マルチ商法

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マルチ商法(マルチしょうほう、multi-level marketing)は、世間一般的な概念としては連鎖販売取引あるいはそれに類似した販売形態の通称である。

用法[編集]

実際「マルチ商法」という用語は正式な法律用語等ではなく合法違法の別なく様々な定義が存在するが、その中で使われている代表的な用法をいくつか示す。

  1. 連鎖販売取引のこと[1](通常、この定義で用いる。多くの辞書でもこの意味で用いられている。消費生活センターも、この用法を採用している)。
  2. 連鎖販売取引と、それに類似したものの総称。
  3. 連鎖販売取引のうち商品を再販売するもの。
  4. 連鎖販売取引とそれに類似商法のうち悪質なもの[1]

マルチ商法は、無限連鎖講の防止に関する法律によって禁止されるねずみ講と組織の拡大方法で類似点が多いが、ねずみ講が金品配当が主となる組織であるのに対して、連鎖販売取引を含むマルチ商法は商品の販売組織(役務の提案も含む)である点で区別される。 なお商品の販売が主と主張する組織であっても、その商材の実際の価値が販売価格に比べ著しく低い場合には商品販売は主と見なされず、金品配当が主と見なされ、ねずみ講とされる(判例多数あり)。

概説[編集]

1970年代にアメリカホリディ・マジック社が、「Multi-Level Marketing (マルチ・レベル・マーケティング)」と呼ばれる商形態とともに日本に上陸した頃から、国内における連鎖販売取引の歴史が始まったと言われている。マルチ商法は、Multi-Level Marketingの日本語訳として定着し使用されていた。当時、この商形態を規制する法律がなく、取引や勧誘に際しての問題や事件が発生し社会問題となったことから、1976年に制定された「訪問販売等に関する法律」において「連鎖販売取引」として定義され、要件に該当するものは、勧誘などの行為が法律による規制の対象となった。「訪問販売等に関する法律」は、2000年に「特定商取引法」に改称され、以降数度の法改正を重ねて現在に至っている。

ピラミッド型のヒエラルキーを形成することや、新たな参加者の勧誘などの販売展開の方法がねずみ講と類似しているが、ねずみ講との最大の法的差異は、管轄法律の区分であり、同一の活動ではない。しかしながら、過去に「ESプログラム」や「アースウォーカー」は、マルチ商法(連鎖販売取引)として展開していたものの、実質はねずみ講であったとして摘発されている。

マルチ商法は、以下のような商形態をとっている。

  • 加盟者が新規加盟者を誘い、その加盟者がさらに別の加盟者を誘引するという連鎖により、階層組織を拡大する仕組みである。
  • 加盟者は個人である場合もあり、また法人である場合もある。なお加盟者が法人であった場合、クーリングオフなど特定商取引法の規制が適用されない場合がある。
  • 組織に加盟している者は、契約上は商品を売る企業から独立した事業主の立場となるが、多くの場合、上位加盟者(アップ)から誘引された他の加盟者やダウンラインなどとグループを持ち、組織的に新たな従事者を誘引する活動を行っている場合が多い。これらのグループ内において独自の資料(主宰企業が非公認)を作成して誘引活動を行っていることがあり、疑似科学や誇大宣伝による勧誘などの問題を生じる一因になっている。2008年に業務停止処分をうけたニューウエイズにおいては、経済産業省よりこの独自資料が問題として指摘され回収を指示されている[2]
  • 現在のマルチ商法形態の中には、商品と金銭の流れは全て(もしくは大部分)主宰企業から会員直接の取引となり、紹介者、紹介された人との間での売買関係はないのが通常となっている。
  • 新規加盟者を増やすことや、加盟者及び配下の加盟者(ダウンライン)の商品購入金額により、自分がランクアップしたり(ランク制度)、報酬(コミッション、ボーナスとも言われる特定利益のこと)の対象範囲が大きくなって、利益が増える仕組みがあり、報酬計算システムは、会社によって全く異なる。大きく分けて、ブレークアウェイ、ユニレベル、マトリックス、バイナリーの4種類が基本にあるとされている。

業界団体として全国直販流通協会(直販協)、日本訪問販売協会(共に、マルチ商法その他を含む訪問販売全般が対象)がある。

問題点[編集]

マルチ商法は数段階下からの不労所得的な報酬(コミッション、ボーナス)を勧誘時の誘引材料にしている場合がもっぱらである。『ダウン』と呼ばれる配下の加盟者を勧誘・加入させ、かつ一定額以上の商品購入を継続して行わなければならないことが現実(表面に現れないノルマとも言われている)である。また加盟者が期待する様な、安楽な生活ができるほどの高額報酬を得るためには相応の努力が必要であるため、結果として成功者は加盟者全体に対してわずかなものになる場合が多い。

「1人の会員が2人ずつ新規会員を加入させた」と仮定した場合、28世代目で日本の総人口を上回る134,217,728人が必要となる。

マルチ商法は、法律違反や「人間関係のしがらみ」を利用した断りにくい勧誘方法など様々な問題のある活動が相次いだことにより、各地の国民生活センター消費生活センターへ契約に関しての問い合わせ・相談が多く寄せられたこともあって、国民生活センターや消費生活センターでは、マルチ商法を悪質商法であるとし、注意喚起を行っている[3][4]。 上記の為、社会一般でマルチ商法と言うとき、その印象は極めて悪いものとなっている。商法の呼称に関わらず特定商取引法にいう「連鎖販売取引」に該当している限り同法の規制を受けることとなる。

連鎖販売取引は、特定商取引に関する法律その他関係する法律を遵守する限り、違法なものではない。 問題商法に詳しい紀藤正樹弁護士は「マルチ商法は、“原則違法”」「要は“基本的に違法だけど、特定の条件を満たした場合のみ合法に変わる”といった、厳しい規制の中で展開されているビジネスなんですよ。」と表現している。[5]

マルチ商法の別の呼び方として「ネットワークビジネス」「紹介販売」等様々な呼称で呼ばれている。また、業者により独自の呼称で呼んでいる場合もある。

連鎖販売取引とマルチ商法[編集]

連鎖販売取引もマルチ商法も、「ネットワークマーケティング、ネットワークビジネス、MLM」などの別称で呼ばれる事が多い。連鎖販売取引とマルチ商法が同義であるかという件については、各省庁や消費生活センターなどの公的機関においても見解が分かれている。

  • 経済産業省警視庁日本司法支援センター(法テラス)[6]においては、連鎖販売取引とマルチ商法を同義で使用している。
  • 独立行政法人国民生活センターでは、連鎖販売取引とマルチ商法を同義として使用していない。国民生活センターは、マルチ商法をねずみ講的販売方式全般について広く総称することを基本としている。
  • 地方自治体の消費生活センターでは、マルチ商法を連鎖販売取引と同義としている場合や、ねずみ講的販売方式全般について広く総称している場合など、消費生活センター毎に違いがあり、必ずしも統一して使用されているものではない。
  • (連鎖販売取引企業も多数加入する)公益社団法人日本訪問販売協会では、「一般的には特定商取引法の連鎖販売取引において、法規制を守らない悪質な商行為を「マルチ商法」と呼ぶことが多い」[7]としている。

このように、公的機関内であっても見解が一致しておらず、連鎖販売取引がマルチ商法、ネットワークビジネスをはじめとして、主宰する企業によって様々な別称で呼ばれる場合も多く、消費者にとって非常にわかり難い状況になっているのが現状である。

業界紙「月刊ネットワークビジネス」の2008年11月号「マンガ安心法律学校(4)/マルチ商法とねずみ講の違いって?」において、「(連鎖販売取引が)マルチ商法ではない」と告げることは「不実の告知(真実を言わない、告知しない)」という法律違反となる恐れがあると、注意を呼びかけている。又、同様の説明をしている企業もある。[8]

マルチ商法とマルチまがい商法[編集]

2001年までは特定負担金の額(2万円以上)など連鎖販売取引の定義条件に当てはまらないものが「マルチまがい商法」と呼ばれていた。

当時の大手を含めた多くのマルチ商法企業は、規制逃れを目的に特定負担金を連鎖販売取引の定義条件以下(2万円未満)に設定していた為、連鎖販売を主宰している企業のほとんどがマルチまがい商法という状況だった。しかし、2001年6月1日の法改正にて、連鎖販売取引の定義から特定負担金の条件がなくなった結果、規制逃れをしていた企業もすべて連鎖販売取引(マルチ商法)に該当することになった。

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

相談窓口及び公的機関による解説
業界団体