名簿業者

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いわゆる名簿業者(めいぼぎょうしゃ)または名簿屋(めいぼや)とは、氏名・性別・生年月日・住所・電話番号・メールアドレス・クレジットカード番号といった、個人を特定できる情報(個人情報)をファイル(データベースまたは紙媒体の名簿など)として整理し、検索できるような状態にまとめた形にして販売する者で、多くは個人情報取扱事業者(5,000件を超える個人情報データベースなどを事業の用に供している者)を指す。

名簿業者の法的位置づけについて[編集]

個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)第23条第2項で、オプトアウトすなわち「本人からの削除の申し出があった場合必ず削除すること」を条件に、個人情報取扱事業者が本人の同意もなく個人情報を第三者に提供すること、つまり個人情報を提供(または有料で販売すること)も認めている。

個人情報保護法では、個人情報の第三者提供について、第23条1項では『あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならない』と「原則として本人の同意が必要である」としているが、第23条2項で『個人情報取扱事業者は、第三者に提供される個人データについて本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合であって、次に掲げる事項について、あらかじめ、本人に通知し、または、本人が容易に知りうる状態に置いているときは、前項の規定にかかわらず、当該個人データを第三者に提供することができる。

  1. 第三者への提供を利用目的とすること
  2. 第三者に提供される個人データの項目
  3. 第三者への提供の手段または方法
  4. 本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者提供を停止すること

としている。

ちなみにこの条文にいう「本人が容易に知り得る状態」は、個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン[1]によれば、

  • 事例1) ウェブ画面中のトップページから1回程度の操作で到達できる場所への掲載などが継続的に行われていること。
  • 事例2) 事務所の窓口などへの掲示、備付けなどが継続的に行われていること。
  • 事例3) 広く頒布されている定期刊行物への定期的掲載を行っていること。
  • 事例4) 電子商取引において、商品を紹介するウェブ画面にリンク先を継続的に掲示すること。

などが具体的に挙げられている。

また同ガイドライン[2]には、このオプトアウトによる第三者提供の事例として、名簿業者と同趣旨である「事例2) データベース事業者(ダイレクトメール用の名簿等を作成し、販売)」が挙げられてもいる。

個人情報の取得手段[編集]

個人情報の取得手段の一例としては以下のようなものがある。

  • 同窓生による学校の同窓会名簿/卒業アルバムの持ち込み
  • 職員や会員、その構成員による公務員名簿/教職員名簿/社員名簿/退職者名簿/医師会名簿/有資格者名簿/学会名簿/ゴルフ会員権名簿/商工会名簿/協会名簿/同友会名簿/県人会名簿などの持ち込み
  • 他の個人情報取扱事業者からの取得
  • 住民基本台帳や選挙管理委員会の選挙人名簿の閲覧

住民基本台帳の閲覧に関しては、2006年(平成18年)1月に住民基本台帳法の一部が改正され、現在ではその閲覧は公共目的の利用に限られているため、名簿業者がこの方法で個人情報を入手することは不可能となった。また選挙人名簿の閲覧については、「閲覧は可としても、コピーは認めない」自治体が全体の4分の3以上を占めるようになり、また閲覧目的も限定されるようになっているため、この方法で入手することも現実には難しくなっている。

また、かつては大学の「同窓会名簿」作成目的の調査であるように見せかけ、名簿業者がダイレクトメールなどで住所や勤務先などを尋ねる、という取得方法もあった。これらは大学当局および同窓会とは無関係な「会社」が差出人となっているものがほとんどである(同窓会・学友会事務局は学校の内部に置かれる)。しかし、この手法は個人情報保護法施行以降は、同法17条の「不正な手段による取得」に抵触するため明確に違法となり、現在では廃絶状態にある。

そのほかに電話会社や保険や証券、クレジット会社、家賃保証会社などの関係者が顧客情報を名簿業者に売り込むケースもあるが、そのような不正に取得されたことが容易にわかる名簿を取得することは、たとえ不正な取得そのものに直接関わっていないとしても、同様に個人情報保護法17条に抵触する可能性がある。

しかしながら、基本的に名簿は法的に販売(および無料の譲渡すら)も禁止していないため、このように名簿の保持者から騙し取ったり、窃取するなど違法な手段で取得したりしない限り(または金銭を徴収しなければ)、違法性を問われることはない。古書店などでも、他の書籍と同様に売買される性質のものである。したがって、卒業生から母校の名簿を売ってもらったり、社員から属する会社の社員名簿を売ってもらうことは、正当な売買行為とされ、また売る側が金銭を徴収して利益を上げたとしても違法性はない[3]

しかし、「不正に流出した名簿」になると名簿業者は不正競争防止法の不正競争とみなされる可能性がある。また、別の名簿業者から入手したものの、不正に入手されたものであることを知っていれば、不正競争とみなされる。さらに、知らないことに重大な過失があった場合も不正競争とみなされる。また、当初は知らなかったとしても、あとで不正に流出したものであることを知ったのち、名簿を使用したり、転売すれば、不正競争とみなされる可能性がある[4]

不正に流出したものであるかどうかに関わらず、個人データの第三者提供を原則的に禁止する個人情報保護法23条に違反する可能性がある。

名簿業者の適法性[編集]

適法な名簿業者か否かをチェックする項目は以下が挙げられる。

  1. 個人情報取扱事業者であることを明示している
  2. 個人情報の利用目的を明示している。
  3. 個人情報の取得方法・管理体制に関し、規定を定め明示している
  4. 個人情報の開示、修正、削除、に応じることを明示している
  5. 個人情報の第三者提供を求めに応じて停止することを明示している
  6. 個人情報の管理責任者を定め、苦情相談窓口を設けている
  7. 個人情報を取得した場合は、速やかに、その利用目的を本人に通知し、又は公表している。(同10頁)

これらを全て満たす業者は個人情報保護法に適った正当な名簿業者といえる。

また名簿業者から入手した名簿の用途や利用者も実に様々である。一例を下記に挙げると

  • 不動産業、保険業他金融商品取扱業、学校法人(私立学校、塾、予備校他)、電話会社、結婚相談所、ゴルフ会員権取引業、各種教材販売業、健康食品販売業などの電話営業(テレコール)やダイレクトメール(DM)によるダイレクトマーケティング用資料
  • 人材斡旋業のヘッドハンティングターゲット資料や、リクルーティングターゲット資料
  • テレビ局、新聞社、出版社などマスコミの取材資料
  • 興信所や探偵の調査資料
  • 警察の捜査資料

などがある。

違法な名簿業者から提供された個人情報を使用して営業している業者は違法性を問われる可能性が高いため、個人情報の入手元と使用方法について弁護士などと慎重に確認しておく必要がある。

2014年には、送り付けによる詐欺を働いていた複数の業者に対して大量の名簿を販売していた名簿業者・ユールが摘発され、詐欺幇助容疑で社長らが逮捕されている[5]

脚注[編集]

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  1. ^ 平成21年10月9日厚生労働省・経済産業省告示第2号 12-13頁/2-1-11
  2. ^ 平成21年10月9日厚生労働省・経済産業省告示第2号 42-43頁/2-2-4(2)
  3. ^ 牧野二郎(弁護士)、『やりすぎが会社を滅ぼす!間違いだらけの個人情報保護』インプレス 2006年 47-49頁参照
  4. ^ ベネッセの顧客情報「230万件」を売った「名簿業者」 訴えられる可能性はあるか?弁護士ドットコム 2014年07月11日
  5. ^ 送りつけ商法:名簿販売の会社社長を詐欺ほう助容疑で逮捕”. 毎日新聞 (2014年2月17日). 2014年2月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月28日閲覧。

関連項目[編集]