たけしの挑戦状
ジャンル | アクションアドベンチャー |
---|---|
対応機種 | ファミリーコンピュータ(FC) |
開発元 |
タイトー セタ |
発売元 | タイトー |
ディレクター | 福津浩 |
デザイナー | ビートたけし |
プログラマー | 森永英一郎 |
人数 | 1人 |
メディア |
1メガビット+64キロRAM ロムカセット[1] |
発売日 |
![]() |
対象年齢 | CERO:B(12才以上対象) |
コンテンツ アイコン |
暴力 犯罪 |
売上本数 | 80万本[2] |
その他 | 型式:TFC-TC-5300 |
『たけしの挑戦状』(たけしのちょうせんじょう)は、1986年(昭和61年)12月10日にタイトーが発売した、ビートたけし監修のファミリーコンピュータ用ゲームソフト。会社員である主人公が南海の孤島に眠っているという財宝を探しに行くという内容で、パッケージや取扱説明書に書かれていないがゲーム内では「ポリネシアンキッド 南海の黄金」というサブタイトルが付けられている事が分かる。
雑誌『ファミコン通信』でのクソゲーランキングでも1位を獲得するなど、攻略本なしではクリア困難なゲーム内容から、レトロゲームにおける「クソゲーの代名詞」として語られることが多い。
概要[編集]
当時ファミコンに熱中していたビートたけしが「今までにない独創的な発想を入れたい」という意図が反映され数々の斬新な内容が盛り込まれている[3]。キャッチコピーは「謎を解けるか。一億人。」でソフトのパッケージ表面には「常識があぶない。」(販促用のポスターでは「あぶない」の「あ」の字が鏡文字になっている)と称し、裏面ではたけし本人が「今までのゲームと同じレベルで考えるとクリアー出来ない」とコメントしている、広告には「成功確率 無限大数分の1」と書かれていた。
CMは、たけしが『雨の新開地』を歌うシーンと、たけしがIIコンのマイクに向かって「出ろ!!!」と言い、宝の地図が出てくるシーンの2パターンがあり、どちらのCMもゲーム攻略のささやかなヒントになっていた。
しかし、本作の発売前日の1986年12月9日に、たけし本人とたけし軍団の一部メンバーによる「フライデー襲撃事件」が発生。本作は予定通り発売されたが再販分が同事件が風化された90年まで発売が延期され、先述の放送されていたテレビCMは放映中止となった。それに対して、雑誌の攻略記事や広告は引き続き掲載された[注 1]。
パッケージには「ビートたけし、ファミコンソフト第1弾!」と書かれており、のちに第2弾の『たけしの戦国風雲児』(1988年)が同社より発売されている。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
ゲームシステムはサイドビューのアクションゲームだが、ストーリーはアドベンチャーゲームのように選択肢によって進行していくため、ジャンルとしてはアクションアドベンチャーゲームと言える。また一部シーンにはシューティングゲームも含まれている。
日本の都市部、およびそこにある街が舞台らしいが、具体的な場所やそのモチーフはほとんどないうえ、雰囲気は極めて退廃的であり、主人公は薄汚れた町並みの中に住む貧しいサラリーマンである。台詞は汚く暴力的な言葉遣いが多く、店や事務所などの看板は極道的な内容である上、路上にはヤクザが彷徨き、敵対的で主人公に殴りかかってくる[注 2]。
日本にいる時はバーでテキーラを飲むこと、ひんたぼ島では宿泊する(部屋を選ぶことができ、回復できる量も異なる)事によって体力が回復する。所持金は通行人を倒したり、特定の条件を満たすと手に入る。その他にコース中のある決まったところでしゃがめば、ハートが現れるのでそれでも回復できる。また、ライフがなくなってもすぐにAとBを3回同時に押せば復活できる裏技も存在する[注 3]。
BGMの種類は少なく、メインテーマがエンディングまで含めたゲーム内のほぼ全編に渡って絶え間なく流れ続けている。
TAITO CLASSICS版は、画面が16:9対応となっている他(例として、ゲームオーバーの画面における献花が4:3対応のファミコン版並びにバーチャルコンソール版は4本に対し、TAITO CLASSICS版は8本に増加している。ただし、一部シーンは4:3のままであるためサイドカットとなる)[4]、ファミコン版とバーチャルコンソール版に新ステージ「あめりか」などの新要素が加えられており、タイトーのサウンドチームであるZUNTATAによるゲームミュージックの新曲が追加されている[5]。
クリア条件[編集]
ふとしたことから宝探しの情報を聞き出した主人公。本格的な宝探しに行くためには、まず身の周りのしがらみを取り払い、周到な準備をする必要があると思い立つ。「妻に離婚届を出す」「会社に退職届を出す」「地図を渡した老人を倒す」「カルチャーセンターで様々な技能を修得する」などがそれである。条件を満たさないでひんたぼ島に行くと、突然妻または社長が現れて日本に強制送還されたり、宝の山の前で尾行してきた老人に宝を横取りされて即ゲームオーバーになる。
マイク機能[編集]
このゲームは2Pコントローラのマイク機能を様々な場面で使う。主なものとして、カラオケをしたり、裏技として、
- パチンコの最中にIIコントローラーのマイクで「でねぇぞ」と叫ぶ
- 宝の地図を読み込む際に『水に浸してから5分経過後から10分経過する前に、または日光に1時間以上さらしてからIIコントローラのマイクに向かって「出ろ!!!」と叫ぶ』
など通常では思い付き難い操作が要求される[6][3]。また、住人に話しかけることもでき、稀にヒントを貰えることがある。
ただし声を判定しているわけではないため、「マイクに音が入力されている」状態なら同じように判定される。
シューティング[編集]
ひんたぼ島より先の島に行く時にハンググライダーを使ってシューティングをする場面がある。しかし、途中で現れる潮風に操作を妨害されやすく、画面上に弾は1発しか出せない上、敵に当たると即ゲームオーバーと独特の操作性・ルールのため非常に難易度の高いものとなる(リゾートセンターでハンググライダー以外に飛行機・熱気球・船・スキューバダイビングといった他の手段も選べるが、着陸などが出来ないため結局クリア不可能である)[3]。
カラオケ[編集]
スナックのカラオケで実際に2Pコントローラーのマイクを使って歌い高評価を得ないと進めないイベントがあるが、ニューファミコンではマイク機能が削除されている。マイク機能を使用した謎解きを入れた他のゲームでは、セレクトボタンを用いることでマイク機能の代用としたものが多いが、本作に関しては、IIコントローラーの下とAボタンを押す(バーチャルコンソール版ではWiiリモコン裏側についている「B」ボタンで代用できる)ことでマイク機能を使用しているのと同じ判定がなされる。これは旧型のファミコンでもマイク機能を使わずに同様の操作を行えばマイク機能を使用しているのと同じことになるためである。なお、マイクで音を判別しているとはいえ、後のゲームのように音声認識であったり、音程を判別する機能はないために、実際に歌唱力がなくともメロディの部分で息を吹きかけるだけで歌ったことになる。そのため、判定は曖昧であった[7]。カラオケ曲のレパートリーは5ジャンル/計25曲あるが、実際に歌えるのは『えんか/あめのしんかいち』、『どうよう/はとぽっぽ』、『みんよう/おきなわゆんた』、『ぽっぷす/ねこにゃんたいけん』の4曲のみで、それ以外の曲は選択しても「その曲はありません」と断られる(『みんぞくおんがく』のジャンルに至っては、歌える曲が1曲も無い)。「はとぽっぽ」以外の3曲は、いずれもこのゲームのオリジナル曲である。
ゲームオーバーについて[編集]
このゲームはゲームオーバーの画面が主人公の葬式になっていることで知られている。ただし、ライフがなくなる以外にもゲームオーバーとなるイベントが非常に多い。以下にその例を示す。
- 飛行機の行き先を間違える(南太平洋以外のルートを選ぶ)または宝の地図を持っていない状態で南太平洋に向かうと、乗っていた飛行機が突然爆発し「てろか?じこか?ひこうきはなぞのくうちゅうばくはつをとげた」と表示される[8]。
- シューティングの際に鳥やUFOなどの敵、陸地の山に接触する(UFOや戦闘機の弾に数発当たったり、セスナや熱気球など着陸できない乗り物で陸地にぶつかった場合も同じようなことになる)。
- シューティングの際に一番目の島に着陸する。ゲームオーバーの画面が表示されるわけではないが、何もすることができず、戻ることもできないため実質的に詰みであり、リセットするか電源を切るしかない。
- 原住民の家で釜に入れられ、「しゃみせんをひく」「とびかかる」以外を選択してしまうと釜茹でにされる。この時に「しゃこうだんすをおどる」を選択すると、「きにいった むすめをもらって このむらに すんでくれ」と原住民の娘との結婚を勧められ、その後「さようならーーーーーーー」「りせっとぼたんをおしてください」と表示される。この場合は通常のゲームオーバー画面は表示されないが、通常のリセットするか電源を切る以外全ての操作ができなくなるため事実上ゲームオーバー(バッドエンド)である。
- 先述通り、宝の地図を渡した老人を倒しておかないと、エンディング直前の宝の山の前で「ははは ばかなやつめ おまえのあとをつけてきたのだ たからはわしのものだ しねっ」と老人に宝を横取りされて、突然ゲームオーバーになる。
- こんてにゅうやで「おやじをなぐる」を選択したり、入力するパスワードを間違える。
パスワード[編集]
このゲームはセーブ機能はないが、タイトル画面で右に進んだ先にある「こんてにゅうや」で平仮名・数字・記号で構成された20桁のパスワードを入力することで、ゲームをある程度進めた状態で始めることができる。また、ポーズ画面で「おわる」を選択して、そこに映っているパスワードを入力すれば、前回終了した時の状態からスタートできる。こうしたパスワード以外に、特定の文字のみで入力すると、あるステージからスタートできる。代表的なものとして「すきすきすきすきすき すきすきすきすきやき」があり、これを入力するとひんたぼ島から開始できるが、クリアに必要なハンググライダーの資格を持っていないためクリアすることができない。また厳密にはパスワードではないが、タイトル画面でパンチを約3万発程度繰り出すことで、ゲームクリア直前の状態から開始できる。
なお、パスワードを入力する以外に「おやじをなぐる」を選択すると、おやじが「ぎゃー ひとごろしーー」と叫び、ライフが突然ゼロになって気絶し、また間違ったパスワードを入力すると「ぱすわーどがちがいます」と言われたとたんに気絶してしまい、即ゲームオーバーとなる。
設定[編集]
ストーリー[編集]
どこにでもいるごく普通のサラリーマンである男は、仕事を終わればパチンコをしたり、酒を飲んだりと好き勝手に楽しんでいた。ある日、常連のスナックでいつものように酒を飲んで、カラオケを歌っていると、ヤクザが絡んできたので追い払った。すると、怪しい老人が現れて宝の地図を男に渡す。宝の地図を手にした主人公は勤め先の会社を辞め、妻と離婚する。そしてあらゆる資格を取得し、遠い南の国へ。さらに主人公はハンググライダーで空を飛び、未開の島へとたどり着く。原住民や危険な地形を乗り越えて、冒険の末、男はついに宝を発見するのだった。
舞台[編集]
日本・クレイジーシティ[編集]
- 極東興業
- 主人公が勤める会社。へそくりがある。
- カルチャークラブB.G
- あらゆる資格が取得できる。
- パチンコ玉玉デル
- パチンコができる。「パ」の文字が傾いており、「玉」の文字が他の文字より大きく書かれている。
- トラベル玉川
- 旅券を販売している。「ベ」の文字を押しのけて「ブ」の文字が挿入されている。
- 映画館
- つまらない映画「やくざvsやくざ」を上演している。特定の席に座るとお金を落としてしまう。
- カラオケスナック「あぜ道」
- 酒を飲んだり、カラオケができる。
- バーバー小森
- 理髪店。カットを頼むと店員の手元が狂ってダメージを受ける。画面上部の場所表示部分に「ばばーこもり」と表示される。
- 自宅
- 主人公の自宅。妻と子供がいる。
- 東興銀行
- 預金を引き出す事ができる。
- 新成田国際空港
- 海外へと向かう事ができる(ファミコン版並びにバーチャルコンソール版は南太平洋のみ、TAITO CLASSICS版は南太平洋の他にも、アメリカへ行くことも可能)[4]。
南太平洋[編集]
- BANK
- お金を預けたり、両替したりする事ができる。へそくりがある。
- MIYAGE
- 土産物を買う事ができる。
- EQUIPMENT
- 装備を買う事ができる。
- RESORT CENTER
- ハンググライダーや気球、セスナ、船に乗ったりスキューバダイビングをする事ができる。
- リョンガ島・メロネン島・タンヒョー島・チョバリン島
- ハンググライダーなどでの飛行時に登場する島々。島の名は攻略本に掲載されたものでゲーム本編では登場しない。
- 赤い国
- ハンググライダーなどでの飛行時、4つ目の島の先にある国。赤を基調とした旗や最高指導者らしき人物の肖像画が大きく掲げられており、恐らく旧ソ連がモデル。ただし着陸は不可能で、行き着いたが最後ゲームオーバー確定。
- 土人の家 / 現地の家
- 原住民の住処。バーチャルコンソール版並びにTAITO CLASSICS版は、「どじんのいえ」から「げんちのいえ」に表記が変更されている。ただし、住民の外観を始めとするグラフィックに変更は無い。
- 隠れ家
- 残留日本兵の住処。
- 洞窟
- 宝が隠されている場所。
ひんたぼ語[編集]
このゲームには、「ひんたぼ語」という独自の言語が登場する。ひんたぼ語とは、このゲームに登場するひんたぼ島の住民が操る言語で、例えば「あ→い」「そ→た」というように日本語の仮名を一文字ずつずらすというように、シーザー暗号をかけたような言語である。ただし、濁点および半濁点も一文字と数え、数字についても1ずつずらす。また「ん」以降は「ん→っ→ゃ→ゅ→ょ→?→゛→゜→×→ー→あ」の順になる。「ぁぃぅぇぉ」「ゎ」「ゐゑ」はゲーム中に文字が存在しない。インターネット上に存在するひんたぼ語変換ツールでは便宜上変換しないように処理されている。TAITO CLASSICS版は「ひんたぼ語検定」がある[5]。
例1:たけしのちょうせんし゛ょう → ちこすはつ?えそっす゜?え 例2:ひんたほ゛こ゛ → ふっちま゜さ゜ 例3:ひゃっかし゛てん → ふゅゃきす゜とっ 例4:うぃきへ゜て゛ぃあ → えぃくほ×と゜ぃい
例4は仕様により、「ぃ」が変換しないようになっている。
カルチャーセンターでひんたぼ語を習ってからひんたぼ島に行くと普通の日本語で表示されるため、上記の文章は登場しない。
移植版[編集]
2009年3月31日よりWiiのバーチャルコンソールで配信されていた(2019年1月をもってWiiショッピングチャンネルのサービス自体が終了したことに伴い、現在は入手不可)。バーチャルコンソールにおいて実在タレントをモデルにしたタレントゲームを、タレント本人または芸能事務所より許諾を得たうえで配信するのは本作が初である[9]。2017年8月15日よりTAITO CLASSICSの2作目ソフトとしてiOS並びにAndroidにて配信開始[10]。TAITO CLASSICS版は、こんてにゅうやで課金により難易度変更が可能となっており、ファミコン版とバーチャルコンソール版より難易度が異様に高い「はーどもーど」と、主人公がダメージを受けなくなり、かつファミコン版とバーチャルコンソール版より難易度を下げた「むてきもーど」を選択できる[5]。
他機種版のコピーライト表記は、バーチャルコンソール版が「©TAITO CORP. / ビートたけし 1986,2009」、TAITO CLASSICS版が「©TAITO CORP. / ビートたけし 1986,2017」となっている。
No. | タイトル | 発売日 | 対応機種 | 開発元 | 発売元 | メディア | 型式 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | たけしの挑戦状 | ![]() |
Wii | タイトー セタ |
タイトー | ダウンロード (バーチャルコンソール) |
- | |
2 | TAITO CLASSICS たけしの挑戦状 |
![]() |
iOS Android |
タイトー セタ |
タイトー | ダウンロード | - |
開発[編集]
本作の企画経緯については、様々な経緯と説明が複数存在する。タイトー広報によれば、当時ゲームに興味を持っていたたけし側から企画が持ち込まれたことが発端となっている[11]。一方別の説明では、タイトー側がたけしを題材としたタレントゲーム制作を企画し、『オレたちひょうきん族』(1981年 - 1989年)のキャラクターを生かした横スクロール型シューティングゲームを予定していたが、たけし側の了承を得るために話を持ち込んだところ、たけしが「作りたいゲームがある」と主張したとされる[12]。また外部発表では『痛快なりゆき番組 風雲!たけし城』(1986年 - 1989年)のゲーム化作品とされており、ゲーム雑誌にも「(仮称)風雲!たけし城」と記載されていた。
制作中のたけしの関与についても記録はまちまちで、たけしが飲み屋で酔っ払った勢いで言った内容がそのままゲーム化されたもの、などとテレビ番組などでは解説される[2]。またビートたけし司会のテレビ番組『ビートたけしのこんなはずでは!!』(2003年 - 2004年)2003年7月12日放送分では、たけしは「太田プロの近くの喫茶店で一時間話しただけのゲームだぜ」などといい加減な企画だったことを語り「どうも失礼致しました」などと述べている。
しかし、チーフプログラマの森永英一郎によると、本作ではたけしは積極参加しており、「ビートたけしと新宿の有名ホテルの最上階で何度も頭を突き合わせて作りました。大学ノート一杯にかかれた彼のアイディアはとても印象的でした」と自身のサイトで語っている。「こんなに難しくしたらゲームバランスが崩壊する」と忠告はしたもののたけしはそれを受け入れなかったという[13]。
また開発者のひとりである福津浩によれば、当時たけしが「ゲームにハマっていた」ということもあり、「たけしが作ったゲームだが、たけしが出てこない」などと、構想を熱く語っている[14]。通常この様な企画では打ち合わせなど一回も行われないものであったのであるが、ホテルの部屋を借り切るなどして3回行われ、やはりたけしも積極的に介入していたとのことである[15]。開発陣もたけしのアイディアを次から次へと盛り込んでしまった結果、規格外のゲームに仕上がる結果となってしまった。開発陣としては、このまま発売してしまってはまずいことになるとの自覚もあったが、引くに引けない所に来ていた[16][注 4]。
たけしが希望したにもかかわらずハードウェアの制約や子供向けのテレビゲームには向かないという理由で、不採用になったり当初の意図より無難に改変されたりしたものが多数あったものの、「とにかくビートたけしさんが言っているのだから」と許す限りのアイデアを片っ端から盛り込んだ結果、プレイヤーを困惑させる不条理なゲームとなった。後述の記事にあるように「ビートたけし」のネームバリューでソフトを買った購買者の期待を突き落とす出来となり、アイデアを提供した本人は「(打ち合わせ当時の)詳細を全く覚えていない」と語っている。
2016年4月24日に放送された『ビートたけしのいかがなもの会』において、有野晋哉が本作を取り上げて上記の「酔っ払った勢いで言った内容がそのままゲーム化されたというのは本当か」とたけし本人に直接聞いたところ、たけしは「全部本当の事」と認めている。
評価[編集]
評価 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ||||||||
|
- パッケージどおりのとても常識では考えられないような仕様や謎解きなど不条理ともいえる内容が多く、雑誌『ファミコン通信』でのクソゲーランキングでも1位を獲得しており、雑誌『ゲーム批評』やクソゲーを取り上げた書籍などでクソゲーの代表格とされることが多い。
- 一方で、結果として印象深い作品ともなり、2007年の東京ゲームショウの「レトロゲーム・アワード2007」では「ゲーム秘宝館・殿堂入りゲーム」となる。
- また、不条理さは意図的に組み込まれたものであり、現在では「北野映画に通じるところがある」「早すぎた『グランド・セフト・オート』」など、ゲーム内容を再評価する声もある[11]。
- たけしは2009年に発売した自著『漫才』の中で、相方であるビートきよしが「攻略法を教えてくれ」と電話してきた事を明かしている。
- 発売から30年経った2016年12月7日に開催された『龍が如く6 命の詩。』(セガゲームス)の完成披露会でたけしは、「子供が泣き出して親がクレームつけて、社会問題になった」「クレームは相当来た」と明かしている[17][18]。
- 関係者が語ったところによると、売上はおよそ80万本と当時の『ドラゴンクエスト』並の売り上げを記録した[2]。たけし及びたけし軍団による「フライデー襲撃事件」が発売日前日に発生し、再販分は同事件が風化された90年まで4年近く延期されたことを考慮すれば、驚異的な売上だったと言える。
- 『ファミリーコンピュータMagazine』の読者投票による「ゲーム通信簿」での評価は以下の通りとなっており、15.97点(満30点)となっている[1]。また、同雑誌1991年5月10日号特別付録の「ファミコンロムカセット オールカタログ」では「ビートたけし作の超難解AVG」、「現代社会を風刺したAVG。パチンコ、カラオケ等ゲーム的にはバラエティーに富んでいるものの、奇想天外というより”突拍子も無いゲーム”」であると紹介されている[1]。
項目 | キャラクタ | 音楽 | お買得度 | 操作性 | 熱中度 | オリジナリティ | 総合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
得点 | 2.76 | 2.44 | 2.34 | 2.64 | 2.62 | 3.17 | 15.97 |
舞台[編集]
劇団東京ミルクホールは2012年に当ソフトにちなんだ『たけしの挑戦状』という公演を行った[19]。ポスターは当ソフトのパッケージがモチーフとなっている。
またヨーロッパ企画は、2020年4月に演出:上田誠、主演:西野亮廣(キングコング)により「たけしの挑戦状 ビヨンド」のタイトルで上演を予定していた[20]が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の影響で全公演中止となった。
備考[編集]
- 後年『たけしの戦国風雲児』(1988年)も同じくタイトーより、また『ファミリートレーナー 突撃!風雲たけし城[注 5]』(1987年)がバンダイより発売される。
- たけしのネームバリューから当時の子供にも人気があり、『わんぱっくコミック』(徳間書店)でコミカライズされたり、『ファミコンロッキー』(1985年 - 1987年)で対決テーマのソフトに選ばれたりしたこともあった(単行本未収録)。
- 街の映画館では「やくざ 対 やくざ」という後にたけしが本名名義で監督する『アウトレイジ』(2010年)などのヤクザ映画を予言したかのような映画が上映されている。
- 『ゲームセンターCX』では、記念すべき1回目のゲームとして本作が選ばれており、当番組のパーソナリティである有野晋哉がこのゲームソフトに初回放送を含め2度挑戦し、クリアしている。また、当番組のメインコーナーである「ゲームセンターCX 有野の挑戦」、関連ソフトである『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』ならびに『ゲームセンターCX 有野の挑戦状2』の作品名は、このゲームのタイトルを捩っている(なお、『有野の挑戦状』のゲームの内容自体は、いずれも本作との関連性は特に無い)。このソフトのエンディングから長時間待つと、有野が当ソフトにちなんだセリフを言ってくれるなどの特典がある。他にも、『ゲームセンターCX』の関連書籍は、当ソフトの攻略本の出版を行った太田出版から発売されている。
- たけしと同じく『龍が如く6 命の詩。』に出演した宮迫博之と『龍が如く』シリーズの総合監督である名越稔洋もこのゲームソフトでプレイしていたことを明かした。名越は「最後まで意地でやったが、つらかった」と語っている[17][18]。
- 2017年のエイプリルフールにおいて、タイトーは2017年8月に配信を開始したTAITO CLASSICS版の宣伝を兼ねて『たけしの挑戦状VR』を発売するというジョークを流した。VRの略は、Virtual Reality(仮想現実)の略ではなく、VIP Realityの略である。ジョークの内容は、ファミコン版の内容がリアルに体験できるというものである[7]。
- 2017年9月26日には、発売から31年にして初の公式グッズが発売された[5]。
関連作品[編集]
- 攻略本
- 『たけしの挑戦状 ファミコンゲーム虎の巻』(太田出版) ISBN 4900416177 1986年12月発売
- 『たけしの挑戦状 ファミコンゲーム虎の巻Ⅱ 完全解決版』(太田出版) ISBN 4900416193 1987年3月発売
関係者インタビュー[2][16]によると、当時本作の攻略本を制作した太田出版には、「攻略本を読んでも解けない」との苦情電話が、問い合わせのものと合わせて一日400件も殺到したという。対応に追われ辟易した当時の編集者は、「担当者は死にました」と虚偽の回答をしていたそうである。1冊目がほとんど攻略本として役に立たなかったことから「攻略本の攻略本」として2冊目が出版される[6][21]。この本の後書きで、たけしが「これで解けないからといって、間違っても傘と消火器を持って太田出版に殴りこまないように」と自らが起こしたフライデー襲撃事件をネタにしたコメントを書いている。なお、2冊目発行当時、たけしは既に謹慎中でメディアから姿を消していた時期だった。
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ a b c d 「5月10日号特別付録 ファミコンロムカセット オールカタログ」『ファミリーコンピュータMagazine』第7巻第9号、徳間書店、1991年5月10日、217頁。
- ^ a b c d フジテレビ721『ゲームセンター「CX」』第1シーズン第1回
- ^ a b c マイウェイ出版『死ぬ前にクリアしたい200の無理ゲー ファミコン&スーファミ』 (ISBN 9784865119855、2018年10月10日発行)、27ページ
- ^ a b スマホ向けアプリ「たけしの挑戦状」は16:9に対応。なんと新エリアも追加4Gamer.net 2017年7月31日
- ^ a b c d 「たけしの挑戦状」から公式グッズが登場!本日9月26日(火)より販売開始!タイトー 2017年9月26日
- ^ a b M.B.MOOK『懐かしファミコンパーフェクトガイド』27ページ
- ^ a b たけしの挑戦状VRタイトー公式サイト
- ^ スマホ版では「てろか?」の部分は「じけんか?」に差し替えられている。
- ^ 「あんなクソゲーをまただすタイトーはえらい!」、『たけしの挑戦状』再リリースにビートたけしから愛のこもった賛辞!(ファミ通.com、2009年3月26日)
- ^ 正気か 伝説のクソゲー「たけしの挑戦状」がスマホで復活決定ねとらぼ 2017年4月5日
- ^ a b 「“北野映画”に通じる先見性があった」伝説のクソゲー“たけ挑”制作秘話(ORICON STYLE、2009年8月8日)
- ^ 超クソゲー 1998, pp. 10–12.
- ^ 自己紹介
- ^ 超クソゲー 1998, p. 12.
- ^ 超クソゲー 1998, pp. 13–14.
- ^ a b 超クソゲー 1998, p. 8
- ^ a b ビートたけし:“伝説のクソゲー”「たけしの挑戦状」を回顧まんたんウェブ 2016年12月7日
- ^ a b 豪華俳優陣がずらり勢揃い! 「龍が如く6 命の詩。」完成披露会を開催GAME Watch 2016年12月7日
- ^ 過去の公演『たけしの挑戦状』
- ^ 吹越友一「あの“伝説のクソゲー”が舞台化! 「たけしの挑戦状ビヨンド」2020年4月公演決定!」2019年8月20日。
- ^ テレビ朝日『アメトーーク!』の「思い出のファミコン芸人」(2017年6月15日放送)より
参考文献[編集]
- 阿部広樹、箭本進一 『超クソゲー』太田出版、1998年。ISBN 4-87233-383-7。
- 「『たけしの挑戦状』十二年目の懺悔」 開発者である福津と攻略本の苦情対応を担当していた太田出版編集者へのインタビュー。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- たけしの挑戦状 - Wiiバーチャルコンソール
- Takeshi no Chōsenjō(英語) - MobyGames
- たけしの挑戦状 ビヨンド - ウェイバックマシン(2021年2月24日アーカイブ分)
- 舞台『たけしの挑戦状 ビヨンド』公式 (@Takeshi_Beyond) - Twitter