MOTHERシリーズ

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MOTHERシリーズ
ファイル:Earthbound-logo.png
ジャンル ロールプレイングゲーム
開発元 パックスソフトニカ
エイプ
HAL研究所
発売元 任天堂
主な製作者 糸井重里
岩田聡
1作目 MOTHER
1989年7月27日
最新作 MOTHER3
2006年4月20日
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MOTHERシリーズ(マザーシリーズ)は、任天堂から発売された日本コンピュータRPGシリーズ。著名コピーライターである糸井重里がゲームデザインを手がける同社数少ない自社製作のRPGシリーズである。

概要

概説

第1作『MOTHER』は、任天堂が初めてオリジナル作品として発売した、コマンド選択形式のRPGにあたる作品である[1]。同時にファミリーコンピュータ時代からリリースされ続けた唯一の任天堂製によるRPGのシリーズでもある。

前述のようにコピーライターの糸井重里が開発に関わっていることが特徴である。きっかけは糸井が『ドラゴンクエスト』シリーズに熱中、感動し、何とか自分でもRPGを作れないかと思い立ち、RPGの制作を決意、任天堂を訪れる。また、ゲームの発売に先駆ける1987年の「糸井重里の電視遊戯大展覧会」にてすぎやまこういちとの対談時にゲーム制作を勧められる一幕があった。当初は任天堂もなかなか首を縦に振らなかったものの、糸井の熱意に折れる形で制作を決定する。

糸井は1作目『MOTHER』において、自身が好きだった映画『スタンド・バイ・ミー』へのオマージュから近現代アメリカを思わせる背景設定を用い、スピルバーグの参加した作品を数多く鑑賞しゲーム製作へと生かした。

第2作『MOTHER2 ギーグの逆襲』は完全新作でありながらも、前作の作調を大きく尊重した上で製作された、いわば発展作、もしくはリメイク作に近い物となっている。

第2作の発売直後から企画立案を開始し、それから実に12年の歳月を経て発売を見た最新作『MOTHER3』は、シリーズで初めて任天堂情報開発本部が主な開発に関与した。本作は1作目『MOTHER』で形成された世界観・設定から方針を転換し、新しいMOTHERシリーズとしての世界観をなしている。

特長を尊重しながら第1作を大幅に進化させた第2作、そこで大成されたグラフィックやゲームシステムを発展させつつほぼ忠実に継承したのが第3作といえる。

本シリーズとその影響

作品数こそ少ないMOTHERシリーズであるが、本シリーズによって任天堂と糸井重里との間に交流関係が生まれることとなり、それが後に与えた影響はかなり大きいと言える。

第1作目『MOTHER』の開発などのために糸井と当時の任天堂社長 山内博が設立した株式会社エイプは、1990年代前半の同社公式ガイドブック(攻略本)等の製作に関わった。有能なクリエイターの育成を目的に設立されたエイプのスタッフは、社の解散後に株式会社クリーチャーズを設立、現在の 任天堂の看板タイトルの一つである『ポケットモンスター』シリーズの開発に携わるなど任天堂傘下の中でも有力な会社となっている。

さらにその『ポケットモンスター』シリーズ生みの親である田尻智も、『ポケモン』は「自分のMOTHERを作りたい」という意思でMOTHERシリーズを参考に製作したということを度々語っている。

糸井と開発スタッフとの親交は深く、特に『2』のプログラミングを務めた当時のHAL研究所社長、そして後に任天堂社長となる 岩田聡は、糸井のウェブサイト『ほぼ日刊イトイ新聞』の創設にコンピュータ関連の準備をほぼ全て一人で担当してその後も技術サポートを続けたというエピソードがある[2]。同ホームページに任天堂の紹介コーナーを設けて現在も特集やインタビュー記事を載せており、後に任天堂ホームページでも『ほぼ日』のスタッフが編集協力するなど協力関係を現在も維持している。

付記

任天堂にとっても同社唯一のオリジナルRPGの顔であり、岩田聡や宮本茂田邊賢輔といった幹部クラスが直接開発を手がけていることから、『マリオ』シリーズや『ゼルダの伝説』シリーズに並ぶ特別な扱いを受けている。作品数や売り上げに対しての扱いの大きさは、糸井自身の知名度ではなく、このことの方が大きい。

また、糸井の独特なテイストで構築された良くも悪くも「既存のコンピュータRPGらしからぬ」世界観のため、ポピュラーなRPGを支持する者からは批判的な意見もあるが、一方で熱狂的に支持するユーザーも多い。その過剰な期待は『3』のNINTENDO64版開発中止の原因の一つともなったのだが、後のGBA用ソフトとしての開発再開・発売も、そのようなかつてのファンの声が後押しとなったという。

日本国内外でオリジナル版が発売されたのは『2』のみである。『1』と『3』の両作は日本国内のみの発売となっている[3]。ただし、後にWii Uバーチャルコンソールにおいてオリジナル版の発売から約26年を経て第1作の海外版が公式から初めてリリースされた。シリーズの海外名称は『EarthBound』である。

シリーズの今後

糸井重里がNINTENDO64ソフトとして『MOTHER3 豚王の最期』を開発していた時期から繰り返し「『MOTHER』に4作目はない。『MOTHER3』で完結する」と一貫して表明しているため、本シリーズは『MOTHER3』までの三部作で完結とされている。よって『MOTHER3』を最後にシリーズはそのまま幕引きとなった。

なお、糸井は『MOTHER3』発売後に答えたインタビューにて「『MOTHER4』を作りたいと言ったら許可してしまうかもしれない」という旨の発言をしており、もし自分が関わらない形で続編を作りたい申し出があった場合は否定しない意向でいる[4]

このような経緯で本筋のシリーズ展開は『3』の発売で終わりを見ることとなったが、その後もシリーズの作品は順次 バーチャルコンソールとして改めてリリースされており、その度に糸井重里がコメントを寄せている他、任天堂の公式ホームページなどでは記念企画が公開されるなどしている。1999年から2014年までに5作品が発売されている任天堂キャラクターのオールスターを謳う『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズでは、第1作目から本シリーズの要素が継続的に盛り込まれている。

「ほぼ日手帳」など東京糸井重里事務所から発売されるいくつかの商品においては、MOTHERシリーズとコラボしたものが2006年以降にも定期的に発売されている。その他にもゲームセンターの景品やカプセルトイとしての商品なども開発され販売されている。

シリーズ作品

タイトル 発売日 開発 ハード 売上
MOTHER 1989年7月27日 パックスソフトニカ
エイプ
ファミリーコンピュータ 約40万本
MOTHER2 ギーグの逆襲 1994年8月27日 HAL研究所
エイプ
スーパーファミコン 約81万本
(国内外総計)
MOTHER1+2 2003年6月20日 非公表 ゲームボーイアドバンス 約31万本
(通常版+バリュー版)
MOTHER3 2006年4月20日 任天堂
東京糸井重里事務所
HAL研究所
ブラウニーブラウン
約39万本

シリーズは、基本国内のみでの展開が主であるが『2』のみは『EarthBound』の名で海外でもオリジナル版が発売されている。『1』は、米国で最終的には発売されなかった日本国外版と思われるROMイメージが1998年に放出され、海外有志によって『EarthBound ZERO』のタイトルで出回った。後に『1』は、『EarthBound Beginnings』の名で海外でもWii Uバーチャルコンソールとして公式から配信された。

『1+2』は、『3』の発表に合わせて発売された『1』と『2』が移植されたリメイクタイトル。『1』には国内版の移植ではなく先述した海外版ROMデータが流用されている。

『3』は長きに渡る開発期間を持ってプラットフォームもNINTENDO64などの変遷を経て発売を見た。詳しくは『MOTHER3 豚王の最期』を参照。

シリーズ各々の特徴

本シリーズは数少ない作品数ながら、三部作各々に全く新しい独自の試みが盛り込まれている。

『MOTHER』においてファミコンというハードとしては至極当然に採用された2Dドット絵は、続編の『2』と『3』へも継承された。最終作のグラフィックは開発中に紆余曲折を経たが、最終的には3D作品の浸透した2006年当時に発売されながらシリーズ屈指の作調として2Dのドットグラフィックが貫かれた。『MOTHER』のドットを尊重し大幅にグレードアップした『MOTHER2』のドット、それを新しい雰囲気に合わせつつもほぼ忠実に継承した『MOTHER3』のドット。特に『3』のキャラクタードットのアニメーションは多彩で、細かく描画されている。

本シリーズは、第1作が児童文学的作調の構成を行う一環で殺伐とした雰囲気を避けたことが基となって、シリーズを通してその配慮が一貫して引き継がれている。その配慮の1つとして、敵の撃退やパーティの戦闘不能表現などにはあえて「死んだ」「殺した」などの概念を採用しないというものがある。しかし全作においてゲーム中で死亡するキャラクターが存在している。しかもそれらの多くがショッキングな最期を迎え、ゲーム中でも死亡したことを表すメッセージやグラフィックが表示されている。だが本シリーズで死亡するキャラクターは「無駄死に」ではなくストーリーの根幹に深く関ってくる死であるという点が他のゲームと一線を画している。

ラストボスとの決戦では、シリーズを通して特殊な対処法が必要であるのも大きな特徴である。

MOTHER (1989/FC)

本作は、いち早く現代を舞台に採用した本格的RPGである。主人公たちはPSI(サイ)という超能力を持ち、さまざまな武器を装備して戦うが、あくまで等身大の少年・少女として描かれている。ゲーム上のグラフィックを全て同スケールで描いていた(世界マップ上の村や町のアイコンへ入ると村や町のマップに移動する「切り替え」がなく、ビルや山岳等の地形も、すべてキャラクターの大きさに合わせたサイズで描かれている)のも、糸井の発案による独自の表現であり、当時としては画期的なものだった。戦闘は当時では一般的だったランダムエンカウント方式。

ゲーム中に登場する敵キャラクターも、従来のRPGによく登場するような「モンスター」は少なく、異星人に操られた人間や、暴れ出した動物ポルターガイスト現象で動き出した物体などが多く登場する。これらの敵との戦闘における勝利時には、人間なら「われにかえった」、動物なら「おとなしくなった」などの表現が使われる。また、主人公たちのHPが0になったときも、「死亡」ではなく「意識不明」という表現が使われている。今日ではファイナルファンタジーシリーズでも「戦闘不能」という表現が用いられているが、『MOTHER』発売当時はファイナルファンタジーシリーズの戦闘でも「死亡」の表記を使っており、「戦闘での死亡表記」が避けられたRPGは当時『桃太郎伝説』、『MOTHER』、『スクウェアのトム・ソーヤ』があった他、『天地を喰らう』ではHPではなく兵士数という表現になっており戦闘で敵の兵士数を0にしても討伐できず再戦する流れを自然に表現している等、システムの差別化が模索され始めていた時期であった。道具は「アイテム」ではなく「グッズ」と表記されている。

他、敵を倒して金を稼ぐシステムも従来のRPGとは異なる。戦闘で勝利したときに、敵キャラクターの持ち金を主人公たちが直接その場で狩るのではなく、それに相当する分の金が銀行に振り込まれるようになっている。第1作と第2作では公衆電話で「パパ」に電話をすると、振り込まれた金額がわかるようになっている。なお、銀行から金を下ろすときは「キャッシュカード」が必要である。

ゲームボーイアドバンスの『MOTHER1+2』では、Rボタンを押すことで早く移動できる「ダッシュ機能」が追加された他、ファミコン版に登場したいくつかのグッズが出なくなっている。

MOTHER2 ギーグの逆襲 (1994/SFC)

前作では出来なかったことを含め、新ハード「スーパーファミコン」の性能を使って新たにMOTHERを作るというコンセプトで今作は製作された。そのため、大まかな特徴は上記の『MOTHER』とほぼ一致する。PSIを持った少年・少女の冒険という設定や、主人公・機械に強い友達・おんなのこの外見など『MOTHER』と類似している。シナリオ面においては、明確な繋がりが皆無であり、前作からの続編というよりかはリメイクに近いシナリオをたどる。システム面においてはれっきとした完全新作である。

主な変更点としてはプラットフォームの移行で容量が大幅に上昇したことにより、グラフィック、音質などのクオリティが革新的に向上したこと、それに伴って『MOTHER』の特徴であった「アメリカンな世界観」がより押し出されるようになったこと、そしてより細かい演出が入るようになったことが挙げられる。アートディレクターである大山功一が新たに表現したMOTHER世界のドット絵は、次回作へも大きな影響を与えている。

当シリーズは、モブキャラの多くがストーリーに関係のないユーモアに満ちたテキストを持っている点が1つの特徴である。しかしそれに反してストーリーのヒントとなるテキストを見つ付けくいという前作からの問題を解消するために、今作においては「ヒントや」なるストーリーの道順を有料で教えてくれる施設が区々に設置されている。

その他、本作では戦闘面においても多彩な新要素が採用されている。まずエンカウントは、ランダムエンカウント方式からシンボルエンカウント方式に移行され、戦闘シーンでは他のRPGでは見受けられないような「ドラムカウンター」式のHP/PP表示が使われておりプレイヤーパーティのみHP/PPの増減は戦闘中に時間をかけて徐々に行われる。このため「ちめいてきなダメージを受けたとき、HPが0になる前に回復措置をとるか戦闘を終わらせることで気絶を回避する」などのユニークな戦略が可能になった。背景も1作目の黒い背景から派手なCGグラデーションに変わった。また、主人公たちのHPが0になった時の表現が「いしきふめい」から「きぜつ」に変更されている。

後衛的にオマージュや模擬を基礎に固めていた前作に対して、本作ではこのような前衛的な要素を全面的に採用しているのが大きな特徴である。そしてその新たな特徴の多くが次回作へと受け継がれ、結果的にシリーズ屈指の特徴へと昇華していく。

本シリーズのマスコットキャラクター的存在の「どせいさん」が初登場したのも今作である。

MOTHER3 (2006/GBA)

『MOTHER』三部作の最終作となる作品。前二作で広げられた牧歌的な世界観を完全に一新した異色作であり、シナリオ面においては『MOTHER2』直系の続編である。

PSIを使う主人公や抽象的な名称の武器など、システム的な面では忠実な後継作と言えるが、前述の通り世界観は近代アメリカから開拓時代のようなファンタジーものへ変更されている。ストーリーが年月をまたぐ章立て、章によりプレイヤーの視点となるキャラクターが移り変わる、移動に独特のダッシュ機能が採用されるなど、本作は根幹的な部分に新要素が入れ込まれており、全く新しいMOTHERとしての世界観がなされている。

登場する敵キャラクターは人間キャラクターもいるが、ストーリーの関係上別々の動物や物が合体したキマイラが多く、ストーリーに深く関与する。1作目から一貫して避けられてきた「戦闘中の死亡表記」は本作にも存在しないが、旧作同様、“死”はストーリーに深く関わっている。序盤はお金という概念そのものがなく、アイテムは物々交換などで手に入れる。ストーリーがある程度進むと、お金に通ずる「DP(ドラゴンパワー)」というポイントが戦闘に勝利するごとに溜まり、セーブするためのカエルから引き出したり預けたりすることができるようになる。

開発中の12年の歳月で、糸井重里自身の考え方や思想が変化した[5]ため、旧作のようなカートゥン的なゲームではなく現実を見据えた内容となっている。リュカとクラウスなど、アゴタ・クリストフの三部作『悪童日記』『ふたりの証拠』『第三の嘘』の影響も大きい。

戦闘では新たにサウンドバトルシステムを採用。敵ごとに異なる戦闘BGMに合わせてボタンを押すことでダメージ量を増やすことが出来るようになっている。このシステムを実現するために、HP/PPの回復・ダメージを数値のみで表す方式に改良している。常時、このサウンドバトルの練習を可能にするのも兼ね、戦った敵と再び対戦できる「たたかいのきおく」という戦闘練習システムも導入されている。

前作、前々作と異なり登場キャラクター(敵を含む)のイメージフィギュアは作られていない。

世界観

平和な日常が侵略者によって崩されていく危機が物語の軸になる。

MOTHER

1作目『MOTHER』はアメリカ音楽・映画へのオマージュであると形容できる。平凡な街に住む少年であった主人公が、異星人の来襲に対し世界を守るというのが基本的なストーリー。世界の各地に散らばる友達と出会い、力を合わせ、高度な科学力で地球を侵略しようとする異星人・ギーグとその手下達と戦っていく。そのため世界中に散らばった歌(エイト・メロディーズ)を集めることがゲーム上の重要な要素となっている。

糸井自身がインタビューなどでアピールしていたが、アメリカ文化に大きな影響を受け、また『スタンド・バイ・ミー』や『グーニーズ』などアメリカ映画へのオマージュが見られる。アメリカ的な町並、鉄道などが登場。総じてジュブナイル児童文学的な雰囲気を持つ。主人公の両親に対する呼称も「ママ」「パパ」である。

『MOTHER』の主人公の喘息持ちという設定は『グーニーズ』へのオマージュ。「テレポートの際は一定の距離を高スピードで移動する必要がある」のは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を思わせる。マザーズデイではヒッピーなお兄さんが登場する。音楽面でもアメリカ文化やビートルズ影響を受けており、実際ゲーム中のミュージックもそれらの雰囲気に合わせている。

『MOTHER』が発売された1989年当時、コンピュータRPGのストーリー設定といえばエニックス(現スクウェア・エニックス)のドラゴンクエストシリーズ、スクウェア(現スクウェア・エニックス)のファイナルファンタジーシリーズを始めとする中世中近世西洋風ファンタジー、いわゆる「剣と魔法」の世界が主流であったため、その世界観の斬新性はより際立っていたという評判もあるが、実際には『MOTHER』発売より3ヶ月後の同年11月、そのスクウェアから時代背景の近い『スクウェアのトム・ソーヤ』が発売されており、『MOTHER』発売より3ヶ月前の同年5月にはカプコンより古代中国を舞台とした『天地を喰らう』、さらに1月にはSNKより中世日本を舞台とした『里見八犬伝』が発売されており単純な「剣と魔法」からの脱却が模索されていた。

MOTHER2 ギーグの逆襲

上に書かれた『MOTHER』の特徴とほぼ一致する。舞台になる世界や集めるメロディの歌詞は『MOTHER』と異なるが、現代アメリカが舞台に含まれていること、アメリカ文化の影響が大きいことなど『MOTHER』独自の特徴は引き継がれている。

『MOTHER』にはなかった要素として、前作の特徴であった「アメリカンな世界観」がより押し出されるようになった。グレイハウンド(アメリカの長距離バス。作中では「グレイハンド」という名称)が登場する。映画『老人と海』の後半のワンシーンに出てくる、数字の看板を持ったおじさんを無口なスロットマシーンにしているなど、コメディ的要素も含まれている。ブルースブラザーズそのままのキャラ(トンズラブラザーズ)や、主人公たちのデフォルトの名前のパターンにビートルズメンバーの名前があったり、途中出てくる潜水艦がそのままイエローサブマリンビートルズの世界観も出ている。

また、それらはあくまでも「アメリカ的」な要素に過ぎない。本物のアメリカに近くなったと言うのとはまた異なり、前作に比べファンタジー色が強くなっているのに対し、現実的な世界観は少々薄れている。

MOTHER3

『MOTHER3』は過去作とは異なり、現実とはどこか異なる世界が舞台となっている。

『MOTHER3』は基本的に1つの島、1つの村・タツマイリ村を舞台にストーリーが進行していく。旧作の「地点」は次から次へと転々としていく「通過点」であり、1つ1つの地点のストーリーを深く追求していない旅情的冒険なのだが、『MOTHER3』はタツマイリ村という1つの地点に、さまざまなストーリーをどんどん蓄積させていく形をとっている。1つの地点に物とストーリーを蓄積させストーリーを展開していくという点では、旧作のスピルバーグ的冒険より『どうぶつの森』のような形式に近い。前作まで重要な要素だった「メロディ集め」は無くなっている。

またリュカとクラウス兄弟の父親・母親に対する呼称は「おとうさん」「おかあさん」、母親の夫に対する呼称も「あなた」であり、旧作の「パパ」「ママ」との違いを際立たせている。地名・キャラクター名もタツマイリやオオウロコ、クマトラなど日本語的ものが多い。音楽は『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズなどのBGMを手がける酒井省吾が全曲を制作[6]。こちらも旧作とは一線を画した仕上りになっている。テーマソングは「MOTHER3 愛のテーマ」である。

関連人物など

このゲームのファンには、伊集院光タレント)、川上弘美作家)、太田光爆笑問題)、清水ミチコ(タレント)、有野晋哉よゐこ)、BOSEスチャダラパー)、中村一義ミュージシャン100s)、星野源俳優SAKEROCK)、浜村弘一(元『ファミ通』編集長、株式会社エンターブレイン代表取締役社長)、Naokiリングアナウンサー)、ケニー・オメガプロレスラー[7]など多くの有名人が知られている。

MOTHER

キャラクターデザインは南伸坊鈴木慶一田中宏和の担当したゲーム音楽も評判を集め、第1作で使用されたエイト・メロディーズ Eight Melodies は小学校の音楽教科書『新版 音楽6』(教育出版,1992年)にも掲載された。後にサウンドトラックにまとめられた『MOTHER』の音楽は編曲し直され、Catherine Warwick や Louis Phillippe などが歌ったものが収録された。

MOTHER2 ギーグの逆襲

『MOTHER』と同じく、ゲーム音楽は鈴木慶一と田中宏和が担当した。『MOTHER』と同じエイト・メロディーズという曲も収録されているが、そのメロディーは『MOTHER』とは異なる。また、前作のBGMを一部アレンジして使用している箇所もある。CMは木村拓哉と幼稚園児が喫茶店でソフトの取り合いをしたり、喫茶店の客がみんな「マーザーツー、マーザーツー」と歌っているのでつられて歌い出すものなど、ゲームの内容に敢えてまったく触れず、期待感を煽っていた。

MOTHER3

開発には任天堂と東京糸井重里事務所とHAL研究所とブラウニーブラウンが行った。

音楽は酒井省吾が担当した。CMでも使われた「MOTHER3 愛のテーマ」は評判を集め、「MOTHER3+」では大貫妙子が「We miss you 〜愛のテーマ〜」を歌い、クレイジーケンバンドがD.C.M.C.を演じて参加した。「We miss you」の歌詞は糸井重里が書き、制作は酒井省吾と門倉聡などが行った。

第一作、第二作のシナリオに関わっている戸田昭吾が今作にもクレジットされている。音楽の酒井省吾とは高校の同級生であり、前作の音楽を担当した田中宏和とはポケモンの曲などで作詞作曲コンビとして名を連ねている。

伊集院光と川上弘美は、『MOTHER3』発売を記念してほぼ日刊イトイ新聞の中で糸井重里とトークを行った。発売当日であったため、ゲーム内容についての話題は極力避けられたが、逆に本シリーズ、ひいては糸井の遊びについての考え方などの「本質」を捉えた発言が多く見受けられた。この模様はストリーミング放送でネット配信された。

サウンドトラック

タイトル 発売日 販売日 備考
MOTHER3i 2007年2月7日 『MOTHER3』から15曲が収録されているサウンドトラック
MOTHER3+ 2006年11月2日 2007年2月7日 『MOTHER3』から10曲が収録されているサウンドトラック。

脚注

  1. ^ 1986年発売の『ゼルダの伝説』はアクションRPG(ただし続編『リンクの冒険』には経験値があり、世間一般で言う所のRPGとしての体を成している)、1987年発売の『銀河の三人』は、エニックス地球戦士ライーザ』(1985年、PC用ゲーム)の移植にあたり、「オリジナル」タイトルではない。なお、シミュレーションRPGの『ファイアーエムブレム』シリーズは第1作が1990年の発売である。
  2. ^ ほぼ日刊イトイ新聞「任天堂、岩田聡社長と糸井重里が話す」の11回「電脳部長回顧録」より
  3. ^ 『1』に関しては日本国外において『"EarthBound Zero"』というタイトルで翻訳とともに一部内容に手を加えられたROMデータが放出されており、『1+2』に収録されたものはこの日本国外版がベースなのだが、公式では認められていない。
  4. ^ 『MOTHER3』発売後に行なわれたゲーム雑誌『ニンテンドードリーム』と糸井の対談記事「ニンドリドットコム~糸井重里さんインタビュー~」より
  5. ^ ニンドリドットコム~糸井重里さんインタビュー~
  6. ^ 厳密に言うと、酒井は糸井重里が『MOTHER3』開発のためにHAL研究所へスカウトした経緯があり、『MOTHER3』の作曲開始が『大乱闘スマッシュブラザーズ』よりも先である。
  7. ^ 飯伏幸太との合体技に「PKこころ」という技名を付けている。

関連項目

外部リンク