カフェイン

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カフェイン
カフェインの構造式。
識別情報
CAS登録番号 58-08-2
KEGG D00528
特性
化学式 C8H10N4O2
モル質量 194.19
外観 白色結晶
密度 1.23, 固体
融点

238

出典
ICSC
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

カフェイン: caffeine, : Coffein)は、アルカロイドの1種であり、プリン環を持ったキサンチン誘導体として知られている。興奮作用を持ち精神刺激薬のひとつである。カフェインは、アデノシン受容体に拮抗することによって覚醒作用、解熱鎮痛作用、強心作用、利尿作用を示す。

コーヒーから分離されカフェインと命名された。飲食品では主に、コーヒー飲料緑茶ウーロン茶紅茶ココアコーラ栄養ドリンクなどの飲料チョコレートなどにカフェインが含まれる。一方で、妊娠期や過敏体質によりノンカフェインコーヒー麦茶などカフェインを含有しない飲料の需要もある。医薬品では総合感冒薬鎮痛薬に用いられる。

副作用として不眠、めまいなどが含まれる。減量あるいは中止による離脱症状として、頭痛、集中欠如、疲労感、気分の落ち込みなど吐き気や筋肉痛が、ピークがおよそ2日後として生じることがある[1]。頭痛は1日平均235mgの摂取で、2日目には52%が経験する[2]

カフェインは肝臓の代謝酵素CYP1A2で代謝されるため、この阻害作用のある薬と併用すると、血中濃度が高まり作用が強く出る薬物相互作用を示すことがある。一方、ニコチンにCYP1A2の代謝誘導作用があるため、カフェインの作用は減弱する。

化学[編集]

3Dモデル

結晶は一水和物 (C8H10N4O2・H2O) もしくは無水物(無水カフェイン、C8H10N4O2)として得られる。白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく、味は苦い。昇華性がある。1,3,7-トリメチルキサンチンとも呼ばれる場合がある。

歴史[編集]

1819年(一説には1820年)にドイツフリードリープ・フェルディナント・ルンゲ英語版によってコーヒーから世界で初めて単離された。分析化学者であったルンゲに、コーヒーの薬理活性成分の分離を勧めたのはゲーテであったと伝えられている[3]

この化合物はコーヒーに含まれていることから、カフェインと命名された[4]

医薬品として[編集]

主に無水カフェインとして、一般消費者向けの総合感冒薬や鎮痛薬に添加されることが多いほか、臨床的に偏頭痛等に用いられる場合がある[5]

総合感冒薬ではカフェインの作用である鎮痛補助目的が主で、配合されたジフェンヒドラミンクロルフェニラミンなど催眠性の強い抗ヒスタミン剤副作用を緩和する目的ではない(実際のところ、催眠性成分の緩和には至らない)。しかし、逆に風邪を引いているときにぐっすり眠れるようにと、意図的にカフェインを配合していない感冒薬もあるように、消費者の心理的作用を利用したものもある。また、安息香酸ナトリウムカフェイン(アンナカ)はカフェインに安息香酸ナトリウムを加えて水に溶けやすくしたものである。芳香族化合物である安息香酸ナトリウムカフェインは、清涼飲料等の保存料のほか、単体と同じく強心・興奮作用を期待して使われる。

高度先進医療[編集]

金沢大学医学部整形外科では、独自に開発したカフェイン併用療法を抗がん剤治療の術前に用いて、骨肉腫軟部腫瘍の治療に効果を上げ、厚生労働省から高度先進医療として承認された(詳細は骨肉腫#治療法を参照)。現在では福島県立医科大学杏林大学大阪市立大学高知大学愛媛大学他で行われている。

食品として[編集]

しかし、コーヒーの原料のコーヒーノキ以外にも、チャノキカカオガラナなどにも含まれている。したがって、これらから作られた飲食物、例えば、各種コーヒー飲料緑茶ウーロン茶紅茶ココアなどの飲料や、チョコレートなどの加工食品にもカフェインは含まれる。さらに、コーラ栄養ドリンクなどの飲料や、一部のチューインガムのように、人工的にカフェインを添加した食品も散見される。また、一部の頭痛薬のように、カフェインは医薬品としての利用もなされている。なお、茶に含まれるカフェインはタンニンと結びつくためにその効果が抑制されることから、コーヒーのような興奮作用は弱く緩やかに作用する。

作用[編集]

カフェインの作用。

主な作用は、中枢神経を興奮させることによる覚醒作用および強心作用、脂肪酸増加作用による呼吸量と熱発生作用による皮下脂肪燃焼効果[6]、脳細動脈収縮作用、利尿作用などがある。医薬品にも使われ、眠気、倦怠感に効果があるが、副作用として不眠、めまいがあらわれることもある。

多くの人がコーヒーや緑茶などからカフェインを日常的に摂取しているが、過剰な摂取は健康に害をおよぼすことが知られている。カフェインは法的に禁止・制限された薬物ではないが、脳神経系に作用するものである。そのため、限度を超えた摂取や投薬中・妊娠中のカフェインの摂取に関しては医者の指示を仰いだ方がよい。

覚醒作用[編集]

不眠症がある場合には、カフェイン摂取は制限するか控えることが望ましい。

身体的作用[編集]

利尿作用があるため、コーヒー等カフェインを多く含む飲料は水分補給としての効果が薄い。

カフェインは一時的に頭痛を止める働きがある一方で、常用するとかえって頭痛が起こりやすくなる。これは、カフェインの脳血管収縮作用により頭痛が軽減されるためで[7]、時間の経過とともにこの血管収縮作用が消えると、反動による血管拡張により頭痛が生ずることがある。

カフェインの常用で血圧が4〜13mmHgほど上昇する可能性も報告されている[8]。カフェインはエストロゲンの分泌を亢進させる働きがあるため、乳腺症などのエストロゲンによる症状がある場合、カフェインの摂取を控えることで症状が改善する場合がある。

副作用[編集]

カフェインの摂り過ぎは骨を弱くし、ひどい場合には死亡する恐れもある[9]

中毒[編集]

過剰摂取によるカフェイン中毒による死亡は稀であるが報告されている[10]

依存と耐性[編集]

カフェインを繰り返し摂取すると、軽い精神的依存が発生するとされる。またカフェインの作用(特に自律神経への働き)は、使用していくごとに効果が減少し、これは薬物耐性とされる。いくつかの作用(全てではない)への耐性はすぐに形成され、特にコーヒーやエナジードリンクの常用者には顕著である[11]。一部のコーヒー飲用者では、カフェインの覚醒効果には耐性が出来ているが、それ以外の人には形成されていない[12]

離脱症状[編集]

カフェインの離脱症状には、頭痛、短気、集中欠如、疲労感、過眠、胃・上半身・関節の痛みなどがある。カフェインの摂取を中断してから12時間から24時間後に発生し、ピークはおよそ48時間後で、通常は2日から9日間で収まるとされる[1]。離脱性頭痛は、カフェインを1日平均235mg摂取していた人の場合、中断後の2日目で52%が経験する[2]。長期間のカフェイン摂取者の場合、離脱時症状は抑うつ、不安、胃腸不快感、筋肉痛、カフェイン摂取欲求などが報告されている。経験者の知識・助言・サポートなどは離脱の助けになるであろう。

カフェイン離脱は、DSM-5における診断名である[13]。過去の版ではカフェイン中毒があったが、離脱は存在しなかった。

薬理[編集]

カフェインは、クモに作用し、巣作りに影響を及ぼす。(下写真)

カフェインは、アデノシン受容体に拮抗することによって覚醒作用を示す。また、メチルキサンチン誘導体に共通の活性として、ホスホジエステラーゼの非選択的な阻害作用があり、細胞内cAMP濃度の上昇を引き起こす。これにより、心筋収縮力の増大、気管支平滑筋の弛緩、脳細動脈の収縮のような交感神経興奮様作用を示す。これらの作用の結果、血管拡張により糸球体濾過量 (GFR) が増大し、さらに尿細管での水分の再吸収の抑制により利尿作用を現わす。また膀胱括約筋に取り付いてその作用を抑制しているアデノシンの働きをカフェインが妨害するために頻尿になるという説もある。さらに、cAMPの濃度の増大は胃酸を産生する細胞では、プロトンポンプを活性化し、胃酸分泌を亢進する。また、わずかではあるが骨格筋収縮力を増大させる作用もあり、2004年まではドーピングに対する禁止薬物リストにも含まれていた。

カフェインの半数致死量 (LD50) は約200 mg/kgで、一般的な成人の場合、10gから12g以上が危険と言われる(詳しくはカフェイン中毒を参照)。医療分野において医薬品医療機器等法では1回(1錠・1包等)あたりに500mg以上のカフェインを含むものを劇薬に指定している。

代謝[編集]

口から摂取した場合、最大血中濃度に達するのは、30~45分である[1]。ヒトの成体において、体内でのカフェインの半減期は通常、約4.9時間程度とされている[14]。ヒトの体内でカフェインは代謝されて、主に尿酸となって尿と共に排泄される。

ただし、ヒトの場合、カフェインの代謝に関わる肝臓に発現している薬物代謝酵素の一種であるシトクロムP450のCYP1A2は、妊娠すると、その量が減ることが知られており、カフェインの代謝は遅くなる。また、CYP1A2は、ヒトでは1歳になる前までに成体と同じレベルの量に達するものの、それ以前は少なく、特に出生前(胎児)のカフェインの排除能力は成体と比べて著しく低い。その反面、1歳過ぎから思春期の頃までは、カフェインの排除能力が成体よりも高くなることが知られている[15]。なお、カフェインの排除能力の低いヒトの胎児では、CYP1A2による酸化とは全く別に、メチル化するという代謝経路も利用されることが知られている。

薬物相互作用[編集]

カフェインは一部の薬とも相性が悪く、CYP1A2を阻害する薬剤(シメチジンフルボキサミンオランザピンなど)との併用では中枢神経作用が強く出現することがある。

モノアミン酸化酵素阻害薬 (MAOI) との併用では頻脈・血圧上昇が見られやすい。これは、カフェインがCYP1A2を阻害するとともに、カフェインの代謝はCYP1A2およびモノアミン酸化酵素により行われることに起因する。コーヒーや紅茶と一緒に薬を飲んでいけないと言われている理由は主にここにある。

一方、ニコチンはCYP1Aを誘導するため、カフェインの代謝が促進される。そのため、喫煙者はコーヒー等で眠け覚まし目的にカフェインを摂取しても、非喫煙者よりその効果は低い。また、カフェインは最終的に尿酸となり体内から排泄されるため、代謝が促進されると、それだけ尿酸の生産量も促進されることになる。また、カフェインには利尿作用もあるため、体内水分量が不足し、尿酸が析出しやすくなる。尿酸は痛風の原因物質である。

したがって、喫煙者でコーヒー等を日常的に摂取している人は痛風を発症する危険性が通常より極めて高くなる。痛風は男性の病気と思われがちであるが、女性にも起こりうるものであり、特に女性の痛風発症は喫煙およびコーヒーの日常的な過剰摂取が原因ともされている。

カフェイン含有量[編集]

食品・医薬品に含まれるカフェインの代表値[16][17][18][19][20]
品名 数量 数量あたりカフェイン含有量 (mg) 1リットルあたり
カフェイン含有量 (mg)
エキセドリンタブレット 1 tablet 65
ミルクチョコレートバー(カカオ45%) 1 bar (43 g) 31
ミルクチョコレートバー(カカオ11%) 1 bar (43 g) 10
パーコレートコーヒー 207 mL 80–135 386–652
ドリップコーヒー 207 mL 115–175 555–845
デカフェコーヒー 207 mL 5–15 24–72
エスプレッソコーヒー 44–60 mL 100 1,691–2,254
黒茶緑茶など、3分煎じ) 177 mL 22–74[19][20] 124–416
Guayakí マテ茶 (loose leaf) 6 g 85[21] approx. 358
コカ・コーラ Classic 355 mL 34 96
マウンテンデュー 355 mL 54 154
ペプシ Max 355 mL 69 194
ジョルト・コーラ 695 mL 280 403
レッドブル 250 mL 80 320
  • 緑茶 235ml:30mgから50mg
  • 紅茶 235ml:47mg
  • コーヒー(インスタント)235ml:62mg
  • コーヒー(豆から抽出したもの)235ml:95mg
※水出しにした場合、抽出時間にもよるが、これよりずっと少なくなる[22]
モンスターエナジーM3の場合は150ml:140mg

食品添加物[編集]

天然のカフェインは、既存添加物名簿に収載されており、食品添加物として使用が認められている[23]コーヒーの種子又はチャの葉から得られたもののことである。合成のカフェインは使用できない。尿素から人工的に合成したものなどである。

代替品[編集]

カフェインの副作用を考慮して、嗜好品の中には、カフェインの含有量を通常のものより抑えた代替品が存在する。これらはカフェインレスとして知られ、コーヒー、コーラ、茶類などのうち、カフェインの含有量の少ないもしくは含まないものとしては、ノンカフェインコーヒー(デカフェ)、ノンカフェイン紅茶、ノンカフェインコーラ、また杜仲茶麦茶黒豆茶そば茶甜茶ゴーヤ茶昆布茶柚子茶ハーブティールイボスティーたんぽぽコーヒーなどがある。

デカフェ[編集]

西欧人にはエタノール耐性が高い人が多く、酒を飲んでも表情に出ず酔いつぶれにくいということがあるが、反面、カフェインへの耐性が無い、または低い人が多く、このような人はしばしばコーヒー酔いを起こす[要出典]デカフェ(カフェイン除去済みのコーヒー)の需要が多い。

2005年にアメリカ合衆国で発売されたフォー・ロコは、カフェイン入りの酒であり、若年層に人気があったが、カフェインが酔いを助長させ多数の急性アルコール中毒患者を出したことから、後にカフェインなどの成分を取り除く見直しが行われた[24]

出典[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c Juliano LM, Griffiths RR (2004). “A critical review of caffeine withdrawal: empirical validation of symptoms and signs, incidence, severity, and associated features”. Psychopharmacology (Berl.) 176 (1): 1–29. doi:10.1007/s00213-004-2000-x. PMID 15448977. オリジナルの29 January 2012時点によるアーカイブ。. http://webcitation.org/6533BsxXt. 
  2. ^ a b Silverman K, Evans SM, Strain EC, Griffiths RR (October 1992). “Withdrawal syndrome after the double-blind cessation of caffeine consumption”. N. Engl. J. Med. 327 (16): 1109–14. doi:10.1056/NEJM199210153271601. PMID 1528206. 
  3. ^ Weinberg, BA; BK Bealer (2001). The World of Caffeine. Routledge. ISBN 0-415-92722-6. 
  4. ^ Caffeine | Define Caffeine at Dictionary.com” (英語). Dictionary.com (2010年). 2010年7月10日閲覧。
  5. ^ 治療薬マニュアル2010 P.385, ISBN 978-4-260-00930-0
  6. ^ 池ケ谷 賢次郎「茶の機能と衛生」、『食品衛生学雑誌』第30巻第3号、1989年doi:10.3358/shokueishi.30.254NAID 40001844412
  7. ^ カフェイン,無水カフェイン,安息香酸ナトリウムカフェイン
  8. ^ Caffeine: How Does It Affect Blood Pressure?
  9. ^ 中屋豊『よくわかる栄養学の基本としくみ』秀和システム、2009年6月、ISBN 978-4-7980-2287-1
  10. ^ 安藤健二 (2015年12月21日). “カフェイン中毒で国内初の死亡者 エナジードリンクを大量摂取”. ハフィントンポスト. 2016年1月30日閲覧。
  11. ^ Information about caffeine dependence”. 2012年5月25日閲覧。
  12. ^ Fredholm BB, Bättig K, Holmén J, Nehlig A, Zvartau EE (1999). “Actions of caffeine in the brain with special reference to factors that contribute to its widespread use”. Pharmacol. Rev. 51 (1): 83–133. PMID 10049999. 
  13. ^ Matt Peckham (2013年5月31日). “Caffeine Withdrawal Is Now a Mental Disorder”. Time. http://newsfeed.time.com/2013/05/31/caffeine-withdrawal-is-now-a-mental-disorder/#ixzz2VGUqUg1D 
  14. ^ Drug Interaction: Caffeine Oral and Fluvoxamine Oral”. Medscape Multi-Drug Interaction Checker. 2012年1月5日閲覧。
  15. ^ 高折修二、福田英臣、赤池昭紀、石井邦雄・監訳『グッドマン・ギルマン 薬理書~薬物治療の基礎と臨床 ~(上巻)』第11版、廣川書店、2007年。p.150, 151. ISBN 978-4-567-49618-6
  16. ^ Caffeine Content of Food and Drugs”. Nutrition Action Health Newsletter. Center for Science in the Public Interest (1996年). 2007年6月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年8月3日閲覧。
  17. ^ Caffeine Content of Beverages, Foods, & Medications”. The Vaults of Erowid (2006年7月7日). 2009年8月3日閲覧。
  18. ^ Caffeine Content of Drinks”. Caffeine Informer. 2013年12月8日閲覧。
  19. ^ a b Chin JM, Merves ML, Goldberger BA, Sampson-Cone A, Cone EJ (October 2008). “Caffeine content of brewed teas”. J Anal Toxicol 32 (8): 702–4. doi:10.1093/jat/32.8.702. PMID 19007524. 
  20. ^ a b Richardson, Bruce (2009年). “Too Easy to be True. De-bunking the At-Home Decaffeination Myth”. Elmwood Inn. 2012年1月12日閲覧。
  21. ^ Traditional Yerba Mate in Biodegradable Bag”. Guayaki Yerba Mate. 2010年7月17日閲覧。
  22. ^ "コーヒーお好み診断 カフェインの少ないコーヒー|コーヒー豆とコーヒーメーカー器具のパオコーヒー" 2015年11月16日閲覧。
  23. ^ 平成8年4月16日厚生省告示第120号
  24. ^ 23人病院送りの缶飲料「Four Loko」に禁止令、米大学が学生に通達(グリー・ニュース2010年10月19日)2012年5月19日閲覧

関連項目[編集]

外部リンク[編集]