資格

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(しかく、: certification)は、ある行為を行うために必要もしくは相応しいとされる地位や立場をいう[1]

世間一般には組織内での地位をいう。さらに仕事上任務に就くために必要な条件として公にみとめられる能力を指す[2]

概要[編集]

「資格」という言葉にはいくつかの用法がある。慣用句として用いられる場合には、親ないし保護者としての責任を果たさない人物に「親の資格がない」と言ったり、およそ説得力ない発言をする人に「あなたに(それを)言う資格はない」などと言ったりするように、個人や組織の言動に伴う説得力や責任能力を正す場合に用いられることが多い[注 1]が、本来は一定の基準・条件などを明確に満たしていること(例えば在留資格など)を表す言葉である(そのため、前述の例の「言う資格はない」というのは詳しくないこと等を理由に実質「発言をするな」という意味であるが、資格という言葉の本来の意味からすればあくまで「詳しくないこと等を指摘しただけ」となる。なのでこの場合、実質免許のような意味合い(本来は禁止されているが条件を満たしていることで許可されている)で使用されてしまっていることになる)。 また、社会制度上の意味で資格という概念が用いられる場合もあり、その用例については主として以下の3つに類型化することができる。

専門資格(職業資格・非職業資格など)
専門資格は主に特定の職業に就業したり、専門能力を証明したりするために取得するもので、その認定機関は国、自治体、民間法人、国際団体とそれぞれの属性により、国家資格、公的資格、民間資格、国際資格などと称される[注 2]。一般的に試験等によって一定の専門性を有していることを認められた者に与えられる資格で、国家資格の中には、公認会計士税理士のように、根拠となる法律に専門家であることが明記されているものもある。
また、専門資格を職業資格という場合もあり、特定の職業に従事する上で取得が求められる資格を指す場合に用いる。また、非職業資格という場合には必ずしも就業する上で取得は必須ではないものの、経歴上、一定の専門性を証明するのに資する資格をいう[注 3]
身分資格(社員資格・会員資格など)
民法上の法人の社員(会員)の身分などを資格という場合がある[注 4]。誰でも発行できる。
資格条件(受験資格・入学資格・卒業資格・修了資格・応募資格・参加資格・採用資格・任用資格など)
特定の試験の受験や、就職等の採用資格、その他、様々な催事への応募を容認される応募資格または参加資格、学校の「卒業資格」や「修了資格」などのように学歴を資格として形容する場合もある[注 5]

これら三つの資格はそれぞれ別個の概念であるが、任用資格などのように専門資格たる国家資格としての意味と資格条件としての意味を有するなど複数の意味合いを持つものがある[注 6]。また、専門資格、身分資格および特定の修了資格のうち、肩書として使用できる資格名称を「資格称号」という。

専門資格(職業資格・非職業資格)について[編集]

以下、本節では特に職業資格・専門資格について解説する。代表的なものは、国家資格、公的資格、民間資格などである。これは、試験に合格した者に与えられる地位だけでなく、法的地位や経済状況、身体情況などの基準を満たし、入会資格、入場資格、入札資格、発言をする資格など、社会の多様な場面で、行為に相応しいと認める条件について使用される言葉である。 これらの内、法律、政令、省令等により国家から付与された地位は国家資格にあたる。また、条例等により都道府県等から付与された地位は都道府県資格等にあたる。これらの資格は、後述する業務独占資格、名称独占資格、必置資格等、法律上特別な扱いを受ける[注 7]

国家資格[編集]

日本では国家資格とは国の制度に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明されるものとされる[3][4]。また資格の制度に法的な裏付けが存在し、そこ(根拠法)に資格付与方法・資格付与基準についての明確な記述があり、中央省庁または都道府県レベルの地方自治体が所管する資格を指す[5][6]。資格によっては年齢、学歴、実務経験等による制約が課されることもある。なお実際の試験事務や免許・資格証の発行は、法に基づきその実施を義務付けられた(又は権限を委託された)、地方公共団体や民間団体などが所管することもあるが、それにより国家資格でなくなるということはない。

都道府県市町村等の定めた条例に基づいて与えられる資格は国家資格ではなく公的資格といい、その地方自治体内でのみ通用する。例として、ふぐ調理師は取得した都道府県内のみにおいて有効な業務独占、名称独占資格である。

一部の国家資格は行政法学上の「許可」に該当し、一般人には禁止されている行為を特に行うことが許されるものがある(建築士薬剤師)。また、業として行うことのみが禁止されている行為を許されるものもある(医師弁護士など)。これらの資格は、業務独占資格と呼ばれる。

資格の付与についての法律上の用語は一定しておらず、「免許」「許可」などの用語が使用されるが、行政法学上は「許可」「公証」などに該当する。

特別教育や技能講習を受けることにより、資格が取得できるものもある。機械装置などの運転や特定の作業に関するものが多い。これらについては、特別教育による資格一覧および技能講習による資格一覧を参照のこと。

業務独占資格[編集]

その資格を有する者でなければ携わることを禁じられている業務を、独占的に行うことができる資格。

名称独占資格[編集]

資格取得者以外の者にその資格の呼称の利用が日本の法令で禁止されている資格。業務独占資格は名称独占資格でもあることが多いが、単に名称独占資格と言った場合には業務独占性のないものを指す。

必置資格[編集]

ある事業を行う際に、その企業や事業所にて特定の資格保持者を必ず置かなければならないと日本の法律で定められている資格。業務独占資格が必置資格としての性質を併せ持つ場合もある。

試験・検定[編集]

国家資格は、狭義では上記の業務独占、名称独占、必置のいずれかの性質もしくは複数の性質に当てはまるものを指すが、広義では何らの独占権も与えられない試験、検定を含める場合がある。

公的資格[編集]

国の機関が明文化しているものとしては、厚生労働省教育訓練給付金の対象となる厚生労働大臣の指定する教育訓練講座の要件として示したものがあり、「公的資格とは、国家資格又は地方公共団体によって認定されている資格をいうものである。」とされている[13]。そのため、地方公共団体の条例により定められた資格(いわゆる都道府県資格、区市町村資格を含む地方公共団体資格)は公的資格とされる。

また、国の機関が告示通達等で定めた資格は、国家資格の範疇には入らないが[注 11]、公的資格の範疇には入るものもある[注 12]。特に、民間資格が告示、通達等により公的資格の受験資格となったり、公的な人材登録や業務実施の要件となっているもの等、法律上特別な扱いがされるものは公的資格に分類される[要出典]。同様に、地方公共団体(都道府県区市町村)の告示・要綱等により法律上特別な扱いがされるものも公的資格とされる[要出典]

その他、独立行政法人特別民間法人などの政府関係法人は特別な法律により定められ、国の行政の代行的・補完的機能を担うものとされている。そのため、これらの法人が認定する資格についても公的資格とされる[要出典][注 13]

民間資格[編集]

民間団体や個人等が自由に設定でき、独自の審査基準を設けて任意で与える資格。級別に水準を示す検定とするものもある。法令で規定されたものではないため、業界によっては一定の能力担保がされていると認知されている資格から、「資格商法」で与えられるような社会的な評価が低いもの、企業が自社の活動のために従業員に対して付与するも、社外では通用しない社内資格(内部資格)まで存在する。

また、日本国内だけでなく海外でも試験が実施され、国際的な基準によって認定される資格(ベンダー資格など)が存在することも特徴の一つである。下節の国際資格も参照。

業界でのルール[編集]

解釈にもよるが、落語における前座二つ目真打武道における段位錬士教士範士芸道における名取師範代師範大相撲親方などについても、一定の称号・免状や経験がなければ弟子を取れない、芸名(大相撲では四股名)を名乗れない、弟子の芸名を命名できない、など各々の業界でルールが存在しており、民間資格の一種として見ることができる。

国際資格[編集]

国際資格とは、主に下記4種類のいずれかの意味で使われる言葉であり、文意から判断できない場合には大変曖昧な言葉となる。

  1. 公的に定められた国際相互認証資格 - 代表的なものに、アーキテクト(建築士)、エンジニア(技術士)、クラフツマン(技能士)、インフォメーションテクノロジエンジニア(情報処理技術者)などがあげられる。
  2. 複数の国に拠点を有する団体等が認定する資格 - 国際細胞検査士等、複数の国に拠点を有するか、或いは加盟団体を有する団体等が認定する民間資格を国際資格という場合がある。
  3. 貿易等の国際関係業務に関する資格 - 通関士(国家資格)、貿易実務検定(民間資格)等、日本国内のみで行われているが業務内容が国際関係業務である場合に、その資格を国際資格という場合がある。
  4. 外国の資格 - 外国における国家資格や民間資格(日本の資格以外の資格全般)を、日本国内では国際資格という場合がある。

有資格者という呼称[編集]

「○○の有資格者」の語は、「○○の資格を有する者」の意で使われる場合と、「○○となる資格を有する者」の意で「○○の有資格者」「○○有資格」等の語が使われる場合がある[注 63]。例えば、行政書士事務所に勤務している未登録者について「行政書士有資格者」と表示するケースがある。ただし、行政書士法第十九条の二「行政書士でない者は、行政書士又はこれと紛らわしい名称を用いてはならない。」に違反するという見解もある。

また、名称独占資格ではなくても、その名称を使用することにより業務を行う権限があると認識される場合には、有資格者等の表示に特別な意味を持たせている場合がある。例えば宅地建物取引士は「宅地建物取引士証の交付を受けた者をいう[14]」とされ、試験に合格した段階の「宅地建物取引士資格試験合格者」や、実務講習等の要件を満たして登録を受けた段階の「宅地建物取引士資格登録者」とは区別される。しかし、宅地建物取引士であっても取引士証の有効期間内でなければ業務を行うことができない[注 64]ため、取引士証が有効期間内であることをもって有資格者と呼称することがある。

このように、資格や業界によって「有資格者」の語が意味するところには差異があり、特に前者のように名称独占規定がある場合には違法となる可能性があるため注意が必要である。

資格に関する詐欺的商法[編集]

資格取得にまつわる教材等の強引な販売にかかわるトラブルが多い。

また、架空の資格取得をもちかけ金銭を詐取する例や、有益性の低い民間資格が将来、国家資格になる予定だと宣伝して受講などを迫るケースもある。

これを資格商法または、士商法(サムライ商法)という。

主な資格[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 用例については松村明前掲書(三省堂、2006年)1074頁及び新村出前掲書岩波書店、2011年)1199頁等を参照のこと。
  2. ^ 詳細は本項の「専門資格(職業資格・非職業資格)について」の節以下を参照のこと。
  3. ^ 職業資格と非職業資格という概念については河野志穂著「大学における資格・検定取得支援の現状と背景 ―経済・経営・商学系私立大学案内に見る資格検定講座の設置状況 (PDF) 」佐賀大学教育開発センター編『大学教育年報第4号』(佐賀大学、2008年)などでも用いられている。
  4. ^ 例えば法務省ウェブサイト 一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A参照。
  5. ^ 例えば受験資格や応募資格の例としては厚生労働省 医師・歯科医師国家試験受験資格認定についてなど参照。
  6. ^ 社会教育主事任用資格および社会福祉主事任用資格等は好例である。民間講座等の修了資格についても専門資格同様に表記される場合もある。
  7. ^ 資格制度一般の解説については、例えば阿形健司著「職業資格としての効用をどう捉えるか (PDF)独立行政法人労働政策研究・研修機構編『日本労働研究雑誌』(2010年1月号)他、河野志穂前掲論文(佐賀大学、2008年)参照。
  8. ^ ここでは例として登録免許税額三万円以上で「士」または「師」の含まれるものをあげる
  9. ^ ここでは例として業務独占性のない名称独占資格で「士」または「師」の含まれるものをあげる
  10. ^ ここでは例として業務独占性のない必置資格で「士」または「師」の含まれるものをあげる
  11. ^ 例えば環境省の告示で定められた環境カウンセラーについて、環境省は「この制度は、人材登録制度であり、国家資格ではありません。」と明示している。
  12. ^ 例えば環境省の告示で定められたうちエコ診断士は、「家庭の省エネ・省CO2対策の専門家を認定する環境省の公的資格です。」と明示している。
  13. ^ 特別民間法人日本商工会議所はいくつかの検定を主催しているが、法律上は「検定に関する指導」を行なっていることになっており、検定を実施しているのは各地の商工会議所という扱いのため、無条件に公的資格とされるものではない。ただし、告示等で法律上特別な扱いが定められている検定は公的資格とされる[要出典]
  14. ^ ふぐ条例など(都道府県により異なる)
  15. ^ 地震対策条例など(都道府県により異なる)
  16. ^ 農薬適正使用条例など(都道府県により異なる)
  17. ^ 下水道条例など(都道府県・市町村により異なる)
  18. ^ 災害対策条例など(都道府県により異なる)
  19. ^ 防災条例など(都道府県・市町村により異なる)
  20. ^ 環境省所管の人材登録制度
  21. ^ うちエコ診断実施機関への登録要件
  22. ^ 政見放送等に手話通訳を付すための要件
  23. ^ 建設コンサルタントに必要な技術管理者の要件
  24. ^ 賃貸住宅管理業者に必要な業務管理者の要件
  25. ^ 不動産特定共同事業総合不動産投資顧問業、不動産関連特定投資運用業の要件
  26. ^ 不動産特定共同事業、総合不動産投資顧問業、不動産関連特定投資運用業の要件
  27. ^ 不動産特定共同事業、総合不動産投資顧問業、不動産関連特定投資運用業の要件
  28. ^ 補償コンサルタントに必要な補償業務管理者の要件
  29. ^ 地質調査業に必要な現場管理者の要件
  30. ^ 建設業における「とび・土工工事業」「さく井工事業」の主任技術者の要件
  31. ^ 1級は建設業における「電気工事業」「管工事業」の主任技術者の要件
  32. ^ 屋外広告業に必要な業務主任者の要件
  33. ^ 厚生労働大臣が定める高度な専門知識のあるものとして有期労働契約の契約期間が延長される
  34. ^ スクールカウンセラーに任用される要件
  35. ^ 準1級以上は海上自衛隊で情報の技術海曹に任用される要件、準2級以上は高等学校卒業程度認定試験における数学が免除される
  36. ^ 600点以上は航空自衛隊で語学の技術空曹に任用される要件、900点以上は全国通訳案内士試験における英語が免除される
  37. ^ 2級以上は高等学校卒業程度認定試験における日本史B・世界史B、全国通訳案内士試験における日本歴史が免除される
  38. ^ 2級以上は高等学校卒業程度認定試験における数学が免除される
  39. ^ C級以上は高等学校卒業程度認定試験における英語が免除される
  40. ^ 2級以上は高等学校卒業程度認定試験における英語が免除される
  41. ^ 1級は全国通訳案内士試験におけるフランス語が免除される
  42. ^ 1級は全国通訳案内士試験におけるスペイン語が免除される
  43. ^ C2以上は全国通訳案内士試験におけるスペイン語が免除される
  44. ^ 1級は全国通訳案内士試験におけるドイツ語が免除される
  45. ^ 1級は全国通訳案内士試験における中国語が免除される
  46. ^ 6級以上は全国通訳案内士試験における中国語が免除される
  47. ^ 1級は全国通訳案内士試験におけるイタリア語が免除される
  48. ^ 1級は全国通訳案内士試験における韓国語が免除される
  49. ^ 6級以上は全国通訳案内士試験における韓国語が免除される
  50. ^ 1級は職業訓練指導員試験(事務科)における実技試験の簿記と学科試験の簿記が免除される
  51. ^ 職業訓練指導員試験(溶接科)における実技試験が免除される
  52. ^ 職業訓練指導員試験(溶接科)における実技試験が免除される
  53. ^ 2級以上は職業訓練指導員試験(和裁科)における実技試験が免除される
  54. ^ 2級以上は介護保険を利用する際の「住宅改修が必要な理由書」の作成
  55. ^ 常用・非常用発電設備に関する実務および管理・監督を行うための要件
  56. ^ 消防用設備等に用いる蓄電池設備を維持管理するための要件
  57. ^ 石油などの液体燃料を使用する機器の点検・整備するための要件
  58. ^ 可搬消防ポンプ等の点検及び整備をするための要件
  59. ^ 外務省所管の独立行政法人国際交流基金が主催
  60. ^ 文部科学省所管の独立行政法人日本学生支援機構が主催
  61. ^ 厚生労働省所管の特別民間法人中央職業能力開発協会が厚生労働省が定める職業能力評価基準に準拠して実施
  62. ^ 厚生労働省所管の特別民間法人中央職業能力開発協会が実施
  63. ^ 兼子仁書『行政書士法コンメンタール新3版』(北樹出版、2008年)にて、弁護士等の資格者や一定の公務員が行政書士となる資格を有することについて、有資格との表記が用いられている。
  64. ^ 業務を行えなくなるだけでなく宅地建物取引士ではなくなるという見解もあるが、明確な規定はなく名称独占規定も無いことから問題にならない。

出典[編集]

参考文献[編集]

書籍[編集]

  • 金田一京助監修『新明解国語辞典』第四版1994年三省堂刊 ISBN 4-385-13142-2
  • 新村出編『広辞苑 第六版』(岩波書店、2011年)ISBN 400080121X
  • 松村明編『大辞林 第三版』(三省堂、2006年)ISBN 4385139059

論文[編集]

  • 阿形健司「職業資格の効用をどう捉えるか」 (pdf) 『日本労働研究雑誌』第52巻第1号、2010年1月、 20-27頁、 NAID 40016947108

関連項目[編集]

外部リンク[編集]