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悪徳商法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

悪徳商法(あくとくしょうほう)は、企業や経営者が不当利益を得るため、社会通念上問題のある商売方法の通称。警察庁では、「一般消費者を対象に、組織的・反復的に敢行される商取引で、その商法自体に違法又は不当な手段・方法が組み込まれたもの」を、悪質商法と呼んでいる[1]問題商法(もんだいしょうほう)とも呼ばれる。元暴走族や半グレが流れ込んでいる、屋根設備点検商法(業者が屋根を破壊)や水道給排水設備の悪徳業者など多数の種類があり、特殊詐欺やマルチ商法、フィッシング詐欺などと並ぶ社会悪となっている。業者を依頼する際には、必ず「合い見積もりを取る」ことが必要である。

概要・類型

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利殖商法

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未公開株」「海外事業への出資」「絶対に儲かる」などを謳って実態のない投資話を持ち掛け出資金として多額の金を騙し取る手口[1]。日本各地の消費生活センター等に寄せられた被害件数は2011年から2013年までに7539件(68.0%)減少したが、高齢者(65歳以上)比率が68.5%から70.5%まで高まった[1]消費者庁によると、2012年までの調べで利殖商法に関する生活相談が増加しており、怪しい社債や換金性に乏しい外国通貨(イラク・ディナールスーダン・ポンドなど)の取引をもちかけるケースが急増した[2]

アポイントメント商法

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景品受け取りやお得なクラブへの入会などと称して指定された場所に消費者を出向かせ、その場所で執拗な勧誘を行って契約させる手法[3][4]。契約するまで帰らせない監禁商法にあたる場合もある[5]。3月から5月にかけて若者の被害者が多い[5]。クラブに入会させられ入会金を支払わされた後、再度連絡され、会費が支払われていないなどとして二次被害を受ける事例が増えていると東京都消費生活総合センターが2007年に発表した[6]

点検商法

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「無料で屋根や家屋を点検する」などと称して家庭を訪問し、客を騙す業者がいる。オーナーが半グレのケースも多く、屋根リフォーム詐欺業者は、屋根の無料点検と称して屋根に昇り、屋根に破損個所がない場合は、金づちで破壊(器物損壊罪)してしまうのである[7]。契約が成立した場合、被害者に請求する金額は、一般の業者の相場の約2倍である[7]。家屋面積20坪で相場50万円台のところ、半グレ業者は100万円以上を請求する。半グレのオーナーがSNSに芸能人との写真をアップしている場合もある。[7]悪徳業者については、業界団体がウェブサイトで注意を喚起している。[8]そのほかに「柱にヒビが入っている」「シロアリがいる」「このままでは家が倒れる」など、事実に反する情報を伝え、シロアリ駆除・補強工事など高額の契約をさせる手口[9][1]。虚偽説明をされた場合や価格・性能など重要事項を故意に告げられなかった場合は消費者は契約を取り消すことができる[10]。屋根破壊では逮捕者が出ている。

おとり広告商法

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水道給排水設備業者が代表的で、電話帳やネットに3300円~、5500円~などとおとり広告を出稿しながら、実際にはその15倍ほどの高額な料金を請求し、ついでに敷地の備品や庭園を破壊する場合もある悪徳業者が存在する。[11]

50音順一覧

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悪徳商法、悪質商法、脱法行為、違法行為を掲載する。

主要な事件

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被害金額の大きな日本の事例としては安愚楽牧場事件(4330億8700万円)[12]豊田商事事件(約2000億円)[12][13]天下一家の会事件(約1896億円)[14]全国八葉物流(約1600億円[15]、1500億円[12])、円天(L&G)事件(1000億円[12])、大和都市管財(約1100億円)[15]、KKC(経済革命倶楽部)事件(350億円)[12]などがある。

特徴と対処法

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以下の特徴のいずれか1つでも該当すれば「悪徳商法」と考えてよい[要出典]

広告・勧誘・契約方法などに問題があるもの

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  • 意思の合致がないのに、一方的に契約の成立を主張するもの。
    • 契約の流れに便乗し、必要のない商品(付属品など)を余計に購入させるもの(おとり商法)。
  • 勧誘目的を隠して、接近してきたり、誘い出したりするもの。 - 当選商法デート商法挨拶商法など。
  • 申し込みをしていないのに、商品などを一方的に送り付けるもの。
  • 水道局消防署電力会社NTTNHKなどの企業・官公庁・団体の社員(職員)を騙り接近してくるもの。
    • 身元を詐称するため、制服や身分証(社員証、名刺など)を偽造する場合も含む。
  • 名ばかりの営業所の業務のたらい回し。
  • 大手企業(またはその関連会社)であるように騙って接近してくるもの。
  • 虚偽・誇大または意図的に誤解を招く曖昧な説明の広告など。
  • 効果や結果などが断定できないのに、断定調で広告や勧誘をするもの。 - 「最低でも2kgは痩せる」「○○株は必ず上がる」など。
  • 金融商品などリスクを伴う商品やサービスなどについて、期待できる利益ばかりを強調して、予測されうる不利益または「不利益の発生は自己責任である」旨の説明を行わないもの。
  • 契約内容について十分な説明をしなかったり、検討する時間を十分に与えず、早期の契約締結を迫るもの。
  • 勧誘を拒んでも、再び勧誘するもの。
  • 強迫詐欺などを手段として、契約を締結させるもの。
  • 営業所などに監禁や退去妨害をして、契約を締結させるもの。
  • 自宅などに居座り、不退去で契約を締結させるもの。
  • 深夜や早朝など社会通念上不適切な時間帯に勧誘してくる。
  • 異常に高揚した心理状態で契約を締結させるもの。 - 催眠商法(SF商法)など。
  • 迷惑な方法で広告するもの。 - 迷惑メール・勤務時間中の勤務先への電話による販売勧誘など。
  • 18歳未満の児童高齢者認知症知的障がい者または専門知識のない成人など、契約内容を十分に理解できない者に契約を締結させる(一方的に契約書を書かせる)もの。 - 判断力のない高齢者や認知症患者への住宅リフォーム(改装)など。
  • マルチ商法マルチまがい商法
  • 霊感的な説明や疑似医学的な説明で消費者の不安感を煽り、商品を売りつけるもの。
  • 福引きやクジで”当選”した(2位というケースが多い)として、強引に携帯電話有線放送の契約を結ばせる(「実は2位商法」とも言われる)。

商品やサービスなどに問題があるもの

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契約の履行や解約などに問題があるもの

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  • 商品やサービスに関する契約を全く履行しない、あるいは不誠実・不完全な履行しかしないもの。
  • 解約が可能であるにもかかわらず、解約できないと誤解させるもの。
  • 解約に応じるが、不当な解約手数料違約金などを要求するもの。
  • 解約は、コールセンターで受け付けると記載されているが、コールセンターは「只今電話が込み合っているので、しばらく待つ」よう呼びかけるガイダンスが繰り返し流れるだけでほとんど繋がらない(繋がりにくい状況の中で消費者に解約を諦めさせる)。
    • 解約の受付が電話だけでしか受け付けず、メールその他の代替となる連絡手段を用意していない。

個人情報の扱いに問題があるもの

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  • 勧誘や取引に際して知り得た個人情報を、正当な理由もなく漏らしたり販売するもの。
    • 顧客情報の名簿業者への販売など(無償で譲渡した場合でも変わりはない)。

犯罪またはその可能性があるもの

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上記の各項目と結果的に重なるものもあるが、犯罪であるもの。法律の無知あるいは不本意ながらで犯罪になってしまう可能性のあるもの。

  • 対処法
  • 民事
    • クーリングオフ制度による申込みの撤回、又は契約解除。
    • 内容証明郵便の送付による契約解除通告。
    • 消費者契約法に基づく契約の取消や、消費者の利益を一方的に害する条項の無効。
      • 被害額は少額だが被害者が多数にのぼるサービスを提供している業者に対しては、消費者団体訴訟制度によって訴訟を行うこともできる(被害額が少額の場合や民事不介入の場合、泣き寝入りすることが多かったが、この制度によってNPO法人などが代理で訴訟を起こすことができる)。
    • 民法に基づく錯誤・詐欺・強迫による契約の無効。
    • 個別の業法に基づく消費者保護規定の活用。
    • 商法五百二十六条などに基づく欠陥商品の契約解除、代替品の請求。(会社対会社の場合のみ)
    • 民事訴訟
  • 刑事
    • 犯罪性のある場合は、警察被害届を提出したり、検察庁・裁判所への告訴告発を行う。しつこいなど急を要する場合には110番通報や、繁華街の場合は巡回中の警備員に相談してもよい。
    • 断ってもセールスマンが退去しない、客引き(キャッチセールス)が禁止されている場所で警備員の退去命令に従わない(不退去罪)。
    • 購入を強要される(強要罪)。
    • 購入するまで、もしくは帰りたいという意思を示したのに帰さない(監禁罪)。
    • 脅迫まがいの言葉をかけられる(脅迫罪
  • 行政

企業・団体・事件

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一般の企業が「組織ぐるみ」で犯した罪などは、企業犯罪を参照されたい。

よく扱われる商材

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悪徳商法で扱われることの多い商品やサービスなど。必ずしも全てが悪徳かつ違法とは限らないが、曖昧または大げさな表現を多用することでしばしば問題となる。基本的に一般人では即座に理解しにくいものが選ばれる。

高額商品

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一見して、本来の妥当な値段がわかりにくいものや、外見で真贋が区別できない商品を高額で販売し、法外な利益を得る。

生活関連商品

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「健康に悪い」などと心理的不安を煽り不要なものや、効果のないものを高額で販売する。疑似医学を取り入れている場合が多い。

その他

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人物

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出典

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  1. ^ a b c d 悪質商法の被害にあわないために” (PDF). 警察庁 (2014年5月). 2016年7月20日閲覧。
  2. ^ 消費者問題及び消費者政策に関する報告(2009~2011年度)”. 消費者庁. 2016年7月20日閲覧。
  3. ^ アポイントメント商法|悪質商法”. 長野県消費生活情報. 2016年7月20日閲覧。
  4. ^ 消費者被害注意情報 No.17呼び出して高額な商品を購入させる アポイントメントセールスのトラブルが年々増加” (PDF). 国民生活センター (2002年6月6日). 2016年7月20日閲覧。
  5. ^ a b 安全・衛生”. 東京工業大学. 2016年7月20日閲覧。
  6. ^ アポイントメント商法などで被害にあった消費者が、またも被害に!!”. 東京都消費生活総合センター (2007年10月18日). 2016年7月20日閲覧。
  7. ^ a b c FRIDAY、2019年8月16日号、p.28
  8. ^ 訪問セールスのパターン nichijuko.jp 2024年5月10日閲覧閲覧
  9. ^ 悪質商法手口説明・相談事例集”. 大阪市消費者センター (2009年10月15日). 2016年7月20日閲覧。
  10. ^ 点検商法(各種相談の件数や傾向)”. 国民生活センター (2016年3月30日). 2016年7月20日閲覧。
  11. ^ 給水・排水業者に注意 岐阜市 2024年4月15日閲覧
  12. ^ a b c d e 和牛預託商法・安愚楽牧場の破綻
  13. ^ 田口義明 第5回消費者運動の歴史(1970年代~1980年代)国民生活2016.10
  14. ^ 過去の若者の主な消費者被害事件 平成29年9月14日 消費者庁消費者行政新未来創造オフィス
  15. ^ a b 国民生活センター40周年記念誌
  16. ^ 簡単な作業をするだけで「誰でも1日当たり数万円を稼ぐことができる」などの勧誘により「副業」の「マニュアル」を消費者に購入させた事業者に関する注意喚起”. 消費者庁 (2022年4月13日). 2023年11月1日閲覧。

関連項目

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制度

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法律

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行政機関

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その他

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外部リンク

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