電位治療器

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電位治療器(でんいちりょうき)は、電極間又は、電極からアースの間に高電圧をかけて電場を発生させ、その中に人間のからだを置くことで治療する医療機器である。日本では、薬事法における管理医療機器(クラスII)に分類される。医家向と家庭用がある。

歴史[編集]

電位治療器は、日本人の発明家原敏之が「高圧送電線下に結核患者がいない、農作物の収穫量も多い」というドイツの医学雑誌の記事をきっかけに、電場が人間のからだに良い影響を与えるのではないかと考え、1928年に高周波超高圧の電位負荷を利用した治療器を開発したのが原型と言われている。その後現在の低周波で変動する電場による電位治療器が厚生省の承認を受けて現在に至っている。1963年に先発メーカーである白寿生科学研究所により「ヘルストロン」(商品名)が製造され、それに続き、ヘルスの「パワーヘルス」とコスモトロンドクタートロンの「ドクタートロン」、エヌエスジーの「トランセイバー健寿」、バイオトロンの「ビーオス」、日本セルフメディカルの「メディック」、ココロカの「リブマックス」、プロメイトの「プロメイト」が現れ、現在においては十数社から30数社の各社製品が出回っている。電位治療器は、長い歴史があり機器所有者も多い。また、多くの老人福祉施設にも設置されている。現在、主流となっているのは高圧電位治療器であるが、別の系譜として、太陽放射線の人体への影響についての研究をヒントに、1940年に東邦大学の高田蒔らにより考案された低電圧の負電位負荷による電位治療器がある。(薬事法上のカテゴリーは同じである。)最近では低周波や温熱などとの組合せ治療器も市販されている。さらに、日本での承認と使用状況の信用などもあり台湾、中国、香港などアジア諸国の一部でも製造販売されている。アジア諸国でも欧米基準の導入が進められていて、アメリカ、EU、日本など先進国が加盟する医薬品医療機器総合機構(GHTF)と中国、韓国、中華台北(台湾)、タイなどアジア諸国・途上国が加盟するAHWP(Asian Harmonization Working Party アジア医療機器法規制調和組織)間の交流・連携も行われており、AHWPがGHTFに合わせる形で基準の整合化が進むと予想される。したがって、アジア諸国においても電位治療器は、より高度のエビデンス市販後安全管理を求められると予測される[要出典]

原理[編集]

身体を周辺環境に対して高電位にすることで発生する電場により治療効果を発揮するとメーカーは説明している。高電位を維持するために使われる電流はごく微量のため人体への影響は少ないと推測される。北海道の大学[どこ?]を中心とした研究者グループの功績により電場の生体への影響をほぼ解明したとされる[要出典]。血液電解質に変化があるという研究[1]もある。作用機序は、皮膚や体表面の感覚受容器の刺激、生体内に誘導された電流の作用、自律神経系への影響とそれに伴う末梢循環改善、BDNF(脳由来神経栄養因子)やモノアミンへの影響などが考えられている[要出典]が、さらに研究が続いていると言われている。強電場処置によるBDNFの増加は、記憶力の向上、虚血耐性の誘導、抗うつ作用、抗肥満作用などを有するという報告がある[2]。 BDNFへの着目は最新の研究ではあるが、初期的な動物実験の段階である。記憶力の向上などには新たな治療器の開発が必要で、ただちに市販の電位治療器に効果があるわけではない[3]。また、仮骨形成を促進[4]したり肉芽形成・コラーゲン合成を促進する[5]という研究がある。強電場がカルシウムレセプターを介して細胞内カルシウム動態を変化させる結果、ストレス応答に関連した内分泌系及び代謝系に影響し、そのストレス軽減が疼痛改善を示すとする報告[6]もある。電場への暴露についての定量評価は可能になっており、各社および大学等での研究が継続して行われている。医療機器としての臨床データが積み重なれてきているが、一部の医師を除き、医学界一般ではあまりよく知られていない。GLPが策定される以前にも、各種の動物実験や臨床研究が行われている。中でも特筆されるのは、1968年に行われたモントリオール大学実験医学研究所のハンス・セリエと開発メーカーとの共同研究で、7800匹にのぼるマウス・ラットを用い、人工的な心筋硬化症を起こし、(高電場への暴露ではなく)直接通電をした場合としなかった場合の比較観察した研究[7]があるが、その結果についての文献やその後の同様な動物実験・追試を行ったという文献は公開されていないと思われる。医薬品医療機器の国際ハーモナイゼーション[8]時代においては、西欧や北米の基準による安全性・有効性の検証や評価の必要性も重要であると言われている。

効能・効果[編集]

日本では認証基準に適合する製品に関しては医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬事法)により、頭痛肩こり不眠症や慢性便秘の緩解のみが効能として認められている[9]

副作用[編集]

一般的にメーカーや販売業者は、副作用はないと言っている。家庭用がほとんどであり、多くは医師や医療機関を介さず、直接消費者に販売しているため、法律(薬事法第77条)で定められた副作用報告制度の今後の有効活用も必要と言われる。患者から直接報告する制度を創設し、事象を厚生労働省や医薬品医療機器総合機構に報告するようにすることも大事である。体験場においては、一時的に症状が悪くなったような現象を好転反応として説明されている。好転反応は具体的には「倦怠感、痛み、痺れ、痒み、眠気などが起こることがある」と説明されている。これらの反応は、販売員や医療関係者の勘と経験や体験によるところが大きい[要出典] 。また、福祉施設などに設置されている説明用のパネルには、温泉療法における湯あたり湯疲れがおきることがあると書かれている。

使用上の注意[編集]

医療上の注意事項については、業界団体の日本ホームヘルス機器協会の公式サイトで「家庭用電位治療器の禁忌事項の自主基準」として掲載公表されている。

ペースメーカ、植込み型細動器などの電磁障害の影響を受けやすい体内植込み型医用電気機器。
心電計などの装着形の医用電気機器。
これらとの併用は、誤作動を招く恐れがあるので使用しない。
心臓病と診断され、日常の過激な運動を制限されている人は使用しない。
  • 「注意」とする禁忌事項として
身体に異常を感じたときには、使用を直ちに中止する。
導子が濡れている場合には使用しない。治療中の人に外部の人と触れてはいけない。
  • 次の人は、使用前に医師に相談すること。
悪性腫瘍のある人。心臓に障害のある人。妊娠初期の不安定期又は出産直後の人。体温38℃以上(有熱期)の人。安静を必要とする人。脊椎の骨折、ねんざ、肉離れなど、急性疼痛性疾患。糖尿病などによる高度の末梢循環障害による知覚障害のある人。温度感覚喪失が認められる人(電熱装置を持つ機器に限る)。
  • 1時間を超えるタイマを使用する場合は、前項に加える。
高血圧の人。不整脈のある人。睡眠時無呼吸症の人。喘息の人。

禁忌事項は、カタログ・取扱説明書・添付文書に記載されているほか、体験場にも掲示している。各メーカーのウェブサイトにも掲載されている。 禁忌事項などは、逐次に改定・追加されてきたが、新しい情報を既存購入者・使用者にいかにして知らしめるかが、欧米にはない電位治療器を含む家庭用医療機器の課題の一つとなっている。現在のJIS・認証基準では、就寝時に高電圧で長時間使用ができる機器の製造販売は認められていないが、過去にはそういった使用を前提とした機器の製造販売は認められていた。そういった機器の購入者・使用者への情報伝達や安全の確保も大切であり、また中古業者やネットオークションなどを通じてリサイクルされ行方が不明となった機器や倒産した企業が販売した機器の管理も大事である。現在の法令では、製造販売後安全対策はメーカー(製造販売業)の責任とされ、機器の行方把握、品質、不具合、有効性、副作用などの情報収集等が義務付けられている。

事業者によっては、毎日の継続使用や複数機器の使用と長期連用を勧める場合があるが、使用時間については基準が定められており、取扱説明書・添付文書に記載されている。なお、治療器の濫用使用を勧めるのは問題[10]とされる。長期連用については、10年20年といった長期にわたって電場に晒した場合の生物統計学的データ・文献資料がなく、電位治療器の長期連用は、医薬品や他の医療機器と同様に今後の市販後調査上の今後の課題とも言われている[要出典]。 これまでのところ問題が発生したという公式の報告や記録は見られない。

販売方法の実情[編集]

パワーヘルス体験会場の例
  • 体験場における体験販売・店舗販売の形態が主流だが、ごく一部で通信販売・職域販売・治療院ルートなどの販売方法を採る企業がある。
  • 機器の一般的な購入方法は体験場および店舗へ一定期間通う間に機器を体験し、自分の体との相性を確かめて販売員から機器の説明を受けて、購入の申し込みをする。
  • 無料体験商法の問題点としては消費者は予め有償で契約する意思をもたずに出向くこともあり、勧誘の仕方によっては消費者契約法による取消しが考えられる。
  • 体験場や店舗は、業界全体では数千箇所になると言われている。ただ、薬事法の改正(後述)により各会場・店舗に販売管理者を置くことが義務付けられ、一般的にその資格の取得に1年以上の医療機器の販売業務経験を要するため、各社とも有資格者の確保に苦慮しており体験会場・店舗数は減少する傾向にあると言える。
  • 一般に電位治療では年齢が高いほど効能効果を体感する率が高いため、来店者および購入者は高齢者が多くなる傾向がある。この傾向から、高齢者に高額商品を押し売りしている、という非難を招いている面がある。一例として薬・検査・手術・人工透析といった現代医療を否定する販売トークにより一般消費者が適正な治療を受ける機会を逸させる結果となる事例がある。業界団体・社団法人日本ホームヘルス機器協会では規制を強化し販売方法の指導に努めている。
  • 家庭用機器の中でもメカニズムや効果が不明確な製品であり、苦情や批判の対象になりやすい。無料体験などを強調して派手な集客を行い、一定期間の経過後に高額な商品のクレジット契約を迫り、消費生活センター国民生活センターにも苦情が寄せられている。中には相談者や国民生活センターの相談員を脅す悪質な販売業者もおり、国民生活センターのウェブサイトで事例紹介されている[11]。なお体験場はショッピングセンターの中に3カ月程度設置され、販売後のサポート体制も不十分であり、このような問題が管理者の設置義務など薬事法の改正を招いた。
  • 体験場および店舗では、効能効果の作用機序として「血液をきれいにする機械」「全身の血液をサラサラにする」「生体電子で血液をきれいにする」といった説明が行われることがあるが、血流が改善することによって必ずしも効能効果が現れるものではない。執拗にこういった説明をすると薬事法医薬品等適正広告基準に抵触する場合がある。ホームヘルス機器協会がウェブサイトで公表している「家庭向け医療機器等適正広告・表示II(P36-37)」にも記述されている。
  • パワーヘルスを株式会社ヘルス(以下ヘルス社)の販売員が頭痛肩こり不眠症や慢性便秘の寛解の宣伝以外に「高血圧や糖尿病に効果がある」と説明したり、体験者の「弱視肝硬変半身まひが治った」とする小冊子を配布したり、パワーヘルス使用者の体験発表会のDVDを視聴させる例があったが、ヘルス社は消費者庁の要求した根拠を提出せず、2013年10月17日に消費者庁から景品表示法違反(優良誤認)による措置命令を受けた[12][13][14]。2013年10月16日付の朝日新聞による近く措置命令を受けるというスクープ[15]に対し、ヘルス社は当初「そのような事実はない」と反論していた[16]
  • 平成14年改正薬事法(平成17年4月全面実施)により、管理医療機器販売事業所・店舗に「販売管理者」を設置することが義務付けられた(薬事法施行規則第175条)。販売管理者は医師、薬剤師などの有資格者のほか、1年以上の医療機器の販売業務経験と資格取得講習会を修了した者、一定の学歴要件を満たす者が資格要件となっている。
  • 販売管理者は、販売事業所・店舗において従業者の監督、苦情処理、設備・機器の管理、管理に関する帳簿の保管等についての義務と管理責任が課せられる。1年以上の医療機器の販売業務経験があれば1日程度の講習会で資格が取得できるなど医薬品の登録販売者と比較してもまだ緩やかな規制となっている。
  • 中国・台湾・韓国・マレーシア・タイ・香港・インドネシアなどでも、日系および現地資本の企業により販売されているが、一部で苦情やトラブルが発生している。台湾では日系メーカーの体験場での販売トークにより、適正な治療を受ける機会が逸させられたため、購入者の死亡につながったとして遺族が訴え、事件となった[17][18]

中古機器[編集]

  • 電位治療器は、家庭用医療機器の中でも中古機器のマーケットが形成されており、インターネットや新聞・雑誌で盛んに宣伝がなされている。通信販売だけではなくショールームを持つ中古業者もある。
  • 各メーカーは機器の長い耐用年数を謳っているため、高額な新品より中古品の方を選ぶ人も増えている。中古業者の中には無店舗業者、無免許業者もあるので業者選択の基準として、店舗独自の宣伝文句を鵜呑みにするより、営業年数の長さとか実店舗の有無、保証内容などを参考にして判断し、購入後のトラブルを避けるために、実物を確認して購入するのが賢明である。
  • 前項に揚げられた薬事法による「販売管理者」の設置の義務は当然、中古販売にも適用されるべきものだが、これを遵守する業者と遵守していない業者があるようだ。特にオークション取引では格安で入手するのも可能だが、ほとんどの場合、「販売管理者」を設置していないリサイクル業者や一般消費者の出品で「ノークレーム、ノーリターンの取引」のため、本体のみとか部品の欠損、機器の不具合、ジャンク品、不良品によるトラブルも多く、説明書などが無いためメーカーが推奨する禁忌事項も分からず、事故の可能性も否定できない。
  • 製造販売後安全基準(GVP)上の問題もあると言われている。

脚注[編集]

  1. ^ 「交流高圧静電位負荷の血液電解質に及ぼす影響について」原平助 新潟医誌、75、P265,1961
  2. ^ 「脳卒中」日本脳卒中学会誌29巻2号387頁 柳本広二(国立循環器セ 研)・宮本享(国立循環器セ脳血管外科)・中城有香子(洛和会音羽病院基礎医学実験室)・中野佳和(国立循環器セ 研)
  3. ^ 毎日新聞2008年5月2日付
  4. ^ 交流強電場負荷の仮骨形成に及ぼす影響に関する実験的研究(京府医大誌 1975;84:89-108 橋本猛)
  5. ^ 交流3000V電位負荷及び杜仲葉併用による肉芽形成とコラーゲンの合成促進効果の研究(埼玉医大誌 第31巻第2号別頁 2004年4月 古賀義久)
  6. ^ 60Hz electric field upregulates cytosolic Ca+ level in mouse splenocytos stimulated by lection(Bioelectomagnetics 25(3):204-210 2004 Harakawa S)john Wiley &Sons Inc
  7. ^ 1968쥐를 사용한 심근경화증상과 헬스트론 효과의 실험(주식회사 하꾸주코리아 홈페이지(朝鮮語)
  8. ^ ICH:International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use、GHTF:Global Harmonization Task Force
  9. ^ "若返る、糖尿病治る…パワーヘルス信じたワケ" 朝日新聞 (2013年11月12日21時06分) インターネットアーカイブ (2013年11月12日)
  10. ^ 医薬品等適正広告基準4「医療機器の乱用助長の禁止」
  11. ^ 高齢者を集め「がんが治る」などと宣伝していた電位治療器の販売業者 2009年6月30日掲載
  12. ^ "株式会社ヘルスに対する景品表示法に基づく措置命令について" 消費者庁
  13. ^ ヘルス社に措置命令 「高血圧治る」誇大表現 消費者庁 朝日新聞デジタル 2013年10月18日
  14. ^ 医療機器「高血圧治る」、口頭売り込みに措置命令 消費者庁 日本経済新聞2013年10月17日
  15. ^ 「パワーヘルスで高血圧治る」 誇大表現で措置命令へ 朝日新聞2013年10月16日
  16. ^ 本日の一部報道について 平成25年10月16日 インターネットアーカイブ (2013年10月17日)
  17. ^ 大紀元時報台湾版 2008年3月6日付誤信「電椅」療效 婦拒洗腎枉死 ) この事件では6人が起訴されたが、2010年1月台湾の第一審裁判所は無罪の判決を下している(聯合報2010年1月5日、買療具停洗腎 婦人死亡 Taiwan News 2010年1月4日
  18. ^ 疑誇大療效誤病情 醫療器材老闆判無罪

参考文献[編集]

  • 電気学会「電磁界の生体効果と計測」(コロナ社 1995年 ISBN 978433900625-4
  • 「ELF電界暴露におけるヒト体毛に働く電気力の解析」(電子情報通信学会論文誌 VOL J86-B NO.7 July 2003)
  • 大森豊明「生体物理刺激と生体反応」(フジテクノシステムズ 2004/1 ISBN 9784938555924
  • 「家庭向け医療機器適正表示ガイドI・II」(社団法人日本ホームヘルス機器協会)
  • 「医薬品化粧品等広告の実際」(じほう社 2006/10 ISBN 9784840735797
  • 「電気の暮らしと健康不安ー電界と磁界の影響はどこまで分かったか」(電気学会電磁界生体影響問題調査特別委員会 2001/02 ISBN 9784886862273
  • 上野照剛重光司岩坂正和「生体と電磁界」(学会出版センター 2003/02 ISBN 4762230111

関連項目[編集]

外部リンク[編集]