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新型コロナウイルス感染症 (2019年)

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この記事の項目名の英語名である「COVID-19」には以下のような表記揺れがあります。
  • コヴィッド19
  • コビッド19
2019年新型コロナウイルス感染症
Symptoms of coronavirus disease 2019.svg
2019年新型コロナウイルス感染症の症状
症候学 発熱疲労空咳息切れなど
原因 SARSコロナウイルス2 (SARS-CoV-2)
診断法 PCR法LAMP法抗原検査
新型コロナウイルスの構造
  赤色の突起はスパイクタンパク質[1]
  灰色の被膜はエンベロープ。主成分は脂質でアルコールや石鹸で破壊できる[1]
  黄色の付着物はエンベロープタンパク質[1]
  オレンジ色の付着物は膜タンパク質
[1]

2019年に発生した新型コロナウイルス感染症(しんがたコロナウイルスかんせんしょう)は、世界保健機関(WHO)による国際正式名称をCOVID-19[2]といい、SARSコロナウイルス2 (SARS-CoV-2) [注 1]ヒト感染することによって発症する気道感染症ウイルス性の広義の感冒の一種[3])である[4]

症状は様々であり、軽症から重症まで多岐にわたる[5]。一般的な症状には、頭痛嗅覚味覚の消失、鼻詰まり(鼻閉)および鼻漏筋肉痛咽頭痛発熱下痢呼吸困難がある[6]。多くの場合、無症状または風邪様症状を伴う軽症で自然治癒するが、重症では急性呼吸窮迫症候群敗血症多臓器不全を伴う[4][7]。81%の患者は軽度から中等の症状(軽度の肺炎まで)であり、14%は重度の症状(呼吸困難、低酸素症X線写真の50%以上が映る)となり、5%は致命的な症状(呼吸不全ショック、多臓器不全)となる[8]。ウイルスに感染した人の少なくとも3分の1は、どの時点でも目立った症状はない[9][10][11][12][13]

予後について、米国シカゴの大規模な医療センターの医師は、COVID-19の生存者に、長期的な神経学的影響があることを示唆している。COVID-19の多くの生存者に脳損傷が発生し、広範囲に及ぶ認知、行動、心理的問題を引き起こす可能性があるという証拠が増えている[14]後遺症が長い場合は1年以上続く感染経験者もいる。WHOが2021年10月に初めて公表した後遺症の定義は、「ウイルス感染確認から3カ月以内に発症し、2カ月以上続き、他の病気では説明できない症状」としている[15](「#後遺症」で詳説)。

日本においては、2020年時点では感染症法に基づいて強制入院などの措置を取ることができる指定感染症(二類感染症相当)に指定された[16]ほか、新型インフルエンザ等対策特別措置法上も期限付きで新型インフルエンザ等とみなされ、日本国政府緊急事態宣言を発令できるようになった(令和2年法律第4号に基づく)。

2019年12月に中華人民共和国湖北省武漢市で初めて検出された新興感染症で、一般に武漢市から世界各地に感染が拡大パンデミック)したと考えられているが[17][3]バルセロナ大学スペイン)の発表によると2019年3月に採取した廃水から新型コロナウイルスが検出されている[18]イタリアの国立がん研究所の研究によると2019年9月に採取した同国での肺がん検査受診者の血液中から新型コロナウイルスの抗体が検出されており、武漢市で報告される前から、世界中にウイルスが広まっていた可能性が、2020年3月時点で指摘されている[19]

新型コロナウイルスの起源については、コウモリを筆頭に野生動物から伝播したとするものと、初期流行地に近い武漢ウイルス研究所を筆頭に人為的営みから流出したとするものが主として挙げられており、前者の可能性が高いとされているが、後者の可能性も否定されておらず、正確な起源は判明していない[20]

原因ウイルスは変異しており、感染力が強いコロナウイルスの変異株について、日本感染症学会は「別のウイルスと捉えて対応すべきだ」と提唱しているが[21]、従来のコロナワクチンが、特にブースターショットを受けた人々にとって、重篤な症状、入院、および死亡の可能性を大幅に減らすことを示す証拠が得られている。オミクロン株はこれまでに出会った中で最も伝染性の高い変種であるため、高品質でフィット感のあるKN95、KF94、およびN95マスクがこれまで以上に重要になっている[22][23]

名称

2020年1月9日、世界保健機関 (World Health Organization; WHO) は2019年12月8日に中華人民共和国湖北省武漢市で発生した肺炎の集団発症が新型コロナウイルス(原文では “novel (or new) coronavirus”)によるものであるとする声明[24]を出した。この時点では、同声明を翻訳した日本の厚生労働省検疫所は「新しいコロナウイルス」ないし「武漢肺炎」(原文では “pneumonia in Wuhan”)と訳している[25]

同年2月1日、「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令」の執行により[16][26]、法令において「新型コロナウイルス感染症」と定められた。厚生労働省[27]日本感染症学会[28]もこれに準じている。

同年2月11日、WHOがCOVID-19(コヴィッド ナインティーン[29]またはコビッド ナインティーン[30])と命名した[31]COVIDとは “corona-virus disease”(コロナウイルス疾患)の略称で、19は最初にウイルスが発見された2019年を表している[32]。英語では “coronavirus disease 2019[33][32][34][35][36] または単に “coronavirus disease[2] とも表記される。日本においては「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)」と併記される場合もある[37][38][39][40][41][42]

WHOは、ヒトに感染する新たな感染症やウイルスの名称に、地域・人名・動物・食品名、特定の文化や産業名を含めないと規定しており[43][44][45][46]、この命名について、固有の地名や国名などと関連付けることで起こる、特定の集団へのスティグマを防ぐよう考慮したと説明した[47]

中華民国台湾)の衛生福利部疾病管制署では、COVID-19を法令公式名称においては「厳重特殊伝染性肺炎」と定めたが、簡称として「武漢肺炎」の呼称を公的文書で使用している[48]。また、香港韓国、日本などの一部報道においても「武漢肺炎」の表記が用いられている[49][50][51][52]

病理

SARSコロナウイルス2に感染することによって発症する[3]

感染経路

COVID-19の感染経路

感染経路としては、ウイルスが付着した手で鼻や目や口を触ることによる接触感染と、くしゃみによる飛沫感染がある[3]。重い飛沫は数秒間、2メートル程度を飛んで床や地面に落下することが多く、米国ガイドラインでは感染者から6フィート(約182cm)範囲での暴露で飛沫感染が起こるとしている[53]

空気感染は、特に屋内のハイリスク環境であった場合に起こりえるとされ[54]、米国ガイドラインでは感染者と共に換気の悪い部屋に15分以上滞在すると空気感染が起こりえるとしている[53]。レストラン、合唱団ジム、ナイトクラブ、オフィス、宗教施設など、混雑している場所や換気が少ない場合にリスクが高い[55]

接触感染については、ハーバード大学医学部によると、汚染された表面や物との接触による感染リスクは非常に低いと考えられている。アメリカ疾病予防管理センター (CDC) によると、汚染された表面との接触が感染を引き起こす確率は1万分の1以下だという。しかし、キスをすることでウイルスに感染する可能性はある[22]

宿主細胞受容体

SARSコロナウイルス2は、SARSコロナウイルスと同じく宿主細胞のアンジオテンシン変換酵素II (ACE2) 受容体に結合して感染するとみられている[56]。ヒトACE2受容体とSARSコロナウイルス2のスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン[注 2]とが、相互作用する様子をシミュレーションした動画が公開されている[57][58]。ACE2受容体は気管支心臓腎臓消化器などに発現している[59]。ACE2受容体はHuman Protein Atlas英語版によれば腎臓や[60]、また中国での研究によれば上皮細胞に多く発現している[61]

通常、ACE2受容体は刺激されるとアンジオテンシンIIを分解することで血圧上昇のためのレニン・アンジオテンシン系 (RA系) を阻害するが、このRA系阻害作用は臓器の保護に重要な可能性がある[62][63][64]。SARSコロナウイルスではマウスでの動物実験においてACE2受容体の発現を減少させるとされ[65]、新型コロナウイルス感染症の患者の血漿においてもアンジオテンシンIIが高いレベルにあるという情報がある[66]。そのため、新型コロナウイルス感染症の治療においてRA系の阻害が提案されている[66][67]

症状と徴候

主症状は2020年1月21日判明分で、40程度の高熱 (98%) 、乾いた (76%) 、息切れ (55%) などである[68]。他に、全身倦怠感、吐き気、筋肉痛などを催すと報告されている[69]。顕著な合併症は肺炎である。入院患者では呼吸困難や胸の圧迫感も多い。また、入院時のバイタルサインは比較的安定している[70]

ウイルス性の疾患である、本感染症の場合には、大量の治療薬投与に伴う、ヒト免疫の低下要因による二次的な細菌性肺炎の併発[71][72]、基礎疾患の重症化[73][74]、嗅覚喪失および味覚消失による栄養管理が不十分による体力の低下に伴う重症化が懸念されており、早期の発見、早期の治療開始が必要とされている。

そのため、中華民国オーストラリア連邦などでは、接触感染アプリケーションなどを駆使して、陽性者との「接触データ」および「追跡データ」を用いて、検査要請などを、直接国民に依頼できる仕組みを構築している[75][76]。また、世界で一番抑え込みに成功したとされているニュージーランドでは、予防対策が不十分な場合において、公益者通報制度を用いて報告できる仕組みを構築している[77]2021年5月8日時点、世界で最も罹患者が少ない国家はミクロネシア連邦の1名である[78]

症状[79] %
発熱 87.9
空咳 67.7
倦怠感・だるさ 38.1
33.4
嗅覚障害味覚障害[80] 30 - 66
息切れ 18.6
筋肉痛関節痛 14.8
のどの痛み 13.9
頭痛 13.6
悪寒 11.4
吐き気嘔吐 5.0
鼻詰まり 4.8
下痢 3.7 - 31[81]
喀血 0.9
結膜充血 0.8

潜伏期間

潜伏期間は 1日 - 14日間とされ[17]世界保健機関 (WHO) は平均値を 5日 - 6日、アメリカ疾病予防管理センター中央値を 4日 - 5日としている[82][83]

ある感染者の発症(1次症例)から2次感染者の発症(2次症例)までの「発症間隔」は、SARSの 5.3日 - 19日に対して、本症は 3.5日 - 5.9日と見られており、潜伏期間に感染能力をもつ可能性が指摘されている[84]

当ウイルスに感染していても病気の症状が現れない不顕性感染者がおり、無症状病原体保有者と言う[17]。無症状病原体保有者は、その保有する当ウイルスを他者に感染させる可能性がある[85]

初期症状

症状は特異的ではなく、症状のないもの(無症候性)から重症の肺炎、死亡まで幅広い。典型的な症状・徴候としては発熱、空、疲労、喀痰、息切れ、咽頭痛(のどの痛み)、頭痛下痢などがある(表参照)[17][79]くしゃみ鼻水、のどの痛みなどの上気道症状は少ない[86]。WHOの進藤奈邦子シニアアドバイザーは、この病気は下気道に親和性が強く、排ウイルスのピークは発症日から3日 - 4日後くらいと報告している[69]

初期症状はインフルエンザ普通感冒と似ており、発症早期の段階では鑑別が困難である[3][7][87]。感染から潜伏期間(1から14日間)を経た後に、微熱発熱や呼吸器症状、倦怠感が約1週間続く。2020年1月25日時点での中国では、初期症状は、肺炎に特有の発熱や咳だけとは限らず、下痢や吐き気、頭痛や全身のだるさなど、消化器系神経系の症状の場合もあり、早期の診断を難しくしていると伝えられた[88]。また、特に発症早期の場合は発熱が必ずしも現れるわけではないため、発熱検知装置だけで検出できない可能性がある[89]

進行症状

原因については解明が待たれているが、二次的な細菌性肺炎も存在し、感染後1週間から2週間以内に発症した肺炎はウイルス性のものが多いと見られている[90]。急性進行および他疾患併発によると考えられているが[注 3]、重症化すると急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) や急性肺障害 (ALI) などを起こし[91]体外式膜型人工肺適応となる場合が多い[92]

神経学的症状

嗅覚喪失

2020年6月のシステマティックレビューでは、嗅覚障害の有病率は29%から54%であった[93]。一方で、米国ペンシルベニア大学Smell Identification Test法英語版による2020年8月の研究では、患者の96%に何らかの嗅覚障害があり、18%では完全に喪失していた[94] 。別の2020年6月のシステマティックレビューでは、嗅覚減退症の有病率は4%から55%と報告された[5]。2020年7月の欧州CDCの報告では、嗅覚喪失の有病率は約70%としている[6]

嗅覚や味覚の攪乱は、若い患者に多く確認され、おそらくこれが原因で合併症のリスクが低くなっている[93]

味覚消失

一部の人々はCOVID-19により、一時的に食物の味の変化(味覚障害または味覚消失)を経験する[93][94]ケメセシス英語版の変化も報告されており、辛味などの化学的に引き起こされた感覚も失われることがある。2021年1月の時点では、味覚およびケメセシスについての症状のメカニズムはまだ理解されていない[94]

2020年6月のシステマティックレビューでは、味覚障害の有病率は24% - 54%であった[93]。別の2020年の6月のシステマティックレビューでは、味覚減退の有病率は1% - 8%と報告された[5]。2020年7月の欧州CDC報告では、味覚障害の有病率は約54%であるとしている[6]

診断

他のコロナウイルス科ウイルス感染症[注 4]との鑑別は外観所見上からは難しい。発熱せずに死亡した患者もいるので、発熱検知装置だけで検出できない可能性もある。

X線撮影や肺コンピュータ断層撮影を用いた画像検査による鑑別が可能な場合がある。病変は中国の81症例中、無症候の時期は、片側性やmultifocal(多発斑状)、すりガラス状陰影が優位であり、発症後1週間以内では両側性やすりガラス状陰影が卓越、びまん性が優位となる。発症後1週間を越えるとコンソリデーションや混在病変が優位となる[95]。病変は末梢に分布しやすく、リング状陰影(reversed halo sign)は特徴的である。胸水リンパ節腫脹は少ない[95]

免疫抑制下では易感染でありニューモシスチス肺炎との鑑別が重要である[96]

検査

COVID-19臨床検査には、核酸増幅検査(NAAT)によりウイルスの存在を検出する方法と、抗体を検出する方法のいずれかが推奨されている[97]。NAATのひとつにPCR検査法LAMP法があり[97]、日本ではSARSコロナウイルス2の遺伝子領域から、オープンリーディングフレーム (ORF) 1aとスパイクタンパク質を検出する2-step RT-PCR 法(2ステップ逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法)またはリアルタイム one-step RT-PCR 法(TaqMan プローブ法)が使用される[98]。これらの検査は臨床検査技師が行なっている。

抗原検査も使われているが、PCR検査よりも感度が低く、高い特異性を持っている[97]。米国ガイドラインでは、抗原検査のみを根拠に確定診断することに反対している(エビデンスAIII)[97]。感染が強く疑われる人が抗体陰性であった場合、および無症候の人が抗体陽性であった場合には、追加でNAATを行うことを推奨している[97]

その他に補助的な検査として、血液検査または胸部X線撮影やコンピュータ断層撮影を用いた画像検査を行う。

管理

ここではガイドラインで勧告された療法のみを掲載する。治験中のものはCOVID-19に対する薬剤研究およびCOVID-19に対する薬剤転用研究を参照

COVID-19に対する特定の効果的な治療法や治療法は存在しない[99][100]。そのためマネジメントは対症療法輸液療法、酸素支持、体位管理などであり、必要に応じて臓器を守るために医薬品や医療機器を使用する[101][102][103]

いくつかの実験的治療法が臨床試験で活発に研究されている[99]ヒドロキシクロロキンロピナビル/リトナビルなどは、パンデミックの初期には有望であると考えられていたが、その後の研究では効果がなく、有害でさえあることが分かってきた[99][104][105] 。多くの研究がなされているが、いまだに早期治療を推奨するのに十分な質の高い証拠は存在しない[104][105]

COVID-19のほとんどは軽症であり、その場合の支持療法には、症状(発熱、体の痛み、咳)緩和のためのパラセタモールまたはNSAIDなどの薬物療法、水分の適切な摂取、休息、および鼻呼吸などがある[106][100][107][108]。適切な衛生管理と健康的な食事も推奨される[109]アメリカ疾病予防管理センターは、ウイルスを持っていると疑われる人は自宅で自主隔離し、マスクを着用することを推奨している[110]

より重症の場合は、病院での治療が必要になりうる。酸素レベルが低い患者にはデキサメタゾンが強く推奨され、死亡リスクを減少させることができる[69][111][112]。 呼吸支援が必要となれば、非侵襲的換気、そして最終的には人工呼吸器を付けて集中治療室への入室が必要になる場合もある[105]体外式膜型人工肺(ECMO)は呼吸不全の問題に対処するために使用されることもあるが、その利益はまだ検討中である[113][114]

2020年7月時点、日本で認可されている治療薬はレムデシビルデキサメタゾンの2種類である[3]

  • レムデシビル - 抗ウイルス薬レムデシビルは、アメリカ食品医薬品局(FDA)によって承認されている唯一の薬剤である[105] 。日本では特例承認制度により、5月7日に正式に新型コロナウイルスへの治療薬として承認された[3]。 しかし人工呼吸器を付けた患者には推奨されず、WHOも有効性の根拠が限られるとして推奨していない[115][99]
  • デキサメタゾン - ステロイド抗炎症薬デキサメタゾンが、2020年6月にイギリスで新型コロナに感染した重症患者の死亡率を下げるとの研究結果が報告された。 米国のガイドラインでは人工呼吸器を要する患者に推奨される[105]。入院や酸素吸入を要しない軽中度の患者には推奨されない[116]。日本のガイドラインでも承認されている[3]

米国のガイドラインでは、臨床進行のリスクが高い軽度から中等度の外来患者に対しては、以下いずれかの療法を推奨している[105]

  • バムラニビマブ700mg および エテセビマブ1,400mg (AIIa)のカクテル療法[105]
  • カシリビマブ1,200mg および イムデビマブ1,200mg (AIIa)のカクテル療法[105]

なおバムラニビマブの単剤使用の承認は取り消されている。

禁忌薬

禁忌薬に指定された薬品は存在しないが、科学的な検証が不十分である。

3月17日、WHOの報道官は、本ウイルス感染の疑いがある場合、医師の助言なしに抗炎症薬イブプロフェンを服用しないよう注意を促した。抗炎症作用の少ないアセトアミノフェンの服用が望ましいとしていたが[117]、3月20日に「通常の副作用以外に、症状を悪化させるという報告はなかった」ことから「控えることを求める勧告はしない」とし、先の発表を事実上撤回した[118]。そのため、3月20日時点において禁忌薬に指定された薬品は存在しない。ただし、ロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)はサイトカインストームを起こし肺炎の可能性を上げるリスクが肯定も否定もされていない状況にあるため、可能ならば使わないほうが無難といえる。一般的な副作用を防ぐという観点も含め、解熱剤としての第一選択はアセトアミノフェンと考えるのが現時点では妥当である[注 5]

治療薬

日本の厚生労働省ガイドラインにおいて記載されている、日本国内で入手できる薬剤の適応外使用で、国内において治験または特定臨床研究が実施されている薬剤は、以下の通りである[3][119]。以下のリストは、2020年12月23日における資料に基づいているため、今後も変更が有り得る。

治療承認薬

  1. ベクルリー(レムデシビル
  2. デカドロン(デキサメタゾン
  3. ヘパリン
  4. ロナプリーブ(抗体カクテル) - カシリビマブ(遺伝子組換え)およびイムデビマブ(遺伝子組換え)[120]
  5. ゼビュディソトロビマブ〈遺伝子組換え〉)[121]

承認申請済み

  1. アビガン(ファビピラビル

治験実施中

  1. アクテムラ(トシリズマブ〈遺伝子組換え〉)
  2. ケブザラ(サリルマブ〈遺伝子組換え〉)
  3. オルミエント(バリシチニブ
  4. ビラセプト(ネルフィナビル
  5. ストロメクトール(イベルメクチン
  6. アドレノメデュリン(ADM-L1-01)
  7. 製品名未定(サルグラモスチム)
  8. 製品名未定(血漿分画製剤)
  9. フオイパン(カモスタット

特定臨床検査実施中

  1. オルベスコ(シクレソニド
  2. フサン(ナファモスタット

創薬

創薬は、以下の二面戦略で進めらている。

  1. 過去のSARSMERSエボラ出血熱、エイズウイルス (HIV) などのウイルスに有効であった既存の薬剤や、実際のMERSやこのSARS-CoV-2に、試験管レベル(in vitro)で有効な薬剤を網羅的に探索する研究(スクリーニング)などで候補薬剤を探して、転用(適応拡大)する。COVID-19での臨床研究が個々に進める。COVID-19に対する薬剤転用研究を参照。
  2. 新技術を頼りに、かつてないスピードでワクチン抗体医薬その他の新薬を開発する。COVID-19に対する薬剤研究を参照。

予防

ハーバード大学医学部は、COVID-19の感染歴の有無にかかわらず、2回のワクチン接種と、少なくとも6ヵ月後の3回目のブースターショット、そして室内でのマスク着用が最も重要な予防策だと指摘している[22][122][23]

感染管理が主な予防となる[53]。予防に適した薬剤は存在せず、米国ガイドラインでは臨床試験ではない限り、予防目的で薬剤を服用することのないよう勧告している[53]。ウイルス暴露後であっても同様である[53]。英国政府のガイドラインでは、全ての医療施設において、医療従事者と患者(障害とならないのであれば)はフェイスマスクを使用する必要があり、さらに社会的距離と手指衛生も必要であるとされている[123]

ワクチン

2022年、アメリカ疾病予防管理センターとハーバード大学医学部は、2回目のワクチン接種から少なくとも6か月後に3回目のブースターショットを行うことを強く推奨している[22][23][124][125]。COVID-19ワクチンがオミクロン変異体からどの程度保護できるかを調べたデータによると、3回目のブースターショットを受けた人の場合、重篤な症状、入院、死亡の可能性が大幅に減少することを示す証拠も得られている[22][23]。大規模なプラセボ対照試験では、2回のワクチン投与により、COVID-19の予防に94%から95%有効であることが示されている[53]。COVID-19に入院または死亡したほとんどの人は、ワクチン接種を受けていない[126]

ワクチン投与は感染・発症の抑制に対して非常に大きく貢献するが、ワクチンの種類によっては、投与後の副作用、基礎疾患の悪化[127][128]血栓症の発症、変異株への対応の弱さなどが指摘されている[129][130][131]。COVID-19ワクチンの有効性は、COVID-19 発症を指標としたものであり、感染を指標としたものではない。そのため感染しても発症しない不顕性感染が起き、無症状病原体保有者として感染源になる可能性はあると考えられる[132]。したがって、ワクチン接種後も集団免疫によって感染者数が大幅に減るまでは、通常の予防方法(手洗い、防護具の着用、社会的距離の保持)などを併用する必要がある[133][134]

ワクチン接種を受けた人々は、限られた公共スペースを訪れたり、COVID-19のコミュニティ感染のある地域で公共交通機関を利用したりするときは、フェイスマスクを着用し続ける必要がある。ワクチンは重篤な病気や死を防ぐのに非常に効果的ではあるが、ワクチン接種を受けた人はまだ感染して感染を伝播する可能性がある。フェイスマスクを着用すると、これが発生するリスクが減少する[135]

マスク

マスクは、完全にワクチン接種されている人を含め、着用者に追加の保護を提供する。2021年7月、CDCは、完全にワクチン接種された人を含むすべての人に、ウイルスの感染がかなりまたは多い地域の公共の屋内場所でマスクを着用するようにアドバイスした[125]。COVID-19の症例数が増加している場所では、専門家は、マスクのガイドラインやその他の標準的な予防策に従うことを約束すれば、数多の命を救い、パンデミックを制御する可能性を大幅に高めることができると推定している[126]。さらに、マスクの着用、調整、取り外しの前に手指消毒剤を使用する必要がある[136]

マスクはどれも同じというわけではない。高品質のKN95、KF94、N95マスクは、最もフィット感があり、ろ過性能も優れている。また、サージカルマスクも小さなウイルスの粒子を防ぐのに有効である[22][23]。非エアロゾル環境下においては、サージカルマスクはウイルス感染を防ぐのにN95マスクと比べて劣ってはいないと米国ガイドラインでは述べており、実験室においてマスクの保護効果を比較したメタアナリシスでは増加差は確認できなかった[137]。エアロゾル環境が発生する手技(たとえば気管挿管など)を行う際には、引き続きN95マスクが推奨される[137]。マスクが快適であればあるほど、着用する可能性が高くなる。いくつかのスタイルとファブリックを試して、どれが最もフィットし、最も心地よいかを確認すること[126]。サージカルマスクの上に布製のマスクを装着すると、よりフィット感が高まります。また、「ノット&タックマスク」と呼ばれる方法で、サージカルマスクのフィット感を調整することもできる。サージカルマスクのノット&タックマスクは、3枚重ねのフェイスマスクの耳のループをマスクの縁と接合する部分で結び、不要な素材を折って縁の下に収納する[22][23]。アメリカ疾病予防管理センターによると、マスクが顔にぴったりとフィットし、層のあることを確認する必要がある。このため、あごひげを剃る必要がある[138]。つまり、マスクの端に隙間がなく、鼻と口を完全に覆い、顔の側面に隙間なくフィットしている必要がある[22][23][139]。サージカルマスクの上に多層布製マスクを着用するか、しっかりと装着されたサージカルマスクを着用すると、マスク着用者と他の人の両方の保護レベルが大幅に向上する。要するに、2層以上の洗える、通気性のある布で作られたフィット感のあるマスクを着用すること[140]。しかし、デザイン上2つの使い捨てマスクを組み合わせても意味がない。一般用のマスクの着用は、ウイルス吸入量を減少させる効果より、自分からのウイルス拡散を防ぐ効果がより高い[138]。研究によれば、50cm離れた状態で自分と相手の双方がマスクを着用することでウイルスの吸い込みが不織布のマスクで75%、布のマスクで70%抑える。N95マスク、サージカルマスク、不織布マスク、布マスク、ウレタンマスクの順に効果が下がる[140]。このため、一重の布製マスクは避けるべきである[22][23]。内閣官房は、食事中の会話の際にマスクの着用を推奨している[141]

屋外での感染の可能性はかなり低く、ほとんどの場合、人と人との距離が2メートル以上保たれていれば、屋外環境ではマスクは必要ない[22][23]。一方、距離を保つことができない環境で屋外の人々と密接に接触している場合は、マスクを着用することを強く推奨する。そしてもちろん、地域の健康規制と義務に従う必要もある[126]。マスクは快適な呼吸能力を低下させる可能性があるため、運動中はマスクを着用しないこと。汗をかくとマスクが早く濡れて呼吸が困難になり、微生物の増殖が促進される。運動中の重要な予防策は、他の人から少なくとも2メートルの物理的距離を維持することである[142]

個人用防護具

個人用防護具(personal protective equipment, PPE)[123]
1.保護衣(ガウンエプロン)を着用
2.マスクN95マスクサージカルマスク)を着用
3.ゴーグルフェイスシールドを着用
4.手袋グローブを着用
この他、帽子(キャップ)・シューカバーなど[123]

医療機関では、飛沫感染や接触感染を防ぐための装備として個人用防護具(personal protective equipment,PPE)が各種ある[123]。保護衣(ガウンエプロン)、マスクN95マスクサージカルマスク)、ゴーグルフェイスシールド、帽子(キャップ)、シューカバー、無菌手袋などである。これらはメーカーや勧告においての指示がない限り、一回のみで使い捨てる必要がある[143][123]。感染リスクのある場合は、適切な廃棄が求められる[123]

手袋
イングランド公衆衛生庁では、口や目などの粘膜部や体液への接触などの感染しやすい行動以外では手袋は必要ないとしている[123]。医療用手袋は、一度使ったら使い捨てにすることとなっており、多くの国でPPEが逼迫したことから、イギリスや日本では使い捨て手袋を使用しなくてもよい状況では使用せず、非滅菌手袋で代用できる状況では優先して非滅菌手袋を使うこととしている[123][144]
日常においては手袋を着用する必要はないと、ハーバード大学医学部は述べている[145]。ウイルスが付いた手で目や口などの粘液部に触ると感染するが、手袋はこの時の感染を防げず、逆に顔に触れる可能性を高める場合もあるとしている[145]
CDCやハーバード大学医学部などの多くの医療機関では、手袋より、こまめに手洗いと消毒を行い、ウイルスの付いている手で顔などに触れないよう呼び掛けている[145][134]

手洗い

咳やくしゃみをした後には、徹底的な手洗いが必要である[53][146] 。WHOは石鹸と水で頻繁に手を洗うことを推奨しており、少なくとも20秒間を要し、特にトイレに行った後、手が目に見えて汚れているとき、食事をする前、鼻をかんだ後には必要となる[147]。店を出る前に手指消毒剤を使用し、家に帰ったらすぐに手を洗い、頻繁に触れる物体や表面を定期的に清掃すること[22][23]

CDCは、石鹸と水にすぐにアクセスできない場合に限って、アルコール手指消毒剤(濃度60%以上)を使用することを推奨している。手指消毒剤が入手困難なエリアでは、WHOは現地生産可能なエタノールまたはイソプロパノールの消毒剤を推奨している。過酸化水素はアルコールに混入する細菌胞子の除去のために添付されており、手の無菌操作のための物質ではない[148]

換気

感染源となりうる飛沫やエアロゾルが屋内に滞留することを防ぐため、専門家は換気の徹底を推奨している[140]

ICU患者においては、可能であればエアロゾルが発生する手技は陰圧室にて行うことが推奨される[137]

自己隔離

COVID-19と診断された人や感染が疑われる人には、自宅での自己隔離が推奨されている。各国の保健機関は、適切な自己隔離を行うための詳細な指示を出している[149] 。多くの政府は、全人口に対して自己隔離を義務付けまたは推奨している。リスクの高いグループの人々に対しては、最大限の自己隔離指示が出されている[150]

社会的距離

社会的距離(物理的距離)とは、個人間の密接な接触を最小限に抑えることによって、病気の蔓延を遅らせることを目的とした感染管理行動である。現在、多くの政府が、発生の影響を受けた地域において、社会的距離の拡大を義務付けまたは推奨している[151]

世界各国で感染拡大を抑えるために外出を制限する都市封鎖(ロックダウン)政策が取られた。

屋外で友達や家族に会うほうがいい。コロナウイルスは、感染者が咳やくしゃみを介して放出するウイルスを吸い込んだり、話したり呼吸したりすると広がることがわかっている。また、大規模な集まりは避けること。研究によると、限られた実験室の設定では、ウイルス粒子を含む液滴が8〜14分間浮いたままになる可能性がある。エアロゾルと呼ばれる小さな感染性ウイルス粒子は、空気中をさらに長く漂う可能性がある[22][23]

果物、野菜、マメ科植物

ハーバード大学医学部によると、果物野菜豆類を最も多く食べたと報告した人は、果物と野菜を最も少なく食べたと報告した人と比較して、重度のCOVIDを発症するリスクが41%低いことを発見した。研究者たちはまた、COVIDと貧しい食生活または社会経済的不利益との関連を発見した。これを取り除くことができれば、COVID-19の症例のほぼ3分の1が予防できたと、ハーバード大学に所属するマサチューセッツ総合病院ゲノム医学および糖尿病ユニットセンターは主張している[152]。果物、野菜、豆類、全粒穀物を多く含む食事を摂ることは、COVID-19の予防につながる[152][22][23]

免疫力向上

COVID-19の原因となるコロナウイルスなど、有害な侵入者が体内に侵入すると、免疫システムは攻撃を行う。この攻撃は、免疫反応と呼ばれ、様々な細胞が関与し、時間をかけて展開される一連のイベントである。一般的な健康ガイドラインに従うことは、免疫システムを強く健康に保つための最良のステップである。免疫系を含む体のあらゆる部位の機能は、環境からのコロナウイルス攻撃から守り、以下のような健康的な生活戦略によって強化される[22][23]

  • タバコは吸わない。
  • 食事から必要な栄養素を摂取できていないと思われる場合は、マルチビタミンを摂取する。
  • 定期的に運動する。
  • 健康的な体重を維持する。
  • ストレスレベルをコントロールする。
  • 血圧をコントロールする。
  • アルコールを飲む場合は、適量を守る(男性は1日1~2杯まで、女性は1日1杯まで)。
  • 十分な睡眠をとる。

予後

The severity of diagnosed cases in China
中国で診断されたCOVID-19症例の重症度。81%は軽度であった。[153]

COVID-19の重症度は様々である。この病気は軽度の経過をたどることがあり、その場合は殆ど/全く症状がなく、風邪のような一般的な上気道感染症疾患に似ている。しかし3 - 4%(65歳以上では7.4%)のケースでは、入院必要なほど重症になりえる[154]。軽症の場合は通常2週間以内に回復するが、重症または致命的な場合は回復までに3 - 6週間を要しえる。イタリア国家衛生院によれば、症状が出てから死亡するまでの期間の中央値は12日であり、7日間入院していたと報告している。しかしICU搬送のケースでは、入院から死亡までの期間の中央値が10日であった[155]

いくつかの初期の研究は、COVID-19を持つ人々の10 - 20%が1か月以上続く後遺症Long COVID)を経験することを示唆している[156][157]

脳損傷

予後について、米国シカゴの大規模な医療センターの医師は、COVID-19患者の40%以上が最初に神経学的症状を示し、30%以上が認知障害を持っていたことを発見した。COVID-19感染を生き延びた人々に、長期的な神経学的影響があるかもしれないことを示唆している。COVID-19の多くの生存者に脳損傷が発生し、広範囲に及ぶ認知、行動、心理的問題を引き起こす可能性があるという証拠が増えている[14]

後遺症

COVID-19の後遺症(長期後遺症は「Long COVID」とも呼ばれる)として、陰性確認後も様々な自覚症状が残るケースが報告されている。メタアナリシスによれば一般的な症状は、倦怠感(58%)、頭痛(44%)、注意欠陥(27%)、脱毛(25%)、呼吸困難(24%)であった[158]。研究では、COVID-19から「回復」した人の50%以上が、3か月後も何らかの症状に悩まされ続けていることがわかった[159]。日本では、国立国際医療研究センターが2020年2 - 6月に同センターを退院した患者63人を追跡調査したところ、発症2カ月後で48%、4カ月後で27%に何らかの後遺症があった[160]。ある調査では、COVID陽性となってから14 - 21日で仕事に戻れなかった人の割合は35%とされた[158]。中国の首都医科大学などによる『ランセット』への報告では、同国武漢の病院を2020年1 - 5月に退院した約1,500人のうち49%は発症1年後でも何らかの症状を抱えていた[161]

罹患による重度の炎症反応、血栓性微小血管症、静脈血栓塞栓症、それらに伴う酸素欠乏よる後遺症として、肺や心臓、脳、腎臓、血管系など多くの臓器や器官系に長期的な損傷が引き起こされる場合があると考えられている[162]。後遺症のメカニズム全体は研究途上にある[15]

日本では専門外来を設ける病院もあるが、学業や仕事に支障が出るほどの後遺症が長く続き、休退職に追い込まれる人もいる[15]

COVID-19ワクチン2回接種後の所謂ブレークスルー感染であれば、後遺症の発生自体や自覚症状を感じる期間を抑えられる可能性が示唆されている[161]

回復後のウイルス陽転化現象

中国武漢の病院で、PCR検査により診断されたCOVID-19患者に対して、PCRと血液、血清の診断の詳細を調べる研究があった。39例中15例が、治療後も腸管や血液にウイルスを有していた。また、同病院の16例の研究で、0日目に口腔サンプルが陰性でも、5日目に肛門で採取されたサンプルが陽性化したのが4例あり、また血清検査では、治療の直後に陰性が治療の5日後に検査すると、陽転化する者が多かった[163]

一方、PCR検査で陽性反応が出て入院し、その後の検査で陰性となり症状も落ち着いたため退院したが、最初の発症から2週間以上経過して、再びPCR検査で陽性となったケースも出てきており、潜伏していたウイルスの再活性化か、変異ウイルスの再感染の可能性が指摘されている[164][165][166][167]

その後、ワクチンの治験等による研究によって、PCR検査だけではその方法や精度に問題があり、他の検出方法も併用しないと再陽性となる場合があること、スクリーニングによっては陰性となる場合や陽性となる場合、つまり疑陽性となる場合が存在することが明らかになっている[168][169]。反対に言えば、疑陰性となる場合もあり、このことが再陽性化を生じていると考えられている[170]変異株による再感染については、管理された環境である病院内での感染はありえず(当然のことであるが、院内衛生基準を守っていない場合もありえる)[171]、市中内での感染と考えられる[172]

致死率・重症化率

初期の報告では重症化率が32%、死亡率が15%と高いものであったが[86]、症例の集積に伴い、現在では重症化率、死亡率ともにそれより低いことが判明している。WHOからの報告では軽症から中等症例が約80%、重症例が13.8%、重篤例が6.1%とされている[79]。死者の多くは、高血圧糖尿病免疫系を損なう心血管疾患など、他の疾患を併せ持っていた[173]。また、免疫系の過剰反応であるサイトカインストームによる重篤化するケースもある[174]。死亡に至った初期症例によると、疾病の判明から死亡までの中央値は14日であり、6日から41日までの幅があった[175]

致死率は、2020年12月のシステマティックレビューメタアナリシスによれば、フランスオランダ、ニュージーランド、ポルトガルなどでは0.5-1%、オーストラリア、イングランドリトアニア、スペインでは1-2%、イタリアでは2%以上であった[176]。 さらにこの研究では、致死率の違いは、集団の年齢構成および年齢別の感染率に起因することが発見されている。致命率についてのメタ回帰推定値は、子供と若い成人では非常に低い(10歳では0.002%、25歳では0.01%)が、55歳では0.4%、65歳では1.4%、 75歳、85歳では15%となり[176]、これらの結果は、WHOが発行した2020年12月のレポートにおいても強調された[177]

重症化リスクの差

原因ウイルスに感染して重症化するかどうかは、個人差が大きい。日本の厚生労働省が作成した『診療の手引き』や慶応義塾大学など日米両国での研究では、年齢ABO式血液型人種などに関連する遺伝子慢性閉塞性肺疾患(COPD)、がん、2型糖尿病高血圧といった持病、肥満喫煙などの生活習慣、医療へのアクセス(居住地域や所得、医療保険の種類)が影響を与えている[178][179]

新型コロナウイルスの重症化に関してO型は他の血液型に比べて保護的に作用している傾向にあることが報告されている[180]

罹患した主な著名人

動物への感染

コウモリ由来のコロナウイルスと考えられているほか、ヒトに感染した後、数十種の動物に感染や試験が行われた[181][182][183]

  • 研究室の研究では、フェレットゴールデンハムスターは感染後に同種で感染を広める可能性があり、は感染後に他の犬種への感染は確認されていない。ネズミアヒルでの感染はない[181]。ネズミは当初、感染が確認されなかったが、変異によっては感染することが確認された[184]
  • ペットの犬や猫は飼い主などのヒトから感染する。犬同士は感染しないが、猫同士は感染しあい、幼猫(ようみょう)は特に脆弱で死亡のリスクがある。感染した猫は、鼻や気管でウイルスが増殖し、肺では増殖が見られなかったが、肺において4週間経過後も無症候で炎症が残った[185]
  • ライオンなどが米国ニューヨーク市内の動物園で感染した。乾いた咳、喘鳴、食欲不振などの症状を示した後、数日で回復した。
  • ゴリラ2頭が感染したと発表された。2021年1月に、米国カリフォルニア州サンディエゴ動物園において確認された。大型類人猿への感染は初めてであり、無症状のスタッフからの感染が指摘されている。鼻詰まりや咳の症状が確認された[186]
  • 2020年4月から2021年1月の間に米国アイオワ州で道路で轢かれたりハンターが仕留めた野生のシカを調べたところ、約80%が感染していることが確認された[187]
  • ミンクの感染がオランダ、デンマーク、スペイン、アメリカなどにある皮革工場で確認された。感染したミンクは劇的に症状が悪化し、早ければ翌日には死亡する。これにより約1万匹が死亡している。

動物から人への感染

  • ミンクから人間へ感染したという事例が発生している。この人間へ再感染した中に変異株 Cluster 5が報告されている。この変異株は、ヒトがコロナウイルスに対して持っていた抗体と反応し難く開発中のコロナウイルス対策ワクチンでは効果が薄い可能性が示唆されている。
  • 通常飼育している環境下では、ペットなどの動物から人への感染は、ほぼ起きないと考えられている。その理由として、ペットの保有してるウイルスの量や人への感染経路が無いからだとされている。その一方、大量に飼育しているミンクの農場で人への感染が報告されていることから、多頭飼いなどの条件によっては人間への感染も考えられる[188]

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 原因ウイルス名に「SARS」を冠しているが、2002年から2003年にかけて流行した重症急性呼吸器症候群 (SARS) を引き起こすウイルスではない。この名称は、単にSARSコロナウイルス (SARS-CoV) との系統関係に由来している。
  2. ^ ウイルス側の受容体と結合する部位のこと[57]
  3. ^ 特に、高齢者の場合には基礎疾患の重症化が観察され、また若年層の場合には栄養不足などによる体力の低下に伴う強度の発熱症状が観察される。
  4. ^ SARSMERSほか。
  5. ^ もちろん副作用のためアセトアミノフェンが使えない患者も存在する。

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参考文献

臨床ガイドライン

関連項目

外部リンク

国際機関・政府機関

各種学会

その他

分類
外部リソース