MRJ
三菱リージョナルジェット
- 用途:旅客機
- 分類:リージョナルジェット
- 設計者:三菱重工業、三菱航空機
- 製造者:三菱重工業(予定)
- 運用者
- 全日本空輸(予定)
- トランス・ステイツ航空(予定)
- 初飛行:2012年予定
- 生産数:10年間で1000機、最終的に3500機目標
- 運用開始:2014年予定
- 運用状況:開発中
MRJ (Mitsubishi Regional Jet)、三菱リージョナルジェットは、現在三菱航空機を筆頭に開発・製造が進められている小型旅客機。
現在の名称が決定する2007年2月以前の構想・計画段階では、「MJ (Mitsubishi Jet)」、「Next Generation RJ」、「環境適応型高性能小型航空機」などの名称で呼ばれていた。
目次 |
[編集] 概要
当初は三菱重工業を筆頭に日本製の小型旅客機として計画が開始された。2008年の全日空からの受注を受け、三菱航空機として事業を子会社化し、現在開発・製造が進められている。
経済産業省の推進する事業の一つであり、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が提案した環境適応型高性能小型航空機計画により、国の助成を受けて開発される。日本が独自の旅客機を開発するのはYS-11以来40年ぶりである。
2010年9月に発表された三菱航空機のリリースによれば、初飛行を2012年第2四半期に、初号機の納入は2014年第1四半期を予定している[1]。
[編集] 計画推移
[編集] 経産省の提案
MRJ計画の発端は、2002年(平成14年)8月末に経済産業省が来年度予算を獲得するとして発表した30席から50席クラスの小型ジェット機開発案「環境適応型高性能小型航空機」(同時発案に50人程度の小型航空機用ジェットエンジン開発「環境適応型小型航空機エンジン」)で、YSXまでの企業各社横並びの事業を取りやめ、積極的な企業が自己責任で開発を推し進めることを目的とした。
YS-11がターボプロップエンジンによるプロペラ機なのに対し、今回は噴射式のターボファンエンジン搭載の機体としたのには、1990年代半ばのリージョナル・ジェット (RJ) 革命がある。1990年代後半、カナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルが小型のRJを多数発表した。キャビンの騒音が少なく、速達性に優れるジェット機は、中小エアラインに注目され、販売数を急速に伸ばした。RJの成功により、同クラスのターボプロップ旅客機の販売数は急減、これらを生産していた欧米6社の内、4社が2000年代初めまでに旅客機事業から撤退[2]する事態となった。このため当時(2000年代初頭)はターボプロップ機市場が凋落する一方、RJ市場は今後も拡大の見込みが大きく、日本にも参入の余地があると考えられた。[3]
計画では、主題の通り環境面に配慮することが第一義とされ、機体は最先端複合材を多用して軽量化、空気抵抗を減らして高性能化、従来型よりも格段な燃費の向上で運航費を大幅に削減、最新の情報技術をふんだんに取り入れた操縦システムを採用して操縦を容易にするものとした。開発期間は2003年(平成15年)度から5年間、開発費は500億円を予定し、その半分を国が補助するとした。
この提案に逸早く注目した三菱重工業(以下、「三菱」と略す)は、同年秋には10人程度の調査チームをアメリカ合衆国に派遣し、市場調査を開始した。
2003年4月7日、経済産業省はプロジェクトの窓口となる新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)において、メーカーを招いての説明会を行い、4月末を締め切りとして希望者を募集するとした。計画案を提出したのは三菱のみで、5月29日に三菱を主契約企業として、富士重工業と日本航空機開発協会(JADC)が協力することとなり、富士は主翼など10パーセントを請け負った。機体開発に関しては宇宙航空研究開発機構 (JAXA) と東北大学が協力する。経産省は平成15年(2003年)度予算に10億円を獲得した。「環境適応型小型航空機エンジン」はIHIが受注している。
三菱は同年秋に概案作りを開始した結果、競合機と差別化を図るために特徴を盛り込むこととした。
- ヘッドアップディスプレイ (HUD) の採用
- 強化型対地接近警報装置 (EGPWS)
- 航空交通警報装置、衝突防止装置の搭載
- 3次元CADの試作デモによりコスト削減
計画では、「これらの新技術を2004年(平成16年)までに開発し、2005年(平成17年)までに試験を行う」「機体は2004年までに概観作りと勉強、2005年に構想図、次いで新技術の結果を受けた計画図、2006年(平成18年)までに製造図面を起こし、同年より機体の試作、組み立てに入る」「2007年(平成19年)に試作機をロールアウトさせ初飛行、2008年(平成20年)にかけて試験飛行を行い、2009年(平成21年)に型式証明を取得する」「それまでに受注活動を行い、09年までにローンチカスタマーを確保できない場合は量産しない」とした。また、2005年度に市場調査に基づく中間評価を行うとした。
2003年10月29日から11月2日まで開催された静岡空港航空フェアで、三菱は初めて「MJ」(三菱ジェット)縮小スケールモデルを展示し、意気込みを表した。
JAXAでは以下の新技術を開発、支援するとした。
- 人に優しい新世代コックピット技術
- 安全かつ軽量な機体設計に必要な超音速フラッタ解析技術
- さらに静かな機体を目指す空力騒音予測、低減技術
- 燃費削減に寄与する抵抗低減および予測手法
- 最新の高い安全基準に適合する客室設計技術
- 空力最適化に貢献する多機能風洞試験技術(PSP及びPIV適用、HLD試験技術)
- 空力最適化に用いる高精度CFD解析技術
- 重量・コスト低減を目指す構造実用化技術
経済産業省は2004年(平成16年)度予算に30億円、2005年(平成17年)度予算に40億9000万円を獲得し、開発を支援した。
2004年10月に横浜で開催された国際航空宇宙展 (JA2004) で、三菱は「環境適応型高性能小型航空機」の名前で、座席配列を左右4列としたキャビン・モックアップを展示した。これはエアラインに対する市場調査の結果によるもので、胴体直径はエンブラエル170よりも小さいが、天井はわずかに高い。この頃、座席数は30〜50席、あるいは60席とされ、構想の大型化が示唆された。
[編集] 構想の具体化
2005年5月の第46回パリ国際航空ショーで、三菱はこれまでの計画案と縮小モデルを Next Generation RJ として展示した。この年春ごろ、30席クラスでは成熟した市場に対して需要に限りがあり、また21世紀前半にはアジアで航空需要の急成長が見込める、といった理由から70席〜90席に規模を拡大した。これに伴い三菱内部の開発研究も小型機から大型機を対象とし、同年9月に中間評価を公表した。構想の再構築が必要となり、初飛行は2011年(平成23年)になる見通しとなった。
同年10月10日の朝日新聞朝刊によれば、YS-11や三菱MUシリーズのいずれも自力による販売で躓いていることから、三菱は包括的提携を行ったボーイングや、友好関係にあるボンバルディアの販売網を利用することも考慮していたという。
経済産業省は2006年(平成18年)度予算で開発助成金5億円を獲得した。
2006年5月31日に開催された経済産業省主催の民間機開発推進関係省庁協議会において、三菱はMJ開発状況についての説明を行い、この時点でYS-11を業務運用していた防衛庁(現防衛省)・国土交通省(航空局)・海上保安庁に対して、MJの購入を要望した。これに対して各省庁は「ニーズが合えば購入する」との認識を示したが、海上保安庁は同年11月にYSの後継としてDHC-8 Q300を導入すると発表(2009年配備予定)。12月には航空局のYSも海外機に置き換えられた。YSの後継計画を公表していないのは防衛省だけであったが、海上自衛隊機についてはアメリカ海兵隊が使用していたKC-130Rから空中給油機能を外し「C-130R」として6機導入する事を決定した。。
同年7月に開催されたファーンボロ航空ショーで、三菱は模型と計画概要を展示した。内容は以下のとおり。
- 基本となる90席機MJ-90、小型の70席機MJ-70、大型の96席機の計画
- MJ-90は全長35.0m、最大離陸重量42,100kg、離陸滑走路長1,820m、巡航速度マッハ0.78、航続距離3,600km
- MJ-70は総重量38,200kg、離陸滑走路長1,740m
- 航続距離はいずれも3,300~3,900kmに設定しているが、これは米国の国内線など比較的短距離の路線での採用を見込んでいる
- 主翼には炭素系複合材を利用して軽量化すると共に空気抵抗を低減させた機体形状を採用し、燃費を向上させる
- 乗り心地が良く、整備費が安く、キャビンおよび空港への騒音を低減させる
8月末の経産省審議会での三菱の報告は以下のとおりである。
- ジェットエンジンは、騒音公害によってジェット機進入が制限されている伊丹空港への乗入れをねらうために、プロペラ機並みの低騒音が重要視されている。2006年8月にロールス・ロイスと了解覚書 (MOU) を締結し、共同で検討作業が行われている。搭載が予定されているのは推力5,900〜6,750kgが2基で、RB282系列の派生型RB282-50(仮称)が有力である。7段の高圧コンプレッサーと2段の高圧タービンを備え、ファンの直径は1.3mを超える。
- GEと三菱の間でも交渉が行われている。想定されるエンジンはCF34-10クラスだが、三菱は同エンジンのコアを改め、空力的な再設計やホットセクションの材質改良など、大幅な改変を望んでおり、妥結には至っていない。エンジンについては2008年10月現在、プラット・アンド・ホイットニーGTF(PW1000G)を採用予定であることが公式サイトで公表されている。
- コックピットは三菱が主翼などを生産するボーイング787と同等のものの採用を考え、ロックウェル・コリンズとの交渉を行っている。
- 海外でのプロダクト・サポートは、小型機整備の国際網を持つスウェーデンのSAABに依頼することを同年7月に決定した。海外パートナーに言及するのは、輸出を前提としているためである。
- 伊丹空港のジェット機発着枠が削減される動きがある中、MJが国内で使いにくくなる可能性があるために日本航空や全日本空輸はMJ導入に慎重で、積極的な三菱・経産省と温度差がある
- MJの採算ラインは350機、利益確保には600機の生産が必要である
- 当初500億(後に600億)とされた開発費が1200億円に上ることとなったため、三菱は機体開発の特別目的会社を設立しようと商社や銀行に出資を求めたが、交渉は難航している
とされていた(記事内容の根拠についての記載はなかった)。
同時期、三菱は日本航空と全日空に対して、MJ実現まで他機リース料の肩代わりや代替機売却損の一部補填を提案し、売り込みを図った。しかし日本航空は翌2007年2月22日、国内線用の小型機としてエンブラエルERJ170を10機導入(オプション5機発注)すると発表した。これについては、「MJは打撃を与えられた」とする一方、「ERJはMJ導入までの繋ぎであり、三菱と日本航空の間で取引があった」とも一部でささやかれた。日本航空はこれを否定している。
経済産業省は平成19年度予算に開発助成金として18年度の4倍となる20億円を要求し、支援強化を誇示した。
[編集] 事業化までの動き
2007年2月、三菱はそれまでの仮称・三菱ジェット(MJ)を、間に「リージョナル」を加えたMRJ(三菱リージョナルジェット)とし、4月に本社の航空事業本部とMRJ開発の基点となる名古屋航空宇宙システム製作所を横につなぐ準備室も設置した。
同月、「第47回パリ国際航空ショー」(6月18日〜24日開催)において、エアラインの評判がよい実物大の室内モックアップ(長さ8.89m、幅2.90m、座席1列4席)を、日本企業として初めて、海外の航空ショーで展示することを決定し、6月11日に正式に発表した。合わせて6月11日のNHKニュース7では、三菱が公開したMRJのCG映像を放映すると共に、ライバル社より20パーセントの燃費削減、横4列の座席と薄いシートによる足元空間の確保などを謳い、12日の読売朝刊でも同様の記事が載った。また6月より自社公式サイトにMRJのページを開設し、航空ショー開催日の18日よりウェブ上でスペックとCG映像を公開した。同日に航空ショーと併せて、駐仏日本大使公邸において飯村豊駐仏大使主催によるレセプションが開かれ、三菱・経産省の関係者、各国エアラインの幹部など、航空宇宙産業関係者など267人が参加し、MRJプロジェクトの説明を行った。三菱の戸田信雄航空宇宙事業本部長は会見で、「需要数によるが、当初は年間生産15機で始め、最終的には3500機以上の生産を目指す」とした。開催中、三菱の展示には航空会社10から20社が訪問した。
経産省は6月13日に、2008年(平成20年)度から2011年(平成23年)度の4年度で、MRJの開発総額1200億円のうち3割程度(400億円)を資金援助する方針を明らかにした。秋には平成20年度予算に開発支援として102億円を計上し、また将来MRJ搭載する「革新的航空機用エンジン」の研究開発(海外製品への共同開発参加)にも予算要求を行った。MRJ海外展開に対しては、経産省所管の独立行政法人日本貿易保険が支援を検討している。
7月3日には、米ボーイングがMRJ事業主体への出資を検討している事が明らかになった。ボーイング日本法人社長ニコール・パイアセキは5月31日の記者会見で、MRJが狙う100席以下の市場分析でボーイングが協力している事を公表し、MRJがボーイングの手がけない100席未満の機体である事を指摘、三菱は同クラスでのパートナーとしつつも、「現時点でボーイングがMRJ開発・生産に投資することは無い」としていた。
10月9日、三菱は記者会見を行い、MRJ事業化への重要なステップとなる正式客先提案 (ATO; Authorization to Offer) を開始することを発表し、今後はMRJの本格的販売活動、パートナー候補先との調整、販売金融の仕組み確立、事業体制の整備などを進めていくとした。これらの結果を反映し、2008年3月に計画続行かどうかを最終決断をする。エンジンなど主要部品の調達先は9月までに決定、エンジンは既存機の改良で提案するGE・新エンジンを提案するRR(RB282系エンジン)・同じくP&Wの3社から1社に選定するとしていたが、この記者会見でP&Wの新型GTFエンジンの採用を発表した。
2008年に入ると、2月12日に国際的な航空産業・エアラインの業界3団体、ERA(European Regions Airline Association)、RAA(Regional Airline Association)、IATA(International Air Transport Association:国際航空運送協会)への加入を発表、2月14日にはシステム製作に参画する主要パートナー5社(油圧システム:米国パーカー・エアロスペース社、電源・空調・補助動力(APU)・燃料タンク防爆・高揚力装置・防火の各システム:米国ハミルトン・サンドストランド社、フライト・コントロールシステム:米国ロックウェル・コリンズ社および日本のナブテスコ株式会社、降着システム:住友精密工業)の指名を発表した。これらに先駆け、1月9日には読売新聞などで日航と全日空が合わせて数十機から100機程度を購入する方針を示していると報道された。また3月15日には朝日新聞が、トヨタ自動車がMRJ事業会社へ100億円程度の出資を検討していると報じた。3月28日には全日空が自社のサイトで合計25機(うち10機オプション)の発注を発表した。
リージョナルジェットの採算分岐点は350機といわれ、三菱は2012年(平成24年)の型式証明取得から10年間で、1,000機の販売を目指している。これは、70〜100席クラスのリージョナルジェットは、20年間で4,200機になるというJADCの需要予測による。
[編集] 事業化
三菱は全日本空輸の発注を受け、2008年3月28日に事業化を発表した。MRJの開発を行う専門事業者として、2008年4月1日付で100パーセント子会社の三菱航空機を設立した。三菱航空機は設計、形式証明取得、調達、取得、カスタマーサポートなどを担当し、試作、飛行試験、製造は重工の名古屋航空宇宙システム製作所が担当する。同製作所 主幹プロジェクト統括の後藤純一郎がMRJプロジェクトの主席プロジェクト統括に就任している。5月にはジャムコが生産パートナーに加わった。一方、これまで三菱が開発・生産に参加してきたボンバルディア CRJについては、MRJの直接の競合機となることから、生産部位を他社に譲渡することによりプロジェクトから離脱する事を決定した。
2010年9月15日に詳細設計の段階から製造段階に移行したと発表した[4]。
[編集] 機体
外観は円筒形の機体に後退翼、主翼下にエンジンを備えた一般的な小型ジェット旅客機と同じであるが、機首や主翼は空気抵抗を考慮した形状を採用している。当初、このクラスの機体では初めて主翼・尾翼を炭素系複合材料で製作し、他社の機体より大幅に軽量化することとしており、複合材の使用量は全体の3割程度となっていた(約5割を占めるボーイング787やエアバスA350よりも低いが、これは、複合材は伸びる力に強いが、衝突など押す力に弱いため、頻繁に離着陸することで地上での作業頻度の多いリージョナルジェットの特性を考慮してのことであった)が、後にアルミ合金製へ転換した。胴体は当初から、地上設備や車両との接触、また地方空港での整備性を考慮し、通常のアルミ合金を使用することとした。
燃費は機体形状の最適化や複合材による軽量化によって、従来の機体より2割削減した。また、国際民間航空機関 (ICAO) による最新の環境基準(チャプター4・CAEP6)を大幅に上回る性能で、従来の機体より低騒音かつ環境負荷を低減した機体としている。航続距離は、MRJ70/90LR型共に、欧州や米国の全域をカバーできる能力を持つ。
機内は「新しい快適さ」というコンセプトのもと、モダンでスタイリッシュな客室空間を計画した。前方扉と後方扉を左右同一のステーションに配置し、翼上の非常脱出口を廃したことから、柔軟かつ多様な座席レイアウトを可能とした。キャビンはほとんどの米国人男性が収まる値の1.88mを考慮して高さ約2mとし、大抵の欧米人男性なら屈まずに室内を移動できるようにした。通路幅・座席幅は共に46cm、座席配列は通路を挟んで左右2列ずつの横4列で中央座席は無く、乗客は容易に移動することができる(胴体断面は真円よりやや横に広げることで、居住性を高める計画だったが、真円に近い形状に改められた)。
座席はマツダ系列企業のデルタ工業と共同開発したスリムシートで、日本独自の三次元立体編物技術を使用し、従来のウレタン製座席よりも薄くすることが可能であり、座席の前後の間隔に余裕を持たせ、従来より足元の空間を広々ととれる。また体にかかる圧力を分散させ、通気性にも優れており、乗客はゆったりと快適に座れるとしている。オーバーヘッド・ビン(荷だな)はローラー付バッグも収納できる大きさである。便所は車椅子を用いた利用も可能である。
コックピットはボーイング787と同等のものの採用を検討しており、画面4面を用いたグラスコックピットとなる。当初、操縦桿はエアバス機などと同じくサイドスティック方式とすることも考えられたが、地方航空会社が扱いやすいよう、ボーイング機と同じ操縦輪方式となっている。
機体には日本の最新技術が結集しており、日本が得意とする複合材を始め、三次元編物のスリムシートは自動車技術を転用、機体の設計には国内開発のスーパーコンピュータを使用した。また、航空機開発は自動車以上に技術の裾野が広く、MRJから様々な産業への技術移転が期待されている。
エンジンにはP&Wのギヤードターボファンエンジン(GTF)タイプの新型エンジンPW1000Gを世界で初めて採用する。GTFはファンの駆動にギヤを介する構造で、従来型より相対的に大きいファンを用い、バイパス比を高めることが可能になる結果、燃費の向上が期待できる。P&Wでは、GTFは従来のエンジンより12%燃費が良いと説明している。MRJ向けのPW1000G最終組み立ては、三菱が日本国内で行うこととしている。
機体システムのパートナーは国内外から参加している。主要5社では、油圧システムに米国パーカー・エアロスペース社、電源・空調・補助動力(APU)・燃料タンク防爆・高揚力装置・防火の各システムに米国ハミルトン・サンドストランド(en:Hamilton Sundstrand)社、電子機器及びフライト・コントロールシステムに米国ロックウェル・コリンズ(en:Rockwell Collins)社、フライトコントロール・アクチュエーションシステムに日本のナブテスコ株式会社、降着システムに住友精密工業が、それぞれ担当する。また、ジャムコは複合材によるエルロンとスポイラーを三菱と共同で設計する。
最終組み立ては2010年以降に愛知県豊山町の三菱小牧南工場で行われる予定。なお、小牧南工場はかつてYS-11の組み立てを行った格納庫がある工場である[5]。
[編集] 仕様
| MRJ70STD | MRJ70ER | MRJ70LR | MRJ90STD | MRJ90ER | MRJ90LR | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 座席数 | 78seats(Typical single class) | 92seats(Typical single class) | ||||
| 全長 | 33.4m | 35.8m | ||||
| 全高 | 10.4m | |||||
| 全幅 | 29.7m | |||||
| 巡航速度 | ||||||
| 最大運用速度 | Mach 0.78 (956km/h) | |||||
| エンジン型式 | プラット・アンド・ホイットニーGTF(PW1000G)[6] | |||||
| エンジン推力 | 66.7kN(15,000lb) × 2 | 75.6kN(17,000lb) × 2 | ||||
| 航続距離(旅客満載時) | 1590km(990mile) | 2780km(1501mile) | 3410km(1841mile) | 1690km(913mile) | 2400km(1296mile) | 3300km(1782mile) |
| 最大離陸重量 | 36,850kg | 38,995kg | 40,200kg | 39,600kg | 40,995kg | 42,800kg |
| 最大着陸重量 | 36,200kg | 38,000kg | ||||
| 離陸滑走距離(最大離陸重量時) | 1,400m | 1,610m | 1,750m | 1,430m | 1,540m | 1,690m |
| 着陸滑走距離(最大着陸重量時) | 1,380m | 1,420m | ||||
STD:標準型、ER:航続距離延長型、LR:長距離型
このほか、米国での受注活動の結果から、100席以上のストレッチタイプを検討していて、平成30年以降に投入することを目標としている。
[編集] 発注状況
| 発注年月日 | 航空会社 | 引渡し(予定) | 種類 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| MRJ-70 | MRJ-90 | オプション | |||||
| 2008年3月27日 | 2014年 | 15 | 10 | ||||
| 2010年末 | 2014年 | 50 | 50 | ||||
| 2011年6月 | 2016年 | 5 | |||||
| 合計 | 0 | 70 | 60 | ||||
2008年(平成20年)3月27日、ANAより25機(仮発注10機を含む)の購入が発表された。これにより、YS-11でもローンチカスタマーだったANAがまたもローンチカスタマーとなり、MRJ開発に関与することとしている[7]。その後2009年(平成21年)10月2日には、日本国外の航空会社からの初受注となる、米トランス・ステイツ航空との間での購入の覚書(正式契約ではない)締結を発表した[8][9]。2011年(平成23年)2月1日には、正式契約を発表した[10]。
2011年(平成23年)6月16日、香港の航空機リース会社ANIグループホールディングスとの間での購入の覚書(正式契約ではない)締結を発表した[11]
日本航空(JAL)も導入を検討しているが、既にエンブラエル 170を発注していること、三菱のアフターサービスに対する説明が不十分であるという理由から、ANAと同時の発注は見送った。また、中近東の航空会社等で事前協議等が行われている模様である。
[編集] 発注を検討中のエアライン
[編集] 政府専用機としての発注
日本国政府が政府専用機として10機程度の発注を検討している[14]。
政府専用機のベースとして使用しているボーイング747-400は大型機であり、離着陸に最低2,500m以上の長大な滑走路が必要なため、離着陸できる空港の選択肢が少なく、滑走路の短い地方空港への離着陸が難しくなることもある。結果、目的地から離れた空港に着陸しなければならないなど運用に支障が出る場合がある。また、大型機は燃費の悪さや維持費の面で運用コストが高くなってしまう。そのため、燃費の良い小・中型機を導入し地方空港などに着陸できるようにして経済性と汎用性を高めることを目的としている。
MRJはボーイング737より小型で、滑走路が1,500m以上あれば離着陸できる見通しのため、運用できる空港の選択肢が多くなることが期待されている。
[編集] 主な競合機
MRJが発売される頃に市場に出ているライバル機をあげる。
- エンブラエル(ブラジル)
- ERJ170/175/190/195 : 70-110人乗り
- ボンバルディア・エアロスペース(カナダ)
- CRJ 700/900 : 70-90人乗り(※三菱は開発・生産に協力していたが離脱)
- DHC-8-400 : 70-78人乗り ターボプロップ機(※三菱は開発・生産に協力している)
- スホーイ(ロシア)
- スホーイ・スーパージェット100 : 68-105人乗り(※ボーイングが販売・顧客管理に協力している)
- アントーノフ(ウクライナ)
- An-148 : 最大75人乗り
- AVICI(中華人民共和国)
- ARJ21(700型) : 78-90人乗り
- ATR(フランス・イタリア)
- ATR 72 : 64-74人乗り ターボプロップ機
[編集] 他社の動向
富士重工業では、三菱の開発計画が始まったころより、この開発に協力すると共に、三菱の計画が一段落する2010年(平成22年)を目処として、10から15席程度の小型旅客機の開発を行うと発表した。三菱の計画見直しと同時期に、この計画は8から10席に規模が縮小された。
川崎重工業では、三菱の開発計画が始まったころに、独自の125席クラス旅客機の開発を行うかどうか、2007年(平成19年)に可否を決定するとした。この旅客機には、次期固定翼哨戒機の主翼など主要技術を転用するとしている。また、2007年7月には次期輸送機を転用した民間貨物輸送機を、2012年を目処に事業化する方針を固めた。
21世紀に入って本田技研工業(ホンダ)が航空産業への参加を発表した。ホンダは2012年を目処にビジネスジェット機「HondaJet」(乗客: 5名または6名)のデリバリー開始を予定している。
[編集] 脚注
- ^ MRJ製造段階に移行三菱航空機ニュースNo.16
- ^ フォッカー(1996年に倒産。)、SAAB(1999年に旅客機部門から撤退。)、BAE(1996年にターボプロップ機から撤退。その後2001年に旅客機部門からも撤退。)ドルニエ(1996年にフェアチャイルドと合併フェアチャイルド・ドルニエとして事業の継続を計ったが2002年に倒産。)の4社。SAABを除く3社はRJも造っていた。又当時ターボプロップ機だけを作っていたデ・ハビランド・カナダはその市場に悲観したボーイングに見捨てられた後、1992年にボンバルディアに買収されRJも生産する事によって生き残りを図った。独立独歩を保ったのはEADS傘下のATRのみである
- ^ その後2000年代後半になると原油価格が高騰し、燃費性能に優れたターボプロップ旅客機が再評価されるようになった。ターボプロップ機は同サイズのRJと比較して30%程度燃費性能に優れこの時期燃費にシビアにならざるをえなくなった各エアラインに支持されて販売数を回復させつつある。 TIME "Giving Props to the New Turbos." Aug. 23, 2007
- ^ 三菱「MRJ」、製造段階に移行 - フジサンケイビジネス 2010年9月16日
- ^ YS11格納庫でMRJ生産 三菱重工・小牧南工場 中日新聞2009年4月23日
- ^ “P&W begins PW1217G ground tests [プラット・アンド・ホイットニーがエンジンPW1217Gの地上試験を開始]” (英語). Flightglobal.com. (2011年5月17日) 2011年5月19日閲覧。
- ^ 次世代のリージョナルジェット機MRJの導入を決定(2008年3月27日)
- ^ 米国トランス・ステーツ・ホールディングスとMRJ 100機購入に関する覚書を締結(2009年10月2日)
- ^ 総合/国産「MRJ」米国の空へ 三菱航空機、海外から100機受注 - フジサンケイビジネス 2009年10月3日
- ^ 米トランス・ステーツ、三菱のジェットMRJを最大100機発注 - IBTimes(アイビータイムズ) 2011年2月1日
- ^ ANI Group Holdings Ltd.とMRJ 5機購入に関する覚書を締結~アジア市場に新たな一歩~
- ^ 開発中のMRJ、カタール航空が導入検討 TBS News(リンク切れ)
- ^ カタール航空、MRJ購入示唆、三菱重工側と近く交渉。(2010/6/30)
- ^ 国産初の小型ジェット旅客機MRJ 政府が10機購入へ - MSN産経ニュース
[編集] 参考文献
- 『国産旅客機が世界の空を飛ぶ日」 - 前間孝則(講談社)ISBN 4-06-212040-2
- 『航空ファン』誌(文林堂)各号
- 『J-Wings』誌(イカロス出版)各号
[編集] 関連項目
- YS-11 - YX - YXX - YSX
- MU-2 - MU-300
- FA-200 - FA-300
- 航空機メーカーの一覧
- リージョナルジェット