増殖RNAワクチンや自己複製RNAワクチンと呼ばれる、自ら増殖や複製するワクチンである。次世代のRNAワクチンであり、接種後に体内でRNAを増やすタンパク質を増殖させ、自らRNAを増やすワクチンである。VLPセラピューティクス・ジャパンしたワクチンの場合、自ら増殖するため、レプリコンの粒子が127gあれば、日本の全人口に接種出来るだけのワクチンが作れる計算になるとされる。また、保管も4°Cの環境で1~2ヶ月は保存可能であるとされる[204][205]。VLPセラピューティクス・ジャパン、大阪市立大学国立国際医療研究センター医薬基盤・健康・栄養研究所大分大学などが開発中である[206]。他にも米国メリーランド州ボルチモアのElixirgen Therapeutics, Inc.(エリクサジェン・セラピューティックス社)が自己複製型RNAワクチン「EXG-5003」を開発し、日本では藤田医科大学(愛知県豊明市)にて、第 1/2 相臨床試験を開始している。

その他の種類

臨床試験が行われているその他のワクチンには、ウイルス様粒子ワクチン英語版、複数のDNAプラスミドワクチン[207][208][209][210][211][212]、少なくとも2つのレンチウイルスベクター英語版ワクチン[213][214]コンジュゲートワクチン、SARS-CoV-2スパイクタンパクを発現させた水疱性口内炎ウイルス英語版などがある[215]

経口ワクチンや経鼻ワクチンも開発・研究されている[216]

終生免疫の獲得を目指したワクチンの研究開発もおこなわれており、東京都医学総合研究所が研究開発する天然痘ワクチンであるワクシニアウイルスを更に弱毒化したDIs株に、SARS-CoV-2遺伝子を組み込んだ遺伝子組換え生ワクチン[217][218][219]、東京大学生産技術研究所が麻疹ウイルスをベクターとして用いた遺伝子組換え生ワクチンを研究開発している [220]

科学者たちは、関連性のない疾患に対する既存のワクチンが、免疫系を活性化し、COVID-19感染の重症度を軽減できるかどうかを調査した[221]。結核用のBCGワクチンが免疫系に非特異的な作用を及ぼすという実験的証拠はあるが、このワクチンがCOVID-19に有効であるという証拠はない[222]

有効性

二重盲検臨床試験におけるファイザー-バイオンテック社製ワクチン(tozinameran)またはプラセボの初回投与後の症候性COVID-19感染症の累積発生曲線。縦軸が累積発生率、横軸は初回投与後の経過日数。(赤:プラセボ、青:tozinameran)[223]

ワクチン有効性(vaccine efficacy)とは対照試験において、ワクチンを接種した被験者が病気にかかるリスクと、ワクチンを接種していない被験者が病気にかかるリスクを比較したものである[224]。有効性0%とは、ワクチンが効かないことを意味する(プラセボと同じ)。 有効性が50%の場合は、ワクチン未接種の人と比べてワクチン接種した人の感染症例が半分になることを意味する。

臨床試験は、異なる集団、地域、ウイルスの亜種を用いて実施されたため、異なるワクチンの有効性を比較するのは簡単ではない[225]。COVID-19の場合、ワクチン有効率英語版が67%であればパンデミックを遅らせるのに十分かもしれないが、これはワクチンが感染を防ぐために必要な殺菌免疫(ウイルスを感染前に排除する免疫系の作用)を与えることを前提としている。ワクチン有効性は疾病予防を反映したものであり、無症状の人は感染力が強い可能性があるため、SARS-CoV-2の感染性を示す指標としては不十分である[226]米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)は、COVID-19ワクチンの承認に必要な有効性として50%をカットオフ値として設定している[227][228]。現実的な集団ワクチン接種率を75%を目標とし、実際の基本再生産数に応じてCOVID-19ワクチンに必要な有効性は、流行を防ぐためには70%以上、社会的距離を置くなどの措置をとらずに流行を消滅させるためには80%以上であると予想されている[229]

有効性の計算において、症候性COVID-19とは、一般的にPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査が陽性であり、かつCOVID-19の症状英語版の定義済リストのうち少なくとも1つまたは2つの症状を有するものと定義されているが、正確な仕様は試験によって異なる。国によってSARS-CoV-2変異株の有病率が異なるため、試験場所も報告された有効性に影響を与える。以下の範囲は、特に記載のない限り95%信頼区間であり、全ての値は年齢に関係なく全ての被験者に対するものである。重症化したCOVID-19に対する有効性は最も重要で、入院や死亡が公衆衛生上の負担となり、その予防が優先される[230]。認可・承認されているワクチンでは、以下のような有効性が示されている。

ワクチン COVID-19の重症度による有効性 臨床試験実施場所 参照先
軽度または中等度[注 1] 入院や死亡を伴わない重篤な症状[注 2] 入院や死亡を伴う重篤な症状[注 3]
モデルナワクチン ~94% (89–97%)[注 4] ~100%[注 5] ~100% United States [231]
ファイザーバイオンテックワクチン ~95% (90–98%)[注 6] Not reported Not reported Multinational [232]
スプートニク・ライト ~79% Not reported Not reported Russia [233]
スプートニクVワクチン ~92% (86–95%) ~100% (94–100%) ~100% Russia [234]
オックスフォード-アストラゼネカワクチン ~81% (60–91%)[注 7] ~100% (72–100%) ~100% Multinational [235]
~76% (68–82%)[注 8] ~100% ~100% United States [236]
BBIBP-CorV ~79% ~100% ~100% Multinational [237]
CoronaVac ~78% ~100% ~100% Brazil [238][239][240]
ノババックスワクチン ~89% (75–95%) ~100%[注 9] ~100%[注 9] United Kingdom [241][242]
~60% (20–80%) ~100%[注 9] ~100%[注 9] South Africa
ジョンソン・エンド・ジョンソンワクチン ~66% (55–75%)[注 10][注 11] ~85% (54–97%)[注 12] ~100%[注 13] Multinational [243]
~72% (58–82%) ~86% (−9–100%) ~100% United States
~68% (49–81%) ~88% (8–100%) ~100% Brazil
~64% (41–79%) ~82% (46–95%) ~100% South Africa
Covaxin ~78% (61-88%) ~100% ~100% India [245][246]
Convidicea ~66% ~91% Not reported Multinational [247][信頼性の低い医学の情報源?]
  1. ^ 軽度の症状:発熱、乾いた咳、疲労感、筋肉痛、関節痛、喉の痛み、下痢、吐き気、嘔吐、頭痛、無嗅覚、無味覚、鼻づまり、鼻出血、結膜炎、皮疹、悪寒、めまいなど。中等度の症状:軽度の肺炎。
  2. ^ 個人の入院や死亡に至らない重篤な症状は、観察期間中の任意の時点で安静時に測定された以下の重篤な呼吸器症状のいずれかである(肺炎、深部静脈血栓症、呼吸困難、低酸素症、持続的胸部痛、食欲不振、錯乱、38℃以上の発熱のいずれかを有するが、入院や死亡に至るほどの持続性・重篤性はない)。呼吸数が30回/分以上、心拍数が125回/分以上、酸素飽和度(SpO2)が93%以下(海面上の室内空気)、または酸素分圧/吸気酸素分圧(PaO2/FiO2)が300mmHg未満のもの。
  3. ^ 入院や死亡の原因となる重篤な症状とは、病院での治療を必要としたり、死亡に至ったりするもの:呼吸困難、低酸素症、持続性胸痛、食欲不振、錯乱、38℃以上の発熱、呼吸不全、腎不全、多臓器不全、敗血症、ショック。
  4. ^ Mild/Moderate COVID-19 symptoms observed in the Moderna vaccine trials, were only counted as such for vaccinated individuals if they began more than 14 days after their second dose, and required presence of a positive RT-PCR test result along with at least two systemic symptoms (fever above 38ºC, chills, myalgia, headache, sore throat, new olfactory and taste disorder) or just one respiratory symptom (cough, shortness of breath or difficulty breathing, or clinical or radiographical evidence of pneumonia).[231]
  5. ^ Severe COVID-19 symptoms observed in the Moderna vaccine trials, were defined as symptoms having met the criteria for mild/moderate symptoms plus any of the following observations: Clinical signs indicative of severe systemic illness, respiratory rate ≥30 per minute, heart rate ≥125 beats per minute, SpO2 ≤93% on room air at sea level or PaO2/FIO2 <300 mm Hg; or respiratory failure or ARDS, (defined as needing high-flow oxygen, non-invasive or mechanical ventilation, or ECMO), evidence of shock (systolic blood pressure <90 mmHg, diastolic BP <60 mmHg or requiring vasopressors); or significant acute renal, hepatic, or neurologic dysfunction; or admission to an intensive care unit or death. No severe cases were detected for vaccinated individuals in the trials, compared with 30 severe cases reported in the placebo group (incidence rate 9.1 per 1000 person-years).[231]
  6. ^ Mild/Moderate COVID-19 symptoms observed in the Pfizer-BioNTech vaccine trials, were only counted as such for vaccinated individuals if they began more than 7 days after their second dose, and required presence of a positive RT-PCR test result along with at least one of the following symptoms: fever; new or increased cough; new or increased shortness of breath; chills; new or increased muscle pain; new loss of taste or smell; sore throat; diarrhea; or vomiting.[232]
  7. ^ 投与間隔が12週間以上の場合。6週間未満の間隔では有効性は約55%(33-70%)であった。
  8. ^ 投与の間隔は4週間。有効性は「症候性COVID-19の予防」とされている。
  9. ^ a b c d 試験で症例は検出されなかった。
  10. ^ 中程度の場合。
  11. ^ Efficacy reported 28 days post-vaccination for the Johnson & Johnson single shot vaccine. A lower efficacy was found for the vaccinated individuals 14 days post-vaccination.[243]
  12. ^ The source does actually say negative 9.
  13. ^ No hospitalizations or deaths were detected 28 days post-vaccination for 19,630 vaccinated individuals in the trials, compared with 16 hospitalizations reported in the placebo group of 19,691 individuals (incidence rate 5.2 per 1000 person-years)[243] and 7 COVID-19 related deaths for the same placebo group.[244]

ワクチン実効性

ワクチン実効性(vaccine effectiveness)に関する実社会での研究では、特定のワクチンが、理想的とは言えない日常的な条件下で、大規模な集団におけるワクチン接種者のCOVID-19の感染、症状、入院、死亡をどの程度防ぐことができたかを測定する[248]

  • イスラエルでは、2020年12月20日から2021年1月28日までの期間にモデルナまたはファイザー-バイオンテックのワクチンを接種した715,425人のうち、2回目の接種から7日後からの期間に、317人(0.04%)のみが軽度/中等度のCovid-19症状で発病し、16人(0.002%)のみが入院したことが確認された[249]
  • 米国疾病予防管理センターの報告書によると、ファイザー-バイオンテック社およびモデルナ社のCovid-19ワクチンは、非常に効果的な防御を提供する[250]。実際の環境下では、症状の状態にかかわらず、SARS-CoV-2感染に対して、完全免疫(2回目の投与から14日以上後)のmRNAワクチンの実効性は90%、部分免疫(1回目の投与から14日以上で2回目の投与前)のワクチン実効性は80%であった。
  • 英国の104の病院に勤務する15,121人の医療従事者は、調査前に全員のCOVID-19抗体が陰性であったが、2020年12月7日から2021年2月5日まで、系統 B.1.1.7が優勢変異株として循環していた時期に、週2回の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査で追跡調査を行った。この研究では、ワクチンを接種した90.7%のコホート(母集団)と、ワクチンを接種しなかった9.3%のコホートの陽性結果を比較し、ファイザー-バイオンテック社のワクチンは、全ての感染症(無症候性を含む)を、1回目の接種から3週間後には72%(58-86%)減少させ、2回目の接種から1週間後には86%(76-97%)減少させたことがわかった[251]
  • 2021年1月17日から3月6日まで、系統B.1.1.7が優勢変異株として循環していた時期に、イスラエルの一般住民を対象に行われた研究では、ファイザー社ワクチンにより、無症候性COVID-19感染症が94%、症候性COVID-19感染症が97%減少したことが明らかになった[252]
  • アメリカのメイヨー・クリニックの術前患者を対象とした研究では、mRNAワクチンが無症候性感染症に対して80%の防御効果があることが示された[253]
  • 中国疾病管理センターの所長である高福は、2021年4月10日に開催された会議で、中国製ワクチンは「防御率はあまり高くない」と認めた。民間企業であるシノバック社が開発したCoronaVacワクチンは、ブラジルでの臨床試験で有効率が50.4%にとどまることが判明した。トルコで行われた別の試験では、83.5%の実効性が示された。国営のシノファーム社によると、その2つのワクチンの有効率は79.4%と72.5%である[254]
ワクチン COVID-19の重症度別の実効性 調査国 Refs
無症候 症候性 死亡
ファイザー-バイオンテック ~86% (76-97%) Not reported United Kingdom [251]
~90% (68-97%) ~100%[i] United States [250]
~94% ~97% Israel [252]
モデルナ ~90% (68-97%) ~100%[i] United States [250]
CoronaVac Not reported ~67% (65-69%) ~80% (73-86%) Chile [255][256][257][258]
スプートニクV Not reported ~98% Not reported Russia [259][260]
  1. ^ a b 研究で検出された症例はなかった。

変異株

現行のCOVID-19ワクチンによって誘発される抗体応答に対して中程度または完全に耐性を持つSARS-CoV-2変異株が出現した場合、ワクチンの変更が必要になる可能性がある[261]。初期株用に開発された多くのワクチンが、症候性COVID-19の一部の変異株に対する有効性が低いことが試験で示されている[262]。2021年2月の時点で、米国食品医薬品局(FDA)は、FDAが認可した全てのワクチンはSARS-CoV-2の循環株に対する保護効果を維持していると捉えている[263]

変異株は、回復者やワクチン接種者が獲得する中和抗体から逃避するリスクが懸念されているが、国立感染症研究所と日本医療研究開発機構の研究にて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)回復者の中和抗体の総量は時間と共に減衰するが、変異株に交差結合する抗体を獲得し、この抗体の質(中和比活性・交差性)は時間と共に向上することを発見した。この現象は、変異株へのワクチン戦略に重要な知見になるとしている [264][265]

アルファ株(系統 B.1.1.7)

2020年12月、英国で新たな変異株である系統 B.1.1.7が確認された[266]。初期の結果では、ファイザー-バイオンテックワクチンモデルナワクチンの両方が英国の変異株に対して保護することを示唆している[267][268]

ある研究では、オックスフォード-アストラゼネカワクチンは、B.1.1.7に対して42〜89%の有効性を示し、B.1.1.7以外の変異株に対しては71〜91%の有効性を示した[269]。臨床試験の予備データによると、Novavaxワクチンは、オリジナルの変異株に対して〜96%、B.1.1.7に対して〜86%、南アフリカのB.1.351(501.V2 変異株)に対して〜60%の症状改善効果があることが示されている[270]

ベータ株(系統 B.1.351/501.V2 変異株)

モデルナは、南アフリカの系統 B.1.351(501.V2 変異株)に取り組むための新しいワクチンの試験を開始した[271]。2021年2月17日、ファイザーはB.1.351の中和活性が2/3に低下したと発表したが、この変異株に対するワクチンの疾病予防効果については、まだ主張できないとしている[272]。B.1.351に対するモデルナおよびファイザーのワクチンを接種した患者からの血清の中和活性の低下は、その後、いくつかの研究で確認された[273][274]。4月1日、ファイザー-バイオンテックによる南アフリカでのワクチン試験の最新情報では、ワクチンの効果は今のところ100%(つまり、ワクチンを接種した被験者には症例が発生しなかった)で、プラセボ対照群では9件の感染のうち6件がB.1.351であったと述べられている[275]

2021年1月、南アフリカでAd26.COV2.S ワクチンの臨床試験を実施したジョンソン・エンド・ジョンソンは、中等度から重度のCOVID-19感染に対する防御レベルは、米国で72%、南アフリカで57%であったと報告した[276]

2月6日、『フィナンシャル・タイムズ』紙は、南アフリカのウィットウォーターズランド大学英語版オックスフォード大学と共同で実施した試験の暫定試験データで、オックスフォード-アストラゼネカワクチン(AZD1222)のB.1.351に対する有効性の低下を示したと報じた[277]。この研究では、2,000人のサンプルサイズにおいて、AZD1222 ワクチンは、COVID-19の最も重篤な症例を除く全ての症例において「最小限の保護」しか提供しないことが分かった[278]。2月7日、南アフリカ保健大臣はデータを検討し、どのように進めるべきかアドバイスを待つ間、約100万回分のワクチンの配備計画を中止した[279][280]

ガンマ株(系統 P.1)

ブラジルで最初に同定された変異株である系統 P.1(20J/501Y.V3)は、ファイザー-バイオンテックによるワクチン接種の効果を部分的に免れている可能性がある[281]

系統 B.1.617(デルタ株/カッパ株)

2020年10月、インドで新たな二重変異変異体が発見され、系統 B.1.617と名付けられた。2021年1月まではほとんど検出されず、4月には南極大陸南米大陸を除く各大陸の少なくとも20カ国に広がった[282][283][284]。約15種ある定義された変異の中で、これにはスパイク変異D111D(同義)、G142D[285]、P681R、E484Q[286]、L452R[287]があり、後者の2つは容易に抗体を回避する原因になる可能性がある[288](※後述の系統 B.1.617.2にはG142DとE484Qの変異がなく、代わりにT478K変異がある)。

なお、亜系統として系統 B.1.617.1カッパ株)、系統 B.1.617.2デルタ株)、系統 B.1.617.3の3つがあり、系統 B.1.617.2はWHOなどにより懸念される変異株 (VOC) に指定されている。

デルタ株はウイルス量が多く、感染力が強いとされている。ワクチンを打っていたとしても従来株に比べ感染するリスクが高くなっている、一方でワクチンの効果により重症化リスクは低く抑えられている。また、ワクチン接種者が感染した場合でも、軽症や無症状であったとしても、ワクチン非接種者と同様に体内で大量に増殖しウイルスの感染源となる可能性が指摘されている[289]

臨床試験および認可状況

第I相試験では、主に数十人の健康な被験者を対象に安全性と予備的投与量を試験し、第II相試験では、第I相試験の成功を受けて免疫原性、投与量レベル(バイオマーカーに基づく有効性)、および候補ワクチンの副作用を評価し、通常は数百人を対象としている。第I–II相試験は、予備的な安全性と免疫原性試験で構成され、通常は無作為化、プラセボ対照試験で、より正確で効果的な用量を決定する。第III相試験では通常、複数の施設でより多くの被験者が参加し、対照群を含めて、最適な用量で有害作用を監視しながら、病気を予防するためのワクチンの有効性を試験する(「介入試験」または「ピボタル試験」)[290][291]。第III相試験におけるワクチンの安全性、有効性、および臨床エンドポイント英語版の定義は、副作用の程度、感染または感染量の定義、ワクチンが中等度または重度のCOVID-19感染を予防するかどうかなど、各社の試験によって異なる場合がある[292][293][294]

進行中の臨床試験の計画は、試験でデータを蓄積することにより、治療法の有効性についての肯定的または否定的な早期の洞察が得られる場合には、適応デザイン英語版として変更されることがある[295][296]。候補ワクチンに関する進行中の第II-III相臨床試験における適応デザインは、試験期間を短縮し、被験者数を減らすことができ、早期終了または成功の判断を迅速化し、研究努力の重複を回避し、国際的な拠点間での連帯試験(Solidarity trial)の計画変更について調整を強化する[295][297]

認可または承認されたワクチンのリスト

各国の規制当局は、11種のワクチンの緊急使用許可を与えている。そのうち6つのワクチンは、少なくとも1つのWHO認定の厳格な規制当局によって緊急使用または一般使用が承認されている。

緊急利用許可または一般認可により承認されたワクチン
ワクチン候補薬、開発者、出資者 開発国 ワクチン種類(技術) 接種間隔 保管温度 現在の相(被験者数) 承認数 緊急使用許可数
オックスフォードアストラゼネカCOVID-19ワクチン (Vaxzevria, コビシールド) [a][299][300][301]
オックスフォード大学アストラゼネカ、CEPI
英国 アデノウイルス ベクター (ChAdOx1) 2回

4-12週

2-8 第III相 (30,000) 2 143
ファイザー-バイオンテックCOVID-19ワクチン (コミナティ, トジナメラン)[16][302][303]
バイオンテックファイザー
米国、ドイツ RNA (modRNA脂質ナノ粒子に分散) 2回

3-4週

-70±10℃[b](超低温冷凍庫) 第III相 (43,448) 5 93
スプートニクV COVID-19ワクチン (Gam-COVID-Vac)

ガマレヤ記念国立疫学・微生物学研究センター

ロシア アデノウイルス ベクター (組み換えワクチン、Ad5およびAd26型) 2回

3週

-18 ℃ (冷凍庫) 第III相 (40,000) 2 6
モデルナCOVID-19ワクチン [306][307]
モデルナNIAIDBARDA、CEPI
米国 RNA (modRNA脂質ナノ粒子に分散) 2回

4週

-20±5℃ (冷凍庫) 第III相 (30,000) 2 50
BBIBP-CorV[308]
シノファーム: 北京生物製品研究所
中国 不活化 SARS-CoV-2 (ベロ細胞) 2回

3-4週

2-8℃ 第III相 (48,000) 4 50
ジョンソン・エンド・ジョンソンCOVID-19ワクチン [309][310][311]
ヤンセン ファーマジョンソン・エンド・ジョンソンBIDMC
米国、オランダ アデノウイルス ベクター (組み換えワクチン、Ad26) 1回 2-8℃ 第III相 (40,000) 0 46
CoronaVac[312][313][314]
シノバック
中国 不活化 SARS-CoV-2 (ベロ細胞) 2回

2週

2-8℃ 第III相 (33,620) 1 32
BBV152 (コバクシン)
Bharat Biotech英語版インド医学研究評議会英語版
インド 不活化 SARS-CoV-2 (ベロ細胞) 2回

4週

2-8℃ 第III相 (25,800) 0 14
Ad5-nCoV (コンビディシア)
CanSinoBIO英語版, 中国陸軍医科学院英語版[315][c]
中国 アデノウイルス ベクター (組み換えワクチン、Ad5) 1回 2-8℃ 第III相 (40,000) 1 5
EpiVacCorona[317]
Vector Institute
ロシア サブユニット (ペプチド)[317] 2回

3週

2-8℃ 第III相 (40,000) 1 2
ZF2001英語版(RBD-Dimer)[318]

Anhui Zhifei Longcom Biopharmaceutical Co. Ltd.

中国 サブユニットワクチン組み換えワクチン 3回

30日

第III相 (29,000) 0 2
WIBP-CorV英語版

シノファーム: 武漢生物製品研究所

中国 不活化 SARS-CoV-2 (ベロ細胞) 1回[要出典] 第III相 (51,600) 0 2
CoviVac[319]

The Chumakov Centre at the Russian Academy of Sciences

ロシア 不活化 SARS-CoV-2 2回

2週

2-8℃ 第III相 (3,000) 0 1
QazCovid-in英語版 (QazVac)[320]

Research Institute for Biological Safety Problems

カザフスタン 不活化 SARS-CoV-2 2回

3週

2-8℃ 第III相 (3,000) 0 1
スプートニク・ライト[321]

ガマレヤ記念国立疫学・微生物学研究センター

ロシア アデノウイルス ベクター (組み換えワクチン、Ad26型)[322] 1回 2-8℃ 第III相 (7,000) 0 3
高端(メディジェン)COVID-19ワクチン英語: MVC-COV1901[323]

Medigen Vaccine Biologics中国語: 高端疫苗生物製劑, Dynavax Technologies[324]

台湾 サブユニットワクチン(S-2Pタンパク質+CpG 1018) 2回

28日

2-8℃ 第III相 (5,120) 0 1
  1. ^ Oxford name: ChAdOx1 nCoV-19. Manufacturing in Brazil to be carried out by Oswaldo Cruz Foundation.[298]
  2. ^ Long-term storage temperature. The Pfizer–BioNTech COVID-19 vaccine can be kept between −25 and −15 °C (−13 and 5 °F) for up to two weeks before use, and between 2 and 8 °C (36 and 46 °F) for up to five days before use.[304][305]
  3. ^ Manufacturing partnership with the National Research Council of Canada and Canadian Center for Vaccinology, Halifax, Nova Scotia[316]

ヒト臨床試験中のワクチン候補

製剤

2020年現在、臨床開発中のワクチン候補のうち11種は、免疫原性を高めるためにアジュバントを使用している[20]免疫アジュバントとは、COVID-19ウイルスやインフルエンザウイルスなどの抗原に対する免疫反応を高めるためにワクチンに配合される物質である[325]。具体的には、アジュバントを使用してCOVID-19ワクチン候補を製剤化し、その免疫原性と有効性を高めて、ワクチン接種を受けた個体におけるCOVID-19感染を低減または予防することができる[325][326]。COVID-19ワクチンの製剤化で使用されるアジュバントは、不活化COVID-19ウイルス、および組換えタンパク質ベース、またはベクターベースのワクチンを使用する技術において特に効果的となる可能性がある[326]。ミョウバンとして知られるアルミニウム塩は、認可されたワクチンに使用された最初のアジュバントであり、アジュバント化ワクチンの約80%で選択されるアジュバントである[326]。ミョウバンアジュバントは、炎症性サイトカインの放出を含む免疫原性を高めるために、多様な分子および細胞メカニズムを開始する[325][326]

費用

ある専門家によると、COVID-19に対する効果的なワクチンは、世界的な経済的影響において何兆ドルもの節約となる可能性があり、したがって、数十億ドルの費用はそれに比べれば小さく見えるという[327]。 パンデミックの初期段階では、このウイルスに対する安全性・信頼性が高く、手頃な価格のワクチンを作成できるかどうかは知られておらず、ワクチン開発にどれくらいの費用がかかるかも正確には知られていなかった[10][52][69]。 成功せずに何十億ドルもの投資が行われる可能性もあった[68]

効果的なワクチンが開発されると、数十億回分のワクチンを製造し、世界中に流通させる必要がある。2020年4月、ゲイツ財団は、製造と流通には250億米ドルもの費用がかかると見積もっている[328]。第I相臨床試験では、ワクチン候補の84~90%[51][329]が開発途中で最終承認に至らず、第III相臨床試験では25.7%が承認に至らない[329]。ワクチン候補に対する製造業者の投資額は10億米ドルを超え、先進的な製造契約を結んだ場合には何百万もの投与が無駄に終わる可能性がある[10][68][69]

2020年11月現在、米国の「ワープ・スピード作戦(Operation Warp Speed)」プログラムの下で補助金を受けている企業は、初期価格をインフルエンザワクチンに合わせて1回あたり19.50米ドルから25米ドルに設定している[330]。 2020年12月には、ベルギーの政治家がワクチン生産者とEUの間で合意された機密価格を簡単に公表した[331]

製造者 ワクチン EUにおける投与1回あたりの価格[332]
アストラゼネカ オックスフォード-アストラゼネカCOVID-19ワクチン €1.78
ジョンソン・エンド・ジョンソン ジョンソン・エンド・ジョンソンCOVID-19ワクチン US$8.50
サノフィ / GSK €7.56
ファイザー / バイオンテック ファイザー-バイオンテックCOVID-19ワクチン €12.00
CureVac CureVac COVID-19ワクチン英語版 €10.00
R-Pharm スプートニクV COVID-19ワクチン US$10.00
モデルナ モデルナCOVID-19ワクチン US$18.00

サプライチェーン

2021年以降にCOVID-19ワクチン接種を展開するには、100〜190億本(バイアル)の世界的な輸送と追跡が必要となる可能性があり、この取り組みは容易に史上最大のサプライチェーンの課題となる[10][333][334]。2020年9月の時点で、サプライチェーンとロジスティクス(物流)の専門家は、認可ワクチンを流通させるための国際的および国内的なネットワークが量・緊急性ともに対応する準備ができていないと懸念を表明している。その理由は主に2020年のパンデミックのロックダウンと供給能力を低下させるダウンサイジングの間のリソースの悪化が原因としている[333][335][336]。COVAX(The COVID-19 Vaccines Global Access)パートナーシップ、世界の製薬会社、契約ワクチンメーカー、国境を越えた輸送、保管施設、各国の保健機関など、多数の組織を調整することで直面している世界的な課題について、GAVI最高経営責任者(CEO)であるセス・バークレー英語版は次のように述べている。"何十億ものワクチンを効率的に全世界に届けるためには、サプライチェーンに沿った非常に複雑なロジスティックとプログラム上の障害を伴うことになる”[337]

課題の大きさを強調する例として、国際航空運送協会は、COVID-19パンデミックを経験している200カ国以上の人々に1回分の投与量のみを輸送するだけでも、8,000機の747型貨物機(精密ワクチン保冷装置を導入)が必要であると述べている[338]。GAVIは、「動きの速いパンデミックでは、全員が安全でなければ誰も安全ではない」と述べている[64]

ワクチン技術や初期段階の臨床研究への数十億ドルの投資とは対照的に、ワクチンのライセンス取得後のサプライチェーンは、同様な計画、調整、セキュリティ、または投資を受けていない[333][335][339]。主な懸念は、低・中所得国、特に子どもたちへのワクチン接種のためのワクチン流通資源が不足しているか、または存在しないということである[64][340]。9月には、COVAXのパートナーシップには、172カ国がCOVID-19ワクチンのサプライチェーンを最適化するための計画を調整することが含まれており[341]国連児童基金(ユニセフ)はCOVAXと協力して、92の開発途上国における子どもたちのワクチン接種のための、資金調達とサプライチェーンを準備することになった[342][343]

物流

ワクチン接種のための物流サービスは、必要な機器、スタッフ、国際的な国境を越えた認可ワクチンの供給を保証するものである[344]。物流の中核には、ワクチンの取り扱いとモニタリング、コールドチェーン管理、ワクチン接種ネットワーク内での流通の安全性などが含まれる[345]。COVAX施設の目的は、製造、輸送、および全体的なサプライチェーンのインフラを統合し、参加国間の物流資源を一元化し、平等に管理することである[64][339]。ワクチン予測とニーズ推定、国内ワクチン管理、無駄遣いの可能性、および在庫管理のための物流ツールが含まれている[345]

COVID-19ワクチンの輸送中に国際的に実施される他の物流要因には、以下のものがある[333][346][347]

  • 個々のワクチンバイアルバーコードによる可視化し、追跡可能にする(visibility and traceability)
  • サプライヤー監査の共有化
  • 製造から被接種者へのワクチンバイアル輸送証拠保全の共有化
  • ワクチン温度監視ツールの使用
  • 温度安定性試験と保証
  • 新しい包装・配送技術
  • 備蓄
  • 各国内の物資調整(個人用保護具(PPE)希釈剤英語版、注射器、針、ゴム栓、冷凍庫の電源、廃棄物処理など
  • 通信技術
  • 各国の環境影響

あるワクチン開発者によると、いずれかの段階で物流が不足すると、サプライチェーン全体が脱線する可能性があるという[348]。ワクチンのサプライチェーンが失敗した場合、パンデミックの経済的・人的コストは何年にもわたって長期化する可能性がある[336]

製造能力

2020年8月時点で、安全性と有効性の確立から数カ月が経過した段階で、いくつかのワクチン候補が第III相試験に入った段階にもかかわらず、多くの政府が50億米ドル以上の費用をかけて20億回分以上のワクチンを予約注文した[334][348][349]。英国政府からの2021年のワクチン予約注文は、1人当たり5回分であった[334]。9月には、CEPIは、2021年末までに認可された3種のワクチンを20億回分製造するという資金調達の約束の下、9種のワクチン候補の基礎研究と臨床研究を資金面で支援している[341]2022年までに全体で70億〜100億回分のCOVID-19ワクチンが世界中で製造される可能性があるが、富裕国による大量の事前注文(「ワクチンナショナリズム」と呼ばれる)は、より貧しい国のワクチン利用を脅かすものである[10][334][348]

インド血清研究所は、少なくとも10億回分のワクチンを生産する計画であるが、その半分はインドで使用されると述べている[334]

中国は、10月にCOVAXに参加した後、2020年末までに6億回分のワクチンを生産し、2021年にはさらに10億回分のワクチンを生産することを明らかにしたが、14億人の自国の人口に対して何回分のワクチンを生産するのかは不明であった[350]シノファーム社は、2021年に10億用量以上の生産能力を持つ可能性があると述べている[351]。Sinovac社は、2020年末までに第2の生産施設を完成させ、CoronaVacの生産能力をそれまでの3億用量から6億用量に引き上げることを目指していると述べている[352]

アストラゼネカのパスカル・ソリオ英語版CEOは次のように述べている。"課題はワクチンそのものの製造ではなく、バイアルへの充填にある。世界には十分なバイアルが無い」[353]バイアル製造の高い需要に備えて、アメリカのガラスメーカーは7月にバイアル工場のために1億6,300万ドルを投資した。バイアル製造のためのガラスの入手可能性と、汚染物質の管理が懸念されているが[354]、手頃な価格のワクチンが求められる中、製造コストの上昇と開発者の利益の可能性の低下を示している[64][334][336]

ワクチンは、国際的な規則を用いて取り扱われ、輸送され、ワクチン技術によって異なる温度管理された状態で維持され、保管中に劣化する前に予防接種に使用されなければならない[334][348]。COVID-19ワクチンのサプライチェーンの規模は、脆弱な集団への世界的な配送を確実にするために、膨大なものになると予想される[10][335]。このような流通のための施設を準備するための優先事項には、温度管理された施設や設備、インフラの最適化、予防接種スタッフの訓練、厳格なモニタリングが含まれる[335][337][342]RFID技術は、製造業者からワクチン接種までのサプライチェーン全体に沿ってワクチンの投与量を追跡し、認証するために実施されている[355]

2020年9月、グランドリバー・アセプティック・マニュファクチャリング英語版社は、ジョンソン・エンド・ジョンソン社と、技術移転充填・仕上げ英語版製造を含むワクチン候補の製造を支援することで合意した[356]。2020年10月には、2020年12月に最初の投与量を製造する予定のパートナーであるロンザグループが、スイスのフィスプ英語版でワクチン候補のモデルナを製造することが発表された[357]。新たに建設された2,000平方メートルの施設では、年間3億投与量の製造が開始される予定である。ここで製造されたものは、製造の最終段階のために、スペインのLaboratorios Farmacéuticos Rovi SAに-70℃で冷凍出荷される予定である[357]。ニューハンプシャー州ポーツマスにあるロンザの拠点は、早ければ11月にも米国専用のワクチン原料の製造を開始することを目指している[357]

コールドチェーン

ワクチン(およびアジュバント)は、温度変化に対して本質的に不安定であり、サプライチェーン全体を通してコールドチェーン管理を必要とし、通常は2〜8℃(36〜46°F)の温度で保たれる[347][358]。COVID-19ワクチンの技術は、いくつかの新しい技術の中でも多様であるため、コールドチェーン管理には新たな課題があり、凍結中は安定しているが熱に弱いワクチンもあれば、凍結すべきではないワクチンもあり、また温度を超えて安定しているワクチンもある[358]。凍結による損傷や、現地での接種プロセスにおける人員のトレーニング不足が大きな懸念事項である[359]。複数のCOVID-19ワクチンが承認された場合、ワクチンのコールドチェーンは、気候条件や温度維持のための現地資源が変化する、異なる国の間で、これら全ての温度感受性に対応しなければならない可能性がある[358]シノファームとSinovacのワクチンは、既存のコールドチェーンシステムを使用して輸送できる第III相試験中の不活化ワクチンの例であるが、CoronaVac自体は凍結する必要はない[360][361]

開発中のmodRNAワクチン技術は、大量生産や分解の制御が難しく、超低温での保管や輸送を必要とする場合がある[336]。例として、モデルナのRNAワクチン候補は、氷点下ぎりぎりの温度でコールドチェーン管理をおこなったとしたら保管期間が制限されてしまう。BioNTech-PfizerのRNA候補は、ワクチンの製造から接種までの輸送保管中、-70℃以下での保管を必要とする[362][363]

ワクチンバイアルには数回分のワクチンが入っているが、はじめの投与のために穿刺された後は時間制限があり、それを超えると廃棄されなければならないため、現地での低温保管と接種プロセスの管理に注意を払う必要がある[10][364]。COVID-19ワクチンは、初期展開の間、多くの場所で供給が不足する可能性が高いため、保健当局、各機関および接種スタッフは、供給量が十分な他の一般のワクチンにおいては供給量の30%程度にものぼる腐敗・廃棄処分を、可能な限り回避する事が求められている[333][364]

コールドチェーンはさらに、バイクやドローンなどの地方コミュニティにおけるワクチンの輸送の方法、ブースター投与の必要性、希釈剤の使用、医療従事者、子供、高齢者などの脆弱な人々へのアクセスによっても課題となっている[10][342][365]

国によってはワクチンの長期保管に対応した超低温冷凍庫の数が限られていることや[366]、接種が夏期となるため冷凍庫から接種会場までワクチンを小分けして運べる保冷機材も必要となり、費用の負担が大きい[367]。コールドチェーンの末端では医薬品の専門家以外も多く関わることから、機材の不適切な取り扱いにより低温が維持出来なくなり廃棄に至った事例もある[368]

航空輸送・陸上輸送

国際航空貨物の調整は、COVID-19ワクチンの、時間と温度に敏感な配布に不可欠な要素であるが、2020年9月の時点では、航空貨物ネットワークは多国籍展開の準備ができていない[335][338][369]。「COVID-19ワクチンを安全に届けることは、世界の航空貨物産業にとって今世紀の使命となるだろう。しかし、それは慎重な事前の計画なしには実現しない。そして、そのための時期は今だ。私たちは、各国政府に対し、物流チェーン全体での協力を促進するために主導権を握ることを強く求め、施設、セキュリティの手配、および国境手続きが、前途多難で複雑なタスクに備えられるようにする」と、国際航空運送協会(IATA)の事務局長兼CEOであるアレクサンドル・ドゥ・ジュニアック英語版は2020年9月に発言した[369]

2020年、旅客航空交通量の深刻な減少のために、航空会社は経費を抑えるため人員の削減(レイオフ)、路線の縮小、航空機の保管・売却などで対応していた[335][369]。WHO COVAX施設内でのCOVID-19ワクチンの調達と供給の主導機関として、GAVIアライアンスユニセフは、これまでで最大かつ最速のワクチン展開に向けて準備を進めており、国際的な航空貨物輸送の協力、税関と国境管理、そして複数の国に1回分のワクチンを届けるための8,000機もの貨物機を必要とする可能性がある[342][369]

安全保障と汚職

医薬品は世界最大の市場であり、年間約2,000億ドルの価値があるため、COVID-19ワクチンの広範な需要は、サプライチェーン全体で模倣品、盗難、悪徳商法サイバー攻撃に対して脆弱である[339][370]。偽造ワクチンと本物のワクチンを識別し追跡するための技術的能力の低さ、アクセスの制約、効果的でない能力など、各国間で調和のとれた規制の枠組みが存在しないことは、ワクチン接種を受ける者の命を脅かす可能性があり、COVID-19のパンデミックを永続させる可能性がある[370][371]。包装資材に用いる追跡システム技術は、サプライチェーン全体でワクチンバイアルを追跡するため、製造業者によって使用されており[339]、また、ワクチン接種チームのセキュリティを保証するためにデジタルおよび生体認証ツールを使用している[355][372]

2020年12月、インターポールは、犯罪組織がワクチンのサプライチェーンに潜入し、物理的手段で製品を盗み、情報窃盗を行い、さらには偽造ワクチンを供与する可能性があると警告した[373]

国のインフラ整備

WHOは「効果的なワクチン管理」システムを実施しているが[374]、これには、ワクチン配布のための国・準国家の人員や施設を準備するための優先順位を構築することが含まれており、これには以下のようなものがある:

  • 時間や温度に敏感なワクチンを扱うスタッフの育成
  • ワクチンの保管と輸送を最適化するための堅牢なモニタリング機能
  • 温度管理された設備・機器
  • トレーサビリティ
  • セキュリティ

個々の国内での効率的な取扱い、及び通関のための国境プロセスには、以下のものが含まれる[344][374]

  • 離陸と着陸の許可を容易にする
  • 航空乗務員の検疫要件の免除
  • 効率的な国内展開のための柔軟な運用の促進
  • ワクチン温度要件を維持するための着陸優先権の付与

ワクチン有効期限

事例としてファイザー製(トジナメラン、ファイザー - バイオンテック、BNT162b2、コミナティ筋注)は超低温冷凍庫(マイナス90℃ - 60℃)での保管でも製造日から有効期限6ヶ月[375](ただし、2021年9月10日発行の同ワクチンの添付文書第6版においては、マイナス90℃ - 60℃保管の場合の有効期限が6か月から9ヶ月に延長されている[376])、一般低温冷凍庫で保管可能なモデルナ製(mRNA-1273、COVID-19ワクチンモデルナ筋注)でも現場到着後2 - 3か月程度が限度であり[377]、需要と供給を見据えた在庫・流通管理が重要となる。

2021年10月頃までに、一部の先進国では住民の2回目までの接種がある程度の割合まで一巡し、接種率の伸びが頭打ちになると共に、予め多めに確保していたワクチンに余剰が出る見通しがでてきた。欧米諸国では2021年末までに約2億回分が、日本でも2022年3月末までに約1億回分が有効期限切れに到達する見通しである。有効期限の迫った余剰ワクチンを不足する国へと国際的に融通しあう枠組みの構築が叫ばれている[378]

ファイザー製では有効期限が9ヶ月に延長されているが製品ごとに有効期限日が打刻されており既存品の期限延長は原則として行わない。ただし、島根県松江市では、専門医による同市の予防接種委員会の見解として有効性や安全性に問題なしとし、延長された期限内であれば問題ないとして今後も接種する方針である[379]

賠償責任

物理的に長期の安全性は確認できないため、製造業者には将来的なリスクがあった。これに対し、2020年2月4日、アレックス・アザー米保健福祉長官は、COVID-19に対する医療対策のための「公共の準備と緊急事態への備えに関する法律(Public Readiness and Emergency Preparedness Act)」に基づく通知を公表した。対象を「COVID-19、またはSARS-CoV-2またはその変異ウイルスの感染を治療、診断、治癒、予防または軽減するために使用される任意のワクチン」とし、宣言は「ワクチンの作成における製造業者の過失、または誤った投与量を処方した医療提供者の過失を主張する賠償請求は、故意の不法行為がない限り、除外される」としている[380]。この宣言は米国では2024年10月1日まで有効である。

日本においては、他のワクチンと同様に副反応による健康被害が起きた場合、予防接種法に基づく国の救済制度の対象とされた[381]

誤った情報

SNSでは、COVID-19ワクチンが利用できなかった時期に既に利用可能であるという陰謀論も見られた。様々なSNSの投稿で引用された特許には、SARSコロナウイルスなどの他の株の遺伝子配列やワクチンに関する既存の特許が参照されているが、COVID-19については参照されていない[382][383]

2020年5月21日、「nCoV19 spike protein vaccine」と称するワクチンを販売していた、米国シアトルに本拠を置くNorth Coast Biologics社に対し、アメリカ食品医薬品局(FDA)は中止通知を送ったことを公表した[384]

オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は、西側で開発されたワクチンに関わるフェイクニュースあるいはプロパガンダを中国・ロシアが流布していると主張している[385][386]

他のワクチンに関するデマとしては、次のようなものが挙げられる。

2021年7月19日の読売新聞オンラインの報道[392]では、「英NPO『反デジタルヘイトセンター(CCDH)』の調査によると、SNS上のワクチンに関するデマの65%は、12の個人・団体が発信源」とし、発信源には元アメリカ合衆国司法長官ロバート・F・ケネディの息子のロバート・F・ケネディ・ジュニアも含まれるとしている。対策として、FacebookTwitterで、保健機関が否定した情報の削除、リツイートや「いいね」機能の停止などの措置が行われている[390]

日本での誤情報

中央大学特任教授の武田邦彦YouTubeの番組で、イギリスのワクチン接種の結果から「日本の高校生320万人全員にワクチンをうったら、確率的には50人が死亡するか、それに相当する副作用に見舞われる」と発言した。しかし、イギリスにおいて、ファイザー社・アストラゼネカ社のワクチンを接種したこととの因果関係が認められる死亡例や、それに相当する副反応は報告されておらず、武田の発言は誤りである[393]

ワクチン・パスポート

2021年2月に世界で最もCOVID-19ワクチンの接種が進んでいるイスラエル、翌3月には中国がCOVID-19ワクチンの接種を証明する「ワクチン・パスポート」を発行しており[394]、各国もこれに続くとされている。

4月1日時点でヨーロッパの一部諸国(アイスランドエストニアキプロスジョージアポーランドルーマニア)、中南米でグアテマラベリーズエクアドルインド洋の島国セイシェルといった国々が、ワクチン・パスポート保持者の旅行入国解禁を開始している。但し、国によっては接種したワクチンの製薬メーカーによって有効無効の違いがある[395]

また、ワクチン・パスポートを得るために渡航するワクチンツーリズムも始まっている[396]

日本では、2021年7月26日から、海外渡航者を対象に、ワクチン接種の事実を公的に証明する証明書の交付申請の受け付けを各市区町村で開始する。ただし、日本への帰国時の検疫措置の緩和はない[397]

ワクチンの確保・接種状況

世界の概況

2021年4月10日時点での世界でのCOVID-19ワクチンの接種状況は以下の通り[398]

100人あたりの接種回数 / 累計接種回数

2021年3月下旬時点で、日本の100人あたりのワクチン接種回数は0.4回であり、OECDの37ヶ国中で最下位である[399][400]

2021年9月5日時点での世界でのCOVID-19ワクチンの接種状況は以下の通り[398]

100人あたりの接種回数 / 累計接種回数

なお、2021年9月5日時点で、日本の100人あたりのワクチン接種回数は107.5回であり、3月から半年足らずで1.3億回を超えて急速に進んだ[398]

イスラエル

2021年3月時点でも4月時点でも人口当たりのCOVID-19ワクチンの接種率が世界一となっているのはイスラエルである。ユダヤ人ディアスポラとのコネクションを通じてファイザー社の経営幹部から大量のワクチンの優先的な提供を受ける約束をリークすることにより、政治的不安定に直面するネタニヤフ首相の挽回戦略だとメディアが分析した[401][402]

イスラエルのコロナワクチン対策専門家チーム代表で、イスラエル国内最大の保健機構「クラリット」のチーフ・イノベーション・オフィサーでもあるラン・バリチェルが2021年3月24日に、日本記者クラブ主催のリモート講演会で語ったところによると[403]、「昨年(2020年)の12月19日から高齢者優先で始まったワクチン接種は、16歳以上の全住民に対象が拡大され、イスラエル国民約920万人の60%がすでに接種済みで、50%が2回接種済み。特に50歳以上は80%が2回目の接種を受けており、高齢者はワクチンで守られている[403]」とのことであり、イスラエルが世界で最も早くワクチン調達できた理由は「昨年の12月より前にワクチンメーカーと事前購入契約を結んでいた。さらに感染が増えた場合にはファイザーや、ほかのメーカーと優先的に提供してもらう契約をしていた。」と説明[403]。そして「その代わり、感染に関するデータは世界で共有するという条件が付いていた。つまりイスラエルがワクチン接種の『テストベッド』になることで大事なワクチンをより早く調達できた」と説明した[403]

イスラエルでのワクチン接種のしかたについては、「イスラエルではワクチン接種するためにワクチンクリニックを各地にオープンした[403]」と言い、数百というクリニックを1週間でイスラエル全土に展開した、という。大きな病院や広場にテントを張るなどしてクリニックを設営し、接種を受けた人の管理は、20年前にデジタル化した電子カルテを使って行い、誰が接種を受けたか、2回目の接種の日時の案内も1回目を受けた時点で決まるようにした、と言い、イスラエルではデジタル化が進展していることが効率的なワクチン接種に大いに役立ったと明かした[403]。また「透明性の確保が重要だった。われわれが知っていることと、分からないことをクリアなメッセージとして隠さず国民に伝えた[403]。」と語った。

接種を促進する手法については「接種を受けた人には『グリーンバッジ』を付けてもらっている。」と説明。「スマホで接種を受けたことを証明するマークを受信しておけば、レストランの店内で食事ができ、コンサートや文化イベント等にも参加可。それに対して、接種を受けていない人はレストランの店外でしか食事ができないとするなど、接種を受けた人と受けてない人に違うルールを適用したことで、経済活動を安心して再開することができ、接種を増やすインセンティブにもなった」と説明[403]

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国は2021年7月時点で、総人口に対するワクチン接種率が49%で頭打ち傾向にある。アメリカ合衆国大統領ジョー・バイデンは同年7月29日の演説で、アメリカ合衆国連邦政府の財政負担により、各地方当局がワクチン接種者に100ドルを給付して接種を促すよう呼びかけたほか、連邦政府の職員と取引企業従業員に対する接種状況開示の義務化を表明した[404]

日本

概況

日本では、予防接種法附則第7条第2項の規定による同法第6条第1項の臨時接種の形態で行われる[405]

2021年2月17日から、最初に薬事承認されたファイザー製ワクチンの接種が、医療施設の医療従事者を対象に開始された(実施主体は都道府県)。次いで、市区町村が実施主体となり、4月以降、65歳以上の高齢者を対象に接種の予約が開始された。

5月24日からは東京都心(大手町)と大阪市内に開設された国(自衛隊)による大規模接種センターが開設され、対象地域が全国に拡大されたのち、6月17日からは対象年齢が18歳以上に拡大された。

6月13日以降、企業や大学での職域接種が開始されている。

問題点

大多数の国民および住民に急速かつ一気呵成にワクチンを接種する目的上、接種に当たり、以下のような問題点が顕在化した。

  • 各自治体ごとに実施方法や予約方法が異なること
    • 学校や公共施設での集団接種、地域の病院やクリニックでの個別接種、両者の併用があり、自治体によって予約方法が異なる場合がある(特設サイトで予約、医療機関への特設サイトや自院サイト、電話による直接予約(可能な自治体と不可能な自治体が混在)、コールセンターへの電話、自治体が場所や日時を指定して通知(例:新潟県上越市[406])、ほか)
    • 大量アクセスが原因の予約システム(インターネット、電話)のパンク[407]などの混乱
      • 特に、インターネットを使えない高齢者を中心に、予約が取れない事態が発生[408][409]
    • 東京や大阪に開設された国(自衛隊)の大規模会場との二重予約によるワクチンの無駄の発生の懸念[410]
  • 接種を行う医師看護師の不足が表面化
    • 出産や育児、定年などで退職した看護師を呼び戻した[411]ほか、歯科医師研修医による接種も一部で行われており[412][413]、さらには薬剤師医学生による接種まで検討される一方で[414]、接種も純然たる医療行為である事などから法改正などハードルが高く厚労省は消極的姿勢である[415]
    • なお、看護師以外のコ・メディカルでは、救急救命士臨床検査技師による接種を可能にする方針が示された[416]
    • 企業や大学の職域接種では、接種を行う医療スタッフを自力で確保する必要があり、専属の産業医を抱えるレベルの企業や、医学部を持つ大学に事実上限られる(特に後者は、自治体の接種にスタッフを派遣したり会場を提供したりしている)[417]
  • 各自治体(都道府県、市区町村)毎の住民の接種率の格差の発生[418]
    • 人口の少ない自治体では、16歳以上の希望者に対するワクチン接種を5月でほぼ完了したところもある(例:福島県檜枝岐村[419])。一方、北海道根室市のように65歳以上の接種完了を「9月上旬」とするところもある[420]
    • 特に、6月より拡大された12歳以上への接種を開始した自治体への、ワクチン忌避派によると見られる抗議電話(電凸)の発生[421][422]
    • 東京・大阪の自衛隊の大規模会場の対象年齢が、6月17日からモデルナワクチンの対象年齢である18歳以上に拡大されたが[423]、接種には自治体から発送される接種券が必要であり、自治体が発送しない限り接種を受けられない[424]
  • 内部での管理ミス
    • 取り扱いミスにより使用できなくなったワクチンの廃棄(後述)[425][426][427][428]
    • 同じ人に対して3週間以内(当日や翌日など)に2回目の接種[429]
    • 希釈時のミスによる濃度の薄いワクチンの誤接種[430][431]
  • 針刺し事故などの過誤による医療事故
    • 接種者の指に誤って刺した後に、接種シリンジごと廃棄せずに針だけを交換して被接種者に接種、感染症のおそれ[432]
    • 被接種者へ使用済みの注射器セットを誤って別の被接種者に穿刺、感染症のおそれ[433]
  • 自治体(保健所、市区町村役場)などを騙り、ワクチン接種に絡めて金銭や個人情報などを求める不審電話や個別訪問などの発生[434][435]
  • ワクチンに関する誤情報(デマ)SNSでの拡散による若年層の接種手控え[436] → 前述の「誤った情報」節を参照

日本でのワクチンの確保

2020年6月5日 - 加藤勝信厚生労働大臣(当時)は、2021年前半までにコロナワクチンの量産体制を整備していくと表明し、2020年度第2次補正予算1455億円でワクチンの開発企業に対し生産体制の整備を前倒しして進めるための費用を補助する方針を示した[437]

2020年6月14日 - 安倍晋三内閣総理大臣(当時)は、ニコニコ生放送の番組内で「早ければ年末にワクチンを接種できるよう米モデルナ社や英アストラゼネカ社と交渉している」と回答した[438]

2020年7月、アメリカ合衆国連邦政府のワクチン戦略「ワープスピード作戦」担当高官は、ワクチンについて2020年6月16日に「最優先は米国民の保護。余剰分を他国が手に入れるのは妨げない」と述べていた[439]

2020年9月30日、日本政府がコロナワクチンの接種に関して、自己負担を求めず全国民を無料とする方針を発表した[440]

2021年1月18日、菅義偉内閣総理大臣(当時)は、河野太郎規制改革担当大臣(当時)をワクチン接種の担当閣僚「新型コロナウイルスワクチン接種推進担当大臣」に任命した[441]。続く1月19日には、2月中旬にワクチンを承認した後、2月下旬より安全性調査に参加する医療従事者から接種を始め、以降医療従事者、65歳以上の高齢者、高齢者施設や障害者施設で働く人、持病のある人を優先的に接種した後、5月より一般の人への接種を始め、7月までに16歳以上の全国民を対象に接種を進める想定スケジュールが政府により発表された[442]

2021年1月23日時点で、日本政府がワクチンの開発成功を前提に、モデルナ、アストラゼネカ、ファイザーの3社と供給を受ける契約を結んだ[99]

1月28日の報道では、兵庫県芦屋市に本社を置く医薬品メーカー、JCRファーマがアストラゼネカの日本国内向けワクチン9,000万回分(4,500万人分)の原液製造を日本国内にて行う予定と発表された[443]

日本での各自治体でのワクチン接種に先立ち、2021年1月27日、神奈川県川崎市川崎市立看護短期大学の体育館で、川崎市と厚生労働省による、ワクチン接種訓練が行われた[444]

また、2021年1月30日には、東京都練馬区が、2021年春以降開始のワクチン接種に向けて、小規模診療所でのワクチン接種を主体とし、公共施設での大規模接種を組み合わせた「練馬区モデル」を発表し、厚生労働省は先行事例として、全国の自治体に情報提供した[445]京都府京都市栃木県佐野市など全国各地の自治体で、この「練馬区モデル」を導入する方針を固めた[446][447]。その後、2021年5月から、全国各自治体で接種が本格的に開始されるようになると、都市部を中心に多くの自治体で、個別接種を中心とし、一部に集団接種を組み合わせた方式が採用されている。

2021年2月12日には日本国内向けのアメリカのファイザー製ワクチンの第1便が、ファイザーの製造工場のあるベルギーから千葉県の成田国際空港に、旅客機による貨物便(ボーイング787-9)で到着した。輸送はCOVID-19流行以前から定期就航しているANAが担当した[448]。第2便は2月21日に、第3便は3月1日に、第4便は3月8日に成田に到着している[449][450][451][452]。(2月12日~3月8日の)4回の空輸で最大約236万回分、約118万人分が確保された[452]。4月5日到着の第11便では、輸送量の増加のため機材がさらに大型化(ボーイング777-300ER)された[453]

4月23日に菅総理は記者会見で、「7月末を念頭に各自治体が(高齢者への)2回の接種を終えることができるよう、政府を挙げて取り組む」と述べた[454]。河野大臣は28日の衆院内閣委員会で、この方針の根拠を示さなかった[455]。また厚生労働省も26日、治体の状況を把握中だ」として、7月末とした根拠を答えなかった[456]

4月26日の週には、全市区町村に975回分に相当する量のワクチンが配布される予定[457]

4月30日には、日本国内向けのモデルナ製ワクチンの第1陣が、ベルギーから関西国際空港JAL機で到着した[458]

5月24日、アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンヤンセンファーマ)が、厚生労働省に同社製の1回投与型ワクチンの製造販売承認を申請したと発表した[459]。ただし、申請時点では、ファイザー・モデルナ・アストラゼネカのような日本政府との供給契約は結んでいない[109]

6月1日、厚生労働省はファイザー製の新型コロナウイルスワクチンについて、これまで16歳以上を公費負担の接種対象としていたが、この日より12歳以上に接種対象を拡大した[460]

6月9日に行われた党首討論で、菅首相はワクチン接種について「10月から11月にかけて必要な国民には全て終えることを実現したい」と発言した[461]

8月には、モデルナ製ワクチンについても公費接種を12歳以上に拡大し[462]、アストラゼネカ製ワクチンは、原則40歳以上を対象に公費接種のワクチンに追加された[99]

8月26日、厚生労働省はモデルナ製ワクチンの一部に異物混入が同月16日以降相次いで見つかったことをうけ、異物混入が疑われるロットの同社製ワクチン約163万回分の使用見合わせを発表[463]。9月1日、モデルナ社による調査の結果、異物は製造機器の組立て時の不具合により混入したステンレスの破片であったことが分かり、問題のロットの製品は企業により自主回収されることとなった。また、回収対象のロットとは別のロットの製品に、ゴム片が混入しているものが見つかっているが、製造や採取の過程で蓋のゴムの一部が混入したと考えられる場合は、接種の継続は可能だとしている[464]

ワクチンの接種状況(初期)

2021年1月末時点では、既に先進各国でワクチン接種が本格化する中、日本の接種開始の遅れが際立っていた。主要先進国の中で、ワクチンの承認に至ってないのは日本だけだった[465]

3月16日にCOVID-19ワクチン(ファイザー製)の接種を受ける菅義偉首相(当時)。4月16日に行われる日米首脳会談の渡米のためと言う[466]

同年2月14日には日本でもファイザー製mRNAワクチンについて厚生労働省の特例承認があり[467]、国内で2月17日に接種開始された。公的な1人目の接種者は、東京都目黒区国立病院機構東京医療センター院長であった。医療従事者への接種から優先的に開始された[468]。「今後、順次、各都道府県の病院で、医療従事者向けの接種が進められる」などと説明された。

2021年3月下旬時点で、日本の100人あたりのワクチン接種回数は0.4回であり、OECDの37ヶ国中で最下位であった[469][470]。同年4月27日時点で、1回以上接種したのは人口の1%あまりであり、アジア全体の4%と比べても低い値であった[471]。その後、期間を経て急速に接種率が上昇し、9月13日、ワクチンの2回目接種済人数は全人口の50.9%となり[472]、うち65歳以上の高齢者では88%であった[472]。同年10月4日時点では、ワクチンの2回目接種済人数は全人口の60.9%、1回目完了だと71.3%であった[473]

日本では当初、12歳以上(アストラゼネカ製は原則40歳以上、特に必要がある場合18歳以上)を対象に[474]、ワクチン接種の優先順位ガイドラインを以下の順序で定めた[475]

  1. 医療従事者等(病院診療所の職員、薬剤師救急隊員、保健所の職員など)[476]
  2. 昭和32年(1957年)4月1日以前に生まれた人(65歳以上の高齢者)
  3. 高齢者以外で基礎疾患(心臓病糖尿病BMI30以上など)を有する人や高齢者施設等の従事者[476]
  4. 上記 1. - 3. 以外の人
東京都渋谷区が住民あてにワクチン接種券を送付した封筒

同年3月、まず医療従事者などへのワクチンの優先接種が本格的に開始。同年4月15日時点で、優先接種対象の医療従事者等480万人のうち2回目の接種を完了したのは約68万人(14%)、1回目完了が117万人(24%)であった。優先接種対象の医療従事者等にはには新型コロナウイルスの感染者に接する機会が多い検疫所や保健所などの職員も含まれていたが、この時点ではワクチン供給量が不足しており[476]、NHK取材では検疫所の職員が接種を受けられていない状況であった[477]

4月27日時点では、医療従事者等のうち1回目の接種が完了したのは3分の1程度であった[471]

第2順位の65歳以上の高齢者に対しては4月12日に一部の自治体で接種が開始され、4月26日以降本格的に接種が開始された。第1順位の接種を受ける医療従事者の数が当初の想定より100万人多い470万人に増えたことや接種対象となる高齢者が約3600万人に上ること、日本で広く使われる注射器では1瓶から6回分を採取できないこと、ファイザーのワクチン増産が5月以降となることなどから、スケジュールの遅延が予想された[449][478][450]。前述のように医療従事者等へのワクチン接種が遅延したことから、自治体によっては配布された高齢者向けワクチンを地域の医療従事者用に転用するところもあった[479][480]

また、キャンセルなどでワクチンの余りが出ることに対しての有効利用について、一部自治体首長や職員が接種するケースが相次いで出ており、特に高齢者へのワクチンの接種予約が取りにくく混乱を生じている中で、公平性の観点から問題視する意見が一部で出ている[481]が、ワクチン接種推進を担当する河野太郎行政改革担当大臣は「貴重なワクチンが廃棄されているのは極めて許しがたい状況だ。町長が先に打ったとか、いろんなことで批判され、批判を恐れて廃棄するようなことがないように、自治体の裁量で有効活用してほしい。批判があれば、私が責任をとる」と、ワクチンの有効利用の観点から接種を容認する見解を述べた[482]

注射器に起因する1瓶あたりの接種回数の問題に関し、京都府の宇治徳洲会病院は、条件が合えばインスリン用注射器でファイザー製ワクチンを1瓶から7回接種可能であるとした[483]。また、テルモは1瓶から7回接種可能な注射器を開発し同年3月末から生産を開始[484]

同年4月26日、政府が東京都大阪府に1日1万人規模の接種会場の設置を明らかにし、27日に菅義偉首相が自衛隊による接種会場を東京都に設置するよう指示した。期間は5月24日から3カ月の方針。場所は東京都は大手町合同庁舎、大阪府は大阪府立国際会議場(大阪市中之島)に決まり、東京・大阪とも5月24日から開設された[485]。ワクチンは管理の混乱防止のため、既に自治体に配布されているファイザー製ではなく、承認審査中のモデルナ製が(承認を前提に)使用されると報道された[486][487][488]。また、東京都町田市ではサッカーJリーグFC町田ゼルビアのホームスタジアムである町田市立陸上競技場(施設命名権名称・町田GIONスタジアム)を集団接種会場として使用する[489]など、各自治体が、国技館、競技場、競馬場など大規模施設を利用した接種会場の設置を実施あるいは検討している[490][491][492]

5月21日、モデルナ製ワクチンおよびアストラゼネカ製ワクチンが、厚生労働大臣により特例承認された。これにより、日本で3種類の新型コロナウイルスワクチンが承認されたが、このうちアストラゼネカ製のウイルスベクターワクチンに関しては、まれに血栓症を発症する副反応例が海外で報告されていることから、当面の間は日本国内での公的な接種を見送ることとなった[493](後述のように、以後に公的接種は再開されている)。同月23日、自衛隊が運営する大規模接種会場となる大阪府立国際会議場でモデルナ製ワクチンの接種が自衛隊員や民間看護師らに行われた。翌24日から東京・大阪の大規模接種会場で65歳以上の高齢者を対象にモデルナ製ワクチンの接種を開始している[494]

全国の自治体に総務省・厚生労働省が調査を実施した結果、5月21日発表では92.8%の自治体が「7月末までに高齢者の接種を完了予定」と回答した[495]

6月1日、政府が地域の負担軽減と接種の加速化を図る目的で、企業や大学などでの職域接種を同月21日から始めると発表した。東京・大阪の自衛隊による大規模会場と同じモデルナ製ワクチンを使用する[496]。実際には同月13日から全日本空輸ANAホールディングス)、14日から日本航空読売新聞社といった一部の企業が前倒しで職域接種を開始[497]。その後、職域接種の申請が想定を上回るペースで行われたことで、使用するモデルナ製ワクチンの供給が不足する可能性が出てきたことから、6月25日17時をもって申請の一時休止を政府が発表[498]。職域接種用のモデルナ製ワクチンの1日の配送可能量が上限に達し、それがボトルネックとなりワクチンが不足する可能性が出てきた事が主な原因である。また、企業などが従業員らの数より過大な量を申請したケースもあるとみて精査したが、結論として同月30日に菅首相はワクチン接種などの進捗に関する関係閣僚会議で職域接種申請の新規申し込みを事実上一時休止すると表明。この時期には、自治体が実施する大規模接種についてモデルナ製のほかファイザー製でも対応することを検討しているが、ワクチン供給の見通しが立たず、予約の受け付けを中止する自治体も出始めていた[499]

また、厚生労働省は血栓症発症の副反応リスクがあることから公的接種での使用を見送っていたアストラゼネカ製ワクチンについて、60歳以上を対象に公費接種を認める方向で調整を進めていた[500]が、同年7月30日に原則40歳以上を対象に公費接種の対象に追加することを決め[501][502]、8月3日より正式に追加された[99]

ワクチンの接種状況(中後期)

前述のように諸々の混乱がありつつも日本国内のワクチン接種率は順調に推移し同年10月4日時点で、ワクチンの2回目接種済人数は全人口の60.9%、1回目完了だと71.3%であった[473]。NHK報道によるイギリスの統計任意団体「Our World in Data英語版」の調べによれば、各国の保健当局が予定した接種回数(通常2回、国により3回)までの接種率(接種済人数の人口比統計)では、日本は同年10月17時点統計で66.47%と、イギリスの65.7%、ドイツの65.15%、米国の56.17%を抜いており世界的にも遜色のないレベルとなっている[503]

また、接種の優先順位の問題も、あくまでも対応は自治体の裁量に委ねられているため自治体によって対応に差異があるが、概ね夏季後半頃までに概ね解決し、多くの自治体で希望者は比較的速やかにワクチン接種ができるような予約状況になっている[504]

その一方で、自治体によりワクチン供給確保の状況に大きな差が出始めている。10月13日報道によれば、人口二百数十万人(同年)を抱える名古屋市で、大規模会場などで予約枠が100%埋まらず、一部時間帯では予約なし接種対応が可能になっている一方で、三重県桑名市では、三重県から供給されるファイザー製ワクチンの供給が先細り、10月17日以降、接種の対応ができず予約不能の状況に陥っているとのことで、自治体間の接種対応の格差が表面化しつつある[505]。また、福島県郡山市や広島県広島市でも、同年10月にかけてファイザー製ワクチンの供給枠確保が国・県から示されないため、同社製ワクチンの予約受付を一時停止し、モデルナ製を推奨する状況になっている[506][507]

接種率の上昇の一方で、若年層の接種率の低迷が問題となっている。大阪府では10月15日報道時点で、20代と30代の若年層の1回目接種率がようやく50%台に到達した状況となっている[504]

ワクチンの誤廃棄問題

2021年時点まで、日本国内だけでなく、世界的観点からもワクチンの総需要に対し供給はまったく不足しており十分ではなく、前述のとおり、接種の推進上だけでなく道義的にも正しく利用されず廃棄される事には問題があり、河野行政改革担当大臣(当時)は2021年5月21日の会見で、余剰ワクチン廃棄に対し「極めて許しがたい」と異例の表明をしている[508]

そのような状況下でも、多数の住民に急速に接種する関係上、種々諸々の取り扱いミスや誤手続その他の原因で以下のような誤廃棄が相次いでいる。ミスなどではなく、接種を予約した住民が接種当日までに連絡を入れず無断キャンセルしたため、やむなく廃棄に至った事例もあり、注意を呼び掛けている[509]

また前述のとおり、一部のタイプのワクチンには極低温など厳密な温度管理が求められ有効期限も短いものであり、例としてファイザー製は超低温冷凍庫での保管でも有効期限6か月[375]、一般低温冷凍庫で保管可能なモデルナ製でも現場到着後2 - 3か月程度が限度であり[377]、需要と供給を見据えた在庫・流通管理が重要となってくる。

主なワクチン誤廃棄事件(20回分以上)
日時 場所 廃棄数 原因 出典
2021年5月24日まで 神戸市 約1200回分 保冷庫の電源プラグ脱落(通路上に延長コード放置)、保冷容器に入れず裸のまま配送など [427]
2021年5月26日まで 東京都八王子市 約258回分 希釈手順の誤り [510]
2021年5月29日 川崎市 150人分 通常の冷蔵庫に移動後、温度管理ミスにより [425]
2021年6月1日 堺市 210人分 接種会場で夜間にブレーカーの誤操作 [426]
2021年9月17日 三重県津市 4800回分 接種会場で夜間にブレーカーの誤操作
2021年9月27日 東京都 24回分 冷蔵庫の温度管理ミス(温度設定ダイヤルの誤操作と推定) [511]
2021年9月29日 愛媛県西予市 84回分 接種施設医療機関において配水道管の老朽化により漏水し浸水、漏電により停電 [512]
2021年9月27日 埼玉県加須市 54回分 冷蔵庫の温度管理ミス(故障と推定) [513]
2021年9月29日 群馬県太田市 2890回分 冷蔵庫扉の開放による温度上昇 [514]
2021年10月1日 茨城県水戸市 666回分 接種施設医療機関において高圧配電盤不良により停電、非常用発電対象外かつ補助電源装置も無く冷蔵庫温度上昇 [515]
2021年10月5日 茨城県つくば市 4800回分 何らかの理由によりブレーカー断および冷蔵庫停止、温度上昇 [516]
2021年10月5日 埼玉県ふじみ野市 420回分 冷蔵庫のコンセント抜けにより温度上昇   [517]
2021年10月6日 埼玉県所沢市 384回分 保冷庫から冷蔵庫に移動の際に異なるロット番号の瓶を混在させたためロット番号管理不能となったため廃棄 [518]
2021年10月8日 兵庫県たつの市 144回分 冷蔵庫扉の開放による温度上昇 [519]
2021年10月11日 名古屋市 当月、通算102人分 無断キャンセルが88人に上ったため66人分をやむなく廃棄 [509]
2021年10月11日 仙台市 294人分 冷蔵庫の故障による温度上昇と推定 [520]
2021年10月11日 奈良県橿原市 110人分 冷蔵庫の温度管理ミス(原因不明) [521]
2021年10月12日 秋田県大仙市 1128回分 保冷庫に入れず放置 [522]
2021年10月13日 静岡市 204回分 冷蔵庫扉の開放による温度上昇 [523]
2021年10月14日 埼玉県越谷市 864回分 計画停電に伴う補助電源への切替時の誤操作 [524]
2021年10月14日 兵庫県西宮市 250回分 補助電源の何らかの不具合 [525]
2021年10月14日 佐賀県唐津市 72回分 冷蔵庫扉の開放による温度上昇 [526]

妊婦に対するワクチン接種

妊婦は同世代の妊娠していない女性と比べて、新型コロナウイルスに感染した場合に重症になりやすく、また早産や妊娠合併症、胎児への悪影響のリスクが上がることが報告されており[527]、 妊娠中、授乳中、妊娠を計画中の人でも、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンを接種することができる[528][529]。 しかし、「妊娠中の者については使用実績が限定的であること等」を踏まえ、妊婦は予防接種法上の努力義務の規定を適用しないものとされ[530][531]、優先接種の対象からも除外された[532]

妊娠中にmRNAワクチン接種をした約3万5千人の女性の追跡研究の報告では、発熱や倦怠感などの副反応の頻度は非妊娠女性と同程度であり、胎児や出産への影響は認められなかった[533]日本産科婦人科学会日本産婦人科医会日本産婦人科感染症学会は、妊婦向けの声明を発表し、希望する妊婦はワクチンを接種することができること、ワクチンを接することのメリットがデメリットを上回ると考えられていること、あらかじめ健診先の医師に接種の相談をしておくこと、などについて言及した[534]。 2021年8月14日に第2報を発信し、妊婦が時期を問わずワクチンを接種することを勧めるとともに、妊婦への感染源となりがちな妊婦の夫またはパートナーに対しても、ワクチン接種をお願いした[535]

2021年8月23日、厚生労働省は、「妊娠中の者及び配偶者等(中略)が希望する場合には、できるだけ早期に、円滑に新型コロナワクチンの接種を受けることができるよう、(中略)特段の配慮をお願いいたします。」との事務連絡を各都道府県および市区町村に対して行った[536]

なお、COVID-19に罹患した妊婦から出生した新生児の管理について、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き(第5.2版)には具体的な記載はないが[537]日本新生児成育医学会が示した指針では、「新型コロナウイルス陽性母体と新生児との接触は、母体の隔離期間が終了後とする」とされ、母子分離のデメリットに関する懸念が付記されている[538]

副反応

シンガポールでは16歳のトレーニング中の男性が心不全で死亡したことから、保健省が接種から1週間は激しい運動を控える必要があると勧告している[539][540]。2021年10月、日本でもモデルナのワクチンについて厚生労働省は、まれに若い男性で心臓の筋肉などに炎症が起きるおそれがあるとして、念のため10代と20代の男性に対してはファイザーのワクチンの接種推奨の検討を始めた。フィンランドでも30歳未満男性にモデルナ製の接種の中断措置を採っている[541]

2021年10月現在、厚生労働省は日本国内でファイザー製について先行的に接種を受けた医療従事者2万人を、モデルナ製については高齢者の接種と並行して、1万人程度の自衛隊員を対象に副反応の調査を行った。疼痛・頭痛・発熱、接種部位の痛み等が見られた[542]。新型コロナワクチンの副反応疑い報告についても厚労省サイトで公表され、血小板減少症を伴う血栓症、心筋炎・心膜炎、アナフィラキシー、死亡例について検証されている[543]

ワクチン接種に伴う医療事故

接種業務を直接実施する看護師医師が不足しており、暫く看護師等業務から引退していた看護師等を呼び戻したり、歯科医師、研修医による接種も行われている[411][412]。薬剤師や医学生、看護学生等による接種も検討されたが[414]、接種も純然たる医療行為(医行為)である事などから法改正などハードルが高く厚労省は消極的姿勢である[415]。また救急救命士臨床検査技師による接種も検討されている[416]

比較的扱いの容易な筋肉内注射とはいえ、針刺し事故などの過誤による医療事故が接種に伴い発生している。

  • 接種者の指に誤って刺した後に、接種シリンジごと廃棄せずに針だけを交換して被接種者に接種、感染症のおそれ[432]
  • 被接種者へ使用済みの注射器セットを誤って別の被接種者に穿刺、感染症のおそれ

その他

2021年7月6日、宮内庁は天皇徳仁が6日午後、ワクチンを接種したと発表した[544]。(なお、上皇夫妻など高齢の皇族については、一般の高齢者の実施状況に倣って6月より接種が行われたことが報道されている[545]

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ COVID-19ワクチンが不妊を引き起こすという主張を根拠なく行っている人物としてはマイケル・イードンらが挙げられる[388]

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関連項目

外部リンク