ビワ

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ビワ
ビワ
ビワ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : バラ類 rosids
亜科 : ナシ亜科 Maloideae
: ビワ属 Eriobotrya
: ビワ E. japonica
学名
Eriobotrya japonica
(Thunb.) Lindl.
和名
ビワ
英名
(Japanese) Loquat
枇杷
繁体字 枇杷
簡体字 枇杷
蘆橘
繁体字 蘆橘
簡体字 芦橘

ビワ(枇杷、学名: Eriobotrya japonica)は、バラ科の常緑高木。

原産は中国南西部で、日本では四国、九州に自生し、多くは果樹として栽培される[1]。樹高はおよそ10メートルほどになる[2]。葉は濃い緑色で大きく、長い楕円形をしており、表面にはつやがあり、裏には産毛がある。そして、その大きな葉陰に楽器の琵琶に似た形をした一口大の多くの甘い実がなり、黄橙色に熟す。語源は、葉の形や実の形が楽器の琵琶に似ているからとされる。中国語でも「枇杷」(ピン音: pípá; 粤拼: pei4 paa4)と表記する他、「蘆橘」(ピン音: lú jú; 粤拼: lou4 gwat1)とも呼ばれ、英語の「loquat」は後者の広東語発音に由来する。日本には古代に持ち込まれたと考えられており、主に本州南部や四国九州に分布する。またインドなどにも広がり、ビワを用いた様々な療法が生まれた。中国系移民がハワイに持ち込んだ他、日本からイスラエルブラジルに広まった。トルコレバノンギリシャイタリア南部・スペインフランス南・アフリカ北部などでも栽培される。

日本においては梅雨のころに実がなるため、「枇杷」及び「枇杷の実」は仲夏芒種〔6月6日頃〕から小暑の前日〔7月6日頃〕まで)の季語とされている[3]。また冬には、枝先にやや黄色味を帯びた白い五弁の小花を咲かせる。目立たない花ではあるけれどもかぐわしい香りを持ち、「枇杷の花」や「花枇杷」あるいは「枇杷咲く」などは初冬(はつふゆ:立冬〔11月8日ごろ〕から大雪の前日〔12月7日ごろ〕まで)の季語となっている[4]

植物学的特徴[編集]

枝葉は春・夏・秋と年に3度伸長する。若枝は、淡褐色の細かい毛に覆われている[2]

は互生し、葉柄は短い。葉の形は20 cm前後の長楕円形で厚くて堅く、表面がでこぼこしており葉脈ごとに波打つ。縁には波状の鋸歯がある[2]。葉の表面は初めは毛があるが、生育するにつれて毛はなくなり光沢が出てくる[2]。葉の裏面は、淡褐色の毛に覆われたままである[2]

花芽は主に春枝の先端に着く。花芽は純正花芽。花期は11〜2月、香りのよい白い5弁のを群がりつける[2]には毛が密に生えている。自家受粉が可能で、初夏に球形から卵形をした黄橙色の実をつける[2]。果実は花托が肥厚した偽果で、全体が薄い産毛に覆われている。果実の中には大きな赤褐色の種子が数個ある[2]

長崎県千葉県鹿児島県などの温暖な地域での栽培が多いものの若干の耐寒性を持ち、寒冷地でも冬期の最低気温-10℃程度であれば生育・結実可能である。露地成熟は5月〜6月。

栽培[編集]

栽培
種を蒔くと簡単に発芽するので、観葉植物として楽しむことが出来る。生長が速いので剪定で小型に育てると良い。実生苗の結実には7〜8年の歳月を要する。自家結実性のため、他品種を混植する必要はない。殖やし方は実生、接木であるが挿し木も可能。剪定は9月。露地栽培の場合、摘房・摘蕾を10月、開花は11月〜2月、摘果を3月下旬〜4月上旬、袋かけを摘果と同時に行う。果実が大きくなるとモモチョッキリ(ゾウムシの仲間)の食害を受ける。
品種
江戸時代末期に日本に導入され、明治時代から、茂木(もぎ)や田中などの果樹としての品種がいくつかある。現在ではその他に大房、瑞穂、クイーン長崎(福原)、白茂木、麗月、陽玉、涼風、長生早生、室戸早生、森尾早生、長崎早生、楠、なつたよりなど多くの品種がある。中国びわとして冠玉や大五星などがある。2006年、種なしびわである希房が品種登録された。
古代に渡来し野生化した物と考えられる自生木もあるが、種が大きく果肉が薄いため果樹としての価値はほとんど無い。
産地
日本では全国でビワの実が3,240トン(2012年産、農林水産省統計)収穫され、長崎県千葉県南房総市)、愛媛県鹿児島県など温暖な気候の土地で栽培されている。特に長崎県は、全国の3分の1近くを産する日本一の産地となっている[5]。近年は食の多様化や種子を取り出すなど食べにくさに加え、農家の高齢化等もあり、収穫量は2003年は9,240t、2008年は7,110t、そして2012年は3,240tと減り気味である。近年ではビニールハウスによる促成栽培も行われている。
日本国内の主な産地
  • 千葉県 …生産量国内2位。
  • 南房総市(旧富浦町)…長崎に次ぐ国内の主産地。房州びわとして知られ、「田中」が主流。
  • 兵庫県
  • 淡路市(旧北淡町)
  • 南あわじ市(旧南淡町)
  • 和歌山県
  • 海南市(海南市、旧下津町)
  • 湯浅町
  • 香川県
  • 高松市
  • 三豊町(旧仁尾町)
  • 愛媛県
  • 松山市
  • 伊予市
  • 長崎県 …生産量国内1位。
  • 長崎市(長崎市、旧三和町、旧野母崎町)…国内最大の産地。生産量は全国の約20%。
  • 熊本県
  • 天草市(旧五和町)
  • 大分県
  • 大分市
  • 鹿児島県
  • 垂水市
  • 鹿児島市(鹿児島市、旧桜島町)

など

利用[編集]

食用[編集]

果肉は甘く、生食されるほかに缶詰などに加工されるが、種子が大きく廃棄率が30%以上である。生食する場合の可食率は65〜70%でバナナとほぼ同等である。ゼリーなどの菓子、ジャム等にも加工される。 果実は咳、嘔吐、喉の渇きなどに対して効能を発揮する。[6]

薬用[編集]

葉は琵琶葉(びわよう)、種子は琵琶核(びわかく)とよばれる生薬である[1]。 「大薬王樹」と呼ばれ、民間療薬として親しまれてもいる。なお、以下の利用方法・治療方法は特記しない場合、過去の歴史的な治療法であり、科学的に効果が証明されたものであることを示すものではない。

葉には収斂(しゅうれん)作用があるタンニンのほか、鎮咳(ちんがい)作用があるアミグダリンなどを多く含み[2]、乾燥させてビワ茶とされる他、直接患部に貼るなど生薬として用いられる。 琵琶葉は、9月上旬ごろに採取して葉の裏側の毛をブラシで取り除き、日干しにしたものである[2]。この琵琶葉5–20 gを600 ccの水で煎じて、1日3回に分けて服用すると、咳、胃炎、悪心、嘔吐のほか、下痢止めに効果があるとされる[1][2]。また、あせもや湿疹には、煎じ汁の冷めたもので患部を洗うか、浴湯料として用いられる[1][2]。江戸時代には、夏の暑気あたりを防止する琵琶葉湯に人気があったといわれており、葉に含まれるアミグダリンが分解して生じたベンズアルデヒドによって、清涼飲料的効果が生み出されるといわれている[2]

種子は、5個ほど砕いたものを400 ccの水で煎じて服用すると、咳、吐血、鼻血に効果があるとされる[1]

葉の上にお灸を乗せる(温圧療法)とアミグダリンの鎮痛作用により神経痛に効果があるとされる。 ただし、アミグダリンは胃腸で分解されると猛毒である青酸を発生する。そのため、葉などアミグダリンが多く含まれる部位を経口摂取する際は、取り扱いを間違えると健康を害し、最悪の場合は命を落とす危険性がある。

果実酒[編集]

氷砂糖ホワイトリカーだけでも作れるが、ビワは酸味が非常に少ないので、果実のほかに皮むきレモンの輪切りを加えて漬け込むとよい[2]。 また、果肉を用いずにビワの種子のみを使ったビワ種酒は、杏仁に共通する芳香を持ち、通の間で好まれる。ビワ酒には、食欲増進、疲労回復に効果があるといわれている[2]

木材[編集]

乾燥させると非常に硬い上に粘りが強く、昔からの材料として利用されていた。現在でも上記の薬用効果にあやかり、乾燥させて磨いた物を縁起物の『長寿杖』と称して利用されている。激しく打ち合わせても折れることがないことから、剣道剣術用の高級な木刀として利用されている。

ビワにまつわる言葉等[編集]

  • 桃栗三年柿八年枇杷(は早くて)十三年
  • ビワを庭に植えてはいけない
ビワの木は広く根を張るので家が倒れるなど、いくつか言い伝えがある。

画像[編集]

断面 
ビワの実 
花と蕾 
新緑のビワ 

脚注[編集]

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  1. ^ a b c d e 貝津好孝 1995, p. 65.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 田中孝治 1995, p. 158.
  3. ^ "きごさい時記「枇杷(びわ)」".(NPO法人季語と歳時記の会). 2015年12月17日閲覧
  4. ^ "きごさい時記「枇杷の花(びわのはな)」".(NPO法人季語と歳時記の会). 2015年12月17日閲覧
  5. ^ 農林水産省作況調査 平成24年産 (PDF) 2013年7月19日閲覧
  6. ^ 池上保子「おいしくてクスリになる食べもの栄養事典」(日本文芸社・日文実用PLUS) 95ページ

参考文献[編集]

  • 貝津好孝 『日本の薬草』 小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、65頁。ISBN 4-09-208016-6
  • 田中孝治 『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』 講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、158頁。ISBN 4-06-195372-9

関連項目[編集]

外部リンク[編集]