振り子式車両

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振り子式車両は、曲線通過時に写真のように車体上部を曲線の内側へ傾斜させる。この写真ではまだ曲線区間にさしかかっていない車両も傾斜していることに注目。これは写真のJR北海道キハ283系気動車が制御付き自然振り子式を採用しているためである。

振り子式車両(ふりこしきしゃりょう)とは、曲線通過時に車体を傾斜させることにより、通過速度の向上と乗り心地の改善を図った鉄道車両のうち、リンク機構、コロ、ベアリング等を使ったもの。車体を傾斜させる時の回転軸が床面上にあり、重心を回転軸の下に下げることにより、遠心力で車体を傾斜させる。日本欧州で幅広く採用されている。

本項では、空気ばねの内圧を変化させることで車体を傾斜させる車体傾斜制御装置についても解説する。

目次

[編集] 概要

車両が曲線を通過するときには、遠心力がかかる。これを打ち消すために、曲線の線路には内側に向けて傾斜(カント)が付けられている。それでも速度が速すぎると乗り心地を悪化させたり、さらには車両の転倒につながる。そこで遠心力が規定量[1]を超過しないよう、曲率半径とカント量に応じて曲線を通過する速度には制限速度が設けられている。

蒸気機関車牽引で列車の最高速度が遅かった時代はあまり問題とされなかった曲線区間の制限速度が、電車気動車となり最高速度が向上すると、スピードアップのための障害となった。より高速で曲線を走行しようとする場合、増加する遠心力への対策が必要になる。転倒の危険については、車両の内装や屋根上を軽くするなどして車重を減らし、重心を下げることで対処できる。一方、乗り心地についてはスピードアップに応じてカントの傾斜角を増やすことになるが、列車が曲線で停止した時に車体が傾きすぎないよう、増やせる角度には限度が設けられている。特に曲率半径が小さい場合はカント不足となる。

JR四国2000系気動車の車体傾斜時の前方風景。前方風景の角度のみならず、車体中心がレール中心から外れている点にも注目。左は車体基準での、右は前方風景基準での視点 JR四国2000系気動車の車体傾斜時の前方風景。前方風景の角度のみならず、車体中心がレール中心から外れている点にも注目。左は車体基準での、右は前方風景基準での視点
JR四国2000系気動車の車体傾斜時の前方風景。前方風景の角度のみならず、車体中心がレール中心から外れている点にも注目。左は車体基準での、右は前方風景基準での視点

平坦な場所を走行する幹線では元々曲率半径は大きめに取られているが、山岳路線ローカル線では敷設条件から半径の小さい曲線が小刻みに連続する。根本的な解決には、長大なトンネルを掘って迂回していた区間を直線化するなど大規模な土木工事により軌道の線形を改良することになるが、これは莫大な工事費を要する。そのため、既設軌道の改良による設備投資を抑制しつつ列車の高速化を廉価に実現するため、曲線区間のカントの不足分を車体自体を傾斜させることで補う「振り子式車両」を実用化することが検討された。なお、車体傾斜機構そのものは乗り心地を維持したままスピードを上げるための仕組みであり、軌道への衝撃などを減らすためのものではない。そのため、振り子車両で高速化する場合は曲線区間の側圧増大対策などのために一定の軌道強化が必要となる。振り子の動作自体は車体の重心位置を変動させるので高速走行には悪影響となるが、振り子付き車両はその動作のためそもそも車体の重心が下げられているため全体として悪影響のない範囲にまとまる。

[編集] 分類と機構

[編集] 自然振り子式・強制振り子式

振り子式車両は車体傾斜の回転中心を重心より高い位置に設定し、曲線通過時にかかる超過遠心力を利用して自然に車体傾斜を行わせる自然振り子[2]と、先頭車両(通常は機関車)に搭載されたジャイロスコープなどを利用した加速度センサーの情報から最適な傾斜角を計算し、リンクや油圧などにより車体を能動的に傾斜させる強制振り子に大別される。前者はかつての日本国有鉄道(国鉄)で実用化され、後者は主に欧州で研究が進められてイタリアなどで普及した。

一般的に最大傾斜角は強制振り子式の方が自然振り子式よりも大きく、強制振り子式ではイタリアのペンドリーノが10度、スウェーデンX2000が6.5度であるのに対して、日本で振り子式を採用している車両は、2011年現在すべて自然振り子式であり最大傾斜角は5 - 6度である[3]

[編集] 制御付き自然振り子式

自然振り子式は機構が比較的シンプルでありながら大きな効果の得られる方式であったが、曲線通過時、特に直線から曲線へ、あるいは曲線から直線へ移行する区間に挿入される緩和曲線上を通過する際に、過渡的な振動が発生し乗り心地を著しく阻害するという問題があった。このため、日本で最初に営業運転を開始した自然振り子式車両である国鉄381系電車では、1973年の営業開始後に不快感を持ったり乗り物酔いを起こしたりする乗客が続出した。このため、こうした問題の解決を目指し、1981年から1982年にかけてTR906・TR907・TR908といった3種の台車が設計され、アクティブ車体振動制御装置や横圧低減対策などと共に、自然振り子式を改良した制御付き自然振り子式が開発・搭載された。さらに、これらの開発で得られたデータを元に、1985年にはDT51X・TR236Xと本格量産を念頭に置いた改良型台車が設計されたものの国鉄時代には量産には至らず、国鉄分割民営化後、1989年設計の四国旅客鉄道(JR四国)2000系気動車で初めて実用化の機会を得た。同系の成功により、以後この方式は在来線高速化の切り札としてJR旅客各社がこぞって採用している。

その原理は、線路上の曲線部ごとのカント等のすべての情報をあらかじめ車上装置へ組み込まれたマイコンに記録しておき、車輪回転数の検出で得られる速度情報と地上にあるATS地上子から得られる位置情報を利用し、車上装置に記録された曲線情報と比較することで緩和曲線区間での適切な車体傾斜角度を計算する。こうして得られた傾斜角情報に従い、曲線進入前から空気シリンダーを用いたアクチュエーターであらかじめ能動的に車体を徐々に傾斜させておき、曲線区間通過後の緩和曲線区間でも同様の手法で車体傾斜を能動的に復元させることにより、緩和曲線区間で発生する過渡的な振動を抑制する、というものである。曲線区間への進入・脱出時にアクチュエーターによって半ば強制的に車体の傾きが制御されるが、補助的な傾斜制御であるため、万が一、この制御装置が正しく作動しない場合でも本来の超過遠心力によって車体は傾き、安全性は確保される。日本での制御付き自然振り子式にはコロ式とベアリングガイド式がある[3]

[編集] 空気ばね式

振り子式で一般に用いられる、台車などに備えられた機械装置による車体傾斜機構は、その導入に当たって軌道の強化や架線の張り替え工事などの地上設備の改修が必要となる上、車両の重量やイニシャルコストの増加という点で不利であった。このため、例えば日本の私鉄での採用例は速達化が至上命題とされる、あるいはJRと乗り入れを行う必要からそれらで採用されているのと準同型の車両を導入する必要がある、といった特殊な事情のある第三セクター鉄道にほぼ限られた。しかし、車体傾斜制御技術そのものはそれ以外の鉄道においても列車の高速化や乗り心地改善に有用な技術であり、そこで高価な振り子式の代替技術として制御付き自然振り子方式と同じく線路上の曲線部ごとのカント等の軌道情報を車上装置に入力しておき、列車の速度情報や位置情報と、車上装置に記録された曲線情報を比較・較正することで得られた自車の正確な現在位置情報から各台車の必要な傾斜角を算出、電磁弁により空気ばねの内圧を左右で調整し適切な角度まで車体を傾斜させる車体傾斜制御装置が開発された[4]

この空気ばねによる車体傾斜制御そのものは1960年代から構想され、いくつか試験も行われていたが、その実現で先鞭をつけたのは高速鉄道の実用化で日本やフランスに出遅れたドイツであった。ドイツ国鉄が1973年に12両を試作した403型と呼ばれる動力分散方式の高速車両においては、ボルスタレス台車に最大傾斜角2度の車体傾斜制御機構が搭載された。この車体傾斜制御装置は試験のみに終わり、403型も量産されることなく終わったが、この段階で本方式の基本的な機構はほぼ確立されており、低コストで車体傾斜制御を実現する手段として注目を集めた。

空気ばね式での傾斜角は台車左右の枕ばねに用いられる空気ばねそのもののストロークに依存するため、最大でも2度程度と、振り子式での6-8度程度と比べると車体の傾斜能力は大きく劣る。しかし、専用の特別な車体傾斜機構を搭載せず、既存の空気ばね台車を若干設計変更して制御機構を追加するだけで済むため、軽量かつ低コストでであることに加え、傾斜角度2度の場合でも15km/h程度の曲線通過速度向上が実現可能であるため、コスト相応の効果がある。日本ではコスト優先の私鉄や、各JR旅客会社のローカル線用新型特急車両に採用されているほか、新幹線N700系E5系にも採用されている。床面の垂直方向に発生する荷重変化もごく少ないため、乗り心地に違和感が無い。

この方法は簡易振り子式と呼ばれることがあるが、振り子装置は装備しておらず、車体自体も振り子運動はしないため、この呼び方は誤りである。

[編集] ハイブリッド車体傾斜システム

傾斜の模式を線で表した図。線はすべて同じ長さである。下が水平状態、中が振り子傾斜だけのとき、上が車体傾斜も用いたとき。

2006年3月に北海道旅客鉄道(JR北海道)が発表した。鉄道総合技術研究所、川崎重工業との共同開発。制御付き自然振り子式と、空気ばね圧制御式の車体傾斜制御装置とを組み合わせた世界初の技術で、従来の振り子式を上回る8度(制御付き自然振り子による6度+空気ばね圧制御式による2度)の傾斜角を実現させるもの。単なる制御付き自然振り子に比べ、乗り心地の向上も図られると言われるが、これは、振り子による床面の左右移動量を車体傾斜制御装置によってある程度抑えることができるためである(JR北海道のプレスリリースの図も参照)。

今後、試作台車をキハ283系気動車1両に取り付け、走行試験(札幌、函館近郊を予定)が、2009年を目処に行われるが、車両限界の関係から、既存のキハ281系キハ283系へ搭載しての実用化は難しいという[5]。なお、2015年度の北海道新幹線新青森 - 新函館間開業後に、函館 - 札幌間にこのシステムを搭載した車両を投入する予定とされている。実用化されれば、曲線を含む全線での140km/h運転が可能となり、函館 - 札幌間で約20分の短縮が見込まれているという[6]

[編集] 実用化への工夫

架線から取り込んだ電気によって動く電動モーターから推進力を得ている電車方式の振り子式車両は、そのままでは車体の傾斜によって架線に接触するパンタグラフの位置が変化するために、当該路線を走る電車がすべて振り子式車両であるとの前提で架線の位置を傾斜した車体でのパンタグラフの位置に最適化して架設するか、そういった変更を避けるには、振り子式車両側で車体が傾斜してもパンタグラフの位置は変わらないようにする必要がある。車両側でパンタグラフの位置変化を防ぐには、車体の傾きに関わらずレールに近い台車枠との位置関係を固定する必要があり、日本で実用化されている方式には、ワイヤー式と台車直結式がある。ワイヤー式では傾斜する車体の外周部を迂回させたワイヤーで台車枠と可動式のパンタグラフ基部とを結び、台車直結式では傾斜する車体内部を貫通された支持枠が台車枠とパンタグラフ基部とを結ぶことで、それぞれ車体の傾斜に関係なく軌道面に対するパンタグラフの位置が固定されるようになっている。

また、ディーゼルエンジンを推進力に用いるディーゼル方式の振り子式車両でも、単純にディーゼルエンジンを持つ車両に振り子による車体の傾斜機構を加えただけでは、車体の長軸方向に走る推進軸の回転トルクによって車体の傾きが偏るという問題が生じる。これを避けるために、ディーゼルエンジンを2基備えて、推進軸の回転方向が互いに逆向きになるようにしてその相互の反作用によって偏向をキャンセルするといったことが行われる[3][7]。また、通常の気動車に比べ遙かに大きな変位を吸収しなくてはならなくなる伝達系ジョイントは極めて大きな問題となる。

[編集] 日本

381系は日本最初の営業用の振り子式車両である。

1960年代小田急電鉄三菱電機が共同で台車左右の空気ばねの圧力差を利用した上記の空気ばね圧制御式に相当する車体傾斜装置の実用化試験を行うが、当時は技術そのものが未熟で、実用化は見送られた。ちなみに、これと同等のシステムは下記のJR北海道キハ201系気動車でようやく実用化された。

その後、国鉄時代の1969年に、コロ軸支持式の自然振り子式を採用した591系試験電車が試作され、そこで得られたデータを基に特急形車両381系電車が量産され、中央西線紀勢本線伯備線の順でそれぞれの電化とともに投入された。

民営化後は、JR四国が鉄道総合技術研究所とともに世界初の制御付き自然振り子式気動車を実用化し、普及に弾みをつけた。

速度向上は、半径600m(本則90km/h)の曲線を基準とした場合、制御付き自然振り子式で本則+25km/h - 35km/h、初期の自然振り子式及び車体傾斜式で本則+20km/h - +25km/h、低重心化のみで本則+15km/h - +25km/h程度となっている。速度向上は曲率半径により異なり、走行する線路の規格などの条件によっても変わる。また設計時の目標値以下で落ち着いた車両も存在する。

[編集] 自然振り子式

国鉄
591系試験電車
1970年。前後非対称[8]アルミ製車体・最高速度130km/h・最大傾斜角6度で、国鉄電車としては珍しい複巻整流子電動機とサイリスタチョッパ制御器による発電ブレーキ機能・架線追従式パンタグラフ(2基のうち1基のみ)を搭載し、両端台車に移動心皿機構を、連接台車にリンクによる自己操舵装置をそれぞれ搭載した3車体4台車構成の連接車として誕生した。ところが、テスト中に連接台車の自己操舵装置を使用すると曲線通過時に両端台車の側圧が過大になるという問題がある事が判明し、1971年にメリットが薄くなった3車体連接車から自己操舵機構なしの20m級ボギー車2両編成へと改造された。東北本線への投入を前提として交流20,000V 50Hz/60Hz区間に対応する交直流電車としていたが、東北新幹線の建設が決まり、1971年から1973年にかけて電化と量産車(後の381系)の投入が決定された中央本線・信越本線篠ノ井線などでデータ収集のため試験を実施した。以後、電気式ガスタービン動車への改造などが検討されたが実現には至らず、岡谷駅構内など長野鉄道管理局管内を転々とした後、1980年3月26日付で除籍、その後長野工場で解体された。解体後、DT96形台車(元・連接台車)1台が大阪の交通科学博物館で保存展示されている。
キハ391系気動車
1972年。3両4台車の連接構造を持つガスタービンエンジン試験車。ガスタービンエンジンを搭載する中間車は通常の振り子機構を持たない2軸ボギー車で、これに振り子機構付きの両端車体が特殊な連結器を介して乗りかかる、という特殊な構造を備える。投入予定のあった伯備線山陰線田沢湖線などを中心に試験が実施されたが、主にガスタービンエンジンの技術的な問題とオイルショックの影響による燃料費高騰などから量産化されず、最後に試験が実施された山陰地区の米子機関区構内で1987年2月10日まで長期休車とされた末に除籍された。現在はJR東日本大宮総合車両センターで非公開保存。
381系電車
1973年。国鉄時代から運用され続けている自然振り子式直流特急形電車。曲率半径400m以上で本則(曲線での通常の列車の制限速度)+20km/hでの運転が可能。ベースとなった591系と同じアルミ車体であるが、同系列での試験結果を反映し、また投入線区の線形[9]や車両製作コスト、それに変電所負担[10]を考慮して最高速度120km/h・最大傾斜角5度・自己操舵装置なしとなっている。591系の試験結果から架線追従式パンタグラフは特に必要ないと判断され、パンタグラフを屋根に直接固定したため集電舟の偏寄がやや大きく、振り子使用区間では架線の張り方を変えて対処した[11]JR東海では定期運用が消滅したが、JR西日本では「やくも」・「くろしお・スーパーくろしお」で使用されている。

[編集] 制御付き自然振り子式

JR四国
2000系気動車
1989年に製作された3両編成の試作車「TSE」を皮切りに、1990年以降、量産が開始された。JR四国はもちろん、世界初の振り子式気動車であると同時に、その後の日本国内における振り子式気動車の基本構成を確立した。なお、量産車には同一スペックで土佐くろしお鉄道が所有する車両も存在する。
振り子機構はコロ式を採用し、最大傾斜角は5度。島内各ディーゼル特急で使用。試作車「TSE」及び量産車の最高速度は120km/hだが、一部区間では130km/h運転が可能な改良型(N2000系)も投入されている。なお、宇野線本四備讃線では振り子装置を使用しない。
JR四国の主力車両で、予讃線の「しおかぜ」「いしづち」「宇和海」、土讃線の「南風」「しまんと」「あしずり」、高徳線の「うずしお」で使用。
8000系電車
1992年。予讃線電化に伴い特急「しおかぜ」「いしづち」の大半に充当されている。最大傾斜角は2000系気動車と同じ5度だが、最高速度は130km/hに引き上げられ、試作車は在来線で160km/hからのレールブレーキの性能試験にも使われた。振り子機構は試作車がベアリングガイド方式を、量産車がコロ式を採用している。車体傾斜時には、パンタグラフと台車を直結するワイヤにより、パンタグラフの位置調整を行う。2000系気動車と同様、宇野線・本四備讃線では振り子装置を使用しない。
JR北海道
キハ281系気動車
1992年。1994年から特急「スーパー北斗」として使用されている。着雪と低温対策を盛り込み、振り子機構にベアリングガイド方式を量産車として初採用した[12]。最高速度130km/h、最大傾斜角5度。鉄道総合技術研究所とともに開発。運転全区間にわたって振り子効果を発揮し、表定速度は最高で106.2km/hとなっている[13]
キハ283系気動車
1995年。ベースとなったキハ281系気動車からエンジンの出力を増大し、5段変速機や自己操舵台車を装備し、最大傾斜角も6度まで拡大した。これによって曲率半径600mで本則+30km/hの営業運転を行っているが、設計上は本則+40km/hも可能とされている。当初は特急「スーパーおおぞら」に投入され、1998年からは「スーパー北斗」、2000年には「スーパーとかち」にも使用されるようになった。
JR東日本
E351系電車
1993年。特急「スーパーあずさ」として使用。振り子列車最長の12両編成で運転される。パンタグラフは台車直結の支持台に載せる方式が考案され、後に883系885系でも採用された。最初に製作された2編成は1996年に量産化改造が施され、1000番台を名乗っている。
智頭急行
HOT7000系気動車
1994年。JR四国の2000系気動車をベースに設計された。京阪神鳥取を短絡する特急「スーパーはくと」に使われ、従来より大幅なスピードアップを果たした。
JR東海
383系電車
1994年。381系電車の後継として開発。曲率半径600mで本則+35km/hの125km/hの運転を可能としたほか、381系で長期試験が実施されていた自己操舵台車が本格採用され、軌道保守負担の大幅な軽減に貢献した。特急「ワイドビューしなの」に使用されている。
JR九州
883系電車
1994年。同社初(営業用交流電車としては日本初)の振り子車両で、本則+30km/hの運転が可能。インテリア・エクステリアともに独特のデザインが特徴。パンタグラフを台車直結の支持台に載せている。特急「ソニック」に使用。
885系電車
1999年。当初は特急「かもめ」に投入され、2001年からは特急「ソニック」にも運用されている。運用される列車は「白い○○」と呼称される。
JR西日本
283系電車
1996年。紀勢線特急「くろしお」系統の更なる速達化のため、JR西日本が自社では最初に開発。本則+30km/hの運転が可能。同時期に誕生したJR東海の383系電車などとは異なり、自己操舵台車は装備しない。特急「オーシャンアロー」に使用されている。
キハ187系気動車
2001年。山陰地区内のローカル特急用に開発。JR四国の2000系を基礎とする一連の振り子式気動車の1つであるが、制御系の設計は電車と気動車で共通化されたJR西日本標準のものに変更されている。特急「スーパーおき」・「スーパーくにびき→スーパーまつかぜ[14]に投入され、2003年からは岡山と鳥取を短絡する特急「スーパーいなば」にも使われている。なお、山口線内では振り子装置を使用しない。

[編集] 強制振り子式

JR東日本
E991系電車
1995年。在来線の速度向上試験車両「TRY-Z」として開発された。3両編成で前後非対称の交直流電車。最高速度160km/h(設計最高速度は200km/h)、曲線で本則+45km/hを目指して1995年から中央線・常磐線でテストされていた。試験終了後の1999年3月27日に廃車。

[編集] 車体傾斜制御装置

下記のほか、開発中のフリーゲージトレインへの搭載が検討されている。搭載するシステムの種類などは不明。

JR北海道
キハ201系気動車
1996年。札幌近郊の快速普通列車で使用されている。JR北海道では初の車体傾斜制御装置搭載車。下記の261系気動車のパイロットモデルとしての役割も兼ね、大馬力機関を2基搭載し、同社731系電車との協調運転機能を持つ。最大傾斜角は2度。
キハ261系気動車
1999年。ベースとなったキハ201系と同様、空気バネを利用した車体傾斜制御装置による強制車体傾斜式として設計された。「スーパー宗谷」と「スーパーとかち」で使用。常用最大傾斜角2度、設計最大傾斜角3度。当初の計画にあった特急電車との協調運転は行わないこととなった。また、宗谷本線名寄駅 - 稚内駅間では車体傾斜装置を使用しない。
名古屋鉄道
1600系電車
1999年。主に西尾線系統の特急として運用され、第1編成のみ車体傾斜制御装置を搭載したが、営業運転では車体傾斜制御装置は使用せず、試験目的での使用にとどまった。2008年に1700系に改造された際に装置は撤去されたが、試験の成果は下記の2000系電車に生かされた。
2000系電車
2004年中部国際空港連絡特急用。「ミュースカイ」の愛称を持つ。最大傾斜角2度。
小田急電鉄
50000形電車
2005年に製造。小田急特急ロマンスカー。「VSE」の愛称が与えられている。国内の連接車両では初採用。各台車の枕ばねに用いられている空気ばねの自動高さ調整弁(LV:Leveling Valve)に車高制御装置を付加することで空気ばねによる車体傾斜を実現している。最大傾斜角は枕ばね位置を高く設計された連接台車が2度で編成両端のボギー台車が1.8度。
新幹線
N700系電車(Z・N編成)
955形(300X)での試験結果を基に、JR東海・JR西日本が新幹線初の車体傾斜機構搭載車両として開発。東海道新幹線の255km/h制限があるカーブを減速せずに270km/hで通過できる。2005年3月に試作車が登場し、2007年7月1日から営業運転を開始した。最大傾斜角1度。
E5系電車
JR東日本が、東北新幹線の320km/hでの営業運転用に開発した車両。E954形(FASTECH 360:最大傾斜角2度)での試験結果を反映して設計され、2011年から営業運転を開始した。最大傾斜角1.5度。
E6系電車
JR東日本がミニ新幹線列車の320km/hでの営業運転用に開発した車両。E5系と同様、E955形(FASTECH 360 Z:最大傾斜角2度)での試験結果を基に設計され、ミニ新幹線では初めて車体傾斜機構を搭載する。2012年から営業運転で使用される予定。最大傾斜角1.5度。

[編集] 海外

1940年代から開発が行われ、イタリアのフィアット社(鉄道部門はアルストム社に吸収)やスイスABB社(ボンバルディア・トランスポーテーション社に吸収)が油圧シリンダーによる強制車体傾斜方式を開発し、欧州各国に普及した。

振り子が動作すると天井付近を回転軸にして床が動く日本のものとは異なり、床付近を軸に車体上部が振れるため、座っていると頭を持っていかれるような感覚がある。また車体を正面から見ると裾がすぼまっている(極端に言うと上辺が長い台形に見える)のが特徴的。

[編集] イタリア

山岳国ゆえ線形の悪い線区が多く、古くから振り子式車両の開発に熱心だった国である。振り子式電車の技術では、世界でもトップクラスである。元々はフィアットが英国鉄道 (BR) が1970年代に開発したAPTの強制振り子車両の技術を購入して発展させた。ペンドリーノの項目も参照。高速新線ディレッティシマ)の走行も考慮されているが、高速新線でない在来線でも、安価に高速化を実現できるため、イタリア以外にも多くの国(高速新線を建設するほどの需要や経済的余裕がない国)に輸出されている。現在はかつてAPTが試験走行した英国の西海岸線にも導入されている。

ETR450電車
第一世代の振り子式電車。現在は主力の座を後継車に渡している。直流専用で、最高速度250km/h。
ETR460電車
ETR450の成功を受けて登場した、第二世代の振り子式電車。直流専用で、最高速度は250km/h。
ETR470電車
ETR460電車をベースに、スイス国鉄ドイツ連邦鉄道への直通を考慮した交直流電車(交流は15kV対応)。チザルピーノ社が保有・運営する。高速新線での走行を考慮していないため、最高速度は200km/h。
ETR480電車
ETR460電車をベースに、フランス国鉄への直通を考慮した交直流電車(交流は25kV対応)。最高速度は250km/h。
ETR600電車
ETR460の後継となる振り子式電車。下記の610とほぼ共通設計となる。中国へ輸出されたCRH5型電車のモデル。
ETR610電車
チザルピーノ社向けに投入予定の振り子式電車"Cisalpino 2"。2008年12月より営業運転に投入された。

[編集] スペイン

イタリア同様、古くから振り子式車両の開発に熱心だった国である。

タルゴ・ペンドュラー (TALGO Pendular)
自国技術である低床・連接式客車タルゴのうち、振り子機能を備えた客車。軌間可変機能も備える。最高速度200km/h対応の"TALGO Pendular 200"もある。
タルゴ21 (TALGO 21)
タルゴシリーズの最新鋭車で、機関車(ディーゼル機関車)と一体の編成を組む。軌間可変機能も備える。
アラリス(Aralis・ETR490型電車)
イタリアのETR460型電車がベースだが、軌間は1668mmの広軌。主にマドリードバレンシアを結ぶ。

[編集] ドイツ

日本同様、振り子式気動車を大量に採用しているが、当初はトラブル続きだった。

403型電車
1973年にインターシティ用として日本の新幹線の影響下で計画・設計された、動力分散による全電動車方式4両編成の高速電車。最高速度は200km/h。設計最大傾斜角4度、実用最大傾斜角2度の車体傾斜制御機構を備えるが、この機構は営業運転では使用されることなく終わったとされる。
ICE-T(411型・415型電車)
ICE3の振り子版だが、最高速度は230km/h。411型は7両編成、415型は5両編成。
ICE-TD(605型気動車)
ICE-Tの気動車版。トラブルが頻発し、一時は全編成が運用を離脱した。現在はベルリンハンブルクと、デンマークコペンハーゲンオーフスの間で運用されている。
610型・611型・612型気動車
快速・普通列車用の気動車。610型ニュルンベルク近郊の山岳路線向けに、イタリア・FIAT社の油圧式振り子台車技術を導入して開発され、1992年に営業運転を始めた。開発の経緯から、イタリア語由来である「ペンドリーノ」の愛称で呼ばれている。ドイツでは振り子式車輌全般をペンドリーノと呼ぶことがあるが、ペンドリーノはFIAT社の登録商標である。一方、アドトランツ社が開発した611型と612型は電動式振り子台車を備え、FIAT社とは無関係なため、この二車種をペンドリーノと呼ぶことは適切ではない。612型はレギオスウィンガーの愛称を持つ。612型の一部は、トラブルで運用を離脱したICE-TDに代わり、ニュルンベルクドレスデン間のインターシティにも運用された。

[編集] イギリス

APT (Advanced Passengers Train)
イギリス国鉄が、西海岸本線の高速化を目指して投入した振り子車両。ガスタービン動車のAPT-Eが1972年に試作された後、量産試作としてAPT-Pが1978年に製作されたが、主に強制振り子機構と流体ブレーキを中心にトラブルが頻発[15]し、結果的に失敗した。
スーパーボイジャー(Super Voyagers・221型気動車)
ヴァージントレイン社が運営する、振り子式気動車。最高速度200km/h。
ペンドリーノ・ブリタニコ(Pendolino Britannico・クラス390電車
ヴァージントレイン社が運営する、振り子式電車。最高速度225km/h。

[編集] オーストラリア

Tilt Train(電車)
東海岸のクイーンズランド鉄道 (QR) が、1998年11月から、ブリスベンロックハンプトン間で運行を開始。JR四国の8000系をベースにしている。コロ式5度振り子、営業最高速度160km/h。メーカーはEDI-Walkers、日立製作所と技術提携して製作。車体はステンレス製。電気品、一部台車部品、振り子制御装置は日立製作所が供給した。パンタグラフ移動装置はWalkers独自開発のリンク式を採用している。

QR線上直線路ににおいて試験走行で210km/hの狭軌振り子電車速度記録を有する。Tilt train(English)

Tilt Train(機関車牽引)
クイーンズランド鉄道 (QR) が、2003年から、ブリスベン - ケアンズ間で運行を開始。週2回の運転で、1681kmを24時間55分かけて走る。上記振り子電車の台車を客車に履かせディーゼル電気機関車でけん引する。機関車は振り子せず客車のみが振り子する。メーカーはEDI-Walkers。

[編集] アメリカ

UAC ターボトレイン
両端に電気式ガスタービン機関車を配し、その間に1軸連接台車を備える客車を連ねた高速列車。屋根近くからつり下げるようにして支持された車体を、特殊なリンク機構の作用により傾斜させる機構を備えていた。アメリカでは1968年より1976年まで、これとは別にカナダでも同型車が1968年から1982年まで、それぞれ営業運転に供された。最高速度160km/h。
Acela
アムトラックが運営する高速列車で、ボストン - ニューヨーク - フィラデルフィア - ワシントンD.C.を結ぶ。フランスのTGVの技術を導入している。
カスケイズ (Cascades)
西海岸のユージン - シアトル - バンクーバーカナダ)を結ぶ列車。アムトラックが運営する。スペインのタルゴ客車を輸入し、運用している。

[編集] スイス

山岳国ではあるが、イタリアやスペインに比べて投入が遅れており、営業運転開始は最近になってからのことである。

ICNRABDe500型電車
"Intercity Neigezug"の愛称を持つ。イタリアのETR500のデザインで有名なピニンファリーナのデザイン。

[編集] フランス

フランスは国土が比較的平坦であることと、高速化を高速新線 (TGV) の建設で対応してきたことから、試作にとどまっている。

TGV-Pendulare
振り子式TGVの試作車。テスト終了後は振り子式機構を撤去し、従来の運用に復帰した。

[編集] その他

ポルトガル
アルファ・ペンドゥラール (Alfa Pendular)
イタリアのETR460型電車がベースだが、軌間は1668mmの広軌で、交流専用 (25kV)。リスボンポルトを結ぶ。
スロベニア
ICS(Intercity Slovenija・310型電車)
イタリアのETR460がベース。
チェコ
Integral(680型電車)
イタリアのETR460がベース。SC (SuperCity) として運用される。
フィンランド
S220
イタリアのETR460がベースだが、軌間が1524mmの広軌を採用している。振り子式機構は使われていない。
スウェーデン
X2000
高速新線を建設することなく、既存の在来線で200km/hを可能にした。アメリカオーストラリア・中国で試用されたこともある。
ノルウェー
シグナチュール(BM73型電車)
オスロと、ノルウェー国内の主要都市を結ぶ。日本のかつての電車特急(ボンネット形)にも類似したデザイン。
クロアチア
ICN (InterCity Nagibni)
ドイツの612型気動車 (RegioSwinger) と同一仕様で、ザグレブスプリトを結ぶ。
カナダ
LRC (Light Rapid Comfortable)
1970年代に製造された車体傾斜式列車。現在は客車のみが一般の機関車に牽引される形で運用されており、振り子式車両としての運用は終了している模様。アメリカでも運用されたことがある。
台湾
TEMU1000形太魯閣号
2007年5月東部幹線に投入した。JR九州885系をベースにした日立製作所製。
韓国
TTX (Tilting Train eXpress)
KTXの恩恵が及ばない地域との時間短縮を行うべく、メーカーと研究所が共同開発を行っている車両。電車方式で、最高速度200km/hを目指し、車体は軽量化のため、航空機で採用されているような複合材料(コンポジット材料)を採用している。既に試作車"Hanbit 200"が登場し、各種試験を実施している。傾斜角度は約8度。
中国
新時速(シンシースー)
スウェーデンのX2000を輸入している。

[編集] 脚注

  1. ^ 日本国有鉄道の場合、許容される遠心力を0.08G(地表方向の重力の約1/12)以下と規定していた。この数値は、テーブルの上のコップが横に動くか動かないかという程度の遠心力の強さである。なお在来線の本則曲線通過速度はこれの半分に当たる0.04Gを基準に算出されている。
  2. ^ リンク、コロ(=ローラー)等を利用することによって車体傾斜を円滑に行えるように設計する例が多いが、後述するスペインのタルゴ・ペンデュラーのようにこうした機構を一切備えず、空気ばねによる枕ばねを車体の天井付近に置き、車体傾斜の回転中心を天井よりも高い位置に設定することで簡潔に自然振り子を実現した例も存在する。
  3. ^ a b c 『新世代鉄道の技術』
  4. ^ 『プロが教える電車のメカニズム』、p.143
  5. ^ さらなる車体の小断面化が必要となる
  6. ^ 現在同区間で運転される「スーパー北斗」の最速達列車の所要時間は3時間ちょうど
  7. ^ 『鉄道ジャーナル』 No.328、pp.50-51
  8. ^ 双方とも非貫通で、高運転台と低運転台によるスタイリングの差以外に、着座位置による運転士への影響が比較された。
  9. ^ 振り子式の投入が望まれる線区は即ち曲線主体の線形であり、最高速度引き上げが難しい。
  10. ^ 最高速度を130km/hに設定し、また591系で成功を収めたチョッパ制御器+直流複巻整流子電動機による発電ブレーキを有効に活用するには、同系列と同様に全電動車方式を採用する必要があり、車両製作・保守コストの点でも変電所負担の点でも望ましくなかった。
  11. ^ このため、名古屋 - 大阪東海道本線)、天王寺 - 和歌山間(阪和線)などの振り子使用区間外では振り子装置の使用は停止される。
  12. ^ 試作車2両にコロ式を、後に製作した試作車1両にJR四国8000系電車試作車で採用されたベアリングガイド式を採用し、比較検討された。
  13. ^ スーパー北斗15号。日本の在来線列車としては最速である。
  14. ^ 2003年に列車名が変更された。
  15. ^ 強制振り子機構が曲線走行で車体傾斜制御中に車体を突然直立状態に戻してしまい、乗客が曲線の外側に投げ出される、あるいは車体傾斜制御の異常で脱線する、といった凄まじい事故が多発した。

[編集] 参考文献

  • 若生寛治「振り子車両の誕生から新しい技術への展開」、『月刊鉄道ジャーナル』 No.328、鉄道ジャーナル社、1994年2月
  • 日本機械学会編 『鉄道車両のダイナミクス 最新の台車テクノロジー』、電気車研究会、1994年12月、ISBN 9784885480744
  • 『プロトタイプの世界 鉄道ダイヤ情報別冊 No.280』、交通新聞社、2005年12月
  • 川辺謙一『新世代鉄道の技術』、講談社、2009年8月、ISBN 9784062576499
  • 谷藤克也『プロが教える電車のメカニズム』、ナツメ社、2011年、ISBN 9784816349904

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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