被害届

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被害届(ひがいとどけ)とは、犯罪の被害に遭ったと考える者が、被害の事実を警察などの捜査機関に申告する届出をいう。

日本の場合[編集]

日本では、被害届は、被害を受けた関係者が一般に警察に対して提出する。また交番警察署を訪れて被害事実を申告する場合には、警察官が聴取事実を元に作成することもある。

被害届は、私人による任意の書面であることから、犯罪事実を捜査機関に告知する役割を果たし、実際に捜査の端緒として活用されることが予定されているものの、法律上所定の効果をもたらす告訴ないしは告発としての性質は有さず、親告罪の場合における起訴の要件を満たすものではないと理解されている(つまり、被害届が出されているだけでは、事件を担当する検察官は親告罪に該当する事件(代表として刑法177条強姦罪同法224条未成年者略取著作権法違反)の公訴が行えず、不起訴処分事件事務規程75条2項5号によるもの)とするしかない。)。

被害届は、被害事実についてのみ申告するものであって、犯人の起訴を求める意思表示は含まれていないとされている(これは告訴・告発によって法的に有効な形で行われる事になる)。被害届があっても捜査を開始するかどうかは担当警察官もしくは担当課長の任意職権での判断に左右され、告発や告訴と違い被害届には署長決裁が不要なうえ、警察本部への報告義務もない。そして、被害届は、刑事訴訟法に全く記述されていない(なので当然、法律に明記されている行為である告訴(刑訴法230条)ないし告発(刑訴法239条)として扱われる妥当性に欠け、法的にその扱いを受けない。)。

近時は、被害者に対する警察などの捜査機関の十分な対応が求められていることから、警察などが正式に被害事実を知った「捜査の端緒」としての被害届の重要性は増している(ただし、やはり告訴が要件となっている親告罪では被害届だけでは公訴の障害となるものであり、検察において刑事訴訟の公訴が行えない事には変わりが無い。この場合、公訴を行うには、追って告訴が行われる必要がある。)。

告訴・告発とは違い被害届は犯人処罰をそれ自体では求めないものであるが(そのため、それらより警察において微罪処分、検察において起訴猶予処分を行われやすいとされる)、虚偽の被害届を提出すると告訴・告発と同様に刑法172条の定める虚偽告訴等の罪を構成しうる[要出典]。また、虚構の犯罪の公務員への申出である事から、軽犯罪法1条16号について要件を満たす事になる。

類似の名称の届出として加害届(かがいとどけ)というものもあるが、これは自らが飼育しているやそれに準ずる危険な動物に危害を加えた場合に、その事実を保健所に届け出るものとなる。なお、この届出は条例によるもので、自治体によっては逆に犬などに危害を加えられた場合に届け出る被害届について規定している場合もあるが、これは警察に届け出る被害届とは異なる。

被害届の不受理[編集]

被害届の不受理が全国的に問題になっている。被害届は記載必須事項が全て記載されていれば必ず受理しなければいけない(犯罪捜査規範第61条1項)のだが、「民事不介入」などの難癖をつけて受理しないケースは多い。大津市中2いじめ自殺事件などはその代表例である。警察に捜査義務が発生する[要出典]告訴状告発状はさらに受理しない傾向がある(なお、告訴・告発については犯罪捜査規範63条でその受理義務の規程があり(刑事訴訟法単体でも受理義務があるとされる)、こちらも本来的に受理しなければならないものとなっている。)。

警察が被害届や告訴状や告発状を受理しない理由としては、加害者の逮捕を目的としない、加害者との示談交渉や和解交渉のカードとしての提出が多いことも理由の1つである。要は、「被害届(もしくは告訴状や告発状)を提出した。取り下げて欲しかったら○○円で示談(もしくは和解)しろ」と、被害者側の有利な内容で示談や和解を迫るのである。このようなケースは全国的に見られ、警察はこういった示談交渉や和解交渉目的での被害届や告訴状や告発状を非常に嫌っている。

なお、上記のような手段での交渉を「民事崩れ」と呼ぶ。

脚注[編集]

関連項目[編集]