JR東日本E531系電車

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JR東日本E531系電車
東海道本線を走行するE531系
(2015年3月15日 新橋-品川)
基本情報
製造所 東急車輛製造
川崎重工業
東日本旅客鉄道新津車両製作所
総合車両製作所横浜事業所
主要諸元
編成 基本編成 - 10両(うちグリーン車2両)
付属編成 - 5両
MT比はいずれも 2:3 )
軌間 1,067mm
電気方式 直流1,500V / 交流20,000V (50 Hz)
架空電車線方式
最高運転速度 130km/h
設計最高速度 130km/h
起動加速度 2.5km/h/s[* 1]
減速度(常用) 4.2km/h/s[1]
減速度(非常) 4.2km/h/s[1]
編成定員 基本編成 - 1,412名(グリーン車180名)
付属編成 - 760名
編成重量 341.6t(基本編成 - 4M6T)
163.2t(付属編成 - 2M3T)
最大寸法
(長・幅・高)
20,000×2,950×3,640mm
(普通車)
車体 ステンレス
駆動方式 CFRP製TD継手撓板平行カルダン
歯車比 16:97(≒ 1:6.06)
出力 140kW/基
かご形三相誘導電動機
編成出力 2,240kW(基本編成 - 4M6T)
1,120kW(付属編成 - 2M3T)
制御装置 VVVFインバータ制御IGBT素子
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキ
全電気ブレーキ
抑速ブレーキ
保安装置 ATS-P, ATS-Ps
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E531系電車(E531けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の交直流一般形電車[2][* 2]

概要

常磐線水戸線で運用されていた403・415系鋼製車の老朽化に伴う置き換えおよび競合する首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス)への対策としての運転速度向上を目的に、E501系E231系の使用実績を基に「人に優しい車両システム」をコンセプトとして開発した。

2005年平成17年)3月に最初の編成(K401編成〈基本・10両〉とK451編成〈付属・5両〉)が落成し、同月16日から公式試運転を開始し、同年7月9日ダイヤ改正から12編成90両(基本編成6本60両・付属編成6本30両)が営業運転を開始した。その後も増備が続けられ、2007年(平成19年)3月18日のダイヤ改正より上野駅発着の403系・415系・E501系の中距離電車運用をすべて置き換え、普通列車[* 3]特別快速の全列車が本系列による運行となり、同時にグリーン車の営業も開始した。以降、常磐線上野駅発着の中距離電車の主力として使用されている。

製造は基本・付属編成ともに最初の6編成のみ東急車輛製造川崎重工業が担当したが、2006年(平成18年)度以降は基本・付属編成ともに普通車のみJR東日本新津車両製作所で製造が行われた。ただし、編成中のグリーン車だけは東急車輛製造と川崎重工業で製作された。2014年(平成26年)9月に基本編成10両1編成、12月に付属編成5両1編成、2015年1月に付属編成5両2編成が総合車両製作所横浜事業所で製造された。それ以降の編成も総合車両製作所横浜事業所で製造されている。

本系列で採用された新機軸の多くは、後のE233系にも改良を加えられながら受け継がれている。

仕様

車体設備

トイレ脇の客用ドア
左右非対称に配置されている。トイレ部分はE231系より大きい

車体は台枠の一部を除いてE231系などと同様のステンレス製である[3]。外板は汚損防止とコストダウンの観点から腰板、幕板および妻板に80#BG材[* 4]を採用したが、吹寄せ部は従来同様ダル仕上げ[* 5]としている[3][4]

車体長は19,570/19,500mm(先頭車/中間車)、車体幅は2,950mm、屋根高は3,620mmとなっており、後述する衝撃吸収構造のために先頭車車体長が若干長くなっている[5][3]。編成同士の連結で先頭車が中間に配置されることもあるため、連結面長は先頭車及び中間車共に20,000mmに統一されている[3]。車体断面は拡幅車体を採用し、腰部から下を絞った裾絞り構造である[5]。床面高さは E231 系の 1,165 mm から 1,130 mm に下げられ、ホームと乗降口の段差を小さくし、かつ低重心化を図る[3]。車体腰部および幕板部には常磐線中距離電車のラインカラーである青の帯を巻く。

先頭形状はE231系近郊タイプと同様に踏切事故対策および視認性向上の観点から高運転台構造を採用している[6]。E231系近郊タイプ同様に衝撃吸収構造[* 6]を採用しており、大型トラックとの衝突事故時にも乗務員と乗客の安全性を確保している。このために乗務員室奥行きを広めに確保している。配色は一新され、前面部の上半分が白色となり、帯のデザインも異なっている。前照灯尾灯についても上部の行先表示器を挟んだ左右への設置となった。

前面の LED 式行先表示器はE231系よりも横幅を拡大した一体形であり、列車番号列車種別・路線名が3つの表示器内に表示される。側面行先表示は路線名・行先の日本語・英語ともオレンジであるほか、路線名表示中も種別表示はそのままである。また、路線名と行先の交互表示の間隔がE231系よりも長くなっている。トイレ設置車両ではトイレ近接の乗降ドア位置が前位側に600mm寄せられた[7]。これは電動車椅子対応の大型トイレ設置によるもので、当該車両では乗降ドアの配置が左右対称ではない。新製時より車外側面には乗客への案内用に車外スピーカーを設置する。

車内設備

普通車(セミクロスシート)車内
車内はユニバーサルデザインの充実のため、一新されている。基本的な内装カラーは白色系とし、床面は茶色系としている。内装はメーカーによって造作に相違いがある。
ドア付近
片側4か所に設けられた両開き式の乗降ドアは戸挟み安全装置付きリニアモータードアエンジンを装備する[8]。これは富士電機とJR東日本の共同で開発されたもので、常磐快速線成田線用のE231系と同一方式である[8]。ドアスイッチを併設する半自動機能付きで、車内から見て右側に開閉ボタン(外部には開ボタン)がE231系よりも多少低い位置に設置されている。半自動機能は、冷房および暖房使用時に交流区間での始発駅や途中駅の特急待避、長時間の列車交換待ちの停車時にセットされる。また、最初に落成した基本・付属編成各6本の各ドアにはドアスイッチの使用方法が表記されたステッカーを貼り付けしている。ドアはE231系と同じ単板ガラス型のものを使用しており、複層ガラスが使われているE233系登場後に落成した編成も従来通りのものが使われている。
ドア付近のバリアフリー
視覚障害者への配慮のため、ドア先端部の車内側には黄色のテープが高さいっぱいに、また床には黄色の滑り止めも兼ねた点字ブロックを配置している。これはJR東日本では初めての採用である。
ドア上部にはLED式2段の旅客案内表示器ドアチャイム・ドア開閉時に赤く点滅する「ドア開閉表示灯」を設置している。旅客案内表示器は2段目の右端に号車番号を表示する。このため、車端部には号車番号表記はなく、付属編成では車体外部に号車番号は表記されていない。また、走行中は各種情報を「運行情報」[* 7]→「行先」→「携帯電話」「優先席」(一方のみ、1駅毎に交互)→「テロ対策」の順に表示する。
座席
投入当初は基本編成の1・2・9・10号車と付属編成の13 - 15号車の7両がセミクロスシート、それ以外の8両がロングシートであったが、2007年1月からの基本編成の4・5号車へのグリーン車組み込み(後述)に伴い、9号車にロングシート車が組み込まれた編成がある。座席表地の色は茶色がかった色である。1人あたりの座席幅は E231 系より 10 mm 広い 460 mm で、座席クッションは2004年度以降に落成したE231系と同様のSバネ入りとして座り心地の改善を図っている。
つり革
黒色成型の三角形で、ロングシート部とクロスシート部で持ち手の形状が異なる。枕木方向の個数がE231系の2個に対して3個に増設されている。車両両端部ではつり位置を下げている。優先席のつり革は順次、黄色のものに変更されつつある。
トイレ
15両編成中3か所(1・10・11号車)に真空吸引式洋式トイレを設置する。電動車椅子での利用に対応させるため出入口の開口幅がE231系の 741 mm から 900 mm に拡幅され、トイレ側の第3ドアと第4ドアの間は座席配置が変則的[* 8]である。グリーン車では、5号車 サロE531形 の上野寄り車端部に洋式トイレ・洗面所を設置する。
案内放送
自動放送装置・車外スピーカーによる案内放送が行われる。前者では日本語英語による行先や次の停車駅、ドア開閉方向のほか、ドアの半自動設定時や非常ブレーキ時の放送も備えている。後者ではドアの半自動設定時や乗降促進メッセージ、車掌からの放送および東洋メディアリンクス製の発車メロディの再生が可能である。これにより、発車メロディ操作スイッチのない駅でもメロディを再生することが可能になった。
その他
側窓は各車両とも開閉可能な下降窓と固定窓を用いており、窓ガラスには濃色グリーンのUVIRカット熱線吸収ガラスを使用することでカーテンの設置は省略している。
荷棚は、従来のステンレスパイプ製のものからアルミニウム合金製の板状のものを採用した。
補助送風機である横流ファンの整風板は火災対策から、他社局の車両にも見られる車内全長に連続した銀色のアルミ合金製を採用した[* 9]
各車両間の貫通扉はE231系で採用実績がある傾斜式戸閉装置である[* 10]
車椅子スペースは各先頭車の連結面寄りに設置した。
乗務員室関係
E531系の運転台
速度計等の計器類はグラスコックピットにまとめられている

乗務員室は前述した高運転台構造で、運転士用の座席を設置する床面は客室床面よりも 520 mm 高くしている。運転台の機器配置はE231系近郊形(東海道線用)に準じた構成で、速度計・圧力計等の計器類や各種表示灯を廃し、これらを「グラスコックピット」と称する液晶モニターに表示する方式である。

乗務員室内には通常用および非常用のパンタグラフ降下スイッチが設置されている。列車制御システムとしては TIMS および VIS (各種情報提供装置)が搭載されている。

機器構成

E231系近郊タイプの基本設計を基に、高速運用に対応するため、特急用車両E653系(「フレッシュひたち」用)に準じた制御・駆動系を用いる。営業最高速度はJR東日本の普通列車用車両で初の 130 km/h に上げられ、速度種別は A21[* 11] を指定する。

電源・制御機器

主変換装置は日立製作所[9] のCI13である。IGBT素子による2レベルコンバータ+2レベルインバータで構成された主変換装置を搭載しており、主変換装置1基で4基の主電動機を制御する1C4M方式である。直流区間では、主変換装置のインバータ部のみ駆動させ、三相交流を出力する。

補機類の電源となる補助電源装置は、IGBT素子を使用した東洋電機製造製の静止形インバータ (SIV) SC81 を搭載する[10]。集電装置からの直流1,500Vもしくは主変圧器三次巻線からの単相交流1,471Vを電源として[* 12]、三相交流440V 50Hz(定格容量280kVA)を出力する[10]。基本編成では2台、付属編成では1台を搭載する。1台のSIVには2台のインバータが搭載され、140 kVA 2群構成の並列同期運転を行っている[10]。このシステムは SIV の負荷が分散できるとともに、三相電源の編成引き通しが可能となることから1台のインバータが故障した場合にも給電を継続できる冗長性に優れたものである[10]

直流区間と交流区間を隔てるデッドセクションでの主回路切替は E501 系と同一の仕様で、ATS-P 地上子を用いた自動切替である。専用地上子を設置しない路線での走行を考慮し、切替ボタンによる手動切替を併設[* 13]する仕様も同一である。車内照明は直流電源方式で、デッドセクション通過時には蓄電池からの供給に切り替わるため、基本的に消灯しない(交直流切り替えが手動で行われた場合は、この限りではない)。

主電動機は三菱電機・日立製作所・東洋電機製造の3社で製作[9]かご形三相誘導電動機 MT75 形で、1時間定格出力は 140 kWである。240万km走行非分解を目指した軸受構造および電食を防止するために絶縁軸受を採用している[11]。さらに低騒音化の配慮を行った結果、単体で約2dBの騒音低減を図っている[11]

パンタグラフは、モハE531形の前位寄り[* 14]にシングルアーム式のPS37A形を搭載する[6]。これはE501系と同位置で、E231系とは逆位置である。

電動空気圧縮機 (CP) は E231系などと同様のスクリュー式で、新開発の MH3124-C1600SN3 形を搭載する[12]

ブレーキ装置は回生ブレーキ併用の電気指令式空気ブレーキで、全電気ブレーキ機能を有する。このほか、60 km/h 以上での定速制御・10 km/h 以下の低定速制御・抑速ブレーキも装備する。

台車

台車は、E653系などの特急車両用台車を基本とした軸梁式ボルスタレス台車である[6]。形式は電動台車がDT71、付随台車のうち先頭車両前位寄りがTR255、後位寄りがTR255A、中間車両がTR255B、2階建て車両がTR255Cとしている[6][13]

台車枠は溶接構造の側はりと鋼管による横はりで構成されており、床面高さを1,130mmに低下させるために側枠の形状を変更し、枕ばね取り付け位置を引き下げた[6]。軸梁式軸箱支持装置の構造は、軸ばねを除いて各台車共通である[14]。車体支持装置は各台車共通とし、新設計空気ばねを取り付けた[6]。また、高速運転に対応するため、全車にヨーダンパが設置される[6]

基礎ブレーキ装置は、電動台車には踏面片押しユニットブレーキを採用することで軽量化及び保守の容易化を図っている[6]。付随台車には踏面ブレーキと1車軸あたり2枚のディスクブレーキを備える[6]。また、付随台車のうちTR255は踏面ブレーキに駐車ブレーキ機構を備える[12]

その他装備

保安装置は、製造当初よりATS-SN形およびATS-P形を搭載している。その後K407・K457 編成よりデジタル列車無線機器と ATS-Psが新製時より設置され、ATS-Ps 非搭載で製作された初期の車両にも順次 ATS-Ps が搭載された。従来の ATS-SN による本線運転も可能である。

形式

クハE531形 (Tc)
普通席を備える奇数向き制御車。蓄電池を搭載し、運転台を備える。
クハE530形 (T'c)
普通席を備える偶数向き制御車。空気圧縮機・蓄電池を搭載し、運転台を備える。
モハE531形 (M1)
普通席を備える中間電動車。モハE530形とユニットを組む。主変圧器・主変換装置・補助空気圧縮機・集電装置などを搭載する。
モハE530形 (M2)
普通席を備える中間電動車。モハE531形とユニットを組む。主変換装置・補助電源装置などを搭載する。
サロE531形 (Tsd)
グリーン席を備える2階建て中間付随車。洋式便所・洗面所を備える。
サロE530形 (Tsd')
グリーン席を備える2階建て中間付随車。乗務員室・業務用室を備える。
サハE531形 (T)
普通席を備える中間付随車。
サハE530形 (T')
普通席を備える中間付随車。空気圧縮機を搭載する。

編成表

  • 基本編成と付属編成を併結する際は、基本編成が上野方、付属編成が高萩・勝田方となる
  • 10両編成(基本編成)は上野方1号車で、高萩・勝田方10号車。5両編成(付属編成)は上野方11号車で、高萩・勝田方15号車
  • 5両編成単独運用時は小山方1号車で、竜田・いわき方5号車
  • 凡例
    • [車]WC…車椅子対応大型洋式トイレ、洋WC…洋式トイレ、[洗]…洗面所
    • [乗]…乗務員室、[業]…業務用室
 
← 竜田・高萩・勝田
小山・上野・品川 →
10両編成
(基本編成)
号車 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1
形式  
クハE531
-0
 
サハE531
 >
モハE531
-2000
 
モハE530
-2000
 
サハE530
-2000
 
サロE531
-0
 
サロE530
-0
 >
モハE531
-1000
 
モハE530
-0
 
クハE530
-0
座席 セミクロス ロング グリーン車 ロング セミクロス
その他設備 [車]WC         洋WC、[洗] [乗]、[業]     [車]WC
搭載機器     Mtr,CI CI,SIV CP     Mtr,CI CI,SIV CP
5両編成
(付属編成)
号車 15(5) 14(4) 13(3) 12(2) 11(1)  
形式  
クハE531
-1000
 
サハE531
-0
 >
モハE531
-0
 
モハE530
-1000
 
クハE530
-2000
座席 セミクロス ロング
その他設備         [車]WC
搭載機器     Mtr,CI CI,SIV CP
  • ※印の基本編成9号車はK401 - K411、K423編成はセミクロスシートの0番台、K412 - K422編成はロングシートの2000番台を連結。
  • 付属編成の号車()内は付属編成単独運用時の号車番号
  • Mtr (Main-Transformer) :主変圧器
  • CI (Converter・Inverter) :主変換装置(コンバータ装置 + VVVFインバータ装置)
  • SIV:静止形インバータ
  • CP:空気圧縮機

運用の変遷

水戸線暫定運用時のE531系
(2006年8月27日 勝田駅)

投入開始からの推移

2003年(平成15年)12月9日のプレスリリースにおいて常磐線(上野駅 - 四ツ倉駅間)・水戸線に導入すると発表された。この時点では、2005年7月までに90両を投入した後は、2006年度の秋までに140両を新造して403系および415系鋼製車を置き換え、さらに60両を新造して最終的には290両の陣容となる予定であった。しかし、常磐線中距離列車へのグリーン車導入決定により計画が変更され、付属編成5両を2本追加製造し、基本10両編成22本220両と付属5両編成16本80両の計300両の陣容とされた。同時にグリーン車を連結しないE501系も置き換えの対象となった。

グリーン車組み込み前の基本編成
 
← 大津港・勝田
上野 →
10両編成
(基本編成)
号車 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1
形式  
クハE531
-0
 
サハE531
-0
 >
モハE531
-2000
 
モハE530
-2000
 
サハE530
-2000
 
サハE531
-2000
 
サハE531
-2000
 >
モハE531
-1000
 
モハE530
-0
 
クハE530
-0
座席 セミクロス ロング セミクロス
その他設備 [車]WC                 [車]WC
  • 凡例は上記の編成表も参照。

2005年7月9日の運行開始時点では、90両が上野駅 - 大津港駅間の普通列車および新設された特別快速(上野駅 - 土浦駅間)の運用に投入された。1日の運行本数は18往復で、このうち特別快速は下り6本・上り5本であった。2006年3月18日ダイヤ改正より、上り特別快速が1本増発され、普通列車12往復、特別快速6往復の運用となった。

2006年8月26日から2007年3月17日までは付属編成が水戸線6往復の運用に投入され、また同年2月から3月17日までは415系で運用されていた上野 - いわき間の直通列車運用にも投入されていた。

グリーン車の組み込み

2007年3月18日のダイヤ改正から上野駅を発着する常磐線中距離電車の全列車でグリーン車の営業が開始された。JR発足後、首都圏での普通列車のグリーン車連結は東海道本線横須賀線総武快速線に限定されていたが、2004年10月16日に湘南新宿ライン・宇都宮線東北本線)・高崎線に連結列車を拡大したところ、利用客が順調に増加したことを受けて、常磐線への導入決定に至った。

グリーン車はE217系やE231系と同一のダブルデッカー構造で、連結位置もE231系と同じ基本編成の4・5号車である。グリーン車の導入は製造当初の計画にはなかったため、本系列の新製計画は変更となり、下記の要領によって組み込みが行われた。

  • 新たに基本編成に組み込むグリーン車44両を東急車輛製造および川崎重工業にて製造。
  • 新津車両製作所で製造中の基本編成のうち、K407- K411 編成の5本については、4・5号車に電動空気圧縮機 (CP) を搭載するサハE530形を組み込んだ10両編成として落成させる。
  • K412 - K422 編成の11編成については、4・5・6・9号車を抜いた6両編成として落成させる。
  • 全基本編成へのグリーン車組み込みに際しては、K407 - K411 編成の4・5号車のサハE530形を K412 - K421 編成の6号車に、既存の基本編成(K401 - K406 編成)の4・5号車のサハE531形(CP未搭載)を K412 - K422 編成の9号車に組み込む。この時点で、9号車には0番台のセミクロスシート車(K401 - K411 編成)と2000番台のロングシート車(K412 - K422 編成)が混在することになった。
  • 不足する K422 編成の6号車のサハE530形については、余剰となる K406 編成のサハE531形に CP を設置する改造を施工の上で組み込んだ(サハE531-2012→サハE530-2022)。

2006年11月をもって製造メーカーからの甲種車両輸送および新津車両製作所からの配給輸送を完了したが、組み替えに備えて落成した車両の一部は運用には投入されずに我孫子駅尾久車両センター高萩駅構内などに留置されていた。基本編成に各2両連結する44両のグリーン車は、同年11月16日から東急車輛製造および川崎重工業から順次勝田車両センターに甲種車両輸送された。同年11月17日に勝田車両センターにて K411・K422 編成にグリーン車を連結し、K411 編成が同年11月23日に、K422 編成が同年12月13日に試運転を実施した。その後郡山総合車両センターで順次基本編成へのグリーン車組み込みが実施された。

2007年1月6日よりグリーン車を組み込んだ基本編成の運用が開始されるが、同年3月17日まではグリーン車車両は普通車扱いとされた[* 15]。暫定使用中は、グリーン車車両の客用ドアの横と室内広告枠に普通車扱いを示すステッカーが貼り付けされた。

K410 編成では、組成予定の サロE531-14・サロE530-14 に不具合が発生して組成が遅延し、2007年4月に営業運転に復帰した。

現況

スカート強化後
(2009年3月22日 松戸 - 金町)

本系列の全車を勝田車両センターに配置し、2015年4月1日時点での内訳は基本10両編成23本(230両)、付属5両編成25本(125両)、合計355両である[15]

基本編成10両 + 付属編成5両の15両編成を基本とし、基本編成の編成番号は K401 - K423、付属編成の場合は K451 - K475 である。基本編成10両+付属編成5両の15両編成、付属編成5両+付属編成5両+付属編成5両の15両編成、付属編成5両+付属編成5両の10両編成、基本編成のみの10両編成、付属編成のみの5両編成の5パターンでの運行が可能である[5]。付属編成5両+付属編成5両の10両編成での運転がE501系基本編成の代替運用時にあるのみで、付属編成を複数連結した列車の定期運用は存在しない[* 16]

編成中の電動車 (M) と付随車 (T) の構成(MT比)は、基本編成が 4M6T 、付属編成は 2M3T である。先頭車両は貫通路をもたないため、走行中の編成間の通り抜けはできない。付属編成は複数の運用方法を有するため、車体側面の号車番号ステッカーは貼り付けしない。

2007年3月18日のダイヤ改正より、常磐線上野口中距離電車の運用はすべて本系列に置き換えられた[* 17]。この時点での運用区間は原則として常磐線上野駅 - 高萩駅間であったが、415系1500番台・E501系の検査時等の代走として高萩 - 草野間と水戸線の運用に就くことがあった。[要出典]

常磐線は上野駅 - 土浦駅間が10両・15両編成、土浦駅 - 水戸駅・勝田駅・高萩駅間は大半が10両編成での運転であるが、土浦駅 - 勝田駅間を5両編成で運転する列車が2往復ある。水戸線での暫定運用[* 18]は全区間で5両編成を使用した。

E501系基本10両編成の代替運用には基本編成または付属編成2編成を連結して代走する。基本編成が代走する場合はグリーン車は普通車扱いとなる。[要出典]

2010年度には、付属編成が新津車両製作所で再び新製され、K467編成が同年6月17日に、K468編成が同年7月23日に竣工した[16]。E531系の新製は2006年11月以来の約3年半ぶりとなる。これはE501系が経年約15年を迎え、機器更新時期に達したためで機器更新期間は基本編成で2か月、付属編成で1か月程度の期間を要する。E501系とE531系は共通予備車であるため、この入場期間中に車両の運用が不足してしまうためにE501系の機器更新時の予備車確保用として製造された[* 19]

2014年(平成26年)9月上野東京ライン開業による車両不足を補うための基本編成のK423編成が、12月のK469編成[17]から2015年(平成27年)3月のK475編成までの415系置き換え用付属編成7編成が総合車両製作所横浜事業所で製作された。E531系の基本編成新製はK422編成以来8年ぶり(グリーン車は7年ぶり、普通車の横浜事業所での製造は東急車輛製造時代のK406編成+K456編成以来9年ぶり)、E531系全体では付属編成のK468編成以来4年ぶりである[18]。なお、K423編成の9号車はセミクロスシート車(サハE531形0番台)として製造された。

2015年2月より水戸線の415系運用置き換えが始まり、水戸線での定期運用が開始された。また、常磐線の415系運用も同様に置き換えが進められており、2月下旬ごろからは高萩駅 - 竜田駅間での運用(すなわち、水戸駅 - いわき駅 - 竜田駅間の系統での使用)も開始された。

2015年3月14日からは上野東京ラインの開業に伴い、常磐線の一部列車が東海道線品川駅まで直通運転を開始した。これにより、E531系の運用範囲は東海道線・上野東京ライン品川駅 - 常磐線竜田駅間および水戸線へと拡大された。

3000番台

2015年10月には、415系1500番台の置き換え用として6次車に相当する5両編成の付属編成が落成した。すべての車両が準耐寒耐雪仕様車となっていることから、新たな区分として3000が足されて3000番台となっている[19]。車両は総合車両横浜でK551編成が[20]、11月には同じく総合車両横浜で同じくK552編成が落成[21]し、12月6日から他の付属編成と共通で営業運転を開始した[22]

従来車との変更点は以下の通りとなっている[19]

  • 凍結防止と雪の進入による客室扉が開く際の不良防止のため、客室扉の側引戸レールにヒータを搭載。
  • 主電動機を冷却する冷却風を通す風道を車体側に設置、電動車のモハE530形4000番台とモハE531形3000番台のNo.1・2・7・8の客室扉の右側の側構体に吸気口と整風板を新設。
  • 主電動機フィルターを電動車のモハE530形4000番台とモハE531形3000番台の腰掛下に各4ヶ所ずつ追加。
  • 車体の台車の間に車体側の風道からの冷却風を主電動機へ導くためのたわみ風道を取り付け。これに伴い主電動機の型式をMT75Aへ変更。
  • 品川向きのクハE530形5000番台のトイレの汚物タンクの外板の二重構造化と断熱材の追加や排出コックへのカバー取り付けとヒータの追加。
  • 先頭車の前位台車へのスノープロウの取り付け。これに伴いATS-P形の車上子の取り付け位置が後方に移動。
  • 空気ばね(枕ばね)の自動高さ調整弁に保護箱とヒータの取り付け。自動高さ調整棒受を氷塊や飛び石による破損防止のため強化形に変更。
  • 台車の軸箱を分割形から軸箱支持装置である軸梁との一体形への変更。
  • 空気笛前面にふさぎ板の取り付け。
  • 電動空気圧縮機(CP)・交流避雷器・運転台前方カメラのメーカー変更。
  • 滑走防止弁装置の箱内化と床下機器箱の二重パッキング化とハンドル保護板の追加。
  • 主変換装置と補助電源装置の型式変更(CI13A・SC81A)
 
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小山・上野・品川 →
3000番台
5両編成
(付属編成)
号車 15(5) 14(4) 13(3) 12(2) 11(1)
形式  
クハE531
-4000
 
サハE531
-3000
 >
モハE531
-3000
 
モハE530
-4000
 
クハE530
-5000
座席 セミクロス ロング
その他設備         [車]WC
搭載機器     Mtr,CI CI,SIV CP
  • 付属編成の号車()内は付属編成単独運用時の号車番号
  • Mtr (Main-Transformer) :主変圧器
  • CI (Converter・Inverter) :主変換装置(コンバータ装置 + VVVFインバータ装置)
  • SIV:静止形インバータ
  • CP:空気圧縮機

臨時列車

臨時列車の運用事例も存在する。2005 - 2006 年度の「笠間deおさんぽ号」(笠間行き、2012年5月まで運転)、2005年以降、8月の国営ひたち海浜公園ROCK IN JAPAN FESTIVAL』来場者の帰宅輸送用として、上り臨時快速列車(勝田発上野行き、2013年は取手行き)1本を本系列で運転している。2008年・2009年は、往路輸送用として下り臨時快速列車にも充当されている(2010年以降は下りの快速列車は運転せず)。

また2008年7月6日には勝田駅 - 大宮駅間で当系列を使用した団体臨時列車「ひまわり号」が運転された。運転前には宇都宮線で試運転も実施された。

2013年7月22日には、いわき市いわきグリーンスタジアムで開催されたプロ野球オールスターゲームに合わせた臨時普通列車「復興いわきベースボール号」に充当された。この列車では、グリーン車の営業を伴う基本編成での運転を高萩駅 - いわき駅間では初めて行った(グリーン車は指定席)[23]

2013年10月27日・11月3日には臨時快速列車「那須野満喫号」として、付属編成5両で南越谷駅 - 黒磯駅[* 20]新白河[* 21]間で運転された。営業運転での武蔵野線宇都宮線東北本線への入線は初となった[24][25]

2014年2月1日・2日には臨時快速列車「おさんぽ川越号」として、付属編成5両で土浦 - 川越間で運転された。営業運転での川越線への入線は初となった[26]

2014年からGW期間中や秋の連休中に笠間市で開催される焼き物市などのために「笠間ひまつり号」(GW期間)・「笠間浪漫号」(秋の連休)が友部駅 - 笠間駅間で運転されている。付属編成5両が使用され、「笠間ひまつり号」では両先頭車に笠間市のマスコット「いな吉」がデザインされた専用ヘッドマークが装着される。


脚注

注釈

  1. ^ 日本鉄道運転協会「運転協会誌」2005年10月号新形車両プロフィールガイド「東日本旅客鉄道 常磐線用 E531系 一般形交直流電車の概要」の49ページ基本諸元表には最大の起動加速度は「0.694m/s2」と記載されており、km/h/s換算で2.5km/h/sとなる。
  2. ^ ただしJR東日本会社要覧2012-2013 (PDF) では近郊形電車と記載。
  3. ^ 常磐線の中距離電車は、上野 - 取手間は「快速」と案内する。
  4. ^ 同一方向に不連続の磨き傷が残った半光沢仕上げ。
  5. ^ 凸凹を設けた梨地状の表面となる艶消し仕上げ。
  6. ^ 前頭部に衝撃吸収材を配置し、乗務員室内にはサバイバルゾーン(強固な構造で乗務員を保護)とクラッシャブルゾーン(つぶれることで衝撃を吸収)で構成される。
  7. ^ 運行情報は入電時 または 始発駅の発車時にアラート(チャイム)が鳴動する。2007年1月下旬以降は、JR以外の他社局線で発生した輸送障害の状況も表示する。
  8. ^ ロングシート車(11号車)では6人掛け座席に短縮され、セミクロスシート車(1・10号車)では第4ドア寄りの2人掛けロングシート(優先席)がない。この関係で1・10号車の優先席は片側のみである。
  9. ^ 本系列落成と同時期から製造されたE231系も銀色のアルミ素材に変更されたが、横流ファン設置場所のみである。
  10. ^ その他にも扉部分に開放するドアストッパーが付けられている。これはE231系でも同様である。
  11. ^ 2桁数字の前に付与する「A」は時速100キロを意味し、10 での均衡速度が 121 km/h であることを示す。「A21」は E231 系近郊タイプの湘南新宿ライン運用の速度種別と同一である。
  12. ^ 電圧変動範囲は直流900 - 1,800V、交流は1,100 - 1,765Vとされている。
  13. ^ 交直手動切替は専用地上子を設置している常磐線、水戸線においても可能である。
  14. ^ 常磐線基準で水戸・高萩方。
  15. ^ 宇都宮線・高崎線のE231系にグリーン車を導入した2004年10月15日までの経過措置と同様の主旨である。
  16. ^ 2005年度に「笠間deおさんぽ号」に使用された車両を土浦運輸区へ回送する際に付属編成2本の連結運転が行われた。
  17. ^ 置き換え完了後、ステンレス車の415系1500番台の一部は水戸線・常磐線(友部駅 - 原ノ町駅間)で使用し、E501系はトイレ設置などの改造を施工し、常磐線(土浦駅 - 草野駅間)・水戸線で使用する。他は淘汰された。
  18. ^ 当該運用に際し、従来プラットホーム有効長が4両編成分しかなかった小田林駅東結城駅は5両編成が停車できるように有効長を延伸した。
  19. ^ 交友社「鉄道ファン」2010年12月号 「JR東日本 車両運用プロジェクト 首都圏 平成22年度 春夏」を参照。
  20. ^ 10月27日運転
  21. ^ 11月3日運転

出典

  1. ^ a b 日本鉄道運転協会「運転協会誌」2005年10月号新形車両プロフィールガイド「東日本旅客鉄道 常磐線用 E531系 一般形交直流電車の概要」p.49
  2. ^ 常磐線中距離電車に新型車両を導入!E531系交直流電車 (PDF)
  3. ^ a b c d e 『レイルマガジン』通巻262号、p.133
  4. ^ 『近畿車輌技報』通巻12号、p.6
  5. ^ a b c 『レイルマガジン』通巻262号、p.132
  6. ^ a b c d e f g h i 『レイルマガジン』通巻262号、p.135
  7. ^ 『レイルマガジン』通巻262号、p.137
  8. ^ a b リニアモータ式側引戸用戸閉装置」(PDF)『富士時報』第79号、富士電機、2006年2月、pp.128 - 133。 
  9. ^ a b 日本鉄道運転協会「運転協会誌」2005年10月号新形車両プロフィールガイド「東日本旅客鉄道 常磐線用 E531系 一般形交直流電車の概要」p.50
  10. ^ a b c d 『東洋電機技報』通巻112号、p.21
  11. ^ a b 『東洋電機技報』通巻112号、p.22
  12. ^ a b 『レイルマガジン』通巻262号、p.136
  13. ^ 『レイルマガジン』通巻281号、p.73
  14. ^ 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「RM262 135」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  15. ^ 交通新聞社『JR電車編成表』2015夏
  16. ^ 交通新聞社「JR電車編成表2013夏」44・45頁記事。
  17. ^ E531系K469編成が出場 鉄道ファン railf.jp 鉄道ニュース、2014年12月19日
  18. ^ 常磐線E531系が4年ぶりに新造される 鉄道ファン railf.jp 鉄道ニュース、2014年10月01日
  19. ^ a b 『鉄道ファン』通巻660号、p.66-p.67
  20. ^ E531系K551編成が登場 鉄道ファン railf.jp 鉄道ニュース、2015年10月16日
  21. ^ E531系3000番台K552編成が出場 鉄道ファン railf.jp 鉄道ニュース、2015年11月6日
  22. ^ E531系3000番台が営業運転を開始 鉄道ファン railf.jp 鉄道ニュース、2015年12月13日
  23. ^ 夏の臨時列車のお知らせ (PDF) - 2013年5月17日 東日本旅客鉄道水戸支社
  24. ^ 【JR東】〈那須野満喫号〉運転RMニュース、2013年10月29日
  25. ^ 【JR東】E531系による快速〈那須野満喫号〉RMニュース、2013年11月8日
  26. ^ 【JR東】快速〈おさんぽ川越号〉E531系で運転RMニュース、2014年2月3日

参考文献

外部リンク