新聞拡張団

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

新聞拡張団(しんぶんかくちょうだん)とは日本新聞販売において、新聞社新聞販売店とは別の団体で新聞の訪問勧誘を行う団体をいう。「拡販団」や「新聞ヤクザ」といわれることもある。一部新聞社や新聞販売店から委託を受けているものもある。

現在、朝日・毎日・読売・日経・産経・東京の6新聞社によって1993年に設立された新聞セールス近代化センター2008年6月に、新聞セールスインフォメーションセンターと改称)へのスタッフ登録が義務付けられており、それによれば前記6社の合計で9,486人の人員が登録されている(2005年現在)。

概要[編集]

通常、団長が団員を統率し新聞販売店から委託されて新聞購読契約の勧誘に歩く。契約を取った数に応じて新聞販売店から報酬(カード料)を受け取る。

呼称[編集]

呼称は立場や状況によって異なる。なお、「新聞拡張団」や「団」という呼称は主要マスコミが示す不適切用語のガイドラインに挙げられている[1]

一般的呼称
集団を指す場合は新聞拡張団と呼ばれる。そこへ所属する人員を指す場合は新聞勧誘員または新聞拡張員と呼ばれる。
内輪での呼称(主として拡張団内で使用される)
集団を指す場合はと呼ばれる事が多い。そこへ所属する人員を指す場合は団員と呼ばれる。
新聞業界での呼称(拡張団以外の団体が呼ぶ場合)
集団を指す場合はセールスチームと呼ばれる事が近年増えている。そこへ所属する人員を指す場合はセールススタッフ営業スタッフと呼ばれる。

形態[編集]

新聞拡張団の形態としては大きく分けて以下の3種類に分別される。

地場団
ある狭い特定地域のみを専門として営業活動を行う。団を始めたばかりの人員の少ない団で、個人経営が殆どである。地元密着型の営業が多く、所属する団員は昔からの馴染みの客を持っている事が多い。
広域団
広い地域にまたがって営業活動を行う(全国に及ぶ場合もある)。団に所属する人員も多く、団として法人化されている場合も多い。厳しいノルマが課せられている広域団が多く、その関係上、最も強引な勧誘が目立つ形態でもある。
直属
新聞社が直轄して営業活動を行っており少なくとも読売、朝日、毎日、日経の4紙には存在している。中には新聞社の子会社化しているケースもある。通常の営業の他に、販売店が問題になるような営業を行っていないかをチェックする監査的な役割も行っている。

他に「拡専」「専拡」という新聞販売店の社員で営業活動のみを専門に扱っている者もいるが、これは業界内においては新聞拡張団とは呼ばない。同様に、新聞販売店の社員(またはアルバイトなど)が営業活動を行っている行為も新聞拡張団とは言わない。

いずれも新聞販売店から特定期日(場合によってはほぼ日常的)に依頼されて営業活動を行っており、新聞販売店から貸し出された過去読や現読などの読者リストを営業データとして使用している。

営業活動を行う際には、個人情報保護法ならびに不正競争防止法を遵守する旨の秘密保持誓約書への署名と新聞セールス近代化センターが発行する新聞セールス証の着用が義務づけられている。営業に使用する拡材と、場合によっては自転車などを販売店から貸し出されて営業に使用している。

一日の営業活動が終わった時には契約カードを販売店へ提出し、借用した読者リストや自転車などを返却する。提出した契約カードの内容が店員によって監査され、問題がなければ契約内容に応じた報酬が販売店から団長へ支払われる。

報酬[編集]

新聞拡張を行った営業報酬は、新聞拡張団の形態に大きく関わってくる。

地場団[編集]

新聞販売店が支払う報酬のみ(時期に依ってはコンクール等と称する、本社からのプレミア料つまりインセンティブが加算される)となるため、報酬が比較的安価である。この報酬はカード料と呼ばれ、団の統率者から団員に対しては成果に応じてカード料が個別に支払われる。団員のカード料は一括して支払われるわけではなく、カード料の数割程度となる内金が当日の夜(場合によっては翌営業日)に支払われ、残りの残金が月末などの所定日に支払われる。このシステムは安定した給与を保持するという建前があるが、事実上は団員の逃走防止が主目的である。

広域団[編集]

組織力の利があるために、販売店からの報酬の他に団の上層部からプレミア代が加算されたりする。この場合、広い地域で展開している関係上、競争が穏やかで利益の潤っている地域から競争が激しく営業活動するほどに赤字となる地域へ拡張材料を回したり団内のプレミア代を高額に吊り上げて営業活動を行っている者のモチベーションを高め、より多くの契約を取れるように便宜が図られる。内金・残金のシステムについては地場団とほぼ一緒であるが、地場団よりも内金の割合が低い傾向がある。

直属[編集]

報酬は地場団とあまり大差はない。本社直属という立場上、ある程度の固定給は保証されているために地場団や広域団のように強引な営業活動はあまり行われない傾向がある。

いずれの形態も報酬は契約内容によって異なり、報酬が高い方から順に新勧・起し・縛りとなる。起し・縛りの場合は販売店店員の契約よりも新聞拡張団と契約していた客のほうが高額であり、契約期間についてもより長く直近の購読開始であるほど高額である(用語は営業も参照)。

求人方法[編集]

地場団、広域団の場合、スポーツ新聞に広告を出すなどの方法で求人する。これらの広告では、新聞拡張団を略して「新団」と記載することも多い。定着率のあまり高くない仕事でもある。

本社直属の場合、求人情報誌やインターネットの求人サイトで求人する。

用語(五十音順)[編集]

後爆(あとばく-)
新聞代金もしくは拡材を後で持ってきますと約束すること。約束が果たされずトラブルになるケースが多い。
置き勧(おきかん)
拡材(景品)を勝手に客の家に入れ契約を取ろうとする行為 。具体例では拡張員が引越しなどをした家に「お引越しおめでとうございます、近所の販売店です〜」などと言い、その際に拡材を投げ込むように入れ(洗剤など)強引に契約を取った例がある。近年では拡張団が自腹を切って、客の購読料を負担する事を条件として契約する事も指す。消費者に特定商取引に関する法律ネガティブオプションの知識(置かれた日から14日経過、あるいは引き取りを求めた日から7日が経過した場合、返還義務が消失する)が浸透していない事を逆手に取ったやり口である。
S紙(エスがみ)
他紙(主に当該販売店で併売しているもの)を拡材に用いて契約を取ろうとする行為、および、そうして購読料を取ることなく配達される新聞のこと。
カード料(-りょう)
成約に対する報酬。用語の由来は、契約書である「購読者カード」から来ている。
拡材(かくざい)
客との契約の際に提供するサービス品の事。現在も昔ながらの洗剤が基本となっているが他にもビール券、商品券、お中元・ギフトセットや旅行チケットなども広く使われている。契約を断ってもこの拡材を渡すことがあり、あとから「契約料を払え、できないなら商品を返せ」と迫ることがある。地域によっては各競合紙が「拡材に使うのは○○円相当まで」と内規で取り決めをしている場合もあり、景品表示法により新聞購読の景品は購読料6ヶ月分相当額の8%迄に規制されているが現場レベルではあまり遵守されていない。
過去読(かこどく)
以前に購読していた客の事。
ガサ
小さめのアパートの事。
喝勧(かつかん)
威圧、圧迫、脅迫、暴力など人を威迫して困惑させて契約を締結する、刑法特定商取引に関する法律に違反した行為で契約を取ることをいう。具体例では「客の玄関に居座り居直る」、「怒号をあげ威嚇する」、「ドアを力一杯たたく、蹴り上げる、強引に入ろうとする」、「客の襟首を掴んだり、手で押す」、「ドアに指や足を入れ閉めさせない」、「“何回でも、毎日でも来る”と脅す」などさまざまな例があり、閉めようとしたドアが体に当たったといって言いがかりをつけることもあるという[要出典]。勢いあまって客を死亡させてしまうケースもある。また宅配便や郵便を装ってドアを開けさせ、開けた瞬間に足を突っ込んでドアを閉めさせない手口も報告されている。
勧(かん)
「新聞勧誘」の略語(「〜勧」とつく用語は多い)。
現読(げんどく)
現在購読中の客の事。
自転車操業
団の上司から課せられたノルマを達成するために内密で購入した拡材を営業活動に使用している内に、収入と釣り合わなくなって身動きが取れなくなった状態。
てんぷら
「てんぷら〜する、した」の語源になった用語。具体的には架空の住所や印鑑などを使って“偽の購読申込書(カード)”などで販売店の店主を騙し、マージン(カード料)を取る事などであるが、中には販売店の店主と組み、偽カードをお互いに作り新聞社から出るマージンを山分けし(100〜200万円単位)逃亡したり、拡張団自身が販売店と共謀して契約を捏造したりするケースもある。
泣き勧(なきかん)
泣き落としなどで同情を誘う事によって、契約をせまること。
爆カード(ばく-)
置勧によって成約したカードを指す。
箱(はこ)
マンションや大きなアパートのこと。
パンク
一日の活動で、カードが1枚も揚げられなかった状態。オケラ・ボウズとも呼ばれる。
バンク
販売地区。
ひっかけ
特商法で禁じられた行為により、詐欺まがいで契約を取ろうとすること。具体例では「クーリングオフを説明せずに契約をせまる」、「「いつでも契約を解除できます」、「空契約なのでお願いします」、「次回はもっとサービスします」などと言う」などという例などがある。「実際には取らなくてもいいからハンコだけ押してください。そうすれば景品(洗剤など)あげます」「ノルマ達成のため代金は自腹で払っておくのでタダにしますから」と言って印鑑を押させる場合もある。それにより契約が成立していることは言うまでもない(上述の「てんぷら」も参照)。
プレミア
契約を多く挙げた際に、カード料に加算して支払われる。
マーキング
拡張団の勧誘に限らないが一度勧誘に訪れた家の玄関のインターホン、表札、周辺などにマーキングと呼ばれる"しるし"が付けてあることがある。これをマーキングといいマジックで記号を書いたものだったり、シールを張った物だったり様々である。これは拡張団やセールスマン同士が玄関先を見ただけで、その家のことが分かるようにするための情報共有に使われる。例えば「Y」と書かれていれば読売新聞購読者、「A」なら朝日新聞など。他にも女性の一人暮らし「L」や複数で住んでいる「S」または「大」など、住人情報の分かる印もある。
無読(むどく)
何も購読していない客のこと。近年、インターネットによる報道情報の流布など情報源の多様化のために無読の客が増加し新規顧客との契約が次第に困難となっている。

新聞拡張団の問題点[編集]

強引な勧誘[編集]

日本では、新聞販売とは特定商取引に関する法律を始めとする各種法律、法令を無視した強引な勧誘・売り込みが横行しているとの認識があり、新聞拡張団がその担い手であるとの非難もあるが、新聞がその問題点について記事を掲載することは少なく、各新聞社は勧誘トラブルについて「別会社、取引先のことで関係ない」という態度を採っている。新聞発行部数に比例し、朝日新聞と読売新聞の販売員に関する苦情が多い。また、訪問目的を偽る新聞拡張団は現在も存在する。

なお特定商取引に関する法律の第3条に「販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る商品若しくは権利又は役務の種類を明らかにしなければならない」とある。

脅迫による押し売りは日常茶飯事であり非常に迷惑な存在であるが、売り上げにかかわるため新聞自体がその問題点について記事にしたり啓発することは少ない。新聞拡張団の中には暴力団の構成員も相当数いるといわれており、暴力団の資金源となっている。関東では特に住吉会系暴力団員が多いとされており、販促品として使用される野球のチケットがダフ屋に流れている。啓発は専ら消費者団体、国民生活センターや各地の消費者センターが行っている。

新聞販売店への負担[編集]

強引な勧誘によって契約した読者には、当然のことながら悪いイメージを植え付けることとなりトラブルも多い。その後処理は専ら、新聞販売店側で行うこととなる(新聞販売店の問題点も参照)。

近年の無読層増加による契約数の減少のため、契約カードの営業報酬のみでは団の維持が困難となっている。このため、「引き継ぎ料」や「手付け金」などの名目で補助費を請求することが増えている。この補助費にはその明細や用途が不明確なものが多く、新聞販売店の経営を圧迫する要因の一つともなっている。

勧誘の手法[編集]

競合紙同士が激しい部数競争を行っている地域、更に新興住宅地における新規の読者開拓では新聞販売店側が強引な手法で大量の契約を揚げる特定の拡張団(特に広域団)へ依頼を行っていることが多い。ここでは比較的ポピュラーな手法で、かつ問題視されることの多い強引な手法を挙げる。

オートロックマンションでの手法[編集]

厚紙などをドアの隙間から差し込んで内部のセンサーを反応させて解錠させたり、マンション住人の出入りに紛れて入り込んだりする古典的手口は未だに多い。また一部住人が勝手に開けっ放しにしている裏口、または自転車置き場や駐車場の通用門を見つけて入り込んだり非常階段などの比較的低い壁を乗り越えて入り込んだりする場合もある。

ドアを開けさせる手法[編集]

「お届け物です」などと宅配便の配達を装って勧誘する場合がある。他にも「近所の者ですが挨拶回りに伺いました」、「引っ越してきた者ですが挨拶に伺いました」などと近隣住民を装う手口や「この地域のリサイクル担当になりました。古新聞や古雑誌、不要な家電製品などありませんか?」などと資源・廃品回収業者を装う手口もある。これらの行為は特商法を無視して広く行われている[2]

勧誘対策[編集]

ここでは、一般的な知識として簡略的に対策を記述するのみとする。結論から言えば見知らぬ訪問者をうかつに相手にするような警戒心の薄さが最大の要因であるが、そのような人は未だに多い。

  • 購読する意思がある場合でも、無料などの言葉に惑わされずに購読料を払える期間を良く考えて契約すること。なお、「いりません」「帰ってください」と断ったにもかかわらずその場から退去せずにやむなく契約を締結をしてしまった場合には消費者契約法の不退去取消の対象となる。
  • マーキングは勧誘の目印になるために、見つけ次第すぐに消す。
  • 一度玄関を開けてしまうと明らかに購読の意志がないと判断されるまで延々と喋り続けるので、まずその段階で注意すること。
  • 意に反する契約を強要された場合には、遅滞なく特商法のクーリングオフ又は消費者契約法の困惑取消又は不退去取消の内容証明を当該新聞社及び当該新聞販売店に送達する。
  • 退去する旨を伝えても、玄関先に居座る場合やドアを叩くなどの脅迫まがいの行為を受けた場合は、不審者がいると110番警察に通報して、警察官に任せるのも手である。

勧誘されやすいタイプ[編集]

勧誘されやすいタイプの人間は新聞拡張団に限らず多様な訪問販売などのターゲットとして格好の材料となるのが現実で、いくら詳細な対策を知識として身に付けてもなかなか応用ができない傾向がある[3]

新聞拡張団のターゲットとなりやすい対象としては、以下のものが挙げられる(括弧内はその主たる理由)。

  • 一人暮らしを始めたばかりの大学生、新社会人(警戒心の薄さ、世慣れしていない点)
  • お年寄りの一人住まい(話好きである点)
  • 日中、一人で留守番をしている主婦(話好きである点)
  • 大人しくて、のんびりした人(明確に主張できない、断り切れない点)

その他、暇な人、そそっかしい人なども該当する。

尚、拡張団員は担当地域などを回って観察していたり場所によっては不動産屋から入居情報を入手したりすることが多いので、引越しや荷物を運び入れている家を見つけると即座に勧誘に訪れる。このため、引っ越してから数週間は勧誘が非常に多いこととなる。

注釈[編集]

  1. ^ 読売新聞社発行 差別表現・不快語・注意語要覧、1993年
  2. ^ リサイクル業者を装って新聞の契約をさせる勧誘員(発表情報) 国民生活センター
  3. ^ 警視庁発行 自己診断!あなたは悪質業者から好かれるタイプ?それとも…悪質商法被害者度チェック、1988年

関連項目[編集]

外部リンク[編集]