山形新幹線

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青線は在来線直通区間
山形新幹線で使用される400系(左)とE3系1000番台(右)(2007年2月24日、新庄駅にて撮影)
福島駅で分岐し米沢方面に向かう山形新幹線と、奥は吾妻小富士(2007年11月13日撮影)。

山形新幹線(やまがたしんかんせん)とは、狭義にはミニ新幹線方式により福島県福島駅から山形県新庄駅までを結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)の路線およびその路線を走行する列車の通称である。

東京駅 - 福島駅間で東北新幹線との直通運転を行っているため、広義には「つばさ」の走行区間である東京駅 - 山形駅 - 新庄駅間が山形新幹線と案内される。以下、特記なき場合は狭義(福島駅 - 新庄駅間)について記述する。

概要

1992年全国新幹線鉄道整備法に基づかない新在直通方式のミニ新幹線として開業した。名称の通り、福島駅 - 新庄駅間のほとんどが山形県内である。「新幹線」と案内されているものの、この区間は正式には在来線である奥羽本線の一部であり、この区間で運転される特別急行列車つばさ」も在来線列車の扱いである。山形新幹線の在来線区間は設備的制約(踏切の存在、130km/hを超える速度での安全設備が未整備、福島・山形県境の急勾配区間の存在)のため、最高速度は130km/hである。また、この区間を走る普通列車には山形線の愛称が付いている。

歴史

山形駅 - 新庄駅間の延伸(約61キロ)にあたっては、総事業費351億円全額を山形県観光開発公社(現・社団法人山形県観光物産協会)が事業主体のJR東日本に全額無利子貸し付けする形式をとった。地元が必要と思うものを地元の資金で建設するという画期的な形式での新幹線整備であったが、この方式で建設されているのは2012年時点ではこの区間のみである。

運行形態

朝と夜の一部列車を除き、東北新幹線内(東京駅 - 福島駅間)は「やまびこ」の仙台発着列車と併結して走る。なお、山形新幹線の運転開始当初、併結車両は200系だったが、2001年9月21日以降はE4系(Maxやまびこ)、2012年3月17日以降は一部の列車がE2系(やまびこ)になっている。

臨時列車も含め「やまびこ」と併結する列車の東北新幹線内の停車駅は、基本的に併結する「やまびこ」に合わせ東京、上野大宮宇都宮郡山、福島であるが、全区間単独運転列車は上野、宇都宮は一部列車のみ停車し、郡山は全て通過する。福島 - 新庄間の停車駅は「駅一覧」を参照。

車体色は銀色に緑のラインである。開業当時はそれまで白やクリーム色といったイメージがあった新幹線の中で際立って目立っており、車体色も銀色で、窓周りは黒と緑の細帯に塗られていた。

なお、福島駅での連結・切り離しは、東北新幹線と奥羽本線を結ぶ連絡線とホームを下り側に1本しか建設しなかったため、上り・下りともに14番線(下り用のホーム)でのみ行う。そのため、上りの連結相手のやまびこも同駅の北で一旦下り本線を渡って14番線ホームまで入線しなければならない。連結したあと、再び下り本線を渡って上り線に合流する。そのため、ダイヤ改正時は必ず緻密な計算が求められており、東北新幹線は同駅がダイヤ作成上の大きなネックとなっている。

新庄延伸後、東京発新庄行き「つばさ」の山形以南は、ホームや車体側面の行き先表記が「山形・新庄」行きと案内されており、仙台行き「やまびこ」との併結時のホーム列車案内は「仙台・山形・新庄」と、行き先が3つあるかのような表記がなされている。

山形新幹線の線路では地域輸送のための普通列車も走っており、地域輸送については「山形線」と呼ばれる。なお、この区間を走る普通列車専用車両は、新幹線の軌道幅である標準軌に合わせ、JR線では初めて標準軌用として製造され投入された。なお、山形新幹線は関根駅 - 羽前中山駅間(北赤湯信号所付近を除く)と山形駅 - 新庄駅間のほとんどが単線となっており、新幹線が普通列車を待ち合わせるという珍しい風景も見られる(同じミニ新幹線方式で建設された秋田新幹線も同様で、どちらも速達性の障害となっている)。

なお、新幹線は騒音への配慮や保守の関係から、午前0時から午前6時までは定期列車は運転されないが、山形新幹線は前述の通り在来線扱いであるため、上り定期の始発列車「つばさ120号」は、新庄駅を5時41分に発車する。

車両

現用車両

営業車両

E3系2000番台

山形新幹線「つばさ」で使用されている車両は次のとおり。(2010年4月19日現在)

1000番台と2000番台の使い分けはなく、共通運用となっている。

事業用車両

編成記号の「S」は、系列に関係なく非営業用車両全般に用いられている。

過去の車両

営業車両

400系とE3系は運用上の区別はされておらず、共通の運用となっていた。2007年7月の定例社長会見において、2008年12月より新型車両(2008年10月にE3系2000番台に決定。7両編成12本の計84両)を導入の上、2009年夏までにすべての400系を置き換えることが発表された[2]。2010年4月18日にはさよなら運転が行われ、400系の営業運転が終了した。

試験用車両

  • E3系 - 秋田新幹線用のS8編成(R1編成)が試運転で乗り入れ。

駅一覧

  • JRの路線名は、その駅に接続している正式路線名のみを記す。
  • 列車ごとの停車駅は「つばさ (列車)」を参照。「つばさ」が停車しない奥羽本線山形線)の駅は省いている。
  • 乗車人員は東日本旅客鉄道の駅のもの。
駅名 東京
からの
営業
キロ
福島
からの
営業
キロ
2007年度
乗車人員
(1日平均)
接続路線 所在地
福島駅から東北新幹線東京駅まで直通運転
福島駅 272.8 0.0 14,983 東北新幹線・東北本線
福島交通飯坂線阿武隈急行線
福島県
福島市
米沢駅 312.9 40.1 2,527 米坂線 山形県 米沢市
高畠駅 322.7 49.9 860   東置賜郡
高畠町
赤湯駅 328.9 56.1 1,531 山形鉄道フラワー長井線 南陽市
かみのやま温泉駅 347.8 75.0 1,875   上山市
山形駅 359.9 87.1 11,014   山形市
天童駅 373.2 100.4 1,814   天童市
さくらんぼ東根駅 380.9 108.1 1,191   東根市
村山駅 386.3 113.5 1,240   村山市
大石田駅 399.7 126.9 1,006   北村山郡
大石田町
新庄駅 421.4 148.6 1,810 奥羽本線陸羽西線陸羽東線 新庄市

なお、特急券については東北新幹線との乗り継ぎ料金制度がある。

需要

交通需要について国土交通省2000年に調査した都道府県間鉄道旅客流動データによると、山形県を目的地とする鉄道旅客のうち、東北新幹線沿線(東京都埼玉県栃木県福島県)からの年間旅客数は99.9万人であった。これらの各出発地のうち最も旅客数が多かったのは東京都の66.5万人、次いで埼玉県の18.3万人、福島県の11.4万人である。一方、山形新幹線沿線(山形県)を出発地として東北新幹線沿線(福島以南)を目的地とする年間旅客数は113.3万人であった。これらの各目的地のうち最も旅客数が多かったのは東京都の75.4万人、次いで埼玉県の20.3万人、福島県の14.7万人である。

沿線各都県間の旅客流動状況(2000年)は以下の通り。

山形新幹線沿線各都県間旅客流動状況(2000年)
目的地\出発地 東京圏 栃木県 福島県 合計
山形県 1,242 37 114 1,393
出発地\目的地 東京圏* 栃木県 福島県 合計
山形県 1,472 29 147 1,648

(単位:千人/年)

*東京圏:東京都埼玉県千葉県神奈川県とする
東京圏 - 庄内地方の鉄道旅客流動は羽越本線上越新幹線利用者も含む

また、秋田県の湯沢市横手市など同県内陸南部からの需要も多い。同県内陸南部から東京方面へは秋田新幹線大曲駅を利用した方が所要時間が短く、本数も多いが、遠回りの経路であるため、山形新幹線新庄駅経由の方が数千円安く東京へ行けること、「こまち」・「はやて」には設定がない自由席があるためや、新庄駅で平面での乗り換えが出来ることにある(大曲駅で秋田新幹線への乗り換えは必ず階段利用となる)。さらに湯沢駅からは、「土・日きっぷ」が使用でき破格の安さで新幹線に乗って首都圏往復が出来ること、始発の列車で出発した場合は山形新幹線経由の方が早く東京に着くことなどがある。そのため、夏季や年末年始などの多客期には同県側から山形新幹線に連絡する奥羽本線列車は都心の夕ラッシュ時並みに混雑する。需要の多さに対応するため、多客期には臨時列車の「つばさリレー号」が同県側から運行される。さらに国道13号に面している新庄駅東口には1,500台の無料駐車場があるため、同県南部からのパークアンドライド利用者もいる。

問題点

山形新幹線はミニ新幹線方式を採用したため、狭軌軌間1,067mm)だった奥羽本線の山形新幹線走行区間(福島駅 - 新庄駅間)を標準軌(同1,435mm)に改軌する必要があった。しかし、それによって山形以南と仙山線左沢線、新庄以北の各線が直通できなくなる不都合が生じた。ただし、山形駅 - 羽前千歳駅間は狭軌・標準軌の単線並列のため直通できる。

開業当時、踏切事故が起こった時は「新幹線踏切事故」と大げさに報道された。「新幹線」とはいえ、奥羽本線内は在来線の130km/hの速度規制があったにもかかわらず、速度制限以上の高速度で踏切事故を起こしたと誤解を与えかねない報道であった。 各踏切はほかの在来線にはないゲート状の大掛かりなものに改良されている。

前述の通り、「つばさ」は福島駅で「やまびこ」と増解結を行うが、奥羽本線とのアプローチ線が新幹線下り線(14番線)としかつながっていない(福島駅の山形新幹線用新幹線ホームはこの14番線のみであるため、「つばさ」の上下同時発着は不可)。上りの「やまびこ」東京行とつばさを連結する場合、とくに作業が煩雑になる。仙台方から入線した「やまびこ」は下り本線を横断し14番線に渡って「つばさ」を連結し、再度下り本線を横断して上り線に戻らなくてはならず、平面交差を2度行う必要があるため、福島駅の構造が運行上の障害になっている。現在のところ特に対策は考えられていない。

なお、山形空港の年間利用客数は1991年に約70万人でピーク[3]となったが、ドル箱路線の東京便と競合する山形新幹線の開通で1992年から減少に転じ、2009年にはピーク時の4分の1以下の約17万人[4]にまで落ち込んでいる。そのため、空路維持を目的とした助成が行われている[5]

機能強化

酒田延伸

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新庄駅から酒田駅まで陸羽西線を単線標準軌化、交流電化、トンネル改修を行う。羽越本線を標準軌・狭軌並列、もしくは3線軌化する。事業費は350億円を見込む。東京駅 - 酒田駅間を9分短縮するという構想が山形県内部で行われていた。高橋和雄山形県知事や山形県庁内部では、置賜地方から庄内地方までを1本の鉄路で直結することによる県土軸の構築が図れるとして推進する意見が強かった。しかし、当の庄内地方では推進派の酒田市に対し、鶴岡市はむしろ羽越本線高速化(ミニ新幹線ないしフリーゲージトレイン導入、在来線改良)に積極的と内部で意見対立があった。新庄から陸羽西線を経由して庄内地方に進入する場合、陸羽西線は酒田へ至り、庄内地方のもう一つの拠点都市である鶴岡市へは途中の余目駅で羽越本線にアクセスする必要がある。即ち、陸羽西線経由で酒田・鶴岡の両市へ向かう場合、「二股化」が起こり、両都市を一筆の路線で直結しにくい状況となる。この点も、本案における酒田・鶴岡の両市の対立の背景として無視できない。また、地理的歴史的経緯からも、奥羽本線(それに並走する国道13号線)に沿った奥羽新幹線の代替としての機能から、奥羽本線沿いへの延伸案(後述の案も参照)がより自然であるとの見解もある。前述の県土軸構想も、厭くまで自県(山形県)内での交通網の完結に基づく発想であり、他県との連携や国土軸構想上の視点では羽越本線高速化の案が理に適うとする意見もある。

2006年3月、山形県は山形新幹線の庄内延伸並びに新潟県と共同で行っていた羽越本線高速化調査の最終結果を公表、費用対効果では羽越本線を高速化し、新潟駅新幹線ホームでの対面乗り換えが有効との結論を下した。羽越本線高速化では新潟県にも費用分担を求めることが可能であり、国の幹線鉄道活性化事業に認定されれば補助金が受けられるのに対して山形新幹線延長では県単独の事業となり、国からの補助も見込めないことも障害となった。

大曲延伸

新庄から大曲駅までの延伸が沿線自治体の一部で論議されており、新庄駅構内に期成連絡会の事務所が構えられているが、現実問題として財源負担や時間短縮効果について問題点が多く、実現の可能性が低いと見られている。

山形新幹線延伸早期実現期成同盟会と山形新幹線大曲延伸推進会議が実現を訴え、秋田県の「あきた21総合計画」では奥羽南線の高速化を2010年までに着手することが盛り込まれているが、山形新幹線機能強化検討委員会の調査では、大曲延伸に530億円の費用がかかり、採算性が厳しいとされた。現状でも横手以南・以北で大曲乗り換えと新庄乗り換えの双方の利用者に分かれており、ある意味では秋田県南内陸地域から新幹線を経由した首都圏へのアクセス方法が2つあることになり、補完手段として充分であるとの見解もある。また、延伸にあたって特に懸念されるのは湯沢 - 新庄間の県境山間部区間であり、現状の路線でも福島 - 米沢間の板谷峠の前後は急峻な山間部とカーブの連続で高速性が阻害され、冬季の剋雪対策や運休懸念の問題が横たわる。同様の懸案が秋田・山形県境で発生する可能性が高く、またこの県境区間は奥羽本線内でも乗降旅客数の寡少な区間であり、特に新庄 - 院内間に新幹線停車駅を設定することは難しい。[要出典]

改軌延伸を困難にしている原因として、山形新幹線の建設に際して奥羽本線改軌に使われた機械がすでに売却済みで国内には無い(秋田新幹線の建設に伴う田沢湖線改軌に使われたあと、JR東日本は必要性がなかったためタイへ売却してしまった)という問題も挙げられる。

しかしながら様々な延伸構想のなかでは最も地域的・路線的妥当性の高い案であり、[要出典]今なお、秋田県南では地元自治体主催の山形新幹線大曲駅延伸の集会などが行われている。

その他

安全・安定輸送策を進めることや、雪害・降雨・防風など防災対策として、沿線の倒木対策、信号設備改良、融雪設備改良、踏切安全対策の実施、高速化を進めるために部分的な複線化、曲線半径の拡大や板谷峠に21.9kmのトンネルを掘って短絡路線を新設するなどの改良計画がある。この事業費として840億円を見込み、所要時間が16分短縮される[6]としている。

脚注

関連項目