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セダン

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セダンの例:トヨタ・カローラ(欧州仕様・シリーズ通算12代目)

セダンsedan)は、車体形状や使用形態により分類される自動車の形態の1つである。

概要

Datsun-310.jpg
Nissan Sunny front 20080214.jpg
日産・パルサーはファストバック型、2ボックス型、ショートノッチバック型で製造された時期があった(上から初代、3代目、4代目)。
日産・パルサーはファストバック型、2ボックス型、ショートノッチバック型で製造された時期があった(上から初代、3代目、4代目)。

一般的に「セダン」というと、リアデッキ(トランク形状)を持つノッチバック型の乗用車のことのみを指す。この形はボンネット・キャビン(居住空間)・リアデッキがハッキリと仕切りで分かれていることから、3ボックスとも呼ばれる。

一方で、広義にはメーカーの都合やカテゴライズの便宜上などでリアデッキを持たず、キャビンと荷室が仕切られておらず同じ空間を共有するノッチレス2ボックスの型も含まれる。加えてトールワゴンミニバンSUVといった背の高いボディタイプが乗用車の主流となっている昨今は、それらと比較する上では「背の低いボンネットタイプの車」と広く捉えることも可能である。

3ボックスタイプは「2ドア」または「4ドア」、2ボックスは後ろをドアに見立てて「3ドア」/「5ドア」とも呼ばれる。2ドアセダンはかつて、小型大衆車を中心にオーナードライバー向けとして設定されていたが、使い勝手の乏しさなどの理由で需要が激減し1980年代に入ると日本国内ではほとんどが4ドアセダンとなり、現在では絶滅している[注 1]。2ドアセダンは1980年代以降の近代において3ドアハッチバック、もしくはクーペにそれぞれ分類されるため、用語としての2ドアセダンはほぼ使われていない。

セダンの種類

ノッチバックセダン

BMW・3シリーズ (E30)
2ドアノッチバックセダンの例

ボンネットと、独立したトランクリッドを持つトランクルームの間に車室を持つ。セダンとしてはもっともオーソドックスな形状となる。「3ボックスカー」と呼ばれることもある。

静粛性を高めやすい、車体剛性が損なわれにくい(安定しやすい)、被追突時における乗員へのリスクが小さいなどの利点がある。北米では、荷室の中を覗かれないという防犯上の理由で独立したトランク構造が好まれ、バレーパーキングではトランクオープナーに施錠をするか、またはトランクを開けることができないスペアキーのみでクルマを預ける場合に都合が良い。

FR(後輪駆動)や四輪駆動の場合はサスペンションアーム、プロペラシャフトデフドライブシャフトがトランクルームの前や下に位置するため、ラゲッジルームがいびつな形状となったり、容量が限られる場合がある。FF(前輪駆動)の場合はリア周りのレイアウトに制限は少ないが、バルクヘッド貫通型のトランクスルー機構を持った車種以外では、大きな(または長尺の)荷物を積めないなどの欠点もある。

多くの自動車メーカーのグローバル的な基幹車種では、企画時にノッチバック型セダンが最量販車種として位置づけられることが多く、その設計を基本としてステーションワゴン、ハッチバックセダン、クーペ、コンバーチブルなどが生まれることもある。ただし、近年では車体剛性や後方の衝突安全性能の確保が難しいという理由でスバル・レガシィB4(BM型系以前)、およびスバル・WRX(VA型系以降)、トヨタ・カローラアクシオ(発売当初から)、トヨタ・アベンシスセダンなどのようにステーションワゴンをベースに逆にセダンを作る例[1][注 2]スズキ・SX4セダン(のちのスズキ・シアズ/スズキ・アリビオ)やスバル・レガシィB4(BN型系以降)インプレッサ(5代目GT系以降)のように、クロスオーバーSUVをベースに逆にセダンを作るという例もある。

近年はファストバック(後述)との境界線が曖昧になってきており、メーカーによってはファストバック型の4ドアセダンや、同じくファストバック型またはノッチバック型の5ドアハッチバックであっても単にセダンを名乗る車種が現れてるなど多様化が進んでいる。

セミノッチバックセダン(ショートノッチバックセダン)

ノッチバックセダンのうち、リアデッキが極端に短いタイプ。「セミノッチバックセダン」「ショートノッチバックセダン」「2.5ボックスセダン」と呼ばれる。ハッチバックのものもある。

4ドアハードトップ

日産・ローレル(8代目後期型)

4ドアセダンのうち、ドアに窓枠を持たないものは「4ドアハードトップ」と名付けられる場合が多い[注 3]2000年代初頭まで中級乗用車や高級車を中心に設定されていた。現在の日本車には採用されていない。ただし、富士重工業(現・SUBARU)では「サッシュレスドア」と呼び、セダンとして分類していた。中でもレガシィ2009年にフルモデルチェンジされるまでサッシュレスドアを採用していた最後の車種であった。なお、軽自動車のカテゴリーでは、2代目オプティのみが軽自動車唯一のハードトップセダンであった。かつては車両中央(Bピラー)が無く、4ドアとしては異様にルーフの低いピラーレスハードトップが流行したが、側面衝突安全性への対応や経年劣化後の窓の艤装精度、またシートベルトの固定位置等に問題があったため、1990年代後半には完全に姿を消した。

欧州では2004年の4ドアハードトップボディを持ったメルセデス・ベンツ・CLSクラスの発表を皮切りに、フォルクスワーゲン・CCアストンマーティン・ラピードBMW・5シリーズグランツーリスモアウディ・A5スポーツバックメルセデス・ベンツ・CLAクラスなどといったハードトップセダンが発表されている。

ハッチバックセダン

フォルクスワーゲン・ゴルフ
スバル・インプレッサスポーツ

独立したトランクリッドの代わりにリアハッチを設けたタイプ。キャビンからトランクにかけての落ちるようなボディラインが特徴。小型車の一部を除き、4ドアセダンをベースにリアハッチを設けたタイプがほとんどである。またトヨタ・ヴィッツ日産・ノートなどのBセグメントコンパクトカーもこの解釈に則ればハッチバックセダンに含まれることになるが、そのように認識する者は皆無である。

一般的には「セダン」はつけず、単に「ハッチバック」と呼ぶことがほとんどである。しかし長めのトランクルームを持ち、ノッチバックもしくはファストバックに見えるものについては、メーカーがあえて「セダン」と名付ける場合がある(「5ドアセダン」とも呼ばれる[注 4])。またトヨタは代わりに「リフトバック」という呼称を用いている時期があった。

ノッチバックセダンと比べ後席と荷室を使い分けるうえでの自由度が大きく、収容力を上げつつ全長を短くして小回りを良くすることができるのがメリットである。しかしその構造上車体剛性面や静粛性では劣る。また端正なスタイルにまとめるのが難しく、フォーマル感に乏しくなるため、市場の嗜好や車格により普及度が異なる。欧州では売れ筋のジャンルの一つであり、高い走行性能とユーティリティーを兼ね備えたフォルクスワーゲン・ゴルフはその筆頭である。

日本国内で最初に導入されたハッチバックセダンは1965年トヨタ・コロナや、1967年に追加された3ドアの三菱・コルト800であったが、当時の日本人にはセダンというより商用ライトバンのようなイメージが強く、一般の消費者にはほとんど受け入れられなかった。その後1980年代前後に、各メーカーが5ドアセダンを小型・中型大衆車クラスを中心に設定した時期があったが、1990年代になるとカテゴリが近いステーションワゴンをはじめとするユーティリティービークルのブームの陰に隠れてしまい、日本向けのラインナップからはほとんど途絶え、日産・プリメーラUKなどが細々と売られる程度であった。カローラWRCのベースとなったハッチバックタイプのカローラ(AE111系)が日本国内では販売されていないモデルであったことも国内人気の無さを証明している。

このように国内では長らく人気の出ないスタイルであったが、コンパクトカーである初代トヨタ・ヴィッツホンダ・フィットの大躍進以降ハッチバックも大衆にクールなものとして認識されるようになり、2000年代以降は実用性の追求や海外市場との兼ね合いから5ドアボディを採用する車種も登場。2002年にマツダ・アテンザスポーツで採用され、2003年にはトヨタ・プリウスフルモデルチェンジで、2009年には2代目ホンダ・インサイト[注 5]、それぞれコーダトロンカ形の5ドアボディが採用された。

また2010年代にはスバル・インプレッサマツダ・アクセラトヨタ・カローラといったセダンの国内ラインナップにも5ドアハッチバックタイプが備わり、4ドアタイプの売上を凌ぐようになった。なおこれらの5ドアタイプにはいずれも「スポーツ」のサブネームが与えられているが、激しいスポーツ走行の性能を持っているというわけではない。

5ドアセダンは従来は低価格帯がメインであったが、近年では欧州の高級車にノッチバック風の5ドアボディを持つ車種が登場している。ポルシェ・パナメーラアストンマーティン・ラピードBMW・5シリーズグランツーリスモアウディ・A5スポーツバックなどがこれに当てはまる。なお、これらの車種はサッシュレスドアを持っていることや(上記車種のうちパナメーラは窓枠付きのサッシュドア)、そのエクステリア・デザインなどから「5ドアクーペ」と呼ばれることも決して少なくない。

ファストバックセダン(カムバックセダン)

サーブ・900(初代)

英語版 Fastback/英語版 Kammbackも参照

リアウインドウが比較的寝かされ、ハッキリとしたリアデッキ構造を持たないタイプ。こちらもハッチバック同様、セダンをつけず単に「ファストバック」と呼ばれるのが普通である。

かつてのファストバックは窓ガラスとドアが別であったが、現在は窓ガラスがドアと一体化しているモデルが多い。そのため今のファストバックはハッチバックに近い扱いを受けることが多い。

流線型ブームの始まる1920から1950年代の海外メーカー車によくみられた。日野・ルノーVW・ビートルシトロエン・2CVは日本でもよく知られる存在である。比較的遅くまで採用していたものとしてはサーブで、同社初の自動車である92から、初代 900 までの各世代、中期型までの初代ヒュンダイ・ポニーなどが挙げられる。日本車では日産・チェリー、初代日産・バイオレット(前期型のみ)、初代日産・パルサー(前期型のみ)、中期型以降の2代目トヨタ・パブリカ(OEMの中期型以降のダイハツ・コンソルテを含む)、初代トヨタ・パブリカスターレットセダン(OEMのダイハツ・コンソルテ4ドアセダンを含む)に見られるのみとなっている。

近年では全高(重心)が相当に低いファストバック型のセダンはクーペとして分類されることも少なくなく、メルセデス・ベンツ・CLSクラス、およびメルセデス・ベンツ・CLAクラスではそれぞれ4ドアクーペとしている。また、マツダ・アテンザスポーツ(日本以外:MAZDA6 5ドアハッチバック)や2代目以降のトヨタ・プリウス、2代目以降のホンダ・インサイト、欧州向け7代目三菱・ランサー(5ドア車)(日本名・ギャランフォルティス スポーツバック)のようにノッチバック(あるいはショートノッチバック)セダン風に見せた5ドアハッチバック車もファストバック(カムバック)セダンと呼ばれる場合がある。

2ボックスセダン(ショートファストバックセダン/ノッチレスセダン)

モーリス・ミニ マイナー


リアデッキ(リアノッチ)を持たないタイプ。以前はトランクリッドを持つタイプも製造されていたが、現在ではリアゲートを持つハッチバックタイプがほとんどである。

初代ホンダ・シビックや2代目ホンダ・トゥデイなどのように、同世代にトランクリッドを持つものとハッチバックをもつものの両方が存在する例もある。

スポーツセダン

本来実用性や快適性が求められることの多い2ドア/4ドアセダンに、あえてスポーツ性を加味された趣味性の強いモデルはスポーツセダンと呼ばれる。なお3ドア/5ドアセダンの場合はスポーツセダンではなくホットハッチと呼ばれる。

クーペに比べると、十分な座席居住性を確保した後部座席が備わっているため、所帯持ちには家族の理解を得られやすいというメリットがある。また同価格帯のクーペを凌ぐ動力性能を備えたものもあるため、独身の車好きにも積極的に選ばれやすい。

日本初のスポーツセダンはプリンススカイラインGTとされる。後にインプレッサ WRX STiランサーエボリューションのように、絶対的な速さやモータースポーツへの参加を強く意識したモデルが人気を博した。他にもアルテッツァスカイラインレガシィB4のように速さよりも運転する楽しみを重要視したモデルや、クラウンアスリートカローラGTカリーナGTギャランVR-4マークII三姉妹のGTツインターボ/ツアラー系などに代表される、普通の実用セダンとほぼ同じ平凡な外観でありながら、一度アクセルを踏み込めば、スポーツカーに引けを取らないほど速いという意外性を楽しめる「羊の皮を被った狼」と呼ばれるようなモデルもある。特に1990年台に一時代を築いたハイソカーたちは、スポーツセダンに分類されるようなモデルが多い。

なお高価格帯のセダンはいずれも静粛性や低速トルクといった快適性の観点から大型エンジンを搭載しているが、もちろんこれらもアクセルを踏み込めばスポーツカーと同等の加速をする。そのため、スポーツセダンに入るかどうかは足回りなどのチューニングで決まる。

軽セダン

三菱・ミニカ(初代) 1970年代までは軽自動車であっても明解なトランクが付いたノッチバック(3ボックス)型セダンが製造されていた。
三菱・ミニカ(初代)
1970年代までは軽自動車であっても明解なトランクが付いたノッチバック(3ボックス)型セダンが製造されていた。
ダイハツ・オプティ(2代目) 画像はオプティクラシック。規格改正後の総排気量660cc以下の軽自動車としては唯一、本格的なトランクが備えられていた。
ダイハツ・オプティ(2代目)
画像はオプティクラシック。規格改正後の総排気量660cc以下の軽自動車としては唯一、本格的なトランクが備えられていた。
スズキ・アルトラパン(3代目) 現在の軽セダンは2ボックス(ショートファストバック/ノッチレス)型が主流である。
スズキ・アルトラパン(3代目)
現在の軽セダンは2ボックス(ショートファストバック/ノッチレス)型が主流である。

日本の軽自動車でも1970年代まではリアデッキを持ったノッチバック型で純粋にセダンといえる車が製造されていた。しかし利便性に難があることなどからノッチバック型は次第に廃れ、ノッチレスの2ボックス型が主流となった[注 6]。この傾向は軽自動車の規格がより大きくされた1990年以降、21世紀に入った現在でも変わっていないが、変わり種として1998年から2002年まで販売されていた2代目ダイハツ・オプティが、小さいながらも本格的なトランクルームを備えたショートノッチバック(小さいトランクのため2.5ボックスとも)型ハードトップセダンとして販売されていた。

しかし現在でも軽乗用車においては、「バンでもワゴンでもない」ことをアピールするためにメーカーが実質的に「セダン」と名付けることがある[注 7]

呼称

セダンチェア(トルコのタフトゥレワン)

セダンの名称は17世紀頃に南イタリアから広まった乗りかごのセダンチェア(sedan chair、椅子かご)からである。ラテン語で「腰掛ける」の意味の sedeo, sedo が語源といわれている。ちなみに、セダンチェアの語源がフランスの町のスダンで作られたことに由来するといわれることがあるが、それは違う[2]軽自動車の場合は形状がセダンでも分類としては「軽自動車」となる場合もある[注 8]

イギリスではサルーン (saloon)、ドイツではリムジーネ、フランスではベルリーヌ(ベルリネット)、イタリアではベルリーナ(ベルリネッタ)もしくはクワトロポルテ(「4つの扉」の意) と呼ばれる(ただし一部のヨーロッパではクラシックと呼ばれる場合もある)。日本およびアメリカ合衆国では一般にはセダンが一般名称で、サルーンは上級グレードの商標として用いられることが多いが、実質はイギリス英語アメリカ英語の呼称の違いであり、日本工業規格(JIS)や自動車技術会での技術的な扱いではまったく同じものを表す。

セダンとサルーン

日本のJISや自動車技術会では、「サルーン」という呼び名が基本で、「セダンともいう」と規定されている。日本では各自動車メーカーが、一時期英国高級車のサルーンをイメージして、大型上級セダンに「サルーン」と名づけたことから、「サルーン」に高級感のイメージが付加された[注 9]

セダンの人気

かつては5ナンバーの中型大衆車であったが現在では3ナンバーセダンとなったトヨタ・カムリ (10代目)
かつては5ナンバーの中型大衆車であったが現在では3ナンバーセダンとなったトヨタ・カムリ
(10代目)
小型タクシー向けに開発されていた5ナンバーセダン:トヨタ・コンフォート (2017年6月現在既に絶版)
小型タクシー向けに開発されていた5ナンバーセダン:トヨタ・コンフォート
(2017年6月現在既に絶版)

日本国内での人気

日本のモータリゼーションにおいて、大衆車の普及を促したのはセダンであった。特に日産・ブルーバードトヨタ・コロナの『BC戦争』、日産・サニートヨタ・カローラの『CS戦争』によるセダンの市場への大量流出は、セダン=乗用車のイメージを強く印象づけた。特にトヨタでは「いつかはクラウン」という言葉に象徴される、カローラコロナクラウンと続くヒエラルキーを確立する販売戦略により、セダンはクーペとともに大衆の自動車への憧れの形として高度経済成長末期の1980年代まで主流を占めていた[3] 。この頃はバンステーションワゴンハッチバックのような積載性に優れたボディタイプは商用バンの印象が強く、「セダンこそ乗用車、ファミリーカー」という風潮も追い風となった。1980年頃にはハイソカーブームが起き、バブル景気とともに高額なセダンが飛ぶ様に買われていった。1990年時点の乗用車販売台数ランキングではトップ7をセダンが独占するほど、セダンは日本人のカーライフに馴染んでいた[4]

一方でレジャーブームの勃興から大衆車では、徐々に見栄やステータス性だけでなく実用性が求められるようになり、セダンのハッチバック化が進んだ。1980年代半ばからはSUVステーションワゴンバンといった実用性に優れるRVのブームが芽生え始め、バブル崩壊後には一気に開花。オーソドックスなセダンの需要は縮小していき、多くのセダンたちがクーペとともに廃止となるか、実用性を補ったハッチバックやステーションワゴンへと姿を変えていった。2002年には、それまで33年連続国内販売台数1位であったカローラがハッチバック型コンパクトカーホンダ・フィットにその王座を奪われ、セダンの時代は一つの区切りを迎えた。

さらに2010年代にはコンパクトSUV軽乗用車(主にトールワゴンやスーパーハイトワゴン)、ミニバンなどが市場の中心となった。2020年現在もセダンの中でもとりわけ実用性の高いファストバック型5ドアセダンのトヨタ・プリウスは月販1位をたびたび取っているが、これ以外にセダン単独でトップ10に入れる販売台数を稼げるような車種は存在しない。例えばカローラは2019年には月販1位に返り咲いているが、その実態は半数がステーションワゴンタイプであり[5]スバル・インプレッサも2019年ランキング20位まで上り詰めているものの、これも半数はSUVタイプのXVが占めている[6]。2017年に国内復帰したホンダ・シビックに至っては4ドアセダンタイプに限って撤退という憂き目に遭っている。さらにマークXレガシィといった伝統のセダンブランドも国内販売は2020年までに打ち切られており、かつての隆盛ぶりを考えればセダン(特に4ドアノッチバック)は大衆車・ファミリーカーのメインストリームに無いと言わざるを得ない状態である。トヨタはたびたび「セダンの復権」を謳ってたびたび新種のセダンを投入し、2020年4月現在も8種類のノッチバックを含むセダンを多数ラインナップしてはいるが、スズキ三菱自動車工業ダイハツ工業(OEM除く)など、ハッチバック型含め日本向けセダンの生産から完全撤退したメーカーも多い。よく似た境遇でガラケーフィーチャーフォン)とスマホスマートフォン)の関係が正にこれと当てはまり、『ガラケーがセダンまたはクーペ、スマホがミニバンまたはクロスオーバーSUV』と揶揄されることもある。

ボディサイズで見ると、1990年代以降税制の緩和・海外市場の拡大と日本市場の縮小・安全基準の厳格化・走行性能の追求などにより、大衆車クラスのセダンまで含めてた5ナンバーセダンの減少・3ナンバーセダンの増加の傾向が強まり[注 10]、2020年4月現在5ナンバーセダンはトヨタとホンダだけが1〜2車種ラインナップを残す程度[注 11]で、最後に新型5ナンバーセダンが国内投入されたのは2012年の日産・ラティオまで遡らなければならない。かつての国民車であったカローラセダンも2019年に国内専用設計で日本国内の道路・交通事情に最適化させていることを謳っているにも関わらず3ナンバー化されているが、これは3代目プリウスの大成功に倣ったためと説明されており、セダンを求める消費者のニーズや層が変化したということも背景にある。

一方ハイパワーユニットが搭載されるため高速域での優れた運動性能が必要であったり、ステータス性・フォーマル性が重視されたりする中高価格帯では依然として需要は高いため、トヨタ/レクサス、日産、ホンダを中心に豊富なラインナップが堅持されている。このクラスでは国産の5ドアハッチバックセダンは皆無で、4ドアノッチバックセダンの独壇場となっている。また捜査用の覆面パトカーを含むパトロールカー社用車教習車レンタカーといった業務用の分野では、「普通の自動車(乗用車)」らしさや燃費、高速安定性、フォーマルな場にも合う佇まいなどの観点から依然として4ドアノッチバック型セダンの需要はあり、これらには専用のグレードや車種が設定される場合もある。前述の5ナンバーセダンも実は法人需要に占める割合が大きく、カローラはフルモデルチェンジ後も旧型のカローラアクシオの併売を続けているほどである。かつて自動車の大衆化を促進した4ドアセダンだが、クーペ同様今や日本ではセダンは趣味性の高いものや特別なものになりつつあるといえる。

かつてはタクシー(主に小型・中型料金向け)も信頼性整備性、乗務員疲労軽減、狭い場所での取り回しに配慮した専用設計のFRの専用5ナンバーノッチバックセダンが多く販売されていたが、2010年代以降はバリアフリーの観点からミニバントールワゴンといった乗り降り・積み下ろししやすい2ボックス型乗用車に移行したタクシー事業者が増加した。最後までタクシー向けノッチバックセダンを販売していたのはトヨタであり、クラウンセダン/クラウンコンフォート/コンフォートがラインナップされていたが、いずれも2017年に販売を終了し、タクシー専用ノッチバックセダンは絶滅した。トヨタが代わりに発売した専用車のジャパンタクシーロンドンタクシーにも通じる2ボックススタイルのハイトワゴンとなっている。しかし『タクシー=セダン』というイメージは未だに根強く、燃費と信頼性に定評のあるトヨタのハイブリッドセダン、特にプリウスカローラアクシオハイブリッドは現在も個人タクシーを中心に人気が高い。

海外での人気

世界的には高級車としてはもちろん、高速安定性・経済性(価格・燃費・タイヤ代)などの点から大衆車としてもセダンの人気は高い。東南アジアや南米の発展途上国ではセダンは一定以上の階級の象徴であり、逆に北米のように全幅2m級の巨大車が多い地域ではCセグメントセダンが日本でいう軽自動車に近い存在であったりする。そのためスズキ、三菱、ダイハツのように日本ではセダン市場から撤退したメーカーたちも、海外ではセダンを積極的に製造・販売し続けている。2017年の乗用車世界販売台数では1位カローラ、2位シビック、3位はゴルフとセダンがトップ3を占めた。

しかしその一方で、日本と同様クロスオーバーSUVの大躍進に押され続けているのも事実で、2018年にはRAV4エクストレイル/ローグCR-Vの日系SUVトリオが3強の一角ゴルフを下し[7]、2019年にはRAV4とCR-Vがシビックをも打ち破って3位と4位にそれぞれつけている[8]。現代のクロスオーバーSUVは「背を高くしただけのハッチバックセダン」という性格が強く、技術の進歩でセダンに近い高速域での乗り心地・操縦性(ハンドリング)・燃費などを実現しているため、室内および積載空間で大きな差がついてしまっているのがセダン失速の原因となっている。また欧州車メーカーはノッチバックタイプのSUVも発売するようになっており、これが従来のノッチバックセダン好きの層を吸収していると考えられる。

北米においてはセダンは法人向け(主にレンタカーやカンパニーカー)の需要が大きく、値引き競争が激しく利益率が高くないという慢性的な問題がある。またシェール油田の発見による原油価格の低下からセダンのメリットは少なくなったため、ピックアップトラックSUVが従来以上の人気を集めており、2017年には16年連続で北米乗用車販売台数1位であったセダンのカムリがついにRAV4に引きずり降ろされてしまう事態が発生した。こうしたセダンの人気の陰りから、クライスラーが2016年、フォードは2018年にそれぞれ北米においてセダンの販売から撤退し、ピックアップトラック・SUVへ注力することを決定している[9]

車種一例(現行車種)

2019年9月現在。法人向け車種、およびリムジン教習車を含む。
◎印が付与された車種は国内専売車種
★印が付与された車種は国内メーカー海外生産車種。
☆印が付与された車種は国内メーカー海外市場向け専売車種。
■印が付与された車種は海外メーカー日本市場未投入車種。
(P)印が付与された車種は既存車種をベースとしたパイクカー
(教)印が付与された車種は既存車種をベースとした教習車専用車種。
△印が付与された車種は近日、日本国内で発売が予定されている車種。
▲印が付与された車種は在庫対応分のみの販売、または、近日、日本国内で販売終了が予定されている車種。
■印が付与された車種はかつて日本国内で販売されていたが、現在は日本国内で未販売扱いとなる車種。

※ごく一部の例外(国内ではスズキ(インド・タイ・中国向けの一部車種は除く)、および三菱自動車工業(新興国向けは除く)、国外ではフェラーリなど)を除き、ほぼすべての乗用車メーカーがセダンを販売している。

脚注

注釈

  1. ^ ちなみに日本国内向けにおける最後の純粋な2ドアセダンは1979年3月から1983年5月まで販売されていたE70型(4代目)トヨタ・カローラ2ドアセダン「1300STD」だった。
  2. ^ また、過去の事例ではダイハツ・コンパーノ、および初代マツダ・ファミリアのように商用バン(ライトバン)をベースに逆にセダンを作る例もあった。
  3. ^ 2ドアにもハードトップは存在するが、クーペとして分類されることがほとんどである。
  4. ^ メーカーが独自の呼称を用いる場合もある。トヨタではかつて「5ドアリフトバック」と呼んでいたが、2代目以降のプリウスではセダンとしてラインナップしている。一方、マツダ・ファミリアアスティナランティスサーブ・900の5ドアモデルも外観上はハッチバックセダンに見えるが、商標上はクーペとしてラインナップされていた。
  5. ^ ホンダではハッチバックに分類。なお、初代モデルは2シーターの3ドアハッチバッククーペ。
  6. ^ 軽自動車規格内で室内空間を大きくできることと、軽ボンネットバンとボディを共用できることから。
  7. ^ ホンダ・ライフ(初代)とスバル・レックス(初代)のハッチバックはトランクを持つセダンと区別するため、乗用モデルは「ワゴン」として分類していた。
  8. ^ パーク24株式会社の集計では、セダン、ミニバンワンボックスと言ったレベルに軽自動車が含まれる。 [1]
  9. ^ 日産・セドリック/グロリアトヨタ・クラウンなど。
  10. ^ その一例としてシビックランサーギャランフォルティスインプレッサ→インプレッサアネシス(現・インプレッサG4)ファミリアアクセラエリオセダン(1.8Lモデル除く)SX4セダン、日本市場、および香港マカオ中華圏特別行政区を除く海外市場向けカローラ、ブルーバードシルフィ→シルフィなどそれまで5ナンバーであった車両がセダンに限らずフルモデルチェンジでそれぞれ3ナンバーになるケースも数多く存在する。
  11. ^ 2019年9月現在新車で購入可能な5ナンバーセダンの例だとトヨタの場合がカローラアクシオ(現在はガソリン車、ハイブリッド車に関わらずビジネスユースに特化した「EX」シリーズに整理済み)、プレミオ(2020年上期までに生産終了・販売終了予定)、アリオン(2020年上期までに生産終了・販売終了予定)がこれに該当し、ホンダの場合グレイス(2020年8月生産終了予定)がこれに該当する。
  12. ^ 日本国内向けはシリーズ10代目・11代目に限り小型普通車規格(5ナンバーサイズ)を継続した独自車種のカローラアクシオとして独立。
  13. ^ 先代モデルとなるE140型(ナローボディ版)は完全な国内専売車種だったが、現行モデルとなるE160型は2013年2月から2019年7月まで香港、およびマカオの各中華圏特別行政区へ無印のカローラ名義としてそれぞれ輸出されていた。2019年9月現在では法人向けに特化された「1.5EX」のみが販売されている。
  14. ^ 登場当初は国内専売車種だったが2015年3月のマイナーチェンジ以降より香港、およびマカオの各中華圏特別行政区へそれぞれ輸出されていたが、2018年モデルより廃止され事実上、国内専用車に回帰した。2019年9月現在では法人向けに特化された「HYBRID EX」のみが販売されている。
  15. ^ 2020年モデル以降における欧州向け・中国向け・中東向けセダンの名称。
  16. ^ 既存の2代目カローラアクシオの同型車種。
  17. ^ 2代目モデルのみベルタの同型車種。
  18. ^ 米国仕様は2代目モデルよりMazda2 Sedan(日本名:マツダ・デミオ)のOEM車となる(エクステリアデザインはヤリスiA(←サイオン・iA)とほぼ同一)。
  19. ^ かつてはトヨタ・ウィンダムの名称で国内販売が行われていた。
  20. ^ 2012年5月にブランド復活。
  21. ^ 2015年2月20日にブランド復活。
  22. ^ 中国市場専売車種。
  23. ^ ちなみに初代はコーダトロンカ型の3ドアハッチバッククーペ、2代目はコーダトロンカ型の5ドアハッチバックだった。
  24. ^ ただし欧州はセダンは販売されず、ハッチバックのみの販売となる。
  25. ^ 日本ではグレイスの名称で、中国ではグライツの名称で販売。ただしハイブリッド車は日本専売、ディーゼル車は日本未販売。
  26. ^ 新興国、および北米・南米専売。3代目以降のデミオのノッチバックセダン版にあたる。
  27. ^ 中国市場専売車種。
  28. ^ インド市場専売車種。なお、2代目モデルまではスイフトディザイアという車名だった。
  29. ^ 台湾市場専売車種。
  30. ^ 6代目ミラージュのノッチバックセダン版にあたる。
  31. ^ かつてのミラージュセダン(当初はランサーフィオーレの兄弟車だったが後にランサーの兄弟車となる)は1982年から2000年まで日本市場でも販売されていた。
  32. ^ 2012年5月にブランド復活。
  33. ^ クーペとして扱われることもあり、セダンとして扱うかどうかは見解が分かれる。
  34. ^ CLAと同様。
  35. ^ 先代モデルまでは日本市場でも販売されていた。
  36. ^ 3代目(XG系、ヒュンダイ・XG名義)、4代目(TG系)のみ日本市場でも販売されていた。
  37. ^ 5代目(NF系)のみ日本市場でも販売されていた。
  38. ^ 3代目(XD系)のみ日本市場でも販売されていた。

出典

参考文献

関連項目