ステルスマーケティング
ステルスマーケティング(英: Stealth Marketing)とは、消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること[1]。
アンダーカバー・マーケティング(英: Undercover Marketing)とも呼ばれる。ゲリラ・マーケティングの1つ。
概要[編集]
規模は様々であるが、大規模なものでは宣伝業務に特化している広告代理店などがチームで作戦を練り、組織立って大量の人員が動員されて行われていることがある。またウィキペディアもステルスマーケティングの影響を受けているとされる[2]。
新規開店時や新商品の発売時に、本当は世間にさほど興味を持たれていておらず顧客が集まらない状態であるにもかかわらず、派遣会社などに依頼して、金銭でアルバイトを多数雇って店舗前に行列をつくらせ、その作為的な状態をテレビ番組に取材や撮影をさせたり、雑誌社に取材させ写真を撮らせたり、そうした映像や写真と記事をマスメディアに大量に流させることで[1]、実際にはそれほど評価されていない店であるにもかかわらず、さも評価が高いかのような「偽りのイメージ」を消費者に持たせ、人々の話題にさせる行列商法のこと。
その事例の一つが2007年フジテレビ系列で放送されていた発掘!あるある大事典(関西テレビ)だろう。あるある大事典Ⅱでは「納豆ダイエット」を紹介したが、ビフォアーアフターで別人を用いてデータを捏造。さらに担当放送作家の指示で制作陣がコンビニやスーパーで納豆買占めたが、これらの虚偽事実が発覚し番組は打ち切りとなった。このような行動(ステマ)に至ったのには何かしらのキックバックがあったのではないかと言われている。
しかも、しばしばこのステルスマーケティングの作戦を練った大手広告代理店が、普段から放送局から買い取っている放送枠を利用して、その番組内で、さも客観的な情報・報道であるかのように装って、上記の映像や言葉を流す、という段取りまであらかじめ組まれていることもある。2001年に、ソニー・ピクチャーズエンタテインメントがデビッド・マニングという捏造した架空の映画評論家に、自社の映画を絶賛させていた[3][4][5][6]。
また、いわゆる「芸能事務所」や芸能系の企画会社などが、自社の商品である歌手や俳優などを舞台やテレビカメラの前 等々に登場させる時、本当の状態ならばさほど人気があるわけでなくてあまり人が集まってくれない状態であるにもかかわらず、派遣会社などを利用してお金で多数の人を雇い、彼らにあたかも熱狂的なファンであるかのような演技をさせて、そうした作為的な映像をマスメディアに流すことで、実際以上に人気があるかのような偽のイメージを人々に持たせることや[1]、 「客観的な記事」であるかのように装った宣伝文を作成することや[7] 、影響力のあるブロガーが、何らかの企業や組織から報酬を得ていることを明示せずに、あたかもただの第三者であるかのように偽装して、特定の企業や製品について高い評価を行うことがある[7]。2012年、日本で複数の芸能人が報酬を受け取っていたことを明示せず、オークションサイトの宣伝を行っていたペニーオークション詐欺事件[8][6]が発生している。
飲食店の口コミサイト内の自社に関するページで、否定的な意見を削除して肯定的な意見だけを残す事により、そのページを見た人、に良いイメージを与えるようにする[9]
また、省略した言い方「ステマ」は、日本において2012年の新語・流行語大賞にノミネート[10]、ネット流行語大賞2012の金賞に選ばれた[11]。
問題点[編集]
ステルスマーケティングは、モラルの観点から、しばしば消費者団体などから非難を受ける[7]。また「やらせ」が発覚すれば、消費者からの信用を落とす[7]。
このように、ステルスマーケティングは、自身の身元や宣伝が目的であることを隠して行われることにより、消費者をだます面や消費者に不利益をもたらす面を持つため、国家によっては法律により規制されている。
また、マーケティングの教科書に「倫理」という新しい項目が加えられるなど、企業倫理の一環として「マーケティング倫理」が意識されつつある[12]。
法規制[編集]
日本[編集]
日本においては、消費者庁は2011年に景品表示法のガイドライン「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」を公表しており、その中で口コミ情報について、事業者が口コミサイトやブログに口コミ情報を自ら掲載し、または第三者に依頼して掲載させ、その口コミ情報がその事業者の商品・サービスの内容または取引条件について、実際のものまたは競争事業者に係るものよりも著しく優良または有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となるとしている[13][14][15]。
また、実際には購入していないのに購入したと体験談を偽って口コミサイトやブログに掲載する行為は、「人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした」に該当するとして軽犯罪法に抵触する可能性がある[16]。
アメリカ[編集]
アメリカ合衆国では、インターネットを利用した消費者自らが行う広告宣伝活動に対応するため、連邦取引委員会(FTC)が、1980年以来変更してこなかった「広告における推奨及び証言の利用に関する指導(Guides Concerning the Use of Endorsements and Testimonials in Advertising)[17]」というガイドラインを2009年に改定し[18]、商品またはサービスの推奨者と、マーケッターや広告主との間の重大な関係の有無及び金銭授受の有無などを開示する義務を新設した[19][20]。
ヨーロッパ[編集]
欧州連合においては、不公正商慣習一般を規制するため、不公正商慣習指令("Unfair Commercial Practices Directive")が2005年に制定された[21]。この指令に従い、イギリスでは、2008年に不公正取引からの消費者保護に関する規制法が施行されており、消費者保護の観点からステルスマーケティングは違法であると規定されている[22]。
脚注[編集]
- ^ a b c 「虚の時代[2]――サクラ操り やらせ広告」『朝日新聞』2009年5月1日付朝刊、第13版、第34面。有名店や新規開店やセールの行列、歌手や俳優や選手の周辺で騒ぐ人たちの一部は、サクラ派遣会社が時給2000円程度で動員。芸能人がブログで商品を取り上げると一回90〜300万円。ほか
- ^ “ステマビジネス横行で揺らぐネットの信頼性〜Wikiも被害、サムスンの逆ステマ発覚”. Excite (2013年11月15日). 2014年11月8日閲覧。
- ^ “The Reviewer Who Wasn't There”. 2001年6月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年10月12日閲覧。
- ^ “ステマって何?|5分で分かるステマの意味と有名事例6選”. LISKUL. 2014年11月7日閲覧。
- ^ “Undercover Marketing”. Product Placement News (2007年1月16日). 2014年11月7日閲覧。
- ^ a b “ほしのあきは氷山の一角 ネットでステマ芸能人リスト増殖中”. Excite (2012年12月17日). 2014年11月7日閲覧。
- ^ a b c d 「ステルスマーケティングとは」 ITpro 最新IT用語解説、2008年5月30日。
- ^ “ピース綾部ブログが謎の「魚拓削除」 「ペニオク」嘘記事めぐり憶測広がる”. J castニュース (2012年12月19日). 2014年10月12日閲覧。
- ^ 口コミサイトにオーナーが契約すれば、自社の口コミは自己の判断で削除が可能である(大手のグルメサイトなど)
- ^ “「ユーキャン新語・流行語大賞」候補語が発表 「いいね!」「ステマ」「うどん県」も”. ITmedia. (2012年11月8日) 2014年11月6日閲覧。
- ^ “【速報】9万人が選んだ『ネット流行語大賞』 金賞はアノ言葉”. ガジェット通信. (2012年12月7日) 2014年11月6日閲覧。
- ^ 野口智雄 『マーケティングの基本』 日本経済新聞社〈日経文庫 ビジュアル〉、2005年3月、第2版。ISBN 4-532-11903-0。[要ページ番号]
- ^ 「ステマ 歯科・エステでも相次ぐ」『産経新聞』2012年1月15日29面
- ^ “歯科、美容外科の口コミサイトでもやらせ書き込み、業者特定急ぐ”. 産経新聞. (2012年1月15日) 2012年1月18日閲覧。
- ^ 消費者庁、評価操作の“ステマ”は不当表示、景表法ガイドラインを一部改定
- ^ 嘘のブログ…ほしのさんら立件見送りへ 「詳細知らず」軽犯罪法も時効 産経新聞 2013年2月8日
- ^ “Federal Trade Commission - 16 CFR Part 255: Guides Concerning the Use of Endorsements and Testimonials in Advertising (PDF)”. FTC (2009年). 2012年1月17日閲覧。
- ^ “FTC Publishes Final Guides Governing Endorsements, Testimonials” (プレスリリース), FTC, (2009年10月5日) 2012年1月17日閲覧。
- ^ “Revised FTC Guidelines: Blogger Beware”. www.law.com (2009年10月21日). 2012年1月17日閲覧。
- ^ “ソーシャルメディアの時代なので、クチコミマーケティングを再考しよう:6”. www.advertimes.com (2011年9月26日). 2012年1月17日閲覧。
- ^ 欧州理事会 2005/29/EC
- ^
- “New UK Law Criminalizes Stealth Marketing Techniques”. www.seomoz.org (2008年6月3日). 2012年1月17日閲覧。
- “ステルスマーケティング手法を禁止する新しい英国の消費者保護法(前編)”. web-tan.forum.impressrd.jp (2008年6月30日). 2012年1月17日閲覧。