コピ・ルアク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

コピ・ルアク(インドネシア語:Kopi Luwak)とは、ジャコウネコから採られる未消化のコーヒー豆のことである。「コピ」はコーヒーを指すインドネシア語、「ルアク」はマレージャコウネコの現地での呼び名である。コピ・ルアクの起源はインドネシアである。

日本では、コピ・ルアク、コピ・ルアックルアック・コーヒーと呼ばれることが多い。厳密には、コピ・ルワック、ルワック・コーヒーと発音する。独特の香りを持ったコピ・ルアクは、産出量が少ないその希少性により、高額で取り引きをされている。

産地と名称[編集]

コピ・ルアクはインドネシアの島々(スマトラ島ジャワ島スラウェシ島、バリ島)で作られている。このほか、フィリピンや南インドでも類似のコーヒーが採取され、フィリピン産のものは、「アラミド・コーヒー」(Alamid coffee、現地の言葉で「カペ・アラミド」Kape Alamid)と呼ばれる。

アメリカ合衆国では、「ジャコウネココーヒー」(英語:Civet coffee)や「イタチコーヒー」(英語:Weasel coffee)との俗称があり、日本で「イタチコーヒー」と呼ぶのも後者に倣ったものと思われる。しかし、ジャコウネコ科のジャコウネコとイタチ科イタチは異なる動物なので、イタチコーヒーという俗称は誤解を招きやすい。

かつて、ベトナムでは同種のジャコウネコによるものが「タヌキコーヒー」(英語ではやはり Weasel coffee)と呼ばれて市場に出ていたが、現在は流通経路に乗る機会が乏しくなり、人為的に豆を発酵させたものが「タヌキコーヒー」と称して販売されている。

特徴[編集]

インドネシアのコーヒー農園で栽培されるコーヒーノキの熟した果実は、しばしば野生のマレージャコウネコに餌として摂食される。果肉は栄養源となるが、種子にあたるコーヒー豆は消化されずにそのまま排泄されるので、現地の農民はそのを探して中からコーヒー豆を取り出し、きれいに洗浄してよく乾燥させた後、焙煎する。フィリピンではリベリカ種など複数種のコーヒーノキが栽培されており、カペ・アラミドの場合は結果的に数種類のコーヒー豆が自然にブレンドされると伝えられる。

コピ・ルアクやカペ・アラミドは独特の複雑な香味を持つと言われている。ジャコウネコの内に存在する消化酵素の働きや腸内細菌による発酵の働きで、コーヒーに独特の香味が加わる。なお、この腸内発酵により、カフェイン含有量は、通常のコーヒーに比べて、およそ半分に減ることが分かっている。

世界で最も高価なコーヒーとして知られており、500グラムにつき300から500米ドルの価格で販売されている。かつては主にアメリカ合衆国日本に出回っていたが、現在は供給量こそ限られてはいるものの、世界各地で入手できるようになった。その背景として、野生のジャコウネコを乱獲して檻に入れ、本来は肉食のジャコウネコに無理やりコーヒーチェリーのみを食べさせることで大量生産し、「WILD(天然もの)」と偽装して販売している実態を取材したドキュメンタリーが2013年9月にBBCで放映され、イギリスで大きな反響を呼んだ。視聴者からの抗議から、レストランでコピ・ルアクを提供していたハロッズは提供を取りやめた。

世界最大の消費地は日本や台湾韓国などのアジア諸国である[1]。ルアク・コーヒーは日本ではJAL、Garudaほか数社が、高級コーヒー豆として頒布を取り扱っている。コピ・ルアクやカペ・アラミドは、稀少価値の高さが魅力であり、素晴らしい味やフレーバーがあったとしても、コーヒー豆としての品質が最も優れているわけではない。その独特で豊かな香りや味のコクには高評価な反面、「ウンチコーヒー」 (poo coffee) と茶化す向きもある。

また、コピ・ルアク(カペ・アラミド)は、ルアクが食べるコーヒー豆の品質により、その味や風味が大きく左右される。ロブスタ種のコピ・ルアクよりもアラビカ種のものは味に優れ、より高値で取り引きをされている。一大観光地であるバリ島(インドネシア)で市販されるコピ・ルアクは、このロブスタ種である傾向がある。また、現地で市販されるコピ・ルアクは、観光客向けに大量生産されているため、鮮度や品質が低いことがある。

サルによるもの[編集]

アフリカにはモンキー・コーヒーなるものが存在するといわれる。

また、排泄物ではないが、サルが関与したコーヒーが台湾にある。台湾の高地で栽培されるコーヒーの木の豆を野生のタイワンザルが食べ、種子のみを吐き出したものを集めてコーヒーとしたものである。希少価値があるため、きわめて高額で取引される。

ゾウによるもの[編集]

タイでは、ゾウにコーヒー豆を食べさせた糞から集めたコーヒー豆で作るブラック・アイボリー(黒い象牙)というものがあり、コピ・ルアクより高額に取引される。

その他[編集]

1995年度には、「ジャコウネコの排泄物から集めた世界一高価なコーヒー」として、イグノーベル栄養学賞を授与された。

2002年から2004年にかけてのSARS発生によって、中国ではジャコウネコ科ハクビシンがウイルスを媒介するとして大量に駆除されたが、コピ・ルアクの需要や価格にはほとんど影響がなかった。

テレビドラマ怪奇大作戦 セカンドファイル』第1話では、「ネコにコーヒー豆を食わせ、糞から出てきた豆の臭いの素フラクタルを弄ってコピ・ルアクを偽造した」という話が出てくる。

2006年公開の映画かもめ食堂』、2008年公開の映画『最高の人生の見つけ方』にも登場し、後者ではキーワードとなっている。

脚注[編集]

  1. ^ Civet passes on secret to luxury coffee - BBC News