資格商法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

資格商法(しかくしょうほう)とは、「就職に有利」、「資格を必要とする仕事を提供する」などといい、資格取得のための通信教育費用や授業料を支払わせる商法のことをいう。資格の名称が「○○士」となっているものが多いことから、「士商法」(さむらい商法)ともいう。

不景気にこそ流行するなど世相を現している一方、契約締結を目的として業者が詐欺を行う事が時折問題となる。対象となる資格は国家資格や公的資格のほか、業者が独自に設けた資格称号民間資格)も多い。また、そのような商法のうちで、業者自ら仕事を提供、または、仕事を斡旋するものを業務提供誘引販売取引という。

この商法の問題点[編集]

この商取引の方法自体に何らかの問題があるわけではない。なぜなら、この商法でも用いられる手段である、消費者の不安を煽ったり、意欲を増進させる事で契約の締結の促進を図る事は、今日の商取引上普遍的に見られるやりとりだからである。

それでも故意に錯誤を狙ったものや、誇大な宣伝文句を用いる、詐欺紛いな商取引を行なうものなどは、消費者の利益や、社会的資源の浪費を考えると好ましいことではない。実際、被害に遭った人は多く存在する。

それにも関わらず、大きな問題として表層に出ることが少なく、取り締まりも多くはない。これは「実情が発覚する時には契約が成立している」「実被害が非常に僅少」「割が合わなくとも常軌を逸しない程度の代価を得ている」「問題が被害者に認識され難い」などの事情から、被害届けが出される事が少ないからである。また、出しても詐欺として立件しづらく、根絶が非常に難しいといったこともある。

それゆえ、こう言った取引を「悪質な」や「悪徳な」と言う言葉を用いて、正当なものとは区別している。

この商法の特徴としては「社会世相を現し易い現象である」ということが挙げられる。不景気であるほど、被害届の件数が増大する傾向にあるといった統計データもある。「資格」という言葉が安心感を与えている可能性がある。もちろん、ある特定の資格を持たないと従事できない職業もある(業務独占資格)。だが、資格を持ったからといって職があるとは限らない。

問題とされる取引にしばしば用いられる手段としては、以下のようなものが挙げられる。

※尚、錯誤を目的とした虚偽表示または虚偽説明は詐欺に該当する為、刑事訴訟の対象となる。
  • 資格について錯誤を目的とした説明を行う
  • 学習期間○ヶ月、○年といったように、実際には合格しえない短期間で合格できるかの様に錯覚させる。
  • 例)○×調査士6ヶ月、●■アドミニストレータ6ヶ月、△□主任技術者8ヶ月、○▲管理士8ヶ月 の様な形式で書かれている。
  • ●●時間 講義回数●●回といった形式での記載も同様である。講義回数については、専門学校によって利益を産み出しやすい資格講座は易しくても多く行うことがある。逆に、難易度の高い試験でも利益を産み出しづらいものは講義回数が少なくなる傾向にある。
  • 下位試験や合格済みとする試験の学習時間を無視していることが多い。他にも長年にわたる職務経験者を対象とする試験でも、その対象経験年数を記載せず容易に取れるような記載をする。特に情報処理や通信などの様に業界が多様で試験構成も多段階層となるものほど細切れにして難易度をごまかして(易しそうに)表記させることが出来る。実際に関連学部に入学し学習を始めて下位試験から受験し対象となる経験値を経ても合格するには15年以上要することがある。
  • 中には、上位試験と下位試験が同じ期間で書かれていることもある。これらの記載がある場合、実際には根拠が皆無であることを間接的に証明している。
  • 上記は、大手の学校ですらその名称の持つイメージで学習期間を決め付けていることが多い。
  • 深刻な害としては、実際に合格した者が過小評価されるような印象を与えてしまうことがある。
  • 民間資格を国家資格として錯覚させる、または将来国家認定を受けると暗に仄めかす
  • 国家資格でないのに国家資格であるかのごとく装う。或いは民間資格に過ぎないが、その事を表に出さない
  • 資格講座を受講すれば資格が与えられる、または、資格試験が科目免除になるという
  • 類似名の資格、単位認定制度などを利用する
  • 実存する資格、職務、技能の類似名称を冠した、実際には無価値に等しいの資格の取得を勧める
  • 保護、推進、認定する団体名のでっち上げ(主催者側の錯誤である時、悪意、善意に関わらず罰する事が難しい)、又は保護、推進、認定する団体との共同経営(団体は存在するものの、名称のみ立派であるが実の無い団体による支援や認定)
  • 試験実施団体、あるいは運営者の特定非営利活動法人(試験実施団体と一体である)等の活動会員として登録し会費を納めなければ、登録の更新ができないものがある
  • 社団法人等が実施する資格で、当該法人の会員を優先して合格させたり、面接試験で試験実施団体に協力を示す対応をしないと合格しなかったり、社会的に意味があっても試験実施団体の利益を損なうおそれのある活動をした場合には除名を勧告されたりする資格が存在する
試験実施団体が、その課題や技術について日本唯一と名乗ったり、天下り役員を迎えたり、社団法人・財団法人特定非営利活動法人は設立時に主務官公庁許可認証を受けることを利用し、わざわざ「○○大臣許可」「内閣府認証」などと表記して資格そのものにも公的な権威があるかのように示す例もみられる。
  • 企業と連携し、資格取得後に仕事が提供する事を約束して取得を促す
後の収入期待して資格を取得したとしても、仕事が全く提供されない事がある。
高額製造機材の購入、内職詐欺などでこれ等の手が多用される。
  • 通信教育や授業内容が劣悪で価格に見合った価値がない。
教材や授業内容の良し悪しはサンプルの提出を求めるなどで事前調査で幾らか確認できる事であり、実際の授業数が少ない、教材数が足りないなどで無い限り詐欺として立件されない
  • 専門分野である事を利用して、関連教材を独自作成する事で高額設定にて併売する
  • 提示される条件を利用する事で容易に取得できると錯誤させる
  • 取得後の可能性を誇大に表現する
  • 有資格者でなければその分野では仕事ができない・就職ができない、あるいは今取得しなければ数年後には資格取得が困難になるなどと、恐怖感や焦燥感を煽り立てる
  • 法定の業務独占資格として指定されていない資格・業務であるにも関わらず、業務独占資格であると誤認させる形で資格の取得を勧める
  • 資格に関連する法規制の改正が予定されており、以降は資格試験の難度や資格取得までの費用が大幅に上昇するとして、急いで資格を取得することを勧める
  • 提示される条件下なら取得が容易になると誤認させ、提示条件を高額で提供する
  • 実際には役に立たないが、有用有効と思わせぶりな条件を提示する
○○協会認定、NPO法人認定、○○団体認定、取得による○○の条件を解除または免除を謳う例が多い。
  • その資格を有力を思わせる名称の団体が保護、推進、展開をしている状況を作り上げる
○○協会認定、NPO法人認定、○○団体認定等、○○研究所発表など協会やNPO、法人、団体の持つ威光を利用した手段。関連項目:バイブル商法
  • 講座や取得費用は無料または廉価を提示するものの、関連商品を高額に販売する。又は資格の維持に費用が掛かる
尚、該当しないのに国家資格として偽称して受講させた場合、虚偽表示または詐欺にあたるが、抵触しない程度の明言に留めている場合が大多数を占める。

資格商法で利用される事が多い資格[編集]

 比較的簡単に取得できそうな資格や、難易度が高くても資格試験の受験資格が多くの人にある資格が資格商法の舞台になり易い。名称ばかりが先行し、実態が知られていないものが良く利用される。 以下に資格商法の汎用例と付記を記す。

  • ドローンに関する資格

2016年頃からドローンスクールが現れ、2018年には200校を超えるまで乱立。 国家資格ではなく、民間認定にもかかわらず、わずか2~5日間の数日間で、自動車教習所並みの20~40万円前後の高額費用をがかかる。 ドローンに免許は存在せず、飛行させる事に認定を取得する必要もない。しかし、あたかも免許(ライセンス)のような説明をしたり、受講しなければ飛行許可が取れない、取得すれば仕事があるなどと勧誘し、スクールを受講させるなど、悪質と思われる運営をしているところもある。

上記は名称が広く普及しており、試験に合格しただけで就職できる、取得する事で実生活に利点を生むという潜在的認識が一般的である事を利用して教育商法や予備校の講座などでの看板として用いられる事が多い。
実際には達成困難な試験を、資格商法の教材・講習・サービスを利用すれば容易に合格できるかのように誤認させるケースが多い。
取得の容易さ、取得後の理想像が提示される手法が用いられるが、(学歴や実務経験による)免状の取得には一定年数以上の電気設備管理の実務経験が必要であり、実務経験のない人が試験に合格したというだけで雇われる可能性は低い。
人材派遣業を兼業するITスクールが、受講特典としてCCNA取得後の就職を斡旋するというもの。現実にはスクールを利用せずとも資格取得・就職は容易である。スクールが中小零細企業と人材売買に関する取引を行う悪質なケースもあり、スクール側は就職支援という公約を果たせ、企業側は薄給でも就職を受け入れる人材が手間なく確保できるというメリットがある。
民間資格を国家資格と誤認させる、一部悪質な団体もあった。
2007年6月に公正取引委員会から「景品表示法第4条第1項第1号(優良誤認)の規定に違反する事実が認められた」として排除命令を受けた。株式会社日本経営経理指導協会が受けた命令であり。他の協会がすべてではない。民間資格だと表示している協会もある、一部の悪質協会により風評被害をうけ認定協会が減っている[1]
職業能力開発促進法に基づくものではない職種の技能士を称して、高度な技術をもつと誤解させる。また、業者の提供する講座を受講すればその資格を容易に取得できるように誤認させる。
スクーバダイビングには免許制度は存在しないものの、民間業者が作った独自資格を免許と装い勧誘する。また無料と偽り高額な関連器材購入をさせる。
権限を持たない一民間資格を、その名称から正規の国家資格である弁理士と関連性がある誤解を招く恐れがあるとして、商標登録を取り消された。[2]
資格を持っていないと就職が出来ないなどと言って高額な教材を購入させる。
情報処理技術者試験そのものは国家試験である。しかし、この試験は業務独占資格ではない。[3]。言い換えるとこの国家試験は能力試験であるため、技術者としてのスキルレベルを示すものである。しかし、この試験に合格することによって何らかの業務独占となる資格が得られると宣伝し、そのための学習講座の勧誘や教材販売を行っているケースが見られる。難易度も易しそうにかかれるが、非常に難易度の高いものが多くある。
整体学校」、「カイロプラクティック学校」などを称し、独自の認定にすぎない資格を社会的に有力とうたって取得させる。(→あん摩マッサージ指圧師#無資格者問題
「短期で取得でき就職活動に有利な心理カウンセラー資格がある」「大学入試の際に有利である」などと称して受講生を募り、独自資格を発行する。しかしながら現実には、スクールカウンセラー等の公的な心理職や、心理判定員等の公務員心理職、そして心理療法士等の医療機関に勤務する心理職などの採用要件として規定・推奨されるのは、そのほぼ全てが「臨床心理士」資格のみである[4]。その他では、「学校心理士」資格や「臨床発達心理士」資格であれば採用に繋がる場合もある。しかし、少なくともこれら3心理士資格は、大学院課程修了を基本要件・一部要件において前提としており、通信教育のみや数回~数十回程度のセミナーで取得できる独自資格では、まず採用は見込めない。(→日本の心理学に関する資格一覧#資格商法と関連した問題
  • 学位
主に、学術的分野が存在しない博士号。

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]